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JP7504959B2 - 不織布の製造方法 - Google Patents

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JP7504959B2 JP2022158172A JP2022158172A JP7504959B2 JP 7504959 B2 JP7504959 B2 JP 7504959B2 JP 2022158172 A JP2022158172 A JP 2022158172A JP 2022158172 A JP2022158172 A JP 2022158172A JP 7504959 B2 JP7504959 B2 JP 7504959B2
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Description

本発明は、吸収性物品に関する。
紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面シートとして、不織布が用いられることが多い。この不織布について、柔らかさ等の風合い、クッション性といった種々の機能をもたせる技術が知られている。
例えば、潰れにくくクッション性がよく、かつ液を流れやすくして透孔からの吸収速度を速めた不織布が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の不織布は、シート状の不織布を平面視した側の第1面側に突出する第1突出部と、前記第1面側とは反対側の第2面側に突出する第2突出部とを有している。第1突出部及び第2突出部は、不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに連続して配され、複数の第2突出部の頂部に透孔が設けられている。この透孔の周囲の繊維が透孔の中心に向かって配向していることにより、潰れにくくクッション性がよく、しかも液が流れやすいというものである。
特開2013-133574号公報
吸収性物品に対する使用者の要求は、よりいっそう厳しいものとなっている。吸収時間及び液流れ距離がよりいっそう短縮された吸収性物品が求められている。
本発明は、吸収時間及び液流れ距離をよりいっそう短縮することが可能な吸収性物品に関する。
本発明は、肌当接面を有する液透過性の表面シートと、前記表面シートの非肌当接面側に配置された吸収体とを備えた吸収性物品であって、前記表面シートは、前記肌当接面側に突出して配列された複数の畝部と、隣り合う畝部間に設けられた底部とを有する不織布からなり、前記複数の畝部のそれぞれは、頂部と、前記頂部を支持する壁部とを備え、前記壁部は、前記底部に対して略垂直に延在しており、前記底部には、前記肌当接面側から前記非肌当接面側に向けて貫通する開孔が形成されている吸収性物品に関する。
本発明に係る吸収性物品は、吸収時間及び液流れ距離をよりいっそう短縮することが可能である。
本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつの基本構成を示す平面図である。 図1のI-I’線に沿った断面図である。 不織布の一例を示す部分斜視図である。 図3のII-II’線に沿った断面図である。 壁部領域の角度の求め方を説明する図である。 図3のIII-III’線に沿った断面図である。 図3のIV-IV’線に沿った断面図である。 本実施形態の吸収性物品に用いられる不織布の好ましい製造方法の一部を模式的に示す説明図であり、(A)は支持体雄材上に繊維ウエブを配し、支持体雌材を前記繊維ウエブ上から支持体雄材に差し込む工程を示す説明図であり、(B)は支持体雌材の上から第1の熱風を吹き付けて繊維ウエブを賦形する工程を示す説明図であり、(C)は支持体雌材を取り除いて、賦形された繊維ウエブの上方から第2の熱風を吹き付けて繊維同士を融着させる工程を示す説明図である。 支持体雄材の平面図である。 支持体雄材の突起の上端部を説明する側面図である。 支持体雌材の一例を示す平面図である。 支持体雄材と支持体雌材とを組み合わせた状態の一例を示す平面図である。 支持体雄材と支持体雌材とを組み合わせた状態の他の例を示す平面図である。 繊維の配向性の測定方法を説明する図であり、(A)は繊維のSEM画像であり、(B)はOHP繊維画像であり、(C)はパワースペクトルであり、(D)は平均振幅の角度分布図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつ10(以下、単に「おむつ10」ともいう)の基本的な構造が示されている。おむつ10は、図1及び図2に示すように、肌当接面を形成する液透過性の表面シート2と、この表面シート2の非肌当接面側に配置された裏面シート3と、これら両シート2,3の間に配置された吸収体4とを備えている。表面シート2と吸収体4とは、例えばホットメルト型接着剤等の接着剤やヒートシール等により一体化されている。
なお、肌当接面とは、おむつ10又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面とは、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。裏面シート3は、吸収性物品の裏面シートに通常使用されている材料を用いて形成することができる。例えば、液難透過性の樹脂フィルム、撥水性の樹脂フィルム、又は樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等、場合によっては液透過性の不織布が、裏面シート3として用いられる。
おむつ10は、着用時に着用者の前後方向と一致する方向である長手方向Yと、おむつ10を図1に示すように平面状に広げた状態において、長手方向Yと交差する幅方向Xとを有している。また、おむつ10は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部A、着用時に着用者の背側に配される背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に位置する股下部Cを、長手方向Yに有している。おむつ10は、展開型の使い捨ておむつであり、背側部Bの両側縁部にファスニングテープ7が設けられている。腹側部Aの外表面には、そのファスニングテープ7を止着するランディングゾーン8が設けられている。
