JPH0542937B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

この発明は、いわゆるインモールド成型におい
て、表面傷付き性に強く、汚れのつきにくい艶消
し効果に優れた艶消し表面を有するインモールド
成型品とその製造方法に関するものである。

【従来の技術】

従来、艶消し表面を有する成型品を製造する方
法としては、次のような方法があつた。 (1) 成型品表面を部分的にマスキングし、艶消し
塗料あるいは表面光沢塗料をスプレーコーテイ
ングして部分的に艶消し部と光沢部とを有する
製品を得る方法。この方法において、成型品表
面に文字や図柄などの意匠が必要な場合は、さ
らに後工程でスクリーン印刷やタンポ印刷ある
いはホツトスタンプなどを行なう必要があつ
た。また、複雑な凹凸形状の場合は、塗料が回
り込まないようにマスキングを行うのが難し
く、たいへん時間のかかる工程となり、実質上
大量生産に適用するのは不可能である。したが
つて、形状的にも平板に近い単純な形状のもの
に限られていた。 (2) 艶消し部分と光沢部分とを別々の部品で構成
する方法。たとえば、一方は塩化ビニルシート
や金属部品あるいは樹脂成型品にて光沢を有す
る部品を作り、他方は表面にシボ加工を施した
金型を使用して艶消し処理を行つた成型品を用
意し、上記別部品を接合して部分的に艶消し部
と光沢部とを有する製品を得る方法。したがつ
て、この方法も形状的に単純なものに限定さ
れ、デザイン上の自由度に限界があり、また生
産コストも高くつくものであつた。 そこで、インモールド成型法によつて艶消し表
面を有する成型品を得る方法が行なわれている。
すなわち、艶消し効果を現出する微細な凹凸を形
成することのできるマツト転写材を、射出成型用
の金型内の所定の位置に固定し、金型を閉じ、金
型内に樹脂を射出して成型品の形成と同時に成型
品の表面に上記転写材を密着させ、成型品から転
写材の基体シートを剥離して得る方法である。 マツト転写材は、サンドブラストやケミカルエ
ツチングなどの加工により表面が艶消し状態にさ
れた基体シート上に、剥離層や図柄層・接着層な
どが順次形成されたもの、あるいは艶表面を有す
るシートに体質顔料などの添加物が混合され微細
な凹凸表面を呈する凹凸層が印刷法により形成さ
れた基体シート上に、剥離層・図柄層・接着層な
どが順次積層されたものであり、このような層構
成のマツト転写材の転写層を成型品に接着したの
ち、基体シートあるいは基体シートと凹凸層を剥
離・除去することにより基体シートまたは凹凸層
の凹凸が剥離層に写し取られ、剥離層の表面に微
細な凹凸が形成され、インモールド成型品の表面
が艶消し状態になる。

【発明が解決しようとする課題】

しかし、上記のインモールド成型法によつて得
られた成型品は、表面の艶消し部分を爪などで引
つかくいわゆる表面傷付き性において、簡単にス
ジが入るような耐擦傷性の劣るものであつた。ま
た、手でさわると指紋が艶消し表面に残つて取れ
にくくなるという問題もあつた。これは艶消し部
分の微細な凹凸による光の散乱程度が、手の皮脂
などの汚れが付着することにより艶消し程度が変
化するためと考えられる。つまり、すりガラスの
凹凸面に水をつけると、水がつかなかつた部分と
艶消し状態に差が生じるのと同様の現象である。
したがつて、従来、艶消し意匠を設けたいという
デザイン的要望がありながら、汚れの付着により
艶消し感が損なわれるので、人の手がよく触れる
製品には使用できないものであつた。 また、エツチングなどの手段によりシボ加工を
施したインモールド成型用金型と、マツト加工を
施していない通常の転写材との用いて得たインサ
ート成型品の表面は、金型の微細な凹凸が転写材
の厚みによつて吸収されるため、十分な艶消し効
果を得ることができない。 この発明は以上のような問題点を解決し、表面
傷付き性に強く、汚れのつきにくい艶消し効果に
優れた艶消し表面を有するインモールド成型品と
その製造方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

