WO2023218528A1

WO2023218528A1 - 脚付きチェア

Info

Publication number: WO2023218528A1
Application number: PCT/JP2022/019811
Authority: WO
Inventors: 慧吉川; 貴斗岸田
Original assignee: 株式会社Mtg
Priority date: 2022-05-10
Filing date: 2022-05-10
Publication date: 2023-11-16
Also published as: TW202344208A

Abstract

座面部（３０）と、背もたれ部（４０）と、前記座面部（３０）を支持する脚部（２０）と、を備え、前記座面部（３０）の後部（３０Ｕ）及び前記背もたれ部（４０）の下部（４０Ｓ）の左右両側に中央窪み部（１２）が形成されており、前記座面部（３０）は、前記脚部（２０）によって固定され、背もたれ部（４０）は、後向きの力を受けると、後側に変位するものである。

Description

脚付きチェア

　本発明は、脚付きチェアに関する。

　従来、例えば下記特許文献１に記載されているように、座面部、背もたれ部及び脚部を有する脚付きチェアが知られている。背もたれ部は、傾動装置によって傾動可能に支持されている。

特開平０８－１０７８１３号公報

　上記のような脚付きチェアに着座した着座者の姿勢は、左右に傾く等してばらつきやすかった。このため、着座者を正しい姿勢に保持しやすい脚付きチェアが望まれた。

　本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる脚付きチェアを提供することを目的とする。

　本発明１の脚付きチェアは、座面部と、背もたれ部と、前記座面部を支持する脚部と、を備え、前記座面部の後部及び前記背もたれ部の下部の左右両側に中央窪み部が形成されており、前記座面部は、前記脚部によって固定され、前記背もたれ部は、後向きの力を受けると、後側に変位するものである。

　本発明２の脚付きチェアは、座面部と、背もたれ部と、前記座面部を支持する脚部と、を備え、前記座面部の上面は着座時に着座者を前傾させる形状であり、前記座面部は、前記脚部によって固定されることで、前記座面部の上面の角度が着座者の着座によって変更されないものであり、前記座面部は、脚部によって固定されていない場合には、前記座面部の上面の角度が着座者の着座によって変更され得ることを特徴とするものである。

　本発明１によれば、着座者の臀部及び背部は、座面部及び背もたれ部の左右方向中央部に落ち着きやすいから、着座者の姿勢は、真っ直ぐになりやすい。背もたれ部は、着座者の背中を支持して適度に変位するから、着座者の背中にフィットしやすい。したがって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　本発明２によれば、座面部の上面は着座時に着座者を前傾させる形状であるから、着座者の骨盤を立たせることができる。座面部の上面の角度が着座者の着座によって変更されないから、形状設計において狙った通りの姿勢矯正機能を発揮できる。したがって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

実施例１における脚付きチェアを示す正面図脚付きチェアを示す側面図脚付きチェアを示す平面図脚付きチェアの本体部及び脚部の上部を示す断面図であって、図３のＡ－Ａ位置における断面に相当する断面図芯材の厚さ寸法の変化を概略的に示す図脚付きチェアを示す底面図脚固定部を示す本体部の底面図前脚固定部及び後脚固定部を示す脚付きチェアの一部拡大断面図であって、図６のＢ－Ｂ位置における断面に相当する断面図左右の前脚固定部を示す脚付きチェアの一部拡大断面図であって、図６のＣ－Ｃ位置における断面に相当する断面図左右の後脚固定部を示す脚付きチェアの一部拡大断面図であって、図６のＤ－Ｄ位置における断面に相当する断面図実施例２における脚付きチェアを示す正面図脚付きチェアを示す側面図脚付きチェアを示す平面図脚付きチェアの本体部及び脚部の上部を示す断面図であって、図１３のＥ－Ｅ位置における断面に相当する断面図脚付きチェアを示す底面図脚固定部を示す本体部の底面図左右の前脚固定部を示す脚付きチェアの一部拡大断面図であって、図１５のＦ－Ｆ位置における断面に相当する断面図実施例３における脚付きチェアを示す正面図脚付きチェアを示す側面図脚付きチェアを示す平面図脚付きチェアの本体部及び脚部の上部を示す断面図であって、図２０のＧ－Ｇ位置における断面に相当する断面図脚付きチェアを示す底面図脚固定部を示す本体部の底面図左右の後脚固定部を示す脚付きチェアの一部拡大断面図であって、図２２のＨ－Ｈ位置における断面に相当する断面図実施例４における脚付きチェアを示す正面図脚付きチェアを示す側面図脚付きチェアを示す平面図脚付きチェアの本体部及び脚部の上部を示す断面図であって、図２７のＩ－Ｉ位置における断面に相当する断面図脚付きチェアを示す底面図脚固定部を示す本体部の底面図

　本発明の好ましい形態を以下に示す。

　本発明の脚付きチェアにおいて、前記座面部のうち着座者の座骨結節部に対応する点を座面基準点、前記座面基準点を通って前後方向に水平に延びる直線を座面基準線、前記後向きの力がゼロである状態の前記背もたれ部の左右方向中心における最も上端に対応する点を背もたれ基準点、前記背もたれ基準点を通って鉛直に延びる直線を背もたれ基準線、前記座面基準線と前記背もたれ基準線との交点を基準交点、前記背もたれ部が後側に変位した状態の前記背もたれ基準点に対応する点を背もたれ変位点、前記背もたれ変位点と前記基準交点とを通る直線を背もたれ変位線、前記背もたれ基準線と前記背もたれ変位線とのなす鋭角を背もたれ変位角、としたとき、前記背もたれ変位角は、０度～３０度であるものとしてもよい。このような構成によれば、背もたれ部は、着座者の背中を支持して適度に変位するから、着座者の背中にフィットしやすい。したがって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　また、本発明の脚付きチェアにおいて、前記座面部及び前記背もたれ部は、前記座面部の後部及び前記背もたれ部の下部において繋がっている芯材を有し、前記背もたれ部は、前記芯材の撓みによって後側に変位するものとしてもよい。このような構成によれば、座面部の後部及び背もたれ部の下部において繋がっている芯材の撓みによって変位するから、背もたれ部を支持する支持部材は不要である。したがって、脚付きチェアをシンプルなデザインにできる。

　また、本発明の脚付きチェアにおいて、前記芯材のうち前記座面部の後部及び前記背もたれ部の下部における厚さ寸法は、前記芯材のうち前記背もたれ部の上部及び前記座面部の前部の厚さ寸法よりも大きいものとしてもよい。このような構成によれば、背もたれ部は、芯材の撓みによって適度に変位するから、着座者のすわり心地を良くできる。