おむつ10における吸収体4は、吸収性コア4aとこれを包むコアラップシート4bとを備えている。吸収性コア4aは、例えばパルプ繊維等の吸液性繊維の積繊体や、吸液性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体から構成することができる。吸液性繊維としては、
例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等のセルロース系の親水性繊維が挙げられる。
セルロース系の親水性繊維以外に、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる繊維を界面活性剤等により親水化したものを用いることもできる。コアラップシート4bとしては、例えば、ティッシュペーパーや透水性の不織布が用いられる。コアラップシート4bは、1枚で吸収性コア4aの全体を包んでいてもよいし、2枚以上を組み合わせて吸収性コア4aを包んでいてもよい。
おむつ10における長手方向Yの両側には、弾性部材5aを有する立体ギャザー形成用のシート5が配されている。弾性部材5aの収縮により、着用状態における股下部Cに、着用者の肌側に向かって起立する立体ギャザーが形成される。また、股下部Cにおける脚周りに配される部位には、レッグ部弾性部材6が伸長状態で配される。レッグ部弾性部材6の収縮によって、着用状態における股下部Cに着用者の脚周りへのフィット性を向上させるレッグギャザーが形成される。
本実施形態のおむつ10における表面シート2は、一方向に延びる筋状の凹凸構造を肌当接面に有する不織布1から構成されている。表面シート2における凹凸構造の延びる方向は、おむつ10の長手方向Yと一致しているが、必ずしも一致していなくてもよい。凹凸構造は、おむつ10の幅方向Xに延びる場合もある。
不織布1に用いることができる繊維材料は、特に限定されない。具体的には、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維等のポリオレフィン繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維;芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維などが挙げられる。このような複合繊維としては、例えば、鞘成分がPE又は低融点PPである芯鞘構造の繊維などが挙げられる。芯鞘構造の繊維の代表例としては、PET(芯)とPE(鞘)、PP(芯)とPE(鞘)、PP(芯)と低融点PP(鞘)等の芯鞘構造の繊維等が挙げられる。
繊維材料は、PE繊維、PP繊維等のポリオレフィン系繊維、PE複合繊維、又はPP複合繊維を含むことが好ましい。PE複合繊維は、PETとPEとを含む複合組成であり、PETと低融点PPとを含むことが好ましい。より具体的には、PET(芯)とPE(鞘)、PET(芯)と低融点PP(鞘)が挙げられる。これらの繊維は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いて、不織布を構成することができる。また、不織布には、熱可塑性繊維以外の繊維が含まれていてもよい。
以下、図3~7を参照して、表面シート2を構成する不織布1の一例を説明する。図3に示す不織布1は、底部14を介して第一方向(おむつ10における幅方向X)に隣り合う複数の畝部12が、肌当接面側において、第一方向と交差する第二方向(おむつ10における長手方向Y)に沿って連続的に延びている。
また、不織布1は、隣り合う畝部12間に、底部14から肌当接面側に向けて突出して設けられた複数の鞍部16を有している。鞍部16は、隣り合う畝部12を繋ぐよう、畝部12が延びる方向(第二方向)と直交する方向(第二方向)に延びている。鞍部16は、畝部12が延びる方向に沿う断面(図7参照)においては、上向きに凸であり、畝部12が延びる方向に直交する方向に沿う断面(図6参照)においては、下向きに凸である。すなわち、鞍部16は、不織布1の厚み方向において、直交する2方向で逆向きに湾曲した形状を有している。なお、不織布1は、鞍部16を備えない構成としても良い。
本実施形態において、底部14は、畝部12と鞍部16とによって囲まれた領域に相当
する。底部14のそれぞれは、少なくとも一部に、肌当接面側から非肌当接面側に向けて厚み方向に貫通した開孔15が設けられている。開孔15は、繊維間に形成される微細な孔径とは異なり、不織布1に意識的に形成される孔であり、繊維間に形成される微細な孔径よりも遥かに大きい面積を有している。開孔15の大きさは、底部14の幅等に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1mm2以上の面積を有することが望まれる。
本実施形態において、開孔15は、畝部12と鞍部16とによって囲まれた底部14の略全域に形成されており、その形状は、平面視において矩形状に形成されている。なお、開孔15の形状は、矩形状に限定されず、例えば円形等の種々の形状を採用することも可能である。また、畝部12と鞍部16とによって囲まれた底部14の一部にのみ開孔15が形成される構成とすることも可能であり、この場合には、その位置は特に限定されず、任意の位置に開孔15を形成することができる。
複数の畝部12は、図4に示すように、底部14から肌当接面側に突出して一方向に配列されている。これにより、畝部12が隣り合う方向における液体の拡散を抑制することができる。不織布1は、底部14が非肌当接面側となる。畝部12は、連続して延びている方向に沿って同等の高さを有している。本明細書において高さが「同等」とは、マイクロスコープVHX900(株式会社キーエンス製)を用いて測定した高さが、測定平均値に対して0.8倍以上1.2倍以下の範囲内であることをさす。