この発明は、以上の目的を達成するために、次
のように構成した。すなわち、この発明の艶消し
表面を有するインモールド成型品は、プラスチツ
ク成型品の凹凸表面上に、さらに微細な凹凸を有
する転写層が形成されるように構成した。 また、この発明のインモールド成型品の製造方
法は、艶消し効果を現出する微細な凹凸を形成す
ることのできるマツト転写材と、キヤビテイ部に
マツト転写材よりも大きい凹凸のマツト加工が施
された金型とを用い、上記マツト転写材と上記金
型内に固定し、樹脂を射出してインモールド成型
を行なうように構成した。 図面を参照しながらこの発明をさらに詳しく説
明する。 第１図はこの発明の艶消し表面を有するインモ
ールド成型品を示す断面図、第２〜３図はこの発
明の艶消し表面を有するインモールド成型品の製
造方法を示す断面図である。第４〜５図はこの発
明に使用するマツト転写材の断面図である。１は
プラスチツク成型品、２は転写層、３・４は凹
凸、５は金型、６はキヤビテイ部、７はマツト転
写材、８は基体シート、９は剥離層、１０は図柄
層、１１は接着層をそれぞれ示す。 マツト転写材７は、基体シート８上に剥離層
９・図柄層１０・接着層１１などが順次形成され
たものであり、被転写体であるインモールド成型
品の表面に艶消しの図柄や機能性薄膜などを形成
することができる。 マツト転写材７の基体シート８としては、表面
に艶消し状の細かな凹凸４を有するものを用い
る。たとえば、ポリエチレンテレフタレートやポ
リプロピレン・ポリエチレン・ナイロン・セロハ
ンなどのプラスチツクフイルムあるいはこれらと
紙との複合フイルムなど通常の転写材の基体シー
ト８として用いられるものの上に、これに固着す
る凹凸層を設けたもの、具体的にはたとえば、シ
リカ・炭酸カルシウム・ポリエチレンワツクス・
ガラスビーズなどの微細な粒径の微粉末を含む樹
脂層を印刷法などによりコーテイングしたものを
使用するとよい。この場合の樹脂層としては、可
塑性樹脂以外にウレタン、メラミン、エポキシな
どの硬化性樹脂、メチルメタアクリレートなどの
紫外線または電子線硬化性樹脂を用いてもよい。
また、上記したプラスチツクフイルムの成膜時、
体質顔料などの微粉末を練りこんだものを基体シ
ート８として使用してもよい。あるいは、前記の
プラスチツクフイルムの表面をサンドブラスト法
やケミカルエツチング法などの物理的手段により
凹凸４を設けたものを基体シート８として使用し
てもよい。なお、マツト部分は、基体シート８の
全面とする以外に、部分的に形成して、図柄や成
型品の形状などのデザインと組み合わせるように
してマツト部分と艶部分とを表現するようにして
もよい。 剥離層９は、基体シート８上に全面に設けら
れ、転写後は基体シート８から剥離し、基体シー
ト８表面に形成された凹凸に対応して剥離層９表
面に基体シート８と逆パターンの凹凸４が形成れ
るものである。また、転写後には被転写体の表面
になるため、転写層２を保護する機能をも有する
ものである。剥離層９はロールコート法や、グラ
ビア印刷法・スクリーン印刷法などの通常の印刷
方法により、基体シート８上に形成される。剥離
層９としては、アクリル系樹脂・ビニル系樹脂な
どの熱可塑性樹脂が使用できる。また、保護層と
しての役目を十分果たさせるためには、ウレタン
