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JPH05310792A - ヒト神経成長因子の遺伝子組換えによる調製法 - Google Patents

ヒト神経成長因子の遺伝子組換えによる調製法

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Publication number
JPH05310792A
JPH05310792A JP4185044A JP18504492A JPH05310792A JP H05310792 A JPH05310792 A JP H05310792A JP 4185044 A JP4185044 A JP 4185044A JP 18504492 A JP18504492 A JP 18504492A JP H05310792 A JPH05310792 A JP H05310792A
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JP
Japan
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human
βngf
dna
sequence
ngf
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Application number
JP4185044A
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English (en)
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JP2740417B2 (ja
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Alane M Gray
アレイン・モリー・グレイ
Axel Ullrich
アクセル・ウールリッヒ
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Genentech Inc
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Genentech Inc
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Publication date
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Publication of JP2740417B2 publication Critical patent/JP2740417B2/ja
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/475Growth factors; Growth regulators
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    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
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    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 ヒト起源の夾雑蛋白質を実質的に含んでいな
いヒトβNGF、該ヒトβNGFを含有することを特徴
とする医薬組成物、および該ヒトβNGFの製造方法。 【効果】 ヒトβNGFは、神経障害の治療またはそれ
に関連する他の目的に使用するのに有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリペプチドホルモン、
ヒト神経成長因子(NGF)、組換え技術を用いたその調
製法、およびそれを含有する組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
A.神経成長因子 分子量〜130,000の多成分系蛋白質がマウスの唾
液腺から分離された。この蛋白質は特に雄マウスの唾液
腺に豊富に存在しており、通常神経成長因子(Nerve
Growth Factor)と呼ばれている。この蛋白質が演じ
る主要な神経活性は、感覚レセプター(受容体)から脳へ
インパルスを伝える神経細胞、感覚ニューロンの大きさ
および循環系、腺、平滑筋およびその他の器官の機能的
活性を調節している自律神経系を構成している2種の内
の1つ、交感神経ニューロンの大きさを増大させる能力
を有する点にある。マウスの唾液腺から、中性pHで抽
出して得られるNGFは7S NGFとして知られてお
り、α、βおよびγサブユニットと呼ばれる3つのサブ
ユニットで構成されている。7S NGFの全体として
の神経活性は、非共有結合性の力で互いに結合している
2個の同一の118アミノ酸ペプチドのダイマーである
βサブユニットによってもたらされる。このサブユニッ
トは2.5S NGFとも呼ばれる。γサブユニットは
生物活性を持っていない。しかし、このγサブユニット
はアルギニンエステロペプチダーゼである。NGFの合
成における初期の遺伝子産物は、γサブユニットで開裂
されるプレプロ−NGFポリペプチドである。このγサ
ブユニットは、マウスに於いて傷の治療を促進させるこ
とがわかった。
【0003】最近、第3のNGF成分(分子量〜116,
000)がマウスの唾液腺から分離され、プラスミノー
ゲン活性化剤としての性質を有することが報告された。
即ち、この成分はプラスミノーゲンをプラスミンに変換
するので、血餅の溶解に利用し得ることを示唆している
(欧州特許出願78300656.2(公開番号0002
139A1)参照:発明の名称、「神経成長因子およびそ
の調製法」、出願日、1978年11月22日、公開、
1979年5月30日)。
【0004】既述した様に、NGFの神経活性はβサブ
ユニット(以下、βNGFと言う)によってもたらされ
る。これは、中枢性アドレナリン作用性ニューロンの切
断された軸索の再生性再発芽を顕著に促進し、損傷を受
けた軸索の修復に有用な性質を持っていることがわかっ
た。
【0005】B.組換えDNA技術 組換えDNA技術は、一応成熟期に達したと言える。分
子生物学者は、各種のDNA配列をある程度容易に組換
え、形質転換された微生物および細胞培養株中で多量の
外来性蛋白質産物を生産し得る新しいDNA体をつくる
ことができる。一般的な手技手法は、各種のDNAの平
滑末端あるいは粘着末端フラグメントをインビトロで結
合させ、特定の生物に形質転換するのに有用な強力な発
現ベクターを調製し、所望の外来性産物を効率的に合成
させることである。しかし、産物によっては、それを生
産する方法は依然として回りくどいものであり、常に成
功を予見し得る程には、この科学は進歩していない。事