それぞれの畝部12は、頂部(以下、「頂部領域12a」という)と、頂部領域12aを支持する一対の壁部(以下、「壁部領域12b」という)とを有している。壁部領域12bは、底部14に対して略垂直に延在するよう形成されている。壁部領域12bの全体が、底部14に対して略垂直に延在することが好ましいが、壁部領域12bの一部のみが、底部14に対して略垂直に延在していてもよい。
本明細書における「略垂直」とは、図5に示す角度θが厳密に90°である場合だけでなく、60°以上90°以下の実質的に90°と認められる角度であることをさす。ここで、角度θは、不織布1の平面に対する壁部領域12bの交差角度を意味している。具体的には、図5に示すように、畝部12が延びる方向と直交する断面(図2に示すII-II’断面)において、壁部領域12bの中心線SLと、隣り合う底部14の下面を繋いだ直線HLとが成す角のうちの内角の角度をさす。この角度θは、II-II’断面の顕微鏡写真を観察して求めることができる。
図5に示す例では、壁部領域12bが頂部領域12aと底部14との間において略直線状に延在しているため、壁部領域12bの全域が不織布1の肌当接面に対して略垂直に立設されている。しかし、これに限定されるものではなく、壁部領域12bが頂部領域12aと底部14との間において湾曲状や波状に延在する構成としても良い。この場合には、頂部領域12aと壁部領域12bとの境界点と、底部14と壁部領域12bとの境界点とを結ぶ線を上記中心線SLとして、上記角度θを特定するものとする。
畝部12が延びる方向と直交する方向において、畝部12と鞍部16とは、図6に示すように、交互に配置されている。鞍部16は、図6及び図7に示すように、底部14からの高さが畝部12より小さい、すなわち、畝部12よりも低い高さを有している。具体的には、底部14から鞍部16までの厚み方向の距離は、頂部領域12aから鞍部16までの厚み方向の距離の0.1~10倍程度である。また、畝部12と鞍部16との高さの差(Δh)は、0.5~7mm程度とすることができる。
鞍部16が下向きに凸となる断面(例えば図6)においては、鞍部16の曲率は、隣り合う頂部領域12a同士の距離dに依存する。隣り合う頂部領域12aの距離dが小さい
ほど、鞍部16の曲率は大きくなる。この場合、鞍部16の曲率半径は、例えば上述のマイクロスコープを用いて、鞍部16の縁の曲率半径を測定することにより確認することができる。鞍部16の縁の曲率半径は、例えば鞍部16の縁に肌当接面側から仮想面を想定し、仮想面に接する円の半径を測定して求めることができる。
鞍部16が上向きに凸となる断面(例えば図7)においても、鞍部16の曲率半径を求めることができる。この場合には、鞍部の縁に非肌当接面側から仮想面を想定し、仮想面に接する円の半径を測定することで、鞍部16の縁の曲率半径を求めることができる。このような鞍部16は、例えば後述する方法で不織布1を製造する際に、形成することができる。
頂部領域12aから鞍部16までの厚み方向の距離は、次のようにして求めることができる。すなわち、水平な台の表面に底部14が当接するよう不織布1を設置し、鞍部16が下向きに凸となる断面(例えば図6)において、水平な台から頂部領域12aまでの高さと、鞍部16までの高さを測定する。このようにして得た水平な台から頂部領域12aまでの高さと、鞍部16までの高さとの差が、頂部領域12aから鞍部16までの厚み方向の距離に相当する。水平な台からの高さの測定には、いずれも上述のマイクロスコープを用いる。このような鞍部16は、例えば後述する不織布1の製造方法によって得ることができる。
図7に示すように、鞍部16は、一対の側部16bを有している。この側部16bは、畝部12の壁部領域12bと同様に、底部14に対して略垂直である。このため、鞍部16においても、畝部12と同様に底部14へ向かう液体の流れが促進される。特に、畝部12が鞍部16より高いことによって、肌当接面に接触した液体は、畝部12から鞍部16を経由して底部14の開孔15へ容易に導かれる。また、畝部12の延びる方向がおむつ10の長手方向と一致している場合、鞍部16による液体の堰き止め効果は、前後方向の液漏れ防止効果の向上につながる。
畝部12の壁部領域12bにおいては、繊維が不織布の厚み方向に配向している。「繊維が不織布の厚み方向に配向している」とは、繊維が不織布1の平面(肌当接面及び非肌当接面)に対して略垂直に配向していることを意味する。壁部領域12bにおける繊維が略垂直に配向していることによって、畝部12は押圧力を受けても高さ方向に変形し難く、形状を維持することができる。
ここで、図14を参照して、繊維の配向性の測定方法を説明する。
なお、壁部領域12bにおける繊維の配向性については、畝部12が延びる方向と直交する方向の断面(図4に示すII-II’断面)、及び畝部12が延びる方向に沿った断面(図7に示すIV-IV’断面)の双方について配向角θori及び配向強度を調べる。そして、
これら双方の断面において、配向角θoriが60°以上120°以下であり、かつ、配向
強度が1.05以上である場合に、「繊維が不織布の厚み方向に配向している」(すなわち、「繊維が不織布の平面に対して略垂直に配向している」)というものとする。
まず、所定の断面における壁部領域12bの繊維を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-5100)により撮影して、図14(A)に示すようなSEM画像を得る。撮影する際には、測定する繊維が10本以上計測できる倍率(100~300倍)に調整する。
得られたSEM画像を印刷し、OHPシート上に繊維をなぞって、図14(B)に示すようなOHP繊維画像を得る。OHP繊維画像をスキャナで、白黒二値化モードで読み取ってパーソナルコンピュータ内に取り込む。
二値化して取り込んだ画像を、繊維配向解析プログラムを用いてフーリエ変換して、図14(C)に示すようなパワースペクトルを得る。繊維配向解析プログラムとしては、(表面繊維配向解析プログラム FiberOri8single03.exe(江前敏晴 東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 製紙科学研究室公開))を用いる。これを楕円近似して、図14(D)に示すような平均振幅の角度分布図を得る。この角度分布図から、配向角と配向強度とを求めることができる。図14(D)に示す角度分布図中のθoriが配向角
