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JPWO2003010575A1 - 光学素子およびその製造方法 - Google Patents

光学素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

素子中に斜め方向に高精度な切り込みを有する光学素子を提供する。基板1と、基板1上に配置された、光導波路4を含む積層体10とを有する。積層体10は、少なくとも光導波路4が樹脂製であり、積層体10には、光導波路4を横切るように切り込み27が形成され、切り込み27は、基板1の法線方向に対して傾斜している。切り込み27は、砥粒を付着させた円盤状の研削工具を積層体10に切り込むことにより形成されたものである。

Description

技術分野
本発明は、光学素子およびその製造方法に関する。
背景技術
近年のパソコンやインターネットの普及に伴い、情報伝送需要が急激に増大している。このため、伝送速度の速い光伝送を、パソコン等の末端の情報処理装置まで普及させることが望まれている。これを実現するには、光インターコネクション用に、高性能な光導波路デバイスを、安価かつ大量に製造する必要がある。
光導波路デバイスの材料としては、一般的には、ガラスや半導体材料等の無機材料が用いられている。これらの無機材料は、半導体素子の材料として古くから用いられ、これらの無機材料で光導波路を製造する際に半導体素子の製造技術を応用することができるという利点がある。
半導体素子の製造技術では、素子を切断する際や、素子に切り込みを入れる際には、砥粒を表面に付着させたディスク形状のダイシングブレードを回転させて、被加工物を研削する方法が用いられる。
発明の開示
光導波路デバイスにおいて、入射光の一部を反射するハーフミラー等の反射部材を光導波路の途中に挿入すると、伝搬光の一部を反射させることができる。このように光導波路の途中にハーフミラー等の反射部材を挿入するためには、2本の光導波路を突き合わせ、その間に反射部材を挟む構成とするか、もしくは、1本の光導波路の途中に反射部材の厚さ分の間隙を有する切り込みを入れ、この切り込みに反射部材を挿入する構成にすることができる。切り込みに反射部材を挿入する構成は、部品点数が少なくできるという利点がある。
また、光導波路に挿入する反射部材の向きを、反射面が斜め上方に向くように配置した場合には、反射光は光導波路の上方に向かって出射される光導波路デバイスが得られる。この光導波路デバイスを用いることにより、光導波路の上部で、伝搬光の一部を受光したり、さらに別の光導波路に入射させて伝搬させたりすることが可能になる。
光導波路の途中に切り込みを入れる手法としては、半導体素子の製造技術として広く知られている上述のダイシングブレードによる研削方法を用いることができる。光導波路に反射部材を挿入するための切り込みの場合、光導波路の断面での光の散乱を防ぐために、研削面は滑らかである必要がある。
しかしながら、石英ガラス製の光導波路の場合、切り込みを入れる方向が光導波路に対して斜め方向であるときには、切り込みの開口部付近で、切り込みの間隙の幅が広がってしまうという現象が生じ、高精度に切り込みを形成することが困難であった。この現象は、研削面が滑らかに形成できる範囲で、ダイシングブレードの粗さと、切り込み速度を種々に変更しても解消することができなかった。
本発明は、素子中に斜め方向に高精度な切り込みを有する光学素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、以下のような光学素子が提供される。
すなわち、基板と、前記基板上に配置された、光導波路を含む積層体とを有し、
前記積層体は、少なくとも前記光導波路が樹脂製であり、
前記積層体には、前記光導波路を横切るように切り込みが形成され、該切り込みは、前記基板の法線方向に対して傾斜していることを特徴とする光学素子である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の一実施の形態について説明する。
まず、本発明の一実施の形態の光学素子100の構成を図1〜図4を用いて説明する。光学素子100は、シリコン単結晶の基板1上に、光導波路積層体10が搭載された領域と、V溝21が配置された領域20と、発光素子または受光素子を搭載するための電極7が配置された領域30とを有している。光導波路積層体10は、光導波路4を含み、本実施の形態では、光導波路4をポリイミド樹脂により構成していることが特徴である。
