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JP2001510994A - グラビンのタンパク質結合断片 - Google Patents

グラビンのタンパク質結合断片

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Publication number
JP2001510994A
JP2001510994A JP52802498A JP52802498A JP2001510994A JP 2001510994 A JP2001510994 A JP 2001510994A JP 52802498 A JP52802498 A JP 52802498A JP 52802498 A JP52802498 A JP 52802498A JP 2001510994 A JP2001510994 A JP 2001510994A
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Application number
JP52802498A
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English (en)
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スコット,ジョン,ディー.
ノエルト,ジェイ.,ブリアン
クローク,テレサ,エム.
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オレゴン ヘルス サイエンシーズ ユニバーシティ
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 本発明は一般に、グラビンのタンパク質結合断片及びこれら断片をコードするポリヌクレオチドに関する。タンパク質結合断片には、cAMP依存性プロテインキナーゼまたはプロテインキナーゼCのタイプII調節サブユニットに結合する断片が包含される。本発明はまた、前記タンパク質結合断片に対する抗体及びグラビンの結合タンパク質への結合をモジュレートする化合物を同定するためのアッセイを提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 グラビンのタンパク質結合断片 発明の属する技術分野 本発明は一般に、キナーゼの細胞内局在性を維持するタンパク質に関する。さ らに詳細には、本発明は、タンパク質であるグラビンのポリペプチド断片に関し 、このグラビンは、cAMP依存性プロテインキナーゼの調節サブユニットに、また はプロテインキナーゼCに結合する。本発明はさらに、グラビンとその結合パー トナーとの相互作用をモジュレートする方法に関する。 発明の背景 プロテインキナーゼは、あらゆる真核細胞に発現される普遍的な酵素であり、 生理学的刺激に対する細胞応答に関わっている。プロテインキナーゼは、基質タ ンパク質のホスフェート基に接着する。環状AMP(cAMP)依存性プロテインキナ ーゼ(PKA)は、cAMPに応答して基質タンパク質をリン酸化する、広い基質特異 性を有する酵素である。プロテインキナーゼC(PKC)は、細胞内Ca2+及びリ ン脂質に応答して基質タンパク質をリン酸化する酵素である。 多くのホルモンが、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPを生産する共通 のシグナル伝達経路を通じて作用する。cAMPの主たる作用は、ホロ酵素の調節サ ブユニット(R)ダイマーに結合してそれにより触媒(C)サブユニットを遊離 させて、PKAを活性化することである。遊離のCサブユニットはキナーゼ 活性化の部位近傍の基質タンパク質をリン酸化することによってホルモン応答を 増強する。 Rサブユニットの2つのクラスが同定されており、これは、タイプI及びタイ プIIPKAホロ酵素をそれぞれ形成するRI及びRIIサブユニットである。PKAイソ フォームの細胞内分布は相違しているようである。RIイソフォーム(RIα及 びRI)は主として細胞質にあり核成分としては認められないことが報告されて おり、他方RIIイソフォーム(RIIαまたはRIIβ)の75%までが、粒状であり (particulate)、細胞質膜、細胞骨格成分、分泌顆粒、ゴルジ装置、中心体及び /またはおそらくは核に会合している。 細胞質膜から特定の細胞内区画へのシグナルの細胞内トランスダクションは、 重要な生理学的プロセスを制御する、複雑且つ高度に調節された一連の事象であ る。細胞のホメオスタシスを維持するのに重要なシグナルトランスダクション経 路関与の例は、Hunterら、Cell、80巻225〜236頁(1995)に認められ、ここでは、 形質転換オンコジンが低分子量Gタンパク質、プロテインキナーゼ、またはホス ファターゼなどのシグナルトランスダクション成分をコードしていることが示さ れている。ホスファターゼは、タンパク質または他の化合物からホスフェート基 を除去する。キナーゼ及びホスファターゼ活性はこのようにして、基質分子をリ ン酸化及び脱リン酸化することによって細胞内シグナルトランスダクションを制 御するのである。今やこれらのタンパク質をコードしている多くの遺伝子が同定 されているので、研究の重点は、いかようにこれら酵素が介入して細胞での事象 を制御するのかに絞られ始めている。この作用における重大な要素は、各シグナ リング酵素の細胞内局在である。例えばNewton、Current Biology、6巻、806〜 809頁(1996)は、キ ナーゼ及びホスファターゼの正確な細胞内標的化が、これらの酵素を好ましい基 質へ方向付けし、そして無差別的なバックグラウンドのリン酸化及び脱リン酸化 を減じることを示した。 キナーゼ及びホスファターゼの標的化は、標的化タンパク質またはサブユニッ トとの会合を通じて成し遂げられる[Faux及びScott、TIBS、21巻、312〜315頁( 1996b)により概説]。例えば、チロシンキナーゼ(PTK)及びチロシンホスファ ターゼ(PTPase)活性は、下流の細胞質酵素と、SH2及びSH3ドメインを含むアダ プタータンパク質を通じて連関している。SH2ドメインは特定のホスホチロシル 残基を認識し、そしてSH3ドメインはあるキナーゼ及びホスファターゼに見出さ れるPxxpモチーフに結合する。Grb2、p85、IRS-1、Crk及びNckのようなモジュラ ーアダプタータンパク質は、シグナリング酵素のホスホチロシル残基を認識する 単一のSH2ドメインと、標的タンパク質の別々の集合にあるPXXPモチーフに結合 するSH3ドメインとを含んでいる。同様に、多くのホスホリパーゼ、キナーゼ、 ホスファターゼ及びヘテロダイマーのGタンパク質が、LIM、C2、プレックスト リン相同性及び脂質アンカー形成ドメインなどの特異的標的化モチーフによって 標的化される[Gill、Structure、3巻、1285〜1289頁(1995);Newton、Current Biology、5巻、973〜976頁(1995)]。これらの相互作用を通じてシグナリング複 合体は受容体キナーゼまたは骨格タンパク質の周囲に集まり、ホルモンシグナリ ング事象や免疫細胞機能を含めた細胞のプロセスを媒介する[Harrisonら、TIBS 、20巻、1213〜1221頁(1995)]。 近年まで、セカンドメッセンジャーで刺激されたキナーゼ及びホスファターゼ は、個々の標的化タンパク質との会合を通じて局在化されると考えられていた。 例えば、プロテインホスファターゼI[Chenら、FEBS Letters、356巻、51〜55 頁(1994)] 、プロテインホスファターゼ2A[Csortorsら、J.Biol.Chem.、271巻、2578〜2 588頁(1996)]、またはプロテインホスファターゼ2B[Shibasakiら、Nature、 382巻、370〜373頁(1996)]に対して特異的である、3つのクラスのホスファタ ーゼ標的化サブユニットが同定されている。同様に、3つのクラスのPKC標的化 タンパク質が、Chaplineら、J.Biol.Chem.、268巻、6858〜6861頁(1993);Mochl y-Rosen、1995;及びStaudingerら、J.Cell Biol.、128巻、263〜271頁(1995)に て同定されている。PKAの区画化(compartmentalization)は、AKAPと称されて いる30程度のAキナーゼアンカー形成タンパク質(A-Kjnase Anchoring Prote ins)の機能的に関連しているファミリーとRサブユニットの相互作用を通じて 成し遂げられる[Scott及びMcCartney、Molecular Endocrinology、8巻、5〜13 頁(1994)に概説]。本発明は、アンカー形成タンパク質が、セリン/スレオニン キナーゼ及びホスファターゼに対し、これらの酵素を個別の細胞内部位へ方向付 けることによって特異性を付与することを企図するもので、前記細胞内部位では これら酵素の特定の基質への接近が制限されて、セカンドメッセンジャーのレベ ルの変動に応答するように至適に位置付けされる。 この課題のバリエーションが、セリン/スレオニンキナーゼ及びホスファター ゼシグナリング複合体の配置を調整する多価結合タンパク質の同定にて近年報告 された。例えば、Herskowitz、Cell、80巻、187〜197頁(1995)は、酵母でのフェ ロモン接合応答は、酵母MAPキナーゼカスケードを活性化するGタンパク質関連 受容体を通じて開始されることを示した。カスケードにある各酵素はステライル 5(STE5)と称される骨格タンパク質と会合しているので、このプロセスは効率 よく進行する[Choiら、Cell、78巻、499〜512頁(1994)]。MAPキナーゼカスケ ードに ある連続的なメンバーのクラスター形成によって、この経路の厳密な調節が可能 となり、そして酵母に含まれる6つの機能的に異なるMAPキナーゼモジュール間 の「クロストーク」が妨げられる[Herskowitzら、1995]。多価結合タンパク質 の別の例は、哺乳動物シナプスのシナプス後密度(postsynaptic density)にて PKA、PKC及びプロテインホスファターゼ2Bを標的とするAKAP79である[Klauckら 、Science、271巻、1589〜1592頁(1996);Coghlanら、(1995b)]。AKAP79及びST E5の構造はモジュラー状で、STE5に類似している。AKAP79の欠失分析、ペプチド 研究及び共沈殿実験によって、これらの酵素がアンカー形成タンパク質の異なる 領域に結合することが立証されている[Klauckら、1996]。