※本稿は、折茂肇『ほったらかし快老術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
男女とも甘く見てはいけない50歳からの「骨密度の低下」
人が成長するのに伴い、骨は長く、太く、丈夫になり、成人になったとき最も成熟する。「骨を構成するカルシウムなどが骨にどのぐらい詰まっているか」を表す「骨密度」は、20歳ごろに最も高くなる。しかし、50歳を過ぎるころから新陳代謝のバランスが崩れ、骨密度が低下していく。
骨密度が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気が骨粗鬆症だ。骨折しやすい場所は年齢により異なるが、一般的に手首(橈骨)や背中(脊椎)、足の付け根(大腿骨)などに起こりやすい。若いころと比べて骨密度が70%以下になると骨粗鬆症と診断される。
骨粗鬆症の原因は、加齢による骨の老化、女性ホルモンの欠乏、運動不足、カルシウム不足など、さまざまだ。女性ホルモンと関わりが深いため閉経後の女性に多くみられるが、男性にも起こる。男性はとくに、80歳を超えてから骨粗鬆症の症状が現れる人が多いという特徴がある。
骨粗鬆症になると「ドミノ骨折」が起き、病気のリスクも高まる場合も
骨粗鬆症は、古代エジプト時代からあったといわれるほど、古くからある病気だが、注目されるようになったのは近年になってからだ。その理由の一つは、人間の寿命が長くなったことと想像できる。昔の日本では、骨粗鬆症が問題になるほど長生きする人は珍しかったのだろう。
骨粗鬆症による骨折が怖いところは、一度骨折すると、次から次へと別の骨折を引き起こす「ドミノ骨折」が起こることだ。それによって、歩きにくくなる、背中が大きく曲がって内臓を圧迫する、寝たきりになるなど、日常生活に大きな影響をおよぼすようになる。骨が悪くなることは、骨だけでなくその周辺の筋肉や関節など、体を支えたり、動かしたりする運動器全体の健康に直結する。
さらに、骨粗鬆症になると、心筋梗塞や脳梗塞などといった、心臓や血管の病気のリスクが高まるという報告もある。「たかが骨。たかが骨折。生命に関わるものではない」などという考えは大間違い。骨こそが健康長寿のカギを握る急所なのだ。