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JPH10102322A - 易フィブリル化繊維 - Google Patents

易フィブリル化繊維

Info

Publication number
JPH10102322A
JPH10102322A JP9119626A JP11962697A JPH10102322A JP H10102322 A JPH10102322 A JP H10102322A JP 9119626 A JP9119626 A JP 9119626A JP 11962697 A JP11962697 A JP 11962697A JP H10102322 A JPH10102322 A JP H10102322A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
island
pva
fibers
sea
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9119626A
Other languages
English (en)
Inventor
Akio Omori
昭夫 大森
Toshimi Yoshimochi
駛視 吉持
Tomoyuki Sano
友之 佐野
Satoru Kobayashi
悟 小林
Shunpei Naramura
俊平 楢村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP9119626A priority Critical patent/JPH10102322A/ja
Publication of JPH10102322A publication Critical patent/JPH10102322A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Preliminary Treatment Of Fibers (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 親水性かつ高強度で微粒子捕捉性や補強性に
優れ、しかもアルカリ吸液性や耐熱難融性に優れてお
り、フィブリル化の際に繊維成分の溶出がなく、かつ叩
解時に泡立ちや叩解液の公害問題を生じないフィブリル
であって、アルカリ電池のセパレーター紙、セメントス
レート板の補強繊維、摩擦材の補強繊維等に極めて有用
なフィブリルとすることができる繊維を提供する。 【解決手段】 海成分は高配向高結晶性のポリビニルア
ルコール系ポリマーよりなり、島成分はアルカリ吸液性
や耐熱性、難融性に優れた水不溶性セルロース系ポリマ
ーよりなり、島の大きさが0.03〜10μmであり、
強度3g/d以上の海島相分離繊維であって、この繊維
を水に濡らして機械的応力を作用させると、0.05〜
8μmの径を有するフィブリルに容易に分割することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容易にフィブリル
化可能な、ビニルアルコール系ポリマー(以下PVAと
略す)とセルロース系ポリマーよりなる易フィブリル化
繊維に関するものであり、化学的膨潤力と機械的応力の
各々単独あるいは組合わせにより容易に極細フィブリル
となり、湿式あるいは乾式不織布、アルカリ電池用セパ
レーター、摩擦材用補強繊維、セメント製品の補強繊維
などに用いることができる繊維及びフィブリルに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来からアルカリマンガン電池のセパレ
ーターとしてPVA系繊維からなる不織布が、その優れ
た耐アルカリ性の点から用いられている。近年、エレク
トロニクス、情報通信の発展に伴い、電池は一層の高性
能化が求められる一方、製造上及び廃棄後の無公害化の
点より無水銀化が求められている。そして電池に使用さ
れるセパレーターは無水銀下での高性能化のため、より
優れたセパレート性が要求されている。このため、アル
カリマンガン電池のセパレーターに使用されているPV
A系繊維は細デニール化が進められ、現在では0.3デ
ニールのものが市販されている。しかしながらPVA系
繊維を細デニール化するだけでは、アルカリマンガン電
池用セパレーターにおいて極めて重要な性能であるアル
カリ吸液性(すなわちKOH水溶液吸収量)が十分でな
い。これらの点を解消するセパレーターとして、アルカ
リ吸液性の優れたセルロース繊維でかつ叩解により極細
にフィブリル化可能なポリノジック繊維を細デニールP
VA系繊維に混抄したものが使用されている。ところ
が、ポリノジック繊維は製造工程での公害問題などがあ
る。またポリノジック繊維の場合には叩解性も良くな
く、また得られるフィブリルも繊維の中心部分が太い幹
で残り、幹まで十分に細く分割されたフィブリルを得る
ことは極めて難しい。したがって極細繊維にフィブリル
化可能で、かつアルカリ吸液性及び耐アルカリ性に優れ
たPVA系繊維が望まれている。
【0003】また自動車のブレーキやクラッチ板などに
使用される種々の摩擦材の補強繊維として、無機微粒子
の捕捉性、耐熱性、難融性、補強性の点より従来アスベ
ストが多用されてきたが、アスベストが健康に対して問
題があるとの認識によりその使用が厳しく制限され始め
ている。最近ではアスベストは高価なアラミド繊維のフ
ィブリルに代替されつつある。しかし、アラミド繊維
は、その高価さ故に使用が限定されており、現実にはパ
ルプなど補強性の不十分なものが使用されている。これ
らのことより、粒子捕捉性を達成するためのフィブリル
化性に優れ、耐熱性、難融性、補強性を兼備し、アラミ
