■“最後の3ポゼッション”の当事者に 3月9日、Bリーグを代表して東アジアスーパーリーグ(EASL)に参戦していた琉球ゴールデ…

■“最後の3ポゼッション”の当事者に


 3月9日、Bリーグを代表して東アジアスーパーリーグ(EASL)に参戦していた琉球ゴールデンキングスは、2024-25シーズンの3位決定戦で台湾の新北キングスに80-84で敗戦。残り1分半で6点差をひっくり返されるショッキングな敗戦で、マカオ遠征を終えることになった。

 我慢しきれずに崩れた準決勝とは異なる試合展開だった。立ち上がりから強みであるインサイドを攻め続け、逃げ切り体制へ。しかし、残り1分19秒にオースティン・デイに4本目となる3ポイントを許すと、直後のオフェンスで岸本隆一にボールが渡ったところを狙われターンオーバー。さらにショットクロックバイオレーションと攻めきれず、逆転の3ポイントを被弾。大歓声の後押しを受ける新北の勢いに飲み込まれ、傾いた試合の流れを断ち切れなかった。

 この最終盤にハンドラーを務めていたのが、マカオ入りしてから存在感を示していた荒川颯。3位決定戦では試合開始早々から松脇圭志との交代でコートに入ると、第3クォーター残り5分以降は一度もベンチに下がらず4得点3アシスト。試合全体でも23分20秒のプレータイムで6得点、チーム最多タイとなる5アシスト、プラスマイナス+6の活躍を見せていた。

 試合終了後、荒川は神妙な面持ちでミックスゾーンに姿を現し、「この2日間で責任感という言葉がテーマな感じがしていて、普段レギュラーシーズンで僕がクロージングのコートに立っていることはなかったんですけど、この決勝リーグで最後までコートに立てたことと、そこで見えた課題が重要だと思います。これから天皇杯もありますし、CSに向けて必ずこういう場面があると思うので、そこでコートに立つという目標とともに、そこでしっかり結果を出すという課題、責任感というところをテーマに積み上げていけたらと思います」と、厳しい敗戦を受け止めた。

 ただ、勝敗を分けた“最後の3ポゼッション”の当事者となったからこそ見える景色もある。「今日のきっかけは(岸本)隆一さんがディナイされたところでのプレーをどう作るかというところ“だけ”だったとも思うので。隆一さんが持っていればまた話も変わってきたと思いますし、そこで僕が何をやるかというところの責任感をすごい感じている」と荒川。

「俺がやるぞ、という雰囲気にさせられなかったことが大きいと思います。僕自身が思っていても、今日のシチュエーションだと普段やらない5人がコートに立っていた状況だったので、そのなかで雰囲気を変えられるような影響力だとか、技術だけではない部分の信頼が足りなかったのかなと思います」

■HC賛辞「本当に使ってよかった」岸本も期待


 荒川を起用し続けた桶谷大ヘッドコーチは「正直、颯に関しては、この何試合かで本当に自信を持ってやってきているなと感じています。やるべきことを理解して表現しようとしてくれている。こんな大舞台でクロージングを任せるというのは、今までやってきたことなかったですし、初めてでしたけど、それでも颯を使いたいと思わせる活躍ぶりだった」と、EASLファイナルフォーで見せたパフォーマンスを最大限に評価。

 背番号10にとっては、チームの勝敗がかかる局面で苦い経験となったが、「本当に使ってよかったですし、こういう経験が絶対に生きてくる。またこれで颯と会話する材料も増えてくるなと思います」と、さらなる成長に期待を寄せた。

 また、ともにコートに立っていた岸本は「選手である以上、僕が颯にどうこう言うつもりはないんですけど…」と前置きしたうえで、荒川の現在地やプレー、先輩として次のようにアドバイスを送った。

「僕以上に難しい立場にいると思っていて、周りの選手の調子の良い悪いに左右されることもありながら、ずっと準備を続けていて、それを試合で発揮できるのは彼の実力だと思います。彼ももっと試合でノッてこれば自分の良さを出していける選手だと思うので、最近は少しずつそのきっかけを掴みかけていると思いますし、もっともっとやってほしいなというのが個人的な思いですね」

「周りのことを気にせず、特に今日のクロージングでいえば、僕が責任を持たなきゃいけなかったと思っているので、その責任を彼とまた分かち合えるような場面が来るように、しっかりと僕自身も準備して、彼にももっといいプレーをしてもらって、一緒に成長していけたらいいなと思います」

 一昨年7月の琉球加入時は練習生だった荒川。在籍2年目の今シーズンは、すでに昨シーズンを上回るリーグ戦40試合に出場しているなか、EASLファイナルフォーでまた一つ“バスケットボールの難しさ”も体感した。琉球にとっては痛いマカオ遠征2連敗だったが、伸び盛りのガードが大きな壁にぶつかったことは、Bリーグの覇権を争う終盤戦にも生きる財産となるはずだ。

【動画】大激戦となったEASL3位決定戦のフルゲームハイライト映像