JPWO2005028105A1 - 低級炭化水素の芳香族化触媒とその製造方法並びに芳香族化合物と水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは地球環境温暖化対策として最も効果的なエネルギーと考えられ、その利用技術に大いに関心が高まってきている。メタン資源はそのクリーン性を活かして、次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として着目されているが、本発明はメタン等からの低級炭化水素からプレスチック類等の化学製品の原料であるベンゼンやナフタレン類等を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを効率的に製造できる触媒化学変換技術に関するものである。
そこで、モリブデン等を多孔質のメタロシリケートに担持してなる触媒が提案されている(例えば特許文献1(特開平10−272366号公報)及び特許文献2(特開平11−60514号公報))。これらの公報によると、担体として7オーグストロングの細孔経を有する多孔質のメタロシリケートを採用し、これに触媒材料を担持している。この触媒を用いた実験によると、低級炭化水素が効率良く芳香族化され、これに付随して高純度の水素が得られることが確認されている。特に特許文献2においては、モリブデンのみばかりではなく第二成分としてモリブデン以外の金属類を添加することで前記触媒の特性を向上させたことが記載されている。
JOURNAL OF CATALYSIS,1997年,pp.165,pp.150−161
そこで、本発明の低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法は、モリブデンを担持したメタロシリケートを、炭化処理の際に還元性ガスを混合して処理を行うことにより低級炭化水素の芳香族化触媒を得ている。ここで、触媒を担持する方法としては、含浸方法又はイオン交換方法等が挙げられ、前述の方法によって担持する際に用いるモリブデン化合物としては、アンモニウム塩,硝酸塩の他、塩化物,シュウ酸塩,リン酸塩等の化合物が挙げられる。また、昇華性の化合物を用いて担体に蒸着担持する方法も挙げられる。前記還元性ガスとしては、例えば、メタン,エタン,ブタン等の低級炭化水素と水素とを含んだガス、水素ガスまたはアンモニアガス等が挙げられる。
そして、前記芳香族化触媒の製造方法においてメタロシリケートを炭化処理に供するにあたり、メタロシリケートにはモリブデンの他に少なくとも一種以上の金属成分を共担持させるとなおよい。金属成分としては鉄族元素がある。具体的な鉄族元素としては、鉄、コバルトまたはニッケル等が挙げられる。さらには、これらの金属元素若しくは他の金属元素を適宜組み合わせて担持させてもよい。
本発明の製造方法で得られた低級炭化水素の芳香族化触媒は、低級炭化水素含有ガスと接触反応させると、従来の製造方法と比較して、経時的な触媒の劣化等による効率低下が少ないので、安定して芳香族化合物と水素とを生成できることが見出されている。
また、本発明の芳香族化触媒におけるメタロシリケートとしては、例えばアルミノシリケートの場合、シリカおよびアルミナから成る4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質体であり、モレキュラーシーブ5A,フォジャサイト(NaYおよびNaX),ZSM−5,MCM−22等が例示される。さらに、リン酸を主成分とするALPO−5,VPI−5等の6〜13オングストロームのミクロ細孔からなる多孔質体、チャンネルからなるゼオライト担体、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(10〜1000オングストローム)の筒状細孔(チャンネル)を有するFSM−16やMCM−41等のメゾ細孔多孔質担体なども例示される。また、前記アルミナシリケートの他に、シリカおよびチタニアからなるメタロシリケート等も挙げられる。
本発明の低級炭化水素の芳香族化触媒は、粉末状または中空円柱状、ペレット状、ハニカム状、リング形状若しくはその他の形状の形態で使用される。メタロシリケートを前記形状に加工するために、例えば粘土等の無機バインダーやガラス繊維等の無機フィラーをメタロシリケートに対して1〜20重量%の範囲で配合してもよい。
本発明の製造方法によって得られた低級炭化水素の芳香族化触媒によれば、経時的な触媒劣化等による効率低下が少ないので、より一層、安定且つ効率良く芳香族化合物と水素の製造が可能となる。このことは、モリブデンを担持した芳香族化触媒を採用した水素及び芳香族化合物の製造方法において、水素及び芳香族化合物の量産性を制御するシステムの構築化にも大いに寄与する。
図1Bは、比較例1に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化である。