実、基礎的な実験に基づくことなく、成功すると予想す
る者は、著しい実施不能の危険をおかしてそうするので
ある。
【0006】主要な要素、即ち複製起源、1種またはそ
れ以上の表現型選択特性、発現プロモーター、外来性遺
伝子の挿入および残留ベクターのDNA組換えは、通常
宿主細胞の外で行なう。得られた組換え複製可能発現ベ
クターまたはプラスミドを形質転換によって細胞に導入
し、その形質転換体を増殖させることによって多量の組
換えビヒクルを得る。暗号化されているDNA情報の転
写および翻訳を支配している部分に関して適切な位置に
この遺伝子が挿入された場合は、この得られた発現ベク
ターは、挿入された遺伝子が暗号化しているポリペプチ
ド配列を生産するのに有用である。この過程は発現と呼
ばれる。要すれば宿主細胞を溶解させ、他の蛋白質から
分離精製して生産物を回収することができる。
【0007】実際には、組換えDNA技術を使って全て
外来性のペプチドを発現させることができ(いわゆる直
接発現)、あるいはまた、ホモローガス(同種の)ポリペ
プチドのアミノ酸配列の一部と融合したヘテロローガス
(異種の)ポリペプチドを発現させることもできる。後者
の場合、目的とする生物活性産物は、細胞外環境で開裂
されるまで、融合したホモローガス/ヘテロローガスポ
リペプチド内で不活性化されていることがある。
【0008】同様に、遺伝および細胞生理を研究するた
めの細胞培養または組織培養の技術も非常に進歩してい
る。単離した正常細胞から、続々と継代(移植)して調製
した耐久セルラインを保持する手技手法を使用すること
ができる。研究に使用するには、この様なセルラインは
液体培地中の固形担体上に保持するか、あるいは支持栄
養物を含んでいる懸濁液中で発育させて保持する。大量
生産のためのスケールアップには機械的な問題があるだ
けである。
【0009】同様に、生物工学に於いて、蛋白質の生化
学は有用な、実は必要な補助学問である。所望の蛋白質
を生産する細胞は、何百という他の蛋白質、細胞代謝の
内性産物をも生産する。これらの夾雑蛋白質は、所望の
蛋白質から分離しておかないと、他の化合物と同様、所
望の蛋白質による治療過程でヒトや動物に投与されると
毒性を現わすことがある。従って、当面の特定の系に適
した分離法を計画し、所望の用途に使用できる均質な安
全な生産物を得るのに蛋白質生化学の技術が必要となっ
てくる。蛋白質生化学はまた、所望の生産物の同定に、
そしてそれを特定化して、細胞が確実に、変化したり変
異することなく、忠実にそれを生産したことを確かめる
のにも必要である。この科学分野は更に、バイオアッセ
イや安定性試験を計画したり、臨床試験やマーケティン
グを行なう前にやらなければならないその他の手続きに
も関係している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来、抽出
技術や合成によって、実質的に純粋な形で単離されたこ
とのないヒトNGFのβサブユニットを提供するもので
ある。本発明者らは、意外にも、融合したホモローガス
蛋白質(自己蛋白質)を含んでいない成熟(mature)ポリペ
プチドの形で、β−NGFをE.coli(大腸菌)でヘテロ
ローガス蛋白質(外来性蛋白質)として発現させ得ること
を見い出した(これは、外来性蛋白質として認識する細
胞酵素から保護する必要があるかも知れないものであ
る)。本発明者らは、NGFのβサブユニットは、E.c
oli中で成熟蛋白質として直接発現される最も小さな蛋
白質であると信じている。
【0011】本発明に係るβ−NGFは、神経障害の治
療またはそれに関連するその他の有用な目的に使用する
ことができる。天然に分泌されるヒトβ−NGFと同じ
であり、しかも哺乳動物由来の他の蛋白質を含んでいな
いので、ヒト以外の動物由来のペプチドホルモンをヒト
の病気の治療に使う場合と違って、本発明のβ−NGF
が治療中に免疫原性反応をひき起すということはない。
更に、組織抽出物として得たβ−NGFに付随してお
り、それを含む組成物に望ましくない生物活性を示す哺
乳動物起源の他の蛋白質を実質的に含んでいないのが本
発明のβ−NGFであり、これは外来性蛋白質として得
られるからである。
【0012】更に本発明は、このポリペプチドを発現し
得る形で暗号化している遺伝子配列を含んでいる複製可
能なDNA発現ベクターを提供するものである。更にま
た本発明は、この様なベクターで形質転換された微生物
株またはセルラインの様な組換え宿主細胞、およびそれ
らの培養物を提供するものである。さらに本発明は、得
られたこのポリペプチドを含有している非経口投与用の
組成物を提供するものである。
【0013】従って、本発明の目的は、他の哺乳動物蛋
白質を実質的に含んでいないヒトβ−NGFを得ること
にあり、もう一つの目的は、天然資源から抽出によって
得ることができる量より多量のヒトβ−NGFを得るこ
とにある。
【0014】図面の説明 図1〜図3はマウスNGFのβサブユニットのアミノ酸
配列、それを暗号化している遺伝子配列、およびその遺
伝子の特定の断片(セグメント)の相補DNA鎖を示して
いる。図4は、β−NGFmRNAの断片を含んでいる
クローンのノーザンブロット分析を示している。図5
は、マウスNGF遺伝子の部分的制限地図、および本発
明によって組み立てられたプラスミドのヌクレオチド配
列とマウスNGF遺伝子のヌクレオチド配列とのおおよ
その一致を示している。図6〜図7は、組換えファージ
λhN8の物理的地図およびヒトゲノムを囲っている領
域を示している。図8〜図12はヒトβNGF染色体遺
伝子のヌクレオチド配列を示している。図13〜図14
は、ヒトおよびマウスのプレプロ−βNGF遺伝子のヌ
クレオチド配列およびアミノ酸配列の比較を示してい
る。図15〜図16は、ヒトβNGFの発現のために組
み立てられた遺伝子を示している。図17〜図19は、
ヒトβNGFを発現するための、E.coli を形質転換
するためのプラスミドphNGFtrp1の組み立て工程の
一部を示している。
【0015】
【課題を解決するための手段】
A.宿主細胞の培養およびベクター DNA配列を、それを発現することのできる他の配列に
有効に結合した場合、そのDNA配列を発現することが
できるベクターを発現ベクターと言う。常にはっきりと
記載することはしないが、この発現ベクターは、エピソ
ームとして、あるいは染色体DNAの組込み部分とし
て、宿主生物中で複製できるものでなければならない。
言うまでもなく、複製能を持たないものは有効に使用で
きない。結局、発現ベクターとは機能的な定義であり、
この用語は特定の配列に用いられるだけでなく、その用
語には、そこに含まれる特定のDNA暗号を発現するこ
とができる全ゆるDNA配列が含まれている。一般に、
組換えDNA技術で用いられる発現ベクターはプラスミ
ドの形であることが多い。このプラスミドは、環状の2
本鎖DNAループであって、そのベクターの形では、染
