【発明の詳細な説明】
インテグリン調節/シグナリングの細胞質モジュレーター
本出願は、1996年4月15日に出願され係属中である米国特許出願第08/632,247
号の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は概して、インテグリンのシグナリング経路に関与するタンパク質に関
する。さらに詳細には、本発明は、本明細書にてインテグリン調節タンパク質(
IRP)と称するタンパク質のファミリーに関し、このタンパク質はインテグリン
活性を調節するものであり、かかるタンパク質ファミリーのうちの2つのメンバ
ーをIRP-1及びIRP-2と命名した。
発明の背景
インテグリンは、非共有性会合状態にあるα及びβサブユニットからなるヘテ
ロダイマーの表面分子である。すべてのインテグリンは、細胞外ドメインに局在
するカウンター受容体結合性活性を有する膜貫通タンパク質である。インテグリ
ンはまた、膜貫通性のシグナリングの事象に関わる比較的短い細胞質領域も有し
ている。インテグリンは、可溶性因子のみならず、他の細胞結合性のカウンター
受容体及び細胞外基質の成分に相互作用することができる。細胞外リガンドの結
合によって、インテグリンの交叉及び局在化したクラスター形成が導かれること
になり(Miyamotoら、Science、267巻、833頁(1995))、さらに限局性の接着が
形成され、この場合クラスター形成したインテグリンの細胞質ドメインは、例え
ばアクチンフィラメント等を
含む細胞骨格成分に会合している(Pavalko及びOtey、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.
、205巻、32767頁(1994)ならびにGumbiner、Neuron、11巻、551頁(1993))。イ
ンテグリンの生理活性についての研究のほとんどが、特異的な細胞外カウンター
受容体を同定することにその焦点が絞られている一方で、細胞質成分とのインテ
グリンの特異的な相互作用について知られていることは少ない。しかしながら、
変異体を用いた研究により、接着域とのインテグリンの会合のために、細胞質の
配列が必要であることが示唆されている(LaFlammeら、J.Cell Biol.、117巻、4
37頁(1992))。
数多くのインテグリンが同定されているが、特定の下位集合は白血球に対して
特異的であり、そのサブセットの各メンバーは、特徴的な細胞特異性発現及びカ
ウンター受容体結合特性を有している。白血球に特異的なインテグリンのうち、
少なくとも3つのβ2インテグリンが知られており、各々、β2サブユニット(CD
18と称される)と会合している独自のαサブユニットを含んでなる(Kishimoto
ら、Cell、48巻、681〜690頁(1987))。β2インテグリンに関しての現在の状態
については、Spring-er、Cell、76巻、301〜314頁(1994)に記載されている。αL
β2またはLFA-1としても知られているCD11a/CD18は、すべての白血球において発
現されており、ICAM-1、ICAM-2、及びICAM-3に結合することが示されている。αM
β2またはMac-1としても知られているCD11b/CD18は、多形核好中球、単球及び
好酸球において発現されており、ICAM-1、補体因子iC3b、X因子、及びフィブリ
ノーゲンに結合することが示されている。αXβ2またはp150/95としても知られ
ているCD11c/CD18は、単球、多形核好中球及び好酸球において発現されており、
補体因子iC3b及びフィブリノーゲンに結合することが示されている。加えて、αd
β2と称
される、第4のヒトβ2インテグリンが、最近同定されている(Van der Vieren
ら、Immunity、3巻、683〜690頁(1995))。
α4サブユニットと会合するβ7インテグリンサブユニットは、主に白血球にて
発現されている。その細胞表面ヘテロダイマーは、粘膜アドレッシン細胞接着分
子(MadCAM)と称される消化管回帰性(homing)カウンター受容体を認識し、そ
して腸組織にリンパ球が結合するうえで中枢的な役割を果たしているようである
(Berlinら、Cell、74巻、185〜195頁(1993))。α4β7は、VCAMに結合すること
も示されている(Chanら、J.Biol.Chem.、267巻、8366〜8370頁(1992))。セレ
クチン表面分子のみに予め関わっていた作用と同様に、α4β7が、炎症を受けた
小静脈への流動条件下におけるセレクチン非依存性のリンパ球接着に関与するこ
とが示されている(Berlinら、Cell、80巻、413〜422頁(1995))。α4サブユニ
ットに対して免疫特異性を有する抗体を用いた動物モデルにより、α4β7、また
はβ1インテグリンサブユニットに会合しているα4が、例えば、実験的アレルギ
ー性脳髄膜炎(Yednockら、Nature、356巻、63〜66頁(1992);Baronら、J.Exp.M
ed.、177巻、57〜68頁(1993))、接触過敏症(Ferguson及びKupper、J.Immunol.
、150巻、1172〜1182頁(1993);Chisholmら、Eur.J.Immunol.、23巻、682〜688
頁(1993))ならびに非肥満性糖尿病(Yangら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、90巻
、10494〜10498頁(1993);Burklyら、Diabetes、43巻、529〜534頁(1994);Baro
nら、J.Clin.Invest.、93巻、1700〜1708頁(1994))等を含む数多くの疾病状態
において役割を果たすかもしれないことが示されている。
インテグリンは、体全体での白血球のトラフィッキングに関与するタンパク質
の主要なタイプの一つであることが示されている。白血球は、リンパ液及び血液
から脈管構造の内皮細胞層
を通過し、その下にある組織に浸透することにより、リンパ器官と他の組織との
間を常に再循環している。炎症性及び自己免疫性疾患の一つの要素は、炎症部位
への白血球の流入である。このような部位での炎症の消散は、白血球機能を阻止
または阻害する、インテグリンに対して免疫特異性を有するモノクローナル抗体
を用いて成し遂げることができる。概説として、Lobb及びHemler、J.Clin.Inves
t.、94巻、1722〜1728頁(1994)を参照されたい。インテグリン機能のモジュレー
ションは、炎症の消散に効を奏しうる手段の一つであるが、インテグリン調節及
びシグナリングの特異的な細胞質成分についてはほとんど知られていない。
Liu及びPohajdak、Biochimica et Biophysica Acta、1132巻、75〜58頁(1992)
には、酵母SEC7タンパク質、イカのキネシン、プレックストリン(pleckstrin)
、及びダイナミン(dynamin)と相同なドメインを有するタンパク質をコードす
る、B2-1と命名されたヒトcDNAクローンが記載されている。この文献には、B2-1
がSEC7タンパク質と相同なのはごく一部だけであるので、B2-1が酵母のSEC7タン
パク質のヒトにおける相同物であることが明らかになったわけではなく、SEC7モ
チーフの外側の非類似性をもってすれば、B2-1がかような相同物ではなさそうで
ある旨、述べている。この文献では、細胞溶解に際しての標的細胞に対するNK細
胞のゴルジ/分泌顆粒の再配向にB2-1が関わっているかもしれないとの仮説が立
てられている。Schiller及びKolanus(「A dominant negative effect of the h
uman Sec7 PH domein on β2 integrin mediated binding to ICAM-1」、Adhesi
on Meeting of the German Immunology Association、第3回、Regensburg、ド
イツ、1995年3月14〜15日)は、β2インテグリンの細胞質ドメインと相互作用
する、
類似のモチーフを有するヒトタンパク質を発表しており、このタンパク質のPHド
メインの過剰発現の結果、Jurkat細胞におけるβ2インテグリンの活性化依存性
の親和性(avidity)に対して強力な顕性の負の効果が惹起こされることを報告
している。しかしながら、Schiller及びKolanusは、(i)インテグリン活性に優先
的に相互作用し、及び/またはこの活性をモジュレートするインテグリン調節タ
ンパク質(IRP)の存在、(ii)COS細胞においてインテグリンをコードするDNAと
共にコトランスフェクトされた場合に、コトランスフェクトされたインテグリン
のdenovo発現を調節するIRP、または(iii)流動条件下でJY細胞の接着及び回転を
モジュレートするIRPを示してはいない。
従って、インテグリンの結合及び/またはシグナリング活性に結合する、及び
/またはそれらをモジュレートする分子を同定すること、ならびにこれらの分子
を同定することができる方法を開発することが、当該技術分野において希求され
ている。その方法、及びそれにより同定される分子によって、インテグリンが介
する免疫性及び炎症性の応答における治療的介入のための実用手段が提供される
であろう。
発明の要約
本発明は、β2及び/またはβ7インテグリン調節及び/またはシグナリング経
路の細胞質成分である新規ヒトIRPを提供する。
本発明の一つの特徴において、IRP-1及びIRP-2をコードする、精製され単離さ
れたポリヌクレオチド(例えば、DNA及びRNA、いずれも、そのコード鎖及び非コ
ード鎖)が提供される。本発明によって企図されるポリヌクレオチドには、ゲノ
ミックDNA、RNA、cDNA及び全体的または部分的に化学合成されたDNAが
含まれる。本発明の好ましいポリヌクレオチドには、配列番号:1で示されるIR
P-1のDNA配列、配列番号:2で示されるIRP-2のDNA配列、及びストリンジェント
な条件下でそれらの非コード鎖にハイブリダイズするDNA配列、または遺伝コー
ドの冗長部分なしで、かかる配列にハイブリダイズするであろうDNA配列が含ま
れる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は以下の通りである
。すなわち、5 X SSPE、45%ホルムアミド中で42℃にてハイブリダイゼーション
、そして0.2 X SSC中で65℃にて、または1 X SSC中50℃にて洗浄。これらの条件
を変化させることは、ハイブリダイスされるべき配列の長さ及びGCヌクレオチド
塩基含量に基づき、当業者によって想起されることは理解されよう。当該技術分
野における公式的な標準が、正確なハイブリダイゼーション条件を決定するため
に適切である。Sambrookら、Molecular Cloning、9.47〜9.51、Cold Spring Har
bor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1989)を参照された
い。
本発明によって提供されるDNA配列情報から前記のDNA/DNAハイブリダイゼーシ
ョン及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニングなどの周知の技術により、
関連分子をコードするDNAの同定及び単離が可能となる。実施例の一例として、I
RPをコードするDNAの配列の知識から、DNA/DNAハイブリダイゼーションによりIR
PをコードするゲノミックDNA配列、及びプロモーター、オペレーター等の発現制
御調節配列の単離が可能となる。ストリンジェントな条件下での、本発明のDNA
配列を用いて行われるDNA/DNAハイブリダイゼーション法が、同様に、IRPの対立
変異体をコードするDNA;IRPに相同性を有する非ヒト種のタンパク質;及びIRP
が関与するβ2及び/またはβ7インテグリン調節経路のメンバーまたは調節因子
との相互作用能を1以上共有する
、他の構造的関連性を有するタンパク質の単離を可能ならしめることが期待され
る。検出可能なようにラベルされた場合に、本発明のポリヌクレオチドは、IRP
を合成する細胞の能力を検出するハイブリダイゼーションアッセイにおいても有
用である。本発明によって提供されるDNA配列情報は、相同組換えまたは「ノッ
クアウト」ストラテジー(Capecchi、Science 244巻、1288〜1292頁(1989)を参
照されたい)によって、機能を有するIRPを発現しない齧歯類または変異型のIRP
を発現する齧歯類の開発も可能とする。このような齧歯類は、in vivoにおけるI
RP及びIRPモジュレーターの活性を研究するためのモデルとして有用である。本
発明のポリヌクレオチドはさらに、1以上の疾病状態に根付く、IRP座における
遺伝的変更を同定するために有用な診断方法のための基礎ともなるかもしれない
。本発明によってさらに得られるのは、通常IRPを発現している細胞によるIRPの
発現の調節に関わるアンチセンスポリヌクレオチドである。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを組み込んだプラスミド及びウイル
スDNAベクターなどの自己複製する組換え構築体、特にポリヌクレオチドが内在
性または異種性発現制御DNA配列及び転写終結因子に機能的に連結されたベクタ
ーも提供するものである。
本発明の別の特徴によれば、宿主細胞、特に原核細胞及び真核細胞などの単一
細胞性宿主細胞が、その中でIRPの発現が許容されるように、本発明のDNAで安定
に形質転換またはトランスフェクトされる。本発明の宿主細胞は、IRPの大規模
な生産のための方法において特に有用であり、それら細胞は、好適な培養培地中
で生育され、そして所望のタンパク質が、その細胞から、または細胞が生育され
培地から単離されるのである。
配列番号:2(IRP-1)及び配列番号:4(IRP-2)に示され
るアミノ酸配列の一部または全部を有するIRPポリペプチド産物が企図される。
哺乳動物の宿主細胞の使用によって、本発明の組換え発現産物に至適な生物学的
活性を付与するために必要とされるかもしれない転写後の修飾(例えば、ミリス
トイレーション、グリコシレーション、欠切、ラピデーション及び、チロシン、
セリンまたはスレオニンのリン酸化等)が行われることが期待される。さらに融
合ポリペプチドも提供され、これは、IRPアミノ酸配列が他のポリペプチド由来
のアミノ酸配列と接近した状態に発現されるものである。本発明の融合ポリペプ
チドには、天然型のポリペプチドに比較して、その生物学的、生化学的、及び/
または免疫学的特性が修飾されたものが包含される。IRPの多量体型も企図され
る。本発明のポリペプチド産物は、全長のポリペプチド、断片または変異体であ
ってもよい。変異体は、(1)β2及び/もしくはβ7シグナリング経路のメンバー
