記憶に残る思い出や味、人、子供の頃に大好きだったもの、心の動きを辿ってみると必ず理由がそこにある。好きになるのに理由なんてない、という言葉はなんとも頼りなく思う。 自分がいいなと思ったアイテムを紹介する「買い物(かいもん)マガジン」というインスタグラムをやっていて、そこでは必ず「なぜいいのか」を書くようにしている。 このアカウントにはありがたいことに老若男女ファンがいて、親子や姉妹、夫婦、カップルで見てますなんて声も届く。 私の職業が漆と金継ぎの修復家で、職人が紹介するアイテムということもどうやら少なからず説得力があるようだ。 大学、大学院と6年間京都の芸大に通って漆を学んだ。漆制作は時間のかかるもので、展覧会前には大学に連泊してお風呂に入るためにしか家に帰れない、という日がザラにあった。 大学院2年目、展覧会前で連泊してボロボロになっていた時に、同じ院部屋だったかざゆちゃんという友達が疲