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JPH08303605A - 非接触形メカニカルシール - Google Patents

非接触形メカニカルシール

Info

Publication number
JPH08303605A
JPH08303605A JP7107521A JP10752195A JPH08303605A JP H08303605 A JPH08303605 A JP H08303605A JP 7107521 A JP7107521 A JP 7107521A JP 10752195 A JP10752195 A JP 10752195A JP H08303605 A JPH08303605 A JP H08303605A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ring
groove
seal
holding
stationary
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP7107521A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2700868B2 (ja
Inventor
Toshihiko Fuse
敏彦 布施
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Pillar Packing Co Ltd
Original Assignee
Nippon Pillar Packing Co Ltd
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Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Pillar Packing Co Ltd filed Critical Nippon Pillar Packing Co Ltd
Priority to JP7107521A priority Critical patent/JP2700868B2/ja
Publication of JPH08303605A publication Critical patent/JPH08303605A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 静止密封環と保持環との間の歪み干渉を防止
すると共に、静止密封環と保持環との間のOリングによ
る二次シール機能を良好に維持し得るようにする。 【構成】 静止密封環4の背面4dと保持環5の前面5
dとの間を、環状溝11に保持させたOリング10によ
り、二次シールされた非接触状態に保持する。環状溝1
1の内径側壁面13における溝口側部分13aを溝奥側
部分13bより小径として、内径側壁面13においては
Oリング10が溝口側部分13aに非接触の状態で支持
されるように構成する。保持環5の前面5dに、溝口側
部分13aに連なって静止密封環4の環状凹部4cへと
遊嵌状に突入する環状のOリング保持部5dを突設す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばタービン,ブロ
ワ,遠心圧縮機等の主として気体(窒素,アルゴン,水
素,天然ガス,空気等)を扱う回転機器において好適に
使用される非接触形メカニカルシールに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の非接触形メカニカルシー
ルとしては、図7及び図8に示す如く、シールケース1
を貫通する回転軸2に固定された回転密封環3と、シー
ルケース1にOリング7を介して軸線方向移動可能に保
持された断面L字形の保持環5と、シールケース1と保
持環5との間に介装されたスプリング6と、このスプリ
ング6により保持環5を介して回転密封環3へと押圧附
勢された静止密封環4と、保持環5の前面5dに形成し
た断面矩形状又は蟻溝形状の環状溝11に係合保持され
て、静止密封環4の背面4dと保持環5の前面5dとの
間を二次シールするOリング10とを具備し、両密封環
3,4の対向端面たる密封端面3a,4a間を、回転側
密封端面3aに設けた動圧発生溝3bにより動圧を発生
させることによって流体膜を介在させた非接触状態に保
持して、この流体膜形成部分において密封端面3a,4
aの外周側領域である高圧流体領域Hとその内周側領域
である低圧流体領域Lとをシールしうるように構成され
たもの(以下「従来シール」という)がよく知られてい
る。
【0003】ところで、回転密封環3、静止密封環4及