もしくは調節因子との相互作用能を喪失することなく、または(2)β2及び/もし
くはβ7シグナリング経路のメンバーもしくは調節因子との相互作用能を無力化
して、1以上の特定の(すなわち、天然型でコードされている)アミノ酸が欠失
もしくは置換され、または1以上の特定のものでないアミノ酸が付加されている
IRP産物を含む。IRPと相互作用するタンパク質は、様々なアッセイによって同定
することができる。
本発明によって企図される第1のアッセイは、2ハイブリッド選別(two-hybr
id screen)である。2ハイブリッドシステムは、酵母において開発され(Chien
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、88巻、9578〜9582頁(1991))、そしてレポータ
ー遺伝子を活性化する転写因子のin vivoでの機能的再構成に基づくものである
。詳細には、IRPと相互作用するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、
以下の工程を含む方法によって単離され
る。すなわち、DNA結合ドメイン及び活性化ドメインを有する転写因子によって
調節されるプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子を含むDNA構築体で、
適切な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトし;当該宿主細胞にて、IRP
の一部またはすべてと、転写因子のDNA結合ドメインまたは活性化ドメインのい
ずれかとの第1融合体をコードする第1ハイブリッドDNA配列を発現させ;IRP結
合タンパク質と推定されるタンパク質の一部またはすべてと、第1融合体に組み
込まれていない、転写因子のDNA結合ドメインまたは活性化ドメインのいずれか
との第2融合体をコードする第2ハイブリッドDNA配列のライブラリーを宿主細
胞で発現させ;かかる宿主細胞におけるレポーター遺伝子産物の生産を検出する
ことにより、特定の宿主細胞における、IRPと相互作用するタンパク質のIRPに対
する結合を検出し;そしてその特定の宿主細胞から、かかる相互作用性タンパク
質をコードする第2ハイブリッドDNA配列を単離する。アッセイにて使用するた
めに現在のところ好ましいのは、lacZレポーター遺伝子の発現を駆動するGAL4上
流活性化配列、GAL4 DNA結合ドメイン及びGAL4トランス活性化ドメインを含む転
写因子、ならびに酵母宿主細胞である。
IRPと相互作用するタンパク質を同定するための他のアッセイには、IRPまたは
被検タンパク質を固定化し、固定化されなかった方の結合パートナーを検出可能
にラベルし、結合パートナーと共にインキュベートして、結合したラベルの量を
定量することが包含されうる。結合したラベルは、被検タンパク質がIRPと相互
作用することを示唆する。
IRPと相互作用するタンパク質を同定するためのいまひとつの型のアッセイに
は、蛍光剤が被覆(または含浸)された固体支持体にIRPまたはその断片を固定
化し、蛍光剤を励起することが
できる化合物で被検タンパク質をラベルし、固定化したIRPをラベルした被検タ
ンパク質に接触させ、蛍光剤による光放射を検出し、そして、蛍光剤による光の
放射を惹き起こす被検タンパク質として、相互作用性タンパク質を同定すること
が包含される。あるいは、このアッセイにおいて、相互作用性タンパク質と推定
されるタンパク質を固定化し、そしてIRPをラベルしてもよい。
さらに本発明によって企図されるのは、本発明のIRPに対して特異的な抗体産
物及び他の結合タンパク質(前記のアッセイにて同定されたものなど)である。
本発明の抗体産物には、モノクローナル、ポリクローナル、抗イディオタイプ、
及び組換え(すなわち、ヒト化、キメラ等)抗体ならびにそれらの断片が包含さ
れる。本発明の抗体産物を生産する細胞系(例えば、ハイブリドーマ細胞系)が
企図される。結合タンパク質は、単離された、天然または組換えIRPポリペプチ
ド産物を使用してつくることができる。結合タンパク質はまた、組換え及び天然
に生じるIRPポリペプチド産物を精製するため、ならびにかかる産物を生産して
いる細胞を同定するために有用である。細胞内及び流体内のタンパク質を検出及
び定量するためのアッセイには、単一の抗体物質または「サンドイッチ」アッセ
イ形式における複数の抗体物質が包含されうる。結合タンパク質は、β2及び/
またはβ7インテグリンシグナリング経路成分とのIRPの相互作用をモジュレート
する(すなわち、阻止、阻害、または刺激する)うえでも、際立って有用である
。
本発明のモノクローナル抗体として特に例示すべきは、ハイブリドーマ細胞系
200A、200B及び233Gによって生産されるモノクローナル抗体である。これらの細
胞系は、郵便番号20852、メリーランド州、ロックビル、パークロウンドライブ1
2301に所
在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に、1997年4
月2日に寄託された。200Aに対する受託番号はHB-12331、200BはHB-12332、及び
233GはHB-12333である。
他のタンパク質または脂質とのIRPの相互作用をモジュレートする化合物を同
定するためのアッセイには、以下の工程を含む方法が包含される。すなわち、DN
A結合ドメイン及び活性化ドメインを有する転写因子によって調節されるプロモ
ーターの制御下にあるレポーター遺伝子を含むDNA構築体で、適切な宿主細胞を
形質転換またはトランスフェクトし;当該宿主細胞にて、IRPの一部またはすべ
てと、転写因子のDNA結合ドメインまたは活性化ドメインのいずれかとの第1融
合体をコードする第1ハイブリッドDNA配列を発現させ;IRPと相互作用するタン
パク質の一部またはすべてと、第1融合体に組み込まれていない、転写因子のDN
A結合ドメインまたは活性化ドメインのいずれかとをコードする第2ハイブリッ
ドDNA配列を宿主細胞で発現させ;被検化合物の存在または非存在下でのかかる
宿主細胞におけるレポーター遺伝子産物の生産を測定することにより、特定の宿
主細胞における、IRPに対する相互作用性タンパク質の結合を検出することによ
って、IRPと相互作用性タンパク質との間の相互作用に対する被検化合物の効果
を評価し;そしてモジュレーター化合物が存在しない場合でのレポーター遺伝子
産物の生産に比較して、レポーター遺伝子産物の生産を変化させる被検化合物と
して、モジュレーター化合物を同定する。このアッセイにて使用するために現在
のところ好ましいのは、レポーター遺伝子、lacZレポーター遺伝子の発現を駆動
するGAL4上流活性化配列、GAL4 DNA結合ドメイン及びGAL4トランス活性化ドメイ
ンを含む転写因子、ならびに酵母宿主細胞である。
IRPと相互作用性タンパク質または脂質との相互作用をモジュ
レートする化合物を同定するためのいまひとつの型のアッセイには、IRPまたは
天然のIRP相互作用性タンパク質を固定化し、固定化しなかった方の結合パート
ナーを検出可能にラベルし、結合パートナーと共にインキュベートして、結合し
たラベルの量に対する被検化合物の効果を定量することが包含され、ここで、被
検化合物なしで結合したラベルの量に比較して被検化合物の存在下に結合したラ
ベルの量が減少していれば、被検薬剤は、タンパク質とのIRPの相互作用の阻害
剤であることが示唆される。逆に、その化合物なしで結合したラベルの量に比較
して被検化合物の存在下に結合したラベルの量が増大していれば、モジュレータ
ーと推定される化合物は、タンパク質とのIRPの相互作用の活性化剤であること
が示唆される。
IRPと、相互作用性タンパク質または脂質との間の結合をモジュレートする化
合物を同定するための、本発明によって企図されるさらに別の方法には、蛍光剤
が被覆(または含浸)された固体支持体にIRPまたはその断片を固定化し、蛍光
剤を励起することができる化合物で相互作用性タンパク質をラベルし、被検化合
物の存在下及び非存在下に、固定化したIRPをラベルした相互作用性タンパク質
に接触させ、蛍光剤による光の放射を検出し、そして被検化合物がない場合の蛍
光剤による光の放射に比較して、蛍光剤による光の放射に影響を及ぼす被検化合
物として、モジュレーター化合物を同定することが包含される。あるいは、この
アッセイにおいて、IRP相互作用性タンパク質を固定化し、そしてIRPをラベルし
てもよい。
IRPのモジュレーターは、ARF、PI、β1、β2、β3及び/もしくはβ7インテグ
リン調節及びシグナリング活性、細胞におけるIRPの局在性、ならびに/またはA
RF、PI、β1、β2、β3及び/もしくはβ7インテグリンのシグナリング経路のメ
ンバーとの
IRPの相互作用に効果を及ぼすかもしれない。結合ライブラリー、ペプチド及び
疑似ペプチド、限定された化学物質、オリゴヌクレオチド、及び天然産物ライブ
ラリーが、前記のごときアッセイにおけるモジュレーターとしての活性につき、
スクリーニングされるとよい。選択的なモジュレーターには、例えば、IRPもし
くはIRP核酸に特異的に結合するポリペプチドまたはペプチド、IRPもしくはIRP
核酸に特異的に結合するオリゴヌクレオチド、及び/またはIRPもしくはIRP核酸
と特異的に反応する他の非ペプチド化合物(例えば、単離された、もしくは合成
された有機性分子)が包含されうる。野生型のIRPの結合活性または細胞での局
在性に作用するIRPの変異型もまた、本発明によって企図される。本発明の方法
によって同定される、ARF、PI、β1、β2、β3またはβ7/IRP相互作用のモジュ
レーターは、白血球が関与する炎症プロセスに作用するよう、in vitroまたはin
vivoで利用される。加えて、ARF、PI、β1、β2、β3及び/もしくはβ7インテ
グリンまたはIRPに結合するモジュレーター化合物は、体液または生検組織を包
含する生物学的試料における、ARF、PI、β1、β2、β3及び/またはβ7のレベ
ルをモニターするうえで有用である。
IRPモジュレーターは、製薬的に許容しうる担体を含む組成物に製剤化しても
よい。指示投薬量は、IRP/β1、β2、β3またはβ7インテグリンのシグナリン
グまたは調節のin vivoでのモジュレーションを惹き起こすに足る量であろう。
本発明の他の数多くの特徴及び利点は、以下の詳細な説明を考慮すれば明らか
になるであろう。
図面の簡単な説明
図1は、示したポリペプチドを発現しているJY細胞の、VCAM
-1への結合能を示すグラフを表す。
図2は、示したポリペプチドを発現しているJY細胞の、ICAM-1への結合能を示
すグラフを表す。
図3は、IRP-1、IRP-2、B2-1及びB2-1のC.elegans相同体のアミノ酸配列のア
ラインメントを示す。
発明の詳細な説明
以下の実施例によって本発明を例証する。実施例1には、IRP-1及びIRP-2をコ
ードするcDNAの単離を記載する。実施例2には、そのcDNAによってコードされる
IRP-1及びIRP-2タンパク質のドメイン構造の分析を示す。実施例3には、全長の
IRP cDNAならびにIRPドメイン及びIRP変異体をコードするcDNAを含む組換え発現
構築体を記載する。実施例4に示されるのは、ICAM-1及びVCAM-1への細胞接着に
対するIRPの役割、インテグリンの細胞表面発現におけるIRPの役割、及びIRPの
細胞下での局在性を含む、宿主細胞接着に対するIRPの組換え発現の効果を分析
するアッセイの結果である。実施例5には、IL-8受容体を安定に発現する、安定
に形質転換されたJY細胞系(JY-8)の調製ならびにICAM-1及びVCAM-1へのIL-8依
存性であってPMAで刺激される細胞接着に対するIRPの役割を決定するうえでの前
記細胞系の使用を記載する。実施例5はさらに、緑色蛍光タンパク質(GFP)IRP
融合タンパク質をコードする発現ベクターの調製も記載するものである。実施例
6には、IRPでトランスフェクトされたJY細胞の流動条件下での接着を記載する
。実施例7には、IRPに対するモノクローナル抗体の調製とその特徴を記載する
。実施例8において、化学走性におけるIRPの役割の特徴を記載する。実施例9
には、様々なヒト組織におけるIRPの分布を示す実験を記載する。実施例10に
おいて、IRPと相互作用するタンパ
ク質を同定するアッセイを記載し、実施例11及び12には、IRP相互作用のモ
ジュレーターを同定するアッセイを記載する。
実施例1
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びDNA/DNAハイブリダイゼーションを使用して
、2つのヒトIRP cDNAクローンを単離した。
BLAST検索によって、B2-1タンパク質に類似性を呈する様々な部分的cDNAを同
定した。ESTs、H02055、R82669、R43994、H39073、R45477、T07442、及びT32215
に基づき、プレックストリン相同性ドメインを表す領域の5'及び3'端に対応する
コンセンサス配列オリゴヌクレオチドプライマーを設計した。5'端(TS3.5)及
び3'端(TS3.3)に対して設計されたプライマーの配列は、以下の通りであった
。
100μlのPCR反応において、pcDNA-1 Amp(Invitrogen、SanDiego、カリホルニ
ア州)にて鋳型の2 mgのプラスミドcDNAとして脾臓cDNAを用いて、プライマーを
使用した。試料は、94℃に5分間保ち、次いで、94℃で1分間、50℃で1分間、
72℃で2分間、の工程30サイクルに付した。その結果得られた約450 bpのPCR産
物を、MluI及びSalIで消化した。消化されたPCR断片の挿入部位のすぐ5'側にヘ
マグルチニン タグをコードする配列を有するベクターpCl-neo(Promega、Madis
on、ウイスコンシン州)へと、精製された消化断片をクローニングした。得られ
たインサートの配列を明らかにし、そのベクターを5'HA TS53/pC1#3と命名した
。
MluI/SalIで消化されたPCR産物をラベルし、3kbインサート
よりも大きなものに対してサイズ選択したヒト脾臓cDNAライブラリーをプローブ
探査するために使用した。脾臓ライブラリーは、オリゴdTでプライム付けしたcD
NAライブラリーをpcDNA-1Ampへとクローニングし、約7.8kbよりも大きなベクタ
ー/インサートをサイズ選択することによって調製した。ライブラリーベクター
は、XL1 Blue Ultracompetent Cell(Stratagene、LaJolla、カリホルニア州)
へと形質転換され、Hybond N+フィルターを備えた15枚のマスターの150mm2プ
レートに約20,000コロニー/プレートの密度で播種した。各マスタープレートか
らつくった2つの写しをハイブリダイゼーションに使用した。消化されたPCR断
