JPH0696741B2 - 高温圧力容器用高クロム鋳鋼の熱処理方法 - Google Patents
高温圧力容器用高クロム鋳鋼の熱処理方法Info
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- JPH0696741B2 JPH0696741B2 JP59216323A JP21632384A JPH0696741B2 JP H0696741 B2 JPH0696741 B2 JP H0696741B2 JP 59216323 A JP59216323 A JP 59216323A JP 21632384 A JP21632384 A JP 21632384A JP H0696741 B2 JPH0696741 B2 JP H0696741B2
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- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
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- C22C38/46—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel with vanadium
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- C—CHEMISTRY; METALLURGY
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- C22C—ALLOYS
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Description
【発明の詳細な説明】 本発明は、別途提案する新規な高温圧力容器用高クロム
鋳鋼材を適正に使用するための熱処理方法を提供するも
のである。
鋳鋼材を適正に使用するための熱処理方法を提供するも
のである。
すなわち、本発明で対象とする材料は、大型の鋳鋼材と
しても、高い高温強さと耐酸化性と共に、常温における
良好な延性および靭性を有し、そのために溶接性が良好
で、かつ、割れ発生抵抗が大きく、蒸気タービンの車室
や弁室のように高い信頼性が要求される高温圧力容器材
として好適な高温圧力容器材用の9〜11%高クロム鋳鋼
材として開発されたものである。
しても、高い高温強さと耐酸化性と共に、常温における
良好な延性および靭性を有し、そのために溶接性が良好
で、かつ、割れ発生抵抗が大きく、蒸気タービンの車室
や弁室のように高い信頼性が要求される高温圧力容器材
として好適な高温圧力容器材用の9〜11%高クロム鋳鋼
材として開発されたものである。
蒸気タービンの車室や弁室は、高温で高圧力を受けるた
めに、クリープ破断強さや耐力で代表される優れた高温
強さが要求される。また、これらの部品は、構造が複雑
で厚肉であるために、起動時などに高温の蒸気が流入す
ると局部的に加熱されて、その部分に圧縮の歪みが生
じ、そのために冷却時に、その部分に大きな引張応力が
残ることがある。そして、これらの部分は、また、熱疲
労による亀裂発生が起り易く、このような亀裂発生ある
いは欠陥の存在によつて脆性破壊的に大きな亀裂に進展
することがある。これを防ぐためには、その材料は延性
および靭性を高くする必要がある。また、これらの部品
を鋳物によつて製造する場合には、溶接補修が必要とな
る。また、その組立、工作のためにも溶接が必要とな
る。従つて、溶接性のよいことが不可欠であり、このよ
うな溶接性の確保のためにも延性および靭性の確保が必
要となる。
めに、クリープ破断強さや耐力で代表される優れた高温
強さが要求される。また、これらの部品は、構造が複雑
で厚肉であるために、起動時などに高温の蒸気が流入す
ると局部的に加熱されて、その部分に圧縮の歪みが生
じ、そのために冷却時に、その部分に大きな引張応力が
残ることがある。そして、これらの部分は、また、熱疲
労による亀裂発生が起り易く、このような亀裂発生ある
いは欠陥の存在によつて脆性破壊的に大きな亀裂に進展
することがある。これを防ぐためには、その材料は延性
および靭性を高くする必要がある。また、これらの部品
を鋳物によつて製造する場合には、溶接補修が必要とな
る。また、その組立、工作のためにも溶接が必要とな
る。従つて、溶接性のよいことが不可欠であり、このよ
うな溶接性の確保のためにも延性および靭性の確保が必
要となる。
従来、このような部品を鋳物で製造する場合には、いわ
ゆる1%Cr−0.5Mo鋳鋼、21/4%Cr−1%Mo鋳鋼および
Cr−Mo−V鋳鋼などの低合金鋼素鋳鋼が使用されてい
た。しかし、これらの材料は、高温強さは必ずしも十分
でない。
ゆる1%Cr−0.5Mo鋳鋼、21/4%Cr−1%Mo鋳鋼および
Cr−Mo−V鋳鋼などの低合金鋼素鋳鋼が使用されてい
た。しかし、これらの材料は、高温強さは必ずしも十分
でない。
また、高温にしたときの耐酸化性の点にも問題があつ
た。
た。
しかるに最近では、いわゆる省エネルギーを目的とし
た、発電プラントの高効率化すなわち、高温高圧化を行
おうとする動きがある。このような動きに対しては、こ
れらの材料は、高温強さおよび耐酸化性の面で十分に対
応できない状況にある。したがつて、これらの動きに対
応するためには、高温強さがより高く、かつ、耐酸化性
にすぐれた新しい材料が必要とされる。
た、発電プラントの高効率化すなわち、高温高圧化を行
おうとする動きがある。このような動きに対しては、こ
れらの材料は、高温強さおよび耐酸化性の面で十分に対
応できない状況にある。したがつて、これらの動きに対
応するためには、高温強さがより高く、かつ、耐酸化性
にすぐれた新しい材料が必要とされる。
このように、高温強さが高く、耐酸化性がすぐれた材料
としては、いわゆるオーステナイト系鋼がある。しか
し、オーステナイト系鋼は、高温でのクリープ破断強さ
は高いが、常温も含めて低湿側での耐力が低い。また、
熱伝導率も小さいので熱応力も大きくなる傾向がある。