ド繊維より安価な繊維が切望されている。
【0004】また従来よりスレート板などのセメント製
品の補強用繊維としてアスベストが使用されているが、
前述の理由により厳しく使用制限されている。アスベス
ト代替として、PVA系繊維が、セメントのアルカリに
対する耐アルカリ性に優れていることより用いられてい
るが、PVA系繊維はアスベストに比べて繊維が太過ぎ
るため、スレートのグリーン強度が低い。これを補うた
めにパルプなどのフィブリルを混用する必要がある。も
しフィブリル化が可能なPVA系繊維が存在するなら
ば、従来のPVA系繊維とパルプを併用する繁雑さが解
消することとなる。
【0005】さらに従来より、極細の合成繊維を得るた
めに、ブレンドポリマーの相分離現象を利用する試みは
数多くなされている。例えば特公昭49−10617
号、特公昭51−17609号、特開昭48−5692
5号、特開昭49−6203号等の各公報には、ポリア
クリロニトリル系ポリマーを海成分とし、PVAにアク
リロニトリルをグラフト共重合したものやポリメチルメ
タクリレート系ポリマーを島成分とする海島繊維は、叩
解することによりフィブリル化が可能であることが示さ
れている。しかし、これらはポリアクリロニトリルを海
成分とする、いわゆるポリアクリロニトリル繊維の改良
技術であり、ポリアクリロニトリル繊維は耐アルカリ性
及び高アルカリ吸液性が劣るため、これらに関して優れ
た性能が要求される用途や耐熱性が要求される用途には
使用することができない。
【0006】また、特公昭47−31376号公報に
は、完全ケン化PVAを海成分、部分ケン化PVAを島
成分とするPVA系の易フィブリル繊維が開示されてい
る。しかし、この繊維の場合には、水中で叩解してフィ
ブリル化させる際に水溶性の部分ケン化PVAが溶出
し、叩解時に泡立ちが大きいという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上より、木材パルプ
と同じ水酸基を多量に有するPVAを海成分とし、叩解
時に繊維成分の溶出による泡立ちが少なく、易フィブリ
ル化可能で、かつ高アルカリ吸液性および/または耐熱
性、難融性に優れ、さらに強度が高いPVA系繊維が強
く望まれていた。しかしながら現在に至るまで、そのよ
うな繊維は得られていない。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような状況に鑑み、
本発明者らは鋭意努力し、遂に本発明に至った。すなわ
ち、本発明は、PVA(A)と水不溶性セルロース系ポ
リマー(B)よりなる繊維であって、繊維断面におい
て、Aが海成分、Bが島成分を構成し、島の大きさが平
均0.03μ〜10μmであり、引張強度が3g/d以
上であることを特徴とするPVA系ポリマーとセルロー
ス系ポリマーよりなる易フィブリル化海島構造繊維であ
る。本発明繊維においては、PVAを海成分とする。分
子鎖が配向結晶化し易く、高強度フィブリルが得られ易
く、耐アルカリ性、耐熱性に優れかつ木材パルプと同様
に親水性の水酸基を多量に有するPVAが海成分、すな
わち連続相を構成していることが本発明の課題を達成す
る上で基本的に重要である。
【0009】ここにいうPVAとしては、ビニルアルコ
ールユニットを70モル%以上有していれば特に限定は
ない。エチレン、イタコン酸、ビニルアミン、アクリル
アミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン
酸含有ビニル化合物などのモノマーがビニルアルコール
に30モル%未満の割合で共重合されているものも包含
される。ビニルアルコールがビニルエステルをケン化し
たものである場合には、ケン化度は80モル%以上なら
ば限定はないが、配向結晶化のためにはビニルアルコー
ルユニットが95モル%以上であるのが好ましく、さら
に好ましくは98モル%以上、もっと好ましくは99モ
ル%以上、最も好ましくは99.8モル%以上である。
PVA系ポリマーの重合度に関しては特に限定はない
が、高強度フィブリルを得るためには、重合度が500
以上が好ましく、1500以上であるとさらに好まし
い。また耐熱水性改善のため、繊維化後、後反応により
PVAはホルムアルデヒドで代表されるアルデヒド化合
物により分子内および/または分子間アセタール化や架
橋性薬剤などにより架橋されていてもよい。
【0010】また本発明繊維においては、水不溶性のセ
ルロース系ポリマーを島成分とする。水不溶性のセルロ
ース系ポリマーとしては、セルロースそのもの、セルロ
ースジアセテートやセルローストリアセテートなどの酢
酸セルロース、硝酸セルロースおよびメチルセルロース
やエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カ
ルボキシメチルセルロースで水不溶性の低置換度セルロ
ースなどがあげられる。なかでもセルロースは高アルカ
リ吸液性かつ低水膨潤性、親水性、耐熱難融性の点で、
また酢酸セルロースはPVAの低相溶性、低吸水性、耐
熱難融性、特に易フィブリル性である点で好ましい。澱
粉類は非晶性で溶出性が大きいという問題点を有してお
り、本発明で言う水不溶性セルロース系ポリマーの範疇
には入らない。また繊維状での後反応により例えば酢酸
セルロースをセルロースとしたものでもよく、特に水不
溶性セルロース系ポリマーの原料として酢酸セルロース
を用い、繊維形成後に酢酸セルロースをケン化してセル
ロースとしたものは、極めて容易にフィブリル化するこ
とより、本発明において最も好ましいポリマーである。
セルロース系ポリマーは一旦溶解して非晶化すると配向
結晶化させて高強度とすることは困難であり、むしろ水
に対する膨潤度は小さいがアルカリに対しては高い吸液
