JP7517186B2 - 車両用サイドエアバッグ装置、サイドエアバッグの折り畳み方法及び乗員保護装置 - Google Patents

Description

本発明は、車両用サイドエアバッグ装置及び該装置を備えた乗員保護装置に関する。

下記特許文献１には、車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部に搭載される車両用サイドエアバッグ装置が開示されている。この車両用サイドエアバッグ装置では、頭部保護膨張部（頭部チャンバ）及び腰部保護膨張部（腰部チャンバ）を有する。頭部チャンバは、乗員の頭部の側方に膨張展開し、腰部チャンバは、乗員の腰部の側方に膨張展開する。下記特許文献２にも同様の技術が開示されている。

特開２０１１－１０５１０７号公報 国際公開第２０１１／０１６１０７号

上記各先行技術には、サイドエアバッグとシートベルトとの関係については開示されていない。シートベルトが一般的な３点式である場合、上記各先行技術のサイドエアバッグは、シートベルトのショルダベルトに対して車両幅方向外側に膨張展開する。その場合、サイドエアバッグの頭部チャンバは、乗員の頭部に対して車両幅方向外側に離れて膨張展開するため、頭部が頭部チャンバに拘束されるまでにタイムラグが生じることとなる。このため、頭部の初期拘束性能を向上させる観点で改善の余地がある。

本発明は上記事実を考慮し、頭部の初期拘束性能を向上可能な車両用サイドエアバッグ装置及び乗員保護装置を得ることを目的とする。

第１の態様の車両用サイドエアバッグ装置は、３点式のシートベルトを用いて乗員が拘束される車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部に搭載される車両用サイドエアバッグ装置であって、車両の側面衝突が検知又は予知された場合にガスを発生させるインフレータと、前記側部内に折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからガスの供給を受けて前記側部から乗員の側方へ膨張展開すると共に、上方の頭部チャンバと下方の下部チャンバとを有するサイドエアバッグと、を備え、前記頭部チャンバは、前記シートベルトのショルダベルトに対する乗員の頭部側へ膨張展開する後部と、前記ショルダベルトの車両上方側を通って前記後部から車両前方側へ膨張展開する前部とを有し、少なくとも前記前部の膨張展開初期において、前記前部の下端が車両前後方向視で前記ショルダベルトよりも車両上方側に位置する。

第１の態様では、乗員が３点式のシートベルトを用いて車両用シートに拘束される。この車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部には、車両用サイドエアバッグ装置が搭載される。この車両用サイドエアバッグ装置では、車両の側面衝突が検知又は予知された場合にインフレータからガスが発生し、当該ガスがサイドエアバッグに供給される。これにより、サイドエアバッグが上記側部から乗員の側方へ膨張展開する。このサイドエアバッグは、上方の頭部チャンバと下方の下部チャンバとを有しており、頭部チャンバの後部がシートベルトのショルダベルトに対する乗員の頭部側へ膨張展開する。頭部チャンバの前部は、ショルダベルトの車両上方側を通って後部から車両前方側へ膨張展開する。これにより、頭部チャンバの後部及び前部が乗員の頭部に対して車両幅方向外側に近接して膨張展開する。しかも、少なくとも頭部チャンバの前部の膨張展開初期において、当該前部の下端が車両前後方向視でショルダベルトよりも車両上方側に位置する。これにより、頭部チャンバの前部が膨張展開初期にショルダベルトに不用意に引っ掛かることを抑制できる。その結果、頭部チャンバの前部を早期かつ適切に膨張展開させ、乗員の頭部の側方を頭部チャンバにより十分に覆うことが可能となるので、頭部の初期拘束性能を向上させることができる。

第２の態様の車両用サイドエアバッグ装置は、第１の態様において、前記前部の膨張展開完了状態において、前記前部の下端が前記シートバックのフレームの上端と同等以上の高さに位置する。

第２の態様では、頭部チャンバの前部の膨張展開完了状態において、当該前部の下端がシートバックのフレームの上端と同等以上の高さに位置する。このように前部の下端の高さが設定されることにより、当該前部が膨張展開初期にショルダベルトに不用意に引っ掛かることを効果的に抑制できる。

第３の態様の車両用サイドエアバッグ装置は、第１の態様において、前記前部は、前記後部から車両前方側へ膨張展開する前上部と、当該前上部から車両下方側へ膨張展開する前下部とを有し、折り畳み状態の前記サイドエアバッグでは、前記前下部が前記前上部側へ折り畳まれている。

第３の態様では、シートバックにおける車両幅方向外側の側部内に折り畳まれた状態で収納されたサイドエアバッグは、頭部チャンバの前部が有する前下部が前上部側へ折り畳まれている。この頭部チャンバの前部は、膨張展開初期に、前下部が前上部側へ折り畳まれた状態のままでショルダベルトの車両上方側を通って頭部チャンバの後部から車両前方側へ膨張展開する。その後、頭部チャンバの内圧の上昇に伴って折り畳まれた前下部が車両下方側へ膨張展開する。この結果、前部の上下寸法が大きく設定された頭部チャンバであっても、ショルダベルトを乗り越えて車両前方側へ膨張展開することができるので、頭部をより適切に保護することが可能となる。