そのために、これらの材料は、蒸気タービン車室や弁室
に使用すると、起動時や負荷変動の際に、熱応力による
曲りが生じ易く、必ずしも、設計的には有利ではない。
また、オーステナイト系鋼の場合には、いわゆる変態が
ないために、組織の調整を熱処理で行うことができな
い。そのために、これらの材料では、鋳物によつて製造
すると、鋳造組織がそのまま残る。また、鍛造による場
合でも、結晶粒の調整は、熱処理前の鋳造履歴を制御す
ることによつて行う必要がある。この場合、蒸気タービ
ン車室や弁室のように形状が複雑なものでは、均質な材
料を得ることが難しく、そのために、材料本来の性質を
得ることが困難である。
としては、いわゆるオーステナイト系鋼がある。しか
し、オーステナイト系鋼は、高温でのクリープ破断強さ
は高いが、常温も含めて低湿側での耐力が低い。また、
熱伝導率も小さいので熱応力も大きくなる傾向がある。
そのために、これらの材料は、蒸気タービン車室や弁室
に使用すると、起動時や負荷変動の際に、熱応力による
曲りが生じ易く、必ずしも、設計的には有利ではない。
また、オーステナイト系鋼の場合には、いわゆる変態が
ないために、組織の調整を熱処理で行うことができな
い。そのために、これらの材料では、鋳物によつて製造
すると、鋳造組織がそのまま残る。また、鍛造による場
合でも、結晶粒の調整は、熱処理前の鋳造履歴を制御す
ることによつて行う必要がある。この場合、蒸気タービ
ン車室や弁室のように形状が複雑なものでは、均質な材
料を得ることが難しく、そのために、材料本来の性質を
得ることが困難である。
以上のような理由のために、蒸気タービンの車室や弁室
のような高温圧力容器内の材料としては、止むを得ない
場合は、オーステナイト系鋼を採用するとしても、フエ
ライト系でもつと便利な材料の開発が強く望まれてい
る。
のような高温圧力容器内の材料としては、止むを得ない
場合は、オーステナイト系鋼を採用するとしても、フエ
ライト系でもつと便利な材料の開発が強く望まれてい
る。
このような材料として注目されているものとして、8〜
15%程度のクロムを含むいわゆる12クロム鋼がある。12
クロム鋼は、クロムが高いために、前述の低合金系鋼に
比して耐酸化性がよく、また、比較的小型の圧延あるい
は鍛鋼材としては、優れた高温強さをもつ材料として多
く実用化されているので、鋳造材としても、優れた高温
強さを有することが期待されている。
15%程度のクロムを含むいわゆる12クロム鋼がある。12
クロム鋼は、クロムが高いために、前述の低合金系鋼に
比して耐酸化性がよく、また、比較的小型の圧延あるい
は鍛鋼材としては、優れた高温強さをもつ材料として多
く実用化されているので、鋳造材としても、優れた高温
強さを有することが期待されている。
このような12クロム鋳鋼材としては、第1表に示すよう
なものが一般に、広く知られている。
なものが一般に、広く知られている。
しかし、これらの材料は、その成分検討が必ずしも十分
でない。従つて、蒸気タービンの車室や弁室のような大
型鋳造品を製造した場合には、偏析によるδ−フエライ
トの生成、炭化物の析出や焼入れ不足のために、延性お
よび靭性が得られない。
でない。従つて、蒸気タービンの車室や弁室のような大
型鋳造品を製造した場合には、偏析によるδ−フエライ
トの生成、炭化物の析出や焼入れ不足のために、延性お
よび靭性が得られない。
また、延性および靭性が得られても、高温強さが得られ
ず、そのために高温圧力容器材としての実用は困難であ
つた。
ず、そのために高温圧力容器材としての実用は困難であ
つた。
また、12クロム鋳鋼の場合、δ−フエライトの生成、炭
化物の析出を抑制し、さらに、焼入れ性を十分に確保し
ても、大型あるいは厚肉材として製造したときには、延
性および靭性が得られないという問題もある。
化物の析出を抑制し、さらに、焼入れ性を十分に確保し
ても、大型あるいは厚肉材として製造したときには、延
性および靭性が得られないという問題もある。
ここで対象とする材料はこのような状況に対して、大型
材としても十分な延性および靭性が確保でき、かつ、優
れた高温強さを有し、さらに良好な耐酸化性を有するい
わゆる12クロム鋳鋼の範疇に入る9〜11%クロム鋳鋼と
して開発されたものである。
材としても十分な延性および靭性が確保でき、かつ、優
れた高温強さを有し、さらに良好な耐酸化性を有するい
わゆる12クロム鋳鋼の範疇に入る9〜11%クロム鋳鋼と
して開発されたものである。
本材料は、以下の試験および知見にもとづいて、上記の
性質を得るには、その成分範囲を狭い範囲に限定しなけ
ればならないことを明らかにし、その範囲を限定するこ
とによつて得られた。
性質を得るには、その成分範囲を狭い範囲に限定しなけ
ればならないことを明らかにし、その範囲を限定するこ
とによつて得られた。
第2表は、本材料の開発のために試験を行つた試験材の
成分を示す。試験材は50kg真空高周波溶解炉で50kgの材
料を溶製し、これを砂型鋳型に鋳込むことによつて調製
した。これらの試験材は、1,030℃で10hr加熱し、これ
から300℃までを73℃/hrで冷却し、以後空冷した後、こ
れを700℃で10hr焼もどす第1回目の熱処理を行った後
冷却し、その後、同じ焼もどし条件で第1回目の熱処理
を行い引張、衝撃、高温引張およびクリープ破断試験に
供された。ここで、各温度での保持時間を10hrとし、1,
030℃から300℃までの冷却速度を73℃/hとしたのは、蒸
気タービン車室などの大型材を想定し、それを模擬した
ものである。
成分を示す。試験材は50kg真空高周波溶解炉で50kgの材
料を溶製し、これを砂型鋳型に鋳込むことによつて調製
した。これらの試験材は、1,030℃で10hr加熱し、これ
から300℃までを73℃/hrで冷却し、以後空冷した後、こ
れを700℃で10hr焼もどす第1回目の熱処理を行った後
冷却し、その後、同じ焼もどし条件で第1回目の熱処理
を行い引張、衝撃、高温引張およびクリープ破断試験に
供された。ここで、各温度での保持時間を10hrとし、1,
030℃から300℃までの冷却速度を73℃/hとしたのは、蒸
気タービン車室などの大型材を想定し、それを模擬した