性を示すという独特の性状や耐熱性・難融性を有効活用
するにはセルロース系ポリマーは島成分すなわち分散相
として存在させることが重要である。
【0011】海/島、すなわちPVA/セルロース系ポ
リマーの重量比は95/5〜50/50が好ましい。島
成分のセルロース系ポリマーが5%より少ないとフィブ
リル化し難い。海成分のPVAが50%より少ないと、
セルロース系ポリマーが部分的に海成分を形成し、PV
Aが明確なマトリックス相を形成し得なくなり高強度フ
ィブリルを得ることは困難となる。PVA/セルロース
系ポリマーの重量比が、90/10〜52/48である
とより好ましく、80/20〜55/45であるとさら
に好ましく、75/25〜60/40であるともっとも
好ましい。
【0012】また島の大きさは平均0.03〜10μm
である。本発明にいう島の大きさとは、本発明繊維に耐
水化処理を施し、繊維断面の超薄切片を作り、四酸化オ
スミウムで染色後透過型電子顕微鏡で20,000〜6
0,000倍に拡大した断面写真より、各島の面積を求
め、その面積と同一の円の換算直径を算出し、各島の換
算径の相加平均と定義した。平均径が0.03μm未満
であると、島の大きさが小さ過ぎてフィブリル化が困難
であり、島の大きさが10μmを越えると、得られるフ
ィブリルが大きく(すなわち太く)、フィブリル本来の
機能を果たさず、また繊維化工程においてトラブルを起
こし易く、工程通過性の点で問題となる。島の大きさが
0.1〜6μmであると好ましく、0.5〜3μmである
とさらに好ましい。さらに本発明繊維において、島の断
面形状が非円形或いは不定形であると、海成分と島成分
の接触面積が多く、分割され易い部分が多くなり、より
易フィブリル化され易くなるので好ましい。
【0013】なお、本発明繊維のセルロース系ポリマー
より構成される島の中にPVAが分散した島の中に島の
3相構造となっていてもよい。3相構造繊維では島相自
体が分割され、さらに微細なフィブリルを得るのに有効
である。本発明の易フィブリル化繊維は、引張強度(以
下単に強度と称する場合がある)が3g/d以上あるこ
とが必要である。強度が3g/d未満の場合には、電池
用セパレーター、摩擦材の補強繊維、セメントスレート
板の補強繊維等のように強度が要求される用途に用いる
ことができず、さらに一般に強度の低い繊維はフィブリ
ル化しにくいと言う問題点も有している。好ましくは強
度4g/d以上であり、より好ましくは5g/d以上、
さらに好ましくは7g/d以上である。本発明でいう繊
維の強度はJIS L1015に準拠して測定される値
である。強度3g/d以上の繊維は後述する方法により
製造される。
【0014】また本発明の繊維は、叩解性が30分以下
という性能を有していることが好ましい。本発明で言う
叩解性とは、20℃で相対湿度65%の雰囲気で放置し
た繊維サンプル4gを2mmにカットし、これに20℃
の水400ccを加えて、松下電器産業製ミキサー(ナ
ショナルMX−X40)に投入し、11000rpmで
撹拌叩解し、所定時間撹拌後に水分散叩解液をサンプリ
ングし、次に述べる方法により濾水時間を測定し、濾水
時間が60秒となる撹拌叩解時間をいう。濾水時間と
は、径が63mmのプラスチック製メスシリンダーの底
をくり抜き、そこに350メッシュの金網を取り付け、
フィブリル0.5gを含む水分散叩解液750ccを濾
過するのに要する時間を言う。
【0015】叩解性が30分を越えると、実際に使用す
る際にフィブリル化しなかったり、あるいはフィブリル
化が不十分なために、目的とする用途に用いることがで
きない場合がある。無論フィブリル化しにくい繊維であ
っても、叩解時間を長くするとか、あるいは叩解処理条
件としてもっと激しい条件を用いる等の方法により、フ
ィブリル化させることは可能であるが、このようにして
得られるフィブリルは、フィブリル同士が激しく絡まり
あったり更にはフィブリルが短く切断されており、所期
の用途には適したものではない。
【0016】次に本発明繊維の製造法について述べる。
まず上記PVA(A)と水不溶性セルロース系ポリマー
(B)を共通の有機溶媒に溶解することが重要である。
共通の有機溶媒としては、セルロース系ポリマーが酢酸
セルロース、硝酸セルロースの場合にはジメチルスルホ
キシド(以下DMSOと略記する)、ジメチルアセトア
ミド、ジメチルホルムアミドと塩化亜鉛などの金属塩の
混合物などを用いることが出来る。有機溶媒を用いると
PVAをゲル紡糸することができるため、高強度の繊維
が得られる。
【0017】両ポリマーを、A/Bの重量比が95/5
〜50/50となるように共通の有機溶媒に溶解する。
溶解して得た紡糸原液は、PVAとセルロース系ポリマ
ーとの相溶性次第によっては必ずしも完全透明な均一溶
液とはならない。本発明のPVAが海成分、セルロース
系ポリマーが平均0.03〜10μmの大きさの島成分
となっている海島繊維を得るためには、紡糸原液段階で
PVAが海、セルロース系ポリマーが島に相分離した海
島構造の溶液であることが好ましい。但し、原液段階で
の島の大きさは、溶媒を含んでいることや固化条件によ
り相分離状況が変化するので、0.03〜10μmであ
る必要は全くない。海島構造を決める因子としては、両
ポリマーの相溶性、組成比、ポリマー濃度、有機溶媒の
種類、原液の温度などがあり、これらを適宜制御し、紡
糸性などの工程通過性と易フィブリル化性、強度、耐水
性などの性能を両立させることが重要である。紡糸原液
の粘度は、湿式紡糸方法を用いる場合には10〜400
ポイズ、乾湿式紡糸方法を用いる場合には50〜200
0ポイズが適当であり、溶融紡糸の際の粘度に比べかな
り低い。この点に、島の形状を非円型、不定型とするこ
とが可能となる要因の1つがある。