色体に結合していないものを言う。プラスミドは、ベク
ターの最も普通に用いられる形であるので、本明細書に
於いては、プラスミドとベクターを交換可能な用語とし
て用いる。しかし本発明に於いては、同じ機能を有す
る、当技術分野で知られている、あるいは今後知られ得
る他の形の発現ベクターも含まれると解釈すべきであ
る。
【0016】本明細書に於いて組換え宿主細胞とは、組
換えDNA技術を用いて組み立てられたベクターで形質
転換された細胞を意味する。
【0017】本明細書に記載した方法およびベクター
は、広範囲の真核性および原核性の生物の宿主細胞に使
用することができる。
【0018】勿論、一般的に、本発明に有用なベクター
を組み立てるに際し、DNA配列をクローニングするの
に原核生物が好ましい。特にE.coli K12株294
(ATCCNo.31446)が特に好ましい。使用し得
るその他の微生物株として、E.coli B、E.coli
X1776(ATCCNo.31537)などのE.coli
株が含まれる。これらは限定する意味で挙げたのではな
く、単なる例示に過ぎないことは言うまでもない。
【0019】原核生物は発現にも使用することができ
る。上記の菌株の他、E.coli W3110(F--,
原栄養性、ATCCNo.27325)、Bacillus sub
tilusの様な大腸菌類、Salmonella typhmuriumやSer
ratia marcesans の様な腸内細菌群および各種のシュ
ードモナス種を使用することができる。
【0020】一般に、これらの宿主に関しては、その宿
主細胞と適合し得る種由来のレプリコンおよび調節配列
を含んでするプラスミドベクターが使用される。このベ
クターはもともと、形質転換細胞に表現形質(表現型)の
選択性を付与することのできる標識化配列と共に複製部
位を持っている。例えば、E.coliは、E.coli種由来
のpBR322を使って形質転換される(Bolivarら、G
ene 2:95(1977))。pBR322はアンピシリン
およびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含んでお
り、従って、これは形質転換細胞を同定するための簡単
な手段となる。このpBR322プラスミドやその他の
微生物プラスミドは、その微生物がそれ自身の蛋白質を
発現するのに使用することのできるプロモーターを含ん
でいなければならず、あるいは含む様に改良されなくて
はならない。組換えDNAの組み立てに通常用いられる
プロモーターにはβ−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)お
よびラクトースプロモーター系(Changら、Nature 2
75:615(1978);Itakuraら、Science 19
8:1056(1977);Goeddelら、Nature 281:
544(1979))およびトリプトフアン(trp)プロモー
ター系(Goeddelら、Nucleic Acids Res.8:40
57(1980);EPO Appl Publ No.0036
776)がある。これらが最も普通に用いられている
が、その他の微生物プロモーターも発見され、使用され
ており、それらのヌクレオチド配列は詳細に発表されて
いるので、当業者であれば、それらをプラスミドベクタ
ーに機能的に結合させることができる(Siebenlistら、
Cell 20:269(1980))。
【0021】原核生物の他、酵母培養株の様な真核性微
生物も使用することができる。Saccharomyces cerevi
siae、普通のパン酵母は、真核微生物中最もよく使用さ
れるものであるが、その他の多くの株も使用される。S
accharomyces中で発現させるには、例えばプラスミドY
Rp7(Stinchcombら、Nature 282:39(197
9);Kingsmanら、Gene :141(1979);Tsche
mperら、Gene 10:157(1980))がよく用いら
れる。このプラスミドは、トリプトフアンを生産する能
力を欠いている酵母の突然変異株、例えばATCCN
o.44076またはPEP4−1(Jones,Genetics
85:12(1977))にとって選択マーカーとなるtrp
1遺伝子をもともと含んでいる。酵母宿主細胞ゲノムの
特徴としてのtrp1損傷が存在することは、トリプトフ
アンの非存在下に発育させることによって形質転換体を
検出する有効な環境を提供することになる。
【0022】酵母ベクター中の適切な促進(promoting)
配列には、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman
ら、J.Biol.Chem.255:2073(1980))ま
たは他の解糖酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Re
g.7:149(1968);Hollandら、Biochemistry
17:4900(1978))、例えばエノラーゼ、グリセ
ルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘ
キソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホ
フルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソ
メラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルベー
トキナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホ
スホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼなど
のプロモーターが含まれる。好適な発現プラスミドを組
み立てるに際し、これらの遺伝子の終了(termination)
配列もまた、発現ベクターに、発現しようとする配列の
3'に結合させてmRNAのポリアデニル化および終了を
提供する。発育条件によってコントロールされる、もう
1つの転写における有利性を持った他のプロモーター
は、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクローム
C、酸性ホスファターゼ、窒素の代謝に関与する分解酵
素、上記のグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒ
ドロゲナーゼ、およびマルトースおよびガラクトース利
用に関与する酵素(Holland、前記)などのプロモーター
領域である。酵母に適合するプロモーター、複製起源お
よび終了配列を含んでいる全てのプラスミドベクターが
適している。
【0023】微生物の他、多細胞生物由来の細胞培養も
宿主として使用することができる。原則として、脊椎動
物および無脊椎動物のいずれの細胞培養も使用できる。
