JPH10265882A

JPH10265882A - Ａｌ合金製熱交換器

Info

Publication number: JPH10265882A
Application number: JP9071402A
Authority: JP
Inventors: Masateru Hayashi; 昌照林; Akihiro Ito; 明広伊藤; Shigeo Sakai; 茂男酒井; Satoru Matsuo; 松尾　　識
Original assignee: Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Current assignee: Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date: 1997-03-25
Filing date: 1997-03-25
Publication date: 1998-10-06
Also published as: EP0867682A2; TW374113B; KR19980080522A; CA2233036A1; CN1199163A; AU5950898A

Abstract

(57)【要約】【課題】塩害環境下、排ガス環境下、及び塩害環境と
排ガス環境との両方の環境下の何れに対しても優れた耐
食性を有するＡｌ合金製熱交換器を提供する。【解決手段】チューブエレメントを構成するブレージ
ングシートの芯材をＭｎを１〜１．５重量％、Ｃｕを
０．１〜０．５重量％、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％
含み、残部がＡｌと不可避不純物からなるＡｌ合金と
し、芯材の両面または片面に少なくともＳｉを含有する
Ａｌ合金製ろう材をクラッドしてブレージングシートを
構成すると共に、空気側フィンのフィン材として、Ｚｒ
を０．０５〜０．２重量％含み、残部がＡｌと不可避不
純物からなるＡｌ合金を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、カーエアコン、ト
ラックエアコン等に用いられるＡｌ合金製熱交換器（例
えば、積層型熱交換器）に関するものである。さらに詳
しくは、本発明は、ろう材をクラッドしたＡｌ合金製ブ
レージングシートより構成されるチューブエレメント
と、Ａｌ合金製フィン材よりなる空気側フィンとをろう
付けにより一体化してなるＡｌ合金製熱交換器に関し、
積層型熱交換器と同様に製造されるエバポレータ、ラジ
エータ、ヒートコア、オイルクーラ、インタークーラ等
の自動車用熱交換器及び各種冷凍機用熱交換器に適用可
能なものである。

【０００２】

【従来の技術】図１は従来より使用されている積層型エ
バポレータの一例を示すものであって、積層型エバポレ
ータ１は、多数のチューブエレメント２を間隔を隔てて
並列状に配置し、互いに隣合うチューブエレメント２，
２間に空気側のフィン（コルゲートフィン）３をそれぞ
れ介在させてチューブエレメント２とフィン３とを交互
に積層し（図１及び図３参照）、この積層状態の下でこ
れら両者をろう付けしてなるものである。

【０００３】上述のチューブエレメント２は、皮材とし
てろう材がクラッドされ、かつ、図２に示すようにタン
ク部４と冷媒通路部５がそれぞれ形成された一対のブレ
ージングシート（プレート）６ａ，６ｂをプレス加工に
て結合してなるものである。なお、チューブエレメント
２としては、その内部に図２に示す如くインナフィン７
を収納配置したものと、インナフィン７を収容配置しな
いのもとがある。

【０００４】従来、ブレージングシート６ａ，６ｂの材
料は、芯材としてＡｌ−Ｍｎ系合金又はＡｌ−Ｍｎ系合
金にＣｕ等が添加されたものが用いられており、皮材と
してはろう材となるＡｌ−Ｓｉ系合金又はＡｌ−Ｓｉ系
合金にＺｎが添加されたものが用いられている。かくし
て、従来では、上記芯材に上記ろう材をクラッドしてな
るブレージングシート６ａ，６ｂがチューブエレメント
２の構成部材として使用されている。

【０００５】また、空気側フィン３の材料としては、Ａ
ｌ−Ｍｎ系合金又はＡｌ−Ｍｎ系合金にＺｎ、Ｓｎ、Ｉ
ｎ等が添加された材料が用いられる場合が多い。

【０００６】これらの材料の選択，組合せは、耐食性を
向上させる目的で設定される場合が主であり、ブレージ
ングシート６ａ，６ｂに腐食による冷媒漏れが発生する
のを防止することを狙っている。孔食によりブレージン
グシート６ａ，６ｂの１箇所でも貫通すると、冷媒漏れ
を生じてしまうからである。特に、最近では軽量化のニ
ーズに応じたブレージングシート６ａ，６ｂの軽量薄肉
化の進展に伴い、ブレージングシート６ａ，６ｂの板厚
方向の孔食の防止が重要となっている。

