女性とのトラブルが報じられていたタレントの中居正広氏(52)が1月23日、芸能活動を引退すると発表した。社会学者の太田省一さんは「彼を失ったテレビの将来は決して明るいモノではないだろう。それはこれまでの中居氏、SMAPの活動をみるとよくわかる」という――。
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タレントの中居正広さんが芸能活動を引退することを伝える街頭モニター(左上)=23日午後、東京・渋谷

今だからこそ中居正広、SMAPについて考える意義

2025年1月23日付けで中居正広が芸能界からの引退を発表した。女性トラブルについての報道を発端とする経緯はよく知られていると思うので、ここでは繰り返さない。

事態はトラブルに社員の関与があったとされるフジテレビの対応への不信感もあり、スポンサー企業がCMの差し止めを決めるなど、テレビ界全体を大きく揺るがすまでになっている。

もちろん女性の人権・プライバシーの尊重を最優先にしたうえで第三者委員会の徹底した調査を待たなければならないし、それを含めた今後の推移をしっかり見守る必要がある。ただそのことを十分認識したうえで、ここでは引退という決断をした中居正広、そしてSMAPという存在について改めて考えてみたい。それもまた、今回の一連の出来事をトータルに考えるうえでのポイントのひとつだと思うからである。

「稚拙」と思われた謝罪文の真意

中居正広が発表した引退のコメントには、全責任は自分にあること、迷惑と損失を与えたテレビ局など関係者各位への謝罪、そしてトラブルの被害者となった女性への謝罪の言葉があった。

そして最後には、「ヅラ」への謝罪もあった。「ヅラ」とは、中居正広のファンの呼び名である。

「ヅラの皆さん

 一度でも、

 会いたかった

 会えなかった

 会わなきゃダメだった

 こんなお別れで、本当に、本当に、ごめんなさい。

 

 さようなら…。」

こうしたコメントには珍しくファンに直接呼びかけるような表現になったのは、発表の場が自身の立ち上げた個人事務所「のんびりなかい」のホームページだったこともあるだろう。だがそれ以上に、この言葉が通り一遍のものでなく感じられる背景には、中居正広とファンが長年にわたって培ってきた信頼関係がある。そしてその信頼を裏切るかたちにもなったことへの中居の悔いの深さが伝わってくる。

それはある意味、SMAPとファンの関係性に置き換えてもいい。「一度でも、会いたかった 会えなかった 会わなきゃダメだった」という言葉で「会う」のはまずファンと中居のことであると同時に、SMAPとファンのことであるとも受け取れる。

2016年末のSMAP解散に至る経緯も、多くのファンにとって前向きに受け入れられるようなものではなかったはずだ。だからSMAPの再結集、再結成を望む声はずっとなくならなかった。しかし今回のことで、それはきわめて困難になったと言わざるを得ない。そのことへの謝罪の言葉であるとも読める。