び保持環5は、その機能の違いから、夫々、熱膨張係
数,ヤング率の異なる異質材で構成されている。例え
ば、回転密封環3はWC,SiC等の超硬質材で、静止
密封環4は回転密封環3の構成材に比して軟質のカーボ
ン等で、保持環5はSUS304,Ti等の金属材で構
成されている。一方、回転密封環3、静止密封環4及び
保持環5には運転に伴う発熱や機器のシステム圧によっ
て熱歪みや圧力歪み(以下「歪み」というときは、これ
らの歪みをいうものとする)が生じるが、これらの歪み
量や歪み状態は同一ではなく、構成材質の違いから相異
する。特に、構成材質上、保持環5の歪み量は回転密封
環3及び静止密封環4のそれに比して極めて大きい。
【0004】したがって、静止密封環4と保持環5とが
嵌合等により一体化されている場合には、両環4,5の
接触部分においてそれらの歪みが相互に干渉することに
なり、その結果、静止密封環4については、保持環5の
歪みの影響を強く受けて、それ自身の歪みとは全く異な
る歪み状態を呈することなる。このため、静止側密封端
面4aの平滑度や回転側密封端面3aに対する同心度,
平行度が損なわれて、密封端面3a,4a間に発生する
動圧が不均一となったり、極端な場合には、動圧発生不
良や密封端面3a,4aの局部的接触といった不測の事
態を生じて、長期に亘って良好なシール機能を発揮し得
ないといった問題が生じる。特に、かかる問題は高圧,
高速条件下において顕著に生じ、かかるシール条件下で
の使用をより困難とする。
【0005】そこで、従来シールでは、図7及び図8に
示す如く、環状溝11の溝深さをOリング10の断面径
よりも所定量小さく設定して、Oリング10の一部を環
状溝11から突出させることによって、静止密封環4の
背面4dと保持環5の前面5dとの間をOリング10を
介してシールされた非接触状態に保持させておき、静止
密封環4が保持環5の歪みによる悪影響を受けることが
ないように図っている。すなわち、静止密封環4と保持
環5とがOリング10を介して間接的に接触しているに
すぎないから、圧力変動,温度変化等により両環4,5
に異なる歪みが生じた場合にも、それらの歪みはOリン
グ10の弾性変形により吸収されて相互に干渉せず、静
止密封環4が保持環5の歪みによる悪影響を受けること
がない。なお、Oリング10は、一般に、非圧縮性且つ
高摩擦性を有するゴム等で構成されており、径方向にず
れたりすることなく両環4,5が軸線方向に相対変位し
た場合にもこれに追随変形して両環4,5間を良好に二
次シールしうるように、図8に示す如く、環状溝11の
外径側壁面14との間に適当な余裕をもった状態で内径
側壁面13に支持されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来シールで
は、図8に示す如く、環状溝11が断面矩形状のもの
(同図(A))又は蟻溝形状のもの(同図(B))であ
るために、両環4,5の歪みをOリング10の弾性変形
によって吸収できない場合があり、これらの歪みの相互
干渉を完全に排除することができないでいた。
【0007】すなわち、静止密封環4の背面4dにおけ
るOリング10の接触箇所(以下「第1接触箇所」とい
う)C1 と保持環5におけるOリング10の接触箇所つ
まり環状溝11の底壁面15におけるOリング10の接
触箇所(以下「第2接触箇所」という)C2 とは、両環
4,5に歪みが生じた場合、それらの歪み量が上記した
如く大きく異なることから、径方向に相対変位すること
になる。一方、Oリング10は、それがゴム等の高摩擦
係数材で構成されていること及び静止密封環4の背面4
dと環状溝11の底壁面15との間に挟圧されているこ
とから、両接触箇所C1 ,C2 においては滑りが生じ難
く、接触箇所C1 ,C2 の相対変位に伴って変形される
ことになる。したがって、第1接触箇所C1 が第2接触
箇所C2に対して内径方向に相対変位した場合、第1接
触箇所C1 の変位に伴ってこれに接触しているOリング
部分が内径方向へと弾性変形しようとするが、環状溝1
1内のOリング部分(以下「溝内部分」という)10a
の内径方向への変形は環状溝11の内径側壁面13によ
り阻止されていることから、かかるOリング10の変形
は、それがゴム等の非圧縮性材で構成されていることと
も相俟って、環状溝11から僅かに突出しているOリン
グ部分(以下「溝外部分」という)10bが弾性変形で
きる範囲において許容されるにすぎない(図8鎖線図示
参照)。
【0008】しかし、この溝外部分10bは極く小さな
ものであるから、Oリング10が第1接触箇所C1 の変
位に追従して変形できる範囲(以下「追従変形限度」と
いう)は極く僅かである。したがって、両環4,5の歪
