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2009/11/06

Social Media PR Disaster

9月10日、YouTubeに「Danish Mother Seeking ...」というビデオがアップされた。
9カ月の女の子、Augustを抱えた若い母親、26歳のKarenが切々と訴える。「コペンハーゲンで知り合い、一晩を過ごした旅行者、Augustの父親を探してほしい」と。

このビデオはたった4日で100万回以上視聴され、Karenに対して親身になったコメントが書き込まれていた。しかし、このビデオは13日(あるいは14日)にはVisit Denmarkの要請によって削除されている。

以下が、「Danish Mother Seeking ...」へのリンク、http://www.youtube.com/watch?v=4-kKQKgMZxY&feature=player_embedded#t=21 をクリックした際、表示される。
This video is no longer available due to a copyright claim by VisitDenmark. 」と。


なぜ、Karenが投稿したビデオをVisit Denmarkが削除要請できるのか?

というのは、このビデオはVisit Denmark キャンペーンの一環で、Greyが制作したものだったからだ。

このビデオはデンマークで強く批判された。しかし、それはデンマーク国内で賛否両論の混乱を招いたからでも、デンマークを一種の性的観光地としてプロモートしたからでもなく、「嘘の広告」を制作したことについてだ。「嘘をついて、人々の気持ちをもてあそぶべきではなかった」ということらしい。

このビデオは、一時期、世界中を駆け巡った「The Best Job in the World」の向こうを張って世界中にバズを広めるのが目的だったようだ。VisitDenmarkのManaging Director、Dorte Kiilerichによれば、このビデオは「我々が行ったマーケティングの中でも最も効果を挙げた」そうだ。しかし、代償は高くついた。Kiilerichが辞任したとCopenhagen Postが25日に報じている。

Source:Viral Blog / Danish Mother Seeking ...
Source:Marketing Safari / Who's your daddy?
Source:Copenhagen Post / VisitDenmark director resigns

もし、このビデオがデンマークに対する注目を集めたとして、一体、どんなコストを払った上でかを検証しなければならない。その意味で、このビデオがもたらしたのはマーケティング効果ではなく、PRディザスターだろう。

2006年、Sony、MS、Wal-MartなどがやらせBlogで叩かれたのは記憶に新しい。それからこの種、ヤラセ、ガセの噂を聞くこともなくなっていた。Blog、Blogger達などを意図的に、あるいは悪意により操作してといったマーケティング手法は固く封印されたはずだった。

ただ、「The Best Job in the World」の成功を横目に、VisitDenmarkが誘惑に負けて禁断の蓋を開けたともいえる。しかし、VisitDenmarkが開けたのは単なるパンドラの箱ではない。2006年当時ならいざ知らず、Blog、SNS、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディアが咲き誇る2009年だ。

ビデオが投稿された直後から、真贋を疑うBlog、Twitterがあり、YouTubeにはリプライビデオとして揚げ足取りのビデオも投稿されていた。デンマークへの注目を集めるよりも、背後にある目的探しの方が注目を集めていた面もあった。

さて、ソーシャルメディアが咲き誇る2009年という現状認識が欠落したマーケティングが引き起こしたPRディザスターをどうやって終息するか、ブランドレピュテーション被害を軽微にとどめ、早急な回復をどうやって目指すか。そんな危機管理戦略がVisitDenmarkにはないように見える。VisitDenmarkどころか、どのブランドもソーシャルメディアを念頭に置いた危機管理戦略がないように見える。責任者の首を切るだけでは意味がない。

現在のパブリックリレーションズには、マスメディアよりもソーシャルメディアリレーションズの方が重要ではないだろうか。マスを凌駕する質と量で吐き出されるソーシャルメディアスペースのコンテンツ、そのコンテンツを作りだすオーサー、オーソリティに対してコネクションを築くことが重要ではないだろうか。以前のブランド危機はマスを押さえておけば済んだかもしれないが、今はそうではない。そして、危機は国内だけで発生するものではない。

なお、どうしてもオリジナルビデオに近いものを見たい方は以下をどうぞ。

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