片(400 ng)は、製造業者が示したプロトコルに従って、Boehringer Mannheim
Random Primed Labellig Kitを使用し、120μCiの32P dCTP及びdTTPでラベルし
た。取り込まれなかったヌクレオチドは、Centri-sepカラム(Princeton Separa
tions、Adelphia、ニュージャージー州)を介して除去した。プローブは(5X SS
PE、45%ホルムアミド、5Xデンハーツ、1%SDS)を含有する溶液中で42℃にて終
夜ハイブリダイズさせた。65℃にて0.2X SSCの最終ストリンジェンシーまでフィ
ルターを洗浄し、フィルムに露光した。二重試験によるフィルターでの陽性クロ
ーンを取り、希釈し、そしてLBMプレートでHybond N+フィルターに対して再度播
種した。これらのマスターの各々からつくった二重試験によるフィルターを、第
1次スクリーニングから保存していたハイブリダイゼーション溶液を用いて再度
ハイブリダイズさせた。第2次の陽性クローンを取り、生育させ、そしてプラス
ミドを単離し、インサートの両側端部を配列決定した。
同定した1つのクローンは、クローンS3と命名した全長の遺伝子を含んでおり
、それによってコードされるタンパク質は、
本明細書中、IRP-1と称している。このクローンのヌクレオチド及び推定アミノ
酸配列を、配列番号:1及び2に示す。クローンは、その開始のメチオニンコド
ンの周囲に至適なコザックコンセンサス配列及びメチオニンの5'フレーム内の終
止コドンを有している。クローンはおよそ1.6 kbの鎖長であり、399アミノ酸の
読み取り枠を有している。クローンS3は、EST R82724と最も類似しており、469
ヌクレオチドにわたって93%を越える相同性を示している。
およそ3.4 kbの長さの別のクローンを回収した。S12と命名されたこのクロー
ンは、IRP-2として本明細書に称するタンパク質をコードしており、IRP-1と相同
性を呈するものの明らかに新規の遺伝子である。IRP-2クローンとIRP-1配列との
5'端部のアラインメントから、IRP-1クローンのコード領域におよそ50アミノ酸
が認められたので、IRP-2クローンは全長のものではなかった。
全長のIRP-2クローンを得るために、以下のように同じ脾臓cDNAライブラリー
(前記)を、2つのIRP-2プローブを使用して再度スクリーニングした。欠切し
たIRP-2クローンは、XbaI及びXhoIで別々に消化した。次いで、2 kbのXbaI断片
及び1 kbのXhoI断片を前記の通りにBoehringer Mannheim Random Primed Labell
ig Kitを使用してラベルした。取り込まれなかったヌクレオチドは、Centri-sep
カラムを使用して除去し、そしてプローブは、前記の通りのハイブリダイゼーシ
ョン溶液中でフィルターに加え、42℃にて終夜ハイブリダイゼーションを行った
。フィルターは50℃にて1X SSC/0.1%SDSの最終ストリンジェンシーまで洗浄し
た。第1次の陽性クローンを取り、希釈し、そしてLBMプレートでHybond N+フィ
ルターに対する操作を繰り返した。これらのマスターの各々からつくった二重試
験によるフ
ィルターを、保存しておいた前記ハイブリダイゼーション溶液を用いて再度ハイ
ブリダイズさせた。二重試験におけるフィルターの陽性クローンを取り、生育さ
せ、そしてプラスミドを単離してインサートを配列決定した。2つのクローン、
S12-41及びS12-47は、IRP-2コード領域の5'方向に、約50アミノ酸伸びていた。
クローンの5'端にメチオニンがあり、IRP-1にて認められると概ね同様のアミノ
酸構成を維持しており、そのメチオニンを囲むコザックコンセンサス配列と良好
に符合していた。S12-47クローンを完全に配列決定し、IRP-2 DNA及び推定アミ
ノ酸配列を配列番号:3及び4に示す。
実施例2
IRP-1、IRP-2、B2-1(Liuら、前出)遺伝子及び推定アミノ酸配列の比較によ
って、3つの共通のドメインまたはモチーフ、すなわち、アミノ末端のキネシン
/ミオシンドメイン、SEC7ドメイン、及びカルボキシ末端のプレックストリン相
同性(PH)ドメインを同定した。キネシン及びミオシンは、微少管に会合する輸
送タンパク質である(Navoneら、J.Biol.Chem.、117巻、1263〜1275頁(1992))
。Altschulら、J.Mol.Biol.、215巻、403〜410頁(1990)に記載される酵母タンパ
ク質SEC7は、ゴルジ装置からの糖タンパク質の分泌を調節するらしき2008アミノ
酸のタンパク質である。酵母におけるSEC7のさらに正確な機能は調べられていな
いが、ArabidopsisでのSEC7遺伝子の変異の結果、発生に関連する細胞分裂及び
細胞接着のモジュレーションが惹起こされる(Shevellら、Cell、77巻、1051〜1
062頁(1994))。PHドメインは、シグナリングトランスダクションに関わる数多
くのタンパク質に見出される。あるタンパク質では、このドメインによって、G
タンパク質βrサブユニット、イノシトール
トリホスフェート(IP3)、またはホスファチジルイノシトールジホスフェート
(PIP2)に結合する能力が付与される。Ingley及びHemmings、J.Cell.Biochem.
、56巻、436〜443頁(1994)を参照されたい。IRP-1及びIRP-2のアミノ酸配列にお
いて、キネシン/ミオシンドメインは、およそ第9残基からおよそ第60残基まで
にわたり、SEC7ドメインはおよそ第71残基からおよそ第245残基までにわたり、
そしてPHドメインはおよそ第260残基からカルボキシ末端までにわたっている。B
2-1において、キネシン/ミオシン、SEC7、及びPHドメインは、それぞれ、およ
そ第10残基からおよそ第61残基まで、およそ第72残基からおよそ第245残基まで
、及びおよそ第246残基からカルボキシ末端までに、概ね特定される。IRP及びB2
-1における様々なドメイン間のアミノ酸の同一性を、以下の表1に示す。
3つのタンパク質でキネシン/ミオシン、SEC7、PHドメインが保存されている
ことに基づき、IRP-1及びIRP-2タンパク質はB2-1に関連するヒトタンパク質のフ
ァミリーのメンバーであると考えられる。図3に、見かけ上のC.elegans相同体
(Wilsonら、Nature、368巻、32〜38頁(1994))との、IRP-1、IRP-2、及びB2-1
クローンのアラインメントを示す。他の3つのヒトタンパク質とのC.elegansタ
ンパク質の相同性の百分率は、あまり高く
ないものの、4つのタンパク質の間で全体のドメイン構造が保存されていること
は明らかである。
3つのヒトタンパク質とC.elegansタンパク質との間で保存されているほとん
どの残基は、相同のSEC7領域を含むArabidopsisタンパク質(Shevellら、前出)
においても保存されており、加うるに、酵母のSEC7タンパク質でも保存されてい
る。このことによって、SEC7ドメインの機能におけるこれらの残基の重要性が示
される。事実、Shevellら、前出で、Arabidopsisクローン(EMB30)において、
これらの残基の1つを変化させる変異(図3のアラインメントで第157位に対応
する)によって、細胞分裂、伸長、及び接着に影響を及ぼすことが報告された。
IRP PHドメインにおいて保存された残基は、機能的にも重要であるかもしれな
い。Tsukadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、91巻、11256〜11260頁(1994)は、
多くのPHドメインで保存されているアルギニン(図3の第289位に対応する)を
システインに変異すると、マウスにおいてbtkチロシンキナーゼのPHドメインに
存在する場合、その酵素は完全なbtkキナーゼ活性を維持しているにも関わらず
、X関連の免疫不全表現型が導かれたことを報告している。この残基は分子の表
面上にあると予測されるので、かかる置換が構造的な影響をもたらすとは考え難
く、他のタンパク質との特異的な相互作用を破壊する可能性が高いと、著者らは
考察した。この残基は、ヒトIRPタンパク質及びC.elegansタンパク質の間でも保
存されている。
最後に、C.elegansタンパク質だけでなく3つのヒトタンパク質のすべてが、
他のPHドメインに比較すると、それらのPHドメインのサブドメイン5と6との間
に16から18の付加的な残基を有している。Maciasら、Nature、369巻、675頁(199
4)に記載された、PHドメインの提案された3次元構造に鑑みて評価すると
、このドメインは、ドメインの核から伸延するループをつくっているらしく、従
って、他の1以上のタンパク質との相互作用のために重要なのかもしれないので
ある。これらの16から18までの残基は、4つのタンパク質の間で73%の同一性を
呈している。
実施例3
インテグリンの機能におけるIRPタンパク質の役割を調べるために、IRP-1、IR
P-2、及びB2-1タンパク質またはそれらのPHドメインをCOS及びJY細胞にて、β2
インテグリンサブユニットCD11a及びCD18と共に発現させた。IRP及びB2-1発現ベ
クターは、以下の通りに構築した。このベクターを使用したタンパク質の発現は
、実施例4に記載する。
ヒトB2-1タンパク質をコードする相補的なDNAを、サイズ選択された2.5〜4 kb
のRamosライブラリーのPCR増幅によってクローニングした。コード領域の5'及び
3'端に対するプライマーを、以前に公開された配列(Liuら、前出)に基づいて
設計した。プライマー対は、適切なベクター内への増幅配列の挿入を容易にする
べく設計された。B2-1 cDNAは、5’Sc7.Nde及び3’Sc7.Xhoプライマーを使用し
て先ず増幅され、ベクターpET 15b(Novagen、Madison、ウイスコンシン州)に
クローニングされた:
100μlのPCR反応においてプライマーを使用した。試料は、94℃に5分間保ち
、次いで、94℃で30秒間、55℃で30秒間、そ
して72℃で1分間、の工程30サイクルに付した。その結果得られたPCR産物をゲ
ルで精製し、NdeI及びXhoIで消化して、pET 15bにクローニングした。クローン
を配列決定し、そしてクローンSc7/pET #5及びSc7/pET #6が、公開されたB2-1配
列と同じ配列を有するインサートを含んでいた。
PCRによってB2-1 cDNAの5'端部にHAタグを付加し、次いでタグを付けた遺伝子
をpC1-neoにクローニングした。前記した3'Sc7.Xhoプライマーを、5’Sc7.HASプ
ライマーと共に利用した。
プライマー中、下線を付したヌクレオチドは、HAタグをコードしている。100μl
のPCR反応において、以下の条件下で鋳型としてSc7/pET #6 DNAを用いて、プラ
イマーを使用した。試料は、94℃に5分間保ち、次いで、94℃で1分間、55℃で
1分間、そして72℃で2分間、の工程30サイクルに付した。その結果得られたPC
R産物をゲルで精製し、NdeI及びXhoIで消化して、NdeI/XhoIで消化されたpC1-ne
oベクターへとクローニングした。得られたクローンは、5'HASc7/pC1#29と命名
した。そのインサートは、HA融合タンパク質をコードしており、本明細書中、5'
HAB2-1と称する。
B2-1 cDNAの3'端にPCRによってHAタグを付加し、次いでタグ付けしたcDNAをpC
1-neoへとクローニングした。使用したプライマーは、以下のSc7.HA3及びT7であ
った:
100μlのPCR反応において、以下の条件下で鋳型としてSEC7/pC1 #9 DNAを用い
て、プライマーを使用した。試料は、94℃に5分間保ち、次いで、94℃で1分間
、55℃で1分間、そして72℃で2分間、の工程30サイクルに付した。その結果得
られたPCR産物をゲルで精製し、XhoI及びSalIで消化して、予めXhoI及びSalIで
切断されたpC1-neoに連結した。構築体を、3'HA B2-1/pC1#29と命名し、それに
よってコードされるタンパク質は、3'HA B2-1と命名した。
B2-1 PHドメインを、5'Tsc7.S及び3'Sc7.Xbaプライマーを使用したPCRによっ
てサブクローニングした:
100λのPCR反応において、以下の条件下で鋳型としてSEC7/pET #5 DNAを用いて
、プライマーを使用した。試料は、94℃に5分間保ち、続いて94℃で1分間、50
℃で1分間、そして72℃で2分間、の工程30サイクルに付した。その結果得られ
たPCR産物をゲルで精製し、Mlu1及びXba1で消化して、予めMluI/XbaIで切断され
た5'HA pC1-neo(MluI及びXbaIで5'HA B2-1/pC1 #29クローンを切断することに
より調製)へとクローニングした。得られたクローンのインサートは、5'HA B2-
1 PHと本明細書で称するHA融合タンパク質をコードしていた。
先ずPCRを使用することによって5'HA pC1ベクターへとIRP-1 cDNAをサブクロ
ーニングし、cDNAの5'端にMlu制限部位、及びクローンの3'端にSal1部位を付加
した。使用したプライマーは以
下の通りであった:
100μlのPCR反応において、以下の条件下で鋳型としてS3.3 DNAを用いて、プラ
イマーを使用した。試料は、94℃に5分間保ち、続いて94℃で45秒間、50℃で45
秒間、そして72℃で1分間、の工程30サイクルに付した。PCR産物をゲルで精製
し、Mlu1及びSal1で消化して、予めMlu1及びSal1で消化された5'HA pC1へ連結し
た。得られたクローンは、5'HA IRP-1/pC1 #15と命名され、それによりコードさ
れるタンパク質は、5'HAIRP-1と命名された。
IRP-1 PHドメインを発現するために、クローン5'HA TS3/pc1 #3(実施例1)
を使用した。
IRP-2は、先ずHAタグなしでPCRを用いてpC1-neoにクローニングした。使用し
たプライマーは以下の通りであった:
100μlのPCRにおいて、以下の条件下すなわち、94℃で1分間、50℃で1分間、
そして72℃で1分間、の工程で30サイクル行うべく、鋳型としてクローン5'HAS1
2/pC1を用いて、プライマーを使用した。得られた増幅産物を精製し、EcoRI及び
SalIで消化して、予め同じ2つの酵素で消化されたpC1-neoベクターへ連結した
。得られたクローン#11を完全に配列決定し、元のクローンと
同じであることが確認された。
加えて、IRP-2及びIRP-2 PHドメインを、PCR(プライマーTS12.5(配列番号:
17)、TS12.3(配列番号:18)及びS12.5(配列番号:19))を使用して
、5'HAタグと共にpC1-neoに別々にクローニングした。
増幅反応のための鋳型DNAは、クローンS12であった。試料は、94℃に4分間保ち