第４の態様の車両用サイドエアバッグ装置は、第３の態様において、前記前下部と前記前上部とは、前記前下部が前記前上部側へ折り畳まれた状態でティアシームにより縫製されている。

第４の態様では、頭部チャンバの前部は、前下部が前上部側へ折り畳まれると共に、当該折り畳み状態で前下部と前上部とがティアシームにより縫製されている。これにより、頭部チャンバの前部がショルダベルトの車両上方側を通って車両前方側へ膨張展開する際に、前下部が前上部側へ折り畳まれた状態を保持し易くなり、当該膨張展開が安定する。その後、頭部チャンバの内圧上昇に伴いティアシームが切れることにより、前下部を車両下方側へ膨張展開させることができる。

第５の態様の車両用サイドエアバッグ装置は、第１の態様～第４の態様の何れか１つの態様において、前記サイドエアバッグの膨張展開完了状態において、前記頭部チャンバの前記後部の前端が前記ショルダベルトに対して車両後方側に離間して配置される。

第５の態様によれば、サイドエアバッグの膨張展開完了状態では、頭部チャンバの後部の前端がショルダベルトに対して車両後方側に離間して配置される。このように後部の前端の位置が設定されることにより、当該後部が膨張展開時にショルダベルトに不用意に引っ掛かることを抑制できる。

第６の態様の乗員保護装置は、シートクッション及びシートバックを有する車両用シートと、前記車両用シートに乗員を拘束する３点式のシートベルトを有する車両用シートベルト装置と、前記シートバックの車両幅方向外側の側部に搭載された請求項１～請求項５の何れか１項に記載の車両用サイドエアバッグ装置と、を備えている。

第６の態様によれば、シートクッション及びシートバックを有する車両用シートには、車両用シートベルト装置が有する３点式のシートベルトによって乗員が拘束される。上記シートバックの車両幅方向外側の側部には、車両用サイドエアバッグ装置が搭載される。この車両用サイドエアバッグ装置は、第１の態様～第５の態様の何れか１つの態様のものであるため、前述した作用及び効果が得られる。

以上説明したように、本発明に係る車両用サイドエアバッグ装置及び乗員保護装置では、頭部の初期拘束性能を向上させることができる。

第１実施形態に係る乗員保護装置においてサイドエアバッグが膨張展開した状態を示す側面図である。 第１実施形態に係る乗員保護装置においてサイドエアバッグが膨張展開した状態を示す正面図である。 図２のＦ３－Ｆ３線に沿った切断面を示す断面図である。 第２実施形態に係る乗員保護装置におけるサイドエアバッグの概略的な側面図であり、頭部チャンバの折り畳み方について説明するための図である。 第２実施形態におけるサイドエアバッグの膨張展開途中の状態を示す概略的な側面図である。 図５Ａに示される状態よりもサイドエアバッグの膨張展開が進行した状態を示す概略的な側面図である。 図５Ｂに示される状態よりもサイドエアバッグの膨張展開が進行した状態を示す概略的な側面図である。 第３実施形態に係る乗員保護装置におけるサイドエアバッグの概略的な側面図であり、頭部チャンバの折り畳み方と、ティアシームによる縫製について説明するための図である。

＜第１の実施形態＞
以下、図１～図３を参照して本発明の第１実施形態に係る乗員保護装置１０について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印ＦＲは車両前方を示しており、矢印ＵＰは車両上方を示しており、矢印ＬＨ（ＯＵＴ）は車両左方（車両幅方向の外方）を示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向（車両幅方向）の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。また、各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。

図１及び図２に示されるように、本実施形態に係る乗員保護装置１０は、車両用シート１２と、車両用シートベルト装置３０と、車両用サイドエアバッグ装置４０とによって構成されている。車両用シート１２は、例えば左ハンドル車の運転席、又は右ハンドル車の助手席とされており、車室内の左側に配置されている。この車両用シート１２の前後方向、左右方向（幅方向）及び上下方向は、車両の前後方向、左右方向（幅方向）及び上下方向と一致している。この車両用シート１２が車室内の右側に配置される場合、本実施形態とは左右対称の構成となる。以下、車両用シート１２、車両用シートベルト装置３０及び車両用サイドエアバッグ装置４０の構成について順次説明し、その後に本実施形態の要部について説明する。

（車両用シートの構成）
図１及び図２に示されるように、車両用シート１２は、当該車両用シート１２に着座した乗員Ｐの臀部及び大腿部を支持するシートクッション１４と、シートクッション１４の後端部に連結されて乗員Ｐの背部を支持するシートバック１６と、シートバック１６の上端部に連結されて乗員Ｐの頭部Ｈを支持するヘッドレスト２２と、を有している。シートクッション１４は、図示しないスライド機構を介して車体の床部に連結されており、車体に対する前後位置を調節可能とされている。シートバック１６は、図示しないリクライニング機構を介してシートクッション１４に連結されており、シートクッション１４に対する傾斜角度を調節可能とされている。