　また、本発明の脚付きチェアにおいて、前記座面部の下面は、湾曲した形状をなし、前記座面部に前記脚部を固定する脚固定部は、前記座面部の下面に突出して設けられ、前記座面部の下面の前側領域に設けられた前脚固定部と後側領域に設けられた後脚固定部とを有し、前記前脚固定部の突出寸法と、前記後脚固定部の突出寸法とは異なっているものとしてもよい。このような構成によれば、座面部の下面に脚部を適正に固定し、座面部及び背もたれ部を床面に対して正しく設置できる。

　＜実施例１＞
　以下、本発明を具体化した実施例１の脚付きチェアＬ１について、図１～図１０を参照しつつ詳細に説明する。以下、各構成部材において、脚付きチェアＬ１を床面に立たせた状態における上側を上側、下側を下側、脚付きチェアＬ１に着座した状態の着座者から見て前側を前側、後側を後側、脚付きチェアＬ１を前側から見て右側を右側、左側を左側として説明する。各図においてＸ軸の正方向側は前側、Ｘ軸の負方向側は後側、Ｙ軸の正方向側は右側、Ｙ軸の負方向側は左側、Ｚ軸の正方向側は上側、Ｚ軸の負方向側は下側を示す。ＸＹ平面は、水平面である。Ｚ軸は、鉛直に延びている。

　脚付きチェアＬ１は、図１に示すように、本体部１０と、本体部１０を支持する脚部２０と、を備えている。脚付きチェアＬ１は、左右方向の中心を基準に左右対称である。本体部１０は、座面部３０と、背もたれ部４０と、を有している。座面部３０は、着座者の臀部及び大腿の付け根部を下側から支える。背もたれ部４０は、着座者の背部を後側から支える。背部は、着座者の腰部及び背中を含む。座面部３０と背もたれ部４０とは一体に形成されている。

　座面部３０は、図１に示すように、左右方向両端部の座面縁部３１と、左右方向中央部の座面中央部３２と、を有している。ＹＺ平面において、左右の座面縁部３１の上端は、座面中央部３２の上端よりも上側に位置している。

　座面部３０の上面には、２つの座面湾曲部３３が形成されている。各座面湾曲部３３は、座面縁部３１の上端と座面中央部３２の上端との間において下側に凹んでいる。着座者の左右の大腿の付け根部は、左右の座面湾曲部３３にそれぞれ支持される。着座者の大腿の付け根部は、左右の座面縁部３１によって左右両外側に開きにくくなる。左右の座面縁部３１は、下側に弾性変位可能である。座面湾曲部３３は、図８に示すように、前後方向においても中央部が下側に凹んでいる。

　座面部３０は、わずかに前傾しており、座面部３０の前部３０Ｍは、座面部３０の後部３０Ｕよりも下がっている。具体的には、図４に示すように、座面部３０の前部３０Ｍは、座面部３０の後部高さ基準点Ｐ２０よりも低い位置にある。座面部３０の後部高さ基準点Ｐ２０は、後述する座面基準線Ｓ１及び背もたれ基準線Ｓ２の交差角の二等分線Ｓ１０と、芯材１４との交点である。座面部３０の前部３０Ｍは、後部高さ基準点Ｐ２０を通る水平な仮想直線Ｓ１１よりも下側に位置している。これにより、着座者の着座姿勢はわずかに前傾し、骨盤を立たせることができる。

　背もたれ部４０の上部４０Ｕは、図１に示すように、左右方向中央部に形成された上窪み部４１と、上窪み部４１の左右両側に立つ２つの上支持部４２と、を有している。正面視において、背もたれ部４０の上下方向の最大寸法は、背もたれ部４０の左右方向の最大寸法よりも小さい。背もたれ部４０のうち上窪み部４１の下端より下側の部分の左右方向の寸法は、下方に向かって次第に小さくなっている。

　背もたれ部４０は、図２に示すように、側面視において、座面部３０の後端部から上方へ立ち上がった形態である。背もたれ部４０の左右の側縁４３は、前側に膨らんだ湾曲形状をなしている。

　図１及び図２に示すように、背もたれ部４０の下部４０Ｓ及び座面部３０の後部３０Ｕの左右両側には、中央窪み部１２が形成されている（図１参照）。中央窪み部１２は、正面視において左右方向中央側に窪んでいる。これによって、背もたれ部４０と座面部３０との境目における強度を保ちつつ、背もたれ部４０を適度に後方へ傾かせることができる。

　背もたれ部４０の下部４０Ｓ及び座面部３０の後部３０Ｕを本体中央部１１と称する。正面視において、本体部１０の左右方向の寸法は、本体中央部１１から背もたれ部４０の上方に向かって次第に増している。これによって、着座者の背部の窮屈さを軽減できる。平面視において、本体部１０の左右方向の寸法は、本体中央部１１から座面部３０の前方に向かって次第に増している（図３参照）。これによって、着座者の臀部の窮屈さを軽減できる。本体中央部１１の左右の側縁１３は、側面視において、後側に凹んだ形状をなして湾曲している。本体中央部１１の左右の側縁１３は、中央窪み部１２を形成している。

　背もたれ部４０の２つの上支持部４２は、図３に示すように、平面視において、背もたれ部４０の左右方向中央側から左右方向両端側へ向かって斜め前方へ延出している。背もたれ部４０の前面における左右方向の両端部は、左右方向中央部よりも前側に位置している。

　座面部３０の前部３０Ｍは、図３に示すように、左右方向中央部に形成された前窪み部３５と、前窪み部３５の左右両側に設けられた２つの前突出部３６と、を有している。座面部３０のうち前窪み部３５の後端より後側の部分の左右方向の寸法は、後方に向かって次第に小さくなっている。前突出部３６は、前窪み部３５の後端から前端に向かって下向きに斜めに突出している（図４参照）。

　本体中央部１１は、図４に示すように、座面部３０の後部３０Ｕから背もたれ部４０の下部４０Ｓまで連続した湾曲形状をなしている。本体中央部１１は、全体として球面状をなしている（図１０参照）。

　本体部１０は、図４に示すように、芯材１４及びクッション１５を有している。芯材１４は、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂からなる。芯材１４は、本体部１０の全体形状を形作る一枚の湾曲した板状をなしている。芯材１４は、単一部材であり、座面部３０の全体及び背もたれ部４０の全体を形成している。芯材１４は、座面部３０の後部３０Ｕ及び背もたれ部４０の下部４０Ｓにおいて連続している。芯材１４の表裏両面のうち表面は、座面部３０の上面及び背もたれ部４０の前面と平行である。芯材１４の表面は、着座者が着座する側の面である。「平行」は、厳密に平行な状態に加えて、概ね平行な状態を含む。芯材１４の裏面は、座面部３０の下面及び背もたれ部４０の後面を構成している。芯材１４の裏面は、着座者が着座する側とは反対側の面である。