【0018】なお、PVAの従来の紡糸溶媒である水
は、水不溶性のセルロース系ポリマーを溶解することが
出来ないので用いることはできない。また従来、ビスコ
ースレーヨンの強度や染色性を改善するために、ビスコ
ース原液にPVA水溶液を添加し、芒硝と硫酸を含む水
溶液中に紡糸する方法が知られているが、この方法によ
り得られる繊維は再生セルロースが海成分でPVAが島
成分であり、強度の点やフィブリル化性の点で本発明の
繊維とは異なり、またこの方法で例えPVAが海成分と
なるようにPVA量を増やしたとしても、本発明の繊維
と比べてフィブリル化性や強度等の性能の点でも著しく
劣る。すなわちPVAとセルロース系ポリマーを所定割
合で共通の有機溶媒に溶解し、PVAが海成分、セルロ
ース系ポリマーが島成分となるように海島構造の紡糸原
液を得ることが本発明繊維の製造法における重要なポイ
ントの1つである。
【0019】このようにして得た紡糸原液を紡糸ノズル
を通して固化浴中に湿式あるいは乾湿式紡糸する。固化
浴を紡糸ノズルに接触させる湿式紡糸はノズル孔ピッチ
を狭くしても膠着せずに紡糸ができるため多ホールノズ
ルを用いた紡糸に適しており、一方固化浴と紡糸ノズル
の間に空気層を設ける乾湿式紡糸は空気層部での伸びが
大きいことにより、高速紡糸に適している。本発明にお
いては湿式か乾湿式かは目的、用途に応じて適宜選択す
ることができる。
【0020】本発明において固化浴に関しては特に限定
はないが、メタノール、エタノールなどのアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類及び
これらと原液溶媒との混合液のように、低温でPVAが
微結晶を生成し均一ゲル化を惹起させるものが好まし
く、芒硝水溶液の如く不均一凝固を惹起させ易いものは
好ましくない。均一固化したゲル糸篠は、湿延伸、抽出
洗滌、油剤付与、乾燥、乾熱延伸、及び必要に応じて乾
熱処理を施して、海成分のPVA分子を配向、結晶化さ
せた海島繊維とする。
【0021】島の大きさは、先述の紡糸原液段階での海
島相分離構造と、固化段階のゲル化挙動と相分離挙動の
バランスによって決定される。原液段階での島サイズが
大きい程、また固化段階でのゲル化速度が小で相分離速
度が大きい程、得られる繊維の島サイズは大となる傾向
にある。固化段階でのゲル化挙動と相分離挙動を決める
因子としては、固化浴の組成、温度と滞留時間、紡糸ノ
ズル吐出直前の原液温度、剪断速度などがある。従っ
て、原液及び固化段階での島サイズ決定因子を総合的に
制御することにより、島サイズを平均0.03〜10μ
mとした本発明繊維を得ることができる。
【0022】また、上記の如く製造した繊維に化学反応
をさせて性能を改質することができる。例えばPVAが
海、酢酸セルロースが島となっている本発明繊維を1規
定苛性ソーダ中に50℃で30分浸漬することにより、
酢酸セルロースをケン化し、PVAが海、高アルカリ吸
液性かつ耐熱性難融性のセルロースが島となっている繊
維を得ることができる。この繊維は前記したように本発
明繊維の中で最も好ましいものである。またこの繊維の
耐熱水性を改善するため、繊維をホルムアルデヒドで代
表されるアルデヒド類と硫酸などの酸の混合水溶液に浸
漬することにより、PVAの非晶部を分子内及び/また
は分子間アセタール化することも出来る。
【0023】本発明繊維は、PVAとセルロース系ポリ
マー以外にも本発明の目的を逸脱しない範囲において、
無機顔料、有機顔料、染料、耐熱劣化防止剤、pH調整
剤、架橋剤、油剤などを含有していてもよく、これらは
目的に応じて原液段階、固化段階、抽出段階、乾燥直
前、延伸直前、熱延伸後、熱処理後、後反応後などの各
製造プロセス段階で付与することができる。
【0024】このようにして得た繊維を、化学的膨潤力
と機械的応力の各々単独あるいはより好ましくは併用に
よりフィブリルとする。本発明におけるフィブリルの大
きさ(太さ)は、換算径で0.05〜8μmである。本
発明におけるフィブリルの大きさは、走査型あるいは透
過型電子顕微鏡でフィブリルの断面を拡大し、その断面
積を実測し、その断面積と同じ面積の円の直径に換算し
た値であり、n=20以上の相加平均をフィブリル集合
体の大きさと定義した。フィブリルの大きさが0.05
μm未満であると、あまりに細く、フィブリル同士が絡
み合いフィブリル凝集体となり、均一に分散することが
出来ず、フィブリルとしての機能を果たすことができな
い。一方フィブリルの大きさが8μmを越えると、太過
ぎて、比表面積が小さくなり、無機微粒子を捕捉するな
どのフィブリルとしての機能を果たすことができない。
フィブリルの補強性、吸液性、微粒子捕捉性、分散性な
どの点より、フィブリルの大きさが、0.2〜5μmで
あると好ましく、0.6〜2.5μmであるとさらに好ま
しい。フィブリルの大きさは本発明繊維の島の大きさと
ある程度の相関はあるが、島成分にまで完全に分割され
るとは限らないし、島成分の島の中に島が存在する三相
構造となっている場合には、島成分がさらに分割される
可能性も大きいのでフィブリルの大きさと叩解前の繊維
の島の大きさとは必ずしも一致しない。
【0025】フィブリルの全表面が海成分のPVAによ
って覆われていてもよいが、島成分のセルロース系ポリ
マーがフィブリルの表面の一部に出ていると好ましい場
合がある。PVAとセルロースの海島繊維を叩解時間を
変更してアルカリ吸液性を評価すると、叩解前はアルカ
リ吸液性のセルロースを含有しているにも拘わらず、P
VA単独の吸液性とほぼ同等であるが、叩解が進むとア
ルカリ吸液性が上昇し、ある程度叩解が進むとフィブリ
ルの大きさはさらに減少傾向にあるにもかかわらず、ア
ルカリ吸液性はレベルオフする傾向にあるという意外な