なお、図１及び図２では、実際の乗員の代わりに衝突試験用のダミーＰが車両用シート１２に着座している。このダミーＰは、国際統一側面衝突ダミー（World Side Impact Dummy；WorldSID）のＡＭ５０（米国人成人男性の５０パーセンタイル）である。このダミーＰは、側面衝突試験法に規定される着座方法で車両用シート１２に着座している。この車両用シート１２の車両に対する前後位置、及びシートクッション１４に対するシートバック１６の傾斜角度は、上記の着座方法に対応した基準設定位置に調整されている。この状態では、シートバック１６の前後左右上下の方向と車両の前後左右上下の方向とが一致している。また、図１及び図２では、車両用シート１０に着座しているダミーがＳＩＤ２ｓである場合における当該ＳＩＤ２ｓの頭部Ｈｓを二点鎖線で図示している。以下、単に「頭部Ｈ」と称する場合、頭部Ｈ及び頭部Ｈｓを表すものとする。

図１に示されるように、シートバック１６は、フレームであるシートバックフレーム１８と、シートバックフレーム１８に被せられた図示しないシートバックパッドと、シートバックパッドを覆ったシートバック表皮２０と、を備えている。シートバックフレーム１８は、例えば金属又は樹脂によって構成されており、シートバックパッドは、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されている。シートバック表皮２０は、例えば布材（織り物）、ニット素材（編み物）、合成皮革、皮革等からなる複数の表皮片が互いに縫製されて構成されている。

上記のシートバックフレーム１８は、シートバック１６の車両幅方向外側の側部１６Ａ内で車両上下方向に延在する外サイドフレーム１８Ａと、シートバック１６の車両幅方向内側の側部１６Ｂで車両上下方向に延在する図示しない内サイドフレームと、を備えている。また、シートバックフレーム１８は、外サイドフレーム１８Ａと内サイドフレームとの上端部同士を繋ぐ図示しないアッパフレームと、外サイドフレーム１８Ａと内サイドフレームとの下端部同士をシート幅方向に繋ぐ図示しないロアフレームと、を備えている。以下の説明では、上記の側部１６Ａを「外側サイド部１６Ａ」と称する。

（車両用シートベルト装置の構成）
図１に示されるように、車両用シートベルト装置３０は、乗員拘束用の３点式のシートベルト（ウエビング）３２を備えている。なお、図１ではシートベルト３２の一部であるショルダベルト３２Ａのみを図示している。

シートベルト３２の図示しない長手方向一端部は、車両用シート１２に対する車両幅方向外側（ここでは左側）で車体フロア等に固定された図示しないアンカプレートに係止されている。シートベルト３２の図示しない他端部は、図示しないＢピラーの下部等に配設された図示しないリトラクタの巻取軸に係止されている。シートベルト３２の中間部は、Ｂピラーの上部に配設されたショルダアンカ３４（図１参照；図２では図示省略）に挿通されて折り返されている。このショルダアンカ３４は、Ｂピラーに対する配置高さを調節可能なアジャスタブルショルダアンカとされている。

シートベルト３２におけるショルダアンカ３４からアンカプレートまでの間の部分には、図示しないタングプレートが摺動可能に取り付けられている。このタングプレートは、車両用シート１２に対する車両幅方向内側（ここでは右側）で車両用シート１２の下端部等に取り付けられた図示しないバックル装置に連結される。これにより、乗員Ｐがシートベルト３２を装着した状態となる。このシートベルト装着状態では、シートベルト３２のうちショルダアンカ３４とタングプレートとの間の部位であるショルダベルト３２Ａによって乗員Ｐの胸部Ｃ及び腹部Ｂが拘束される。また、このシートベルト装着状態では、シートベルト３２のうちタングプレートとアンカプレートとの間の部位である図示しないラップベルトによって乗員Ｐの腰部Ｗが拘束される。

（車両用サイドエアバッグ装置の構成）
図１及び図２に示されるように、車両用サイドエアバッグ装置４０は、インフレータ４４と、サイドエアバッグ４６と、ダクト（ソック）４８とを備えている。インフレータ４４は、作動することによりガスを発生し、サイドエアバッグ４６は、インフレータ４４からガスの供給を受けて乗員Ｐの側方で膨張展開する（図１及び図２図示状態）。ダクト４８は、サイドエアバッグ４６の内部に収容されており、インフレータ４４から発生するガスをサイドエアバッグ４６の上部及び下部に分配する。

サイドエアバッグ４６は、内部に収容したダクト４８と一緒に所定の折り畳み方で折り畳まれ、インフレータ４４と共にモジュール化され、シートバック１６の外側サイド部１６Ａ内に収納されている。以下の説明において、サイドエアバッグ４６に関して記載する前後上下の方向は、サイドエアバッグ４６が膨張展開した状態での方向であり、シートバック１６の前後上下の方向と略一致する方向である。