、続いて、94℃で1分間、52℃で2分間、そして72℃で2分間、の工程30サイク
ルに付した。得られた2つの増幅産物の各々を、MluI及びSalIで消化し、精製し
て、予めMluI及びSalIで消化しておいたpC1-neo HAベクターへと別々に連結した
。クローンpC1-neo HA IRP-2 #8及びpC1-neo IRP-2 PH #5を配列決定し、鋳型の
クローン内の対応する配列と同じであることを見出した。
実施例4
β2依存性細胞接着(ICAM-1に対する、トランスフェクトされたCOSまたはJY細
胞の結合によって測定)及びβ7依存性細胞接着(VCAM-1に対する、トランスフ
ェクトされたJY細胞の結合によって測定)に対する、過剰発現しているIRPの影
響を調べた。
CD11a/CD18をコードするベクターと、5'HA B2-1、3'HA B2-1、5'HA B2-1 PH、
5'HA IRP-1、5'HA IRP-1 PH、5'HA IRP-2、5'HA IRP-2 PH、またはpC1-neoベク
ター対照のうちの1つをコードするインサートを有するベクター(実施例3)と
で、COS細
胞をコトランスフェクトした。COS細胞は、トランスフェクションの24時間前
に、10 cm2のプレート当たり1.2x106細胞に分けておいた。次の日に、5ml DME
M、2μlのクロロキン(0.25M)、30μlのDEAEデキストラン(CMF-PBS中、50mg/
ml)及び細胞へトランスフェクトされるべき10μgの各ベクターDNAを含むトラン
スフェクション混合物を、各プレートに対して準備した。およそ80%の周密度の
COS細胞のプレートから生育培地を除去し、トランスフェクション混合物を添加
した。プレートは、37℃にて2.5時間インキュベートした。吸引によってトラ
ンスフェクション混合物を除去し、そしてDMEM中10%のDMSO溶液を1分間で添加
した(室温)。1分後に、吸引によってDMSOを除去し、10 mlの完全培地を添加
した。
トランスフェクトされたCOS細胞によるLFA-1及びIRPの発現は、様々な抗体を
使用して確認した。すべてのトランスフェクト体は、CD18に対して陽性染色され
た。IRPトランスフェクト体はすべて、HAタグ特異的モノクローナル抗体150B OR
12CA5を使用して、HAエピトープに対して陽性に染色された。
トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクション後48及び72時間で
、ICAM-1に対する結合能について調べた。接着アッセイのための細胞を調製する
ために、生育培地を吸引によって除去し、5mlのベルセン(versene)を3分間
プレートに加え、次いで細胞を回収した。完全DMEM培地5mlを加え、次いで細胞
懸濁液を5分間1,000 rpmにて回転して落とした。細胞を完全DMEMに再懸濁し、
計数した。種々トランスフェクトを行った細胞を用いた接着アッセイを、以下の
通りに行った。
それぞれの96ウェルプレート(Corning、Cambridge、マサチューセッツ州)は
、最初に炭酸塩緩衝液、pH 9.6中、5μg/mlタンパク質のICAM-1/FcまたはVCAM-
1/Fcのいずれか、50μl/ウェ
ルで被覆して、4℃にて終夜インキュベートした。プレートは、ウェル当たり150
μlのPBSで2回洗浄し、1%BSAを含むPBSをウェル当たり150μl用いて室温にて
1時間ブロッキングした。ブロッキング剤の後、100μlの接着用緩衝液(10%の
胎児ウシ血清を含むRPMI培地)を、室温にて接着用緩衝液に懸濁された、トラン
スフェクトされたJY細胞100μlと共に各ウェルに添加した。トランスフェクトさ
れた細胞は、以下の通りに調製した。
アッセイの前日に、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、ピルビ
ン酸ナトリウム及び10%胎児ウシ血清を補給したRPMI培地中、3x105細胞/mlの
密度に、トランスフェクトされた細胞を分けた。一般的には24時間インキュベ
ート後まで、細胞の倍加を許容した。倍加後に、細胞を採収して、接着用緩衝液
中で1x106細胞/mlの密度に再懸濁した。100μl中、およそ1x105の細胞を各
ウェルに加え、被覆しながらプレートを室温にて30分間インキュベートした。
インキュベートに続き、CMF-PBS中14%のグルタルアルデヒドをウェル当たり5
0μl添加して、室温にて30分間インキュベートすることによって細胞を固定し
た。インキュベーション後、脱イオン水でウェルを3回洗浄した。最後の洗浄に
続き、吸引によって水を除去して、0.125%のクリスタルバイオレット(10%エ
タノール及び90%脱イオン水中1%の保存溶液として調製し、脱イオン水で0.125
%に希釈して0.22ミクロンフィルターを通して濾過したもの)を含有する50μl
の染色液を加えて、プレートを2分間インキュベートした。インキュベーション
後に、前記の通りに脱イオン水でプレートを3回洗浄し、そしてウェル当たり20
0μlのエタノール溶液(95%エタノール2部及び脱イオン水1部)を添加した。
1時間のインキュベーション後、570と590 nmの間の波長にて、ELISAリーダーで
プレートを読
み取った。
トランスフェクション後48時間では、B2-1 PHドメインのトランスフェクト
体で、ベクターの対照トランスフェクト体に比して、LFA-1依存性の接着にある
程度の減少が示された。IRP-2PHドメイントランスフェクト体の結合において顕
著な減少があったが、全長のIRPクローンでは、pC1-neoベクター対照に比して、
接着に有意な変化が示されることはなかった。トランスフェクション後72時間
では、ベクター対照に比して、4つのトランスフェクト体(3'HA B2-1、5'HA B2
-1、B2-1 PH、IRP-1PH)でICAM-1接着の50%の減少が示された。
内在性のα4β7及びLFA-1を発現しているJY細胞を、IRP-1、IRP-2、B2-1、IRP
-1 PH、IRP-2 PH、またはB2-1 PHのいずれかをコードするベクターで個々にトラ
ンスフェクトした。細胞は、標準プロトコルを使用し、エレクトロポレーション
によってトランスフェクトした。手短に説明すると、各形質転換用に107のJY細
胞を回転して落とし、氷上に置いた。細胞をDPBSで濯いで再度回転させた。次い
で、細胞を0.5 mlのDPBSに再懸濁し、エレクトロポレーション用キュベットに移
した。各形質転換用混合物に30μgのDNA(DPBS中、1mg/ml)を添加した。形質
転換用混合物を、穏やかに混合し、氷上で10分間インキュベートした。細胞は
以下のパラメータ、すなわち、キャパシタンスエクステンダ作動、ボルト数:250
V、キャパシタンス:960μfを使用し、BioRad Gene Pulserを用いてエレクトロ
ポレーションを行った。エレクトロポレーション後、形質転換体混合物は、氷上
で10分間インキュベートした。次いで、細胞をT25フラスコに5 mlの完全RPMI
培地と共に入れた。トランスフェクション後3日目に、0.5 mg/mlの濃度にて培
地にハイグロマイシンを添加した。トランスフェクション後14日目に、接着ア
ッセイを
実施した。
IRPでトランスフェクトされたJY細胞によって、ICAM-1へのLFA-1依存性接着及
びVCAM-1へのα4β7接着における減少が実証された。LFA-1及びα4のレベルは、
トランスフェクト体の間で有意に相違しておらず、従って、これらによって接着
の減少が説明されることはない。
かくしてIRPは、β2またはβ7インテグリン依存性接着のモジュレーションに
対する、何らかの特異性を示すようである。JY細胞にて発現されたIRP-1は、β2
依存性の接着を優先的に減少させるらしく、一方IRP-2はβ7依存性の接着をダウ
ンレギュレートするようであった。B2-1トランスフェクト体は、β2及びβ7接着
の双方ともを低下させたことが示されている。IRP-1、IRP-2、またはB2-1のPHド
メインからなる欠切体の発現は、β2及びβ7依存性接着の双方ともを、概して減
じさせるようであった。以下の表2を参照されたい。表中、「+」は、接着の増
大を表し、「−」は接着の減少を示し、そして「NS」は接着に有意差がないこと
を表す。
これらの結果は、相違するアフィニティーを有するβ2またはβ7インテグリンと
直接的または間接的に相互作用するIRPのアミノ末端部分と符合し、インテグリ
ンの1つの型または他の型の選択的な調節を生じさせる結果を導くものと思われ
る。対照的に、PHドメインの機能及び相互作用は、相異なるインテグリンを調節
する経路における共通のシグナリングエレメントであるのかもしれない。このエ
レメントは、ヘテロトリマー性GTP結合タンパク質(例えば、Gαβγ)PIPn、
プロテインキナーゼC(PKC)またはPHドメインの未同定のなんらかのリガンド
であるかもしれない。この共通のシグナリングエレメントに結合するIRP PHドメ
インを破壊するアンタゴニストは、β2、β7ならびにおそらくはβ1及びβ3など
の他のインテグリンの接着を広範に調節することが予測されよう。これに対し、
インテグリンとIRPのアミノ末端の相互作用を破壊するアンタゴニストは、さら
に特異的にインテグリン依存性の接着を調節することが予測されうる。
インテグリン依存性細胞接着に対して最大限に活性化されていない白血球及び
白血球細胞系は、フォルボールエステルPMAなどのPKCアゴニストによって活性化
されることができる。PKC活性が細胞接着を誘導する機構は、あまり明確にされ
ておらず、PKCは、アフィニティーすなわち親和力のアップレギュレーションや
、細胞の扁平化(spreading)のために必要な細胞骨格の再構築に対してある程
度の効果を有するかもしれない。しかしながら、インテグリン依存性接着のIRP
ダウンレギュレーションに対するPKC活性化の効果は、PKCがIRPの下流または上
流に機能するかどうかを示唆するかもしれない。前記の、JYトランスフェクト体
のホルボール刺激が、LFA-1またはα4β7依存性接着をベ
クター対照レベルに復帰させることはあまりない。このように、調節性PKC基質
は、IRPによって調節される経路における上流にあるか、または、インテグリン
依存性接着の異なる経路もしくは局面をPKCが調節しているのかの、いずれかで
あろう。あるいは、IRPはインテグリン依存性接着の複数の局面を調節しており
、PKCの刺激がこれらのうちの1つのみに効果を及ぼすのかもしれない。IRPは、
インテグリンのアフィニティー、親和性(クラスター形成)(実施例4)、また
は膜の再利用に影響することによってインテグリン依存性の接着を調節するかも
しれない。IRPを発現しているCOS細胞でLFA-1レベルが減少しているが、IRP PH
ドメインを発現しているCOS細胞では減少しないことによって、インテグリン再
循環における役割が示唆される。
インテグリンの細胞表面発現に対してIRPが効果を奏するか否かを調べるため
に、αLβ2、α4β7、またはICAM-2のいずれかをコードするDNAと共に、全長のI
RP-1、IRP-2、またはB2-1のいずれかをコードするDNA(または、対照DNAベクタ
ーpC1-neoもしくは14-3-3θをコードするDNA)で、COS細胞をコトランスフェク
トした。モノクローナル抗体ICA4.1(α4に対して免疫特異性)、TS1/22(αLに
対して免疫特異性)、3S3(β1に対して免疫特異性)、または92C12F(ICAM-2に
対して免疫特異性)を使用して、表面発現に対する細胞染色(蛍光強度及び陽性
細胞の百分率)を行った。β1は、COS細胞にて内在性に発現されており、β1を
コードするDNAは、トランスフェクションのために必要でなかった。
以下の表3に示す結果より、細胞表面上のインテグリンを除去して置換する、
de novoの生合成または再循環プロセスのダウンレギュレーションをおそらくは
介して、IRP-1によってαLβ2インテグリンの細胞表面発現が減じられることが
示唆さ
れる。
上述の通り、異なるファミリーメンバーは、インテグリン依存性接着に対して
反対の効果を有する可能性がある。このような反対の効果は、インテグリン結合
を調節する、異なるエフェクターまたはシグナリング経路と相互作用しているIR
Pに符合するものである(後述)。これらの経路における冗長性によって、なぜI
RPの過剰発現に起因して、IL-8によって誘導可能な接着が一部のみ阻止されるの
かが、部分的に説明されるかもしれな
い。加えて、IRP-1過剰発現に伴う接着の減少は、別のIRPの前接着性(proadhes
ive)活性に拮抗するIRP-1に起因するのかもしれない。B2-1(サイトヘシン(cy
tohesin)-1)の前接着性活性は、JY-8細胞に独自ではなく(実施例5)、Jurka
t T-リンパ系細胞における過剰発現でも観察されている(Kolanusら、Cell、86
巻、233〜242頁(1996))。しかしながら、JY-8細胞に比較して、Jurkat細胞にお
ける発現は、αLβ2結合を誘導した。しかして、B2-1は細胞型特異的に、α4β7
またはαLβ2のいずれかの結合を誘導するかもしれない。特定のインテグリンの
結合特性が細胞型で変化しうるということから、これは驚くに値しないことであ
る(Chanら、J.Cell.Biol.、120巻、537〜343頁(1993)、Kassnerら、J.Exp.Med
.、178巻、649〜660頁(1993))。
次に、ICAM-1に接着性のJY-8(実施例5)トランスフェクト体において、IRP/
GFP融合タンパク質の細胞下局在性を調べた。ガラススライドをICAM-1/Fc(10μ
g/ml)を含む50 mM重炭酸塩緩衝液、pH 9.6で、4℃にて18時間被覆し、続いて
10%FBSを含むRPMI培地で濯いだ。GFP/IRP融合体タンパク質を発現しているJY-8
トランスフェクト体を、ICAM-1を被覆したガラススライド上に接着させた。
IRP/GFP融合タンパク質の細胞下分布を調べるため、及び細胞細胞内局在で、I
RP-1のいずれの領域が見出されるかを同定するために、JY-8トランスフェクト体
を、蛍光共焦点顕微鏡によって調べた。IRP-1、IRP-2及びB2-1は、ICAM-1に這行
する(crawl)細胞の先端皮層細胞骨格領域に主に局在していた(実施例8参照
)。IRP-1のPHドメインは、原形質膜領域に局在していたが、一方Sec7ドメイン
は、より拡散した、細胞質での局在を示していた。GFPを発現するトランスフェ
クト体では、細胞質
で拡散した蛍光発生が認められた。これらの結果、原形質膜への局在を支持する
PHドメインは、他のドメインと共に機能して、野生型のIRPを先端に局在化させ
ることが示唆される。
層板形成(lamelli formation)の際のIRPの分布を調べるために、ICAM-1に這
