不祥事の大半が内々に処理される銀行の闇
三菱UFJ銀行の貸金庫盗難事件で、銀行員の犯罪がクローズアップされている。
真面目でお堅いイメージとは裏腹に、銀行員による不祥事や犯罪は多い。銀行員とて生身の人間で、金、ギャンブル、異性関係等で泥沼に嵌る。今般逮捕された今村由香理容疑者は競馬とFX取引で借金を膨らませたという。そして彼らの目の前には商品のお金が山ほどある。不祥事が起きないはずがない。しかし、その大半が内々に処理され、世間の目に触れることはない。
銀行員に騙されないよう、彼らの手口と防衛策を解説する。
1.顧客の金を着服
筆者は、大手都市銀行の日本橋支店で外回りをしていた頃、月に一度くらい新宿の地上げ屋の事務所に「こんちはー」と顔を出していた。すると若い社長から「おう、今日はこれだけ預かってくれ」と500万円くらいの現金をぽんと渡され、その場で数え、預かり証を作成していた。その後、「ラーメン食ってくか?」と言われ、「はい、頂きます」とご馳走になり、金を鞄にしまって電車で日本橋まで帰っていた(たぶん社長は地上げ用資金の融資を期待して、気前よく預金してくれていたのだと思うが、審査が通らなかった)。
背景には“日本独特の商慣行”がある
日本の銀行では、銀行員が顧客の家を訪問し、お金を預かったり、さまざまな手続きをしたりする。海外ではほとんど見ない商慣行で、日本社会が今も相互信頼で成り立っていることを窺わせる。筆者が住む英国でこれをやったら、たちまちドロンである。
しかし日本でも、もし銀行員が金に困っていたりしたら、当然その金に手をつけたくなる。銀行員による犯罪で一番多いのはこのパターンだ。筆者が横浜支店に勤務していた頃、同じ地区の別の支店でかなり頑張っていた外回りの人がいたが、いつも後輩たちにおごってやったりして、金がなくなり、顧客から預かった金に手を付け、懲戒解雇になった。
被害を防ぐには、外回りの銀行員に金を預けないのが一番だ。今はインターネットバンキングという便利なものがあるので、それを使って自分で入金処理するか、銀行員に預けるとしても、即日インターネットバンキングやATMで処理状況を確認すべきだ。筆者が自分の口座の残高を確認していたおかげで、間一髪で難を免れた事件については後述する。