事実を見出した。この原因は完全に明らかになっている
わけではないが、叩解前は繊維の全表面がアルカリに対
して低膨潤性のPVAで覆われており、繊維内部にアル
カリ膨潤性のセルロースが存在しても、表面のPVAが
所謂桶のタガの役割を果たすため、PVA単独繊維のア
ルカリ吸液性しか示さないのに対し、叩解され、PVA
層とセルロース層の間で分割されると、セルロース層が
表面に出て、PVAの“タガ”が外れるため、セルロー
ス本来のアルカリ吸液性を示すようになり、さらに叩解
が進んでフィブリルの大きさは小さくなって、PVAの
“タガ”がなくなった後はアルカリ吸液性が大きくなら
ずレベルオフすると推定される。従ってフィブリル化が
単に繊維径を小さくすることだけでなく、アルカリマン
ガン電池用セパレーターの如くアルカリ吸液性が重要と
なる用途においては、高アルカリ吸液成分を表面に露出
させたフィブリルが少なくとも10%以上存在すること
が好ましい。20%以上存在するとさらに好ましく、3
0%以上存在するとより一層好ましい。
【0026】本発明にいう表面にセルロースが露出した
フィブリルの割合は、叩解前の繊維のアルカリ吸液量に
対し、叩解後のフィブリルのアルカリ吸液量の増加割合
で簡易的に示すこととする。
【0027】フィブリルのアスペクト比(長さ/径)は
50以上である。アスペクト比が50未満であると補強
性、微粒子捕捉性が不十分である。アスペクト比が20
00を越えるとフィブリル同士の絡み合いが大きくな
り、均一分散が困難となるので分散に工夫を要する。補
強性、捕捉性の点で、アスペクト比が100以上である
と好ましく、200以上であるとさらに好ましい。なお
ここで言う径とは、フィブリルの平均断面積相当の円の
直径を意味する。
【0028】次に本発明フィブリルの製造法について述
べる。本発明のPVA(A)と水不溶性セルロース系ポ
リマー(B)の海島相分離構造繊維に化学的膨潤力と機
械的応力の各々単独、あるいはより好ましくは両方を作
用せしめてフィブリルを製造する。本発明における化学
的膨潤力とは、海成分であるPVA(A)か又は島成分
のセルロース系ポリマー(B)を膨潤させる能力をい
い、PVA(A)を膨潤させるためには、代表的には水
を接触させることである。島成分の水不溶性セルロース
系ポリマー(B)は水に対する膨潤性が小さく、PVA
層とセルロース系ポリマー層の間で膨潤力差による応力
歪みが発生し、この歪みが大きいと膨潤力のみで分割さ
れる。またPVA(A)とセルロース系ポリマー(B)
の接着力は必ずしも強固ではないので、本発明繊維に強
力な機械的剪断力を加えると分割される場合もあるが、
膨潤歪みのある状態で機械的剪断力を加える方がより完
全に分割フィブリル化されるのでより好ましい。化学的
膨潤力のフィブリル化性に与える影響は大きいが、本発
明繊維では水という極めて安価な、公害処理、回収処理
の不要な物質によりこの化学的膨潤力が得られることは
大きな特徴である。フィブリル化のためには島相の膨潤
が重要で、海相が膨潤しても易フィブリル化には寄与し
ないとの考え方もあるが、本発明繊維での結果では海相
膨潤で十分に有効であり、現在では海相と島相の膨潤力
差による内部歪みを大きくすることが易フィブリル化に
有効であるとの考え方が妥当と思われる。
【0029】次にフィブリル化方法については、繊維を
フィブリル化した後にフィブリルをシート状に形成する
方法と、繊維の状態でシート状物を形成した後にフィブ
リル化する方法とがある。まず前者は、本発明繊維を1
〜30mmに短く切断し、水中に浸漬、分散し、ビータ
ー、リファイナー、ミキサーなどにより機械的応力を加
え、フィブリル化させ、得られたフィブリルを紙料とし
て抄紙する方法、またはフィブリルをセメント液中に分
散させて抄造する方法などである。フィブリル化により
細い繊維で構成されるので高緊度の薄くて強い紙が得ら
れる。アルカリマンガン電池のセパレーター向けとして
は繊維間吸液量を上げるためポーラスな紙が望ましく、
本発明フィブリルに他の素材例えば0.3〜1デニール
のビニロンを混合し、かつポーラスさが確保できるよう
抄紙するのが好ましい。このようにして得たセパレータ
ーは繊維間及び繊維内のいずれもが高アルカリ吸液とな
る。またフィブリルを無機微粒子や熱硬化性プラスチッ
ク微粒子などと混合撹拌すると微粒子がフィブリルに捕
捉され、微粒子を抄造することが可能となり、ブレーキ
シュやクラッチ板に適した摩擦材を得ることができる。
【0030】後者の方法は、本発明繊維を捲縮・切断し
てステープルとした後、カード機を通して形成したウェ
ッブに、または本発明繊維を1〜30mmに切断したも
のを紙料として水中に分散させ、湿式抄造した原紙に、
30kg/cm2以上、好ましくは60kg/cm2以上
の高圧水流をあて、高圧水流による衝撃あるいは剪断に
より本発明繊維をフィブリル化する方法がその代表例で
ある。この方法は、ウェッブ形成後高圧水流によりフィ
ブリル化するので、フィブリルによる分散不良やフィブ
リルによる高緊度化が回避可能というメリットがあり、
極細繊維で構成されていながらポーラスな2次元シート
が得られ、電池セパレーター用として、またワイパーや
フィルターとしても有用である。
【0031】従来PVA以外の繊維素材で2種の非相溶
性のポリマーからなる複合繊維の場合には、高圧水流で
複合繊維を分割することは行われているが、高圧水流処
理までの工程通過性と高圧水流処理時の分割性が逆相関
の関係にあり、良好な工程通過性と良好な分割性との両
立が困難であった。すなわち従来の高圧水流処理で分割
化し易い繊維は紡糸工程、延伸工程、捲縮工程、カード
工程でも分割され易く、これら工程でトラブルとなり易
い。逆にウェッブ形成工程までの分割性が小さくトラブ