みによる接触箇所C1 ,C2の相対変位量がOリング1
0の追従変形限度を越える場合があり、かかる場合に
は、両環4,5の歪みが溝外部分10bの変形によって
は吸収されず、相互に干渉する虞れがある。なお、Oリ
ング10の環状溝11からの突出量を大きくして、追従
変形限度を大きくしておくことも考えられるが、このよ
うにすることは、振動や圧力変動等によりOリング10
が環状溝11から飛び出して脱落する虞れがあり、両環
4,5間の二次シール機能上からも到底採用できない。
【0009】本発明は、従来シールにおける上記した問
題を解決して、静止密封環と保持環との間における歪み
の相互干渉を確実に防止すると共に、静止密封環と保持
環との間のOリングによる二次シール機能を良好に維持
し得て、シール条件に拘わらず、両密封環によるシール
機能を長期に亘って良好に発揮させうる非接触形メカニ
カルシールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、回転軸に固定
された回転密封環とシールケースに保持環を介して回転
密封環へと押圧附勢された状態で保持された静止密封環
との対向端面たる密封端面の一方に動圧発生溝を形成す
ると共に、静止密封環の背面と保持環の前面との間を、
保持環の前面に形成せる環状溝に保持させたOリングに
より、二次シールされた非接触状態に保持するように構
成された非接触形メカニカルシールにおいて、上記の目
的を達成すべく、特に、前記環状溝の内径側壁面におけ
る溝口側部分を溝奥側部分より小径として、内径側壁面
においてはOリングが溝口側部分に非接触の状態で支持
されるように構成すると共に、保持環の前面に、前記溝
口側部分に連なって静止密封環の内周側空間へと遊嵌状
に突入する環状のOリング保持部を突設しておくことを
提案するものである。
【0011】
【作用】Oリングが、環状溝の内径側壁面においては、
溝口側部分に非接触の状態で支持されているから、溝外
部分のみならず、溝内部分における溝口側部分に対応す
る部分(以下「見掛け上の溝外部分」という)も内径方
向への変形が可能となる。すなわち、Oリングの内径側
壁面による支持形態上、環状溝の内径側壁面が実質的に
溝奥側部分のみによって構成されることになり、内径側
壁面によっては実質的に変形を規制されない変形自在部
分が環状溝から突出する溝外部分とこれに連なる見掛け
上の溝外部分とで構成されることなる。したがって、静
止密封環及び保持環の歪みにより、第1接触箇所が第2
接触箇所に対して内径方向に大きく相対変位した場合に
も、つまり溝外部分の変形のみでは吸収できないような
相対変位が生じた場合にも、変形自在部分が第1接触箇
所の変位に追従して容易に弾性変形することができ、そ
の結果、静止密封環及び保持環の歪みが変形自在部分の
変形により吸収されて相互に干渉することがなく、静止
密封環が保持環の歪みにより悪影響を受けることがな
い。
【0012】一方、変形自在部分が大きいと、接触箇所
の相対変位に容易に追従できる反面、変形自在部分が内
径方向に必要以上に変形して、機器の振動等による影響
と相俟って、Oリングが環状溝から内径方向に飛び出し
て脱落する虞れがある。しかし、変形自在部分の内径方
向への変形や変位は、保持環の前面から静止密封環の内
周側空間部へと延びるOリング保持部によって、一定範
囲内に規制されることから、上記したような虞れはな
い。しかも、Oリング保持部は溝口側部分に連なってい
るから、変形自在部分の内径方向への変形や変位は環状
溝の溝口に対応する範囲内に規制されることから、変形
自在部分の一部(主として見掛け上の溝外部分)の環状
溝内への復帰も容易であり、静止密封環と保持環とが歪
みや振動等の影響により相対運動した場合にも、Oリン
グがこれに良好に追従変形し得て、Oリングによる二次
シール機能が良好に発揮,維持される。
【0013】
【実施例】以下、本発明の構成を図1〜図4に示す実施
例に基づいて具体的に説明する。
【0014】この実施例の非接触形メカニカルシール
は、図1に示す如く、シールケース1と、シールケース
1を洞貫するタービン軸等の回転軸2に固定された円環
状の回転密封環3と、回転密封環3に軸線方向において
直対向する円環状の静止密封環4と、静止密封環4の背
面側においてシールケース1に保持された保持環5と、
シールケース1と保持環5との間に介装された複数のコ
イル状のスプリング6(一のみ図示)と、を具備する。
【0015】シールケース1は、図1に示す如く、円筒
状のガイド部1a及び円環状のリテーナ部1bとを有す
る。回転軸2は、ガイド部1a及びリテーナ部1bを同
心状に貫通する。