光導波路積層体10には、図2のように光導波路4を横切って基板1に達し、しかも、光導波路4に対して斜めに傾斜した切り込み27が形成されている。切り込み27は、基板1の法線に対して角度αで傾斜している。角度αは、5°以上50°以下の所望の角度にすることができ、ここでは30°に設定している。また、切り込み27が光導波路4を横切る面、すなわち切り込み27の切削面は、光導波路4の伝搬光が散乱するのを防ぐために光学的に滑らかな面に形成されている。この切り込み27には、光導波路4を伝搬する光の一部を上向きに反射させる反射フィルム等所望の光学素子を挿入することができる。例えば、反射フィルムとして、波長選択して一部波長の光を反射し、残りを透過するダイクロイックミラーフィルムや、特定の偏光を反射し、残りを透過する偏光ミラーフィルム等のフィルム状光学部材を挿入することができる。なお、切り込み27の間隙の幅tは、挿入する光学素子の厚さに対して広すぎると光のロスが生じるため、挿入する光学素子の厚さに合わせた大きさにすることが望ましい。本実施の形態のように厚さ20μmの反射部材を挿入する場合、切り込み27の幅tを15μm以上50μm以下にすることが望ましく、特に、好ましくは20±5μmである。本実施の形態では、幅tを23μmに設定している。
光導波路積層体10の構造についてさらに説明する。基板1の上面には、基板1を保護し、屈折率を調整するための二酸化珪素層2が備えられ、光導波路積層体10は、二酸化珪素層2の上に搭載されている。光導波路積層体10は、図3のように二酸化珪素層2の上に、順に積層された、有機ジルコニウム化合物層22と、フッ素を含まない樹脂層23と、下部クラッド層3と、光導波路4と、光導波路4を埋め込む上部クラッド層5と、保護層9とを含んでいる。下部クラッド層3、光導波路4および上部クラッド層5は、いずれもフッ素を含むポリイミド系樹脂により形成されている。また、光導波路積層体10の上面には、電極107が配置されている。電極107は、例えば、切り込み27に挿入された反射部材により上方に向けて反射された光を受光する受光素子を搭載するために用いることができる。なお、有機ジルコニウム化合物層22およびフッ素を含まない樹脂層23は、基板1と下部クラッド層3との接着性を高めるために配置されている。
下部クラッド層3および上部クラッド層5は、いずれも、日立化成工業株式会社製OPI−N3105(商品名)を用いて形成したポリイミド膜からなる。下部クラッド層3の膜厚は、約6μm、上部クラッド層5の膜厚は、光導波路4の直上で約10μm、他の部分で約15μmである。光導波路4は、日立化成工業株式会社製OPI−N3305(商品名)を用いて形成したポリイミド膜からなり、その膜厚は約6.5μmである。保護層9は、日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社製PIX−6400(商品名)を用いて形成したポリイミド膜であり、その膜厚は、光導波路4から離れた端部の部分で約5μmである。
有機ジルコニウム化合物層22を構成する化合物としては、種々の化合物を用いることができるが、ここでは、トリブトキシアセチルアセトネートジルコニウムを用いる。有機ジルコニウム化合物層22は、膜厚が50オングストローム以上200オングストローム以下の範囲に収まるように、特に望ましくは、50オングストローム以上150オングストローム以下の範囲に収まるようにむらなく形成されている。これは、膜厚が50オングストロームよりも薄くなると、接着性向上の効果を発揮できず、下部クラッド層3が基板1から剥がれるためである。また、膜厚が200オングストロームを越えると、膜がもろくなるためである。この50オングストローム以上200オングストローム以下という範囲は、有機ジルコニウム化合物の分子層(分子の重なり)でいうと、5分子層以上15分子層以下にほぼ相当する。フッ素を含まない樹脂層23は、ここでは日立化成工業株式会社製PIQ(商品名)を用いて形成したポリイミド層である。その膜厚は、約0.23μmである。
基板1上の領域20に配置されたV溝21は、光ファイバを搭載するためのものである。V溝21は、予め定められた径の光ファイバを搭載した場合、光導波路4とアライメントした状態となるよう、その深さおよび幅が設計されている。したがって、例えば、電極7上に発光素子を搭載した場合には、発光素子から発せられた光は、光導波路4に入射して、これを伝搬し、切り込み27に挿入された反射部材を通過した後、さらに光導波路4を伝搬し、光導波路4から出射され、V溝21に搭載された光ファイバに高効率で入射する。また、電極7上に受光素子を搭載した場合には、光ファイバを伝搬してきた光が、光ファイバから出射されると高効率で光導波路4に入射して、これを伝搬し、一部は切り込み27に挿入された反射部材によって上方に出射され、残りはさらに光導波路4を伝搬し、受光素子に向かって出射され、受光素子で受光される。