【０００７】そこで従来より、冷媒漏れを防ぐために、
様々な手法が用いられてその対策がなされている。その
対策の主なものは、フィン材にＺｎ等の卑な元素を添加
して孔食電位を下げ、ブレージングシート（プレート）
とフィンとの間に電位差を設けることによりフィンを犠
牲陽極として犠牲腐食させ、これによりブレージングシ
ートの腐食を遅らせるようにした陰極防食法によるも
の、ブレージングシートの腐食形態を孔食から面食に変
えるようにしたもの、或いは、ブレージングシート自身
の耐食性を上げるようにしたもの等がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】このような対策が従来
より実施されてきたが、その対策は塩害地域での腐食
（特に孔食）の対応策に関するものであり、その目的は
ほぼ達せられている。しかしながら、近年になって排ガ
ス環境下、或いは排ガス環境及び塩害環境を共に有する
環境下における腐食の問題が生じてきており、これらの
環境に対しては従来の腐食対応技術では不十分であるこ
とが指摘されている。具体的には、排ガス等の汚染環境
下では低塩素の水膜のため電気伝導度が小さく、防食電
流が流れにくくなることから、上記のような陰極防食法
は適用できない。

【０００９】排ガス環境が従来の塩害環境と大きく異な
る点は、有害成分の主体がＳＯ_X，ＮＯ_Xである点であ
り、従来のＣｌ主体とは全く異なっている。世界の市場
環境に対応するためには、上記の両有害環境（排ガス環
境及び塩害環境）に対応できなければならない。このた
め、各種従来技術の大幅な改良又は新たな手段が必要と
なる。

【００１０】一方、従来においては、ブレージングシー
トの皮材としてクラッドされるろう材及びフィン材にＺ
ｎを添加して真空ろう付法にて熱交換器を製造する場合
には、真空ろう付炉の内部でＺｎが加熱により蒸発して
しまい、予期した効果は出ないこととなるばかりか、炉
壁にＺｎが蒸着して炉の熱効率を低下させる不具合を生
じる。また、炉壁に蒸着したＺｎを除去するための作業
が必要となり、その作業コストが嵩む不都合がある。

【００１１】本発明は、このような実状に鑑みてなされ
たものであって、その目的は、塩害環境下、排ガス環境
下、及び塩害環境と排ガス環境との両方の環境下の何れ
に対しても優れた耐食性を有するＡｌ合金製熱交換器を
提供し、併せて、真空ろう付法による製造の際に真空ろ
う付炉に与える弊害を除去することができるようにする
ことにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明に係るＡｌ合金製熱交換器では、次のよう
な構成を採用している。

【００１３】（１）ろう材をクラッドしたＡｌ合金製
ブレージングシートより構成されるチューブエレメント
と、Ａｌ合金製フィン材よりなる空気側フィンとをろう
付けにより一体化してなるＡｌ合金製熱交換器におい
て、上記チューブエレメントを構成する上記ブレージン
グシートの芯材をＭｎを１〜１．５重量％、Ｃｕを０．
１〜０．５重量％、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％含
み、残部がＡｌと不可避不純物からなるＡｌ合金とし、
上記芯材の両面または片面に少なくともＳｉを含有する
Ａｌ合金製ろう材をクラッドして上記ブレージングシー
トを構成すると共に、上記空気側フィンのフィン材とし
て、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％含み、残部がＡｌと
不可避不純物からなるＡｌ合金を用いるようにしてい
る。

【００１４】（２）ろう材をクラッドしたＡｌ合金製
ブレージングシートより構成されるチューブエレメント
と、Ａｌ合金製フィン材よりなる空気側フィンとをろう
付けにより一体化してなるＡｌ合金製熱交換器におい
て、上記チューブエレメントを構成する上記ブレージン
グシートの芯材をＭｎを１〜１．５重量％、Ｃｕを０．
１〜０．５重量％、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％、Ｔ
ｉを０．１〜０．３重量％含み、残部がＡｌと不可避不
純物からなるＡｌ合金とし、上記芯材の両面または片面
に少なくともＳｉを含有するＡｌ合金製ろう材をクラッ
ドして上記ブレージングシートを構成すると共に、上記
空気側フィンのフィン材として、Ｚｒを０．０５〜０．
２重量％含み、残部がＡｌと不可避不純物からなるＡｌ
合金を用いるようにしている。