ものである。
第3表は常温および高温引張および衝撃試験結果を示
す。
す。
第1図は、常温引張試験結果より、延性の代表とされる
絞りについて、これを引張強さとの関係にまとめて示
す。また、第2図は、靭性の代表とされる常温衝撃値を
引張強さとの関係にまとめた結果を示す。ここでは、衝
撃値は2mmVノツチシヤルピー衝撃値を示す。また、第3
図は高温強さの代表とされるクリープ破断試験結果を引
張強さとの関係にまとめて示す。
絞りについて、これを引張強さとの関係にまとめて示
す。また、第2図は、靭性の代表とされる常温衝撃値を
引張強さとの関係にまとめた結果を示す。ここでは、衝
撃値は2mmVノツチシヤルピー衝撃値を示す。また、第3
図は高温強さの代表とされるクリープ破断試験結果を引
張強さとの関係にまとめて示す。
第1図より、この試験では、延性の代表である絞りと引
張強さの相関関係は、主として、炭素量によつて変化
し、炭素量が少ないほど、延性が向上する傾向があるこ
とがわかる。
張強さの相関関係は、主として、炭素量によつて変化
し、炭素量が少ないほど、延性が向上する傾向があるこ
とがわかる。
ここで試験をした材料番号1から8までの材料は、本発
明の鋳鋼の成分を決めるために試験したもので、δ−フ
エライトの抑制および焼入れ性の確保の点では、十分に
配慮が払われている。したがつて、上記材料の試験結果
は、δ−フエライトの抑制および焼入れ性が十分に確保
された条件で得られたものである。一般に、いわゆる12
0r系鋳鋼は、小型材で焼入れの際の冷却速度が大きい場
合には、このような傾向は現われない。そのために、こ
れらの鋳鋼を大型化する場合、この点が盲点となつて種
々の問題を起こすことが多い。ここでの試験は、このよ
うな問題を避けるために、前述のように、あらかじめそ
の熱処理について配慮して試験を行い、その結果として
上記の事実を明らかにしたものである。
明の鋳鋼の成分を決めるために試験したもので、δ−フ
エライトの抑制および焼入れ性の確保の点では、十分に
配慮が払われている。したがつて、上記材料の試験結果
は、δ−フエライトの抑制および焼入れ性が十分に確保
された条件で得られたものである。一般に、いわゆる12
0r系鋳鋼は、小型材で焼入れの際の冷却速度が大きい場
合には、このような傾向は現われない。そのために、こ
れらの鋳鋼を大型化する場合、この点が盲点となつて種
々の問題を起こすことが多い。ここでの試験は、このよ
うな問題を避けるために、前述のように、あらかじめそ
の熱処理について配慮して試験を行い、その結果として
上記の事実を明らかにしたものである。
第2図から、衝撃値も、絞りほど敏感ではないけれど
も、炭素量が多くなると低下する傾向があることがわか
る。また、第2図では、材料番号8番と12番では衝撃値
が低くなつているが、これは、α−フエライトが生成す
るためである。
も、炭素量が多くなると低下する傾向があることがわか
る。また、第2図では、材料番号8番と12番では衝撃値
が低くなつているが、これは、α−フエライトが生成す
るためである。
第3図から、ここで試験された材料は、同じ引張強さで
あれば、炭素量が低いほどクリープ破断強さは上昇する
傾向があることがわかる。
あれば、炭素量が低いほどクリープ破断強さは上昇する
傾向があることがわかる。
この傾向も、一般の小型材の常識には反しており、ここ
での試験のように、試験材の熱処理を大型材のそれに模
擬してはじめて得られるものである。
での試験のように、試験材の熱処理を大型材のそれに模
擬してはじめて得られるものである。
以上のとおり、本発明材料は室温における引張試験の絞
りや衝撃試験の衝撃値が高いところから、溶接における
割れが発生し難く、溶接しやすい材料であることが分か
る。
りや衝撃試験の衝撃値が高いところから、溶接における
割れが発生し難く、溶接しやすい材料であることが分か
る。
以下に、本発明の対象となる鋳鋼の成分の具体的な限定
理由を述べる。
理由を述べる。
炭素量は、前述の試験結果より、延性、靭性および高温
強さの確保の点から、炭素量を低くすることとし、0.08
〜0.12%とした。炭素量は、あまり少なくすると、δ−
フエライトの生成が起り易くなり、また焼入れ性が不足
し、靭性の確保が困難になるので、その下限を0.08%と
した。上限を0.12%としたのは、ここに示した試験の結
果では、炭素は、これよりも多くしても、まだ、十分な
延性および靭性が保たれているが、これは、比較的小型
の試験材で条件の良い溶製を行つた材料の結果であつ
て、大型の実用材では、炭素量の増加による延性および
靭性の低下はより大きく強調して現われる可能性がある
こと、およびこの鋳鋼の実用範囲である引張強さ70〜80
kg/mm2では炭素を多くすると、クリープ破断強さが低下
する傾向があることを考慮したものである。
強さの確保の点から、炭素量を低くすることとし、0.08
〜0.12%とした。炭素量は、あまり少なくすると、δ−
フエライトの生成が起り易くなり、また焼入れ性が不足
し、靭性の確保が困難になるので、その下限を0.08%と
した。上限を0.12%としたのは、ここに示した試験の結
果では、炭素は、これよりも多くしても、まだ、十分な
延性および靭性が保たれているが、これは、比較的小型
の試験材で条件の良い溶製を行つた材料の結果であつ
て、大型の実用材では、炭素量の増加による延性および
靭性の低下はより大きく強調して現われる可能性がある
こと、およびこの鋳鋼の実用範囲である引張強さ70〜80
kg/mm2では炭素を多くすると、クリープ破断強さが低下
する傾向があることを考慮したものである。
ケイ素を0.7%以下にしたのは、通常、この種の材料で
は、鋳造材とする場合には、鋳造性の確保のためにケイ
素はやや高めにすることが望ましいとされているので、
その常識にしたがつて、この値まで許容することにした
ものである。ケイ素を高くすると、湯流れがよくなり、
また、溶湯の鎮静化の効果があつて、いわゆる鋳造欠陥
の防止には有効であるが、そのかわりに、ミクロ的およ
びマクロ的偏析を起し易く、安定した材料性質が得難く
なるという問題がある。上述の0.7%という上限は、こ