しかし、脊椎動物細胞が最も興味があり、脊椎動物細胞
の培養増殖(組織培養)が最近では常套手段となって来た
(Tissue Culture,Academic Press,Kruseおよび
Patterson,editors(1973))。この様な有用な宿主
細胞系の例は、VEROおよびHeLa細胞、チャイニー
ズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞系、W138、BH
K、COS−7およびMDCK細胞系などである。この
様な細胞の発現ベクターは、通常、(要すれば)複製起
源、発現しようとする遺伝子の前に位置するプロモータ
ー、必要なリボソーム結合部位、RNA組み継ぎ(スプ
ライス)部位、ポリアデニル化部位、転写終了配列など
を含んでいる。本明細書では、好ましい態様を記載した
が、本発明がその様な例示した配列に限定されるものと
解釈してはならない。
【0024】哺乳動物細胞中で用いるには、発現ベクタ
ー上の調節機能はウイルスから提供されることが多い。
例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマ、
アデノウイルス2から誘導され、シミアンウイルス40
(SV40)から導かれることが最も多い。古い、そして
新しいSV40ウイルスのプロモーターは、共にこのウ
イルスから、SV40ウイルスの複製起源を含んでいる
フラグメントとして簡単に得られるという理由で特に有
用である(Fiersら、Nature 273:113(197
8))。HindIIIサイト(部位)からウイルスの複製起源内
に存在しているBglIサイトに至る約250bp配列を含
んでいるならば、それより小さいあるいは大きいSV4
0フラグメントも使用することができる。更に、所望の
遺伝子配列と正常通り結合しているプロモーターまたは
調節配列をこの様な調節配列が宿主細胞に適合する限
り、使用することができ、またそれが好ましいことが多
い。
【0025】複製起源は、SV40または他のウイルス
(例えばポリオーマ、アデノ、VSV、BPVなど)が誘
導される様に、外来性の起源を含む様にベクターを組み
立てることにより、あるいは宿主細胞の染色体の複製機
構により提供することができる。このベクターが宿主細
胞染色体に組み込まれたら、後者は十分であることが多
い。
【0026】B.使用した方法 強力な細胞壁バリアーのない細胞を宿主細胞として使用
する場合は、Grahamらの燐酸カルシウム沈澱法(Graha
mおよびVan der Eb,Virology 52:546(19
78))によってトランスフェクションを行なう。しか
し、核注入またはプロトプラスト融合などの、DNAを
細胞に導入する他の方法も使用することができる。
【0027】原核細胞または実質的な細胞壁構造を持っ
た細胞を使用する場合、好ましいトランスフェクション
の方法は、Cohenらの塩化カルシウムを用いたカルシウ
ム処理である(Cohen,F.N.ら、Proc.Natl.Aca
d.Sci.(USA),69:2110(1972))。
【0028】所望の暗号配列および調節配列(control
sequence)を含んでいる好適なベクターを組み立てるに
は標準的な結合技術を用いる。分離したプラスミドまた
はDNAフラグメントを開裂し、修復(テイラー)し、所
望のプラスミドを形成する様に、希望の形に再結合す
る。
【0029】開裂は、適当な緩衝液中、制限酵素で処理
することにより行なう。通常、約1μgのプラスミドま
たはDNAフラグメント、約20μlの緩衝液、約1単
位の酵素を使用する(特定の制限酵素に対する適切な緩
衝液および基質の量は製造業者が指定している)。37
℃で約1時間インキュベートする。インキュベートした
後、フェノールおよびクロロホルムで抽出して蛋白質を
除き、水性分画からエタノールで沈澱させて核酸を回収
する。
【0030】平滑末端が必要な場合は、E.coli DN
AポリメラーゼI(Klenow)10単位で、15℃で15
分間処理し、フェノール−クロロホルム抽出し、エタノ
ール沈澱に付す。
【0031】開裂したフラグメントの大きさによる分離
は、Goeddelらの方法(Goeddel,Dら、Nucleic Aci
ds Res.8:4057(1980))に従い、6%ポリア
クリルアミドゲルを使って行なう。
【0032】結合(ライゲーション)には、正しく符合す
る様に末端を適当に修復したほぼ等モル量の所望の成分
を、DNA0.5μg当たり約10単位のT4DNAリ
ガーゼを用いて処理する(開裂したベクターを成分とし
て用いる場合は、細菌性アルカリ性ホスファターゼで予
め処理して開裂したベクターの再結合を防ぐのがよ
い)。
【0033】ライゲーション混合物を使ってE.coli
K12株294(ATCC31446)を形質転換し、成
功した形質転換体をアンピシリン耐性について選択す
る。形質転換体からプラスミドを調製し、Messingらの
方法(Messingら、NucleicAcids Res.9:309
(1981))またはMaxamらの方法(Maxamら、Methods
in Enzymology 65:499(1980))に従っ
て、制限酵素分析し、そして/または配列を決定する。
【0034】
【実施例】
C.好ましい実施態様 以下に、E.coli中でポリペプチドを発現させる好まし
い態様について記載するが、これは本発明を例示するも
のであって、本発明がこれに限定されるものと解釈して
はならない。
【0035】C.1. マウスのプロ−βNGFを暗号
化しているcDNAクローンの分離 ヒトNGFのβサブユニットを暗号化している遺伝子を
得るために、ハイブリダイゼーション・プローブとし
て、マウスのβNGFを暗号化しているクローンされた
cDNAを用いることにした。
【0036】cDNAクローニング・アプローチには、
合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、図1〜
図3に示したマウスのβNGFサブユニットの既知のア
ミノ酸配列を利用した:雄および雌のマウスの唾液腺に
存在するNGFレベルの違いを、同定のもう1つの手段
として用いた。マウスのβNGFアミノ酸配列の3つの
小さな部分を選び、それらを暗号化している全ての可能
性のある配列に相補的なオリゴヌクレオチド・プールを
Crea等の方法(Nucleic Acids Res.,8:2331
(1980))で合成した。この暗号鎖および相補鎖のヌ
クレオチド配列を図1〜図3に示す。
【0037】合成オリゴヌクレオチドをハイブリダイゼ
ーション・プローブとして用いて、マウスβNGFcD
NAクローンを、雄マウス唾液腺からのオリゴdT−プ
ライム化cDNAバンクから分離同定する試みは失敗し
た。この結果は、βNGFは雄マウスの唾液腺蛋白質の
0.1%の占めているが、そのmRNAは同じ様に豊富
ではないことを示している。従って、まずβNGF特異