V溝21は、シリコン単結晶の基板1を異方性エッチングすることにより形成された深さ約100μmの溝であり、断面はV字型である。V溝21が配置された領域20と光導波路積層体10との境界には、図1、図2、図4のように光導波路積層体10の端面を切断する際に形成された切り込み25が存在している。同様に、電極7の領域30と光導波路積層体10との境界にも切り込み26が存在している。領域30の電極7の両脇には位置合わせマーク31,32が配置されている。また、切り込み25の位置には、切り込み25が形成される以前には位置合わせマーク33が配置されていた。これら位置合わせマーク31,32,33は、V溝21を形成する際に同時に異方性エッチングにより形成された凹部である。なお、位置合わせマーク33は、切り込み25を形成する際の基板1の研削により除去されている。
切り込み25は、図2のようにV溝21の底部よりも深くまで達していることが好ましい。というのは、V溝21は、上述のように異方性エッチングにより形成されるため、光導波路積層体10側の側面が図8のように傾斜するが、図2のように切り込み25を深く形成することにより、傾斜部分を除去できるからである。これにより、V溝21に光ファイバを搭載した場合に、光ファイバの端面を光導波路積層体10の端面に密着させることができ、光ファイバと光導波路4との接合効率を高めることができる。なお、使用する光ファイバの径が小さい場合には、V溝21の深さが浅いため、異方性エッチングにより光導波路積層体10側の側面が傾斜しても、光ファイバと光導波路4との結合効率に大きな影響を与えないこともある。この場合には、図8に示したように、切り込み25の深さを、V溝21よりも浅くすることも可能である。
つぎに、本実施の形態の光学素子の製造方法について、図5を用いて説明する。
ここでは、基板1としてシリコンウエハを用意し、この基板1の上に図1の構造を縦横に多数配列して形成し、後の工程でダイシングにより切り離して、個々の光学素子100に分離する。これにより、多数の図1の光学素子100を量産することができる。よって、成膜やパターニング等は、ウエハ状の基板1全体で一度に行う。
まず、ウエハ状の基板1の上面全体に、二酸化珪素層2を熱酸化法や気相堆積法等により形成した後、フォトリソグラフィとシリコン単結晶の異方性を利用したウエットエッチングによりV溝21を図5のように配列して形成する。このとき、図4に示した位置合わせマーク31,32,33として用いる凹部もV溝21と同時に形成しておく。
このウエハ状の基板1の上に金属膜を成膜してパターニングすることにより、図1の電極7を形成する。これにより、図5のように、ウエハ状の基板1には、V溝21と電極7とが多数配列されて形成される。なお、電極7を形成する際、電極7の位置決めを位置合わせマーク31,32を用いて行う。これにより、V溝21に対して電極7の位置を高精度に位置合わせして形成することができる。
つぎに、図5のウエハ状の基板1の全体に有機ジルコニウム化合物層22を形成する。まず、有機ジルコニウム化合物溶液を基板1全体にスピンコートによって塗布した後、得られた塗膜を160℃で5分程度加熱して乾燥させ、有機ジルコニウム化合物層22を形成する。有機ジルコニウム化合物溶液として、トリブトキシアセチルアセトネートジルコニウムをブタノールに溶解して、1重量%溶液に調合したものを用いる。
つぎに、有機ジルコニウム化合物層22の上に、日立化成工業株式会社製PIQ(商品名)をスピンコートで塗布し、得られた塗膜を加熱して溶媒を蒸発させ、さらに加熱して硬化させることにより、フッ素を含まない樹脂層23を形成する。フッ素を含まない樹脂層23の厚さは、0.23μmとなるようにスピンコートの条件を制御する。
つぎに、ウエハ状の基板1上の上面のうち、完成後の光学素子で光導波路積層体10が配置されていない領域20,30となる部分について、フッ素を含まない樹脂層23と、有機ジルコニウム化合物層22を除去する。ウエハ状の基板1には光学素子を縦横に配列して製造しているため、ウエハ状の基板1の上面のうち、領域20および領域30は、図6のように光導波路積層体10の両脇の帯状の部分である。この帯状の部分からフッ素を含まない樹脂層23と有機ジルコニウム化合物層22とを除去しておくことにより、下部クラッド層3がこの帯状部分では基板1から剥がれやすくなるため、後述の工程で、基板1の領域20,30の部分から光導波路積層体10を帯状に剥がして除去することが可能になる。