の後者の問題が顕著に現われない範囲でこれを許容した
ものである。
は、鋳造材とする場合には、鋳造性の確保のためにケイ
素はやや高めにすることが望ましいとされているので、
その常識にしたがつて、この値まで許容することにした
ものである。ケイ素を高くすると、湯流れがよくなり、
また、溶湯の鎮静化の効果があつて、いわゆる鋳造欠陥
の防止には有効であるが、そのかわりに、ミクロ的およ
びマクロ的偏析を起し易く、安定した材料性質が得難く
なるという問題がある。上述の0.7%という上限は、こ
の後者の問題が顕著に現われない範囲でこれを許容した
ものである。
マンガンを0.8%以下としたのは、通常、この種の鋳鋼
では、マンガンの添加は硫黄の悪影響を軽減し、また、
δ−フエライトの生成防止および焼入れ性の向上に有効
であるので、ここまで許容したものである。マンガン
は、これ以上添加することも可能かもしれないが、あま
り多くすると材料の性格を変えるおそれがあるので、こ
こでは、マンガンを0.8%以下にした。
では、マンガンの添加は硫黄の悪影響を軽減し、また、
δ−フエライトの生成防止および焼入れ性の向上に有効
であるので、ここまで許容したものである。マンガン
は、これ以上添加することも可能かもしれないが、あま
り多くすると材料の性格を変えるおそれがあるので、こ
こでは、マンガンを0.8%以下にした。
ニツケルを0.4%から0.7%としたのは、この種の鋳鋼で
は、クリープ破断強さの改善のためには、ニツケルは少
ない方がよいが、ニツケルをあまり少なくするとδ−フ
エライトの生成および初析フエライトの析出傾向が生
じ、靭性が低下して鋳鋼材としての実用性がなくなるの
で、通常添加される0.5%添加を目標として、この範囲
に定めたものである。
は、クリープ破断強さの改善のためには、ニツケルは少
ない方がよいが、ニツケルをあまり少なくするとδ−フ
エライトの生成および初析フエライトの析出傾向が生
じ、靭性が低下して鋳鋼材としての実用性がなくなるの
で、通常添加される0.5%添加を目標として、この範囲
に定めたものである。
クロムを9%から11%にしたのは、この種の鋳鋼では、
クロム量を多くした方が、クリープ破断強さは向上する
が、あまり多くすると、δ−フエライトの生成および初
析フエライトの析出傾向が生じ、靭性の確保が困難にな
るので、この範囲に定めた。
クロム量を多くした方が、クリープ破断強さは向上する
が、あまり多くすると、δ−フエライトの生成および初
析フエライトの析出傾向が生じ、靭性の確保が困難にな
るので、この範囲に定めた。
モリブデンを0.65%以上1.00%未満としたのは、この種
の鋳鋼では、モリブデンは、1%以上添加するとクリー
プ破断強さの向上に対して釣合いのとれた効果を与える
が、あまり多く添加すると、高温長時間加熱による脆化
を起したり、δ−フエライトの生成および初析フエライ
トの析出を起す傾向が生じるので、ここでは、大型の鋳
鋼材にした場合の偏析も考慮して、それよりもやゝ低め
の上記の範囲に定めた。
の鋳鋼では、モリブデンは、1%以上添加するとクリー
プ破断強さの向上に対して釣合いのとれた効果を与える
が、あまり多く添加すると、高温長時間加熱による脆化
を起したり、δ−フエライトの生成および初析フエライ
トの析出を起す傾向が生じるので、ここでは、大型の鋳
鋼材にした場合の偏析も考慮して、それよりもやゝ低め
の上記の範囲に定めた。
バナジウムを0.13%から0.20%としたのは、通常、この
種の鋳鋼では、クリープ破断強さの向上のためには、バ
ナジウムは0.25%程度添加するのが望ましいとされてい
る。しかし、本発明者らは別の試験によつて、これを大
型材として使用する場合には、前述の炭素の場合と同様
にクリープ破断強さは、バナジウム量を少なくした方が
かえつて向上する傾向があることを確認していたので、
ここでは、焼入れ性を損なわない範囲でこれを低くする
こととし、その制御範囲も考慮して、この範囲に決めた
ものである。バナジウムは、通常、この種の鋳鋼のこの
程度の添加量については、0.06%の幅を持たせて成分範
囲を決めることが必要とされている。
種の鋳鋼では、クリープ破断強さの向上のためには、バ
ナジウムは0.25%程度添加するのが望ましいとされてい
る。しかし、本発明者らは別の試験によつて、これを大
型材として使用する場合には、前述の炭素の場合と同様
にクリープ破断強さは、バナジウム量を少なくした方が
かえつて向上する傾向があることを確認していたので、
ここでは、焼入れ性を損なわない範囲でこれを低くする
こととし、その制御範囲も考慮して、この範囲に決めた
ものである。バナジウムは、通常、この種の鋳鋼のこの
程度の添加量については、0.06%の幅を持たせて成分範
囲を決めることが必要とされている。
ニオブを0.03〜0.07%としたのは、ニオブは、窒素との
相互作用で結晶粒の成長を防止して、延性および靭性の
確保に役立ち、また、バナジウムとの複合添加により、
クリープ破断強さの向上にも効果があるが、これも、上
述のバナジウムと同様に、あまり多く添加すると、大型
材ではかえつてクリープ破断強さを低下させ、また、偏
析部に炭窒化物を析出させて、欠陥となることが別の試
験で確認されているので、ここでは、ここに示した試験
によつて、その効果が確認された0.055%を中心とし
て、その制御可能な範囲として上記の範囲を定めたもの
である。
相互作用で結晶粒の成長を防止して、延性および靭性の
確保に役立ち、また、バナジウムとの複合添加により、
クリープ破断強さの向上にも効果があるが、これも、上
述のバナジウムと同様に、あまり多く添加すると、大型
材ではかえつてクリープ破断強さを低下させ、また、偏
析部に炭窒化物を析出させて、欠陥となることが別の試
験で確認されているので、ここでは、ここに示した試験
によつて、その効果が確認された0.055%を中心とし
て、その制御可能な範囲として上記の範囲を定めたもの
である。
窒素を0.03〜0.07%としたのは、この種の鋳鋼では前述
したように、大型材にした場合、炭素を多くすると延性
および靭性を低下させるが、窒素にはそのような作用は
なく、かつ、これと炭素との共存によつて、炭化物と同