ヌクレオチド配列を豊富にするために、この蛋白質のカ
ルボキシ末端に近接した配列を表わしているプライマー
・プールを使って、雄の唾液腺からのポリA−含有(A
+)RNAの逆転写を特異的にプライムした。長さ20
0bp以上のcDNA分子を、よく知られたプラスミドpB
R322にクローンした。cDNAのプライミングにハ
イブリダイゼーション・プローブとして最初に使った
5'−32P−標識NGFプライマー・プールを使って、
全部で10,000個のクローンをスクリーニングした
結果、その内0.8%が、非常に厳重なハイブリダイゼ
ーション条件下で陽性信号を与えた。残りの99.2%
の「プライム化」されたcDNAバンクは、ポリA+MSG
RNAの調製中に溶離した痕跡量のオリゴdTによるプ
ライミングおよび自己プライミングにより生じたと思わ
れる。クローニング操作の際のS1ヌクレアーゼ処理が
末端プライマー配列を傷つけ、従って検出された陽性ク
ローンが少なかったのかも知れない。
【0038】この最初のスクリーニングで陽性となった
クローンを、ハイブリダイゼーション・プローブとし
て、図1〜図3に示したオリゴヌクレオチドプール1よ
り上流のDNA配列から誘導した放射線標識化プライマ
ー・プール2および3を使ってスクリーニングした。更
に雄または雌マウスの唾液腺のいずれかからのポリA+
RNAから、プール1でプライム化した32P−cDNA
を二重フイルター上のプローブとして用いた。再びpB
R322中、オリゴヌクレオチド・プール2および3と
ハイブリッドを形成した全部で10個の雄−特異的クロ
ーンを同定した。制限酵素分析の結果、10個は全て共
通のHaeIIIおよびHinfIフラグメントを持っているこ
とがわかった。本発明者らがpmβN−9G1と名付け
た、最も長いDNA挿入体(〜700bp)を発現するプラ
スミドを含んでいるクローンの全配列を決定した。この
ヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列は、NH
2−末端プロ−配列に加えて、1つの翻訳フレーム中に
期待するNGF配列を含んでいた(図6〜図7参照)。マ
ウスのNGFcDNA配列を含んでいる細菌クローンの
組み立ておよび同定について、以降に詳述する。
【0039】完全なNGFmRNAの大きさを決定する
ために、ノーザン・ブロット・ハイブリダイゼーション
およびプライマー・エクステンション分析法を用いた。
NGFおよびプロペプチド配列を含んでいる長さ470
bpの32P−標識DNAフラグメント(RsaI−RsaI7
89,図5参照)を、雄マウス唾液腺に特異な長さ約13
00ヌクレオチドのRNA種と雑種形成させた。2つの
短い、2本鎖の、5'末端−標識化制限フラグメントを
用いたプライマー・エクステンション実験(図5の説明
参照)により、βNGFmRNAの5'末端は、本発明者
らのクローンの3'末端から下流の約370塩基を残し
て、pmβN−9G1cDNAフラグメントの5'末端から
上流に約230塩基の所に位置づけられた。欠失5'配
列の〜30ヌクレオチドを除く全てが、本発明者らがpm
βN−16、F7およびpmβN−21B5と名付けたク
ローンに含まれており、これらは、図5に示す様に、互
いに、そしてクローンpmβN−9G1と重複している。
これらは、cDNA合成をプライムするため、制限フラ
グメントの使用についてのより詳細な以下に記載の方法
で分離する。
【0040】プライマー配列の3'末端から下流への3'
ポリA配列までの配列を含んでいるクローン化したcD
NAを得るために、プレパラテイブ尿素アガロースゲル
上で、全ポリA+雄マウス唾液腺RNAを分画すること
により、βNGFmRNAを豊富化した。最も大きいサ
イズのフラクション、βNGFcDNAプローブとハイ
ブリダイズ(雑種形成)する配列を含むフラクションを、
オリゴdT−プライム化cDNA合成およびクローニング
に使用した。3,700のクローンをスクリーニングし
た結果、4つの陽性ハイブリダイゼーションシグナルが
得られた。本発明者がpmβN−12E4と名付けたクロ
ーンのヌクレオチド配列分析、および3'暗号化および
非翻訳配列に239ヌクレオチドを添加したpmβN−8
B3。オリゴdTプライム化であるが、本発明者らのク
ローンはいずれも、第2のDNA鎖の不完全な合成また
は広範なS1ヌクレアーゼ処理のために、βNGFmR
NAの全3'非翻訳領域を含んでいなかった。ノーザン
・ブロット分析により、ポリA配列は本発明者らがクロ
ーンした配列から離れていないことがわかった(図4参
照)。豊富化したmRNAからのオリゴdTプライム化cD
NAクローンの調製について以下に詳述する。
【0041】C.2. ヒト染色体βNGF遺伝子の分
離および特性化 ヒト遺伝子ライブラリー(λCharon 4Aベクターに挿
入された、15−20kbの、部分的HaeIII/AluIヒ
ト胎児肝臓DNAフラグメントからなる)を、放射活性
ハイブリダイゼーション・プローブとして、既述した4
70bpマウスNGFクローン化cDNAフラグメント(pm
βN−9G1、RsaIフラグメント)を用いてスクリー
ニングした。全部で27組み換えファージをプラーグ純
化し、EcoRI消化により部分的に特性化した:27個
のファージは6つの異なるタイプの制限パターンを示し
た。各パターン種は、制限フラグメントを共有してお
り、従って同じゲノム領域を重複していると思われる。
γhβN8と名づけたファージの特性を、物理的マッピ
ングおよびヌクレオチド配列決定により調べた。図6〜
図7は、ファージ・マッピング、配列決定およびゲノム
・サザーン・ブロッティング実験によって得た。クロー
ンγhβN8の物理的地図およびヒトゲノム中のその配
列を画している領域を示している。サブクローンした、
重複しているEcoRIおよびHindIIIフラグメントから
誘導された12,000bpのヌクレオチド配列の部分を
図8〜図12に示す。
【0042】C.3. マウスβNGFcDNAとヒト
βNGF遺伝子の配列の比較 マウスのβNGFcDNA配列は、成熟βNGFを暗号
化する可能性を持った解読わくを含有しており、予想さ
れたアミノ酸配列は、マウスβNGFの既知の配列に相
当している(Angeletti等、Biochemistry,12:90
(1973)および12:100(1973))。意外にも、
このcDNA配列は、マウスβNGFの報告されている
配列の末端に結合した、C−末端、アルギニン−グリシ
ンジペプチド延長部を予測している。
【0043】ヒトβNGF遺伝子は、成熟マウスβNG
Fアミノ酸配列と約90%が相同(ホモローガス)なアミ
ノ酸配列を予測している領域を含んでおり、従ってこれ
は、ヒトβNGFの遺伝子のための遺伝子でなければな
らない。ヒトβNGF蛋白質もまた、C−末端ジペプチ
ド延長部を持っている。
【0044】ヒトとマウスのβNGF配列を並べると
(図13〜図14)、成熟マウス蛋白質の既知の配列から