行する、JY-8 IRP-2/GFPトランスフェクト体の経時撮影像を分析した。IRP-2融
合トランスフェクト体は、IRP-1またはB2-1トランスフェクト体に比べて化学走
性移動のレベルが高いことが示されるので、IRP-2を過剰発現しているJY-8細胞
を選択して、IL-8に応答して移動することができる細胞における局在性を調べた
。IRP-2は、層板形成の部位で、且つその形成前に、JY-8細胞の一端に沿って濃
縮することが見出された。経時撮影像から、その発生に付随して、IRP-2は層板
に再び局在化することが示される。かように、IRP-2はごく初期に、且つ層板足
部(lamellipodia)伸長時にわたって存在している。
IRPは、移動する細胞の先端におけるインテグリン機能の支持において役割を
果たすようである。別々に発現した場合に、Sec7ドメインが拡散性に位置し、P
Hドメインは膜に一律に局在しているので、この局在化はSec7及びPHドメインの
双方の相互作用に依存しているらしい。PHドメインの相互作用が、IRP及びADPリ
ボシル化因子(ARF)を含む複合体の機能的な膜局在化を支持するのかもしれな
い。ARNO(本出願の優先権主張出願後に発表された、IRP-1であるかもしれない
タンパク質)GTP交換因子(GEF)活性が、PHドメインへのホスファチジルイノシ
トール結合によって刺激される(Chardinら、Nature、384巻、481〜484頁(1996)
)ので、ARFは、この部位で活性化状態になることができる。膜輸送におけるARF
の役割によって、移動している細胞の先端への、及びかかる先端からのインテグ
リンの局在化を
、ARFが媒介することができることが示唆される。これは、先端部における偏っ
た(polarized)エキソサイトーシスが、細胞の移動運動(locomotion)におけ
る重大な役割を果たすかもしれないという知見(Bretcher、Cell、87巻、601〜6
06頁(1996))に一致するものと考えられる。
加えて、ARF GTP交換の阻害剤であるBrefeldin Aは、創傷癒合モデルにおける
層板形成及び繊維芽細胞の移動を阻害する(Bershadskyら、Proc.Natl.Acad.Sci
.U.S.A.、91巻、5686〜5689頁(1994))。B2-1は、β2の細胞質ドメインに直接
結合することが報告されている(Kolanusら、Cell、86巻、233〜242頁(1996))
。しかして、IRPは、インテグリンに結合して、化学走性の1以上の工程におい
て機能するかもしれないrasスーパーファミリーのメンバーを活性化しうる。
インテグリン親和性における役割も、示唆される。ARF及び、rasスーパーファ
ミリーの他のメンバーであるRhoAは、共同的に作用して、ホスフォリパーゼD(
PLD)を活性化する(Kuribaraら、J.Biol.Chem.、270巻、25667〜25671頁(1995)
)。PLDは、異なる細胞型において様々なアゴニストによって活性化され、そし
てホスファチジルコリンを切断し、コリン及びホスファチジン酸を生産する(Bo
manら、Trends Bio.Chem.Sci.、20巻、147〜150頁(1995))。ホスファチジン酸
は、精製されたインテグリンGPllblllaのフィブリノーケンへの結合を増加させ
ることが示されており、他の負に荷電した様々な脂質ではそのようなことはなか
った(Smythら、J.Biol.Chem.、267巻、15568〜15577頁(1992))。IRPは、イン
テグリンの膜局在性または親和性を変化させるシグナリング経路における調節因
子としても機能する。近年、ARNOは、GDP/GTP交換を誘導し、しかして、rasスー
パーファミリーのメンバーで、ARF-1を活性化するこ
とが報告されている(Chardinら、Nature、384巻、481〜484頁(1996))。6つの
既知のARFがあり、そして、45〜60%のアミノ酸の同一性を保持するさらに4つ
のARF様タンパク質がある(Bomanら、Trends Bio.Chem.Sci.、20巻、147〜150頁
(1995))。ARFは、ゴルジ、小胞及び原形質膜に局在し、膜輸送、エンドサイト
ーシス及びエキソサイトーシスに関係している(D'Souza-Schoreyら、Science、
267巻、1175〜1178頁(1995)、Petersら、J.Cell Biol.、128巻、1003〜1017頁(1
995)、Bomanら、Trends Bio.Sci.、20巻、147〜150頁(1995))。IRPは従って、
ホスファチジン酸の局所的な増大を調節し、変わって、PKCアゴニストのジアシ
ルグリセロール(DAG)への転換を通じて直接的または間接的にインテグリン結
合をアップレギュレートするのかもしれない。
実施例5
N-末端mAbエピトープタグを持っている、IL-8に対する機能性受容体を安定に
発現するJY細胞系をつくった。この細胞系を、本明細書中では「JY-8」と称する
。αLβ2依存性接着における役割を調べるために、JY-8細胞系にてIRPを過剰発
現させた。JY-8細胞は、通常は1つのβ2インテグリン、αLβ2及び、1つのα4
インテグリン、α4β7インテグリンを発現している(Chanら、J.Biol.Chem.、26
7巻、8366〜8370頁(1992))。IRP発現構築体は、以下の段落に記載する通りに、
IRP-1、IRP-2及びB2-1の野生型配列のアミノ末端に融合された緑色蛍光タンパク
質(GFP)を用いて作製した。
緑色蛍光タンパク質(GFP)IRP融合タンパク質に対する発現構築体は、以下の
ようにして調製した。発現ベクターpCEP4(Invitrogen、San Diego、カリホルニ
ア州)を、NheI及び
BamHIで消化した。pEGFP(Clontech、Palo Alto、カリホルニア州)からの、Nhe
I及びBamHIで消化された、GFPをコードするDNA断片は、NHeI/BamHIで消化された
pCEP4に連結された。得られたプラスミド、pCEP4/GFPを、IRP融合構築体をつく
るために使用した。
pCEP4/GFPにIRP DNA断片をサブクローニングするために、PCR反応を行い、そ
の後に行う枠内での連結のため、断片の端部にXho I及びHind III制限酵素部位
を付加した。
PCRのために、以下のプライマー対を使用した:
IRP-1 GFP融合体用に、
加えて、オリゴヌクレオチド:
でMuta-Gene ファージミドin vitro変異誘発キット(バージョン2、BioRad、He
rcules、カリホルニア州)を使用してアミノ酸置換変異体を作製した。S3.GFP.X
ho.5及びS3.GFP.H3.3のプライマーを用いた変異体cDNAのPCR増幅を行って、GFP
融合体のために適切な制限酵素部位を作製した。
得られたPCR産物をpCEP4/GFPのXhoI及びHindIII部位に連結した。大腸菌XL1 B
lue形質転換体から単離されたクローンを、配列決定によって確認した。すべて
の発現ベクターは、融合タンパク質のアミノ末端にGFPを持つIRP/GFP融合タンパ
ク質をコードするように設計された。発現構築体を用いてエレクトロポレーショ
ンを行うことにより、JY-8細胞をトランスフェクトし、トランスフェクト体は、
ハイグロマイシンB(0.5 mg/ml、Calbiochem、San Diego、カリホルニア州)を
使用して選択した。
加えて、Sec7またはPHドメインにおけるアミノ酸置換を有するIRP-1 GFP融合
タンパク質を作製した。第156位でのアラニンのグルタミン酸への置換(E156/A
)は、Arabidopsisタンパク質、EMB30のSec7ドメインでの、細胞接着に対するこ
の変異の効果(Shevellら、Cell、77巻、1051〜1062頁(1994))に基づいて選択
した。同様に、PHドメインにおける置換(R279/A)は、X-関連無ガンマグロブリ
ン血症(XLA)を惹き起こすBTKのPHドメインにおいて同定された変異(Yaoら、P
roc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、91巻、9175〜9179頁(1994))に基づいて選択したが
、
これはPKC(Yaoら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、91巻、9175〜9179頁(1994))
及びイノシトール1,3,4,5-テトラキスホスフェート(IP4)(Fukudaら、J.Biol.
Chem.、271巻、30303〜30306頁(1996))結合に重要であるかもしれない。GFPに
融合されたIRP-1のSec7ドメインまたはPHドメインのいずれかを含む欠切体も作
製した。
イムノブロッティングによって、IRP/GFP融合タンパク質が、すべてのJY-8細
胞トランスフェクト体にて、同様のレベルで発現されていることが示された。融
合タンパク質の発現を確認するために、JY-8トランスフェクト体の界面活性剤溶
解物のイムノブロッティングを、IRP-1、B2-1、IRP PHドメイン及びGFPに対して
特異的な抗体を用いて行った。SDS-PAGEでのGFP融合タンパク質の移動は、それ
らの予測サイズと一致していた。加えて、融合タンパク質は、GFP抗体のみなら
ず、適切なIRP-1、B2-1またはPHドメイン特異性mAbに結合した。内在性IRP-1及
びB2-1も、JY溶解物で検出された。いくつかのブロッティングから見積もったと
ころ、すべての7つの融合タンパク質が、内在性IRP-1及びB2-1のレベルより少
なくとも10倍高いレベルで発現されることが示唆された。
インテグリン依存性の細胞接着は、様々な刺激によって誘導可能である(Diam
ond及びSpringer、Curr.Opin.Biol.、4巻、506〜517頁(1994))。接着を誘導す
るための既知の刺激には、IL-8などのGタンパク質結合ケモカイン受容体に対す
るアゴニスト、またはPMAなどのPKCに対するアゴニストが包含される。これらの
刺激は、インテグリン依存性の接着を増加または安定化するように、細胞骨格の
構築及びインテグリンのクラスター形成を調節しうる、シグナリング経路を活性
化する。PMAなどのケモカイン及びアゴニストは、接着を増大させるため、また
は
in vitroアッセイでの接着の最高レベルを調べるために、慣例的に利用される。
ICAM-1またはVCAM-1へのIRP/GFP融合タンパク質結合を測定する接着アッセイ
を、Morlaら、Nature、367巻、193〜196頁(1994)の変法を使用して、96ウェルの
Easy Washプレート(Corning)にて実施した。各ウェルを、ICAM-1/Fc(5μg/ml
)またはVCAM-1/Fc(2μg/ml)を含む50 mM重炭酸塩緩衝液(pH 9.6)50μlで被
覆した。100%の投入細胞結合を定量するためにCD18 mAb(22F12C、ICOSコーポ
レイション)で、またはバックグラウンドの結合を調べるためにBSAブロックで
、所定のウェルを被覆した。室温にて1時間、1%BSAを含むPBSでプレートをブ
ロッキングした。次いで、ウェルを濯ぎ、PMA(20 ng/ml)またはIL-8(25 ng/m
l)を含むかまたは含まない、200μlの接着用緩衝液(5%FBS、5 mM KCl、150 m
M NaCl、1 mM MgCl2、1 mM CaCl2、20 mM HEPES、10 mM D-グルコース)を添加
した。次いで、JY-8細胞(5 x 106/mlの100μl)を各ウェルに添加し、プレート
を5%CO2中で37℃にて5または30分間インキュベートした。10%のグルタルアル
デヒド溶液50μlを添加して接着細胞を固定し、0.5%のクリスタルバイオレット
(SIGMA)溶液で染色した。洗浄して70%エタノールを加えた後、SPECTRAmax(
商標名)250 Microplate Spectrophotometer System(Molecular Devices)を使
用して570 nmでの吸光度を測定することにより、接着細胞を定量した。以下の式
を使用して、接着細胞の百分率を決定した:
固定化されたICAM-1またはVCAM-1へのJY-8トランスフェクト体の接着は、IL-8
またはPMA刺激下だけでなく、無刺激の静的条件下でも測定した(基底レベルの
結合)。基底レベルの結合に比べて、GFPのみを発現しているJY-8細胞(対照)
は、IL-8の存在下に、ICAM-1への結合の3〜4倍の増大及びVCAM-1への結合の2
倍の増大を示した。VCAM-1へのIL-8で誘導可能な接着は、5分で認められたが、
5分から30分の間の基底レベルの結合の上昇により、刺激された場合の結合と
刺激されない場合の結合との差は減少した。引き続いて30分間アッセイを行っ
た。PMA処理の結果、ICAM-1及びVCAM-1への接着が4倍以上増加した。IRP-1を過
剰発現しているJY-8トランスフェクト体は、同等かそれ以上のレベルのGFPを発
現している対照のトランスフェクト体に比べて、ICAM-1への結合が40〜50%減少
していることが示された。この減少は、基底及びIL-8で刺激された接着に対して
は明らかであったが、PMAで誘導された接着に対しては明示されなかった。IRP-1
を過剰発現しているJY-8トランスフェクト体のVCAM-1への結合も、IL-8刺激の条
件下ではおよそ40%減少し、基底またはPMAで刺激された条件下では減少しなか
った。これらの結果から、IRP-1はケモカインに優先的に作用するが、PMAで刺激
された接着に対しては作用せず、そしてIRP-1の過剰発現が概して細胞を接着に
対して無力化させることはないことが示唆される。
接着の阻害に対する、異なるIRP-1ドメインの寄与を調べるために、アミノ酸
置換及び欠失変異体を発現するJY-8細胞を試験した。Sec7及びPHドメインにおけ
るアミノ酸置換は、接着に対するIRP-1過剰発現の効果を排除した。IRP-1 Sec7
ドメイン変異体E156/A、及びPHドメイン変異体R279/Aを発現しているトラン
スフェクト体は、GFPを発現しているJY-8細胞のレベルと同等に、ICAM-1及びVCA
M-1との結合のレベルを示す。加えて、IRP-1Sec7またはPHドメインの発現はそれ
ぞれ、野生型IRP-1ほど有効にICAM-1またはVCAM-1のいずれかへの結合を減少さ
せることはなかった。このように、Sec7及びPHドメインの双方は共に機能して、
ICAM-1及びVCAM-1へのIL-8で刺激された接着を調節する。
IRP-1に加えて、IRP-2及びB2-1過剰発現のJY-8接着に対する効果を調べた。IR
P-2を過剰発現しているJY-8トランスフェクト体は、GFPトランスフェクト体に比
べて、ICAM-1への結合の基底レベル、またはICAM-1及びVCAM-1へのIL-8で誘導さ