であり、近似楕円における長軸LAと短軸SAとの比(LA/SA)が配向強度である。
配向角θoriは、繊維が最も配向している角度を示し、配向強度(LA/SA)はその
配向角θoriにおける強度を示している。壁部領域12bの測定においては、配向角θoriが60°以上120°以下であれば、観察している断面において、繊維が略垂直に配向していると判断する。配向角θoriは、75°以上105°以下が好ましい。配向強度の値
が大きいほど繊維の向きが揃っていることを示す。配向強度が1.05以上の場合、配向しているとする。断面中の3カ所の領域について測定し、平均値をサンプルの配向角及び配向強度とする。
上述の繊維配向性は、繊維の配向角と配向強度からなる概念である。繊維の配向角は、配位の方向が異なる複数の繊維が、繊維全体として配位している方向を示す概念である。したがって、繊維の集合体の形状を数値化したものといえる。繊維の配向強度は、配向角を示す繊維の量を表す概念である。配向角度は、1.05未満では、ほとんど配向しておらず、1.05以上で配向を有していると言える。
壁部領域12bにおける繊維の配向角oriは、60°以上であることが好ましく、75
°以上であることがより好ましく、また、120°以下であることが好ましく、105°以下であることがより好ましい。壁部領域12bの繊維の配向強度は、1.05以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。
不織布1は、図4に示したように畝部12の非肌当接面側に中空領域18を有している。本明細書における「中空領域」とは、実質的に不織布の繊維で満たされていない空間であり、具体的には、後述する方法により求められる繊維密度が10本/mm未満であることを指す。中空領域18における繊維密度は、小さいほど好ましい。中空領域18は、畝部12が延びる方向で連続した流路として作用し、おむつ10において吸収体4への液体の移動を促進する。中空領域18を有することによって、不織布1はクッション性が高められるとともに、厚み方向に潰れにくい構造となる。しかも中空領域18は、肌当接面への液体の戻りを抑制する効果も備えている。
繊維密度は、不織布1の断面を観察して、以下の手法により測定することができる。不織布1は、測定対象の部位(例えば、壁部領域12b間)を通るように厚み方向に切断する。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-6000Plus)を使用して切断面を拡大観察し、一定面積の切断面内の切断されている繊維の断面を数える。拡大観察は、繊維断面が30本から60本程度計測できる倍率(150倍以上500倍以下)に調節する。次に、1mm当たりの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm)とする。3カ所の測定結果を平均して、そのサンプルの繊維密度とする。
本実施形態のおむつ10は、表面シート2として上述したような不織布1を備えているので、使用の際、液体が肌当接面側から内部に短時間で浸透でき、液体の引き込み性が優れている。また、浸透した液体が肌当接面に向かったとしても、肌当接面から流れ出るおそれが少ない。換言すれば、本実施形態のおむつ10は、底部14に対して略垂直に立設された壁部領域12bと、底部14に設けられた開孔15とを有する不織布1を表面シー
ト2として用いることにより、特許文献1の不織布を表面シートとして用いる場合と比較して、吸収時間及び液流れ距離をよりいっそう短縮することが可能となる。こうした特性は、後述する方法により吸収時間及び液流れ距離、さらに液戻り量を測定して確認することができる。
すなわち、特許文献1の不織布では、各第1突出部が頂部に丸みをもった円錐台形状又は半球状に形成されている(特許文献1の段落[0012])。これに対し、本実施形態に係る不織布1は、畝部12における壁部領域12bの傾斜角度が特許文献1よりも急であり、それぞれ底部14に対して略垂直に立設される。これにより、肌当接面上を流れる液体を各畝部12によって堰き止め、底部14に向けて効果的に誘導することが可能となる。また、本実施形態に係る不織布1は、底部14に開孔15が設けられることにより、畝部12の壁部領域12bによって底部14に誘導された液体を吸収体4に向けて更に誘導することが可能となる。このように、本実施形態に係る不織布1では、底部14に対して略垂直に立設された壁部領域12bと、底部14に設けられた開孔15とが相乗的に作用し合うことによって、特許文献1の不織布と比較して、吸収時間及び液流れ距離をより短縮することが可能となる。
特に、畝部12の延在方向がおむつ10の長手方向と一致している場合、液体のこうした移動は、横漏れ防止効果の向上につながる。また、隣り合う畝部12を繋ぐように鞍部16が設けられることにより、畝部12だけではなく鞍部16によっても液体の堰き止め効果を発揮することが可能となるため、吸収時間及び液流れ距離をより短縮することが可能となる。さらに、鞍部16が畝部12よりも低くなるよう形成されることにより、畝部12→鞍部16→開孔15→吸収体4に至る液の流れが促進されるため、吸収時間及び液流れ距離をよりいっそう短縮することが可能となる。
また、本実施形態に係る不織布1は、畝部12の壁部領域12bがそれぞれ底部14に対して略垂直に立設されることにより、底部14から頂部領域12aまでの距離が大きいかさ高の不織布1となる。このため、本実施形態に係る不織布1では、特許文献1の不織布と比較して、着用者の肌と吸収体4との距離が大きく、吸収体4に吸収された液体が肌当接面に戻りにくいという効果も得られる。
特に、本実施形態に係る不織布1は、壁部領域12bの繊維が不織布1の厚み方向に向けて配向しているため、クッション性が高く、潰れにくい。このため、着用中において、着用者の肌と吸収体4との距離をより効果的に維持することが可能となるため、液戻りの抑制効果がより優れたものとなる。また、畝部12が非肌当接面側に中空領域18を有することにより、吸収体4からの液戻りをより効果的に抑制することが可能となる。
以下に、図8~11を参照して、不織布1の製造方法の好ましい実施形態を説明する。