AKAP79シグナリング 複合体のシナプス後密度への標的化によって、可逆的リン酸化に対するモデルが 示唆され、かかるモデルにおいて、キナーゼ及びホスファターゼ作用に相対する 効果が、共通のアンカー形成タンパク質によって一緒に局在化される[Coghlan ら、Advances in Protein Phosphatases、6巻、51〜61頁(1995a)]。 AKAPは、様々な生物にて同定されている。Aplysia carifornia(アメフラシ、 海洋性無脊椎動物)で、PKAの調節サブユニットが結合する少なくとも7つのタ ンパク質が同定されている[Cheleyら、J.Biol.Chem.、269巻、2911〜2920頁(1 994)]。これらのタンパク質の1つは、粗膜画分とタキソールで安定化された微 小管に濃縮しており、しかしてPKAに結合するだけでなく微小管を細胞膜にアン カー形成させるのかもしれない。哺乳動物AKAP微小管会合タンパク質2(MAP2) はPKAを細胞骨格に接着させる[DeCamilliら、J.Cell Biol.、103巻、189〜20 3頁(1986)]。MAP2上のPKA結合部位は、MAP2分子のアミノ末端領域にある31 残基のペプチドである[Rublnoら、Neuron、3巻、631〜63 8頁(1989)]。 今日までに、両親媒性のヘリックス領域を含む、共通の二次構造モチーフによ って見かけ上PKAに結合する数多くのAKAPが同定されている[Scott及びMcCartne y、1994]。同定されたAKAPのすべてでないにしても殆どのPKAへの結合を、その 共通の二次構造に模したペプチド(Ht31)(配列番号:8)の存在下に阻止する ことができ、他方そのペプチドの二次構造を破壊する単一アミノ酸の置換を含む 変異Ht31ペプチド(配列番号:18)はPKA/AKAP結合にに対して効果を有しなか った[Carrら、J.Biol.Chem.、266巻、14188〜14192頁(1991)]。PKA/AKAP相互 作用は共通の二次構造による影響を受けるけれども、AKAP(または異なる種に認 められる相同なAKAP)は、様々な生物において同定されてきて現在もその同定数 が増加しているAKAPによって証明されるように、概して独自の一次構造を有する 。各アンカー形成タンパク質における独自の構造によって、AKAPシグナリング複 合体を特定の細胞内部位に標的化することにより、キナーゼに特異性が付与され ることになるのである。 Chapline及び共同研究者は近年、「クローン72」として同定されたPKC結合タ ンパク質のクローニングを報告した[Chaplineら、J.Biol.Chem.、271巻、6417 〜6422頁(1996)]。興味深いことに、クローン72は「クローン322」として同定 されたマイトジェン性調節遺伝子と実質的な相同性を有することが示された[Li nら、Mol.Cell.Biol.、15巻、2754〜2762頁(1995)]。クローン322は、Linら、 J.Biol.Chem.、271巻、28340〜28348頁(1996)にて「SSeCKS」として同定された と同じ分子であることが確認された、クローン322はオンコジン(例えば、src、 ras、fos及びmyc)で形質転換された細胞においてダウンレギュレーションを受 け、かくして腫瘍サプレッサー遺伝子であるらしいこと が示された。 本発明にとってさらに興味深いのは、筋肉の哀弱及び迅速な疲弊によって特徴 付けられる、神経筋伝達の疾患である重症筋無力症(MG)である。MGは、患者が ニコチン性アセチルコリン受容体に対して抗体を発生している自己免疫疾患であ ると考えられている。ニコチン性アセチルコリン受容体は、アセチルコリンの結 合に応答して陽イオンチャンネルを制御する。加うるに、アルファアクチニン、 アクチン、フィラミン及びビンキュリンを含めた他の細胞骨格抗原に対する自己 抗体の発生が、MG患者において観察されている。筋肉の衰弱は、自己抗体が見が け上ニコチン性アセチルコリン受容体の破壊に関与しているので、ニコチン性ア セチルコリン受容体の不全によって引き起こされるようである。 これまでに知られていないMG抗原であるグラビンは、MGに罹患している患者由 来の血清を用いたcDNAライブラリーの発現スクリーニングによって同定された[ Gordonら、J.Clin.Invest.、90巻、992〜999頁(1992)]。Gordonらは、グラビン の306のC−末端アミノ酸残基を開示したアミノ酸配列とそれに対応するポリヌ クレオチドを開示した。グラビンは細胞皮質上に発現されていることが示され、 また繊維芽細胞及びニューロンなどの遊走性細胞に発現されているが上皮細胞な どの不動細胞には発現されていないことも示された。加えて、グラビンは接着性 細胞に発現されているが非接着性細胞には発現されていないことが判った。従っ てグラビンは、細胞遊走及び/または細胞接着において役割を果たしていると仮 定された[Groveら、Anat.Rec.、239巻、231〜242頁(1994)]。 当該技術分野では、アンカー形成タンパク質の性質、機能及び分布や、重症筋 無力症におけるアンカー形成タンパク質の役 割に対してのさらなる識見に対する必要性が現存している。 発明の要約 本発明は、グラビンがPKAのタイプII調節サブユニットに、及びPKCに結合する キナーゼアンカー形成タンパク質であるという発見に基づいている。グラビンの 完全なアミノ酸配列を、本明細書に示す。プロテインキナーゼへの結合において 、グラビンはキナーゼを特定の細胞内領域に局在化させ、そしてキナーゼの機能 を調節し、それにより細胞シグナリングを制御しているのかもしれない。 一つの特徴において、本発明はPKAのタイプII調節サブユニットに結合するグ ラビンポリペプチド断片を提供する。好ましくは、そのポリペプチド断片はグラ ビンのアミノ酸残基1526〜1582(配列番号:1)を含んでなる。さらに好ましく は、そのポリペプチド断片はグラビンのアミノ酸残基1537〜1563(配列番号:2 )を含んでなる。 他の特徴において、本発明はPKCに結合するポリペプチド断片を提供する。好 ましくは、そのポリペプチド断片はグラビンのアミノ酸残基265〜556(配列番号 :3)を含んでなる。 本発明のさらなる特徴によって、上記断片のポリペプチド類似体が提供される 。類似体とは、当該類似体断片のプロテインキナーゼに対する結合アフィニティ ーを増加または減少させるために、アミノ酸残基の付加、保存的置換を含む置換 、または欠失が施された断片のことである。グラビンのこれらの類似体は、グラ ビンとキナーゼとの間の相互作用をモジュレートする(すなわち、ブロッキング 、阻害、または刺激する)のに有用でありうる。 本発明のポリペプチドは、Stewart及びYoung、Solid Phase Peptide Synthesis、第2版、Pierce Chemical Company(1984)またはTamら、J.A m.Chem.Soc.、105巻、6442頁(1983)(双方とも引用することにより本明細書に組 み入れることとする)に記載のごとき旧来の技術に従って、溶液中または固体支 持体上で合成される。 本発明のポリペプチドは、脂質可溶性部分への接合によるなどして、細胞内へ の通過を容易ならしめるように修飾してもよい。例えば、ペプチドをミリスチン 酸に接合してもよい。ペプチドは、Eichholtzら、J.Biol.Chem.、268巻、1982 〜1986頁(1993)(引用することによって本明細書に組み入れることとする)に記 載されるような標準技術によってミリストイル化するとよい。あるいは、ペプチ ドを細胞膜と融合し、そのペプチドを細胞内へと送達しうるリポソームにパッケ ージングしてもよい。リポソーム内へのペプチドの封入は、米国特許第4,766,04 6;5,169,637;5,180,713;5,185,154;5,204,112;及び5,252,263号ならびにPC T特許出願第92/02244号(引用することにより各々を本明細書に組み入れること とする)に一般に記載されたもののごとき標準技術によって実施してもよい。 本発明の別の特徴によって、グラビンのタンパク質結合断片をコードするポリ ヌクレオチドが提供される。本発明のポリヌクレオチドには、DNA(すなわち、 ゲノミック、相補性、及び合成DNA)ならびにRNAが包含される。センス及びアン チセンスポリヌクレオチド(コーティング及び非コーティングポリヌクレオチド に相補的なもの)もまた企図される。本発明のポリヌクレオチドは、数多くの標 準的な、当該技術分野で周知の技術によって作製及び精製することができる。さ らに企図されるのは、遺伝コードの縮重に基づいた、本発明のポリペプチドをコ ードするポリヌクレオチドである。加えて、ポリメラーゼ連鎖反 応(PCR)技術に有用な、グラビンをコードするポリヌクレオチド(例えば、縮 重オリゴマー)が企図される。グラビンの類似体をコードするポリヌクレオチド 、またはストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で本発明のポリヌクレ オチドとハイブリダイズする、構造的に関連するDNAも企図される。当業者であ れば、「ストリンジェント」と記載された場合のハイブリダイゼーション条件を 理解するはずである。 ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、3X SSC、20mM NaPO4 pH6.8で約65℃にてハイブリダイゼーションを行い、そして0.2X SSCで約65℃に て洗浄するという条件が挙げられる。ハイブリダイズすべき配列の長さ及びGC ヌクレオチド塩基含量に基づき、これらの条件の変更が想起されることが、当業 者には理解されるはずである。当該技術分野における定則標準は、的確なハイブ リダイゼーション条件を決定するために適切である。Sambrookら、Molecular Cl oningの9.47〜9.51、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harb or、ニューヨーク(1989)を参照されたい。 本発明のポリヌクレオチドは、キナーゼ結合ドメインポリペプチドの組換え製 造のために有用である。キナーゼ結合ドメイン、さらにはプロモーター、選択可 能マーカー及び他の既知ベクター要素(例えば、複製の起点、多重クローニング 部位等)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもまた、本発明によって 企図される。 当業者であれば、ベクターの様々な要素、宿主細胞(原核性及び真核性)の形 質転換またはトランスフェクトを行い、本発明のキナーゼ結合ドメインを発現す る上でのベクターの操作及び使用のための方法を理解できるはずである。宿主細 胞、特に原核性及び真核性細胞などの単細胞性宿主細胞は、グラビンの キナーゼ結合ドメインの発現を許容するように、本発明のDNAで安定にまたは一 過性に形質転換またはトランスフェクトされる。