れる結合のレベルが、およそ20%、微弱に減少していることが示された。これに
対し、B2-1を過剰発現しているトランスフェクト体は、IL-8で刺激されるICAM-1
に対する結合は対照レベルであるが、VCAM-1への結合は一貫しておよそ50%増加
されることが示された。このように、IL-8で刺激される、VCAM-1に対する接着に
おけるB2-1過剰発現の効果は、IRP-1及びIRP-2の効果と逆であり、そしてα4β7
/VCAM-1相互作用に対して選択的である。
ICAM-1及びVCAM-1に対するJY-8接着の、IRPの過剰発現に伴うモジュレーショ
ンは、αLβ2またはα4β7の細胞表面レベルの変化に帰することはできない。GF
Pを発現しているトランスフェクト体に比して、IRPを過剰発現している、相違す
るJY-8トランスフェクト体でのαLβ2またはα4β7の発現の量には、比較的わず
かな差しかなかった。IRP-1 Sec7を過剰発現しているJY-8細胞では、α4β7の発
現がある程度減少しており、これらの細胞がVCAM-1に対する接着の減少を示すこ
とはなかった。
実施例6
インテグリンα4β7は、流動条件下で、内皮細胞リガンドのVCAM-1及びMadCAM
-1へのリンパ球の付着及び回転接着を媒介することができる(Berlinら、前出(1
995))。α4β7で媒介される細胞付着及び回転をIRP発現がもたらすのか否かを
調べるために、流動条件下でのJYトランスフェクト体の結合を定量した(Berlin
ら、前出(1995))。加えて、IRP発現に起因するα4β7の親和性における可能な
変化を調べるために、流動条件下での細胞結合を、静的接着の次に実験した。
内在性のα4β7を発現するJY細胞を、全長のIRP-1(JYIRP-1)、IRP-2(JYIRP -2
)、またはB2-1(JYB2-1)をコードする配列、またはベクター対照DNA(JYVEC
)のいずれかでトランスフェクトし、固定化されたVCAM-1/イムノグロブリン(V
CAM-1/Ig)キメラタンパク質を含む流動システムループへと導入した(Vonderhe
ideら、J.Cell.Biol.、125巻、215〜222頁(1994))。初期の流速は、3ダイン/c
m2であり、これを1分間維持した。次の5分間は、流速を1.5ダイン/cm2に下げ
たが、この間JYVECトランスフェクト体及びJYB2-1トランスフェクト体(低度)
で、付着及び回転を行う能力が示された(図2)。IRP-1またはIRP-2、JYIRP-1
及びJYIRP-2のいずれかでトランスフェクトされた細胞は、全く、またはごくわ
ずかしか付着しなかった。
次に、トランスフェクトされた細胞を、流動なしで、固定化リガンドの存在下
にインキュベートし、この際には、JYIRP-1/VCAM-1またはJYIRP-2/VCAM-1結合の
許容は不充分であった。静的結合の後に、次なる4.5分間にわたって、流速を
1.5から9ダイン/cm2に漸増的に高めた。JYB2-1及びJYVECの結合は双方とも、流
速が3ダイン/cm2に到達するにつれて減少した(図2)。2つのタンパク質に対
する結合の、類似した減少速度から、IRP-3及びVECに対する類似の結合親和性が
示唆される。
アッセイの結果から、IRP-1及びIRP-2発現によって、流動及び短期の静的条件
下でのVCAM-1に対するα4β7の結合能が排除されることが示唆される。しかしな
がら、B2-1の発現は、付着及び回転の効率を低下させるのみであるらしい。
ICAM-1に対する内在性LFA-1の結合に対する、IRP-1及びIRP-2発現の効果を調
べるために、前記のごとくトランスフェクトされたJY細胞を、ICAM-1が固定化カ
ウンター受容体であることを除いては同様のアッセイにて利用した。JYB2-1細胞
以外のトランスフェクトされたJY細胞はすべて、1.5ダイン/cm2にてICAM-1上に
付着及び回転した。付着の効率は、しかしながら、α4β7/VCAM-1結合に比して
低下していた(図3)。ICAM-1への接着はJYIRP-1細胞(結合は増加したが、最
高値は低かった)を除くすべてのトランスフェクト体について、静的結合の1分
後に顕著に増加した。静的結合後に流速を高めるにつれて、JYIRP-1、JYB2-1及
びJYVEC細胞のICAM-1結合は減少した。JYIRP-2細胞結合は、しかしながら、7.5
ダイン/cm2の流速まで結合が検出されたので、流速の増大に最も耐性であると考
えられた。これらの結果から、流動条件下でのICAM-1に対するLFA-1の付着をB2-
1発現が排除すること、静的条件下でのLFA-1/ICAM-1結合をIRP-1が低下させるこ
と、及びLFA-1とICAM-1との間の高い親和性結合をIRP-2発現が支持することが示
される。
実施例7
IRP-1及びB2-1に特異的なモノクローナル抗体を作製するために、Hisでタグ付
けした、大腸菌より発現及び精製されたIRP-1及びB2-1で、マウスを免疫付与し
た。IRP-1及びB2-1のコード領域を、ヒスチジンタグをコードする配列に対して
C末端に、pET15b(Novagen、Madison、ウイスコンシン州)へとフレーム
内に連結し、こうしてIRP-1及びB2-1タンパク質が、N-末端にヒスチジンタグ付
けされたタンパク質として大腸菌株BL21lysSにて発現されるようにした。組換え
タンパク質は、標準法によって精製した(Qiagen、Chatsworth、カリホルニア州
)。
Tjoelkerら、J.Biol.Chem.、270巻、25481〜25487頁(1995)、に概して記載さ
れる通りに、ハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマシリーズ200について
、6から12週齢の5匹のBalb/cマウスを、それぞれ、第0日に予備採血し、次
いで完全フロインドアジュバント中に懸濁された、大腸菌で生産された67μgのH
isB2-1で皮下に免疫付与した。第21日に、不完全フロインドアジュバント中、
25μgのHisB2-1で、各マウスを追加免疫した。第34日に試験用の血液採取を行
い、ウェスタンブロッティングによって試験した。10%の還元SDS-PAGEから、10
0 ngのHisB2-1タンパク質をPVDFに転写し、次いで小片に切断した。3%BSA、0.2
%Tween 20を含むCMF-PBSで大気温にて1時間、ブロットをブロッキングした。
免疫前の血清及び免疫血清を1:500にブロッキング緩衝液中で希釈し、そして
その小片と共に2時間、大気温度でインキュベートした。小片は、2%Tween 20
を含むCMF-PBSで3回洗浄し、次いでヤギ抗マウス(Fc)-HRPと共に1時間インキ
ュベートした。4回洗浄した後に、小片はRenaissance 化学発光試薬(NEN)で
発色させた。マウス#2413に、第45日に25μgのHisB2-1タンパク質を含むCMF-P
BSで腹腔内に最終の追加免疫を行い、4日後に脾臓を摘出した。
ハイブリドーマシリーズ233については、6から12週齢の5匹のBalb/cマウ
スを、それぞれ、第0日に予備採血し、次いで完全フロインドアジュバント中に
懸濁された、大腸菌で生産された30μgのHisIRP-1で皮下に免疫付与した。第2
2日に、不完
全フロインドアジュバント中、10μgのHisIRP-1及び、第45日に5μgのHisIRP
-1で、各マウスを追加免疫した。第55日に試験用の血液採取を行い、HisIRP-1
及びHisIRP-2に対するウェスタンブロッティングによって試験した。マウス#252
0は、第133及び134日にそれぞれ、50μgのHisIRP-1を含むCMF-PBSで腹腔
内に追加免疫を行い、第137日に脾臓を無菌的に摘出した。
融合は、下記の通りに行った。概説すると、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビ
ン酸ナトリウム、 100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン
を添加した無血清のRPMI 1640(RPMI)(ギブコ(Gibco)、カナダ)の中に沈めた2
枚のガラス顕微鏡スライドの磨りガラス状の(frosted)端部の間で脾臓を擦り
潰すことによって、単一細胞の懸濁液を形成した。細胞懸濁液を、70メッシュの
滅菌したNitex細胞濾過器(Becton Dickinson、Parsippany、ニュージャージー
州)を通して濾過し、そして、200× gで5分間遠心分離して、濾過物を2度洗
浄し、そのペレットを、20 mlの無血清RPMI中に再懸濁した。3匹の未処置Balb/
cマウスから摘出した胸腺細胞を、同様に調製した。
NS-1ミエローマ細胞を、11%のFetalclone血清(FBS)(Hyclone Laboratories社
、Logan、ユタ州)を含むRPMI中にて融合の前に対数増殖期に3日間保持しておき
、200 gで5分間遠心分離して、ペレットを前の段落に記載の通りに2回洗浄し
た。洗浄後、各細胞懸濁液は無血清RPMIにて最終容量10 mlとし、計数した。
脾臓細胞は、5:1の割合でNS-1細胞と合わせ、遠心分離してその上清は吸引し
た。細胞ペレットを変位させ、37℃のPEG 1500(75mM Hepes、pH 8.0中、50%)
、(Boehringer
Mannheim)2 mlを、1分間にわたってかき混ぜながら加え、続いて、さらに無血
清RPMI 14mlを7分間かけて加えた。さらに16mlのRPMIを添加し、200 gで10分間
細胞を遠心分離した。上清を廃棄した後、ペレットは、15%FBS、100μMヒポキ
サンチンナトリウム、0.4μM アミノプテリン、16μM チミジン(HAT)(Gibco)、
25単位/ml IL-6(Boehringer Mannheim)及び1.5×106個の胸腺細胞/mlを含む、20
0mlのRPMI中に再懸濁した。懸濁液を、96ウェルの平底組織培養プレート(Corni
ng、連合王国)へ、ウェル当たり200μlで分配した。プレート中の細胞には、18
Gの針(Becton Dickinson)を用いて各々のウェルからおよそ100μlを吸引し、
そしてウェル当たり100μlの培養用(plating)培地(10単位/mlのIL-6を含み胸
腺細胞を欠いている以外は、前記に同じ)を加えることによって、スクリーニン
グの前に3から5回、栄養を供給した。
融合200からの上清は、先ず、免疫原についてELISAによってスクリーニングさ
れ、ヤギ抗マウスIgG(fc)セイヨウワサビペルオキシダーゼ接合物で検出を行っ
た。最高のシグナルを与える30のウェルからの上清を、免疫原についてのウェ
スタン分析によって再検査した。アッセイの結果に基づき、さらなるクローニン
グのために9つの融合ウェルを選択した。9つのウェルは、200Aから200Iまでと
、命名した。
融合233からの上清は、先ず、HisIRP-1及びHisIRP-2が被覆されたプレートで
のELISAによって調べた。HisIRP-1と反応して、HisIRP-2とは反応しないウェル
からの融合体を、さらなるクローニングのために選択した。
これらの融合細胞は、引き続き、15%FBS、100μMヒポキサンチンナトリウム
、16μM チミジン、及び10単位/ml IL-6を含むRPMIを使用して、連続的にサブク
ローニングした。サブクロー
ニングは、二倍希釈または限界希釈(ウェル当たり0.5〜1.0細胞にて96ウェルプ
レートに播種することによる)のいずれかによって実施した。サブクローンプレ
ートのウェルは、目視的に評点し、最少密度のウェルでのコロニー数を記録した
。各クローニングの選択されたウェルを、前記の通りにELISAまたはウェスタン
ブロットによって、元の融合ウェルにて観察された反応性について調べた。クロ
ーニングは、細胞系200A、200B、200F、200H、200G、233E、233G、及び233Kに対
して完遂した。8つのハイブリドーマ細胞系からの抗体を、IRP-1、IRP-2、及び
B2-1と反応させることによってウェスタンブロッティングを実施した。Isotrip
キット(Boehringer Mannheim)またはイソタイプ特異的試薬(Zymed Laborator
ies、South SanFrancisco、カリホルニア州)を使用したELISAのいずれかを用い
て、8つのハイブリドーマ細胞系からモノクローナル抗体に対するイソタイプを
決定した。IGg2aイソタイプである200Gを除いて、すべての抗体はIgG1である。
ハイブリドーマ細胞系200A、200B、及び233Gは、アメリカン・タイプ・カルチ
ャー・コレクションに寄託された。
mAbの233シリーズを、ウェスタンブロッティングにてスクリーニングするため
に、ハイブリドーマ上清を使用することによりさらに試験した。概説すると、GF
P/IRP-1、GFP/IRP-2またはGFP/B2-1のいずれかでトランスフェクトされたJY-8細
胞(実施例5を参照されたい)を、1%のCHAPS緩衝液にて溶解した。氷上で30
分間かけて細胞を溶解し、次いで10分間、12,000 rpmで遠心分離した。試料用
緩衝液を上清に添加し、試料を4分間煮沸した。試料を8%のNovexゲルにかけ、
そしてPVDF膜に転写した。膜は、3%BSAを含有するTST(25mM Tris、pH 8.0、15
0 mM NaCl、0.2%Tween-20)中で1時間ブロッキングした。
ブロッキング溶液を除去し、結合用緩衝液(3%BSAを含むTST)にて1:20に希
釈したハイブリドーマ上清と置換して、室温にて1時間インキュベートした。膜
を、TSTで充分に洗浄し、次いで、室温にて30分間、HRPが接合されたヤギ抗マ
ウスIgG Fc断片(Jackson ImmunoResearch)とインキュベートした。TSTで洗浄
した後、ECL検出のためにRenaissanceキット(NEN)を使用し、膜をHyperfilm(
Kodak)に露光した。233A、233D、233G、233K、及び233Lからの上清はすべて、G
FP-Irp-1溶解液中のおよそ77 kDaのサイズのバンドを特異的に認識し、GFP-IRP-
2またはGFP-B2-1溶解液ではこれは認められなかった。233Gを使用した場合のシ
グナルが最も強かった。
前記と同様の方法を使用して、精製された200A及び200B mAbは、ウェスタンブ
ロッティングを用い、JY-8トランスフェクト体の溶解液からのGFP-IRP融合タン
パク質を検出する能力について試験された。双方のmAbとも、ウェスタンブロッ
ティングで、1μg/mlにて使用した。mAb 200Aは、GFP-Irp-1、GFP-IRP-2及びGFP
-B2-1を同等の良好さで認識し、一方、200Bは、優先的にGFP-B2-1を認識して、G
FP-Irp-1の認識は微弱であった(B2-1の場合に認められるレベルの10%未満)。