基板1上の領域20,30からフッ素を含まない樹脂層23と有機ジルコニウム化合物層22とを除去する方法について、具体的に説明する。まず、ウエハ状の基板1の全面にレジスト膜を塗布により形成する。ここでは、レジスト液として、OFPR800(東京応化工業株式会社製)を用い、これをスピン塗布し、100℃で乾燥することによりレジスト膜を形成する。この後、水銀ランプでフォトマスクの像を露光する。フォトマスクは、光導波路積層体10を形成すべき部分にのみレジスト膜が残るように形成されている。その後、レジスト膜を現像する。現像液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)2.38重量%溶液を用いる。これによりレジスト膜のみならず、フッ素を含まない樹脂層23もウエットエッチングされ、両者をほぼ除去することができる。このとき、V溝21の角の部分ではレジスト膜とフッ素を含まない樹脂層23が一部残存する。そこで、この状態で、もう一度、先ほどのフォトマスクを用いて露光し、TMAHにより現像を行う。これにより、V溝21内に残っていたレジスト膜とフッ素を含まない樹脂層23とを完全に除去することができる。この方法は、レジスト膜の露光および現像を繰り返すという簡単な工程で、フッ素を含まない樹脂層23をV溝21から完全に除去できるという利点がある。この後、フッ酸を用いたウエットエッチングまたは反応性イオンエッチングにより、有機ジルコニウム化合物層22を除去する。有機ジルコニウム化合物層22は、膜厚が非常に薄いため、V溝21の内部の層もウエットエッチングまたは反応性イオンエッチングにより除去することができる。最後に、レジスト膜を除去する。
つぎに、ウエハ状の基板1の上面全体に前述のOPI−N3105をスピン塗布して材料溶液膜を形成する。その後、乾燥器で100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱することにより溶媒を蒸発させ、続けて370℃で60分加熱することにより硬化させ、厚さ6μmの下部クラッド層3を形成する。
この下部クラッド層3の上に、前述のOPI−N3305をスピン塗布して材料溶液膜を形成する。その後、乾燥器で100℃で30分間、次いで、200℃で30分間加熱することにより溶媒を蒸発させ、続けて350℃で60分間加熱することにより硬化を行い、光導波路4となる厚さ6.5μmのポリイミド膜を形成する。
つぎに、このポリイミド膜をフォトリソグラフィにより光導波路4の形状にパターニングする。パターニングは、レジストパターン層をエッチングマスクとして、酸素イオンを用いた反応性イオンエッチング(O−RIE)により行う。これにより、図6のように基板1上に多数配列して一度に形成することができる。その後、レジストパターン層を剥離する。なお、レジスト膜によりエッチングマスクを形成する際に、V溝21を形成する際に同時に形成しておいた位置合わせマーク33を用いることにより、V溝21と正確に位置合わせされた光導波路4を形成することができる。
つぎに、光導波路4および下部クラッド層3を覆うように、OPI−N3105をスピン塗布する。得られた材料溶液膜を、乾燥器で100℃で30分間、次いで、200℃で30分間加熱して材料溶液膜中の溶媒を蒸発させ、350℃で60分間加熱することによりポリイミド膜の上部クラッド層5を形成する。
さらに、上部クラッド層5の上面に、PIX−6400をスピン塗布し、乾燥器で100℃で30分間、200℃で30分間加熱して溶媒を蒸発させ、続けて、350℃で60分間加熱して、上面がほぼ平坦で光導波路4から離れた端部の部分で厚さ約5μmのポリイミド膜の保護層9を得る。
さらに、保護層9の上に電極107となる金属膜を成膜した後、これをフォトリソグラフィの技術によりパターニングし、電極107を形成する。
なお、この状態では、マーク31,32,33を用いて、光導波路4、V溝21,電極7、電極107等の相互の位置関係が設計した通りの関係にあるかどうかの検査を行うことができる。すなわち、マーク31,32,33は、V溝21と同時に形成された凹部であるため、V溝21との正確な位置関係にある。したがって、マーク31,32,33と光導波路4,電極7,電極107との位置関係をそれぞれ検査することにより、V溝21との直接の位置関係を検査しなくとも、光導波路4、V溝21,電極7、電極107の相互の位置関係を検査することができる。