【００１５】（３）上記ブレージングシートの芯材に
含まれるＦｅ及びＳｉの含有量をそれぞれ０．２５重量
％以下としている。

【００１６】（４）上記ろう材中にＺｎを０．５〜１
０重量％添加するようにしている。

【００１７】（５）ろう付け後の上記ブレージングシ
ートの芯材の材料組織における結晶粒が、上記芯材の板
厚方向に対して５層以上の多層構造をなすようにしてい
る。

【００１８】（６）上記したろう付け後の上記ブレー
ジングシートの芯材と上記空気側フィンのフィン材の孔
食電位を貴となし、孔食電位の大きさを上記空気側フィ
ンのフィン材、上記チューブエレメントの表面のろう
材、上記ブレージングシートの芯材の順に大きくしてい
る。

【００１９】（７）上記空気側フィンのフィン材と上
記チューブエレメントの表面のろう材との間の孔食電位
差、及び、チューブエレメントの表面のろう材と上記ブ
レージングシートの芯材との間の孔食電位差をそれぞれ
２０ｍＶ以上としている。

【００２０】（８）上記芯材とフィン材との間の孔食
電位差を４０ｍＶ以上としている。

【００２１】以上の構成の特徴を各部材別に述べると、
次の通りである。

【００２２】＜ａ＞チューブエレメント芯材を下記の
ものとする。ブレージングシートの芯材を、Ａｌ−Ｍｎ系合金を
ベースとし、これにＣｕ及びＺｒを添加したもの（請求
項１）。ブレージングシートの芯材を、Ａｌ−Ｍｎ系合金を
ベースとし、これにＣｕ、Ｚｒ及びＴｉを添加したもの
（請求項２）。上記、にそれぞれ記載の材料の不可避不純物中
のＦｅ及びＳｉの含有量を所定の割合以下としたもの
（請求項３）。上記、、にそれぞれ記載の材料の組織を所望
の層状配列である５層以上の多層構造とするようにした
もの（請求項５）。

【００２３】＜ｂ＞ブレージングシートにクラッドす
るろう材を下記のものとする。Ａｌ−Ｓｉ系合金をベースとし、これにＺｎを所定
量だけ添加するようにしたもの（請求項４）。ろう付け後の孔食電位を、ブレージングシートの芯
材の孔食電位と空気側フィンのフィン材の孔食電位との
間の中間電位となるように調整したもの（請求項６）。

【００２４】＜ｃ＞空気側フィンのフィン材を下記の
ものとする。純Ａｌをベースとし、これにＺｒを添加したもの
（請求項１及び２）。

【００２５】かくして、本発明の好ましい実施態様にお
いては、上記＜ａ＞に記載の各ブレージングシートを用
いたチューブエレメントと、上記＜ｃ＞に記載の空気側
フィンとを互いに組合わせ、上記＜ｂ＞に記載のろう材
にてこれら両者をろう付けすることによりＡｌ合金製熱
交換器を製造する。そして、ブレージングシートの芯材
と空気側フィンのフィン材との間で４０ｍＶ以上の孔食
電位差を付与すると共に空気側フィンのフィン材，ブレ
ージングシート表面にクラッドされるろう材，ブレージ
ングシートの芯材の順に孔食電位差が大きくなるように
設定し、上記フィン材とろう材との間の孔食電位差及び
上記ろう材と芯材との間の孔食電位差をそれぞれ２０ｍ
Ｖ以上に設定する。なお、Ａｌ合金製熱交換器の製造に
用いられる真空ろう付炉への弊害を除去すべくＺｎの添
加を極力避けるようにしている。

【００２６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。

【００２７】本発明の第１の実施形態に係るＡｌ合金製
熱交換器においては、ブレージングシートの芯材をＭｎ
を１〜１．５重量％、Ｃｕを０．１〜０．５重量％、Ｚ
ｒを０．０５〜０．２重量％含み、残部がＡｌと不可避
不純物からなるＡｌ合金としている。そして、上記芯材
の両面または片面に少なくともＳｉを含有するＡｌ合金
製ろう材をクラッドして上記ブレージングシートを構成
するようにしている。また、空気側フィンのフィン材と
して、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％含み、残部がＡｌ
と不可避不純物からなるＡｌ合金を用いている。