質の炭窒化物の析出を増進させてクリープ破断強さの向
上に効果がある。また、バナジウムおよびニオブとの共
存により、結晶粒の成長の抑制およびδ−フエライトの
生成、初析フエライトの析出の防止に効果がある。さら
に、焼入れ性を向上させるなどの効果によつて、延性お
よび靭性の確保にも効果があるので、窒素を添加したも
のである。しかし、窒素も、あまり多く添加すると、炭
素の場合と同様に、クリープ破断強さをかえつて低下さ
せる傾向が生じるので、ここでは、その効果が確認され
た0.05%を中心に、その制御可能な範囲として、上記の
範囲を定めたものである。
したように、大型材にした場合、炭素を多くすると延性
および靭性を低下させるが、窒素にはそのような作用は
なく、かつ、これと炭素との共存によつて、炭化物と同
質の炭窒化物の析出を増進させてクリープ破断強さの向
上に効果がある。また、バナジウムおよびニオブとの共
存により、結晶粒の成長の抑制およびδ−フエライトの
生成、初析フエライトの析出の防止に効果がある。さら
に、焼入れ性を向上させるなどの効果によつて、延性お
よび靭性の確保にも効果があるので、窒素を添加したも
のである。しかし、窒素も、あまり多く添加すると、炭
素の場合と同様に、クリープ破断強さをかえつて低下さ
せる傾向が生じるので、ここでは、その効果が確認され
た0.05%を中心に、その制御可能な範囲として、上記の
範囲を定めたものである。
以上の成分に対して、さらに、δ−フエライトの生成、
初析フエライトの析出の防止および焼入れ性の増加が必
要な場合には、コバルトを添加することも可能である。
コバルトはニツケルと同様の効果を有するが、ニツケル
と異なりクリープ破断強さにはあまり悪影響は与えな
い。従つて、ニツケルを制限することにより、δ−フエ
ライトの生成、初析フエライトの析出防止および焼入れ
性の確保に問題がある場合には、コバルトを添加するこ
とが望ましい。本発明の対象とする高温圧力容器用高ク
ロム鋳鋼は、他の成分や熱処理を限定することによって
高い高温強度と優れた常温延性、靭性を確保して良好な
溶接性をそなえた材料とするものであるが、コバルトは
ニッケルと同様な効果を示す元素であるので、δ−フエ
ライトの生成や初析フエライトの析出防止に効果があ
る。しかし過剰な添加によって高温強度はあまり低下し
ないが常温延性、靭性の低下ももたらす可能性があるの
で、ここでは、その範囲を効果が確認された0.5%を中
心とし、その制御可能範囲である0.7%までを許容限と
して、コバルトを添加することを許容した。
初析フエライトの析出の防止および焼入れ性の増加が必
要な場合には、コバルトを添加することも可能である。
コバルトはニツケルと同様の効果を有するが、ニツケル
と異なりクリープ破断強さにはあまり悪影響は与えな
い。従つて、ニツケルを制限することにより、δ−フエ
ライトの生成、初析フエライトの析出防止および焼入れ
性の確保に問題がある場合には、コバルトを添加するこ
とが望ましい。本発明の対象とする高温圧力容器用高ク
ロム鋳鋼は、他の成分や熱処理を限定することによって
高い高温強度と優れた常温延性、靭性を確保して良好な
溶接性をそなえた材料とするものであるが、コバルトは
ニッケルと同様な効果を示す元素であるので、δ−フエ
ライトの生成や初析フエライトの析出防止に効果があ
る。しかし過剰な添加によって高温強度はあまり低下し
ないが常温延性、靭性の低下ももたらす可能性があるの
で、ここでは、その範囲を効果が確認された0.5%を中
心とし、その制御可能範囲である0.7%までを許容限と
して、コバルトを添加することを許容した。
以上に述べた成分は、第2表の材料番号1、2および3
の材料に相当する。これらの材料が、これと類似である
材料番号4〜7の材料に比して延性靭性およびクリープ
破断強さの点ですぐれていることは、第1図から第3図
までの結果より明らかである。これは主として、炭素の
効果による。材料番号8の材料は、クリープ破断強さの
点ではすぐれているが、延性および靭性の点で問題があ
る。これは主として、窒素の影響である。
の材料に相当する。これらの材料が、これと類似である
材料番号4〜7の材料に比して延性靭性およびクリープ
破断強さの点ですぐれていることは、第1図から第3図
までの結果より明らかである。これは主として、炭素の
効果による。材料番号8の材料は、クリープ破断強さの
点ではすぐれているが、延性および靭性の点で問題があ
る。これは主として、窒素の影響である。
また、第1表に示す既存の材料から類推される材料とし
てここでは、材料番号9〜12の材料を試験したが、これ
らの材料は、いずれも、延性および靭性の点あるいはク
リープ破断の点、または、この両者に問題があることが
わかる。
てここでは、材料番号9〜12の材料を試験したが、これ
らの材料は、いずれも、延性および靭性の点あるいはク
リープ破断の点、または、この両者に問題があることが
わかる。
以上に、述べたように、本発明が対象とする高クロム鋳
鋼は、新しい試験および知見にもとづいて、従来のこの
種の鋳鋼の実用化への障害となつていた大型材にした場
合の延性および靭性低下の問題を解決し、かつ、クリー
プ破断強さをも改良したもので、最近、開発が望まれて
いる蒸気タービンの車室や弁室などの高温圧力容器用高
クロム鋳鋼材として実用性の高いものであり、工業的に
顕著な価値のあるものである。
鋼は、新しい試験および知見にもとづいて、従来のこの
種の鋳鋼の実用化への障害となつていた大型材にした場
合の延性および靭性低下の問題を解決し、かつ、クリー
プ破断強さをも改良したもので、最近、開発が望まれて
いる蒸気タービンの車室や弁室などの高温圧力容器用高
クロム鋳鋼材として実用性の高いものであり、工業的に
顕著な価値のあるものである。
しかし、このような材料も適正な熱処理の下に使用しな
ければ所期の目的には使用できない。
ければ所期の目的には使用できない。
本発明は、これに対して、この材料によつて実際の圧力
容器を製造する場合の熱処理方法を提供するものであ
る。
容器を製造する場合の熱処理方法を提供するものであ
る。
以下に、その詳細を説明する。
第1図および第2図よりわかるように、本発明の対象と