ルなく通過する複合繊維の場合には、高圧水流処理でも
分割化し難く、分割された極細繊維よりなる不織布が得
難い傾向となる。
【0032】一方本発明のPVAをベースとする繊維の
場合には、先述の如く、高圧水流処理前までのドライの
状態では分割フィブリル化性が小さく、従ってドライ工
程では分割フィブリル化によるトラブルが少なくても、
高圧水流によりウェットとなると一気に内部歪みが大き
くなり高圧水流により分割フィブリル化が惹起し易いと
いう特徴を有する。 また、本発明の繊維は強力な機械
的剪断力のみでも分割されるため、フィブリル化の方法
として、ニードルパンチ法も用いることができる。ただ
し先に述べたように、本発明の繊維は水流絡合のよう
に、湿潤歪みのある状態での機械的剪断力を受けた場合
に、より一層分割フィブリル化されるため、ニードルパ
ンチ法の場合は条件を厳しくする必要がある。すなわ
ち、フィブリル化条件として、刺針密度250本/cm
2以上が好ましく、より好ましくは刺針密度400本/
cm2以上である。
【0033】上記した水流絡合法やニードルパンチ法に
用いられる乾式ウェッブを製造する方法において、カー
ディング方法としては、ローラーカード、セミランダム
カード、ランダムカード等が挙げられ、またウェッブの
形成方法についても、タンデムウェッブ、クロスウェッ
ブ、クリスクロスウェッブ等の一般に知られている方法
が挙げられる。また、水流絡合法に用いられる湿式抄紙
原紙を製造する方法としては、一般に知られた円網、短
網、長網等の抄紙機を用いる方法が挙げられ、水流処理
の支持体に導くことができるならば、漉き上げた原紙は
乾燥された状態でも乾燥前のものでも良い。
【0034】本発明の繊維と共に、ウェッブに混綿また
は原紙に混抄される原綿については、レーヨン、溶剤紡
糸セルロース繊維、ポリノジック、ポリエステル、アク
リル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロン等、一般に
知られている繊維を用いることができる。ウェッブの積
層についても、本発明の繊維を少なくとも一部含んだ同
種ウェッブによる積層のみでなく、本発明の繊維の混合
率の異なるウェッブ同士の積層や、本発明の繊維を含ま
ないウェッブとの積層でも良い。すなわち、本発明の繊
維がフィブリル化した状態で一部含まれていればよく、
均一に存在しておらず、偏在していても良い。
【0035】また、得られた不織布に、サチュレート
法、スプレー法、プリント法、泡末法等のエマルジョン
バインダー付与方法や粉末法等によって、酢ビ系、アク
リル系、ポリエチレン系、塩ビ系、ウレタン系、ポリエ
ステル系、エポキシ系、ゴム系等の一般に知られた樹脂
バインダーを添加することもできる。
【0036】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明するが、本発明は実施例によって何等限定されるもの
ではない。 実施例1 重合度1750、ケン化度99.9モル%のPVAと重
合度180、アセチル化度55%の酢酸セルロース(以
下CAと略記する)をジメチルスルホキシド(DMSO
と略す)に添加し、80℃で10時間窒素気流下撹拌溶
解し、PVA/CAの重量比が70/30でポリマーの
総濃度が18重量%で少し褐色に着色した混合溶液を得
た。この溶液は完全透明ではなく、少し濁っており、P
VAが海成分、CAが島成分の海島相分離溶液であった
が、80℃で24時間撹拌せずに放置しても更なる相分
離の傾向はみられず、安定な均一分散液であった。この
溶液を紡糸原液とし、孔数1000ホール、孔径0.0
6mmφの紡糸口金を通し、DMSO/メタノールの重
量比が25/75で、温度が10℃の固化浴中に湿式紡
糸し、3.5倍の湿延伸を施し、糸中のDMSOをメタ
ノールで抽出し、80℃の熱風で乾燥し、220℃で、
全延伸倍率13倍の乾熱延伸を行い、PVA/CA海島
繊維を得た。次いで、1規定苛性ソーダ中50℃で30
分処理してCAをケン化してセルロースとし、さらにホ
ルムアルデヒド30g/lと硫酸200g/lと芒硝1
50g/lの浴に70℃×30分浸漬してアセタール化
をした。この繊維の断面を透過型電子顕微鏡で拡大し島
の大きさを求めたところ、1.2μmであった。また島
の形状は円型は殆どなく、4角以上の角型、星型、アメ
ーバ形状など不定型であった。この2000デニール/
1000フィラメントからなるマルチフィラメントヤー
ンの強度は10.2g/d、繊維強度は11.2g/dで
あり、島成分としてCAが30重量%含有されている割
りには高強度であり、熱水溶断温度は120℃と高く、
海成分のPVAが十分配向結晶化していると推定され
る。この繊維の叩解性は18分であった。
【0037】このPVA/セルロース海島繊維を2mm
に切断し、その5gを水500cc中に分散し、家庭用
ジュースミキサー(ナショナルMX−X40)で10分
間撹拌叩解し、叩解液を吸引濾過し、含水フィブリルを
得た。このフィブリルを光学顕微鏡及び電子顕微鏡で観
察した結果、平均太さが1.0μm、アスペクト比が8
00であり、断面形状は円型ではなく、不定形であるこ
とがわかった。なお叩解処理前の繊維の径は約15μm
であった。得られた含水フィブリル4g(純量)と1デ
ニール×3mmのPVA系バインダー繊維0.2gとを
水1.5lに加え、離解機で十分離解させ、粘剤を加え
て十分に撹拌し、抄紙液を作製した。この抄紙液300
mlに水を加えて1lとし、Tappi手抄き抄紙機で
抄紙した。得られた抄造紙をNo.3濾紙で十分に脱水
し、110℃のロール乾燥機で85秒乾燥し、目付40
g/m2の手抄き紙を得た。
【0038】得られた紙の繊維内アルカリ吸液率は2.