　芯材１４は、着座者の姿勢を安定して保持し得る剛性（形状保持性）を有している。芯材１４は、着座等によって力を受けると、着座者の姿勢に影響を与えない程度に弾性変形し得る。背もたれ部４０は、後向きの力を受けると、芯材１４の撓みによって後側に変位する。背もたれ部４０の変位については、後ほど詳しく説明する。

　芯材１４の厚さ寸法は、本体部１０に作用する荷重に耐えうる強度を確保する寸法であり、かつ、着座者の姿勢を正しく保持するために適したたわみを実現する寸法である。芯材１４の厚さ寸法は、芯材１４の表面に垂直な方向の長さ寸法である。

　芯材１４の厚さ寸法は、本体中央部１１において最も大きくされている。本体中央部１１において芯材１４の厚さ寸法は、概ね一定である。本体中央部１１は、図５に示すように、中央窪み部１２の最も窪んでいる部分を含む。芯材１４の厚さ寸法は、本体中央部１１から前側及び上側に向かって次第に薄くなっている。芯材１４の厚さ寸法の最大値は、４．７ｍｍであり、最小値は４．０ｍｍである。芯材１４の表面は、段差のない滑らかな面である。図５は、図４の矢印Ｙａ方向から見た本体部１０に、芯材１４の厚さ寸法が等しい点を連ねて二点鎖線を描いた概略図である。図５に示した二点鎖線は、本体部１０の湾曲形状に沿って湾曲している。芯材１４の厚さ寸法は、湾曲形状に合わせて変化している。

　クッション１５は、図４に示すように、芯材１４の表面に積層するように貼着されている。クッション１５は、ウレタンフォームまたは軟質ウレタンフォームで形成されている。クッション１５は、連泡性の発泡ポリウレタン等で形成されてもよい。クッション１５の厚さ寸法は、芯材１４の厚さ寸法よりも小さく、全体において概ね一定である。

　脚部２０は、図１及び図２に示すように、前後の脚２０Ｍ，２０Ｕと、連結部材２１と、筋交い２４と、を有している。

　前後の脚２０Ｍ，２０Ｕは、左右一対ずつ設けられている。左右の前脚２０Ｍ及び左右の後脚２０Ｕはそれぞれ、上端から下端に向かって左右両側に開いている。前後の脚２０Ｍ，２０Ｕは上端から下端に向かって前後両側に開いている。

　図２に示すように、前脚２０Ｍの高さ寸法Ｈ１は、後脚２０Ｕの高さ寸法Ｈ２よりも大きい。前脚２０Ｍの高さ寸法Ｈ１及び後脚２０Ｕの高さ寸法Ｈ２は、脚２０Ｍ，２０Ｕの下端から脚２０Ｍ，２０Ｕの上端までの鉛直方向の長さ寸法である。前脚２０Ｍの上端が後脚２０Ｕの上端よりも上側に位置することによって、脚付きチェアＬ１は、着座者の前方への滑りを抑制できる。前脚２０Ｍの上端と後脚２０Ｕの上端との高低差は、９ｍｍより小さいことが望ましい。前脚２０Ｍの上端と後脚２０Ｕ上端との高低差は、８ｍｍであると好ましい。４本の脚２０Ｍ，２０Ｕの下端は、図３に示すように、平面視において、本体部１０から四方に突出している。

　連結部材２１は、図６に示すように、４本の脚２０Ｍ，２０Ｕの上端を連結するとともに、座面部３０の下面に固定されている。連結部材２１は、前後方向に延びる縦部材２２と、左右方向に延びる横部材２３とを有している。横部材２３は、図１に示すように水平に延びている。縦部材２２は、図２に示すように、後端から前端に向かって若干上側に傾斜している。

　座面部３０の下面には、図７に示すように、脚部２０を固定する脚固定部１６が設けられている。脚固定部１６は、２つの前脚固定部１６Ｍと、２つの後脚固定部１６Ｕとを有している。２つの前脚固定部１６Ｍは、座面部３０の下面の前側領域Ｒ１に設けられている。２つの後脚固定部１６Ｕは、座面部３０の下面の後側領域Ｒ２に設けられている。前側領域Ｒ１は、底面視において、座面部３０の前後方向中心より前側の領域である。後側領域Ｒ２は、底面視において、座面部３０の前後方向中心より後側の領域である。左右の前脚固定部１６Ｍ及び左右の後脚固定部１６Ｕは、本体部１０の左右方向中心を基準に対称である。前脚固定部１６Ｍの左右方向の間隔と、後脚固定部１６Ｕの左右方向の間隔とは等しい。

　前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕはそれぞれ、座面部３０の下面から下側に突出している。前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕの突出寸法はそれぞれ、外周側へ向かって小さくなっている（図８参照）。

　前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕには、それぞれ締結部材用の穴部１７が形成されている（図８参照）。前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕは、それぞれ複数のリブ１８を有している。複数のリブ１８は、穴部１７を中心に放射状に延出した形態である。複数のリブ１８の外周側は、周壁１９に囲まれている。リブ１８及び周壁１９は、座面部３０の下面から下側に突出している。

　前脚固定部１６Ｍの突出寸法と、後脚固定部１６Ｕの突出寸法とは異なっている。前脚固定部１６Ｍの座面部３０からの突出寸法は、後側よりも前側において大きく、左右両外側よりも内側において大きい。後脚固定部１６Ｕの座面部３０からの突出寸法は、前側よりも後側において大きく、左右内側よりも両外側において大きい。

　前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕは、図８に示すように、芯材１４によって形成されている。前脚固定部１６Ｍの下端及び後脚固定部１６Ｕの下端は、横部材２３の上面に接し、固定されている。

　座面部３０の下面は、図４に示すように、ＸＺ平面においては、球形状に湾曲している。図８に示すように、前脚固定部１６Ｍの前端の突出寸法Ｈ３は、前脚固定部１６Ｍの後端の突出寸法Ｈ４よりも大きい。後脚固定部１６Ｕの前端の突出寸法Ｈ５は、後脚固定部１６Ｕの後端の突出寸法Ｈ６よりも小さい。前脚固定部１６Ｍの前端の突出寸法Ｈ３は、後脚固定部１６Ｕの後端の突出寸法Ｈ６よりも小さい。前脚固定部１６Ｍの後端の突出寸法Ｈ４は、後脚固定部１６Ｕの前端の突出寸法Ｈ５よりも大きい。突出寸法Ｈ３，Ｈ４，Ｈ５，Ｈ６は、前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕの左右方向中心における上端から下端までの鉛直方向の長さ寸法である。