なる材料の延性および靭性は、引張強さが高くなると低
下する傾向がある。したがつて、延性および靭性を確保
するためには、引張強さに対して、一定の規制を加える
必要がある。
なる材料の延性および靭性は、引張強さが高くなると低
下する傾向がある。したがつて、延性および靭性を確保
するためには、引張強さに対して、一定の規制を加える
必要がある。
ここでは、この試験の材料が小型であり、また、条件の
良い溶製が行われており、実用の大型材になつたときに
は、その延性および靭性の引張強さの向上による低下は
より強調された形で現われる可能性があることおよび引
張強さをあまり低くするとクリープ破断強さが低下する
ことを考え、引張強さとしては、70kgf/mm2から80kgf/m
m2の範囲で使用することにした。
良い溶製が行われており、実用の大型材になつたときに
は、その延性および靭性の引張強さの向上による低下は
より強調された形で現われる可能性があることおよび引
張強さをあまり低くするとクリープ破断強さが低下する
ことを考え、引張強さとしては、70kgf/mm2から80kgf/m
m2の範囲で使用することにした。
したがつて、本発明の熱処理では、まず、この点につい
て考慮した。
て考慮した。
次の問題として、本発明が対象とする材料が大型で、か
つ肉厚で、複雑な構造をもつ圧力容器として製造される
ものであることを考える必要がある。
つ肉厚で、複雑な構造をもつ圧力容器として製造される
ものであることを考える必要がある。
大型で肉厚で複雑な構造をもつものでは、焼ならしを行
うと各部に大きな残部応力が生じる。しかるに、一般
に、高クロム鋳鋼は、焼ならし状態では、延性および靭
性が低く、そのまま常温近くの低温まで冷却すると割れ
発生を起す危険がある。
うと各部に大きな残部応力が生じる。しかるに、一般
に、高クロム鋳鋼は、焼ならし状態では、延性および靭
性が低く、そのまま常温近くの低温まで冷却すると割れ
発生を起す危険がある。
したがつて、本発明では、このような割れ発生について
も考慮した。
も考慮した。
これについては、本発明では、焼ならし後の冷却を途中
でとどめ、このときに生じたマルテンサイトをいつたん
焼もどして延性および靭性を与えた後に、冷却するとい
う方法を採用した。
でとどめ、このときに生じたマルテンサイトをいつたん
焼もどして延性および靭性を与えた後に、冷却するとい
う方法を採用した。
しかし、このようにした場合、本発明が対象とする材料
では、焼入れ性が良好であるために、焼ならしの際に残
留する未変態オーステナイトは、焼もどし時にも、その
まま残り、焼もどし後の冷却によつて、焼ならし後の冷
却温度以下になつて、始めてマルテンサイト変態する。
したがつて、この状態では、焼入れマルテンサイトが残
る。
では、焼入れ性が良好であるために、焼ならしの際に残
留する未変態オーステナイトは、焼もどし時にも、その
まま残り、焼もどし後の冷却によつて、焼ならし後の冷
却温度以下になつて、始めてマルテンサイト変態する。
したがつて、この状態では、焼入れマルテンサイトが残
る。
しかるに、一般に、高温材料においては、焼入れマルテ
ンサイトが存在する状態で高温で使用すると、クリープ
破断の切欠敏感性が増大したり、高温低サイクル疲れあ
るいは熱疲れで、高温での引張応力作用下での保持時間
が長くなると著しく寿命が低下するという問題が起る。
ンサイトが存在する状態で高温で使用すると、クリープ
破断の切欠敏感性が増大したり、高温低サイクル疲れあ
るいは熱疲れで、高温での引張応力作用下での保持時間
が長くなると著しく寿命が低下するという問題が起る。
したがつて、本発明は、このようなことも考慮した。
以下に、具体的な熱処理の方法およびその限定理由を述
べる。
べる。
本発明が対象とする材料は、所期の材料性質を得るため
に、焼ならしが必要である。この場合、強化元素の固溶
を十分にして、クリープ破断強さを確保するためには、
その温度は1,000℃以上にすることが必要である。ま
た、あまり温度を高くすると結晶粒の粗大化が起り、延
性および靭性が得られなくなるので、その上限を1,100
℃程度に抑えることが必要である。したがつて、ここで
は焼ならし温度は、上記の温度範囲に定めた。
に、焼ならしが必要である。この場合、強化元素の固溶
を十分にして、クリープ破断強さを確保するためには、
その温度は1,000℃以上にすることが必要である。ま
た、あまり温度を高くすると結晶粒の粗大化が起り、延
性および靭性が得られなくなるので、その上限を1,100
℃程度に抑えることが必要である。したがつて、ここで
は焼ならし温度は、上記の温度範囲に定めた。
焼ならしの場合の冷却温度であるが、これは常温まで冷
却すると前述したように割れ発生の危険がある。また、
冷却が不十分であると、残留オーステナイトが多く残
り、その後の焼もどしによつても、それがそのまま維持
されて、焼もどし後に焼入れマルテンサイトが生じて、
同じく割れ発生を起し易くなる。したがつて、ここで
は、十分な量のマツテンサイト変態が起り、未変態オー
ステナイト量が少なくなる温度まで冷却することが必要
である。本発明が対象とする材料では、そのような温度
としては、250℃以下にすることが望ましい。したがつ
て、ここでは、その温度を250℃以下で、かつ割れの発
生しない温度までとした。
却すると前述したように割れ発生の危険がある。また、
冷却が不十分であると、残留オーステナイトが多く残
り、その後の焼もどしによつても、それがそのまま維持
されて、焼もどし後に焼入れマルテンサイトが生じて、
同じく割れ発生を起し易くなる。したがつて、ここで
は、十分な量のマツテンサイト変態が起り、未変態オー
ステナイト量が少なくなる温度まで冷却することが必要
である。本発明が対象とする材料では、そのような温度
としては、250℃以下にすることが望ましい。したがつ
て、ここでは、その温度を250℃以下で、かつ割れの発
生しない温度までとした。
この場合、その後の焼もどしとしては、その温度を690
℃以上にすれば割れ発生は起らなくなる。しかし、この
場合は、あまり温度を高くすると、この材料の適正強さ