2g/gであり、通常の1デニールのビニロン繊維単独
で抄いた紙のアルカリ吸液率0.5g/gより明らかに
高く、叩解ポリノジック繊維とビニロン繊維を混抄して
得た紙のアルカリ吸液率2.2g/gと遜色のない高ア
ルカリ吸液性を示した。なお紙の繊維内アルカリ吸液率
は、5cm×5cmの紙(乾燥後重量WDg)を35重
量%KOH水溶液に20℃×30分間浸漬し、3000
rpm×10分の遠心脱液した後の紙の重量をWCgと
した時、(WC−WD)/WD(g/g)として求め
た。
【0039】参考例 実施例1で得られたPVA/セルロース海島繊維を2m
mに切断し、叩解処理を施さずにそのまま抄紙した。こ
の紙の繊維内アルカリ吸液率は1.0g/gと通常のビ
ニロン繊維に比べ改善はされているものの、十分な改善
効果はみられなかった。これは内部にアルカリ膨潤性の
セルロースを含有しているものの、最表面が低アルカリ
膨潤性のPVAに覆われており、“たが”がはまってい
る状態となっているためと推定される。
【0040】実施例2 重合度4000、ケン化度99.1モル%のPVAと重
合度110、アセチル化度45%の酢酸セルロースを実
施例1と同様にDMSOに撹拌溶解し、PVA/CAの
重量比が63/37でポリマー総濃度が13重量%の少
し濁った均一微分散溶液を得た。この溶液は1日放置し
ても相分離状態に明確な変化はなく安定であった。この
溶液を紡糸原液とし、孔数500ホール、孔径0.08
mmφの紡糸口金を通し、DMSO/メタノール=30
/70で温度が5℃の固化浴中に湿式紡糸し、3.5倍
の湿延伸を施し、抽出、乾燥し、235℃で12倍の乾
熱延伸を行い、PVA/CA海島繊維を得た。このブレ
ンド繊維の島の大きさは1.8μmであり、島の形状は
円型でなく不定型であった。1000デニール/500
フィラメントのマルチフィラメントヤーン強度は8.5
g/d、繊維の強度は9.2g/dと高強度であり、熱
水溶断温度も118℃と高く、海成分のPVAが十分配
向結晶化していると推定された。この繊維の叩解性は2
0分であった。
【0041】このPVA/CA海島繊維を捲縮、38m
mに切断し、得られたステープルファイバーをパラレル
カード機にかけて目付40g/m2のウェッブを作製
し、このウェッブに水をかけ濡らした後80kg/cm
2の高圧水流をあて、繊維を分割、絡合させた。得られ
た不織布の顕微鏡観察より、繊維は太さが2μm、アス
ペクト比が2000以上のフィブリルに分割されている
ことがわかった。なお高圧水流処理前の未叩解繊維の径
は15μmであった。
【0042】比較例1 20kg/cm2の高圧水流をあてる以外は実施例2と
同様にして水流絡合不織布を作製した。この不織布を顕
微鏡観察したところ、分割されたフィブリルはほとんど
なかった。
【0043】実施例3 実施例1で得たPVA/セルロース繊維を捲縮・切断
し、得られたステープルファイバーをカード機にかけ、
ウェッブを形成し、このウェッブを水で濡らした後60
kg/cm2と80kg/cm2の高圧水流を各2秒間当
て乾燥して目付40g/m2の不織布を得た。得られた
不織布の顕微鏡観察より、繊維は太さが1.2μm、ア
スペクト比が2000以上のフィブリルに分割されてい
ることがわかった。分割前に繊維をウェッブの如きシー
ト状に形成し、シート状態のままでフィブリル化するこ
とにより、アスペクト比が2000以上でも均一分散し
た不織布を得ることができた。この不織布の繊維間アル
カリ吸液率と繊維内アルカリ吸液率を測定したところ、
各々6.2g/gと2.9g/gであった。一方、実施例
1で得たフィブリル繊維の湿式抄造紙は繊維内アルカリ
吸液率が2.2g/gと高いものの、繊維間アルカリ吸
液率は2.5g/gと低かった。これは極細フィブリル
としてからシート形成しており、このためシートが高緊
度となり繊維間の隙間が少なくなっているためと思われ
る。また前記参考例で得た未叩解繊維の湿式抄造紙は繊
維内アルカリ吸液率は1.0g/gと低いものの繊維間
アルカリ吸液率は6.0g/gと高かった。この実施例
で得た乾式カードウェッブを水流絡合した不織布は繊維
間、繊維内アルカリ吸液率がいずれも高い値を示した。
なお、紙や乾式不織布などのシートの繊維間吸液率は、
5cm×5cmのサンプル(乾燥後重量WDg)を35
重量%KOH水溶液に20℃×30分間浸漬し、30秒
滴垂らしを行った後の重量をWTgとした時、全吸液率
(WT−WD)/WDを求め、さらに既述の如く、繊維
内吸液率を求め、全吸液率より繊維内吸液率を差し引い
て求めた。
【0044】比較例2 PVA/CAの重量比を97/3、ポリマー総濃度16
重量%とする以外は実施例1と同様にして、溶解、紡
糸、乾熱延伸を行ってPVA/CAブレンド繊維を得
た。この繊維を水に分散し、実施例2と同様にジュース
ミキサーで40分間撹拌、叩解処理し、得られた繊維を
顕微鏡で観察したが、分割フィブリル化の傾向はみられ
なかった。この繊維の叩解性は40分以上であった。
【0045】比較例3 PVA/CAの重量比を40/60、ポリマー総濃度2
5重量%とする以外は実施例1と同様にDMSOに溶解
した。得られた溶液を実施例1と同様に紡糸しようとし
たが、ノズルから正常に吐出することが困難で、かつ得
られたゲル糸篠も弱く、後の繊維化工程を通過させるこ
とができなかった。これは溶液段階でマトリックスとな
る海成分がCAであるためと思われる。
【0046】実施例4 実施例2で得られたPVA/CA繊維を捲縮、40mm
に切断し、得られたステープルファイバーをセミランダ
ムカード機にかけ、15g/m2のセミランダムウェブ
(A)を得た。これとは別に、レーヨン1.3デニール
×40mmのステープルを用いて、同様に30g/m2
のセミランダムウェブ(B)を得た。これらのウェブを
ラッパーにて、ウェブ(A)を上下層に、ウェブ(B)
を中間層に積層して、金網製織りベルトの上に置き、8
0kg/cm2の高圧水流をあて、繊維を分割、絡合さ
せた後、ドライヤー温度110℃で乾燥させ、60g/
2の乾式水絡不織布を得た。得られた不織布の顕微鏡
観察より、本発明の繊維は径が2μm、アスペクト比が
2000以上のフィブリルに分割され、各々のウェッブ
がよく絡合していることがわかった。
【0047】比較例4 レーヨン1.3デニール×40mmのステープルを用い
て、実施例4と同様にセミランダムカード機にかけ、各
々15g/m2、30g/m2のセミランダムウェブを得
た。これらのウェブをラッパーにて、15g/m2ウェ
ッブを上下層に、30g/m2ウェッブを中間層に積層
して、金網製織りベルトの上に置き、80kg/cm2
の高圧水流をあて、繊維を分割、絡合させた後、ドライ