【0016】回転密封環3はWC,SiC等の超硬質材
で構成されたもので、図1及び図2に示す如く、静止密
封環4に軸線方向において対向する端面3aには、高圧
流体領域Hに臨む外周部へと開口するスパイラル状等の
適宜形状をなす動圧発生溝3bが形成されている。この
動圧発生溝3bの作用により、両密封環3,4の相対回
転に伴い動圧を発生せしめて、両密封環3,4の対向端
面たる密封端面3a,4a間を、流体膜を介在形成させ
た非接触状態に保持する。而して、この流体膜の形成部
分において、密封端面3a,4aの外周側領域である高
圧流体領域(例えば、タービン等の機内である高圧ガス
領域)Hとその内周側領域である低圧流体領域(例え
ば、タービン等の機外である大気領域)Lとの間をシー
ルするようになっている。
【0017】静止密封環4は回転密封環3の構成材より
比較的軟質のカーボン等で構成されたもので、図1及び
図2に示す如く、シールケース1のガイド部1aに極く
微小な隙間を有する状態で軸線方向移動自在に内嵌保持
されている。すなわち、静止密封環4の背面側における
外周部分及び内周部分には密封端面4aの外径及び内径
より大径とした環状凸部4b及び環状凹部4cが形成さ
れていて、環状凸部4bを、例えばJIS−B0401
にいうすき間ばめ程度の寸法公差をもってガイド部1a
に嵌合させることによって、環状凸部4bの外周面とガ
イド部1aの内周面との間に、静止密封環4の径方向変
位を可及的に阻止するも、その軸線方向移動並びに流体
の通過を許容する、極く微小な隙間が形成されるように
構成されている。なお、この隙間は静止密封環4の径や
シール条件等に応じて適宜に設定されるが、一般には、
環状凸部4bの外径寸法とガイド部1aの内径寸法との
差を10〜100μm程度としておくことが好ましい。
【0018】保持環5はSUS304,Ti等の金属材
で構成されたもので、図1及び図2に示す如く、円筒状
の被保持部5aとその前端に形成された円環状の押圧部
5bとを備えた断面L字形状に成形されている。この保
持環5は、図2に示す如く、被保持部5aをシールケー
ス1のリテーナ部1bの内周部にゴム製のOリング7を
介して嵌挿保持させることによって、シールケース1
に、これとの間を二次シールさせた状態で、軸線方向移
動可能に保持されている。
【0019】なお、静止密封環4は、図2に示す如く、
これに保持環5の押圧部5bに植設せる適当数の回り止
めピン(一のみ図示)8を突入係合させておくことによ
り、保持環5に対して相対回転不能とされている。ま
た、保持環5は、図2に示す如く、これに植設せる適当
数の回り止めピン(一のみ図示)9をシールケース1の
リテーナ部1bに突入係合させておくことにより、シー
ルケース1に対して相対回転不能とされている。これら
の回り止めピン8,9は共通のものとしてもよい。例え
ば、一方の回り止めピン8を廃して、他方の回り止めピ
ン9を保持環5に貫通状に支持させて、その両端部をリ
テーナ部1b及び静止密封環4に突入係合させておくよ
うにしてもよい。
【0020】各スプリング6は、図1及び図2に示す如
く、シールケース1のリテーナ部1bと保持環5の押圧
部5bとの間に介装されており、保持環5を軸線方向に
おいて回転密封環3に向かう方向に押圧附勢する。
【0021】而して、静止密封環4と保持環5との間
は、図1〜図3に示す如く、両環4,5の軸線方向にお
ける対向端面4d,5d間にOリング10を介在させる
ことによって、二次シールされた非接触状態に保持され
ている。
【0022】すなわち、保持環5の前面つまり押圧部5
bの前面5dに同心の環状溝11を形成し、この環状溝
11にゴム製のOリング10を若干突出させた状態で嵌
合保持させることによって、静止密封環4を、スプリン
グ6による附勢作用と相俟って、保持環5との間に適当
なクリアランス12を有したシール状態で、回転密封環
3へと押圧させるべく附勢保持せしめている。なお、O
リング10は、環状溝11の外径側壁面14に非接触の
状態で保持されている。
【0023】而して、環状溝11は、図3に示す如く、
その内径側壁面13における溝口側部分13aを溝奥側
部分13bより小径として、内径側壁面13においては
Oリング10が溝口側部分13aに非接触の状態で支持
されるように構成されている。すなわち、この実施例で
は、図3に示す如く、環状溝11の内径側壁面13を溝
口方向に漸次縮径する傾斜面として、Oリング10の溝
内部分10aを、溝口側部分13aから離間した状態
で、溝奥側部分13bに支持させるように構成されてい
る。また、押圧部5bの前面5dには、図2及び図3に
示す如く、前記溝口側部分13aに連なって静止密封環
4の内周側空間つまり環状凹部4cへと遊嵌状に突入す