である引張強さ70kgf/mm2から80kgf/mm2という値が確保
できなくなる。そして、その上限は750℃付近にある。
したがつて、ここでは、その温度として690℃から750℃
とした。
℃以上にすれば割れ発生は起らなくなる。しかし、この
場合は、あまり温度を高くすると、この材料の適正強さ
である引張強さ70kgf/mm2から80kgf/mm2という値が確保
できなくなる。そして、その上限は750℃付近にある。
したがつて、ここでは、その温度として690℃から750℃
とした。
しかし、前述したように、このような焼もどしを行つて
も、その状態では、焼入れマルテンサイトが残り、前述
のような問題が生じる。したがつて、本発明では、これ
を防止するために、1回目の焼もどしを起つた後に、再
度の焼もどしを行うことにした。
も、その状態では、焼入れマルテンサイトが残り、前述
のような問題が生じる。したがつて、本発明では、これ
を防止するために、1回目の焼もどしを起つた後に、再
度の焼もどしを行うことにした。
しかし、この場合、1回目の焼もどし後の冷却温度が十
分低くないと、この状態でも未変態のオーステナイトが
残り、それが再度の焼もどし時もそのまま維持されて、
その後の冷却時に焼入れマルテンサイトになるという問
題が生じる。したがつて、このような不具合を防止する
には、再度の焼もどしを行う前、すなわち、1回目の焼
もどし後の冷却を十分に行う必要がある。本発明が対象
とする材料では、その温度としては、150℃以下にする
ことが必要である。したがつて、こゝでは、その温度を
150℃以下に定めた。
分低くないと、この状態でも未変態のオーステナイトが
残り、それが再度の焼もどし時もそのまま維持されて、
その後の冷却時に焼入れマルテンサイトになるという問
題が生じる。したがつて、このような不具合を防止する
には、再度の焼もどしを行う前、すなわち、1回目の焼
もどし後の冷却を十分に行う必要がある。本発明が対象
とする材料では、その温度としては、150℃以下にする
ことが必要である。したがつて、こゝでは、その温度を
150℃以下に定めた。
次に、再度の焼もどしの温度であるが、これは、本発明
が対象とする材料の引張強さを70kgf/mm2から80kgf/mm2
に調整することに目標をおくことが必要である。そのた
めには、その温度としては、690℃から750℃の範囲にす
ることが必要である。したがつて、ここでは、その温度
をこの範囲に定めた。
が対象とする材料の引張強さを70kgf/mm2から80kgf/mm2
に調整することに目標をおくことが必要である。そのた
めには、その温度としては、690℃から750℃の範囲にす
ることが必要である。したがつて、ここでは、その温度
をこの範囲に定めた。
(実施例) 以下に、本発明に係わる1実施例を示す。
本発明の効果を確認するために、第4図に示す1ton溶解
材を試作し、試験した。なお、第4図中の寸法の単位は
mmである。
材を試作し、試験した。なお、第4図中の寸法の単位は
mmである。
第4表に、その材料の化学成分を示す。この材料は、電
気炉で溶製し、砂型鋳型に鋳造された後、1,030°〜1,0
40℃で10hr加熱した後、150℃〜250℃の範囲の温度まで
空冷により冷却した後、690〜705℃で10hrの1回目の焼
もどしを行い空冷により、60°〜80℃まで冷却した後、
再度、710℃で10hrの焼もどしを行つて空冷し、試験に
供した。
気炉で溶製し、砂型鋳型に鋳造された後、1,030°〜1,0
40℃で10hr加熱した後、150℃〜250℃の範囲の温度まで
空冷により冷却した後、690〜705℃で10hrの1回目の焼
もどしを行い空冷により、60°〜80℃まで冷却した後、
再度、710℃で10hrの焼もどしを行つて空冷し、試験に
供した。
第5表は、常温引張および2mmVノツチ試験片による衝撃
試験結果を示し、第5,6および7図に、それぞれ、高温
引張試験結果、クリープおよびクリープ破断試験結果お
よび高温低サイクル疲れ試験結果を示す。
試験結果を示し、第5,6および7図に、それぞれ、高温
引張試験結果、クリープおよびクリープ破断試験結果お
よび高温低サイクル疲れ試験結果を示す。
これらの図表からわかるように、本発明の方法は、本発
明が対象とする高温圧力容器用高クロム鋳鋼材に対し
て、その目的とする用途に対してきわめて良好な性質を
与える。
明が対象とする高温圧力容器用高クロム鋳鋼材に対し
て、その目的とする用途に対してきわめて良好な性質を
与える。
したがつて、本発明は、産業上大きな価値をもつものと
いえる。
いえる。
第1,2および3図は、それぞれ、本発明が対象とする材
料の開発を行つたときの基礎試験材の絞り、衝撃値およ
びクリープ破断強さを引張強さとの関係にまとめた結果
を示す。これらの図は、本発明が対象となる材料の成分
限定の根拠を示す。 第4図は本発明の1実施例の試験に用いた試験片の模式
図を示し,第5,6および第7図は、それぞれ、本発明の
適用によつて得られた材料の高温引張、クリープおよび
クリープ破断および高温低サイクル疲れ試験の結果を示
す。
料の開発を行つたときの基礎試験材の絞り、衝撃値およ
びクリープ破断強さを引張強さとの関係にまとめた結果
を示す。これらの図は、本発明が対象となる材料の成分
限定の根拠を示す。 第4図は本発明の1実施例の試験に用いた試験片の模式
図を示し,第5,6および第7図は、それぞれ、本発明の
適用によつて得られた材料の高温引張、クリープおよび
クリープ破断および高温低サイクル疲れ試験の結果を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹田 頼正 長崎県長崎市飽の浦町1番1号 三菱重工 業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 藤田 明次 長崎県長崎市飽の浦町1番1号 三菱重工 業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 高野 勇作 長崎県長崎市飽の浦町1番1号 三菱重工 業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 竹林 一成 福岡県北九州市戸畑区大字中原先ノ浜46番 地59 日本鋳鍛鋼株式会社内 (72)発明者 南 三津男 福岡県北九州市戸畑区大字中原先ノ浜46番 地59 日本鋳鍛鋼株式会社内 (72)発明者 田代 康統 福岡県北九州市戸畑区大字中原先ノ浜46番 地59 日本鋳鍛鋼株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−110847(JP,A) 特開 昭60−200912(JP,A)