本実施形態の不織布1の製造にあたっては、まず、図8(A)に示すように、支持体雄材120の上に繊維ウエブ110を載置し、繊維ウエブ110の上から支持体雌材130で押し付ける。支持体雄材120は、図9に示すように、一方向とそれに直交する方向に突起121が間隔を空けて配置されている。突起121は、図10(A)に示すように、上端部の全域に尖鋭部124を有している。なお、支持体雄材120に設けられる突起121は、図10(A)に示す形状に限定されず、例えば、図10(B)に示すように、上端部の一部に尖鋭部124Aを有する突起121Aや、図10(C)に示すように、上端部の一部に角柱状の突起部124Bを有する突起121Bであっても良い。支持体雌材130には、図11に示すように、一方向に連続した突起131が複数設けられている。
支持体雄材120は、不織布1の畝部12と鞍部16とで囲まれる底部14が賦形される位置に対応して、複数の突起121を有する。隣り合う突起121同士の間は、畝部1
2が賦形される位置に対応する凹部122とされている。これにより、支持体雄材120は凹凸形状を有しており、突起121と凹部122とが平面視異なる方向に交互に配されている。凹部122の基部123は、熱風が通過できるような構造である。
この実施形態においては、不織布1を製造する支持体は、機械流れ方向(MD方向)が不織布1のY方向に、機械流れ方向に直交する幅方向(CD方向)が不織布1のX方向に相当する。ただし、「異なる方向」は、Y方向及びX方向に限定されない。支持体雄材120の突起121の高さが3mm以上であれば、クッション感のある不織布1を製造することができる。突起121の高さは、5mm以上がより好ましく、7mm以上が最も好ましい。
突起121は、角柱及び円柱のいずれであってもよい。図示する例では、平面視において、不織布1のMD方向に対し四角形状であるが、ひし形とすることもできる。突起121は、角柱で平面視において正方形であることが好ましい。この場合には、繊維が支持体雄材120により入り込んで、不織布1の形状が保持され、不織布1の厚さを確保しやすくなる。
不織布1の形状の保持のしやすさを考慮すると、平面視した突起121の一つの上面の面積は3mm以上であることが好ましい。また、隣り合う突起121間の距離は、平面視において2mm以上であることが好ましい。この場合には繊維を効果的に押し込むスペースを確保することができる。
支持体雌材130は、支持体雄材120の凹部122に対応し、平面視において一方向に連続する突起131を有する。隣り合う突起131間は、支持体雄材120の突起121に対応する凹部132とされている。これにより、支持体雌材130は、凹凸形状を有しており、突起131と凹部132とが交互に配されている。
支持体雌材130における突起131間の間隔は、支持体雄材120における突起121の幅よりも広い。突起131間の間隔は、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の突起131とで繊維ウエブ110を挟みこんで、繊維が厚み方向に配向する壁部領域12bを好適に賦形できるように、適宜設定される。支持体雌材130における突起131は、支持体雄材120における突起121同士の間に挿入される必要がある。このため、突起131は0.5mm以上の長さを有することが好ましい。
支持体雄材120における突起121と、支持体雌材130における凹部132とを嵌合させて、平面方向に連続した不織布1が得られるように、突起131のピッチが設定される。具体的には、突起131のピッチは、支持体雄材120における突起121の平面視における一辺の長さより1mm以上長いことが好ましい。なお、突起121の上面形状が円形、又は長円形の場合、突起121の上面の一辺の長さは、その直径又は長径の長さとする。
図8(A)に示した繊維ウエブ110は、カード機(図示せず)からウエブを賦形する位置に供給する。繊維ウエブは、親水化処理された熱可塑性繊維を含んでいる。繊維ウエブ110上から、図8(B)に示すように支持体雌材130を押し込む。このとき、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の凹部132とが嵌合し、支持体雄材120の凹部122と支持体雌材130の突起131とが嵌合する。支持体雄材120と支持体雌材130とは、図12に示すように組み合わされる。図12中、繊維ウエブは省略している。
繊維ウエブ110は、不織布とは異なって繊維の移動の自由度が高い。そのため、繊維
ウエブ110の繊維は、支持体雄材120と支持体雌材130との間に挟まれた際には、その状態に応じて所定の方向に配向する。
図8(B)に示すように、支持体雄材120における突起121の側面と、支持体雌材130における突起131の側面とに挟まれた領域112bでは、繊維は厚み方向に配向する。一方、支持体雄材120の凹部122と支持体雌材130の突起131の端面との間の領域112aでは、繊維が平面方向に配向する。支持体雌材130を押し付けているので、領域112aで平面方向に配向した繊維は、他の領域112bより密な状態である。
図12に示すように、支持体雄材120における隣り合う突起121間の凹部122のうち、支持体雌材130における凹部132に対応する部分122aには、支持体雌材130の突起131が入り込まない。このため、図示しない繊維ウエブにおいては、支持体雄材120の突起121と、支持体雌材130の突起131とで囲まれた領域122a内で繊維が引っ張られる。こうして繊維の配向の異なる領域が形成されて、鞍部16に相当する繊維層となる。
この状態で、図8(B)に示すように支持体雌材130の側から繊維ウエブ110に向けて第1の熱風W1を吹き付けることが好ましい。これによって、繊維ウエブ110は、不織布1の凹凸形状を保持可能な程度に融着される。繊維ウエブ110においては、繊維同士が極めて緩く融着している状態となっている。図面矢印は、第1の熱風W1の流れを模式的に示している。