本発明の宿主細胞はグラビンの タンパク質結合断片の大量生産のための方法においてとりわけ有用であり、かか る方法にて、細胞が好適な培養培地にて生育され、そして所望の断片が、細胞か ら、または細胞が生育された培地から単離される。哺乳動物細胞を用いることで 、本発明の組換え発現産物に対して生物学的活性を付与するのに必要とされうる ような転写後修飾(例えば、ミリストイル化、グリコシル化、タンパク溶解性プ ロセッシング、リピデーション及び、チロシン、セリンまたはスレオニンリン酸 化)がもたらされることが期待される。 本発明のさらなる特徴において、グラビンのタンパク質結合ドメインとの特異 的な免疫反応性を有する抗体物質(例えば、ポリクローナル及びモノクローナル 抗体、抗体断片、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体等)が提供 される。抗体物質は、単離された天然のグラビンまたは組換えグラビンを用いて 、標準技術によって調製することができる。抗体物質は、グラビンとキナーゼと の間の結合をモジュレートする(すなわち、ブロッキング、阻害、または刺激す る)上で、またMGに罹患している患者でグラビンを検出する上で有用である、加 えて、細胞系(例えば、ハイブリドーマ)、または本発明の抗体物質を産生する 組換え発現構築体で形質転換された細胞系も本発明によって企図される。 さらなる特徴において、グラビンポリペプチドとグラビン結合パートナー(例 えば、PKAのタイプII調節サブユニットまたはPKC)との間の結合を阻害または増 加させるモジュレーター化合物を同定する方法が企図される。一つの方法では、 配列番号:1、2または3に示すごときグラビンまたはそのポリペプチド 断片と結合パートナーとが、結合のために好適な条件下で、モジュレーター推定 化合物の存在下及び非存在下にインキュベートされる。被験推定化合物の存在下 及び非存在下での結合の量を定量して比較する。被験化合物の存在下に観察され る結合の量が減少していれば、被験化合物がインヒビターであることが示唆され る。被験化合物の存在下に観察される結合の量が増加していれば、被験化合物が グラビンとその結合パートナーとの間の結合を増加させることが示唆される。1 つの実施態様において、グラビンまたはその結合パートナーのいずれかを固体支 持体上に固定化させることができ、そしてグラビンまたはその結合パートナーの いずれかが、検出可能にラベルされる。加えて、シンチレーション近接アッセイ などの他のアッセイを採用してもよい。 モジュレーターは、例えば特定の細胞内部位へのグラビン(例えばPKA、PKC、 または他のキナーゼ)結合パートナーの局在化を阻害するのに有用である。企図 されるモジュレーターには、ポリペプチド、グラビンのポリペプチド断片ならび に他の有機化合物及び無機化合物が包含される。 本発明によって提供されるDNA配列情報によって、相同組換えまたは「ノック アウト」戦略[Capecchi、Science、244巻、1288〜1292頁(1989)]による、機能 を有するグラビンを発現しない、またはグラビンの類似体を発現する哺乳動物の 開発も可能になる。本発明の哺乳動物は、当該哺乳動物のグラビン遺伝子の破壊 、またはグラビン遺伝子の相同体の破壊を含むものである。本発明の哺乳動物を 製造するために利用される一般戦略には、破壊されるべき内在性遺伝子に相同の DNA配列を含む標的化構築体の調製が包含される。次いで標的化構築体は、胎児 幹細胞(ES細胞)へと導入され、それにより内在性遺伝子またはそ の相同体に組み込まれて、それらを破壊する。所望の破壊を含む細胞を選択した 後、選択されたES細胞を胞胚期の胎児に移植する。哺乳動物の例としては、齧歯 類の種が挙げられる。 本発明の数多くのさらなる特徴及び利点が、その例証的な実施態様にかかる以 下の詳細な説明より明らかになるはずである。 発明の詳細な説明 以下の実施例によって、本発明を例証する。実施例1には、グラビンをコード するcDNAのクローニング及び特徴付けを記載する。PKAのタイプII調節サブユニ ットに結合するグラビンの断片のマッピング及び同定を、実施例2に開示する。 実施例3には、COS細胞での全長のグラビンの発現を記載する。実施例4には、 グラビンのPKC結合断片のマッピング及び同定を記載する。実施例5では、モノ クローナル及びポリクローナル抗体の調製について述べる。赤白血病細胞(HEL )でのグラビン発現にかかる実験を実施例6に述べる。実施例7には、グラビン の組織分布を同定する実験を記載する。実施例8にはシグナリングトランスダク ションにおけるグラビンの役割を記載し、実施例9にはグラビンと結合パートナ ーを利用した結合アッセイを記載する。実施例10には、細胞接着におけるグラ ビンの役割を記載する。本発明の開示に鑑みて、当業者は以下の実施例が例示の みを意図しており、特許請求の範囲を逸脱することのない限りにおいて種々の変 更、修正及び改変を施すことができることを認めるはずである。 実施例1 潜在的なRII結合タンパク質をコードするcDNAを単離するた めに、放射線標識されたRIIαをプローブとして用いた変法オーバーレイ法によ ってヒト胎児脳λ-ZAP cDNAライブラリーをスクリーニングした[Lohmannら、Pr oc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81巻、6723〜6727頁(1984)]。8つのRII結合クロ ーンを同定し、プラーク精製し、そして各インサートの端部を配列決定した。そ れらクローンのうち2つは、既知配列を示すものであった。1つは以前に同定さ れたAKAPであるMAP2に一致した[Theurkaufら、J.Biol.Chem.、257巻、3284〜32 90頁(1982)]。HF 9と命名されたもう1つのクローンの3'端は、以前に報告され たグラビンをコードする部分クローンと同じであり、これは元は重症筋無力症患 者由来の血清を用いてヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVE)cDNAライブラリーをスクリ ーニングすることによって単離されたものであった[Gordonら、1992]。クロー ンHF 9のさらなる配列決定から、cDNAインサートは3023塩基対の長さであり、65 1アミノ酸の読み取り枠をコードしていることが示された。HF 9の、32Pでラン ダムプライムされた1676塩基対のEcoRI-SpeI断片をプローブとして用いたノザン ブロット分析によって、グラビンmRNAは特定のヒト組織で選択的に発現されてい ることが示唆された。8.4kb及び6.7kbの2つの主たるmRNA種があらゆる組織で検 出されたが、肝臓、脳及び肺において卓越的であり、また、脳ではさらに5.5kb のメッセージが検出された。すべてのグラビンメッセージの大きい方のサイズか ら、HP 9クローンが部分的なcDNAに当たることが示唆された。従って、より完全 な転写物に対してのヒト胎児脳cDNAライブラリーのスクリーニングを行うために 、1676塩基対のHF 9断片を使用した。コーティング領域のさらなる600塩基対を 生じる、さらに5つのクローンを得た。別の選択肢となる戦略として、ヒト心臓 cDNAライブラリーを、同じ1676塩基対のHP9断片でスクリーニング した。心臓cDNAライブラリーから単離された5つの陽性クローンのうち、最長の クローンは4216塩基対のインサートを含み、これはHF 9の5'端と重複していた。 これによって、1780アミノ酸のタンパク質をコードしている6605塩基対の隣接複 合配列が得られた。このタンパク質(ヒト・グラビン)の完全なDNA及びアミノ 酸配列を、それぞれ配列番号:4及び5に示す。 実施例2 グラビンの最後の651アミノ酸が、PKAのタイプII調節サブユニットとの会合の ための結合部位を含むことを立証した。以前に、両親媒性のα−ヘリックスを含 むと考えられる保存された二次構造の領域が、RII−結合を担うことが示されて いた[Carrら、J.Biol.Chem.、267巻、13376〜13382頁(1992)]。グラビンの残 基1540〜1553:LETKSSKLVQNIIQ(配列番号:6)が、これらの範疇を満たすもの であった。これらの残基はまた、他のAKAPの対応する領域との配列の同一性も示 し、さらにヘリックス−ホイールプロットによって、両親媒性ヘリックスの形成 に適合する、疎水性及び親水性側鎖の分離があることが示された。グラビンのR IIα結合断片はまた、AKAP79(LIETASSLVKNAIQ)(配列番号:7)の、そしてHt 31(DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGA)(配列番号:8)の対応RII結合領域とのある 程度の配列相同性も示している。Ht31は、ヒト甲状腺AKAPに由来する配列である 。 グラビンのRII結合部位(1または複数)を同定するために、グラビンの組換 えDNAをコードする断片のファミリーを、鋳型としてHF9を用いたPCRによって作 製した。これらの断片をコードしているポリヌクレオチドを、発現されるグラビ ン断片のアミノ末端に発現されるヒスチンタグをコードするヌクレオチド 配列を提供するpET16dプラスミドへとサブクローニングした。これらの構築体を 大腸菌にて発現し、そしてpET16d Histag細菌発現/アフィニティー精製システ ムを用いて精製した。 共通の5'プライマー、CCGCCATGGTGCATATGTCCGAGTCCAGTGAGC(配列番号:9)を 利用することによって、推定RII結合部位の残基1130〜1582(配列番号:17) 及び1130〜1525(配列番号:15)をコードする構築体を作製したが、3'プライ マーは、残基1130〜1525(配列番号:15)のためにはGCGCGGATCCGCACTCACTT T GACCTCCTG(配列番号:10)を、残基1130〜1582(配列番号:14)のために はGCGCGGATCCGCTATCACGTGAGCTTGTGT(配列番号:11)をと、相違したものを利 用した。1526〜1780(配列番号:16)構築体は、5'プライマーCCGCCATGGTGCAT ATGGTAGCAATTGAGGATTTAG(配列番号:12)を、全長のクローンをサブクローニ ングするために使用した3'プライマーGGAGGATCCAGAGATTCTGTAGTTCTG(配列番号 :13)と組み合わせて使用することによって調製した。各グラビン構築体を大 腸菌にトランスフェクトし、そして組換えHistag融合タンパク質の発現をIPTGに よって誘導した。各組換えタンパク質は、以前に報告された方法に従って精製し た[Coghlanら、Science、267巻、108〜111頁(1995b)]。 Lohmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81巻、6723〜6727頁(1984)に記載の とおりに、本質的にオーバーレイ法を用いてグラビン断片をRIIα結合について スクリーニングした。