Claims (2)
- 【請求項1】重量含有率で炭素0.08〜0.12%、ケイ素0.
7%以下、マンガン0.8%以下、ニッケル0.4〜0.7%、ク
ロム9〜11%、モリブデン0.65%以上1.00%未満、バナ
ジウム0.13〜0.20%、ニオブ0.03〜0.07%及び窒素0.03
〜0.07%を含有し、残部が鉄及び付随的に混入する不純
物よりなる高温圧力容器用高クロム鋳鋼に対して、1000
〜1100℃で加熱して焼きならしを行い、250℃以下で、
かつ割れを発生しない温度まで下げて十分にマルテンサ
イト変態を起こし、その後に、これを690〜750℃の温度
範囲で1回焼戻し、150℃以下の温度まで冷却した後、
さらに、690〜750℃の範囲の温度で2回目の焼戻しを行
うことを特徴とする高温圧力容器用高クロム鋳鋼の熱処
理方法。 - 【請求項2】重量含有率で炭素0.08〜0.12%、ケイ素子
0.7%以下、マンガン0.8%以下、ニッケル0.4〜0.7%、
クロム9〜11%、モリブデン0.65%以上1.00%未満、コ
バルト0.7%以下、バナジウム0.13〜0.20%、ニオブ0.0
3〜0.07%及び窒素0.03〜0.07%を含有し、残部が鉄及
び付随的に混入する不純物よりなる高温圧力容器用高ク
ロム鋳鋼に対して、1000〜1100℃で加熱して焼きならし
を行い、250℃以下で、かつ割れを発生しない温度まで
下げて十分にマルテンサイト変態を起こし、その後に、
これを690〜750℃の温度範囲で1回焼戻し、150℃以下
の温度まで冷却した後、さらに、690〜750℃の範囲の温
度で2回目の焼戻しを行うことを特徴とする高温圧力容
器用高クロム鋳鋼の熱処理方法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP59216323A JPH0696741B2 (ja) | 1984-10-17 | 1984-10-17 | 高温圧力容器用高クロム鋳鋼の熱処理方法 |
EP19850730139 EP0188995B1 (en) | 1984-10-17 | 1985-10-11 | High chromium cast steel for high-temperature pressure container and method for the thermal treatment thereof |
DE8585730139T DE3581527D1 (de) | 1984-10-17 | 1985-10-11 | Hochchromhaltiger gussstahl fuer ein hochtemperaturdruckgefaess und verfahren zu seiner thermischen behandlung. |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP59216323A JPH0696741B2 (ja) | 1984-10-17 | 1984-10-17 | 高温圧力容器用高クロム鋳鋼の熱処理方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6196026A JPS6196026A (ja) | 1986-05-14 |
JPH0696741B2 true JPH0696741B2 (ja) | 1994-11-30 |
Family
ID=16686725
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP59216323A Expired - Lifetime JPH0696741B2 (ja) | 1984-10-17 | 1984-10-17 | 高温圧力容器用高クロム鋳鋼の熱処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0696741B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02267217A (ja) * | 1989-04-05 | 1990-11-01 | Nippon Steel Corp | 高Cr系耐熱鋼の強化熱処理法 |
US10519524B2 (en) * | 2015-02-27 | 2019-12-31 | National Institute For Materials Science | Ferritic heat-resistant steel and method for producing the same |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS60110847A (ja) * | 1983-11-18 | 1985-06-17 | Toshiba Corp | 蒸気タ−ビンロ−タ材 |
JPS60200912A (ja) * | 1984-03-26 | 1985-10-11 | Toshiba Corp | 高クロム鋼からなる鋳物の熱処理方法 |
-
1984
- 1984-10-17 JP JP59216323A patent/JPH0696741B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6196026A (ja) | 1986-05-14 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
EXPY | Cancellation because of completion of term |