かなりの遠くの上流まで広範な相同性が延びていること
がわかる。22,000ダルトンの生合成プロ−βNG
Fプリカーサー(前駆体)の存在が証明されており(Berg
erおよびShooter,Proc.Nat.Acad.Sci.(US
A),74:3647,(1977))、これは成熟蛋白質か
らヌクレオチド位置419および420(図13〜図1
4参照)の潜在的なアルギニン−アルギニン開裂部位に
まで延びているかもしれない。このヌクレオチド配列で
予測される前駆体は、既に以前に検出されたものより長
い:後述する様に、全プレプロ−β−NGF配列は分子
量27,000と予測され、プロ−配列は25,000ダ
ルトンと予測され、特異なアルギニン残基対が存在する
ことを考えると、21,500および18,000ダルト
ンのプロセッシング中間体が細胞内に存在する。
【0045】C.4. 開始メチオニンコドンおよび信
号配列の位置づけ 蛋白質合成開始コドンであると指定するための候補とし
て3つのメチオニン残基が挙げられる(図13〜図14
のアミノ酸−187、−121および−119)。しか
し、いつくかの要因から、本発明者らの配列の−121
アミノ酸が実際の開始コドンとして使われていることを
強く暗示している。βNGFは分泌された蛋白質である
ので、開始コドンの後には、このポリペプチドを小胞体
の内腔へと共同翻訳転移させる信号配列が続いていると
考えられる。アミノ酸−121から−104は、優れた
信号配列の候補である。これらの18個のアミノ酸は正
しい長さであり、一続きの6個の完全に疎水性のアミノ
酸(ala−phe−leu−ile−gly−val)を含んでいる。信号
ペプチダーゼによる開裂は、小さいアミノ酸であるala
−104と、−103位のglu残基の間で起り得る。プ
レ−アルファ・ラクトアルブミンの場合、信号ペプチダ
ーゼは同一のgln−ala配列(後)を開裂させ、同一のN−
末端glu残基を残すことが知られている。−187位のm
et残基に続く一連のアミノ酸は、極性および荷電アミノ
酸を高率で含んでおり、これまで報告されている信号配
列のいずれにも似ていない。
【0046】従って、−121のメチオニンがヒトおよ
びマウスのプレプロ−βNGFの翻訳開始に使われる可
能性が最も高く、この場合27,000ダルトンのプレ
プロホルモンが生成する。もし信号ペプチドプロセッシ
ングが残基−104で起ったら、25,000ダルトン
のプロ−βNGFが生成するであろう。
【0047】C.5. E.coli中でのヒトβNGFの
直接発現 λhβN8からのEcoRIフラグメントをpBR322で
サブクローンした。本発明者らがphβN8−B9と命名
したサブクローンプラスミドは、ヒトβNGFサブユニ
ットを暗号化している配列の大部分を含んでいる2kbヒ
トDNA挿入体を含有していた。配列決定の結果、10
個のNH2−末端アミノ酸だけがこの配列から除かれて
いることがわかった。βNGF暗号配列をE.coliで発
現させるための本発明者らの方法は、phβN8−B9の
βNGF暗号部分から最も大きい可能なフラグメントを
切り取り、次いで欠失コドンを満たし、その配列の5'
および3'末端を、E.coli発現プラスミドに挿入する
のに適する様に修飾することであった。使用した発現系
は、米国特許出願第307,473号(1981年10月
1日出願)に記載されているTrpプロモーター系であ
り、これは、M.Mateucciの配列変換と共に、各種の
遺伝子について以前から用いられて来たものである。
【0048】プラスミドphβN8−B9をEcoRIおよ
びHgiAIで消化し、〜300bpフラグメントを消化混
合物から分離した。このフラグメントを図15〜図16
に示す。2工程の消化により生じる粘着末端も示してあ
る。発現のためのヒトβNGF配列の5'末端を組み立
てるために、10個の欠失アミノ酸のためのコドン、開
始メチオニンコドン(ATG)、およびリボソーム結合サ
イトの一部であり、制限エンドヌクレアーゼXbaIの開
裂サイトを含んでいる、該ATGに先行するヌクレオチ
ド群を付加した。この目的の為に4つのオリゴヌクレオ
チドを化学的に合成した。これらをオリゴヌクレオチド
I−IVとして図15〜図16に示す。
【0049】βNGF暗号領域の3'末端は以下の如く
修正した:図15〜図16に示した1個のHgiAI部位
(成熟ヒトβNGFの111位(Val)と112位(Leu)
のアミノ酸)から下流の両DNA鎖のヌクレオチド配列
を、Arg118およびSalI粘着末端に続く終止コドン
(TAG)を含む様に化学的に合成した。これらのオリゴ
ヌクレオチドは図15〜図16のフラグメントVおよび
VIである。
【0050】合成オリゴヌクレオチド1−VIをT4ポ
リヌクレオチドキナーゼおよびγ−32P−ATPで放射
活性標識し、その放射活性オリゴヌクレオチドを、T4
DNAリガーゼ緩衝液中、〜300bp hβNGFDNA
フラグメントと混合した。10単位のT4DNAリガー
ゼを用い、12℃で12時間ライゲーション(結合)し
た。この混合物をフェノール抽出し、DNAを70%エ
タノール中で沈澱させた。沈澱を乾燥し、制限エンドヌ
クレアーゼ緩衝液に溶解し、酵素XbaIおよびSalIを
添加し、2時間消化した。
【0051】DNA混合物のプレパラティブゲル電気泳
動およびオートラジオグラフィーにより、放射活性のあ
る二重体(ダブレット)が〜370bpに存在することがわ
かった。溶離したDNAフラグメントを、XbaIおよび
SalIで消化した後細菌性アルカリホスファターゼで処
理したpHGH207−1と命名されたHGH−Trp発
現プラスミドに結合させた(T4DNAリガーゼ)。この
アルカリホスファターゼ処理は、HGHフラグメントが
Trp発現ベクターに再挿入されるのを防ぐ為に行なっ
た。このライゲーション混合物を使ってE.coli K1
2/294を形質転換した。寒天平板上、アンピシリン
耐性でテトラサイクリン感受性のコロニーを選択した:
200のコロニーを、放射活性の300bpEcoRI/H
giAIプローブとのハイブリダイゼーションにより、ヒ
トβNGF配列の存在についてスクリーニングした。1
2個の陽性コロニーを、ウエスタン・ブロット上、ウサ
ギの抗マウスβNGF抗体を使って、その細胞抽出物中
に免疫反応性βNGF分子が存在するかどうかについて
分析した。1個を除く全てのクローンが、陰性の対照抽
出物と比較して、期待される分子量の陽性信号を示し
た。これらのクローンの1個のDNA配列を分析した結
果、本発明者らによってPhβNGFtrp1と命名され
た、ヒトβNGFを発現した最終的なプラスミドが、当
初に計画した構造を持っていることが証明された。
【0052】プラスミドPhβN8−B9のEcoRIお
よびHgiAIによる消化からプラスミドPhβNGFtrp
1の組み立てに至る一連の操作を図17〜図19に示し
た。プラスミドPHGH207−1は、上記出願番号第