る円環状のOリング保持部5cが突設されている。な
お、環状凹部4cとOリング保持部5cとの隙間Sは、
両部4c,5cが両環4,5の歪みによっては干渉しな
い範囲で可及的に小さく設定しておく。具体的には、両
部4c,5cが同心状態にあるときにおいてS=0.3
〜0.5mmに設定しておくことが好ましい。
【0024】ところで、静止密封環4及び保持環5の前
面及び背面には、高圧流体領域Hの流体による動圧及び
静圧により、図4に示す如き軸線方向の押圧力F1 ,F
´1,F2 ,F´2 ,F3 ,F4 が作用することにな
る。すなわち、静止密封環4の前面には、密封端面3
a,4a間に発生する動圧による押圧力F1 及び環状凸
部4bが受ける流体圧力による押圧力F´1 が作用し、
その背面には、環状凸部4bが受ける流体圧力による押
圧力F´2 及びクリアランス12に侵入した流体の圧力
による押圧力F2 が作用する。ここに、静止密封環4の
環状凸部4bに作用する押圧力F´1 ,F´2 は、方向
反対にして大きさ同一のものであり、相殺されるもので
あるから、静止密封環4には、押圧力F1 ,F2 のみが
作用するとみなしうる。一方、保持環5の前面にはクリ
アランス12に侵入した流体の圧力による押圧力F3
作用し、その背面には、押圧部5bの背面が受ける流体
圧力による押圧力F4 が作用する。而して、押圧力F1
については当該メカニカルシールの使用条件等によって
必然的に決定されるものであり、押圧力F4 については
Oリング7による二次シール部分の直径つまり被保持部
5aの外径(以下「バランス径」という)Dによって一
義的に決定されるものであるが、押圧力F2 ,F 3 はO
リング10による二次シール部分の直径(以下「シール
径」という)dによって或る程度自由に決定することが
できる。すなわち、シール径dと静止密封環4の背面4
d及び保持環5の前面5dにおける受圧面積とは反比例
し、シール径dを大きくすると押圧力F2 ,F3 は小さ
くなり、シール径dを小さくすると押圧力F2 ,F3
大きくなる。そこで、この実施例では、シール径dをバ
ランス径Dより大きくして、F1 >F2 及びF3 <F4
となるようにしておくことにより、Oリング10による
二次シール機能が常に良好に発揮されるように工夫して
ある。すなわち、F1 >F2 及びF3 <F4 となるよう
にしておくと、静止密封環4と保持環5とが接近方向に
押圧される状態となり、振動等に拘わらずOリング10
が両環4,5間に挟圧された状態に保持されて、Oリン
グ10による二次シール機能が低下することがない。但
し、シール径dが一定以上大きくないと、具体的にはd
−D<0.5mmであると、上記効果をさほど期待でき
ない。逆に、シール径dが必要以上に大きくなると、具
体的にはd−D>4.0mmであると、静止密封環4に
作用する押圧力F1 と押圧力F2 とのバランスが崩れ
て、その押圧力差(F1 −F2 )によるモーメントによ
り静止密封環4の捩じり歪みが大きくなって、両密封端
面3a,4aの局部的接触が生じる虞れがある。したが
って、シール径dは、バランス径Dを基準として、0.
5mm≦d−D≦4.0mmの範囲でシール条件等に応
じて適宜に設定しておくことが好ましい。ところで、シ
ール径dは、実際にはOリング10における静止密封環
4ないし保持環5との接触箇所C1,C2 での直径であ
るが、かかる接触箇所C1,C2はOリング構成材の性状
(ゴム硬度,ゴム劣化等)やシール条件等によって変動
し易く、特定するのが困難であるから、一般には、シー
ル径dを環状溝11の内外径を基準として(例えば、図
4に示す如く、シール径dを環状溝11の内径を基準と
して)設計しておくことが好ましい。なお、実際のシー
ル径dの変動幅は、Oリング10の内径方向への変位,
変形がOリング保持部5cで規制されていることとも相
俟って、最悪の状況下においても環状溝11の内外径の
範囲より大きくなることはなく、通常は、環状溝11の
内外径の範囲より狭小となる。
【0025】以上のように構成された非接触形メカニカ
ルシールにあっては、Oリング10が、環状溝11の内
径側壁面13においては、溝口側部分13aに非接触の
状態で支持されているから、溝外部分10bのみなら
ず、溝内部分10aにおける溝口側部分13aに対応す
る部分つまり見掛け上の溝外部分10´bも内径方向へ
の変形が可能である。すなわち、静止密封環4の背面4
dにおけるOリング10の接触箇所である第1接触箇所
1 が、保持環5におけるOリング10の接触箇所つま
り環状溝11の底壁面15におけるOリング10の接触
箇所である第2接触箇所C2 に対して、内径方向に大き