図2Aは、比較例1及び実施例1,2,3並びに4に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化である。
図2Bは、比較例1及び実施例1,2,3並びに4に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化である。
図3Aは、比較例1及び2に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化である。
図3Bは、比較例1及び2に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化である。
図4Aは、比較例2及び実施例5,6,7並びに8に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化である。
図4Bは、比較例2及び実施例5,6,7並びに8に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化である。
図5Aは、比較例1及び実施例2,6,9並びに10に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化である。
図5Bは、比較例1及び実施例2,6,9並びに10に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化である。
本発明の低級炭化水素の芳香族触媒化(以下本実施形態において触媒と称する)は、メタロシリケートを他の無機フィラーと配合させた無機成分を有機バインダー及び水分と共に配合して成形し、これを乾燥及び焼成して焼成体を得て、この焼成体にモリブデン成分またはこれに第二の金属成分として鉄族元素を適宜担持した後に、還元性ガスを混合して炭化処理することで得られる。
前記メタロシリケートとしては、例えばアルミノシリケートの場合、シリカおよびアルミナから成る4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質体であり、モレキュラーシーブ5A,フォジャサイト(NaYおよびNaX),ZSM−5,MCM−22等が例示される。さらに、リン酸を主成分とするALPO−5,VPI−5等の6〜13オングストロームのミクロ細孔からなる多孔質体、チャンネルからなるゼオライト担体、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(10〜1000オングストローム)の筒状細孔(チャンネル)を有するFSM−16やMCM−41等のメゾ細孔多孔質担体なども例示される。また、前記アルミナシリケートの他に、シリカおよびチタニアからなるメタロシリケート等も挙げられる。
前記無機フィラーは粘土等の無機バインダーやガラス繊維等の補強用無機材料が挙げられ、触媒の全無機成分に対して15〜25重量%配合される。また、前記有機バインダーは水分と共に前記メタロシリケート及び無機フィラーとを混錬して成形できるものであれば既知のものでよい。
そして、上記材料を配合してからの成形にあたっては高圧成形法を採用している。炭化水素を改質するための触媒担体は数μmから数百μmの粒径の粒子を用いて流動床触媒の形態で使用することが通常である。かかる触媒は触媒担体を有機バインダー、無機バインダー(通常は粘度を使用)及び水と混合してスラリー状としてスプレードライヤーで造粒成形した後に焼成するのが常套の手段である。この場合、成形圧力が小さいため、焼成強度を確保するために焼成助材として加える粘土の添加量は40〜60重量%程度必要になる。本発明の触媒の製造過程における成形工程では高圧成形法を採用することで、粘土等の無機バインダーの添加量を触媒において15〜25重量%までに低減、すなわち触媒におけるメタロシリケート成分を75〜85重量%までに高めることができ、スプレードライヤーで造粒成形して得た触媒よりも、実質的な触媒活性が高くなる。高圧成形法の具体的な手段として例えば真空押し出し成形機等がある。また、このときの押し出し圧力は70〜100kg/cm2の範囲で設定するとよい。尚、成形体の形状は、触媒の使用形態に応じて、粉末状または中空円柱状、ペレット状、ハニカム状、リング形状若しくはその他の形状に形成される。
得られた成形体は成形時に添加した水分を除去できる程度に適温一定時間乾燥させればよい。また、焼成は昇温及び降温速度ともに30〜50℃/時としている。このとき、前記配合した有機バインダーが瞬時に燃焼しないように、250〜450℃の温度範囲の中に2〜5時間程度の温度キープを2回実施するとよい。バインダーを除去するようにした昇温及び降温速度が前記速度以上であり、バインダーを除去するキープ時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼し、焼成体の強度が低下するためである。焼成温度は725〜800℃の範囲とすればよい。700℃以下では担体の強度低下、800℃以上では特性の低下が起こるためである。