ヤー温度110℃で乾燥させ、60g/m2の乾式水絡
不織布を得た。得られた不織布は、実施例4で得られた
不織布と比較して、密度が低く、めがねレンズの拭取り
性に劣るものであった。
【0048】実施例5 実施例1で得られたPVA/セルロース海島繊維を捲
縮、51mmに切断し、得られたステープルファイバー
をパラレルカードでカーディング、クロスラッパーで作
製したクロスウェッブに、刺針密度450本/cm2
ニードルパンチングし、繊維を分割、絡合させ、400
g/m2の乾式不織布を得た。得られた不織布の顕微鏡
観察より、繊維は径が4μm、アスペクト比が500以
上のフィブリルに分割され、各々が絡合していることが
わかった。なお、ニードルパンチ処理前の未叩解繊維の
径は15μmであった。
【0049】実施例6 実施例1で得られたPVA/セルロース海島繊維を15
mmに切断したものを40重量%と、木材パルプ60重
量%を混合したスラリーを調整した。これを短網抄紙機
にて抄紙し、ドライヤー温度110℃で乾燥させ、25
g/m2の原紙を得た。この原紙を4枚重ね合わせ、金
網製織りベルトの上に置き、100kg/cm2の高圧
水流をあて、繊維を分割、絡合させた後、ドライヤー温
度110℃で乾燥させ、91g/m2の湿式水絡不織布
を得た。得られた不織布の顕微鏡観察より、繊維は径が
1μm、アスペクト比が2000以上のフィブリルに分
割され、各々がよく絡合していることがわかった。な
お、高圧水流処理前の未叩解繊維の径は15μmであっ
た。
【0050】
【発明の効果】本発明のフィブリル繊維を用いて得られ
たシートは、緻密性、遮蔽性、耐アルカリ性、不透明
性、拭取り性、吸水性、吸油性、透湿性、保温性、耐候
性、高強度、高引裂力、耐摩耗性、制電性、ドレープ
性、染色性、安全性等に極めて優れるため、前記したア
ルカリ電池セパレーター紙の他に、エアフィルター、バ
グフィルター、液体フィルター、掃除機用フィルター、
水切りフィルター、菌遮蔽フィルター等の各種フィルタ
ー用シート、、コンデンサー紙、フロッピーディスク包
材等の各種電気器材用シート、FRPサーフェーサー、
粘着テープ基布、吸油材、製紙フェルト等の各種工業用
シート、家庭・業務・医療用ワイパー、印刷ロール用ワ
イパー、複写機クリーニング用ワイパー、光学機器用ワ
イパー等の各種ワイパー用シート、手術衣・ガウン、覆
布、キャップ、マスク、シーツ、タオル、ガーゼ、バッ
プ剤基布、おむつ、おむつライナー、おむつカバー、絆
創膏基布、おしぼり、ティッシュ等の各種医療・衛材用
シート、芯地、パット、ジャンバーライナー、ディスポ
下着等の各種衣料用シート、人工・合成皮革基布、テー
ブルトップ、壁紙、障子紙、ブラインド、カレンダー、
ラッピング、カイロ・乾燥剤袋、買物袋、風呂敷、スー
ツカバー、枕カバー等の各種生活資材用シート、寒冷
紗、内張カーテン、べたがけ、遮光・防草シート、農薬
包装材、育苗ポット下敷き紙等の各種農業用シート、防
煙・防塵マスク、実験着、防塵服等の各種防護用シー
ト、ハウスラップ、ドレン材、濾過材、分離材、オーバ
ーレイ、ルーフィング、タフト・カーペット基布、結露
防止シート、壁装材、防音・防振シート、木質ボード、
養生シート等の各種土木建築用シート、フロアー・トラ
ンクマット、天井成型材、ヘッドレスト、内張布等の各
種車輛内装材用シート等の用途に用いることができる。
また、本発明の繊維を、無機微粒子と分散撹拌するとフ
ィブリル化し、微粒子捕捉性と補強性に優れ、しかも耐
熱難燃性に優れたフィブリルを得ることができ、摩擦材
として有用である。またこのフィブリルをセメントに混
合分散させると、セメント粒子の捕捉性に優れ、しかも
補強性もあるので、高強度スレート板を容易に得ること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 悟 岡山市海岸通1丁目2番1号 株式会社ク ラレ内 (72)発明者 楢村 俊平 岡山市海岸通1丁目2番1号 株式会社ク ラレ内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビニルアルコール系ポリマー(A)と水
    不溶性セルロース系ポリマー(B)よりなる繊維であっ
    て、繊維断面において、Aが海成分、Bが島成分となっ
    ており、かつ島の大きさが平均0.03〜10μmであ
    り、引張強度が3g/d以上であることを特徴とする易
    フィブリル化海島構造繊維。
  2. 【請求項2】 叩解性が30分以下である請求項1に記
    載の易フィブリル化海島構造繊維。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の繊維を水中で叩解して
    フィブリル化するフィブリルの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の繊維からなるウェッブ
    に、30kg/cm2以上の高圧水流を当ててフィブリ
    ル化するフィブリルの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の繊維を少なくとも一部
    として含む原綿をカーディングして得られたウェッブ
    に、30kg/cm2以上の高圧水流を当てるか、或い
    は250本/cm2以上の刺針密度でニードルパンチン
    グして該繊維をフィブリル化することを特徴とする乾式
    不織布の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の繊維を主体繊維の少な
    くとも一部として含むスラリーを抄造することによって
    得られた原紙に、30kg/cm2以上の高圧水流をあ
    てて該繊維をフィブリル化することを特徴とする湿式水
    絡不織布の製造方法。
  7. 【請求項7】 ビニルアルコール系ポリマー(A)と水
    不溶性セルロース系ポリマー(B)よりなり、平均太さ
    が直径0.05〜8μmであり、アスペクト比が50以
    上であるフィブリル。
  8. 【請求項8】 ビニルアルコール系ポリマー(A)と水
    不溶性セルロース系ポリマー(B)をA/Bの重量比9
    5/5〜50/50で共通の有機溶媒に溶解して、Aが
    海成分、Bが島成分の海島相分離溶液とし、この溶液を
    紡糸原液として固化浴中に湿式紡糸又は乾湿式紡糸する
    ことを特徴とする易フィブリル化海島構造繊維の製造
    法。
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