　座面部３０の前側領域Ｒ１の下面は、左右方向においては、図９に示すように、２つの座面湾曲部３３と平行に湾曲している。左右の前脚固定部１６Ｍは、左右の座面湾曲部３３の下端の内側に設けられている。左右の前脚固定部１６Ｍの左右方向における外側端の突出寸法Ｈ７は、左右方向における内側端の突出寸法Ｈ８よりも小さい。突出寸法Ｈ７，Ｈ８は、前脚固定部１６Ｍの前後方向中心における上端から下端までの鉛直方向の長さ寸法である。

　座面部３０の後側領域Ｒ２の下面は、左右方向においては、図１０に示すように、本体中央部１１と平行に湾曲している。左右の後脚固定部１６Ｕの左右方向における外側端の突出寸法Ｈ９は、左右方向における内側端の突出寸法Ｈ１０よりも大きい。突出寸法Ｈ９，Ｈ１０は、後脚固定部１６Ｕの前後方向中心における上端から下端までの鉛直方向の長さ寸法である。

　背もたれ部４０は、後向きの力を受けると、後側に変位する。背もたれ部４０の変位角（背もたれ変位角θと称する。）は、０度～３０度である(図４参照）。背もたれ変位角θは、０度及び３０度を含む。背もたれ変位角θは、５度～１０度であると好ましい。背もたれ変位角θは、背もたれ基準線Ｓ２と背もたれ変位線Ｓ３とのなす鋭角である。

　背もたれ変位角θは、図４に示すように、背もたれ部４０の前面の作用点Ｐ１０に、前方から１００Ｎの押圧力Ｆを加えたときの測定値である。押圧力Ｆは、Ｘ軸に平行な力である。押圧力Ｆは、図１に示すように、背もたれ部４０の前面のうち作用点Ｐ１０に加えられる。作用点Ｐ１０の位置は、着座者が背もたれ部４０にもたれたときに、着座者の背部と背もたれ部４０とにおいて互いに強く接しやすい高さ位置を示す。作用点Ｐ１０の高さ位置は、着座者の腸骨稜の高さ寸法を考慮して求められる。腸骨稜の高さ寸法は、椅子の座面に着座した状態の人の腸骨稜上縁のうち最も高い位置と、座面との間の鉛直方向の寸法である。腸骨稜の高さ寸法は、体格によって１７０ｍｍ～２５５ｍｍ程度の範囲で異なる。

　背もたれ部４０の形状によって、作用点Ｐ１０の位置に力を加えられない場合、例えば窪みや孔が作用点Ｐ１０の位置に形成されていて、作用点Ｐ１０の位置に力を加える部位が存在しない場合には、治具を用いて力を加える。具体的には、ＪＩＳＳ１２０３「家具－いす及びスツール強度と耐久性の試験方法」の「６．５背もたれ当て板」に定められた当て板を背もたれ部４０の前面に当て、作用点Ｐ１０の高さ位置に対応する幅方向中心を押圧することで背もたれ変位角θを測定する。

　背もたれ基準線Ｓ２は、背もたれ基準点Ｐ２を通って鉛直に延びる直線である。背もたれ基準点Ｐ２は、後向きの力がゼロである状態（図４に示す状態）の背もたれ部４０の左右方向中心における最も上端に対応する点である。背もたれ基準点Ｐ２は、背もたれ部４０の左右方向中心における背もたれ部４０の後面に位置する。

　背もたれ変位線Ｓ３は、背もたれ変位点Ｐ４と基準交点Ｐ３とを通る直線である。背もたれ変位点Ｐ４は、後向きの力によって背もたれ部４０が変位した時の背もたれ基準点Ｐ２の位置を示す。

　基準交点Ｐ３は、座面基準線Ｓ１と背もたれ基準線Ｓ２との交点である。座面基準線Ｓ１は、座面基準点Ｐ１を通って前後方向に水平に延びる直線である。座面基準点Ｐ１は、座面部３０のうち着座者の座骨結節部に対応する点である。座面基準点Ｐ１は、着座者の左右の座骨結節部の左右方向中心の真下に位置する。座面基準点Ｐ１は、座面部３０の左右方向中心における座面部３０の下面に位置する。

　座面基準線Ｓ１は、Ｘ軸と平行である。背もたれ基準線Ｓ２は、Ｚ軸と平行である。座面基準点Ｐ１、背もたれ基準点Ｐ２、基準交点Ｐ３、背もたれ変位点Ｐ４、座面基準線Ｓ１、背もたれ基準線Ｓ２、背もたれ変位線Ｓ３は、同一のＸＺ平面の仮想の点及び線である。着座者の座骨結節部に対応する点は、標準的な体格の着座者が標準的な姿勢で脚付きチェアＬ１に着座したときを基準とする。標準的な体格とは、肥満気味及び痩せ過ぎのいずれにも該当しない体格である。標準的な姿勢とは、猫背及び反り背のいずれにも該当しない姿勢である。

　作用点Ｐ１０の高さ位置を、標準的な姿勢で着座した標準的な体格の日本人の座位腸骨稜の平均高さ（２２５ｍｍ）に対応した位置とした場合、背もたれ変位角θは、９．２度である。このときの背もたれ部４０の変位量Ｄは、３６ｍｍである。背もたれ部４０の変位量Ｄは、背もたれ基準点Ｐ２と背もたれ変位点Ｐ４との間のＸ軸に平行な距離である。

　次に、脚付きチェアＬ１の使用例について説明する。着座者は、脚付きチェアＬ１を床面に設置し、本体部１０の上に着座する。本体部１０は、脚部２０に固定されているため、着座者の着座によって傾動等しない。着座者の臀部は、球面凹状の本体中央部１１に支持される。これにより、着座者の臀部は、前後方向及び左右方向から安定的に支持される。着座者の骨盤は立った状態になり、着座者の背筋は自然に伸びる。着座者の両太腿の付け根部は、２つの凹状湾曲形状の座面湾曲部３３に支持される。これによって、着座者の下肢は、平行に揃った状態で支持される。

　着座者の腰部は、背もたれ部４０の前面に支持される。左右の上支持部４２は、後側に適度に弾性変位する。着座者の腰部は、左右の上支持部４２によって、左右両側に傾きにくくなる。背もたれ部４０の左右の側縁４３は、着座者の腸骨の位置を支持する。これによって、着座者の腰部は、無理なく自然に立ち、良好な座り心地を得た正しい姿勢にサポートされる。

　着座者が背もたれ部４０にもたれかかることによって、背もたれ部４０は適度に撓み、着座者に適した角度になる。これによって、背もたれ部４０の過度の倒れや、背もたれ部４０による窮屈さを軽減でき、着座者は、ほとんど疲労を感じることなく、正しい姿勢を長時間維持できる。