図１に示されるように、インフレータ４４は、所謂シリンダータイプのインフレータであり、円柱状に形成されている。このインフレータ４４は、軸線方向がシートバック１６の高さ方向に沿う姿勢すなわち前下がりに傾斜した姿勢で外サイドフレーム１８Ａの車両幅方向外側に配設されている。このインフレータ４４は、一例として乗員Ｐの腹部Ｂ付近の高さに配置されている。インフレータ４４の外周部からは、車両幅方向内側へ向けて上下一対のスタッドボルト（図示省略）が突出している。これらのスタッドボルトは、外サイドフレーム１８Ａを貫通している。これらのスタッドボルトには、それぞれ図示しないナットが螺合している。これにより、インフレータ４４が外サイドフレーム１８Ａに取り付けられている。なお、インフレータ４４の外周部から車両後方側へ突出したスタッドボルトが外サイドフレーム１８Ａに固定されたブラケット等を車両前方側から貫通してナットに螺合される構成（所謂背面締め）にしてもよい。

インフレータ４４の上端部又は下端部（ここでは下端部）には、噴出部４４Ａが設けられている。この噴出部４４Ａには、例えばインフレータ４４の周方向に並ぶ複数のガス噴出口が形成されており、インフレータ４４が起動（作動）した際には、複数のガス噴出口からガスが放射状に噴出する。このインフレータ４４には、図１に示されるように、車両に搭載された側突ＥＣＵ６０が電気的に接続されている。この側突ＥＣＵ６０には、側面衝突を検知する側突センサ６２が電気的に接続されている。側突ＥＣＵ６０は、側突センサ６２からの信号に基づいて側面衝突（の不可避）を検知した際にインフレータ４４を起動させる構成になっている。なお、側突ＥＣＵ６０に側面衝突を予知（予測）する衝突予知センサ（プリクラッシュセンサ）が電気的に接続されている場合には、衝突予知センサからの信号に基づいて側突ＥＣＵ６０が側面衝突を予知した際にインフレータ４４が起動される構成にしてもよい。

図１及び図２に示されるように、サイドエアバッグ４６は、インフレータ４４からガスの供給を受けて乗員Ｐと図示しない車体側部との間に膨張展開する。このサイドエアバッグ４６は、例えばナイロン系又はポリエステル系の布材が切り出されて形成された２枚の基布が互いに重ね合わされて外周縁部を縫製されることにより袋状に形成されている。なお、サイドエアバッグ４６の製造方法は上記に限らず適宜変更可能である。例えば１枚の基布が二つ折りにされてその外周縁部が縫製されることによりサイドエアバッグ４６が製造される構成にしてもよい。また例えば、自動織機による袋織り工法（所謂ＯＰＷ工法）によってサイドエアバッグ４６が製造される構成にしてもよい。

このサイドエアバッグ４６は、車両上下方向を長手とする長尺状に膨張展開する。このサイドエアバッグ４６は、乗員Ｐの頭部Ｈから腰部Ｗまでを拘束可能な大きさに形成されている。このサイドエアバッグ４６は、乗員Ｐの頭部Ｈを拘束する上方の頭部チャンバ４６Ａと、乗員Ｐの肩部Ｓから腰部Ｗまでを拘束する下方の下部チャンバ４６Ｂとを一体に備えている。

このサイドエアバッグ４６の膨張展開状態では、下部チャンバ４６Ｂの前縁部が前下がりに傾斜する。この下部チャンバ４６Ｂの前縁部と乗員Ｐの上腕部Ａとが摺接することにより、上腕部Ａが肩部Ｓ回りに上方側へ押し上げられるようになっている。これにより、胸部Ｃ及び腹部Ｂと下部チャンバ４６Ｂとの間に上腕部Ａが挟まることを抑制するようにしている。

下部チャンバ４６Ｂの後縁部の下部（ここでは乗員Ｐの腰部Ｗ及び腹部Ｂの高さ）からは、車両後方側へ向けてインフレータ接続部４６Ｃが延出されている。インフレータ接続部４６Ｃの上端部には、インフレータ４４の差し込み口が形成されており、当該差し込み口からインフレータ４４の下端部がインフレータ接続部４６Ｃ内に差し込まれている。

サイドエアバッグ４６の頭部チャンバ４６Ａは、車両幅方向から見て略矩形状に膨張展開する。膨張展開した頭部チャンバ４６Ａは、乗員Ｐの頭部Ｈに対して車両幅方向外側から接触又は近接して対向する。この頭部チャンバ４６Ａは、後方ダクト部４６Ａ１と前上部４６Ａ２１と前下部４６Ａ２２とによって構成されている。後方ダクト部４６Ａ１は、頭部チャンバ４６Ａの後部を構成しており、前上部４６Ａ２１及び前下部４６Ａ２２は、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２を構成している。前部４６Ａ２は、後方ダクト部４６Ａ１に比して車両前後方向の膨張幅が十分に大きく設定されている。