要約すると、オーバーレイ法は以下のとおりに実施する。 タンパク質試料をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離し 、そして標準の電気転写技術によってニトロセルロースへ転写する。固定化され たタンパク質は、ミルクタンパク質を含有するブロッキング溶液中でインキュベ ートすることによっ て部分的に再生し、次いで32PでラベルされたRIIプローブでプローブ探針する 。結合していないプローブを洗浄によって除去した後、グラビンポリペプチド断 片とRIIとの間の結合をオートラジオグラフィーによって検出する。アッセイの 感度を高める(10倍まで)ためには、結合したRIIを免疫学的に検出する(例 えば、抗RII抗血清及び125I−プロテインA、またはRIIを特異的に認識する モノクローナル抗体)。 残基1130〜1582(配列番号:14)にわたる452残基の断片はオーバーレイ法 にて、32P−放射線ラベルされたRIIαに結合したが、他方残基1130〜1525(配 列番号:14)の小さい方の断片はRII結合領域を欠いており、RIIαに結合す ることができなかった。 2つのさらなる実験によって、推定両親媒性ヘリックス領域で、RII結合には 十分であることの証拠が得られた。グラビンの残基1526〜1780(配列番号:16 )にわたる断片はオーバーレイ法にてRIIに結合し、そして残基1537〜1563(配 列番号:2)に及ぶ合成ペプチドが、オーバーレイ法でのあらゆるRII結合を阻 止した。加えて、RII/AKAP相互作用の競合的インヒビターである、アンカー形 成タンパク質インヒビターペプチドHt31(DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGA)(配列番 号:8)もまた、オーバーレイアッセイによって評価した場合にグラビンへのR II結合を阻止した。0.3μMのインヒビターペプチドHt31(配列番号:8)の存在 下にオーバーレイが実施された対照実験によって、Ht31はグラビンとRIIαとの 間の結合を阻害することを確認した。加えて、第2の対照ペプチド、RII/AKAP 結合を阻止できないHt31-pro(DLIEEAASRPVDAVIEQVKAAGA)(配列番号:18) が、グラビンとRIIαとの間の結合を阻害することができなかった。第2の対照 ペプチド(配列番号:18)は、イソロ イシンがプロリンに置換されており、それによって二次構造が破壊されたHt31ペ プチドである。Ht31(配列番号:8)ペプチド及びHt31-proペプチドは、合成し たものであった。対照ペプチドのラベリング及び/またはトラッキングを容易な らしめるために、さらにチロシン(放射ヨウ素標識)またはリジン(ビオチン/ アビジン)残基を対照ペプチドのC末端に含めた場合もあった。このデータから 、グラビンがAKAPであり、その主たるRII結合部位は残基1526〜1582(配列番号 :1)にわたっていることが立証される。 RIIαの組換え断片に対する、グラビンの1526〜1780(配列番号:16)断片 の結合アフィニティーを表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定することで、 前記の知見をさらに確認した。SPRは、巨大分子複合体を調べるために減衰光(e vanescent light)を利用する分析技術である。固定化された結合パートナーへ の、あるタンパク質の結合アフィニティーをSPRによって測定することができる 。グラビンの残基1526〜1780(配列番号:16)にわたる組換え断片を、標準ED C/NHSカップリング化学法を用いてカルボキシメチルデキストランIAsysキュベッ トにカップリングさせた[Daviesら、Techniques in Protein Chemistry、5巻、 285〜2992頁(1994)]。キュベットを0.4M EDC/0.1M NHSで8分間処理することに よって活性化し、そしてPBST(PBS+0.05%Tween-20)で十分に洗浄した。グラ ビン1526〜1780断片(配列番号:16)(25μg/ml)のカップリングは、10mMギ 酸塩緩衝液、pH3.6中で室温にて10分間で成し遂げた。カップリングしなかっ たタンパク質を、PBSTで洗い落とし、1Mエタノールアミン、pH8.5を室温にて2 分間用いて遊離アミンをブロックした。PBSTで洗浄した後、データを集める前に 10分間、安定なベースラインを定めた。すべての結合実験は、全長の タンパク質と同様のアフィニティーでAKAPに結合するRIIαの組換え断片(RII 1-45)[Scottら、Proc.Natl.Acad.Sci.、84巻、5192〜5196頁(1987)]を用い て実施した。以前の実験で、全長のRIIを用いた場合よりも、固定化されたアン カー形成タンパク質に対する害が少ない条件下で、結合表面からのRIIα 1-45 の遊離を実施できることが示されている。結合実験は、200μlの容量にて、25〜 150nMの濃度範囲内に及んで実施した。結合表面は、結合測定の間に60%エタノ ールを使用して再生し、実験期間中に測定限界の低下はなかった。データ収集は 、3秒間隔で行い、IAsys機器と共に装備されているFastfit(商品名)ソフトウ ェアを使用して分析した。固定化グラビン断片の結合特性は、25〜150nMのRII α 1-45濃度の範囲にわたって測定した(図1A)。均一な一次結合が記録され 、Kasscは160006±9700M-1-1(n=3)であり、Kdevは0.016±0.001M-1 (n=3)であった(図1B)。これらの数値を用いて、RII/グラビン断片相 互作用に対する解離常数(KD)を100nM(n=3)と計算した。RII/グラビン 相互作用に対するナノモル濃度の結合常数は、細胞の中にある双方のタンパク質 の生理学的濃度範囲に丁度入っており、双方のタンパク質がin situで会合して いるのかもしれないという考え方に矛盾しない。 以上立証したとおり、グラビンの残基断片1537〜1563(配列番号:2)は、PK Aアンカー形成部位を組織している。注目すべきは、この配列はSSeCKS/クロー ン72(実施例4を参照のこと)に存在しているのである。興味深いことに、この 共有配列は、AKAP79と称される、他の哺乳動物骨格タンパク質のRII結合領域に 保存されている14残基のうち10残基を有しており、そのAKAP79は、PKA、PKC及び プロテインホスファターゼ2Bに結合するのである[Coghlanら、1995b;Klauck ら、1996]。グラビ ン、SSeCKS/クローン72及びAKAP79において保存されたRII結合配列の同定は、 既知のRII結合領域内に保存された一次構造の初めての例である。以前は、AKAP 間の配列の同一性がないにも関わらず、RII結合モチーフには二次構造の保存性 があるのだと提唱されていたので[Scottら、1994]、前記の知見は予想外のも のであった。従って、グラビン、SSeCKS/クローン72及びAKAP79は、1以上のキ ナーゼまたはホスファターゼに結合するAKAPの、構造的に関連するサブファミリ ーのメンバーであると考えられる。 実施例3 グラビンによるPKAのアンカー形成の役割を調べるために、全長のグラビンを 、正常時には当該タンパク質を発現していない細胞にて発現させた。 全長のグラビンcDNAを含むプラスミドを以下のとおりに調製した。1.7kbのXba I断片をHF9から単離し(グラビンのC末端配列を含んでいる)、そしてXbaIで予 め消化しておいたN末端の4216bpクローン(実施例1を参照のこと)を含むpBSI I(Stratagene)へとクローニングした。クローンをスクリーニングし、そして 正しい方向性に関し(5'及び3'接合部について)配列決定した。この結果得られ たクローンを、pBS/gravinと命名した。pBS/GravinのEcoRI-NotI断片を、EcoRI 及びNotIで予め消化しておいたpcDNA3に挿入した。EcoRI及びNotIを用いた制限 消化によって、インサートについてのクローンのスクリーニングを行った。プラ イマーDCO3及びJHSP6をそれぞれ用いて5'及び3'接合部を配列決定することによ って、正しいクローンを確認した。 組換えグラビンのトランスフェクション COS細胞を20〜40%の集密度になるまで100mmの培養ディッシュにて生育した。 COS細胞のトランスフェクションは、以下のとおりに実施した。150μlの無血清 培地で10μgの濃度のpcDNA3-グラビンベクターを調製し、これに20μlのSuperFe ct(Qiagen、Chatsworth、カリホルニア州)を添加した。COS細胞培養物から培 地を除き、そして細胞をCMF-PBSで洗浄した。SuperFect混合物を、10%FBSを含 む3mlの培地に添加し、そして細胞に37℃にて3時間で添加した。その後細胞を 洗浄し、そして新鮮な培地を添加して終夜のインキュベーションを行った。次に 細胞を洗浄し、トリプシンで採集し、再度洗浄して実施例5に記載のとおりに溶 解した。Jurkat細胞に対するトランスフェクション法は、Superfect混合物をJur kat細胞に添加し、そして終夜培養しておいたことを除いては同様に行った。ト ランスフェクション後24、48時間及び2週間目に、前記のように細胞溶解液 を調製した。グラビン発現は、ウェスタンブロット分析によって調べた。 トランスフェクトされたCOS細胞では、トランスフェクション後24時間でベ ースラインの発現レベルを越えたグラビンシグナルの増強を示した。グラビンを 発現しないJurkat細胞が、トランスフェクション後24時間から2週間に至るま で組換えタンパク質の有意な発現を示した。組換えグラビンはこのように、ヒト 細胞系にて発現及び維持されうる。 実施例4 さらなる配列分析から、グラビンの別の潜在的な機能が明らかになった。完全 なグラビン配列を用いたヌクレオチドデータベースの検索によって、最初の1000 残基がネズミのマイトジェ ン性調節タンパク質SSeCKS[Linら、1995](当該技術分野では「クローン72」 とも同定され、これはプロテインキナーゼC結合タンパク質であるとともにプロ テインキナーゼC基質であることが最近示された[Chapline、1996])と69%一 致することが示された。 そこで、グラビンがPKCに結合する能力を調べた。すなわち、アミノ酸265〜55 6(配列番号:3)及び1130〜1582(配列番号:14)からなる、2つの組換え グラビンポリペプチド断片を調製して実施例2に記載したオーバーレイ分析と類 似のオーバーレイ分析を実施した。