　上記のように構成された実施例によれば、以下の効果を奏する。実施例１の脚付きチェアＬ１は、座面部３０と、背もたれ部４０と、座面部３０を支持する脚部２０と、を備えている。座面部３０の後部３０Ｕ及び背もたれ部４０の下部４０Ｓの左右方向両側に中央窪み部１２が形成されている。座面部３０は、脚部２０によって固定されている。背もたれ部４０は、後向きの力を受けると、後側に変位する。この構成によれば、着座者の臀部及び背部は、座面部３０及び背もたれ部４０の左右方向中央部に落ち着きやすいから、着座者の姿勢は、真っ直ぐになりやすい。したがって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　座面部３０のうち着座者の座骨結節部に対応する点を座面基準点Ｐ１、座面基準点Ｐ１を通って前後方向に水平に延びる直線を座面基準線Ｓ１、後向きの力がゼロである状態の背もたれ部４０の左右方向中心における最も上端に対応する点を背もたれ基準点Ｐ２、背もたれ基準点Ｐ２を通って鉛直に延びる直線を背もたれ基準線Ｓ２、座面基準線Ｓ１と背もたれ基準線Ｓ２との交点を基準交点Ｐ３、背もたれ部４０が後側に変位した状態の背もたれ基準点Ｐ２に対応する点を背もたれ変位点Ｐ４、背もたれ変位点Ｐ４と基準交点Ｐ３とを通る直線を背もたれ変位線Ｓ３、背もたれ基準線Ｓ２と背もたれ変位線Ｓ３とのなす鋭角を背もたれ変位角θ、としたとき、背もたれ変位角θは、０度～３０度である。

　この構成によれば、背もたれ部４０は、着座者の背中を支持して適度に変位するから、着座者の背中にフィットしやすい。したがって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　座面部３０及び背もたれ部４０は、座面部３０の後部３０Ｕ及び背もたれ部４０の下部４０Ｓにおいて繋がっている芯材１４を有している。背もたれ部４０は、芯材１４の撓みによって後側に変位する。この構成によれば、座面部３０の後部３０Ｕ及び背もたれ部４０の下部４０Ｓにおいて繋がっている芯材１４の撓みによって変位するから、背もたれ部４０を支持する支持部材は不要である。したがって、脚付きチェアＬ１をシンプルなデザインにできる。

　芯材１４のうち座面部３０の後部３０Ｕ及び背もたれ部４０の下部４０Ｓにおける厚さ寸法は、芯材１４のうち背もたれ部４０の上部４０Ｕ及び座面部３０の前部３０Ｍの厚さ寸法よりも大きい。この構成によれば、背もたれ部４０は、芯材１４の撓みによって適度に変位するから、着座者のすわり心地を良くできる。

　座面部３０の下面は、湾曲した形状をなしている。座面部３０に脚部２０を固定する脚固定部１６は、座面部３０の下面に突出して設けられている。脚固定部１６は、座面部３０の下面の前側領域Ｒ１に設けられた前脚固定部１６Ｍと後側領域Ｒ２に設けられた後脚固定部１６Ｕとを有している。前脚固定部１６Ｍの突出寸法と、後脚固定部１６Ｕの突出寸法とは異なっている。この構成によれば、座面部３０の下面に脚部２０を適正に固定し、座面部３０及び背もたれ部４０を床面に対して正しく設置できる。

　実施例１の脚付きチェアＬ１は、座面部３０と、背もたれ部４０と、座面部３０を支持する脚部２０と、を備えている。座面部３０の上面は着座時に着座者を前傾させる形状である。座面部３０は、脚部２０によって固定されることで、座面部３０の上面の角度が着座者の着座によって変更されないものである。座面部３０は、脚部２０によって固定されていない場合には、座面部３０の上面の角度が着座者の着座によって変更され得る。この構成によれば、座面部３０の上面は着座時に着座者を前傾させる形状であるから、着座者の骨盤を立たせることができる。座面部３０の上面の角度が着座者の着座によって変更されないから、形状設計において狙った通りの姿勢矯正機能を発揮できる。したがって、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　従来、脚付きチェアＬ１の本体部１０と同様の形状を有し、脚部に固定されていない姿勢矯正器具が存在した。この姿勢矯正器具は、座椅子として使用したり、既存の椅子の座面部に載置して使用したりするものであった。そのような姿勢矯正器具においては、座面部が固定されていないことから、座面部前方が下方向の力を加えられることにより座面部の前傾、及び座面部の前傾に連動した背もたれ部の前傾が生じ、着座者が猫背になることを阻止できた。その一方で、載置する椅子の座面形状や、着座者の体重のかけ方によって、座面部の傾斜角度が変化してしまうという課題が存在した。この場合、姿勢矯正器具の備える姿勢矯正機能を最大限に発揮できない可能性があった。しかしながら、脚付きチェアＬ１は、座面部３０が脚部２０によって固定されていることにより、既存の椅子に載置する必要もなく、着座時の着座者の体重のかけ方によって傾斜角度が変更されることもないため、形状設計において狙った通りの姿勢矯正機能を発揮することが可能となる。

　＜実施例２＞
　次に、本発明を具体化した実施例２に係る脚付きチェアＬ２を図１１～図１７によって説明する。本実施例の脚付きチェアＬ２は、クッション１５の厚さ寸法が芯材１４の厚さ寸法よりも大きい点で、実施例１とは相違する。なお、実施例１と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。

　本実施例に係る脚付きチェアＬ２は、実施例１と同様、座面部３０及び背もたれ部４０を有する本体部１０と、脚部２０とを備えている。

　背もたれ部４０の上部４０Ｕは、実施例１と同様、上窪み部４１と、２つの上支持部４２と、を有している。正面視において、背もたれ部４０の上下方向の最大寸法は、背もたれ部４０の左右方向の最大寸法よりも大きい。背もたれ部４０は、実施例１と同様、後向きの力を受けると、後側に変位する。背もたれ変位角θは、実施例１と同様、０度～３０度である。

　座面部３０は、実施例１と同様、座面縁部３１と、座面中央部３２と、を有している。座面部３０の上面には、２つの座面湾曲部３３が形成されている。

　本体中央部１１は、図１１及び図１２に示すように、実施例１と同様、左右両側に形成された中央窪み部１２を有している。本体中央部１１は、座面部３０の後部３０Ｕから背もたれ部４０の下部４０Ｓまで連続した湾曲形状をなしている（図１４参照）。