つぎに、下部クラッド層3から保護層9までの各層は、これらが不要な領域20および30にも配置されているため、これを剥がして除去する。すなわち、図6のように領域20と光導波路積層体10との境界、および、光導波路積層体10と領域30との境界にそれぞれダイシングにより切り込み25,26を入れ、下部クラッド層3から保護層9までの各層を切断する。このとき、ダイシングによる切り込みの深さは、光導波路積層体10は切断されるが、基板1は切り離さない深さにする。また、切り込み25の深さは、上述したように、V溝21の光導波路積層体10側の側面の傾斜部を除去できるように、V溝21よりも深くすることが望ましい。先の工程で、領域20および領域30の基板1の上面からは、有機ジルコニウム化合物層22とフッ素を含まない樹脂層23が除去されているため、領域20および領域30では、下部クラッド層3と基板1との密着力は小さい。したがって、領域20および領域30の上に搭載されている下部クラッド層3から保護層9間での各層は、切り込み25,26を入れたことにより、ウエハ状の基板1から帯状に容易に剥がすことができる。これにより、図6のウエハ状の基板1において、領域20および領域30では基板上面が露出される。
つぎに、ウエハ状の基板1のまま、光導波路積層体10にダイシングブレード(砥粒を表面に付着させたディスク形状の研削工具)を斜め方向(基板1の法線に対して30度)に切り込み、切り込み27を形成する。使用するダイシングブレードの粗さは、JIS規格相当品で3000番以上4500番以下とする。粗さ3000番未満のダイシングブレードを用いると、粗すぎて、切り込み27の研削面が粗い面となり、光導波路4の伝搬光を散乱する。一方、粗さ4500番を超えるダイシングブレードを用いた場合には、細かすぎて、ダイシングブレードが目詰まりし、光導波路積層体10が基板1から剥がれる恐れがある。本実施の形態では、粗さ4000番のダイシングブレードを用いる。また、ダイシングブレードの厚さは、20μmのものを用いた。また、ダイシングブレードの送り速度、すなわち切り込む速度は1.0mm/s以上5.0mm/s以下とする。この範囲の送り速度は、半導体素子製造時のダイシングブレードの送り速度の約1/10である。このようにゆっくりした送り速度でダイシングブレードを、ポリイミド樹脂製の光導波路積層体10に切り込むことにより、切削面を研磨面と同程度に光学的に滑らかな面に形成することができる。また、形成された切り込み27の形状は、底部から開口部まで間隙の幅tが23μmで一定であり、高精度に形成されていた。また、切削面が光学的滑らかであるため、仕上げのための研磨等は不要である。
つぎに、図7(a)、(b)のようにウエハ状の基板1をダイシングにより切断することにより、短冊状に切り出し、さらに図7(c)、(d)のように短冊状の基板1をダイシングにより、個々の光学素子100に切り出し、光学素子100を完成させる。なお、基板1を切断するダイシング工程の手順は、この手順に限られるものではなく、図7(a)の工程で縦横にメッシュ状にダイシングして図7(d)のように光学素子100を形成することも可能である。
上述してきた本実施の形態の光学素子100は、光導波路積層体10を樹脂製にしたことにより、光導波路4の途中に傾斜した切り込み27をダイシングにより高精度に形成することが可能になった。このため、切り込み27に反射部材等の光学素子を挿入することができ、伝搬光の一部を上方に向けて出射させることができる、多機能な光学素子100を安価に量産することが可能である。
本実施の形態の光学素子は、光導波路4が直線形状であったが、光導波路積層体10の光導波路4の形状は、光学素子として必要とされる機能に合わせて直線形状に限らずy分岐やx型等の所望の形状にすることができる。それに応じて、切り込み27を、複数箇所に形成することも可能である。この場合も本実施の形態の製造方法ではダイシングによって切り込み27を形成できるため、所望の位置に所望の数の切り込み27を容易に形成できる。光導波路の形状に合わせて、V溝21や、電極7,107を複数備える構成にすることも可能である。