【００２８】また、本発明の第２の実施形態に係るＡｌ
合金製熱交換器においては、ブレージングシートの芯材
をＭｎを１〜１．５重量％、Ｃｕを０．１〜０．５重量
％、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％、Ｔｉを０．１〜
０．３重量％含み、残部がＡｌと不可避不純物からなる
Ａｌ合金としている。そして、上記芯材の両面または片
面に少なくともＳｉを含有するＡｌ合金製ろう材をクラ
ッドして上記ブレージングシートを構成するようにして
いる。また、上記空気側フィンのフィン材として、Ｚｒ
を０．０５〜０．２重量％含み、残部がＡｌと不可避不
純物からなるＡｌ合金を用いている。

【００２９】ここで、ブレージングシートの芯材、ろう
材及びフィン材にそれぞれ添加する各種成分の作用並び
に添加量の限定理由につき述べると、以下の通りであ
る。

【００３０】［Ｉ］ブレージングシートの芯材に添加
する各種成分の作用並びに添加量の限定理由＜１＞Ｍｎ添加の作用Ａｌ合金製ブレージングシートの芯材にＭｎを添加する
と、Ａｌ−Ｍｎ系の化合物として芯材に分散されること
により、耐食性を低下させることなく強度を向上させ
る。＜２＞Ｍｎ添加量の限定理由１．５重量％を越えると、加工性が低下する。また、粒
界腐食の発生により耐食性が低下する。一方、１重量％
未満では上記に記載の作用が不十分となる。

【００３１】＜３＞Ｃｕ添加の作用Ｃｕを添加すると、マトリクス（母材）に固溶して強度
を向上させる。また、Ｃｕは芯材の電気化学的性質を貴
にし（材料電位を上げ、自己耐食性も若干向上させ
る）、ろう材との電位差を大きくし、防食上有効な電位
分布を形成する。＜４＞Ｃｕ添加量の限定理由０．５重量％を越えると、マトリクス（母材）に析出し
て、自己耐食性が急激に悪くなり逆効果となる。また、
芯材からろう材に拡散することにより、ろう材表面及び
フィン材等との接合部に濃縮し腐食速度が増大する。一
方、０．１重量％未満では、上記に記載の作用が不十分
となる。

【００３２】＜５＞Ｚｒ添加の作用ろう付け後に微細な金属間化合物として分散し、強度を
向上させる。また、結晶粒を細分化させ、腐食形態を面
食にするため、耐孔食性が向上する。＜６＞Ｚｒ添加量の限定理由０．２重量％を越えると加工性が低下する。一方、０．
０５重量％未満では、上記に記載の作用が不十分とな
る。

【００３３】＜７＞Ｔｉ添加の作用ろう付け後に微細な金属間化合物として分散し、強度を
向上させる。また、Ｔｉが板厚方向に層状に分布するた
め、腐食形態が面食となり、耐孔食性が向上する。＜８＞Ｔｉ添加量の限定理由０．３重量％を越えると、加工性が低下する。一方、
０．１重量％未満では、上記に記載の作用が不十分とな
る。

【００３４】［ＩＩ］フィン材に添加するＺｒの作用
並びに添加量の限定理由＜１＞Ｚｒ添加の作用ろう付け後に微細な金属間化合物として分散し、強度を
向上させる。また、組織を偏平型にして強度、耐サグ性
及び耐エロージョン性を向上させる。＜２＞Ｚｒ添加量の限定理由０．２重量％を越えると、加工性が低下する。一方、
０．０５重量％未満では、上記に記載の作用が不十分と
なる。

【００３５】［ＩＩＩ］ろう材に添加するＺｎの作用
並びに添加量の限定理由＜１＞Ｚｎ添加の作用ろう付け後に、Ｚｎが芯材側へ拡散し、犠牲陽極とな
る。また、Ｚｎ拡散層が形成される。＜２＞Ｚｎ添加量の限定理由０．５〜１０重量％に限定したのは、１０重量％を越え
ると芯材への拡散量が増え、逆に芯材の耐食性を低下さ
せるからであり、一方、０．５重量％未満では犠牲電極
として作用するための十分な電位差が確保できなくなる
からである。＜３＞少なくともＳｉを含有させる理由ろう材は同種のＡｌ母材が溶けない温度で溶けなければ
ならない。そこで、ろう材の融点を下げ、流動性を向上
させるべくＳｉを加えるようにしている。