307,473号に記載されているプラスミドPHGH
207をBamHIで消化し、次いでEcoRIで部分消化
することにより得られた。trpプロモーターを含んでい
る最も大きいフラグメントを分離した。pBR322か
ら最も大きいEcoRI−BamHIフラグメントを分離
し、この2つのフラグメントを結合させ、E.coli K
12/194の形質転換に使用した。アンピシリンおよ
びテトラサイクリンの両者に耐性のあるクローンがPH
GH207−1で含んでいた。
【0053】C.6. mNGFcDNA配列を含んでい
る細菌クローンの組み立ておよび同定 各(14塩基の)8つのプライマーのプール2種を化学的
に合成した。各プライマーは、アミノ酸93−96およ
び97の1部のための潜在的mRNA配列と相補的であ
る。ポリ(A+)RNAで特異的にcDNAの合成をプライ
ムするのに16オリゴヌクレオチドの混合物を用いた。
100ミリモル(mモル)のKCl 50μl中、8プライマ
ーの各プール200ピコモル(pモル)(1μg)(総計44
0pモル、2μg)を、ポリ(A+)RNA40μgと、90
℃、68℃、42℃および37℃で4分間づつインキュ
ベートすることにより、アニーリングした。32P−標識
cDNAを、50mMトリス(pH8.3)、10mM MgC
l2、10mM DTT、50mM KClの反応(系)100
μl中で合成した。この反応系はアニーリングした混合
物の他に、500μMのdATP、TTP、dGTP、1
00μMのdCTP、20μCiの[γ−32P]dCTP(2
000Ci/mモル、Amersham)、0.5単位/μlのR
NAsinおよび90単位の逆転写酵素を含んでいた。最
初の鎖の合成は37℃で60分間であった。反応系を3
分間煮沸し、1分間氷でクエンチングし、マイクロフュ
ージ中で回転させた。上澄を同容量のddH2Oで希釈
し、KlenowPolI 15単位を加え、12℃で18時
間、dscDNAを合成した。フェノール/クロロホルム
抽出し、エタノール沈澱を行なった後、標品を150μ
l中のS1ヌクレアーゼ103単位を用いて37℃で1時
間消化した。フェノール/クロロホルム抽出およびエタ
ノール沈澱の後、5%ポリアクリルアミドゲル上の電気
泳動によりcDNAを分画した。2つのサイズ範囲のcD
NAを電気溶離した。長さ〜550bp(上)は132ngm
回収され、長さ200〜550bp(下)は182ngm回収
された。全量20ngmの各フラクションの3'−末端を、
末端ヌクレオチジル・トランスフェラーゼを用いて20
−40d(c)残基で延長させた。このd(c)−尾部形成cD
NAを、同様にPstI部位でd(G)残基を用いて延長さ
せたpBR322(150ngm)とアニーリングした。アニ
ーリングは50μlの100mM NaCl、10mMトリス
(pH7.5)、250mM EDTA中で行なった。混合
物を70℃に加熱し、徐々に37℃に冷却し(16時
間)、次いで4℃に冷却した(6時間)。アニーリング混
合物の半分を使ってE.coli K−12株294を形質
転換した。各サイズフラクション(上と下)からの500
コロニーをフィルター・ハイブリダイゼーションにより
スクリーニングした。32P−標識プローブは16プライ
マーの混合物(全1μg)から、公表されている方法によ
り、ポリヌクレオチドキナーゼ(P−LBiochemicals)
および200μCiの[γ−32P]ATP(5000Ci/m
モル、Amersham)を用いた燐酸化により調製した。1
0,000個のクローンを含んでいるフィルターを、プ
ライマー・ハイブリダイゼーション・ミックス(100m
MトリスpH7.5、0.9M NaCl、6mM EDT
A、1XDenhardt's溶液、100μM rATP、1mM
NaH2PO4−Naピロホスフェート、0.5%Nonidet
P−40、0.1mg/ml酵母RNA(SigmaR−675
0))中、〜1×108cpmの32P−標識プローブと、室温
で18時間ハイブリッド形成させた。フィルターを、4
2℃で6×ssc中で30分間(3回)洗浄し、強化スクリ
ーン(Dupont)を用いて−70℃で16時間、X線フイ
ルムに感光させた。約0.7−0.9%(上370、下
460)のコロニーを選択し、もとのプライミング部位
に対して5'である2つの追加の合成プライマーによる
2回目のスクリーニングにかけた。アミノ酸74−77
のための全ての潜在的mRNA配列に相補的な12量体
を各4プライマーの2プールに合成した。各々8個の1
4量体2プール(アミノ酸52−58および56の一部
のための潜在的mRNA配列に相補的)を同様にして合成
した。第1回のスクリーニングで選択した「上」および
「下」のコロニーから、3セットの同一のフィルターを作
成した。4つの合成オリゴヌクレオチドから、既述した
様にして32P−標識プローブを作成した。プライマー・
ハイブリダイゼーション・ミックス中、フィルターを
0.5×108cpmとハイブリッド形成させ、洗浄し、X
線フイルムに感光させた。5'オリゴヌクレオチド全て
とハイブリッド形成を行なった9つの陽性群(下から3
つ、上から6つ)がみつかった。ミニスクリーン手法で
プラスミドDNAを分離し、最も大きい挿入体を持った
クローンを制限分析により決定した。pmβN−9G1と
名付けたプラスミドの塩基配列を、Maxam−Gilbert法
によって完全に決定した。このcDNA挿入体は、14
塩基のプライマー配列(図1〜図3、プール)および全
量716bpを含んでいた。
【0054】C.7. βNGFメッセージに富むmR
NAから調製されたオリゴdT−プライム化cDNAクロ
ーン 0.025Mのクエン酸ナトリウム(pH3.8)中の2
%アガロースおよび6M尿素からなる変性アガロースゲ
ルにより、電気泳動によって200μgのポリ(A+)RN
Aを分画した。リボソームバン(帯)は、垂直のスライス
をエチジウムブロマイドで染色することにより肉眼観察
し得る様にした。ゲルを0.5cmのスライスに切断し、
70℃で融解し、フェノールで2回、クロロホルムで1
回、強力に抽出した。2回のエタノール沈澱の後、その
ペレットをddH2O 30μlに溶解した。各フラクショ
ン(4M酢酸アンモニウム5μl(pH7.0)中)1μlを
乾燥ニトロセルロースフィルターにスポットし、厳重な
条件下でドット・ハイブリダイゼーションによりスクリ
ーニングした。Klenow Pol1反応系中、プライマー
として牛胸腺DNAフラグメントを用いて既知の方法に
より、32P−標識プローブをpmβN−9G1挿入体から
調製した。このフィルターを、50mM NaPO4(pH
7.0)、5×Denhart's溶液、5×ssc、50μg/ml
の超音波処理したニシン精子DNA、100μMのrA
TP、1mM NaH2PO4−ナトリウムピロホスフェー
ト、および50%ホルムアミド中、42℃で18時間、
〜107cpmのハイブリッド形成させた。このフィルター