次に、前記得られた焼成体に金属成分を担持するにあたり、発明者らはモリブデンの担持方法の検討も行なっており、これに関する発明について特願2002−260706にて出願している。この発明では、モリブデンを含浸する場合にはモリブデン酸アンモニウム水溶液を使用しているが、コバルト、鉄、ニッケルのいずれかをモリブデンと共に担持する場合には、含浸時にモリブデン酸アンモニウム水溶液にそれぞれ硝酸コバルト、硝酸鉄、硝酸ニッケルを加えている。このとき、モリブデン担持量は例えば前記担体に対して6重量%とすればよい。また共に含浸させる金属成分(コバルト、鉄、ニッケル)はモル比で例えばコバルト、鉄、ニッケル:モリブデン=0.2:1の比率とするとよい。前記モリブデン担持量及び前記金属成分とモリブデンとのモル比率はこれに限定されることなく適宜調整されるものとする。このように、メタロシリケートにモリブデンのみならず、鉄、コバルト、ニッケル等の鉄族金属元素を第二成分として同時に担持することにより触媒による水素と芳香族化合物の生成速度の安定性が向上する。尚、焼成体に含浸されたモリブデン及び前記金属成分は一定の温度及び時間で酸化処理することで酸化物としてこの焼成体に担持される。
前記含浸処理された焼成体の酸化処理によって得た触媒前駆体を炭化処理するにあたっては、従来の炭化処理に基づくメタンガス及びアルゴンガスの雰囲気ではなく、還元性ガスを混合して350〜750℃の温度のもと2〜24時間加熱処理している。還元性ガスとしては、メタンと水素とを含んだガス、水素ガスまたはアンモニアガス等が例示される。例示された還元ガスは適宜組み合わせて用いてもよい。さらには、前記従来の炭化処理法に供されるメタンガスとアルゴンガスとを組み合わせてもよい。
以上のようにして製造された触媒は前述のように加圧成形法が採用されているので有形物となっており主に固定床式の反応装置に充填される。そして、この反応装置に低級炭化水素を含んだガスを供して一定の温度、圧力、空間速度及び滞留時間のもとで前記触媒と接触反応させることで、安定した生成速度での芳香族化合物と水素の製造が可能となる。尚、前記低級炭化水素としてはメタンの他、エタン、エチレン、プロパン、プロプレン、n−ブタン、イソブタン、n−ブテン及びイソブテン等が例示される。
次いで、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.芳香族化触媒の製造
触媒の主成分であるメタロシリケートにはアンモニウム型ZSM−5(SiO2/Al2O3=25〜60)を採用し、これを他の無機成分と有機バインダーと共に混練して成形し乾燥さらに焼成し、その後、金属成分を含浸させてから酸化及び炭化処理に供して芳香族化触媒(以下、触媒と称する)得た。以下に比較例及び実施例に係る触媒の製造の各工程について説明する。
(比較例1)
1)触媒構成成分の配合
触媒の構成成分とその配合比率(重量%)以下に示した。
無機成分:有機バインダー:水分=65.4:13.6:21.0
また、無機成分の構成成分とその配合比率(重量%)以下に示した。
ZSM−5:粘土:ガラス繊維=82.5:10.5:7.0
2)成形 無機成分と有機バインダーと水分とを前記比率で配合し、ニーダ等の混練手段によって混練した。次いで、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径5mm)に成形した。このときの成形圧力は70〜100kg/cm2とした。そして、この押し出し成型で得られた径5mmの棒状担体を長さ6mmに切断して成形体を得た。
3)乾燥・焼成 成形時に添加した水分を除去するために、前記成形体を100℃のもとで約5時間乾燥させた後に焼成した。焼成温度は725〜800℃の範囲とした。昇温及び降温速度はともに30〜50℃/時とした。尚、焼成の際、有機バインダーが瞬時に燃焼しないように、温度範囲250〜450℃のもとでの2〜5時間程度の温度キープを2回実施することでバインダー成分を除去した。
4)含浸 前記得られた焼成体をモリブデン酸アンモニウム水溶液に浸して、この焼結体にモリブデン成分を含浸させた。モリブデン担持量は焼結体重量に対して6重量%となるようにした。
5)酸化処理 前記焼結体に含浸させた金属塩を分解、酸化して酸化モリブデンにするために550℃のもと10時間焼成して触媒前駆体を得た。
6)炭化処理1 従来の触媒前駆体の炭化処理法に基づく。モリブデンのみを含浸させ酸化処理した触媒前駆体を空気雰囲気のもと550℃まで昇温し、この状態を1時間維持させた後、雰囲気を9CH4+Arの反応ガスに切り替え、650℃まで昇温し、この状態を1時間維持した。その後、750℃まで昇温した。このようにしてモリブデンのみを担持した比較例1に係る触媒を得た。
炭化処理2 モリブデンを含浸させ酸化処理した触媒前駆体をCH4+4H2混合ガス雰囲気のもと700℃まで昇温し、この状態を2時間維持させた後、雰囲気を9CH4+Arの反応ガスに切り替え、750℃まで昇温した。このようにしてモリブデンのみを担持した実施例1に係る触媒を得た。