【００３６】次に、本発明に係るＡｌ合金製熱交換器を
真空ろう付法を用いて製造した場合の実施例につき述べ
る。本実施例では、ブレージングシートの芯材及びブレ
ージングシート表面にクラッドされるろう材の成分を下
記の表１において本発明１〜４の欄に示すように設定し
た。なお、表１中には、比較材として公知のもの及び本
発明の成分範囲を越えたものを比較例１〜５として示し
た。

【００３７】

【表１】

【００３８】また、空気側フィンのフィン材の成分を下
記の表２において本発明Ａ、Ｂの欄に示すように設定し
た。なお、表２中では、比較材Ａ〜Ｅを例示した。

【００３９】

【表２】

【００４０】下記の表３には、Ａｌ合金製熱交換器の材
料組合せとしてのブレージングシート（チューブエレメ
ント）材とフィン材との組合せを示している。なお、真
空ろう付法によるろう付けに際しては、１０^-5Ｔｏｏｒ
の真空下で６００℃の温度で５分間のろう付けを施行し
た。

【００４１】

【表３】

【００４２】次に、本発明に係るＡｌ合金製熱交換器を
非腐食性フラックスを用いた雰囲気ろう付法を用いて製
造した場合の実施例につき述べる。この場合の実施例と
して、下記の表４中に本発明５〜７における芯材の成分
及び含有量を示すと共に、比較材６〜９における芯材の
成分及び含有量を示した。なお、フィン材の成分及び含
有量は上記の表２に記載のものと同様とした。また、こ
の場合のＡｌ合金製熱交換器の材料組合せは後述の表６
に示した。なお、雰囲気ろう付法によるろう付けに際し
ては、Ｎ₂ガス雰囲気中で６０５℃の温度で５分間のろ
う付けを施行した。

【００４３】

【表４】

【００４４】真空ろう付法によって本発明のＡｌ合金製
熱交換器サンプル及び比較例のＡｌ合金製熱交換器サン
プルを製造した場合の評価結果を下記の表５に示す。こ
の場合の評価は、ろう付性及び耐食性について行ってお
り、耐食性については２種類の評価法、すなわち、ＳＳ
Ｔ（塩水噴霧試験法）及びＣＣＴ（サイクル試験法）で
行っている。上記ＳＳＴは主に対塩害性評価用として、
また上記ＣＣＴは主に対排ガス環境性評価用としての判
断基準になるものである。

【００４５】

【表５】

【００４６】上記の表５に示される評価結果から明かな
ように、本発明の実施例及び比較例のすべての材料につ
いてろう付性は概ね問題はなく、実用域にあるものと考
えられる。一方、耐食性については、表５に示される如
く仕様により明確な差が出ており、本発明１〜４のサン
プルの全てが顕著に優れた耐食性を有していることが確
認された。また、組合せ仕様、並びに材料成分により若
干の変化はあるものの、比較材どうしの従来品仕様の場
合は耐食性は良くない。

【００４７】ブレージングシートの芯材として本発明品
を使用した場合には、明かな耐食性向上効果が認められ
た。特に、ブレージングシートの芯材及びフィン材とも
に本発明品を組合わせた場合には、耐食性の大幅な改善
効果が現れることが確認された。この結果、表５に示さ
れる本発明に係るＡｌ合金製熱交換器は、塩害環境、排
ガス環境、及び塩害環境と排ガス環境とを合わせた環境
の何れに対しても、また異物付着等の他の要因に対して
も優れた耐食性を有する熱交換器であることが確認され
た。

【００４８】また、真空ろう付炉を用いる場合には上記
の表１及び表２に示す如くＺｎの添加量を微量（ｔ
ｒ．）にしているので、Ｚｎの蒸着による真空ろう付炉
の壁面への悪影響を及ぼすような不具合を回避すること
ができる。