　本体部１０は、図１４に示すように、実施例１と同様、芯材１４及びクッション１５を有している。クッション１５は、例えばウレタンフォームで形成されている。クッション１５の厚さ寸法は、芯材１４の厚さ寸法よりも大きい。芯材１４の厚さ寸法は、実施例１と同様、本体中央部１１において最も大きくされている。クッション１５の厚さ寸法は、本体中央部１１において最も大きくされている。クッション１５の厚さ寸法は、本体中央部１１から前側及び上側に向かって次第に薄くなっている。芯材１４の厚さ寸法の最大値は、９．１ｍｍであり、最小値は４．０ｍｍである。本体中央部１１におけるクッション１５の表面の曲率半径は、芯材１４の曲率半径よりも小さい。

　脚部２０は、実施例１と同様、前後の脚２０Ｍ，２０Ｕと、連結部材２１と、筋交い２４と、を有している。連結部材２１は、図１５に示すように、平面視における座面部３０の中心においてクロスする２本の斜め部材５１を有している。前脚固定部１６Ｍの下端及び後脚固定部１６Ｕの下端は、斜め部材５１の上面に接し、固定される（図１７参照）。

　座面部３０の下面には、図１６に示すように、実施例１と同様、脚固定部１６が設けられている。脚固定部１６は、２つの前脚固定部１６Ｍと、２つの後脚固定部１６Ｕとを有している。

　前脚固定部１６Ｍの突出寸法及び、後脚固定部１６Ｕの突出寸法は、実施例１と同様、座面部３０の下面の湾曲形状に沿って変化している。後脚固定部１６Ｕの座面部３０からの突出寸法は、実施例１と同様、前側よりも後側において大きく、左右内側よりも両外側において大きい。

　左右の前脚固定部１６Ｍは、図１７に示すように、左右の座面湾曲部３３の下端位置に設けられている。左右の前脚固定部１６Ｍの左右方向における外側端の突出寸法Ｈ７は、左右方向における内側端の突出寸法Ｈ８よりもわずかに大きい。

　実施例２の脚付きチェアＬ２は、実施例１と同様、座面部３０と、背もたれ部４０と、座面部３０を支持する脚部２０と、を備え、背もたれ変位角θは、０度～３０度である。したがって、実施例１と同様、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　実施例２の脚付きチェアＬ２の座面部３０の上面の角度は、実施例１と同様、脚部２０によって固定されることで、変更されないものであるから、形状設計において狙った通りの姿勢矯正機能を発揮できる。したがって、実施例１と同様、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　＜実施例３＞
　次に、本発明を具体化した実施例３に係る脚付きチェアＬ３を図１８～図２４によって説明する。本実施例の脚付きチェアＬ３は、芯材１４とクッション１５との間に中間部材６１を有している点で、実施例２とは相違する。なお、実施例２と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。

　本実施例に係る脚付きチェアＬ３は、実施例２と同様、座面部３０及び背もたれ部４０を有する本体部１０と、脚部２０とを備えている。

　背もたれ部４０の上部４０Ｕは、実施例２と同様、上窪み部４１と、２つの上支持部４２と、を有している。正面視において、背もたれ部４０の上下方向の最大寸法は、背もたれ部４０の左右方向の最大寸法よりも小さい。背もたれ部４０は、実施例２と同様、後向きの力を受けると、後側に変位する。背もたれ変位角θは、実施例２と同様、０度～３０度である。

　座面部３０は、実施例２と同様、座面縁部３１と、座面中央部３２と、を有している。座面部３０の上面には、２つの座面湾曲部３３が形成されている。

　本体中央部１１は、図１９に示すように、実施例２と同様、左右両側に形成された中央窪み部１２を有している。本体中央部１１は、座面部３０の後部３０Ｕから背もたれ部４０の下部４０Ｓまで連続した湾曲形状をなしている（図２１参照）。

　本体部１０は、図２１に示すように、実施例２と同様、芯材１４及びクッション１５を有している。クッション１５の厚さ寸法は、実施例２と同様、芯材１４の厚さ寸法よりも大きい。クッション１５は、例えば低反発ウレタンフォームで形成されている。芯材１４の厚さ寸法は、全体において概ね一定である。クッション１５の厚さ寸法は、本体中央部１１及び背もたれ部４０において大きい。クッション１５の厚さ寸法は、座面部３０において概ね一定である。

　中間部材６１は、芯材１４の表面に平行な板状であり、全体として芯材１４と同様の形状をなしている。中間部材６１の厚さ寸法は、全体において芯材１４の厚さ寸法よりも小さい。芯材１４の厚さ寸法は４ｍｍであり、中間部材６１の厚さ寸法は３ｍｍである。中間部材６１は、外縁に沿って前側に突出して設けられた枠部６２を有している。枠部６２は、クッション１５の外縁部を支持している。

　脚部２０は、実施例２と同様、前後の脚２０Ｍ，２０Ｕと、連結部材２１と、筋交い２４と、を有している。座面部３０の下面には、図２３に示すように、実施例２と同様、脚固定部１６が設けられている。脚固定部１６は、２つの前脚固定部１６Ｍと、２つの後脚固定部１６Ｕとを有している。２つの後脚固定部１６Ｕは、実施例２と比べて後寄りの位置に配置されている。

　前脚固定部１６Ｍの突出寸法、及び後脚固定部１６Ｕの突出寸法は、実施例２と同様、座面部３０の下面の湾曲形状に沿って変化している。後脚固定部１６Ｕの座面部３０からの突出寸法は、図１９に示すように、側面視において視認しにくい程に小さい。図２４に示すように、左右の後脚固定部１６Ｕの左右方向における外側端の突出寸法Ｈ９は、左右方向における内側端の突出寸法Ｈ１０よりも僅かに大きい。

　実施例３の脚付きチェアＬ３は、実施例２と同様、座面部３０と、背もたれ部４０と、座面部３０を支持する脚部２０と、を備え、背もたれ変位角θは、０度～３０度である。したがって、実施例２と同様、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　実施例３の脚付きチェアＬ３の座面部３０の上面の角度は、実施例２と同様、脚部２０によって固定されることで、変更されないものであるから、形状設計において狙った通りの姿勢矯正機能を発揮できる。したがって、実施例２と同様、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　＜実施例４＞
　次に、本発明を具体化した実施例４に係る脚付きチェアＬ４を図２５～図３０によって説明する。本実施例の脚付きチェアＬ４は、クッション１５の表面に外装シート７１を有している点で、実施例２とは相違する。なお、実施例２と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。

　本実施例に係る脚付きチェアＬ４は、実施例２と同様、座面部３０及び背もたれ部４０を有する本体部１０と、脚部２０とを備えている。

　本体中央部１１は、図２６に示すように、実施例２と同様、左右両側に形成された中央窪み部１２を有している。本体中央部１１は、座面部３０の後部３０Ｕから背もたれ部４０の下部４０Ｓまで連続した湾曲形状をなしている（図２８参照）。