炭化処理3 モリブデンを含浸させ酸化処理した触媒前駆体をC4H10+11H2混合ガスの雰囲気及び350℃のもと24時間処理、その後550℃に昇温した段階で雰囲気を9CH4+Ar反応ガスに切り替え、750℃まで昇温し、この状態を10分間維持した。このようにしてモリブデンのみを担持した実施例2に係る触媒を得た。
炭化処理4 モリブデンを含浸させ酸化処理した触媒前駆体をH2ガスの雰囲気及び350℃のもと24時間処理、その後550℃に昇温した段階で雰囲気を9CH4+Ar反応ガスに切り替え、750℃まで昇温し、この状態を10分間維持した。このようにしてモリブデンのみを担持した実施例3に係る触媒を得た。
炭化処理5 モリブデンを含浸させ酸化処理した触媒前駆体をNH3ガスの雰囲気及び700℃のもと2時間窒化処理、その後純N2ガスの雰囲気で1時間処理し、一度室温まで降温さらにCH4+4H2混合ガスの雰囲気のもと700℃まで昇温し、この状態を2時間維持する。このようにしてモリブデンのみを担持した実施例4に係る触媒を得た。
(比較例2)
比較例2に係る触媒は、モリブデンとコバルトとを担持したもので、含浸工程以外は、比較例1に係る触媒の製造工程と同じ方法で製造した。
含浸工程では、硝酸コバルトが添加されたモリブデン酸アンモニウム水溶液に前記1)〜3)の工程で得られた焼成体を浸して、この焼結体にモリブデン成分とコバルト成分を含浸させた。モリブデン担持量は焼結体重量に対して6重量%、コバルト担持量はモル比でコバルト:モリブデン=0.2:1とした。
そして、この含浸処理した焼成体を前述の炭化処理1に供してモリブデンとコバルトとを担持した比較例2に係る触媒を得た。
含浸工程では、硝酸コバルトが添加されたモリブデン酸アンモニウム水溶液に前記1)〜3)の工程で得られた焼成体を浸して、この焼結体にモリブデン成分と鉄成分を含浸させた。モリブデン担持量は焼結体重量に対して6重量%、鉄担持量はモル比で鉄:モリブデン=0.2:1とした。
そして、この含浸処理した焼成体を前述の炭化処理3に供してモリブデンと鉄とを担持した実施例9に係る触媒を得た。
含浸工程では、硝酸コバルトが添加されたモリブデン酸アンモニウム水溶液に前記1)〜3)の工程で得られた焼成体を浸して、この焼結体にモリブデン成分と鉄成分を含浸させた。モリブデン担持量は焼結体重量に対して6重量%、ニッケル担持量はモル比でニッケル:モリブデン=0.2:1とした。
そして、この含浸処理した焼成体を前述の炭化処理3に供してモリブデンとニッケルとを担持した実施例9に係る触媒を得た。
2.触媒の評価
比較例及び実施例に係る触媒の評価法について述べる。
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、これにメタンと水素とを含んだ混合ガス(メタン+10%アルゴン+6%水素)を供給して、反応空間速度3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度750℃、反応時間10時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と混合ガスとを反応させた。この際、水素と芳香族化合物(ベンゼン)が生成する速度を経時的に調べた。
図1Aは比較例1に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化を、図1Bは比較例1に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化を示したものである。また、図2Aは比較例1及び実施例1,2,3並びに4に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化を、図2Bは比較例1及び実施例1,2,3並びに4に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化を示したものである。
これらの図に示された水素とベンゼンと生成速度の経時的変化から明らかなように、実施例1〜4に係る触媒を用いた場合、水素,ベンゼンの生成速度の安定性が向上していることが確認できる。
図3Aは比較例1及び2に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化を、図3Bは比較例1及び2に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化を示したものである。図示された水素とベンゼンの生成速度の経時的変化から明らかなように、触媒前駆体の炭化処理にあたり従来の炭化処理法に基づく炭化処理1を採用すると、モリブデンとコバルトとを共に担持させた場合、かえって水素とベンゼンの生成速度の安定性は低下することが確認できる。