【００４９】一方、非腐食性フラックスを用いた雰囲気
ろう付法によって本発明のＡｌ合金製熱交換器サンプル
及び比較例のＡｌ合金製熱交換器サンプルを製造した場
合の評価結果を下記の表６に示す。この場合も、既述の
真空ろう付法を用いた場合と同様に、比較材どうしの組
合せに比べて本発明どうしの組合せの方が、格段の耐食
性向上効果が顕著に現れていることが確認された。な
お、非腐食性フラックスを用いた雰囲気ろう付法の場合
には、Ｚｎの含有量が多くても弊害は生じない。

【００５０】

【表６】

【００５１】また、ブレージングシートにＺｒ（又は、
Ｚｒ及びＴｉ）を添加したことによる組織上の効果を確
認すべく実験を行ったところ、これを添加した場合に
は、組織が微細になると共に、ろう付け後のブレージン
グシート（チューブエレメント）の芯材の材料組織にお
ける結晶粒が上記芯材の板厚方向に対して多層構造（少
なくとも５層以上）となり、腐食形態が面食状となり耐
孔食性が向上すると共に、強度の向上が図られているこ
とが確認された。

【００５２】以上述べたように、本例によれば、チュー
ブエレメントを構成するブレージングシートの芯材をＡ
ｌ−Ｍｎ系合金をベースとしてＣｕ及びＺｒ（又はＣ
ｕ、Ｚｒ及びＴｉ）を添加したのもとし、空気側フィン
のフィン材をＡｌをベースとしてＺｒを添加するように
しているので、耐食性（耐孔食性及び耐層状腐食性）が
優れたものとなり、塩害環境だけでなく排ガス環境にも
充分に対応できるＡｌ合金製熱交換器を得ることが可能
となる。

【００５３】また、真空ろう付炉を用いる場合には、フ
ィン材やろう材等にＺｎをできるだけ含有させないよう
にすることにより、真空ろう付炉の炉壁にＺｎが蒸着し
て生じる弊害を除去することができる。なお、非腐食性
フラックスを用いた雰囲気（Ｎ₂ガス）ろう付法による
製造の場合には、上述のような弊害はなく、ろう材中に
Ｚｎを０．５〜１０重量％添加することにより、Ｚｎ拡
散による高孔食性を得ることができる。

【００５４】なお、その他の構成、すなわち、ブレージ
ングシートの芯材に含まれるＦｅ及びＳｉの含有量をそ
れぞれ０．２５重量％以下とした構成によっても、耐食
性の向上効果を得ることができる。なお、このような含
有量の限定を行ったのは、次の理由からである。すなわ
ち、Ｆｅはマトリクス（母材）中に析出した場合、電位
が高くなり、腐食の発生起点となるため、その含有量を
０．２５重量％以下に制限するようにしている。また、
Ｓｉも同様に析出し易く腐食の発生起点になるため、そ
の含有量を０．２５重量％以下に制限するようにしてい
る。

【００５５】さらに、ブレージングシートの芯材と空気
側フィンのフィン材との間で４０ｍＶ以上の孔食電位差
を付与すると共に、空気側フィンのフィン材，ブレージ
ングシート表面にクラッドされるろう材，ブレージング
シートの芯材の順に孔食電位が大きくなるように設定
し、上記フィン材とろう材との間の孔食電位差及び上記
ろう材と芯材との間の孔食電位差をそれぞれ２０ｍＶ以
上に設定するようにした構成を採用することによって
も、耐食性の向上効果をより一層顕著に発揮することが
できる。

【００５６】以上、本発明の実施例つき述べたが、本発
明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の技
術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、本発明は、既述の積層型エバポレータと同様に
製造されるラジエータ、ヒートコア、オイルクーラ、イ
ンタークーラ等の自動車用熱交換器及び各種冷凍機用熱
交換器に適用可能である。

【００５７】

【発明の効果】以上の如く、本発明によれば、耐食性
（特に、耐孔食性）に優れ、塩害環境及び排ガス環境の
両環境下でも充分に対応することができる実用的なＡｌ
合金製熱交換器を提供することができる。しかも、Ｚｎ
の含有量を極力少なくすることにより、Ａｌ合金製熱交
換器の製造に用いられる真空ろう付炉にＺｎが蒸着する
等の弊害を防止することも可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】Ａｌ合金製熱交換器の一種である積層型エバポ
レータの斜視図である。