後方ダクト部４６Ａ１は、下部チャンバ４６Ｂの上端部から車両上方側へ膨張展開し、車両上下方向を軸方向とするダクト状（略円筒状）をなす。この後方ダクト部４６Ａ１は、シートベルト３２のショルダベルト３２Ａに対する乗員Ｐの頭部Ｈ側へ膨張展開する。膨張展開した後方ダクト部４６Ａ１は、頭部Ｈに対して車両幅方向外側かつ車両後方側に配置される。前上部４６Ａ２１は、後方ダクト部４６Ａ１の上部からショルダベルト３２Ａの車両上方側を通って車両前方側へ膨張展開し、車両前後方向を長手とする長尺状をなす。前下部４６Ａ２２は、前上部４６Ａ２１の前部側から車両下方側かつ車両後方側へ膨張展開し、車両前後方向を長手とする長尺状をなす。前上部４６Ａ２１及び前下部４６Ａ２２は、頭部Ｈより車両前方側まで膨張展開する。

前上部４６Ａ２１及び前下部４６Ａ２２は、サイドエアバッグ４６の基布を縫製した縫製部によって各々後部側が仕切られている。また、前下部４６Ａ２２と後方ダクト部４６Ａ１との間も上記の縫製部によって仕切られている。この縫製部は、例えばサイドエアバッグ４６の外周縁部を構成した縫製部の一部が延長されたものである。サイドエアバッグ４６が所謂ＯＰＷ工法で製造される場合、上記の縫製部の代わりとなる仕切り部がＯＰＷ工法によって形成される。

図１及び図２に示されるように、ダクト４８は、サイドエアバッグ４６の内部に収容されている。このダクト４８は、インフレータ４４からのガスをサイドエアバッグ４６内の上部及び下部（すなわち頭部チャンバ４６Ａ内及び下部チャンバ４６Ｂ内）へと導く機能を有している。このダクト４８は、三角錐台状に形成されたダクト本体部４８Ａと、ダクト本体部４８Ａの下部から車両後方側へ向けて延出されたインフレータ接続部４８Ｂとによって構成されている。

ダクト本体部４８Ａは、軸線方向がシートバック１６の高さ方向に沿う姿勢で下部チャンバ４６Ｂ内の後部側に収容されている。ダクト本体部４８Ａの上端部には、上側の開口部である上側噴出口５０が形成されており、ダクト本体部４８Ａの下端部には、下側の開口部である下側噴出口５２が形成されている。上側噴出口５０は、頭部チャンバ４６Ａの後部４６Ａ１内に向かって開口している。下側噴出口５２は、上側噴出口５０よりも十分に大きく形成されており、下部チャンバ４６Ｂの下部内で開口している。

インフレータ接続部４８Ｂは、サイドエアバッグ４６のインフレータ接続部４６Ｃ内に収容されており、インフレータ接続部４６Ｃの内側に重なっている。このインフレータ接続部４８Ｂの上端部には、インフレータ４４の差し込み口が形成されている。この差し込み口は、インフレータ接続部４６Ｃの上端部に形成された差し込み口の内側に配置されており、当該差し込み口からインフレータ４４の下端部がインフレータ接続部４８Ｂ内に差し込まれている。

上記のインフレータ４４、サイドエアバッグ４６及びダクト４８は、前述したようにモジュール化とされ、外側サイド部１６Ａ内に収納される。この収納状態では、折り畳まれたサイドエアバッグ４６の下部及び上下方向中間部が、外サイドフレーム１８Ａの車両幅方向外側面に沿ってシートバック１６の高さ方向に延在する。またこの収納状態では、折り畳まれたサイドエアバッグ４６の上部がシートバック１６の肩口から車両幅方向内側へ向けて延在する。折り畳まれたサイドエアバッグ４６の上端部は、ショルダベルト３２Ａに対して車両幅方向内側に配置される。

上記構成の車両用サイドエアバッグ装置４０では、インフレータ４４が作動すると、インフレータ４４の噴出部４４Ａから噴出するガスがインフレータ接続部４８Ｂ内からダクト本体部４８Ａ内に流れ込む。ダクト本体部４８Ａ内に流れ込んだガスは、ダクト本体部４８Ａの下側噴出口５２及び上側噴出口５０からサイドエアバッグ４６内へと噴出する。これにより、サイドエアバッグ４６が乗員Ｐの側方へ膨張展開する。

この膨張展開の際には、外側サイド部１６Ａの前面又は側面のうち少なくとも一方と、外側サイド部１６Ａの上面とにおいて、シートバック表皮２０に設定されたバーストライン部（開裂予定部）が開裂する。この開裂により、サイドエアバッグ４６が外側サイド部１６Ａの外側へ膨張展開する。サイドエアバッグ４６の下部チャンバ４６Ｂは、乗員Ｐの肩部Ｓ、胸部Ｃ、腹部Ｂ及び腰部Ｗの側方へ膨張展開し、サイドエアバッグ４６の頭部チャンバ４６Ａは、乗員Ｐの頭部Ｈの側方に膨張展開する。