　本体部１０は、図２８に示すように、実施例２と同様、芯材１４及びクッション１５を有している。クッション１５の厚さ寸法は、実施例２と同様、芯材１４の厚さ寸法よりも大きい。クッション１５は、例えば低反発ウレタンフォームで形成されている。芯材１４の厚さ寸法は、実施例２と同様、本体中央部１１において最も大きくされている。芯材１４の厚さ寸法の最大値は、７．８ｍｍであり、最小値は６．６ｍｍである。クッション１５の厚さ寸法は、背もたれ部４０において概ね一定である。クッション１５の厚さ寸法は、本体中央部１１から座面部３０の前端側へ向かって小さくなっている。

　外装シート７１は、クッション１５の表面の全体を覆っている。外装シート７１の厚さ寸法は、全体においてクッション１５の厚さ寸法よりも小さい。

　脚部２０は、実施例２と同様、前後の脚２０Ｍ，２０Ｕと、筋交い２４と、を有している。座面部３０の下面には、図３０に示すように、実施例２と同様、脚固定部１６が設けられている。脚固定部１６は、２つの前脚固定部１６Ｍと、２つの後脚固定部１６Ｕとを有している。２つの前脚固定部１６Ｍは、実施例２と比べて前寄りの位置に配置されている。前脚固定部１６Ｍ及び後脚固定部１６Ｕの座面部３０からの突出寸法は、座面部３０の下面の湾曲形状に合わせて変化している。

　実施例４の脚付きチェアＬ４は、実施例２と同様、座面部３０と、背もたれ部４０と、座面部３０を支持する脚部２０と、を備え、背もたれ変位角θは、０度～３０度である。したがって、実施例２と同様、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　実施例４の脚付きチェアＬ４の座面部３０の上面の角度は、実施例２と同様、脚部２０によって固定されることで、変更されないものであるから、形状設計において狙った通りの姿勢矯正機能を発揮できる。したがって、実施例２と同様、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　＜実施例１，２，３に係る脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３と比較例に係る脚付きチェアとの比較＞
　実施例１の脚付きチェアＬ１、実施例２の脚付きチェアＬ２、実施例３の脚付きチェアＬ３、比較例の脚付きチェアについて、座り心地に関する各種項目を比較した。比較例の脚付きチェアは、上面が水平な座面部、前面が平坦な背もたれ部及び脚部を有している。背もたれ部は座面部から斜め後方に立ち上がっている。座面部及び背もたれ部は、一体に設けられている。比較例の脚付きチェアの座面部から背もたれ部までの左右方向の寸法は、概ね一定である。

　比較した項目は、（１）着座者の姿勢のばらつき、（２）腰部屈曲角度、（３）腰部にかかる負担、（４）筋活動量である。

　被験者１０人を対象に所定の条件下で実験を行なった。詳細には、計測空間を取り囲むように動作計測用のカメラを設置し、３次元動作解析装置で被験者の着座姿勢及び背もたれ部の変位を計測した。被験者は、計測用のスーツを着用し、被験者の身体の骨の位置に相当する４４箇所に３次元動作解析装置のマーカーを貼り付けた。各脚付きチェアの座面部及び背もたれ部の複数個所にセンサを取り付けた。

　（１）着座者の姿勢のばらつき、（２）腰部屈曲角度、の比較は、計測された各被験者のマーカー位置に基づいて、各被験者の筋骨格モデルの姿勢を推定して行った。（３）腰部にかかる負担、（４）筋活動量、の比較は、各被験者の着座姿勢、各被験者の背中や腰が脚付きチェアから受ける反力、及び各被験者の足の裏が床面から受ける反力等を考慮して、各被験者の筋肉や腰部にかかる力を推定して行った。

（１）着座者の姿勢のばらつき
　脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３及び比較例の脚付きチェアそれぞれについて、被験者１０人の姿勢の平均値を算出した。その結果、姿勢のばらつきは、比較例の脚付きチェアにおいて最も大きく、実施例１の脚付きチェアＬ１において最も小さかった。姿勢のばらつきが小さいほど、どの被験者が着座しても同じ着座姿勢になりやすいことを示す。姿勢のばらつきが大きいほど、被験者毎にばらばらな着座姿勢になりやすいことを示す。脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３において姿勢のばらつきが少ない主な理由は、以下のようなものである。座面部３０の上面の湾曲形状によって、どの着座者においても座る位置が同一になりやすい。背もたれ部４０の下部４０Ｓは、上側に向かって前側に傾斜しているから、着座者の骨盤を立たせた状態に保持しやすい。左右の上支持部４２は、着座者の腸骨を支えるから、着座者の骨盤を安定した状態に保持しやすい。

（２）腰部屈曲角度
　脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３及び比較例の脚付きチェアそれぞれについて、腰部屈曲角度の平均値を算出した。腰部屈曲角度は、各被験者の骨盤を基準とした胸郭の倒れ角度である。腰部屈曲角度が大きいほど、猫背姿勢が顕著であることを示す。その結果、腰部屈曲角度の平均値は、実施例２の脚付きチェアＬ２＜実施例３の脚付きチェアＬ３＜実施例１の脚付きチェアＬ１＜比較例の脚付きチェアであった。実施例１，２，３の脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３は、比較例の脚付きチェアと比較して腰部屈曲角度を減少させ、猫背になりにくい傾向であった。これは、上記（１）に記載したように、脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３に着座した着座者は、正しい姿勢に導かれやすいからである。

（３）腰部にかかる負担
　脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３及び比較例の脚付きチェアそれぞれについて、腰部にかかる負担の大きさの平均値を算出した。その結果、腰部にかかる負担の大きさは、実施例２の脚付きチェアＬ２＜実施例１の脚付きチェアＬ１＜実施例４の脚付きチェアＬ３＜比較例の脚付きチェアであった。腰部屈曲角度が大きいほど、腰部にかかる負担は増す傾向であった。実施例１，２，３の脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３は、比較例の脚付きチェアと比較して腰部にかかる負担は小さい傾向であった。これは、上記（２）に記載したように、腰部屈曲角度が大きくならないので、頸椎によって椎間板が圧迫されず、腰部にかかる負担を軽減できるからである。