【図２】積層型エバポレータに用いられるチューブエレ
メントの分解斜視図である。

【図３】チューブエレメントと空気側フィンとの積層構
造を示す分解斜視図である。

【符号の説明】

１Ａｌ合金製熱交換器の一種である積層型エバポレー
タ２チューブエレメント３空気側フィン６ａ，６ｂブレージングシート

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者酒井茂男愛知県名古屋市中村区岩塚町字高道１番地三菱重工業株式会社名古屋研究所内 (72)発明者松尾識愛知県名古屋市中村区岩塚町字高道１番地三菱重工業株式会社名古屋研究所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ろう材をクラッドしたＡｌ合金製ブレー
ジングシートより構成されるチューブエレメントと、Ａ
ｌ合金製フィン材よりなる空気側フィンとをろう付けに
より一体化してなるＡｌ合金製熱交換器において、上記チューブエレメントを構成する上記ブレージングシ
ートの芯材をＭｎを１〜１．５重量％、Ｃｕを０．１〜
０．５重量％、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％含み、残
部がＡｌと不可避不純物からなるＡｌ合金とし、上記芯材の両面または片面に少なくともＳｉを含有する
Ａｌ合金製ろう材をクラッドして上記ブレージングシー
トを構成すると共に、上記空気側フィンのフィン材として、Ｚｒを０．０５〜
０．２重量％含み、残部がＡｌと不可避不純物からなる
Ａｌ合金を用いたこと、を特徴とするＡｌ合金製熱交換
器。
【請求項２】ろう材をクラッドしたＡｌ合金製ブレー
ジングシートより構成されるチューブエレメントと、Ａ
ｌ合金製フィン材よりなる空気側フィンとをろう付けに
より一体化してなるＡｌ合金製熱交換器において、上記チューブエレメントを構成する上記ブレージングシ
ートの芯材をＭｎを１〜１．５重量％、Ｃｕを０．１〜
０．５重量％、Ｚｒを０．０５〜０．２重量％、Ｔｉを
０．１〜０．３重量％含み、残部がＡｌと不可避不純物
からなるＡｌ合金とし、上記芯材の両面または片面に少なくともＳｉを含有する
Ａｌ合金製ろう材をクラッドして上記ブレージングシー
トを構成すると共に、上記空気側フィンのフィン材として、Ｚｒを０．０５〜
０．２重量％含み、残部がＡｌと不可避不純物からなる
Ａｌ合金を用いたこと、を特徴とするＡｌ合金製熱交換
器。
【請求項３】上記ブレージングシートの芯材に含まれ
るＦｅ及びＳｉの含有量をそれぞれ０．２５重量％以下
としてなることを特徴とする請求項１又は２に記載のＡ
ｌ合金製熱交換器。
【請求項４】上記ろう材中にＺｎを０．５〜１０重量
％添加してなることを特徴とする請求項１乃至３の何れ
か１項に記載のＡｌ合金製熱交換器。
【請求項５】ろう付け後の上記ブレージングシートの
芯材の材料組織における結晶粒が、上記芯材の板厚方向
に対して５層以上の多層構造をなしていることを特徴と
する請求項１乃至４の何れか１項に記載のＡｌ合金製熱
交換器。
【請求項６】ろう付け後の上記ブレージングシートの
芯材と上記空気側フィンのフィン材の孔食電位を貴とな
し、孔食電位の大きさを上記空気側フィンのフィン材、
上記チューブエレメントの表面のろう材、上記ブレージ
ングシートの芯材の順に大きくしてなることを特徴とす
る請求項１乃至３の何れか１項に記載のＡｌ合金製熱交
換器。
【請求項７】上記空気側フィンのフィン材と上記チュ
ーブエレメントの表面のろう材との間の孔食電位差、及
び、チューブエレメントの表面のろう材と上記ブレージ
ングシートの芯材との間の孔食電位差をそれぞれ２０ｍ
Ｖ以上としてなることを特徴とする請求項６に記載のＡ
ｌ合金製熱交換器。
【請求項８】上記芯材とフィン材との間の孔食電位差
を４０ｍＶ以上としてなることを特徴とする請求項７に
記載のＡｌ合金製熱交換器。