く相対変位したときにおいては、溝外部分10b及びこ
れに連なる見掛け上の溝外部分10´bが第1接触箇所
1 の変位に追従して変形することになり、Oリング1
0の追従変形限度が図8(A)(B)に示す如き環状溝
形態をとる場合に比して大幅に大きくなる(図3鎖線図
示参照)。換言すれば、Oリング10の内径側壁面13
による支持形態上、環状溝11の内径側壁面13が実質
的に溝奥部分13bのみによって構成されることにな
り、内径側壁面13によっては実質的に変形を規制され
ない変形自在部分が、環状溝11から突出する溝外部分
10bとこれに連なる溝内部分10aの一部である見掛
け上の溝外部分10´bとで構成されることになる。し
たがって、変形自在部分10b,10´bが従来シール
におけるよりも大きくなり、Oリング10の内径方向へ
の変形が容易となる。このため、両環4,5の歪みによ
り、第1接触箇所C1 が第2接触箇所C2 に対して内径
方向に大きく相対変位して、溝外部分10bの変形によ
ってはかかる相対変位を吸収し得ない場合にも、図3に
鎖線図示する如く、変形自在部分10b,10´bが第
1接触箇所C1 の変位に追従して容易に弾性変形するこ
とができ、その結果、両環4,5の歪みが変形自在部分
10´a,10bの変形により吸収されて相互に干渉す
ることがなく、静止密封環4が保持環5の歪みにより悪
影響を受けることがない。
【0026】一方、このように変形自在部分10b,1
0´bが大きいと、接触箇所C1 ,C2 の相対変位に容
易に追従できる反面、変形自在部分10b,10´bが
内径方向に必要以上に変形して、機器の振動等による影
響と相俟って、Oリング10が環状溝11から内径方向
に飛び出して脱落する虞れがある。しかし、変形自在部
分10b,10´bの内径方向への変形や変位は、溝口
側部分13aに連なって静止密封環4の環状凹部4cへ
と突入するOリング保持部5cによって、一定範囲内に
規制されることから、上記したような虞れはない。すな
わち、変形自在部分10b,10´bを大きくすること
による弊害が、Oリング保持部5cによって確実に排除
されるのである。しかも、Oリング保持部5cは溝口側
部分13aに連なっているから、変形自在部分10b,
10´bの内径方向への変形や変位は環状溝11の溝口
に対応する範囲内に規制されることから、変形自在部分
10b,10´bの一部(主として見掛け上の溝外部
分)の環状溝11内への復帰も容易となる。したがっ
て、静止密封環4と保持環5とが歪みや振動等の影響に
より相対運動した場合にも、Oリング10がこれに良好
に追従変形し得て、Oリング10による二次シール機能
が良好に発揮,維持される。なお、かかる二次シール機
能は、シール径dをバランス径Dを基準として上記した
範囲で適宜に設定して、静止密封環4と保持環5とが接
近方向に押圧状態となるようにしておくことによって、
更に良好となる。
【0027】ところで、保持環5は弾性部材であるOリ
ング7を介してシールケース1に保持されているもので
あるから、機器の振動等によって偏心する虞れがある。
そして、保持環5が静止密封環4に対して一定以上相対
的に偏心すると、Oリング10の周方向における挟圧状
態が著しく不均一となり、Oリング10による二次シー
ル機能が低下する虞れがある。しかし、保持環5に突設
したOリング保持部5cが僅かな間隙Sを有して静止密
封環4の環状凹部4cに突入係合されていて、静止密封
環4と保持環5との相対偏心量が一定範囲に規制される
ことから、Oリング10の周方向における挟圧状態が著
しく不均一となるようなことがない。
【0028】これらのことから、本発明に係る非接触形
メカニカルシールにあっては、保持環5の歪みによる影
響を受けて、静止側密封端面4aの平滑度及び回転側密
封端面3aに対する同心度,平行度等が損なわれたりす
ることがなく、高圧,高速のシール条件下においても、
密封端面3a,4aによるシール機能を良好に発揮させ
ることができる。
【0029】なお、本発明に係る非接触形メカニカルシ
ールは上記実施例に限定されるものではなく、本発明の
基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更す
ることができる。すなわち、環状溝11の内径側壁面1
3は、Oリング10が溝口側部分13aに非接触の状態
で支持させる形状のものであればよく、その形状は任意
であり、例えば図5に示す如き形状としておくことがで
きる。すなわち、図5(A)に示すものでは、内径側壁
面13を溝口方向に漸次縮径する円弧面として、Oリン
グ10を溝口側部分13aに非接触の状態で溝奥側部分
13bに支持させるようにしてある。また、同図(B)