図4Aは比較例2及び実施例5,6,7並びに8に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化を、図4Bは比較例2及び実施例5,6,7並びに8に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化を示したものである。図示された水素とベンゼンの生成速度の経時的変化から明らかなように、モリブデンとコバルトとを共に担持させた場合、触媒前駆体の炭化処理にあたり、従来の炭化処理法に基づく炭化処理1を採用するよりも、炭化処理2,3及び4を採用した方が水素と芳香族化合物の生成速度が高まると共に安定性も向上することが確認できる。
図5Aは比較例1及び実施例2,6,9並びに10に係る触媒を用いた場合における水素の生成速度の経時的変化を、図5Bは比較例1及び実施例2,6,9並びに10に係る触媒を用いた場合におけるベンゼンの生成速度の経時的変化を示したものである。図示された水素とベンゼンの生成速度の経時的変化から明らかなように、モリブデンのみを担持させた場合、触媒前駆体の炭化処理にあたり、従来の炭化処理法に基づく炭化処理1を採用するよりも、炭化処理3を採用した方が水素と芳香族化合物の生成速度が安定性も向上することが確認できる。特に、触媒前駆体がモリブデンと共にコバルト、鉄、ニッケルのいずれかの鉄族金属を担持させたものを炭化処理3に供すれば水素と芳香族化合物の生成速度の安定性に優れた芳香族化触媒が得られることが確認できる。
次に、これまでの実施例で明らかになった芳香族化触媒による水素及び芳香族化合物の生成速度の安定性についての触媒前駆体の炭化処理方法と触媒前駆体の担持金属との関係を表1に示した。従来の触媒(触媒前駆体の担持金属はモリブデンのみ、そしてこの触媒前駆体の炭化処理に炭化処理1を採用)と比較して効果がある組み合わせに○を効果のない組み合わせに×を示した。
また、表に示されているように実施例として開示していない組み合わせについても同等の効果を奏することも確認されている。すなわち、モリブデンと鉄を担持した触媒前駆体を炭化処理2,4及び5に供したもの、モリブデンとニッケルを担持した触媒前駆体を炭化処理2,4及び5に供したものについても水素と芳香族化合物を生成する速度の安定性の向上が確認されている。
以上の実施例に基づき本発明の低級炭化水素の芳香族化触媒について詳細に説明したが、この実施例が本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
例えば、本実施例の触媒は主な担持金属としてモリブデンを採用されているが、既に低級炭化水素の芳香族化触媒としての効果が確認され、前記実施の形態で紹介した文献で紹介されている各種触媒金属のうちレニウムやタングステンさらにはこれら(モリブデンを含む)の化合物を単独または組み合わせて用いた場合においても、同様の作用効果が得られることが確認されている。
また、本実施例では含浸方法により触媒金属が担持された担持体の乾燥方法についてのみ示したが、イオン交換方法により触媒金属が担持された担持体に適用した場合や、昇華性の化合物を用いて担体に蒸着担持した場合においても、同様の作用効果が得られることが確認されている。
さらに、実施例に係る触媒は棒状に形成されたものであるが、中空円柱状、ハニカム形状、粉末状,ペレット状,リング形状の形成した場合においても、同様の作用効果が得られることが確認されている。
Claims (7)
- モリブデンを担持したメタロシリケートを、炭化処理の際に還元性ガスを混合して処理を行うことにより低級炭化水素の芳香族化触媒を得ることを特徴とする低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法。
- 前記還元性ガスは、低級炭化水素と水素とを含んだガス、水素ガスまたはアンモニアガスであることを特徴とする請求項1記載の低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法。
- 前記メタロシリケートにモリブデン以外に少なくとも一種以上の金属成分を共担持することを特徴とする請求項1または2記載の低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法。
- 前記金属成分は鉄族元素であることを特徴とする請求項3記載の低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法。
- 前記鉄族元素は、鉄、コバルトまたはニッケルであることを特徴とする請求項4記載の低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載の低級炭化水素の芳香族化触媒を製造する方法によって得た低級炭化水素の芳香族化触媒。
- 低級炭化水素を含んだガスを請求項6記載の低級炭化水素の芳香族化触媒と接触反応させることで芳香族化合物と水素とを製造することを特徴とする芳香族化合物及び水素の製造方法。
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