支持体雄材120の突起121の壁面と支持体雌材130の突起131の壁面との間の領域112bでは、繊維が厚み方向に配向した壁部領域12bが賦形される。突起121の端面と凹部132の基部との間の領域114では、第1の熱風W1を受けて繊維が平面方向で形状を保持可能な程度に融着される。これにより、底部14に相当する繊維層が形成される。この底部14には、突起121の尖鋭部124によって、開孔15が形成される。凹部122の基部123と突起131の端面との間の領域112aにおいて形成される繊維層は、突起131によって熱風が隔てられるので、繊維の融着が少なく滑らかである。これにより、頂部領域12aに相当する繊維層が形成される。
第1の熱風W1の温度は、熱可塑性繊維が厚み方向と平面方向とに形状を保持できるように、融点より高い温度に設定される。この種の製法に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、第1の熱風W1の温度と熱可塑性繊維の融点との差は、70℃以下であることが好ましく、5℃以上50℃以下であることがより好ましい。
第1の熱風W1の速度は、効果的に融着させる観点から、2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。また、第1の熱風W1の速度は、装置規模をコンパクトにできる観点から、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。このようにして、繊維ウエブ110を熱融着させて凹凸形状に保持する。
次に、支持体雌材130を取り外し、凹凸形状が賦形された繊維ウエブ110の各繊維が適度に融着できるように、第2の熱風W2を吹き付けて、繊維同士をさらに融着させる。図8(C)に示すように、第1の熱風W1と同様に、繊維ウエブ110に対し、不織布1における非肌当接面となる側から第2の熱風W2を吹き付けることが好ましい。第2の熱風W2の温度は、熱可塑性繊維が厚み方向と平面方向とに形状を保持できるように、融点より高い温度に設定される。この種の製法に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、第2の熱風W2の温度と熱可塑性繊維の融点との差は、70℃以下であることが好ましく、5℃以上50℃以下であることがより好ましい。
第2の熱風W2の風速は、支持体雄材120の突起121の高さにもよるが、2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。これにより、繊維への熱伝達を十分なものとして繊維同士を融着させ、凹凸形状の固定を十分なものとすることができる。第2の熱風W2の風速は、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。これにより、繊維への過度な熱伝達を抑えて、良好な風合いの不織布1が得られる。
なお、支持体雌材の表面粗さを小さくすることで、第1の熱風W1の吹き付けの工程を省略することが可能である。表面粗さを小さくすることで、融着していない繊維をまとわりつかせることがなく、第2の熱風W2の吹き付けの工程での支持体雌材の取り外しが可能である。つまり、ウエブを作製後、支持体雄材と支持体雌材とを嵌合し、そのまま支持体雌材を取り外し、第2の熱風W2によって処理することが可能である。これにより、より簡便な加工となる。
熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられているものが挙げられる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘型、サイドバイサイド型などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分の芯鞘複合繊維)を用いる場合、繊維ウエブ110に吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また弾力性の観点から、芯鞘複合繊維の中でも、高融点である芯が多いほど弾力性が高い。そのため、断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。
以上説明したようにして、不織布1が作製される。支持体雄材120の突起121の側面では、繊維ウエブ110の繊維が揃って厚み方向に配向して、壁部領域12bが形成される。突起121の頂部には、繊維が平面方向に配向する底部14及び開孔15が形成される。また、畝部12が延びる方向に隣り合う開孔15間に、鞍部16が形成される。また、凹部122の基部123には、繊維が平面方向に配向する頂部領域12aが形成される。
本実施形態においては、得られた不織布1は、図8(C)における下側の面が肌当接面であり、その反対側の面が非肌当接面となるようにおむつ10に組み込まれている。つまり、不織布1における肌当接面は、支持体雄材120が配された側であり、非肌当接面は、第1の熱風W1及び第2の熱風W2が吹き付けられた側である。そのため、第1の熱風W1及び第2の熱風W2の吹き付け量の相違から、肌当接面の頂部領域12aよりも非肌当接面の底部14の繊維同士の融着量が多くなる。しかし、これとは逆に、すなわち、図7(C)における不織布1の下側の面を非肌当接面にとなるようにおむつ10に組み込んでもよい。
さらに、熱量が少ないことに起因して、非肌当接面側の底部14の表面よりも、肌当接面側の頂部領域12aの表面の方が、滑らかで肌触りがよいものとなる。第1の熱風W1の吹き付けの工程を省略しても、第2の熱風W2からの距離により同様の効果が得られる。
また、支持体同士が嵌合することで、支持体雌材130側の繊維(不織布1における非肌当接面側の底部14となる繊維)は引っ張られて支持体雄材120へ向かう。そのため、支持体雄材120の突起121の頂部に賦形された非肌当接面側の底部14の繊維量は
、支持体雄材120の凹部122の基部123に賦形された肌当接面側の頂部領域12aより少なくなる。
本実施形態の不織布の製造方法においては、不織布1の厚みは、支持体雄材120の突起121及び支持体雌材130の突起131の高さによって、適宜決定される。例えば、突起の高さを高くするとシートの見掛け厚みが厚くなり、低くするとシートの見掛け厚みが薄くなる。また、突起の高さを高くすると不織布1の繊維密度が低くなり、低くすると不織布1の繊維密度が高くなる。