IRP-1欠切体の、GFPでタグ付けされたPHドメインを発現しているJY-8トランスフ
ェクト体の溶解液を含む、別のウェスタンでは、IRP-1、IRP-2及びB2-1の相同性
のPHドメインにおける共通のエピトープを200Aが認識することを示唆する、GFP-
IRP-1 PHドメイン欠切体に対して適切なサイズのバンドが200Aによって検出され
た。
ELISAによる組換えタンパク質に対する特異的な反応性について、ハイブリド
ーマ上清をスクリーニングした。加えて、IRP-1、IRP-2及びB2-1の大腸菌で発現
されたタンパク質を含むウェスタンブロットへの反応性によって、特異性を調べ
た。mAb
200A(IRP-1、IRP-2及びB2-1 PHドメインに対して反応性)、233G(IRP-1に対し
て反応性)及び200B(B2-1に対して反応性)を使用して、JY-8 IRPトランスフェ
クト体におけるGFP-IRP融合タンパク質の発現レベル及びサイズを調べた。
JY-8トランスフェクト体のインテグリン発現レベルを調べるために、標準的な
間接免疫蛍光法により、αLβ2に対して特異的なmAb、TS1/22(ATCC)、及びα4
に対して特異的なmAb、IC/A4.1(ICOSコーポレイション)で細胞を染色した。蛍
光は、FACS scanを使用したフローサイトメトリーによって定量した。
実施例8
化学走性は、基質への初期の接着ならびに偏った細胞における結合及び遊離の
相を通ってのインテグリンの循環を必要とするばかりでなく、先端へのトレーリ
ングからのインテグリンの再循環も必要とするものである。静的接着に加えて、
他のインテグリン機能にIRPが効果を及ぼすか否かを調べるために、化学走性に
対するIRPの役割を、化学走性移動アッセイによって調べた。このアッセイで、J
Y-8細胞は、IL-8の供給源に対して、インテグリン及びCAM依存性の態様にて移動
する。
アッセイは、Schreinerら、Immunol.、88巻、89〜96頁(1980)によって報告さ
れたアガロースでの細胞の移動に対する方法の変法であった。概説すると、6ウ
ェルのプレート(Falcon)を、重炭酸塩緩衝液(pH 9.6)中の、ICAM-1/Fc(25
μg/ml)またはVCAM-1/Fc(10μg/ml)(ICOSコーポレイション)のいずれかで
被覆した。0.5%BSA(Intergen)を含有するRPMI中に1%アガロースを載せた後
、プレートを4℃にて30分間インキュベートした。細胞をRPMIで洗浄し、0.5%
BSAを含むRPMI中に5 x 107/mlで再懸濁した。2.5 mmのゲルパンチャー(Pharmac
ia)を使用す
ることによってアガロースにウェルを形成し、直ちに10μlのIL-8(2.5μg/ml)
(PeproTech)または細胞懸濁液で満たした。プレートは、5%CO2中で37℃にて
8時間インキュベートした。次いで、2%グルタルアルデヒド溶液を添加するこ
とによって、細胞を固定した。アガロースを除去した後、蒸留水でウェルを濯ぎ
、乾燥させた。細胞移動の定量は、Diaphot顕微鏡(Nikon、東京、日本)、CCD-
72ビデオカメラ及びDSP2000デジタルプロセッサ(Dage、Michigan City、インデ
ィアナ州)及びMacintosh(商標)NIH Imageプログラム(米国国立衛生研究所(
NIH)で開発され、zippy.nimh.nih.govからの匿名のファイル転送プロトコル(F
TP)によってインターネットより、または、National Technical Information S
ervice、Springfield、バージニア州、パーツ番号PB95-500195GEIよりフロッピ
ーディスクで入手可能)からなるビデオ顕微鏡ワークステーションを使用して実
施した。
GFP/IRP融合タンパク質を発現しているJY-8細胞の化学走性を、前記の通りに
定量した。JY-8細胞におけるIRP-1、IRP-2及びB2-1の過剰発現によって、GFPを
発現しているトランスフェクト体に比して、ICAM-1またはVCAM-1についての化学
走性が減少した。IRP-1 PHドメイン置換変異体R279/Aの発現もまた、化学走性を
減少させた。しかしながら、R279/Aの発現によれば、野生型のIRP-1の発現より
も化学走性の減少の有効性は低かった。IRP-1 PHドメインの発現によって、ICAM
-1及びVCAM-1についての化学走性も減少した。これらの結果から、IRP-1 PHドメ
インが、IRP-1によって介される化学走性の減少において主要な役割を果たして
いることが示唆される。IRP-1 Sec7ドメインでの置換体E156/Aもまた、化学走性
の減少を惹起こしたが、野生型のIRP-1過剰発現の場合に観察されたよりも減少
の程度は低かった
。IRP-1 Sec7ドメインの過剰発現の結果、ICAM-1についての化学走性の増加が惹
起こされたが、VCAM-1については化学走性の変化が観察されることはなかった。
これらの結果、Sec7ドメインもまた、化学走性に寄与しうることが示唆される
。このように、IRP-1のSec7及びPHドメインの双方ともが、α4β7及びαLβ2依
存性の化学走性移動において機能している。
前記のごとく、化学走性に対するIRP-1過剰発現の阻害効果は、Sec7(E156/A
)及びPH(R279/A)ドメインでの置換によって減じられ、従って、接着をもって
、双方のドメインが化学走性のIRP-1調節に寄与することが示唆された。野生型
に比して、IRP-1 R279/Aを発現しているJY-8トランスフェクト体の化学走性移動
が増加すること、及びIRP-1 PHドメインの発現でほぼ完全に阻止されることから
、PHドメインが化学走性において主要な役割を果たすことが示唆されるものであ
る。従って、IRP-1 PHドメインとホスファチジルイノシトールとの間の相互作用
(Harlenら、Biochemistry、34巻、9859〜9864頁(1995)、Pitcherら、J.Biol.Ch
em.、270巻、11707〜11710頁(1995))またはヘテロトリマーGタンパク質βγサ
ブユニット(Mahadevenら、Biochemistry、34巻、9111〜9117頁(1995)、Touhara
ら、J.Biol.Chem.、269巻、10217〜10220頁(1994)、Pitcherら、J.Biol.Chem.、
270巻、11707〜11710頁(1995))は、化学走性におけるIRPの役割に重大なもので
あると考えられる。
実施例9
モノクローナル抗体200B及び233Gを用いて、IRPの組織分布を調べた。抗体200
Bは、B2-1を優先的に認識し、そして抗体233Gは、IRP-1を特異的に認識する。
双方のモノクローナル抗体を、ヒト扁桃、脾臓、及びリンパ
節の凍結切片の免疫細胞化学的分析用に、10μg/mlで使用した。6ミクロンの厚
みの切片を、Supefrost Plus Slides(VWR)に重ね、-70℃にて保存した。使用
前に、スライドを-70℃より取り出し、55℃に5分間置いた。次いで、切片を冷
却した4%パラホルムアルデヒド中で2分間、次に冷アセトン中で5分間固定し、
そして風乾した。切片は、1%BSA、30%正常ヒト血清及び5%正常ラット血清を
含有する溶液中で、室温にて30分間ブロッキングした。室温にて1時間、各切
片を抗体200Bまたは233Gに付した。結合しなかった抗体は、TBS緩衝液中で3回
、一回の洗浄当たり5分間ずつ洗浄することによって除去した。次に、ラット抗
マウスビオチン接合抗体を、同じTBS緩衝液中で各切片に付し、室温にて30分
間インキュベートした。二次抗体を検出するためにABC-eliteキット(Vector La
bs)を使用し、室温にて30分間、各切片に付した。DAB基質(Vector Labs)を
付し、発色は水に浸漬することによって停止した。およそ5から10秒間、1%
オスミウム酸を適用することにより、発色を増強させた。増強は、スライドを水
中に入れることによって停止した。Hematoxylin Gillの2号にて切片を対比染色
し、脱水前に水、酸アルコール、炭酸リチウムで濯ぎ、そしてPermount(VWR)
に載置した。200B及び233Gの染色は、扁桃、脾臓、及びリンパ節で検出されたが
、対照のIgG1抗体では検出されなかった。
双方の抗体とも扁桃上の粘膜上皮に極めて強いラベルを呈した。双方の抗体と
も、層状になったうろこ状上皮のサブセットをラベルするようである。扁桃にお
ける200Bと233G結合の相違は、233Gで、二次濾胞(secondary follicle)内にラ
ベリングが認められることである。このラベリングは、200Bを用いた場合には認
められなかった。脾臓では、両抗体はその結合におい
て非常に類似しているように見受けられ、赤脾髄の領域での個々の細胞がラベル
されていた。リンパ節においては、200Bでは皮質深部において、233Gでは皮質深
部及び髄質皮質において、個々の細胞上に結合が観察された。200Bの場合に観察
されたラベリングパターンは、いたって点状のものであった。これは、233Gの場
合にも見られたが、もっと薄く広がっていた。
実施例10
PHドメインは、キナーゼ及びリンカータンパク質を包含する、機能的に多様な
、70を越えるタンパク質に存在する。PHドメインは、Gタンパク質βγサブユ
ニット、PIP2、及びPKCに結合する能力を付与することが報告されている。IRPの
SEC7モチーフもまた、このモチーフ以外では相同性を共有しない他のタンパク質
に存在しており、分子間相互作用を支持しているようである。加えて、IRPのキ
ネシン/ミオシンアミノ末端相同性が、他のタンパク質との相互作用を支持して
いることが同様に予測されうるかもしれない。IRPと相互作用するタンパク質は
、下記のごとき様々なアッセイによって同定されうる。
本発明によって企図される第1のアッセイは、2ハイブリッド選別である。2
ハイブリッドシステムは、酵母において開発され(Chienら、Proc.Natl.Acad.Sc
i.(USA)、88巻、9578〜9582頁(1991))、レポーター遺伝子を活性化する転写因
子のin vivoでの機能的再構成に基づくものである。詳細には、IRPと相互作用す
るタンパク質をコードするポリヌクレオチドは以下の工程を含む方法によって単
離される。すなわち、DNA結合ドメイン及び活性化ドメインを有する転写因子に
よって調節されるプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子を含むDNA構築
体で、適切な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトし;当該
宿主細胞にて、IRPの一部またはすべてと、転写因子のDNA結合ドメインまたは活
性化ドメインのいずれかとの第1融合体をコードする第1ハイブリッドDNA配列
を発現させ;IRP結合タンパク質と推定されるタンパク質の一部またはすべてと
、第1融合体に組み込まれていない、転写因子のDNA結合ドメインまたは活性化
ドメインのいすれかとの第2融合体をコードする第2ハイブリッドDNA配列のラ
イブラリーを宿主細胞で発現させ;かかる宿主細胞におけるレポーター遺伝子産
物の生産を検出することにより、特定の宿主細胞における、IRPと相互作用する
タンパク質のIRPに対する結合を検出し;そしてその特定の宿主細胞から、かか
る相互作用性タンパク質をコードする第2ハイブリッドDNA配列を単離する。ア
ッセイにて使用するために現在のところ好ましいのは、レポーター遺伝子、lacZ
レポーター遺伝子の発現を駆動するためのlexAプロモーター、lexADNA結合ドメ
イ及びGAL4トランス活性化ドメインを含む転写因子、ならびに酵母宿主細胞であ
る。
IRPと相互作用するタンパク質を同定するための他のアッセイには、IRPまたは
被検タンパク質を固定化し、固定化されなかった方の結合パートナーを検出可能
にラベルし、結合パートナーと共にインキュベートして、結合したラベルの量を
定量することが包含されうる。結合したラベルは、被検タンパク質がIRPと相互
作用することを示唆する。
IRPと相互作用するタンパク質を同定するためのいまひとつの型のアッセイに
は、蛍光剤が被覆(または含浸)された固体支持体にIRPまたはその断片を固定
化し、蛍光剤を励起することができる化合物で被検タンパク質をラベルし、固定
化されたIRPをラベルされた被検タンパク質に接触させ、蛍光剤による光放射を
検出し、そして、蛍光剤による光の放射を惹き起こす被検タ
ンパク質として、相互作用性タンパク質を同定することが包含される。あるいは
、このアッセイにおいて、相互作用性タンパク質と推定されるタンパク質を固定
化し、そしてIRPをラベルしてもよい。
実施例11
IRP相互作用のモジュレーターは、インテグリン、特にβ2及び/またはβ7イ
ンテグリンの細胞または細胞外基質リガンドへの接着を減じさせ、その結果、イ
ンテグリンの係合によって支持される機能、特に炎症プロセスでの細胞増殖、刺
激及び局在化のダウンレギュレーションを惹き起こすのに有用なものとして、本
発明により企図される。詳細には、例えば、好中球、好酸球、リンパ球、単球ま
たはNK細胞などといった細胞の炎症部位への流入を減少させること、及びこのよ
うな部位にすでに局在化された細胞の細胞毒性活性を減じることにより、炎症性
または自己免疫疾患の処置において、モジュレーターが治療的価値を有すること
が企図される。モジュレーターは、インテグリン依存性の接着をダウンレギュレ
ートすること、及びインテグリンの活性を刺激するよう、且つ共刺激的に拮抗す
ることの双方を行えるかもしれない。IRPのモジュレーターは、インテグリンの
係合が活性化効果を有し、そして前炎症性となることができるので、細胞外リガ
ンド(すなわち、阻止抗体または細胞外リガンドアンタゴニスト)へのインテグ
リン結合を干渉する化合物よりも利点を有するかもしれない。IRP結合のモジュ
レーターは、インテグリンのシグナリング経路を直接的または間接的に壊すかも
しれない。IRPのカルボキシ末端PHドメインの過剰発現が、インテグリンに特異
的な細胞接着の減少を惹き起こすことはないらしいので、特異性は、キナーゼま
たはSEC7との相同
性を有するアミノ末端配列に関係するのかもしれない。しかして、これらのアミ
ノ末端配列に結合するモジュレーターが、インテグリン特異的に、細胞接着をも
たらすかもしれない。他のタンパク質とIRPの相互作用をモジュレートする化合
物を同定するためのアッセイの例を、以下に示す。
第1のアッセイには、以下の工程を含む方法が包含される。すなわち、DNA結
合ドメイン及び活性化ドメインを有する転写因子によって調節されるプロモータ
ーの制御下にあるレポーター遺伝子を含むDNA構築体で、適切な宿主細胞を形質
転換またはトランスフェクトし;当該宿主細胞にて、IRPの一部またはすべてと
、転写因子のDNA結合ドメインまたは活性化ドメインのいずれかとの第1融合体