系樹脂・エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂、メ
チルメタアクリレートなどの紫外線または電子線
硬化性樹脂を用いてもよい。 接着層１１は、マツト転写材７の転写層２を被
転写体に固着させるためのものである。接着層１
１としては、被転写体であるプラスチツク成型品
１の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を
適宜使用する。たとえば、被転写体がAS樹脂の
場合はアクリル系樹脂やビニル系樹脂を、ポリプ
ロピレンの場合は塩素化ポリプロピレン系樹脂や
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂などを用いるとよ
い。 また、必要に応じて剥離層９と接着層１１との
間に、任意の図柄層１０や金属蒸着層などが全面
または部分的に設けられる。図柄層１０は、顔料
または染料および各種添加剤を含有する樹脂より
なるインキを用い、グラビア印刷法、スクリーン
印刷法などの通常の印刷方法により形成される。
金属蒸着層は、剥離層９表面に形成される凹凸４
に対応して艶消し感を呈するようにするために設
けられるものである。金属蒸着層は、アルミニウ
ムやクロム・ニツケルなどの金属を、真空蒸着
法・イオンプレーテイング法・スパツタリング法
などによつて設けるとよい。 また必要に応じて、剥離層９と金属蒸着層の間
に、金属蒸着適性を上げるための前アンカー層を
設けてもよい。この場合、凹凸４を形成する層を
前アンカー層の下に設けると、艶消し効果の小さ
いものができる。また必要に応じて、金属蒸着層
と接着層１１の間に、両者の固着力を増すための
後アンカー層を設けてもよい。 なお、剥離層９、図柄層１０、凹凸層、金属蒸
着層、接着層１１及び前アンカー層、後アンカー
層の相互の界面での固着性は優れたものを選択す
るのが好ましい。 インコールド成型用金型５は、可動型と固定型
とからなり、可動型側にマツト転写材７を固定で
きるよう構成されており、両金型５を閉じること
によつてキヤビテイ部６を形成する。キヤビテイ
部６のマツト転写材７が接する可動型製品面に
は、インモールド成型品表面に艶消し表面を形成
するための凹凸３が形成される。この凹凸３の大
きさは、マツト転写材７によつて形成される凹凸
４よりも大きくする。キヤビテイ部６のこの面に
は成型品の樹脂が直接接するのではなく、マツト
転写材７が挟み込まれるので、あまり細かい凹凸
を形成すると、成型品に凹凸表面を形成すること
ができない。 上記したマツト転写材７と金型５とを用いてイ
ンモールド成型を行う。まず、金型５の所定の位
置にマツト転写材７を固定する。この際、艶消し
表面を部分的に形成する場合は、マツト転写材７
のマツト部分と金型５のマツト部分とが一致する
ようにする。ついで、金型５を閉じ、樹脂を射出
する。樹脂の冷却後、金型５を開いてインモール
ド成型品を取り出す。インモールド成型品からマ
ツト転写材７の基体シート８を剥すと、艶消し表
面を有するインモールド成型品が得られる。 したがつて、このインモールド成型品の樹脂部
分は、金型５により凹凸３が形成され、さらにそ
の凹凸３に積層された転写層２にはさらに微細な
凹凸４が形成されている。