なお、上述した製造方法では、一方向に連続した複数の突起131を有する支持体雌材130を用いたが、例えば図13に示すような、直交する二方向に連続した複数の突起131A,131Bを有する支持体雌材130Aに変更することもできる。ここで用いる支持体雌材130Aには、直交する二方向に連続する突起131A,131Bが交差することで、平面視で格子状に配置された複数の凹部132が形成される。
すなわち、凹部132は、一方向に連続して延びる突起131Aと、これと直交する方向に連続して延びる突起131Bとによって囲まれた矩形状の領域であり、支持体雌材130Aの上面から下面に亘って貫通して形成されている。この凹部132は、支持体雄材120の突起121を受け入れるように、突起121に対応して形成されている。このような支持体雌材130Aに変更した場合も、同様の支持体雄材120を用いて、図8を参照して説明した方法にしたがって、不織布を製造することができる。
図8(B)に示した例と同様に、支持体雄材120上の繊維ウエブ110に支持体雌材130Aを押し込むことで、支持体雄材120の各突起121が支持体雌材130Aの各凹部132に挿入されると共に、支持体雌材130Aの各突起131A,131Bが支持体雄材120の凹部122に挿入される。この状態の平面図を図13に模式的に示す。図13中、繊維ウエブは省略している。図示しない繊維ウエブは、支持体雄材120の突起121の四方の壁面と、これを囲む支持体雌材130Aの凹部132の壁面とに挟まれる。これによって、繊維ウエブ110の繊維が厚み方向に配向する。
ここで用いられる支持体雌材130Aは、一方向に延びる突起131Aのみが、図8(B)に示す例と同様に端面で繊維ウエブを支持体雄材120の凹部122の基部123に押し付けて、畝部12に相当する繊維層が形成される。もう一方の方向においては、支持体雄材120の凹部122a内で突起131Bの端面で押し付けられた繊維ウエブは、支持体雄材120の凹部122の基部123には到達せず、繊維ウエブのこの領域は、鞍部16に相当する繊維層となる。
以上のようにして得られた不織布1は、おむつ10の製造ラインに導入され、公知の方法によりおむつ10の表面シート2となる。
不織布1は、上述したように畝部と底部とからなる凹凸構造を有し、底部の少なくとも一部に開孔が設けられているとともに、畝部の壁部領域が底部に対して略垂直である。こうした不織布1を表面シート2として有しているので、本実施形態に係るおむつ10は、吸収時間及び液流れ距離をよりいっそう短縮することができる。
次に、本発明の吸収性物品に用いる不織布の実施例を説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
[実施例1]
繊度1.8dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)=5:5)の熱可塑性繊維を用いて繊維ウエブを作製した。熱可塑性繊維は、親水化処理が施されている。繊維ウエブを支持体雄材120上に配置し、図8(A)に示すように、繊維ウエブ110上から支持体雌材130を支持体雄材120に押し込んで賦形処理を行った。第1の熱風W1を吹き付けた後、支持体雌材130を取り外して第2の熱風W2を吹き付けて融着処理を行い、不織布を作製した。
用いた支持体雄材120には、図10(A)に示したような尖鋭部124を上端に有する突起121が設けられている。突起121は、高さが10mmの角柱形状であり、上面視において2mm×2mmの正方形状である。角柱のピッチはMD方向、CD方向それぞれ5mmとした。
支持体雌材130は、金属製であり、幅2mmの直線状の突起131が5mmピッチで配置されている。こうした支持体雌材130の突起131を、支持体雄材120の突起121の間に押し込んだ。支持体雄材120に支持体雌材130が押し込まれた時の繊維が入る空間は、片側1mmであった。
第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速2m/s、吹き付け時間6sの条件で行った。得られた不織布は、繊度1.8dtexであった。実施例1の不織布は、図3に示したような畝部12、開孔15を有する底部14、及び鞍部16を備えていた。
[実施例2]
支持体雌材を、直交する二方向に連続した突起を有するものに変更した。支持体雄材は、実施例1と同様である。繊度1.8dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)=5:5)の熱可塑性繊維を用い、図8に示す工程と同様の工程を含む方法によって実施例2の不織布を作製した。熱可塑性繊維は、親水化処理が施されている。第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間6sの条件で行った。
実施例2の不織布は、畝部12、開孔15を有する底部14、及び鞍部16を備えていた。
[比較例1]
特開2013-133574号公報の図1に示す不織布を、繊度1.8dtexの熱可塑性繊維を用いて同公報に記載された製造方法に準拠して作製し、比較例1の不織布とした。比較例1の不織布は、畝部、及び開孔を有する底部を備えている一方、鞍部は備えていなかった。
[比較例2]
突起の上端に尖鋭部を有しない支持体雄材120に変更する以外は、実施例1と同様の手法により比較例2の不織布を作製した。比較例2の不織布は、畝部、開孔を有さない底部、及び鞍部を備えていた。
[比較例3]
突起の上端に尖鋭部を有しない支持体雄材120に変更する以外は、実施例2と同様の手法により比較例3の不織布を作製した。比較例3の不織布は、畝部、開孔を有さない底部、及び鞍部を備えていた。
実施例及び比較例の不織布について、構造を調べた。具体的には、坪量、厚み、開孔サイズ、壁部領域の角度、壁部領域の繊維配向性(配向角、配向強度)、畝部と鞍部との高さの差を、以下の方法により測定した。
<坪量>
23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で24時間以上保存した不織布について、面積及び質量を測定して求めた。
<厚み>
不織布に0.05kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器により測定した。厚み測定器としては、オムロン株式会社製のレーザー変位計を用いた。10点について測定し、それらの平均値を算出して厚みとした。