頭部チャンバ４６Ａが膨張展開する際には、先ず頭部チャンバ４６Ａの後部である後方ダクト部４６Ａ１が、シートベルト３２のショルダベルト３２Ａに対する乗員Ｐの頭部Ｈ側へ膨張展開する。次いで、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２の上部である前上部４６Ａ２１が、後方ダクト部４６Ａ１の上部からショルダベルト３２Ａの車両上方側を通って車両前方側へ膨張展開する。その後、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２の下部である前下部４６Ａ２２が、前上部４６Ａ２１から車両下方側へ膨張展開する。

図２に示されるように、頭部チャンバ４６Ａは、膨張展開完了状態において、前部４６Ａ２の下端ＬＥが、車両前後方向視でショルダベルト３２Ａよりも車両上方側（詳細には車両上方側かつ車両幅方向内側）に位置するように形成されている。また、この頭部チャンバ４６Ａは、膨張展開完了状態において、前部４６Ａ２の下端ＬＥがシートバックフレーム１８の上端１８Ｕと同等以上の高さ（ここでは同等の高さ）に位置するように形成されている。このシートバックフレーム１８の上端１８Ｕの高さは、正規の着座姿勢で車両用シート１２に着座したＳＩＤ２ｓの顎Ｊの下端の高さと同等とされている。なお、正規の着座姿勢で車両用シート１２に着座したＳＩＤ２ｓの臀部の下端から顎Ｊの下端までの高さｈ（図１参照）は、約５６２ミリメートルである。

前下部４６Ａ２２の下端ＬＥとショルダベルト３２Ａとの上記の位置関係は、ショルダアンカ３４がＢピラーに対する高さ調節範囲の最上位置であるアッパモースト位置に位置し、かつ、車両用シート１２が車体に対する前後スライド調節範囲の最前位置であるフロントモースト位置に位置する状態でも維持されるように構成されている。

また、本実施形態では、図３に示されるように、サイドエアバッグ４６の膨張展開完了状態では、頭部チャンバ４６Ａの後方ダクト部４６Ａ１の前端ＦＥがショルダベルト３２Ａに対して車両後方側に離間して配置されるように構成されている。この状態は、ショルダアンカ３４がアッパモースト位置に位置し、かつ、車両用シート１２がフロントモースト位置に位置する状態でも維持されるように構成されている。

＜作用及び効果＞
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。

本実施形態では、乗員Ｐが３点式のシートベルト３２を用いて車両用シート１２に拘束される。この車両用シート１２のシートバック１６の外側サイド部１６Ａには、車両用サイドエアバッグ装置４０が搭載されている。この車両用サイドエアバッグ装置４０では、側突ＥＣＵ６０が側突センサ６２からの信号によって側面衝突を検知すると、インフレータ４４が側突ＥＣＵ６０によって起動される。これにより、インフレータ４４から発生するガスが、ダクト４８のインフレータ接続部４８Ｂを介してダクト４８のダクト本体部４８Ａ内へ流れ込む。ダクト本体部４８Ａ内へ流れ込んだガスは、ダクト本体部４８Ａの上端部及び下端部に形成された上側噴出口５０及び下側噴出口５２からサイドエアバッグ４６内へ噴出する。これにより、上方の頭部チャンバ４６Ａが乗員Ｐの頭部Ｈの側方へ膨張展開し、下方の下部チャンバ４６Ｂが乗員Ｐの肩部Ｓ、胸部Ｃ、腹部Ｂ及び腰部Ｗの側方へ膨張展開する。

頭部チャンバ４６Ａが膨張展開する際には、先ず後方ダクト部４６Ａ１がシートベルト３２のショルダベルト３２Ａに対する乗員Ｐの頭部Ｈ側へ膨張展開する。頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２は、ショルダベルト３２Ａの車両上方側を通って後方ダクト部４６Ａ１の上部から車両前方側へ膨張展開する。これにより、頭部チャンバ４６Ａが乗員Ｐの頭部Ｈに対して車両幅方向外側に近接又は接触して膨張展開する。頭部チャンバ４６Ａは、膨張展開完了状態において、前部４６Ａ２の下端ＬＥが車両前後方向視でショルダベルト３２Ａよりも車両上方側に位置するように形成されている。これにより、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２が膨張展開初期にショルダベルト３２Ａに不用意に引っ掛かることを効果的に抑制できる。その結果、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２を早期かつ適切に膨張展開させ、乗員Ｐの頭部Ｈの側方を頭部チャンバ４６Ａにより十分に覆うことが可能となるので、頭部Ｈの初期拘束性能を向上させることができる。