固定化されたグラビン断片はPKCと共にイン キュベートし、そして結合したPKCをPKCに対するモノクローナル抗体を用いて検 出した(Transduction Labs、Lexington、KY)[Klauckら、(1996)]。プライ マーGACGAGATTGTGGAAATCCATGAGG(配列番号:19)及びGCGCGGATCCAGAGATTCTGT AGTTCTGAC(配列番号:20)を用いて、PCRによって265〜556(配列番号:3) 断片を調製した。1130〜1582(配列番号:14)断片はは実施例2に記載のとお りに調製した。結果、PKCは265〜556断片(配列番号:3)に結合するが、1130 〜1582(配列番号:14)には結合しないことが示された。このように、オーバ ーレイアッセイによってグラビンのPKC結合断片は、残基265〜556(配列番号: 3)の間の領域にマッピングされた。グラビン断片のいずれも、ホスファチジル セリン(PS)の非存在下にはPKCに結合せず、これはリン脂質がPKC/結合タンパ ク質複合体のコファクターであるとの報告に見合うものである[Chaplineら、19 96]。ホスファチジルセリン(PS)は、PKCと基質/結合タンパク質上の多塩基 性領域の三成分複合体を支えることが示唆されている[Liaoら、Biochem.、33巻 、1229〜1233頁(1994)]。 多塩基性領域は、PKCとその結合タンパク質との間のリン脂質架橋の形成に関 与していると推察されていた[Chaplineら、1996;Chaplineら、1993]。AKAP79 では、多塩基性領域がPKC結合部位として同定された[Klauckら、1996]。グラビ ンには、残基295〜316(FKKFFTQGWAGWRKKTSFRKPK)(配列番号:23)と514〜5 36(PLKKLPTSTGLKKLSGKKQKGKR)(配列番号:24)との間に位置する2つの多 塩基性領域が、グラビン265〜556断片(配列番号:3)の中に存在している。双 方の多塩基性領域(残基295〜316及び残基514〜536)は、AKAP79のPKC結合部位 に類似している。グラビンの双方の多塩基性領域の合成ペプチドは、オーバーレ イアッセイによって評価するとPKC/グラビン相互作用を阻止した。これらの実 験から、このタンパク質の残基265〜556の間に位置する1以上の多塩基性領域に て、プロテインキナーゼCはイン・ビトロでグラビンに結合することが示される 。 AKAP79の31〜52PKC結合部位ペプチドであるKASMLCFKRRKKAAKLAKPKAG(配列番 号:23)は、グラビンへのPKC結合を阻止した。この結果、グラビン及びAKAP7 9のいずれも、PKCの同様の部位に結合するらしいことが示される。グラビン265 〜556(配列番号:3)断片が、ペプチド基質VRKRTLRRL(配列番号:24)(Si gma Co.、St.Louis、ミズーリ州)に対して0.50±0.12μM(n=4)のIC50に てPKC活性を阻害することが示され(図2)、AKAP79に対するさらなる類似性が 立証された。これに対し、RII結合ペプチドは、このキナーゼを阻害しなかった 。PKC活性は、40mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl2、0.3mM CaCl2、1mM DTT、100 μM[γ32P]アデノシントリホスフェート(ATP)(500cpm/ml)、ホスファチ ジルセリン(20μg/ml)を含有する反応液中で、上皮成長因子受容体ペプチド( VRKRTLRRL)(配列番号:24)を基質として30℃にて10分間、以前の報告 [Orrら、J.Biol.Chem.、269巻、27715〜27718頁、1994]のとおりにアッセイし た。PKCβII(20ng/μl)は、20mM Tris(pH7.9)、1mg/mlウシ血清アルブミン (BSA)及び1mM DTTで1:10希釈した。0.1から10μMのグラビン265〜556断片( 配列番号:3)という阻害濃度範囲にわたって、阻害常数(IC50)を測定した 。 これまでに、3つのクラスのPKC結合タンパク質が、ゲルオーバーレイ及び2 ハイブリッド技術によって同定されている[Fauxら、Cell、70巻、8〜12頁(1996 a)]。PKC基質/結合タンパク質[Chaplineら、1993]及び活性化Cキナーゼに 対する受容体(RACK)[Mochly-Rosenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、88巻、3 997〜4000頁(1991)]がゲルオーバーレイ法によって検出されており、一方Cキ ナーゼと相互作用するタンパク質(PICK)が2ハイブリッドスクリーンによって 単離されている[Staudingerら、1995]。本明細書中に開示するデータから、お よそ290アミノ酸の領域がPKC結合を担い、そしてその領域に対応する断片がイン ・ビトロでキナーゼ活性を阻止することが示される。 実施例5 完全フロインドアジュバント(CFA)中でグラビンまたはグラビン断片を用い 皮下にBalb/cマウスを免疫付与することによってモノクローナル抗体を調製する 。免疫応答を高めるために、CFAまたは不完全フロインドアジュバントにて引き 続き免疫付与を行う。 免疫付与された動物の脾臓を無菌的に摘出し、そして2mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、100単位/mlペニシリン及び100mg/mlストレプトマイシ ン(Gibco社、カナダ)を 添加した無血清のRPMI 1640の中に沈めた2枚のガラス顕微鏡スライドの磨りガ ラス状の(frosted)端部の間で脾臓を擦り潰すことによって、単一細胞の懸濁 液を形成させる。細胞懸濁液を、滅菌した70メッシュNitex細胞濾過器(Becton Dickinson社、Parsippany、ニュージャージー州)を通して濾過し、そして、200 ×gで5分間遠心分離することにより細胞を2度洗浄し、その後、20mlの無血清R PMI中に再懸濁する。未処置Balb/cマウスから取り出した胸腺細胞を、同様に調 製する。 2×108の脾臓細胞を、4×107のNS-1細胞(融合前の3日間、11%胎児ウシ血 清(FBS)を含むRPMIにて対数増殖期に保持しておいたもの)と合わせ、遠心分離 して得られた上清は吸引する。細胞ペレットを変位させ、2mlの37℃PEG 1500(7 5mM Hepes、pH8.0中、50%)(Boehringer Mannheim)を、1分間にわたってか き混ぜながら加え、その後、7分間かけて無血清RPMI 14mlを加える。さらにRPM Iを添加してもよく、その後細胞を、200×gで10分間遠心分離する。上清を廃 棄した後、ペレットは、15%FBS、100mMヒポキサンチンナトリウム、0.4mMアミ ノプテリン、16mMチミジン(HAT)(Gibco)、25単位/ml IL-6(Boehringer Mannhei m)及び1.5×106の胸腺細胞/mlを含有する、200mlのRPMI中に再懸濁する。この 懸濁液を、10枚の96ウェルの平底組織培養プレート(Corning社、連合王国)に 、ウェル当たり200μlで分配する。プレート内の細胞には、18Gの針(Becton D ickinson)を用いて各々のウェルから100μlを吸引し、そしてプレーティング培 地(10単位/mlのIL-6を含有し胸腺細胞を含まない)100μl/ウェルを添加する ことによって、融合後2、4、及び6日目に栄養を供給する。 細胞の生長が60〜80%の周密度に達した時(融合後8〜10日)に、各ウェルか ら培養上清をとり、ELISAによってグラビンと の反応性についてスクリーニングする。ELISAは、以下のとおりに実施する。Imm ulon 4プレート(Dynatech、Cambridge、マサチューセッツ州)を、100ng/ウェ ルのp110δ:GSTまたはGSTを含む50mMカーボネート緩衝液、pH9.6を50μl/ウェ ル用いて、4℃にて被覆しておいた。プレートを、0.05%Tween 20を含有するPBS (PBST)で洗浄し、0.5%フィッシュスキンゼラチンで37℃にて30分間ブロッキン グを行う。前記のとおりにプレートを洗浄し、そして50μlの培養上清を添加す る。37℃にて30分間インキュベートした後、PBSTで1:10,000に希釈した50μl のセイヨウワサビペルオキシダーゼ接合ヤギ抗マウスIgG(fc)(Jackson Immun oResearch社、West Grove、ペンシルバニア)を添加する。プレートを37℃にて 30分間インキュベートし、PBSTで洗浄して、1mg/mlのTMB(Sigma)及び0.15ml /mlの30%H2O2を100mMクエン酸塩、pH4.5を含有する100μlの基質を加える。呈 色反応は、15%のH2SO4を50ml添加して、停止させる。A450をプレートリーダー (Dynatech)で読み取る。 ポリクローナル抗体は、本発明のポリペプチドを含む抗原で動物に免疫付与し 、そして当該免疫付与された動物から抗血清を集めることによって調製される。 ウサギ、ニワトリ、マウス、ラット、またはモルモットを含めた様々な動物種が 、ポリクローナル抗体の調製に有用である。1130〜1780グラビン断片を使用して 、ウサギでポリクローナル抗体を調製した。ウサギポリクローナル抗血清R3698 は、1130〜1780グラビン断片(配列番号:17)より、民間研究所で(BethylLa bs、Montgomery、テキサス州)作製した。1130〜1780断片(配列番号:17)は 、1130〜1780断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号:9)(5'プライマ ー、CCGCCATGGTGCATATGTCCGAGTCCAGTGAGC(配列番号:9)及び3'プライマー、G GAGGATCCAGAGATTCTGTAGTTCT G(配列番号:13)を用い、PCRによって作製したもの)を、実施例2に記載の とおりに調製及び発現することによって製造した。加えて、ウサギ及びニワトリ でポリクローナル抗体を調製するために、265〜556断片(配列番号:3)を使用 した。ウサギポリクローナル抗血清のR4310及びニワトリポリクローナル抗血清 は、Bethyl Labsによって265〜556断片(配列番号:3)から調製した。 2つのさらなるポリクローナル抗血清を調製した。2羽のウサギ(4037J及び 3548J)を、合計3回の注射と最終追加免疫として、25〜50μgの組換えグラビ ン断片265〜556で免疫付与した(R & R Rabbitry、Stanwood、ワシントン州)。 試験血清及び免疫前血清をウェスタンブロット分析によって調べた。組換えタン パク質(1μg/レーン)及びHEL細胞からの溶解液(25μg/レーン)を、グラビ ン発現を誘導するために40μg/mlのPMAの存在下、または非存在下に生育し、4〜 12%のSDS−PAGE(Novex、San Diego、カリホルニア州)によって分離して標準 技術によってイモビロンへ転写した。