（４）筋活動量
　脊柱起立筋の筋活動量の平均値は、実施例１の脚付きチェアＬ１＜実施例２の脚付きチェアＬ２＜実施例３の脚付きチェアＬ３＜比較例の脚付きチェアであった。内腹斜筋及び外腹斜筋の筋活動量の平均値は、実施例３の脚付きチェアＬ３＜実施例２の脚付きチェアＬ２＜実施例１の脚付きチェアＬ１＜比較例の脚付きチェアであった。実施例１，２，３の脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３は、比較例の脚付きチェアと比較して筋活動量を少なくすることができた。筋活動量が少ないほど、少ない力で姿勢を正しく保てるため疲れにくいことを示す。これは、上記（１）に記載したように、脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３に着座した着座者は、正しい姿勢に導かれやすいため、姿勢を正そうとする筋肉（脊柱起立筋）の働きを抑えられるからである。

（５）まとめ
　実施例１～３に係る脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３は、比較例の脚付きチェアと比べて座面部３０及び背もたれ部４０の特徴的な形状、及び背もたれ部４０の変位角θを有する。これによって、着座者の姿勢のばらつきは低減され、着座者は正しい姿勢になりやすく、着座者の腰部の負担は低減し、着座者は、少ない力で正しい姿勢に保持される。したがって、実施例１～３に係る脚付きチェアＬ１，Ｌ２，Ｌ３によれば、着座者を正しい姿勢に保持しやすくできる。

　＜他の実施例＞
　本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
（１）上記実施例において背もたれ部４０の前面の一部に突出部を設けても良い。例えば突出部は、着座者の仙骨の後方に当たる位置に配置してもよい。突出部の突出端は、背もたれ部４０の左右の両端より前側に設けてもよい。
（２）上記実施例においてクッション１５は一枚の部材であり、クッション１５の表面は、段差のない滑らかな面を形成している。これに限らず、クッション１５は複数の部材であってもよいし、クッション１５の表面は、複数に分割された形態でもよい。また、クッション１５の表面には、装飾等のために凹凸を設けても良い。
（３）上記実施例１では、芯材１４の表面にクッション１５を有している。これに限らず、芯材１４の表面にクッション１５を有していなくても良い。この場合、芯材１４の表面に外装シートをかぶせても良い。
（４）上記実施例において芯材１４及びクッション１５の外側に布製や樹脂製の外装シートを被覆してもよい。
（５）上記実施例において背もたれ部４０の上部４０Ｕは、上窪み部４１と２つの上支持部４２とを有している。これに限らず、背もたれ部の上端縁は、左右方向に概ね水平に延びていてもよい。

（６）上記実施例において芯材１４の厚さ寸法の最小値、最大値をそれぞれ例示した。これに限らず、芯材の厚さ寸法の最小値は、それぞれ１ｍｍ以上であればよい。芯材の厚さ寸法の最大値は、各実施例において例示した最大値の２倍程度以下であればよい。
（７）上記実施例において座面部３０の前部３０Ｍは、前窪み部３５と２つの前突出部３６とを有している。これに限らず、座面部の前端縁は、左右方向に概ね水平に延びていてもよい。
（８）上記実施例において芯材１４は一枚の湾曲した板である。これに限らず、芯材は、２枚の板材を繋ぎ合わせて形成してもよい。
（９）上記実施例において芯材１４の材質を例示した。これに限らず、芯材の材質は、例えばナイロンなどの、粘度が高く硬質の樹脂であればよく、グラスファイバーなどの別素材を混合した樹脂であってもよい。

　θ…背もたれ変位角
　Ｌ１，Ｌ２，Ｌ３，Ｌ４…脚付きチェア
　Ｐ１…座面基準点
　Ｐ２…背もたれ基準点
　Ｐ３…基準交点
　Ｐ４…背もたれ変位点
　Ｒ１…前側領域
　Ｒ２…後側領域
　Ｓ１…座面基準線
　Ｓ２…背もたれ基準線
　Ｓ３…背もたれ変位線
　１２…中央窪み部
　１４…芯材
　１６…脚固定部
　１６Ｍ…前脚固定部
　１６Ｕ…後脚固定部
　２０…脚部
　３０…座面部
　３０Ｍ…座面部の前部
　３０Ｕ…座面部の後部
　４０…背もたれ部
　４０Ｓ…背もたれ部の下部
　４０Ｕ…背もたれ部の上部

Claims

　座面部と、
　背もたれ部と、
　前記座面部を支持する脚部と、を備え、
前記座面部の後部及び前記背もたれ部の下部の左右両側に中央窪み部が形成されており、
　前記座面部は、前記脚部によって固定され、

　前記背もたれ部は、後向きの力を受けると、後側に変位するものである、脚付きチェア。
　前記座面部のうち着座者の座骨結節部に対応する点を座面基準点、
　前記座面基準点を通って前後方向に水平に延びる直線を座面基準線、
　前記後向きの力がゼロである状態の前記背もたれ部の左右方向中心における最も上端部に対応する点を背もたれ基準点、
　前記背もたれ基準点を通って鉛直に延びる直線を背もたれ基準線、
　前記座面基準線と前記背もたれ基準線との交点を基準交点、
　前記背もたれ部が後側に変位した状態の前記背もたれ基準点に対応する点を背もたれ変位点、
　前記背もたれ変位点と前記基準交点とを通る直線を背もたれ変位線、
　前記背もたれ基準線と前記背もたれ変位線とのなす鋭角を背もたれ変位角、としたとき、
　前記背もたれ変位角は、０度～３０度である、請求項１に記載の脚付きチェア。
　前記座面部及び前記背もたれ部は、前記座面部の後部及び前記背もたれ部の下部において繋がっている芯材を有し、
　前記背もたれ部は、前記芯材の撓みによって後側に変位する、請求項１または請求項２に記載の脚付きチェア。
　前記芯材のうち前記座面部の後部及び前記背もたれ部の下部における厚さ寸法は、前記芯材のうち前記背もたれ部の上部及び前記座面部の前部の厚さ寸法よりも大きい、請求項３に記載の脚付きチェア。
　前記座面部の下面は、湾曲した形状をなし、
　前記座面部に前記脚部を固定する脚固定部は、前記座面部の下面に突出して設けられ、前記座面部の下面の前側領域に設けられた前脚固定部と後側領域に設けられた後脚固定部とを有し、
　前記前脚固定部の突出寸法と、前記後脚固定部の突出寸法とは異なっている、請求項１から請求項４のいずれか一項に記載の脚付きチェア。
　座面部と、
　背もたれ部と、
　前記座面部を支持する脚部と、を備え、
　前記座面部の上面は着座時に着座者を前傾させる形状であり、
　前記座面部は、前記脚部によって固定されることで、前記座面部の上面の角度が着座者の着座によって変更されないものであり、
　前記座面部は、脚部によって固定されていない場合には、前記座面部の上面の角度が着座者の着座によって変更され得ることを特徴とする、脚付きチェア。