しかも、ショルダベルト３２Ａに対する頭部Ｈ側へ膨張展開する頭部チャンバ４６Ａを介して頭部Ｈがショルダベルト３２Ａからの反力を受けるため、頭部チャンバ４６Ａの内圧を低く設定することができる。その結果、頭部チャンバ部４６Ａの車両幅方向の厚み（容量）を減らすことができるので、頭部チャンバ４６Ａの膨張展開の早期化に寄与する。また、ショルダベルト３２Ａによって頭部チャンバ４６Ａを押さえることができるので、例えば斜め側面衝突時にも遅れなく頭部Ｈを拘束することができる。

また、本実施形態では、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２の膨張展開完了状態において、当該前部４６Ａ２の下端ＬＥがシートバックフレーム１８の上端１８Ｕと同等以上の高さに位置する。このように前部４６Ａ２の下端ＬＥの高さが設定されることにより、前部４６Ａ２が膨張展開初期にショルダベルト３２Ａに不用意に引っ掛かることを効果的に抑制できる。

さらに、本実施形態では、サイドエアバッグ４６の膨張展開完了状態では、頭部チャンバ４６Ａの後方ダクト部４６Ａ１の前端がショルダベルト３２Ａに対して車両後方側に離間して配置される（図３参照）。このように後方ダクト部４６Ａ１の前端ＦＥの位置が設定されることにより、後方ダクト部４６Ａ１が膨張展開時にショルダベルト３２Ａに不用意に引っ掛かることを抑制できる。その結果、その後の前部４６Ａ２の膨張展開を安定させることができる。

次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第１の実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第１の実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。

＜第２の実施形態＞
図４には、本発明の第２実施形態に係る乗員保護装置１０におけるサイドエアバッグ４６の折り畳み途中の状態が概略的な側面図にて示されている。なお図４～図６では、インフレータ接続部４６Ｃの図示を省略している。この実施形態では、サイドエアバッグ４６が折り畳まれる際には、図４に示されるように、頭部チャンバ４６Ａの前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１側へ折り畳まれる。具体的には、前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１の内側に折り畳まれる。その後、頭部チャンバ４６Ａ及び下部チャンバ４６Ｂがロール折や蛇腹折りなどの所定の折り畳み方で折り畳まれる。

この実施形態では、頭部チャンバ４６Ａが膨張展開する際には、先ず図５Ａに示されるように、後方ダクト部４６Ａ１が下部チャンバ４６Ｂの上端から車両上方側へ膨張展開する。次いで、前部４６Ａ２が後方ダクト部４６Ａ１の上部からショルダベルト３２Ａの車両上方側を通って車両前方側へ膨張展開する。この際には、図５Ｂに示されるように、前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１の内側に折り畳まれた状態のままで前部４６Ａ２が膨張展開する。つまり、前部４６Ａ２の膨張展開初期には、前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１の内側に折り畳まれた状態のままとなる。これにより、前部４６Ａ２が膨張展開初期にショルダベルト３２Ａに不用意に引っ掛かることが効果的に抑制される。

その後、頭部チャンバ４６Ａの内圧上昇に伴い、図５Ｃに示されるように、折り畳まれた前下部４６Ａ２２が車両下方側へ膨張展開する。これにより、前部４６Ａ２の上下寸法が拡大される。このように構成されているので、前部４６Ａ２の上下寸法が大きく設定された頭部チャンバ４６Ａであっても、ショルダベルト３２Ａを乗り越えて車両前方側へ膨張展開することができ、頭部Ｈをより適切に保護することができる。しかも、前上部４６Ａ２１の内側に折り畳まれていた前下部４６Ａ２２は、車両下方側へ向かって膨張展開する（真下に向かって膨張展開する）ので、膨張展開する前下部４６Ａ２２が頭部Ｈやショルダベルト３２Ａと不用意に干渉することを抑制できる。

なお、上記第２実施形態では、前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１の内側に折り畳まれる構成にしたが、これに限らず、前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１に対する厚さ方向の一側又は他側に折り重ねられる構成にしてもよい。この点は、以下に説明する第３の実施形態においても同様である。

＜第３の実施形態＞
図６には、本発明の第３実施形態に係る乗員保護装置１０におけるサイドエアバッグ４６の折り畳み途中の状態が側面図にて示されている。この実施形態では、第２実施形態と同様に、サイドエアバッグ４６が折り畳まれる際には、頭部チャンバ４６Ａの前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１側へ折り畳まれる。その状態で、前上部４６Ａ２１と前下部４６Ａ２２とがティアシームＴＳにより縫製される。その後、頭部チャンバ４６Ａ及び下部チャンバ４６Ｂがロール折や蛇腹折りなどの所定の折り畳み方で折り畳まれる。

この実施形態においても、頭部チャンバ４６Ａの前部４６Ａ２の膨張展開初期には、前下部４６Ａ２２が前上部４６Ａ２１の内側に折り畳まれた状態のままとなるので、前部４６Ａ２がショルダベルト３２Ａに不用意に引っ掛かることが効果的に抑制される。しかも、ティアシームＴＳによって上記の折り畳み状態が保持されるので、前部４６Ａ２の膨張展開が安定する。その後、前部チャンバ４６Ａ２の内圧上昇に伴いティアシームＴＳが切れることにより、前下部４６Ａ２２が車両下方側へ膨張展開する。