また、完成後の光学素子において、電極7や電極107に、発光素子や受光素子を搭載する場合には、マーク31,32を用いて、電極7や電極107に搭載した素子の位置が正しい位置かどうかの検査を行うことができる。また、マーク31、32を基準として、光導波路4が正しい位置に形成されているかどうかの検査を行うことができる。すなわち、マーク31,32を基準として、電極7や電極107に搭載した素子の位置を検査することにより、これらの素子と光導波路4やV溝21に搭載した光ファイバとの位置関係を検査することができる。これにより、完成後の素子の結合効率を検査することが可能である。
なお、上述の実施の形態では、マーク31、32、33をV溝21と同時に形成する例について説明したが、必ずしも同時に形成しなくてもよく、V溝21を形成した後、V溝21と位置合わせした状態でマーク31、32、33を形成することも可能である。
なお、本発明で光学素子とは、基板として、ガラス、石英等の無機材料、シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウム、チタン等の半導体や金属材料、ポリイミド、ポリアミド等の高分子材料、またはこれらの材料を複合化した材料を用いて、これら基板の上に、光導波路、光合波器、光分波路、光減衰器、光回折器、光増幅器、光干渉器、光フィルタ、光スイッチ、波長変換器、発光素子、受光素子あるいはこれらが複合化されたものなどを形成したものを指す。上記の基板上には、発光ダイオード、フォトダイオード等の半導体装置や金属膜が形成されることもあり、更に基板の保護や屈折率調整などのために、基板上に二酸化珪素、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化タンタルなどの被膜が形成されることもある。
上述してきたように、本発明によれば、素子中に斜め方向に高精度な切り込みを有する光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施の形態の光学素子100の構造を示す斜視図である。
図2は、図1の光学素子のA−A’断面図である。
図3は、図1の光学素子のB−B’断面図である。
図4は、図1の光学素子の上面図である。
図5は、本発明の一実施の形態の光学素子100の製造方法を説明するためのウエハ状の基板1の上面図である。
図6は、本発明の一実施の形態の光学素子100の製造方法を説明するためのウエハ状の基板1の上面図である。
図7(a)〜(d)は、本発明の一実施の形態の光学素子100の製造方法においてウエハ状の基板1を切り出す工程を示す説明図である。
図8は、図1の光学素子において切り込み25の深さを浅くした場合の形状を示すための断面図である。

Claims (8)

  1. 基板と、前記基板上に配置された、光導波路を含む積層体とを有し、
    前記積層体は、少なくとも前記光導波路の部分が樹脂製であり、
    前記積層体には、前記光導波路を横切るように切り込みが形成され、該切り込みは、前記基板の法線方向に対して傾斜していることを特徴とする光学素子。
  2. 請求項1に記載の光学素子において、前記切り込みは、間隙の幅が50μm以下であることを特徴とする光学素子。
  3. 請求項1または2に記載の光学素子において、前記積層体の上面には、前記切り込みの脇の前記光導波路の上部に、電極が配置されていることを特徴とする光学素子。
  4. 基板上に、光導波路を含む積層体を形成する第1工程と、
    砥粒を付着させた円盤状の研削工具を前記積層体に切り込んで、前記光導波路を横切る切り込みを形成する第2工程とを有し、
    前記第1工程は、前記積層体のうち少なくとも光導波路の部分を樹脂により形成し、
    前記第2工程は、前記研削工具を、前記基板の法線方向に対して傾斜させて切り込みことにより、前記基板の法線方向に対して傾斜した前記切り込みを形成することを特徴とする光学素子の製造方法。
  5. 請求項4に記載の光学素子の製造方法において、前記第2工程は、前記研削工具を1.0mm/s以上5.0mm/s以下の速度で前記積層体に切り込むことを特徴とする光学素子の製造方法。
  6. 請求項4または5に記載の光学素子の製造方法において、前記第2工程は、前記研削工具として、粗さがJIS規格3000番以上4500番以下のものを用いることを特徴とする光学素子の製造方法。
  7. 光導波路用基板であって、
    光導波路を搭載するための領域と、光ファイバを搭載するため溝と、マークとを有することを特徴とする光導波路用基板。
  8. 請求項7に記載の光導波路用基板において、前記マークは、前記溝を形成する工程で同時に形成された凹部であることを特徴とする光導波路用基板。
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