この結果得られたブロットは、固定化され たタンパク質を部分的に再生するためにブロッキング用緩衝液(5%ミルクタン パク質を含むTBS)中でインキュベートし、次いでウサギ血清(ブロッキング用 緩衝液中、1:500希釈)でプローブ探針した。結合しなかった抗体は、TBSにて 洗浄することにより除去し、その後、ブロッキング用緩衝液中の二次ヤギ抗ウサ ギセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)接合抗体(1:7500希釈)と共にイン キュベートした。結合しなかった抗体を洗い落とし、そしてブロットを強化化学 発光(ECL、Dupont-NEN、Boston、マサチューセッツ州)によって現像してフィ ルムに露光した。 双方のウサギ由来の血清は、組換えグラビン断片を認識した 。PMAで刺激したHEL細胞溶解液には、250kDaのバンドが検出されたが、刺激しな かったHEL細胞から調製した溶解液には当該バンドは検出されなかった。ウサギ4 037J由来の血清は、ウェスタンブロットによる感受性がより高く、しかしてこ の抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。 実施例6 ヒト赤白血病細胞系(HEL)(HEL92.1.7、ATCC TIB 180)のホルボールエステ ル処理は、マクロファージ様細胞の特性である形態的な、機能的な、生化学的な 変化を引き起こす。この方法の顕著な特徴の一つが、グラビンの強力な誘導であ る[ゴードンら、1992年]。このため、ホルボールエステルへの遷延露出の後に 、HEL細胞のPKA及びPKC結合タンパク質の特性を試験した。 HEL細胞を、12%のウシ胎児血清及び4mMグルタミンを含むRPMI 1640で成 長させた。グラビンの発現は、18時間、40nM酢酸ミリスチン酸ホルボール (PMA)で培養することによって誘導された。PBSで洗浄し、150cm2のフラ スコの内部がらかき集めたPMAの存在下で成長した接着細胞、あるいは、PMAの非 存在下で成長したHEL細胞の懸濁液培養物のいずれかから、細胞可溶化物を調製 した。細胞ペレットを、20mMのトリス塩酸pH7.4、150mMの塩化ナ トリウム、10mMのEDTA、0.25%のトリトンX−100、0.05% のツイーン20、0.02%のアジ化ナトリウム、10mMのベンズアミジン、 2μg/mlのペプスタチン、2μg/mlのロイペプチン、4mMの4−(2 −アミノエチル)ベンゼンスルフォニルフロリドヒドロクロライド(溶解緩衝液 )に再懸濁する前に、PBSで2回洗浄し、10分間氷上でインキュベーション した。その後、その抽出物を4℃において16,000×gで10分間遠心分離 し、細胞可溶化物の上清を収集した。 バイオラッド社製のDCタンパク質分析キットを用いて、タンパク質濃度を測 定した。グラビンの残基1130〜1780に対して作用するアフィニティ精製 した抗体を用いて、コントロール細胞及び処理した細胞からの抽出物をウェスタ ンブロット分析に供した(実施例5参照)。PMA処理は、特異的に抗−グラビン 抗体と反応する250kDaのタンパク質の誘導を生じた。引き続いてのオーバ ーレイ分析は、PMA処理が250kDaのPKC結合タンパク質及び同じ大きさのR II結合タンパク質の発現を誘導することを実証した。 マクロファージ様の変化が同時に生じ、PMA処理を行ったHEL細胞は接着するよ うになり、かなりの細胞質内の拡散を示した[Papayannopoulouら、Blood.62:83 2-845(1983)]。時々、これは、アクチン張力繊維の形成を生じ、細胞の一般 的な平滑化を引き起こす。グラビンがアクチン細胞骨格と調製するかどうかを確 証するために、ホルボールエステル処理したHEL細胞を下記のアクチン用マーカ ーとしてのローダミンで染色した。 18時間、40nMのPMAの存在下にカバーガラス上に成長したHEL細胞をPBS で洗浄し、3.7%のホルムアルデヒドで固定し、−20℃の無水アセトンで抽 出した。PBS及び0.2%BSAで1時間、細胞を再水和し、その後、0.5μ g/mlでアフィニテイ精製した抗−グラビン抗体R3698とインキュベート するが、あるいは、0.5μg/mlで前免疫のIgGとともにインキュベート した。1時間後に、PBS及び0.2%BSAで注意深くカバーガラスを洗浄し、 ロバ抗ウサギ第2抗体結合FITC(1:100希釈、Jackson ImmunoReasearc h Laboratories Inc,West Grove,ペンシルバニア州)及びファロイ ジン結合ローダミン(カバーガラス当たり1単位、Molecular Probes,Inc,Eug ene,オレゴン州)の混合物、あるいは第2抗体単独のいずれかでインキュベー トした。Coghlanら、J.Biol.Chem.,269:7658-7665(1994)の記載にあるように 、実質的に、RII−オーバーレイ系中で実施した。第一抗体とのインキュベーシ ョンに先立って、細胞を、2時間、80nMの組換えマウスRIIαで培養し、非 結合のRIIをPBS及び0.2%BSAで3回洗浄して除去した。固定化したRII αを、アフィニテイ精製したヤギ抗−マウスRII(1μg/ml)及びロバ抗− ヤギ第二IgG複合テキサスレッド(1:100希釈、Jackson ImmunoReasearc h Laboratories Inc,West Grove,ペンシルバニア州)で免疫化学的に検出した。 コントロールのカバーガラスは、外因性のマウスRIIの非存在下において、RII に対する抗体で処理した。ライツ(Leitz)のFluovert-FU倒立顕微鏡を付帯した ライカ共焦点レーザー走査システム及びアルゴン/クリプトンレーザーを使用し て細胞を検査した。 すべての細胞が、周辺部に対してアクチンの濃度を表示した。対照的に、染色 されているグラビンは主として細胞質であり、細胞の部分集合のみ(約25%) 大量のタンパク質を発現した。HEL細胞が異なった分化の段階で異種集団を表す ので、グラビン発現の可変レベルは予想されていた。[Papayannopoulouら,198 3]。アクチンに対して染色された細胞とグラビンに対して染色された細胞の像 の重ね合わせは、部分的に重複している細胞下の分布を除いて共にタンパク質を 明確に示している。前免疫血清で細胞を染色した場合、コントロール実験はネガ ティブであった。さらに詳細なHEL細胞の共焦点分析は、細胞の周辺部に向かっ て染色され、接着表面に糸状仮足が豊富なグラビンを検出した。これらの知見は 、培養基板へのHEL細胞接着を増強 するグラビンの機能を示している。グラビンとPKAの共存局在化 実施例2及び3に記述された生体外で結合の研究は、グラビンがキナーゼ骨格 タンパク質であることを示している。したがって、HEL細胞にグラビンシグナル 伝達複合体を検出することができるかどうかを測定するため、共存局在化試験を 開始した。予めPMAで処理された固定化され透過化処理された細胞を、組換えマ ウスRIIαで重ねた。系中でRII結合を特異的にマウスRIIを認識する抗体で検 出した。それはグラビンに対する染色パターンに類似していた。抗マウスRII抗 体は、内因性のヒトRIIを検出しないということをコントロール実験で確認した ので、染色されたRIIの増加はグラビンと直接関係することに基づいていた。系 中で、RII−結合がHt 31接着阻害ペプチドとのインキュベーションによってブ ロックされたことを示す追加のコントロール実験により、この結論は支持された 。 最終的に、グラビンシグナル伝達複合体を2つの補足的な生化学的方法、すな わち、免疫沈降反応及びcAMP−アガロース上のアフィニティクロマトグラフ ィーによって分離した。グラビンの免疫沈降反応は以下のように行った。 上記のように調製したHEL細胞可溶化物(15mg/mlの200μl)をア フィニテイ精製抗−グラビン15μgまたは前免疫のIgG15μgを用いて、 4℃で18時間インキュベートした。溶解緩衝液で予め平衡化した10%(v/ v)のタンパク質A−セファロースCL−4B(Sigma,St Louis,ミズーリ州) 200μlを添加して免疫複合体を分離した。4℃で90分間インキュベーショ ンした後、そのビーズを0.5M NaCl溶解緩衝液で1回、そして過多の2 0mM TrisHC l、pH7.4、150mM NaClで4回洗浄した。1mM cAMP、2 0mM TrisHCl、pH7.4、150nM NaClの200μlで1 5分間、タンパク質−Aビーズをインキュベートすることによって、免疫複合体 からPKA触媒サブユニットを遊離した。ニトロセルロース上への4−15%SD S−PAGEゲル、エレクトロブロッターの分析より前にその溶出液をTCA沈 降させ、先に記述したように触媒サブユニットを検出した。グラビンの免疫沈降 及び検出については、SDS−PAGE試料緩衝液で洗浄したビーズを煮沸し、 4−15%の変性PAGEゲル(5μg/レーン)上でタンパク質を分離し、ニ トロセルロース膜に転写し、グラビンウエスタン、PKCオーバーレイ及びRIIオ ーバーレイウエスタン[上記及びKlauckら、1996年の記述による]に よる分析を行うことによって溶出を実施した。 HEL細胞可溶化物(上記のように、緩衝液に10mMのIBMXを添加して調 製した15mg/mlの400μl)を10mMのBMXを伴う溶解緩衝液で平 衡化した200μlの充填されたcAMP−アガロース(Sigma,St Louis,ミズーリ 州)とインキュベーションしてグラビンをアフィニテイ精製した。そのスラリー を4℃で18時間ゆるやかに撹拌し、1.5ml溶解緩衝液、1MのNaClで 洗浄し、次いで4つの1.5mlを20mMのTrisHCl、pH7.4、1 50mMのNaClで洗浄した。75mMのcAMP、20mMのTrisHCl、 pH7.4、150mMのNaCl0.5mlでビーズをインキュベートして溶 出を行った。その最終洗浄と溶出液をTCA沈殿させ、全体サンプルを4−15 %のSDS−PAGEゲル上の単一レーンに充填した。分離されたタンパク質が ニトロセルロースにブロットされ、上記のウエスタン分析によってグラビ ンを識別した。 グラビン抗体を用いた免疫沈降は、SDSゲルがクーマシーブルーで染色され た場合、かすかに検出できる250kDaのタンパク質を特異的に分離した。こ の250kDaタンパク質は、アフィニテイ精製グラビン抗体を用いた免疫沈降 のときのみ存在し、前免疫血清で行ったコントロール実験おいては検出されなか った。ウェスタンブロットとオーバーレイの分析は、250kDaタンパク質が グラビンであることを確証した。さらに、cAMPを用いて免疫沈降がら溶出した画 分中の触媒サブユニットの検出によりPKAホロ酵素の共存沈殿が示されたが、前 免疫血清で処理した実験画分には存在しなかった。