<開孔寸法>
不織布の上面視における顕微鏡写真を上述のマイクロスコープにて撮影し、画像中の開孔の寸法を内蔵計測機能により測定した。
<壁部領域の角度>
図4に示したようなII-II’断面の顕微鏡写真を撮影し、図5を参照して説明したように角度θを求めた。
<壁部領域の繊維配向性(配向角、配向強度)>
図4に示したようなII-II’断面の顕微鏡写真と、図7に示したようなIV-IV’断面の顕微鏡写真とを撮影し、図14を参照して説明したように壁部領域の繊維配向性(配向角、配向強度)を求めた。
<畝部と鞍部との高さの差>
図7に示したようなIV-IV’断面の顕微鏡写真を上述のマイクロスコープにて撮影し、内蔵計測機能により測定した。
さらに、実施例1~2、比較例1~3の不織布の効果を調べた。具体的には、各不織布について、液体の吸収時間、液流れ距離及び液戻り量を測定した。それらの測定方法を、以下に示す。
<吸収時間>
市販のベビー用おむつ(商品名「メリーズさらさらエアスルーMサイズ」、花王株式会社、2018年製)から表面シートを取り除き、その代わりに、100×250mmに切出した不織布を積層する。積層された不織布の周囲を固定して、評価用のベビー用おむつを作製した。
不織布に20g/cm2の圧力となる荷重を均等にかけ、不織布のほぼ中央に設置した
筒(断面積1000mm2)を介して人工尿を注入した。人工尿としては、生理食塩水を
用いた。人工尿は、10分ごとに40gずつ3回注入し、全量が吸収されるまでの時間(秒)を測定した。筒内部に人工尿が確認されなくなったときを、「全量が吸収された」とした。
<液流れ距離>
不織布は、10cm×20cmのサイズに切断して評価用試料とし、45度傾斜している載置部の上に市販のティッシュペーパーを介して固定した。評価用試料の上方10mmの高さから1gの脱イオン水を10秒かけて注入して、脱イオン水の流れを観察した。垂線上の注入点から評価用試料内に脱イオン水が引き込まれる場所までの距離を測定して、液流れ距離とした。
液流れ距離が短いほど、液体が内部に浸透しやすい。すなわち、液体の引き込み性が優れている。
<液戻り量>
水平に載置した不織布に120gの生理食塩水を注入し、注入完了から10分間静置した。アドバンテック社製のろ紙No.5C(100mm×100mm)を20枚重ねて準備した吸収シート(質量M1)を、不織布試料の上に配置した。さらに、生理用食塩水の注入点を中心として3.5kPaの圧力が印加されるように調整した錘を置いた。1分載置した後のろ紙の質量をM2として、(M2-M1)を液戻り量とした。液戻り量は、小さいほど好ましい。
得られた結果を、不織布の構造とともに下記表1にまとめる。
Figure 0007504959000001
表1に示すように、実施例の不織布は、底部に開孔が設けられており、壁部領域の角度が85°以上と大きい。壁部領域の角度が大きいことに起因して、実施例の不織布は6mmという厚みを有している。壁部領域の繊維は、測定された2方向において配向角が76°以上で、配向強度が1.4以上である。このため、実施例の不織布は、吸収時間が170秒以下と短いのに加え、液流れ距離が35mm以下と小さく、液戻り量も1.5g以下と少ない。
実施例の不織布を表面シートとして用いることによって、吸収時間及び液流れ距離をよりいっそう短縮することが可能な吸収性物品が得られる。
なお、上記には本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態では、吸収性物品としておむつ10を例に挙げて説明したが、本発明の吸収性物品は、このようなおむつに限らず、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の種々の吸収性物品に適用可能である。
1 不織布
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
10 吸収性物品
12 畝部
12a 頂部領域
12b 壁部領域
14 底部
15 開孔
16 鞍部
18 中空領域

Claims (5)

  1. 肌当接面側に突出して配列された複数の畝部と、隣り合う畝部間に設けられた鞍部及び底部とを有し、前記底部には、前記肌当接面側から非肌当接面側に向けて貫通する開孔が形成されている不織布を製造する方法であって、
    支持体雄材の上に繊維ウエブを載置し、該繊維ウエブの上から支持体雌材で押し付けて、賦形ウエブを得る工程、及び
    前記賦形ウエブに対し、熱風を吹き付ける工程、
    を有し、
    前記支持体雄材は、一方向とそれに直交する方向に雄材側突起が間隔を空けて配置されており、前記雄材側突起は、上端部に尖鋭部を有しており、
    前記支持体雌材は、雌材側突起が複数設けられており
    前記熱風を吹き付ける工程において、前記支持体雌材の側から前記賦形ウエブに向けて第1の熱風を吹き付ける
    不織布の製造方法。
  2. 前記雌材側突起間の間隔は、前記雄材側突起の幅よりも広く形成されている
    請求項1記載の不織布の製造方法。
  3. 前記賦形ウエブを得る工程において、前記雌材側突起は、隣り合う前記雄材側突起の間に挿入される
    請求項2記載の不織布の製造方法。
  4. 前記支持体雄材は、隣り合う前記雄材側突起間に雄材側凹部を有しており、
    前記支持体雌材は、隣り合う前記雌材側突起間に雌材側凹部を有しており、
    前記賦形ウエブを得る工程において、前記雄材側突起と前記雌材側凹部とを嵌合させると共に、前記雌材側突起と前記雄材側凹部とを嵌合させる
    請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
  5. 前記熱風を吹き付ける工程は、前記第1の熱風を吹き付けた後に、前記支持体雌材を取り外した状態において、前記支持体雌材があった側から前記賦形ウエブに向けて第2の熱風を吹き付ける工程を含む
    請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
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