又は(C)に示すものでは、内径側壁面13を階段状と
して、Oリング10を小径の溝口側部分13aから離し
た状態で大径の溝奥側部分13bに支持させるようにし
てある。
【0030】また、図6に示す如く、シールケース1
に、リテーナ部1bから保持環5を貫通して静止密封環
4の内周部へと延びる円筒状のガイド部1cを形成し
て、静止密封環4をガイド部1cに外嵌させることによ
って、静止密封環4をシールケース1に軸線方向移動可
能に且つ径方向変位不能に内嵌保持させておくようにし
てもよい。この場合においても、すき間ばめ程度の寸法
公差(JIS−B0401)をもって静止密封環4をガ
イド部1cに嵌合させておき、静止密封環4の内周面と
ガイド部1cの外周面との間には、静止密封環4の径方
向変位を阻止するも、その軸線方向移動並びに流体の通
過を許容する、極く微小な隙間が形成されるようにして
おく。この隙間は、上記実施例におけると同様に、静止
密封環4の径やシール条件等に応じて適宜に設定され、
一般に、静止密封環4の内径寸法とガイド部1cの外径
寸法との差を10〜100μm程度としておくことが好
ましい。勿論、密封端面3a,4a間に動圧を発生させ
るための手段も任意である。すなわち、動圧発生溝3a
の形状やこれを形成する密封端面3a,4aの選択も任
意である。
【0031】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解されるよう
に、本発明の非接触形メカニカルシールにあっては、環
状溝の内径側壁面の形状を工夫して、静止密封環と保持
環との間を二次シールするOリングの内径方向への変形
を容易ならしめるようにしたから、静止密封環と保持環
との歪みの相互干渉が確実に防止されて、静止密封環が
保持環の歪みによる悪影響を受けることがない。しか
も、Oリングの内径方向への変形,変位をOリング保持
部によって一定範囲内に規制するようにしたから、Oリ
ングの環状溝からの飛び出し,脱落が確実に防止され、
Oリングによる二次シール機能が良好に発揮される。し
たがって、本発明によれば、構造を徒に複雑化,大型化
させることなく、両密封環によるシール機能を、シール
条件に拘わらず、常に良好に発揮させることができる非
接触形メカニカルシールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非接触形メカニカルシールの一実
施例を示す半截の縦断側面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す縦断側面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す縦断側面図である。
【図4】静止密封環及び保持環に作用する圧力分布図で
ある。
【図5】環状溝の変形例を示す図3相当の縦断側面図で
ある。
【図6】他の実施例を示す図1相当の縦断側面図であ
る。
【図7】従来シールを示す図1相当の縦断側面図であ
る。
【図8】図7の要部を拡大して示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1…シールケース、2…回転軸、3…回転密封環、3
a,4a…密封端面、3b…動圧発生溝、4…静止密封
環、4c…環状凹部(内周側空間部)、4d…静止密封
環の背面、5…保持環、5b…押圧部、5c…Oリング
保持部、5d…押圧部の前面(保持環の前面)、6…ス
プリング、10…Oリング、11…環状溝、13…内径
側壁面、13a…溝口側部分、13b…溝奥側部分。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸に固定された回転密封環とシール
    ケースに保持環を介して回転密封環へと押圧附勢された
    状態で保持された静止密封環との対向端面たる密封端面
    の一方に動圧発生溝を形成すると共に、静止密封環の背
    面と保持環の前面との間を、保持環の前面に形成せる環
    状溝に保持させたOリングにより、二次シールされた非
    接触状態に保持するように構成された非接触形メカニカ
    ルシールにおいて、前記環状溝の内径側壁面における溝
    口側部分を溝奥側部分より小径として、内径側壁面にお
    いてはOリングが溝口側部分に非接触の状態で支持され
    るように構成すると共に、保持環の前面に、前記溝口側
    部分に連なって静止密封環の内周側空間へと遊嵌状に突
    入する環状のOリング保持部を突設してあることを特徴
    とする非接触形メカニカルシール。
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