54kDaタンパク質は、免 疫グロブリンG重鎖のような類似可動性で移動するので、免疫沈降中にRサブユ ニットは検出できなかった。しかしながら、Rサブユニット/グラビン複合体は 、HEL細胞抽出物を誘導するPMAから、cAMP−アガロース上のアフィニティクロマ トグラフィーによって精製した。高塩性緩衝液中で広範囲に洗浄した後、75m MのcAMPでそのアフィニテイ樹脂からグラビンを溶出した。遊離したグラビンは アフィニテイ樹脂に屈折するので、溶出液で検出されたタンパク質は調節サブユ ニットに関係していた。両方の共存精製技術は、PKAホロ酵素が生体内でグラビ ンに関係していることを強く示唆している。 実施例7 前に検討したように、これまで、グラビンはヒト線維芽細胞、ニューロン及び 内皮細胞中にのみ検出されてきた。グラビンがより多くの広い細胞分布状態を持 っているかどうか、または他の細胞タイプにおいて誘導されるかどうかを検出す るために、主要なヒト細胞及び様々なヒト、サル、ラットの細胞系に対 して抗体4037Jを使用して、ウェスタンブロット分析によって発現を検出し た。細胞の調製 第一次の末梢血単核細胞(PBMC)を成人ボランティアの分離したヘパリン処置 された抹消血から分離した。血液をCMF−PBSで1:1に希釈し、1.096 g/cm3の密度で30分間400×gでヒストパーク(Histopaque)(Sigma. St.Louis,ミズーリ州)で覆い遠心分離した。得られた界面を集めてCMF-PBSで洗 浄した。10%胎仔ウシ血清を補充したRPMI培地で満たした100mmポリスチ レン培養プレート(コーニング)中で1時間インキュベーションし、(上記のよ うに調製した)PBMCから単核細胞を分離した。CMF-PBSで非接着細胞を洗浄除去 した。ゴムへらでプラスチックから接着細胞(単核細胞)をこすり落とし、次い でPBSで洗浄した。上記のヒストパークの手順の赤血球/顆粒体画分を用いて、 抹消血がら多形核細胞(PMN)を分離した。その細胞ペレットを、0.9%のN aClに溶解した3%のデキストラン(Pharmacia.Uppsala、スウェーデン)とC MF−PBSの等量中に30分間再懸濁し、赤血球を沈殿させた。PMNが濃厚な上澄み を集めてCMF−PBSで3回洗浄した。洗浄の間に、30秒間、1mlの水中で、残 存性の赤血球細胞を低浸透圧性細胞溶解させた。剰余の細胞は、CMF−PBS50m lで等張性状態に戻した。 ATCC(American Type CultureCollection,Rockville、メリーランド州)から 以下のヒト細胞系を得て、RPMI+10%胎仔ウシ血清中で維持した。HEL(ヒト 赤白血病細胞)、A549(ヒト肺上皮)、HEK293(ヒト胚芽の腎臓)、HL60(ヒト 前骨髄球の白血病)、KU812(未熟ヒト好塩基性白血球)、Jurkat(ヒトT 細胞リンパ腫)、THP1.1(ヒト単球)、RBL2H3(ラットの好塩基性リンパ腫)、 COS(サル線維芽細胞)、RAW309(マウス単核細胞)、RAW2647(マウス単核細胞 )、3T3L1(マウス胚芽線維芽細胞)、L929(マウス線維芽細胞)及びEL4IL-2( マウス胸腺腫)。 細胞培養を、40ng/mlのPMA、10ng/mlのリポ多糖(LPS)、10-X M f-met-leu-phe(fMLP)(すべてSigma、St Louis、ミズーリ州)または1 0ng/mlの腫瘍壊死因子α(TNFα,Boehringer Mannheim.Indianapolis、 インディアナ州)の存在下で、一晩培養し、グラビン発現が刺激されたかどうか を検出した。細胞ペレットからの溶解物を調製し、実施例6に前述したように、 タンパク質濃度を検出した。タンパク質−A精製抗一グラビン抗体4037J、 5μg/mlを使用して、記述のようにウェスタンブロットによってグラビンに 対する細胞可溶化物を分析した。様々な細胞系中のグラビンの発現 KU812、HEK293、A549、THP1.1及びマウス細胞系3T3L1及びL929を含む、数種の ヒト細胞系において、ウエスタン分析は250Kdのバンドが検出されたことを 示した。主要なヒト細胞については、接着単核細胞のみが250kDaのバンド を発現した。HEL細胞(実施例6を参照)のPMA刺激の例外はあるが、このバンド は、PMA、LPS、fNILPあるいはTNFaのいずれがでは他の細胞中に誘導されなかっ た。実施例2に記述されるオーバーレイ分析によって、それらのバンドはRII結 合タンパク質であることが確認された。グラビンを発現した細胞は、細胞集合中 の形成または成長に対し、接着の共通機能を共にしていた。グラビンとRIIの同時免疫沈降 培養物からHEK293細胞を回収し、実施例4の記述のように溶解物を調製 した。HEK293溶解物(100μg)を4037J(抗−グラビンポリクロ ーナル)または241A(抗ヒトRII モノクローナル)抗体のいずれがの10 μgと、氷上で2時間、培養した。予め洗浄しておいたタンパク質G−セファロ ースビーズ(Pharmacia.Uppsala、スウェーデン)の等量を添加し、その試料を ローター上で1時間培養した。そのビーズを3回細胞溶解緩衝液で洗浄し、続い て1回PBSで洗浄した。その後、SDS試料緩衝液を、100℃で2分間沸騰し たビーズに添加した。試料を遠心沈殿し、上清を回収した。複製レーン中の4− 12%SDS−PAGEゲル上へ、抗体(2μg)及びコントロールとしての細 胞可溶化物(25μg)とともにその試料を流した。標準の技術によって、イモ ビロンへタンパク質を転写した。6に記載した方法によって、得られたブロット をウエスタン分析した。1つのブロットが4037J抗体でプローブ化され、ヤ ギ抗−ウサギIgG−HRPで検出した。また、他のブロットを241A抗体でインキ ュベートし、ヤギ抗−マウスIgG−HRPで検出した。 グラビンウエスタンにおいて、250kDaのバンドが、細胞可溶化物、40 37J同時免疫沈降物及び241A同時免疫沈降物を含んでいるレーンに検出さ れた。RIIウエスタンにおいて、細胞可溶化物中に54kDaのバンドが検出さ れた。4037J及び241Aの同時免疫沈降物を含んでいるレーンにおいては 、54kDaで1本のバンドが検出され、他のバンドはわずかに高所へ泳動して いた。この上部のバンドは、低いバンドがRIIであることを示しているIgGレー ンと一線になった。これらの結果は、細胞の中でグラビンとRIIが関係しており 、 また、抗−グラビンあるいは抗−RIIのいずれかを用いて、細胞可溶化物から同 時免疫沈澱物化することができることを証明している。 実施例8 ニコチン性アセチルコリン受容体は、5つの膜内外ポリペプチドから成る神経 伝達物質をゲートするイオンチャンネルである。5つのポリペプチドは、陽イオ ンが流れることが可能であることによって、膜内外の水性細孔を形成しているよ うに思われる。アセチルコリンの結合に応じて、イオンチャンネルは「開き」、 細胞の中へのNa+の流れ(ナトリウム流)を可能にする。ナトリウムイオンの 流入は、筋肉へ収縮するように信号する膜脱分極を引き起こす。個々の受容体は 、アセチルコリンが受容体へ結合したままである期間中に、急速に開いたり閉じ たりするように見える。アセチルコリン結合の数百ミリ秒以内に、チャンネルは 閉じ、さらなるナトリウム流の流れを防ぎ、そのアセチルコリン信号は終了する 。 アセチルコリンに対するニコチン性アセチルコリン受容体の感度は、膜内外の ポリペプチドのリン酸化によって低下する(感度低下)。アセチルコリンへの受 容体の遷延露出は、受容体の感度低下に結びつく。PKAは、5つの膜内外ポリペ プチドのセリン残基とチロシン残基のリン酸化によって、ニコチン性アセチルコ リン受容体の感度低下に関係しているように見える。 重症筋無力症は、ニコチン性アセチルコリン受容体に対する抗体の発生に関連 した自己免疫疾患である。本発明は、その細胞の特異的な細胞下領域に対してPK A及びPKCを局在化するグラビン機能を熟考した。細胞骨格成分を標的とするPKA 及びPKCの調整におけるグラビンの役割は、樹状の細胞骨格の特定化され た構造であるシナプス後性の密度で、PKA、PKC及びタンパク質ホスファターゼ2 BをクラスタリングするAKAP79の役割と類似しているようである[Coghla nら,1995b;Klauckら,1996;Rosenmundら,Nature,368:853-856(1994)]。 グラビンとPKC及び/またはPKAの間の結合を阻害するか廃止するモジュレータ ーは、特異的な細胞下領域へのPKA及び/またはPKCの局在化の調整において有用 である。これらのモジュレーターは、グラビンまたはPKA及び/またはPKCに結合 するグラビンの断片、及び他の非ペプチド化合物(例えば、分離されたあるいは 合成された有機的あるいは無機的分子)に特異的に結合するポリペプチドを含む ことができる。 実施例9 結合対象へのグラビンの結合を検出する分析を開発した。グラビンのRII結合 領域を含むC−末端クローンHP9は、下記のようにチオレドキシン(Trx)細菌性 発現ベクターへクローン化した。グラビンのRII結合領域をその中に含むC−末 端クローン、pBSII/HP9(実施例3に記述)は、チオレドキシン(Trx)細菌性発 現ベクターへクローニングされた。簡単には、チオレドキシン発現ベクターを構 築するために、lacZ遺伝子及びlacZプロモーターを含んでいるpUC19へXbal/Hind IIIチオレドキシン断片をサブクローン化した。得られたプラスミドをTRX F/S p UC19と称した。TRX P/S pUC19へHF9クローンを挿入するため、NcoI部位をオリゴ ヌクレオチド、Met1153、5'TACAACCATGGACAGGCTATCCCCで作成した。(NCO切断部 位に下線を付した。)3'オリゴヌクレオチドは、T7(ストラタジーン)を用いた 。2つのオリゴヌクレオチドを用いたpBS/HF9の増幅は、3kb断片を生じ、そ れはNcoI及びXhoI(後者は、pBSのポリリンカーを提供した )で消化された。その後、NcoI/XhoI断片を、(NcoI/XhoIで予め消化させた)TR X F/S pUC 19中のチオレドキシン遺伝子でフレームに連結させた。大腸菌中に発 現したその融合タンパク質を、30℃で、0.7のO.D.600へ1mMのIPTG を用いて導いた。回収された細胞は、標準条件下にのフレンチプレスで溶解した 。 以下のように、タンパク質−タンバク質結合分析を行った。簡単には、PBSを 満たしたイムロンプレート(Dynatech)の上で受動的に抗−Trxマウスモノクロ ーナル抗体を捕獲した。実施例5に記述された方法を使用して、抗−Trxモノク ローナル抗体を調製した。ウエル中の非特異的部位は、50mMクエン酸ナトリ ウム及び145mM塩化ナトリウムに溶解した2.5%ミルクを含む緩衝液で1 時間、室温でブロックした。