をコードする第1ハイブリッドDNA配列を発現させ;IRPと相互作用するタンパク
質の一部またはすべてと、第1融合体に組み込まれていない、転写因子のDNA結
合ドメインまたは活性化ドメインのいずれかとをコードする第2ハイブリッドDN
A配列を宿主細胞で発現させ;被検化合物の存在または非存在下でのかかる宿主
細胞におけるレポーター遺伝子産物の生産を測定することにより、特定の宿主細
胞における、IRPに対する相互作用性タンパク質の結合を検出することによって
、IRPと相互作用性タンパク質との間の相互作用に対する被検化合物の効果を評
価し;そしてモジュレーター化合物が存在しない場合でのレポーター遺伝子産物
の生産に比較して、レポーター遺伝子産物の生産を変化させる被検化合物として
、モジュレーター化合物を同定する。このアッセイにて使用するために現在のと
ころ好ましいのは、レポーター遺伝子、lacZレポーター遺伝子の発現を駆動する
lexAプロモーター、lexA DNA結合ドメイン及びGAL4トランス活性化ドメインを含
む転写因子、ならびに酵母宿主細胞である。
IRPと相互作用性タンパク質との相互作用をモジュレートする化合物を同定す
るためのいまひとつの型のアッセイには、IRPまたは天然のIRP相互作用性タンパ
ク質を固定化し、固定化しなかった方の結合パートナーを検出可能にラベルし、
結合パートナーと共にインキュベートして結合したラベルの量に対する被検化合
物の効果を定量することが包含され、ここで、被検化合物なしで結合したラベル
の量に比較して被検化合物の存在下に結合したラベルの量が減少していれば、被
検薬剤は、タンパク質とのIRPの相互作用の阻害剤であることが示唆される。逆
に、その化合物なしで結合したラベルの量に比較して被検化合物の存在下に結合
したラベルの量が増大していれば、モジュレーターと推定される化合物は、タン
パク質とのIRPの相互作用の活性化剤であることが示唆される。
詳細には、IRPタンパク質は、Hisでタグ付けされたかまたはHis-ケンプチド(
kemptide)でタグ付けされた組換えタンパク質として発現され、pET15bで形質転
換された大腸菌溶解物から、金属キレートクロマトグラフィー樹脂を通して精製
された。
組換えタンパク質を放射ラベルするためのよく知られた手段は、ケンプチドタ
グでペプチドにタグ付けすることである。ケンプチドタグは、プロテインキナー
ゼA(PKA)リン酸化部位を含む7アミノ酸のポリペプチド断片である。ケンプ
チドでタグ付けされた組換えタンパク質は、PKAの作用によってケンプチドタグ
にて放射ラベルされうる(Mohanrajら、Protein Expr Purif.、8巻2号、175〜18
2頁(1996))。
IRP(ケンプチドタグ付けされていない)は、Iodobead(商標)法(Pierce)
、またはラクトペルオキシダーゼ/過酸化水素法(Antibodies、A Laboratory M
anual、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlow及びLane編集、第9章、319〜3
58頁(1988)
の変法)を使用することのいずれかによって、遊離の125Iで放射ラベルした。放
射ラベルされたタンパク質は脱塩し、結合アッセイ用緩衝液中(150 mMまたは30
0 mMのいずれかNaClを含み、0.05%の界面活性剤(NP-40またはTriton X-100)
を含むかまたは含まず、保存剤として2 mMのアジ化物を含む、20 mM HEPESまた
は20 mMリン酸ナトリウムpH 7.5のいずれかの緩衝液)にて保存した。最終的な
放射比活性は、3〜10μCi[125I]/nmol IRPであった。
β2インテグリン細胞質尾部タンパク質(C尾部)は、pET15bで形質転換され
た大腸菌もしくは形質転換されたサッカロミセス種のいずれかから、His3E9でタ
グ付けされた組換えタンパク質として発現及び精製されたか、またはタグ付けさ
れていない、合成ペプチド調製物として得られた(Anaspec社、San Jose、カリ
ホルニア州、Macromolecule Resouces、Fort Collins、コロラド)。
インテグリンのC末端尾部は、96ウェルのミクロタイターScintistrip(商標
)(Wallac)プレートへ、1〜100μg/mlの間の濃度で、ウェル当たり50〜100μl
の重炭酸塩、pH 9.6中にて固定化し、4℃にて終夜インキュベートした。プレー
トを乾燥し、結合アッセイ用緩衝液中に溶解した1〜2%のウシ血清アルブミン(
BSA)を濾過滅菌したもの、350μ/ウェルでブロッキングし、室温にて1〜2時
間インキュベートした。ウェルは結合アッセイ用緩衝液で3回洗浄し、IRP添加
の直前に乾燥させた。
結合アッセイの形式は、競合/阻害結合アッセイまたは飽和結合アッセイのい
ずれかであった。競合結合アッセイでは、放射ラベルされたIRPを、1つの結合
モジュレーターの可能性を有するもの(ラベルされていないIRP、可溶性C尾部
またはBSAなどの非特異的対照ポリペプチド)と共に結合アッセイ用緩衝液
中で25〜100 nMに希釈した。アッセイは、ブロッキングされたScintistrip(商
標)ウェルに、100μlのラベルされたIRP/モジュレーターの可能性を有するもの
の溶液を添加(50,000〜200,000 cpm/ml)して開始し、次いで室温(22〜24℃)
にて1時間インキュベートして、結合アッセイ用緩衝液で3から5回迅速に洗浄
することにより、停止した。飽和結合アッセイは、0.01〜30μMの総濃度範囲に
わたって、放射ラベル:非ラベルIRPの割合を一定の1:20として試験したことを
除いては同様に行った。プレートを乾燥して、検出器を標準化した後にWallec M
odel1450液体シンチレーションカウンターでシンチレーションを測定した。ウェ
ル間の混漏(crosstalk)は、重炭酸塩緩衝液中に20μg/mlにてウェル内に被覆
された抗IRPモノクローナル抗体200Aによって捕捉された、G11、100μl中に25〜
100μMの放射ラベルされたIRPを含むScintistrip(商標)プレートを用いて補正
した。被検プレートに対するインキュベーション時間及び条件は、前記の結合ア
ッセイのものと同様とした。
結合は、BSAが被覆されたウェルで認められるカウント数を上回る、C尾部が
被覆されたウェルで認められる放射ラベルされたIRPのカウント数として測定し
た。特異的結合は、添加された非ラベルのIRPまたは可溶性C尾部にて減衰した
、C尾部で被覆されたウェルにおけるカウント数として評価した。
ヨウ素化されたIRP-1を利用する競合結合アッセイによって、IRP-1、IRP-1 Se
c7ドメイン、B2-1の、可能性を有するモジュレーターが、ヨウ素化されたIRP-1
とHis3E9タグ付けされ固定化されたβ2C尾部との間の結合を阻害することが示
された。0.001〜4μMまでの範囲の濃度で存在する場合に、IRP-1、IRP-1 Sec7ド
メイン、B2-1は、約75%まで、β2C尾部へのヨウ素化IRP-1の結合を減少させた
。固定化されたβ2C尾部へのIRP-1の
結合が、対照のペプチド(BSA)の添加によって減少せしめられることはなかっ
た。加えて、BSAでブロッキングされたミクロタイタープレート上にβ2C尾部が
固定化されていない第2の対照では、わずかにバックグラウンドのレベルで、放
射ラベルされたIRP-1の結合が示された。
結合アッセイは、β1、β3及びβ7を含む(これらに限定されない)、他のイ
ンテグリンのC尾部とIRPを利用することによる変法としてもよい。IRPまたはC
尾部は、[3H]-ホウ化水素ナトリウム、[125I]-Bolton-Hunter試薬、[35S]-代謝
性ラベル、プロテインキナーゼ[32P]-ラベル、または他の好適な放射ラベル交叉
結合法でラベルすることができる。タンパク質及びペプチドは、ミクロタイター
プレート(Nunc Covalink、Pierce Reactibind、Costar Labcoat等)上に、また
はビーズ(SPAなど)に固定化するとよい。結合アッセイは、インキュベーショ
ン時間を調整し、緩衝液の条件を変更して、当業者により変法とされうる。加う
るに、アッセイにおいて利用されるポリペプチドは、異なる合成ペプチド断片を
包含しえ、また、cDNA構築体の発現、天然の供給源からの単離及び化学合成など
を包含する、当業者によって理解される様々な手段によって調製されてもよい。
被検化合物がモジュレーターであることの判定は、結合アッセイに被検化合物を
添加することによって成し遂げられる。前記のごとく、結合の増大または減少に
よって、被検化合物がIRPのモジュレーターであることが示唆される。
IRP活性のモジュレーターを同定する上で有用と考えられる他の結合アッセイ
には、IRPの結合パートナー(ARF、ホスファチジルイノシトールまたは他の関連
化合物)に対する結合を定量するアッセイが包含される。これらのアッセイにお
いて、IRPまたはその結合パートナーが、ミクロタイタープレートまたはビ
ーズに固定化される。検出可能にラベルされたIRPまたは結合パートナーの結合
量が、適切な条件下で被検化合物の存在下及び非存在下に定量される。IRP活性
のモジュレーターは、結合パートナーへのIRPの結合を減少または増加させる化
合物である。
ホスファチジルイノシトールへのIRPの結合を定量するために、Hisでタグ付け
されたIRP-1 PHドメイン(5'HA IRP-1 PH)を、4℃にておよそ16時間、20μg/
mlの5'HA IRP-1 PHを含む重炭酸塩緩衝液、pH 9.6を100μlインキュベートする
ことによってミクロタイタープレート上に固定化した。次いで、ミクロタイター
プレートの内容物を静かに移し出し、およそ22℃にて1時間、1〜2%のヒトIgG
でブロッキングした。プレートは、アッセイ用緩衝液(25 mMトリス、pH 7.4、1
00μM NaCl、0.25% NP-40、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、1 mM MgCl2、0
.5% DTT)で3回洗浄した。10ナノモルの3H-イノシトールホスフェート(IPn)
(Du Pont、NEN)を22℃にて2時間、0〜100μモルの非ラベルIPnと共に100μl
のアッセイ用緩衝液中に添加した。ミクロタイタープレートを4回洗浄し、シン
チラントを添加した。シンチレーションカウンターで、結合した放射活性を測定
することにより、結合を定量した。その結果、対照に対して10倍まで(by a f
actor of ten)を越える量で、イノシトール(1、3、4、5)P4及びIP6に、Hisで
タグ付けされたIRP-1 PHドメインが結合することが示唆された。IRPとイノシト
ールホスフェートとの間の結合のモジュレーターは、このアッセイに被検化合物
を添加し、そして被検化合物の存在及び非存在下での結合の相違を定量すること
によって定量されるとよい。
IRPと相互作用性タンパク質との間の結合をモジュレートする化合物を同定す
るための、本発明によって企図されるさらに別の方法には、蛍光剤が被覆(また
は含浸)された固体支持体に
IRPまたはその断片を固定化し、蛍光剤を励起することができる化合物で相互作
用性タンパク質をラベルし、被検化合物の存在及び非存在下に、ラベルされた相
互作用性タンパク質を固定化されたIRPに接触させ、蛍光剤による光の放射を検
出し、そして被検化合物がない場合での蛍光剤による光の放射に比べて、蛍光剤
による光の放射に影響を及ぼす被検化合物として、モジュレーションを行う化合
物を同定する工程が包含される。あるいは、このアッセイにおいて、IRP相互作
用性タンパク質を固定化し、IRPをラベルしてもよい。
組合せライブラリー、ペプチド及び疑似ペプチド、限定された化学物質、オリ
ゴヌクレオチド、及び天然産物のライブラリーを、前記のごときアッセイにおけ
るモジュレーターとしての活性について、スクリーニングするとよい。
実施例12
IRP相互作用のモジュレーターの同定は、結合のために必要なタンパク質の部
分を明瞭に特定することによって容易になる。標準的な変異技術によるアミノ酸
置換が、タンパク質の結合領域の同定における使用に対して企図される。例えば
PCRなどによってタンパク質の欠切型を作製する欠失分析もまた、その欠失がタ
ンパク質の三次または四次構造を破壊せず、そのカウンター受容体によって最早
認識されなくなる場合に、結合領域の同定のために有用である。
結合に関わる重要なタンパク質領域の同定によって、結合活性のモジュレータ
ーと推定される物質の、さらに正確且つ効率的なスクリーニングが可能となる。
本発明は、小分子またはペプチドの大きなライブラリーや、さらに、β2、β7、
β1及び/またはβ3インテグリンとIRPとの相互作用をモジュレートする
能力について、また、他の相互作用性タンパク質とのIRPの相互作用をモジュレ
ートする能力について、片方または双方の結合パートナーに対して免疫特異性を
有する抗体を分析するための高処理量スクリーニングアッセイを企図するもので
ある。本明細書に開示された2ハイブリッドスクリーニング、シンチレーション
近接アッセイ(SPA)及び免疫学的方法論[例えば、酵素関連免疫吸収アッセイ
(ELISA)]は、それ自体HTS法ではないが、結合をモジュレートする能力につい
て挙げられている化合物の多くを試験するために、それらは適宜のものとするこ
とができる。SPA及びELISAはこの同定プロセスにおいて特に有用であり、報告さ
れた被検化合物の高処理量スクリーニングを許容すべく修飾することもできる。
本発明を特定の実施態様に基づいて記載してきたが、当業者であれば、修飾や
変更を着想するであろうことは理解されよう。従って、本発明は添付の特許請求
の範囲によってのみ、限定されるものである。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
G01N 33/566 C12P 21/02 C
// C12P 21/02 21/08
21/08 C12N 5/00 B
(C12P 21/02
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP
,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,
LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,N
Z,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI
,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,
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