【作用】

この発明に用いるマツト転写材７は、凹凸表面
を有する基体シート８上に、前記基体シート８か
ら剥離可能な剥離層９が設けられ、接着層１１が
全面に設けられるように構成されている。 金型５にはマツト転写材７によつて形成される
凹凸４よりも大きな凹凸３が形成されている。 したがつて、インモールド成型品の金型５によ
つて形成される凹凸３表面上に、さらに微細な凹
凸４がマツト転写材７によつて形成される。 マツト加工した金型５にマツト転写材７をセツ
トして射出成型すると、基体シート８自体の厚み
により金型５の深度の浅い凹凸には基体シート８
が沿わず、凸部の先端が丸い形状の凹凸３とな
る。表面傷付き性に対しては、凸部の先端が丸い
ためマツト表面全体が傷つくことはないので、き
わめて傷つきにくい艶消し表面となる。また、マ
ツト転写材７によつて形成された転写層２の表面
は、きわめて微細な凹凸４表面となつており、艶
消し効果に優れた表面となる。

【実施例】

実施例 １ 深度約0.3〜50μｍのマツト加工が施されたイン
モールド成型用金型内に、マツト転写材の固定
し、アクリロニトリルスチレン（AS）樹脂を使
用して、下記の射出条件でインモールド成型を行
つた。得られた成型品は、表面傷付き性に強く、
汚れのつきにくい艶消し効果に優れたものであつ
た。 射出条件（日本製鋼所社製JC150SA使用） ●金型温度 50℃ ●シリンダー温度 220℃ ●射出圧力 1190Kg／cm² ●保圧力 850Kg／cm² ●スクリユー回転数 55rpm なお、射出速度は本成型機の最高速度であつ
た。 実施例 ２ 深度約0.3〜50μｍのマツト加工が部分的に施さ
れたインモールド成型用金型内に、艶消し程度が
２段階に設けられた厚さ38μｍの基体シートを有
するマツト転写材を固定し、AS樹脂を使用して
インモールド成型を行つた。得られた成型品は部
分的に艶消し効果が２段階あり、かつ光沢部分を
有する表面物性と意匠効果に優れたものであつ
た。 実施例 ３ 深度約50〜300μｍのマツト加工がエツチング
により施したインモールド成型用金型内に、艶消
し程度を２段階に設けられた厚さ38μｍの基体シ
ートを有するマツト転写材を固定し、AS樹脂を
使用してインモールド成型を行つた。得られた成
型品は部分的に艶消し効果が２段階あり、かつ光
沢部分を有する表面物性と意匠効果に優れたもの
であつた。

【発明の効果】

この発明の艶消し表面を有するインモールド成
型品は、プラスチツク成型品の凹凸表面上に、さ
らに微細な凹凸を有する転写層が形成されるよう
に構成されているので、表面傷付き性に強く、汚
れのつきにくい艶消し効果に優れた艶消し表面を
有するインモールド成型品である。 また、この発明の艶消し表面を有するインモー
ルド成型品の製造方法は、艶消し効果を現出する
微細な凹凸を形成することのできるマツト転写材
と、キヤビテイ部にマツト転写材よりも大きい凹
凸のマツト加工が施された金型とを用い、上記マ
ツト転写材を上記金型内に固定し、樹脂を射出し
てインモールド成型を行なうように構成されてい
るので、上記のインモールド成型品を容易に得る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の艶消し表面を有するインモ
ールド成型品を示す断面図、第２〜３図はこの発
明の艶消し表面を有するインモールド成型品の製
造方法を示す断面図である。第４〜５図はこの発
明に使用するマツト転写材の断面図である。 １……プラスチツク成型品、２……転写層、
３，４……凹凸、５……金型、６……キヤビテイ
部、７……マツト転写材、８……基体シート、９
……剥離層、１０……図柄層、１１……接着層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ プラスチツク成型品１の表面に形成された半
   艶消し効果を現出する波形の凹凸３上に、プラス
   チツク成型品１の凹凸３よりも微細な艶消し効果
   を現出する凹凸４を有する転写層２が形成されて
   いることを特徴とする艶消し表面を有するインモ
   ールド成型品。 ２ 艶消し効果を現出する微細な凹凸４を形成す
   ることのできるマツト転写材７と、マツト転写材
   ７の凹凸４よりも大きくて半艶消し効果を現出す
   る凹凸３のマツト加工がキヤビテイ部６に施され
   た金型５とを用い、上記マツト転写材７を上記金
   型５内に固定し、樹脂を射出してインモールド成
   型を行なうことを特徴とする艶消し表面を有する
   インモールド成型品の製造方法。