Trx/C−末端グラビンを含む大腸菌溶解物をPBS/ 0.2%BSAを満たしたウエルへ添加し、4℃で一晩おいた。遊離した非特異的 タンパク質は、PBSで数回洗浄して除去した。ビオチン化されたRII(標準の手 順を使用して、化学上ビオチン化した)は、その後、リガンドとして使用され、 0.02%BSAを含むPBSに添加した。室温で3時間インキュベーションした後に 、PBS/0.05%ツイーン20で複数回洗浄して、非結合のタンパク質を除去 した。ストレプトアビジン−Eu(Wallac)を分析緩衝液(Wallac)で1 :1000に希釈し、ビオチン化されたRII/グラビン複合体を検出するために 添加した。その後、PBS/0.05%ツイーンで新たに洗浄して、非特異的結合 タンパク質を除去した。水で1:1に希釈された促進溶液(Wallac)が添加され 、増大した蛍光をDELFIA(商品名)リサーチ・フルオロメーター)(モデル1232 、Wallac)を使用してユウロピウムの遊離を測定した。 このタンパク質−タンパク質結合分析は、グラビンに対する結合の50%以上 が特異的であることを示した。ビオチン化されたRIIは、特異的かつ飽和可能な 状態でグラビンへ結合していた。相互作用に関するKdは約50nMであること が認められ、それは、表面プラスモン応答を使用したNauertらが1996年に報告し た内容に類似していた。 実施例10 グラビンのアミノ酸配列は、SSeCKS/クローン 322/クローン72[Chapli neら、1996]に多少の類似性を示している。グラビン及びSSeCKSの最初の1,000 個のアミノ酸に約69%の相同性がある。また、グラビンは、ミリスチン酸化さ れたアラニンリッチPKC基質(MARCKS)に対して選択された領域にいくらかの相 同性を示している[Aderem,Cell,71:713-716(1992)]。しかしながら、そのタ ンパク質配列の残余部分は全く別である。さらに、グラビンは、SDSゲル上で 250kDaの可動性で移動する1780のアミノ酸のタンパク質である。しか し、SSeCKS/クローン72は1687の残基であり、207kDaで移動する[Li nら,(1996),Chaplinら,(1995)及びNational Center for Biotechnology Infor mation accession no.2210332A]。加えて、5つの予期される核の局在化シグナ ルの識別は、SSeCKSが核のタンパク質であるという考え方に結びついた[Linら ,1995]が、免疫化学的データは、グラビンが細胞質の成分であり、また細胞骨 格の成分でありそうなことを明らかに示している。クローン322は、腫瘍形成 遺伝子で形質転換された細胞中でダウンレギュレーションされている腫瘍抑圧遺 伝子であると記述されていた。グラビンとクローン72(及びクローン322)の 間の配列類似性に基づくと、グラビンはまた腫瘍抑圧 遺伝子としての機能するかも知れない。 癌細胞が非接着細胞であることは当業者において公知である。悪性癌細胞の非 接着性の性質は、これらの細胞が転移することを可能にしている。マトリックス タンパク質あるいは他の細胞からの癌細胞の遊離あるいは非接着は、移動あるい は新しい部位への転移に対する必要条件である。変化した細胞または腫瘍が発生 した細胞は、細胞骨格の再組織、接着及び移動において機能するαアクチンまた はタリンのような細胞質のタンパク質の発現増加によって、それほど腫瘍を形成 しない状態に変換されるかもしれない。[Gluckら,Cell Science,107:1773-178 2(1994)]。 組織調査は、グラビンが制限された細胞の分布状態を示し、維芽細胞、ニュー ロン及び神経堤に由来する細胞中で主に発現することを示した[Groveら,1994 ]。これらの各細胞のタイプは、接着、移動性または経路探索機能に関与するの で、グラビンが細胞膜/細胞骨格事象を制御するかもしれないと仮定された[Gr oveら,1994]。さらに、この見解は、グラビンが接着HEL細胞のひだ及び糸状仮 足でPKAを集めることができるということを示す実施例4に記述された免疫局在 化実験によって確認された。加えて、細胞接着中のグラビンの役割に対して実施 例4にデータが記述されている。HEL細胞[Papayannopoulouら,1983]に接着す るホルボールエステルは、グラビン発現の増加を伴う。ところが、SV40誘導 体を用いたREF 52繊維芽細胞の形質転換上の接着表現型の損失は、クローン72の ダウンレギュレーションと同時発生した[Chapllneら,1996]。リン酸化現象が 薄膜/細胞骨格の一体性の維持を促進するので、グラビンによって接着している PKA及びPKCは、接着工程で役割を果たしているかも知れないということがまた推 測される。 グラビンは接着細胞中で発現されるが非接着細胞では発現せず、クローン72は 腫瘍形成遺伝子形質転換細胞中でダウンレギュレートされ、グラビンは癌生物学 に関係があることが提示された。さらに、ニコチン性アセチルコリン受容体に関 係の深い局在化しているキナーゼの機能に類似しており、グラビンは、細胞シグ ナルまたは他の刺激に対する応答が細胞接着分子のリン酸化をもたらす細胞接着 分子に関係の深い1つ以上のキナーゼを局在化しているかも知れない。LFA-1β サブユニットの細胞質ドメイン中のスレオニン残基の置換が、LFA-1によって媒 介される細胞接着を防止したと報告されている[Hibbsら,J.Exp.Med.,174:1227 -1238(1991)]。これらのスレオニン残基は、細胞活性化の間にリン酸化される と考えられる[Valmuら、J.Immunol.、155巻、1175〜1183頁(1995)]。これら残 基は他のインテグリンβサブユニットに保存されている。このように、様々の異 なるインテグリンによって媒介される細胞接着をリン酸化が調節しているのかも しれない。 グラビンとその結合パートナーとの間の阻害または解消するモジュレーターが 、グラビンによる結合パートナーの局在をモジュレートする上で有用である。例 えば、モジュレーターは細胞接着分子近傍へのキナーゼの局在を妨害するかもし れない。これらモジュレーターには、グラビンまたはグラビン結合パートナーに 結合するグラビンの断片に、特異的に結合するポリペプチド、及び、グラビン断 片またはグラビンの断片と特異的に相互作用する他の非ペプチド化合物(例えば 、単離されたもしくは合成された、有機もしくは無機分子)が含まれうる。 本発明の実施にあたり、数多くの修正や変更をなすことが、当業者にあっては 想起されると予測される。従って、添付の特許請求の範囲によってのみ、本発明 は限定されるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 5/10 C12P 21/08 C12P 21/02 G01N 33/53 D 21/08 33/577 B G01N 33/53 C12N 15/00 ZNAA 33/577 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ノエルト,ジェイ.,ブリアン アメリカ合衆国 97201 オレゴン ポー トランド サウスウェスト 10ス ナンバ ー21 3106 (72)発明者 クローク,テレサ,エム. アメリカ合衆国 97221 オレゴン ポー トランド サウスウェスト 39ス ドライ ブ 4708

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.cAMP依存性プロテインキナーゼのタイプII調節サブユニットに結合するこ とができるグラビンのポリペプチド断片であって、配列番号:1に示すアミノ酸 配列を含むポリペプチド断片。 2.前記断片が、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含む請求の範囲第1項記 載のポリペプチド断片。 3.プロテインキナーゼC(PKC)に結合することができるグラビンのポリペ プチド断片であって、配列番号:3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド断片 。 4.請求の範囲第1、2または3項記載のポリペプチド断片をコードするポリ ヌクレオチド。 5.請求の範囲第4項記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 6.前記ポリヌクレオチドが、発現制御DNA配列に作動可能に連結されている 請求の範囲第5項記載のベクター。 7.請求の範囲第4項記載のポリヌクレオチドで安定に形質転換またはトラン スフェクトされた宿主細胞。 8.好適な栄養培地にて請求の範囲第7項記載の宿主細胞を 生育し、発現されたポリペプチドを細胞または培地から単離する工程を含む、グ ラビンのポリペプチド断片を製造する方法。 9.請求の範囲第1、2または3項記載のポリペプチド断片と特異的な免疫反 応性を有する抗体物質。 10.前記抗体物質がポリクローナル抗体である請求の範囲第9項記載の抗体物 質。 11.前記抗体物質がモノクローナル抗体である請求の範囲第9項記載の抗体物 質。 12.請求の範囲第1、2または3項記載のポリペプチド断片と特異的な免疫反 応性を有するモノクローナル抗体を生産する細胞系。 13.グラビンポリペプチドと結合パートナーとの間のモジュレーターである化 合物を同定する方法であって、以下の工程すなわち、 a)グラビンポリペプチドと結合パートナーとの間の結合のレベルを、 ある化合物の非存在下及び存在下に定量し、 b)工程(a)で観察される結合のレベルを比較し、ならびに c)工程(b)で観察される結合の差に基づいて、グラビンポリペプチ ドと結合パートナーとの間の結合のモジュレーターとして前記化合物を同定する 工程を含む方法。 14.前記結合パートナーまたはグラビンポリペプチドが、検出可能な標識でラ ベルされる請求の範囲第13項記載の方法。 15.前記検出可能な標識が、放射線標識である請求の範囲第14項記載の方法 。 16.前記グラビンポリペプチドが、配列番号:1に示すアミノ酸配列を含む断 片である請求の範囲第13項記載の方法。 17.前記グラビンポリペプチドが、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含む断 片である請求の範囲第13項記載の方法。 18.前記グラビンポリペプチドが、配列番号:3に示すアミノ酸配列を含む断 片である請求の範囲第13項記載の方法。 19.前記結合パートナーが、cAMP依存性プロテインキナーゼのタイプII調節サ ブユニットである請求の範囲第13項記載の方法。 20.前記結合パートナーが、プロテインキナーゼCである請求の範囲第13項 記載の方法。
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