を0.2×ssc−0.1%SDS中、42℃で20分間
洗浄し(3回)、フイルムに感光させた。ハイブリダイゼ
ーションの結果、NGFメッセージはフラクション11
および12にあることがわかった。フラクション11お
よび12のそれぞれ10μlを用い、標準的な方法でオ
リゴdT−プライム化cDNAを調製した。5%ポリアク
リルアミドゲル上の電気泳動の後、ゲルスライスから6
00bpより長いcDNAを溶離した。フラクション11
から約40ngmのcDNA、およびフラクション12から
の20ngmをd(C)−尾部形成し、d(G)−尾部形成したp
BR322とアニーリングした。フラクション11から
約3300クローン、フラクション12からの1500
クローンを、pmβN−9G1からの32P−標識内部Hpa
IIフラグメント(216bp)を使って、厳重な条件下のフ
ィルターハイブリダイゼーションにより、コロニーとし
てスクリーニングした。フィルターを42℃で18時
間、50×106cpmとハイブリッド形成させ、洗浄し、
既述した様にX線フイルムに感光させた。フラクション
12からの5つのクローンがこのプローブについて陽性
であった。制限分析により、それらは同胞であることが
わかった。pmβN−12E4を、Maxam−Gilbert法に
より完全に塩基配列決定した。フラクション11からの
2つのクローンが陽性であった。最大のpmβN−8B3
の塩基配列をMaxam−Gilbert法により完全に決定し
た。
【0055】C.8. 医薬組成物 本発明に係るヒトのβ−NGFは、このβ−NGFを適
当な担体と混合して、既知の方法で、有用な医薬組成物
に製剤化することができる。好適な担体、および他のヒ
トの蛋白質、例えばヒトの血清アルブミンを含んでいて
もよい製剤の調製法は、例えばRemingtonのPharmacen
tical Sciences(E.W.Martinによる)に記載され
ている。この様な医薬組成物は、本発明の蛋白質の有効
量を適当な量の担体と共に含んでおり、患者に非経口投
与することができる。
【0056】このヒトβ−NGFは、神経障害またはそ
の他の、この物質が治療効果を発揮し得る疾患にかかっ
ている患者に非経口投与することができる。投与量およ
び投与割合は、例えばマウスの唾液腺から得られる同様
の製剤の臨床実験に現在使用されているものと同じであ
る。
【0057】以上の記載は本発明の好ましい態様を述べ
たものであり、本発明がこれに限定されると解釈しては
ならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 マウスNGFのβサブユニットのアミノ酸配
列、それを暗号化している遺伝子配列、およびその遺伝
子の特定の断片の相補DNA鎖を示す模式図である(そ
の1)。
【図2】 マウスNGFのβサブユニットのアミノ酸配
列、それを暗号化している遺伝子配列、およびその遺伝
子の特定の断片の相補DNA鎖を示す模式図で,ある
(その2)。
【図3】 マウスNGFのβサブユニットのアミノ酸配
列、それを暗号化している遺伝子配列、およびその遺伝
子の特定の断片の相補DNA鎖を示す模式図である(そ
の3)。
【図4】 β−NGFmRNA断片を含んでいるクロー
ンのノーザン・ブロット分析の結果を示すグラフであ
る。
【図5】 マウスNGF遺伝子の部分的制限地図、およ
び本発明のプラスミドのヌクレオチド配列とマウスNG
F遺伝子のヌクレオチド配列との対比を示す模式図であ
る。
【図6】 組換えファージλhN8の物理的地図である
(その1)。
【図7】 組換えファージλhN8の物理的地図である
(その2)。
【図8】 ヒトβNGF染色体遺伝子のヌクレオチド配
列を示す模式図である(その1)。
【図9】 ヒトβNGF染色体遺伝子のヌクレオチド配
列を示す模式図である(その2)。
【図10】 ヒトβNGF染色体遺伝子のヌクレオチド
配列を示す模式図である(その3)。
【図11】 ヒトβNGF染色体遺伝子のヌクレオチド
配列を示す模式図である(その4)。
【図12】 ヒトβNGF染色体遺伝子のヌクレオチド
配列を示す模式図である(その5)。
【図13】 ヒトおよびマウスのプレプロ−βNGF遺
伝子のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の比較を示
す模式図である(その1)。
【図14】 ヒトおよびマウスのプレプロ−βNGF遺
伝子のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の比較を示
す模式図である(その2)。
【図15】 ヒトβNGFの発現のために組み立てられ
た遺伝子を示す模式図である(その1)。
【図16】 ヒトβNGFの発現のために組み立てられ
た遺伝子を示す模式図である(その2)。
【図17】 ヒトβNGFを発現するための、E.coli
を形質転換するためのプラスミドphNGFtrp1の組み
立て工程の1部を示す工程図である(その1)。
【図18】 ヒトβNGFを発現するための、E.coli
を形質転換するためのプラスミドphNGFtrp1の組み
立て工程の1部を示す工程図である(その2)。
【図19】 ヒトβNGFを発現するための、E.coli
を形質転換するためのプラスミドphNGFtrp1の組み
立て工程の1部を示す工程図である(その3)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C12N 15/16 ZNA (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 アクセル・ウールリッヒ アメリカ合衆国カリフォルニア94117、サ ン・フランシスコ、アッパー・テラス433 番

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト起源の夾雑蛋白質を実質的に含んで
    いないヒトβNGF。
  2. 【請求項2】 組換え宿主細胞によって生産される請求
    項1に記載のβNGF。
  3. 【請求項3】 微生物細胞によって生産される請求項2
    に記載のβNGF。
  4. 【請求項4】 治療に有効な量の、ヒト起源の夾雑蛋白
    質を実質的に含んでいないヒトβNGFを薬学的に許容
    し得る担体と共に含有してなる医薬組成物。
  5. 【請求項5】 非経口投与に適した請求項4に記載の組
    成物。
  6. 【請求項6】 損傷を受けた神経の治療に用いる請求項
    4または請求項5に記載の組成物。
  7. 【請求項7】 ヒトβNGFを暗号化しているDNA配
    列を含有し、該配列を発現することができる複製可能な
    発現ベクターで組換え宿主細胞を形質転換し、この細胞
    を培養し、発現されたβNGFを分離することからなる
    βNGFの調製法。
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