なお、上記各実施形態において、サイドエアバッグ４６やダクト４８の形状及び大きさは単なる一例であり、適宜変更可能である。

その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。

１０ 乗員保護装置
１２ 車両用シート
１４ シートクッション
１６ シートバック
１６Ａ 外側サイド部（車両幅方向外側の側部）
１８Ａ 外サイドフレーム（サイドフレーム）
３０ 車両用シートベルト装置
３２ ３点式のシートベルト
３２Ａ ショルダベルト
４０ 車両用サイドエアバッグ装置
４４ インフレータ
４６ サイドエアバッグ
４６Ａ 頭部チャンバ
４６Ｂ 下部チャンバ
４６Ａ１ 後部
４６Ａ２ 前部
４６Ａ２１ 前上部
４６Ａ２２ 前下部
Ｐ 乗員
Ｈ 頭部

Claims (6)

1. ３点式のシートベルトを用いて乗員が拘束される車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部に搭載される車両用サイドエアバッグ装置であって、
   車両の側面衝突が検知又は予知された場合にガスを発生させるインフレータと、
   前記側部内に折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからガスの供給を受けて前記側部から乗員の側方へ膨張展開すると共に、上方の頭部チャンバと下方の下部チャンバとを有するサイドエアバッグと、
   を備え、
   前記頭部チャンバは、乗員が締めている前記シートベルトのショルダベルトよりも乗員の頭部側において膨張展開し、車両上下方向を軸方向とするダクト形状をなす後部と、ダクト形状の前記後部の上部から前記ショルダベルトの車両上方側を通って車両前方側へ膨張展開する前部とを有し、
   さらに前記前部は、前記後部から車両前方側へ膨張展開する前上部と、仕切り部によって前記前上部と仕切られ前記前上部から車両下方側且つ車両後方側へ膨張展開する前下部とを有し、
   少なくとも前記前部の膨張展開初期において、前記前部の下端が車両前後方向視で前記ショルダベルトよりも車両上方側に位置する車両用サイドエアバッグ装置。
2. ３点式のシートベルトを用いて乗員が拘束される車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部に搭載される車両用サイドエアバッグ装置であって、
   車両の側面衝突が検知又は予知された場合にガスを発生させるインフレータと、
   前記側部内に折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからガスの供給を受けて前記側部から乗員の側方へ膨張展開すると共に、上方の頭部チャンバと下方の下部チャンバとを有するサイドエアバッグと、
   を備え、
   前記頭部チャンバは、乗員が締めている前記シートベルトのショルダベルトよりも乗員の頭部側において膨張展開する後部と、前記ショルダベルトの車両上方側を通って前記後部から車両前方側へ膨張展開する前部とを有し、
   少なくとも前記前部の膨張展開初期において、前記前部の下端が車両前後方向視で前記ショルダベルトよりも車両上方側に位置し、
   前記前部は、前記後部から車両前方側へ膨張展開する前上部と、当該前上部から車両下方側へ膨張展開する前下部とを有し、
   折り畳み状態の前記サイドエアバッグでは、前記前下部が前記前上部側へ折り畳まれている車両用サイドエアバッグ装置。
3. 前記前下部と前記前上部とは、前記前下部が前記前上部側へ折り畳まれた状態でティアシームにより縫製されている請求項２に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
4. ３点式のシートベルトを用いて乗員が拘束される車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部内に折り畳まれた状態で収納され、車両の側面衝突が検知又は予知された場合にインフレータからガスの供給を受けて前記側部から乗員の側方へ膨張展開すると共に、上方の頭部チャンバと下方の下部チャンバとを有するサイドエアバッグの折り畳み方法であって、
   前記頭部チャンバは、車両上下方向を軸方向とするダクト形状をなす後部と、ダクト形状の前記後部から車両前方側へ膨張展開する前部とを有し、
   さらに前記前部は、前記後部から車両前方側へ膨張展開する前上部と、当該前上部から車両下方側へ膨張展開する前下部とを有し、
   前記サイドエアバッグは、前記前下部が前記前上部側へ折り畳まれ、その後、前記頭部チャンバ及び前記下部チャンバが車両上下方向の軸まわりにロール折り又は車両前後方向に沿って蛇腹折りで折り畳まれるサイドエアバッグの折り畳み方法。
5. 前記前下部が前記前上部側へ折り畳まれた状態で、前記前上部と前記前下部とがティアシームにより縫製される工程を含む請求項４に記載のサイドエアバッグの折り畳み方法。
6. シートクッション及びシートバックを有する車両用シートと、
   前記車両用シートに乗員を拘束する３点式のシートベルトを有する車両用シートベルト装置と、
   前記シートバックの車両幅方向外側の側部に搭載された請求項１～請求項３の何れか１項に記載の車両用サイドエアバッグ装置と、
   を備えた乗員保護装置。