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JP7551553B2 - 不織布、フィルタ、吸音材及びメルトブローン不織布の製造方法 - Google Patents

不織布、フィルタ、吸音材及びメルトブローン不織布の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、不織布、フィルタ、吸音材及びメルトブローン不織布の製造方法に関する。
一般的に、嵩高い不織布は、吸音性、断熱性等に優れるとされており、吸音材、断熱材等に利用されている。嵩高い不織布を製造する装置として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、2本のローラで繊維を捕集するメルトブローン不織布製造装置が記載されている。このようなメルトブローン不織布製造装置を用いて製造した不織布は、C字型の構造が連続する積層構造を含んでおり、嵩高いとされている。
特開2010-203033号公報 特表2017-505390号公報
特許文献1及び特許文献2に記載されているようなC字型の構造が連続する積層構造を含んでいる不織布は、繊維同士の融着が充分ではないためほぐれやすく、例えば、フィルタに使用した場合の濾過性能、吸音材に使用した場合の吸音性能等の物性が充分ではない場合がある。
フィルタ、吸音材等に使用する際の物性を向上させるために、オーブン等で不織布を加熱して繊維同士を融着させることが考えられる。しかし、オーブン等で不織布を加熱しても、物性の向上が充分でない場合がある。これは、繊維同士の融着が過度に形成されてしまうことが理由であると推測される。
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能な不織布、この不織布を含み、濾過性能に優れるフィルタ及びこの不織布を含み、吸音性能に優れる吸音材並びに濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能なメルトブローン不織布を製造可能なメルトブローン不織布の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 熱可塑性樹脂を含有する繊維を含む不織布であり、
前記不織布は、コア層及び前記コア層を挟持するように構成されるスキン層を備え、
前記コア層は、不織布の幅方向と直交する断面にて、厚さ方向における一方の端部から厚さの中心方向に向かって湾曲し、かつ厚さ方向における他方の端部から厚さの中心方向に向かって湾曲して構成される不織布の長さ方向に突出した弧状構造が前記不織布の長さ方向に連続して積層されてなる積層構造を含み、
前記スキン層における繊維の融着個数をA(個/0.2mm)、前記コア層における繊維の融着個数をB(個/0.2mm)としたときに、A-Bが50個/0.2mm以上である不織布。
<2> 前記熱可塑性樹脂がプロピレン系重合体を含む<1>に記載の不織布。
<3> 不織布の目付が10g/m~500g/mである<1>又は<2>に記載の不織布。
<4> 前記繊維の平均繊維径が0.1μm~10μmである<1>~<3>のいずれか1つに記載の不織布。
<5> メルトブローン不織布である<1>~<4>のいずれか1つに記載の不織布。
<6> 前記スキン層における繊維の融着個数Aが100個/0.2mm以上である<1>~<5>のいずれか1つに記載の不織布。
<7> 前記コア層における繊維の融着個数Bが250個/0.2mm以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の不織布。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の不織布を含むフィルタ。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載の不織布を含む吸音材。
<10> 熱可塑性樹脂又は前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させ紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し繊維状物とする工程と、
前記繊維状物を温度が40℃~160℃である2つのローラの間に供給して捕集する工程と、
を含むメルトブローン不織布の製造方法。
<11> 前記紡糸口金から前記ローラまでの最短距離が100mm~500mmである<10>に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
<12> 前記繊維状物とする工程にて、前記熱可塑性樹脂又は前記樹脂組成物の溶融温度が200℃~380℃である<10>又は<11>に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
<13> 前記加熱ガスの温度が200℃~380℃である<10>~<12>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布の製造方法。
本開示によれば、濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能な不織布、この不織布を含み、濾過性能に優れるフィルタ及びこの不織布を含み、吸音性能に優れる吸音材並びに濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能なメルトブローン不織布を製造可能なメルトブローン不織布の製造方法を提供することができる。
図1は、本開示の不織布の製造方法で用いる不織布製造装置の構成の一例を示す模式図である。 図2は、図1における点線部αの拡大図である。
本開示において、数値範囲を示す「~」はその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
[不織布]
本開示の不織布は、熱可塑性樹脂を含有する繊維を含む不織布であり、前記不織布は、コア層及び前記コア層を挟持するように構成されるスキン層を備え、前記コア層は、不織布の幅方向と直交する断面にて、厚さ方向における一方の端部から厚さの中心方向に向かって湾曲し、かつ厚さ方向における他方の端部から厚さの中心方向に向かって湾曲して構成される不織布の長さ方向に突出した弧状構造が前記不織布の長さ方向に連続して積層されてなる積層構造を含み、前記スキン層における繊維の融着個数をA(個/0.2mm)、前記コア層における繊維の融着個数をB(個/0.2mm)としたときに、A-Bが50個/0.2mm以上である。
本開示の不織布は、不織布の長さ方向に突出した弧状構造が前記不織布の長さ方向に連続して積層されてなる積層構造を含み、スキン層における繊維の融着個数Aとコア層における繊維の融着個数Bとの差(A-B)が50個/0.2mm以上である。この不織布を用いることにより、濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能である。なお、本開示の不織布は、濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の両方が製造可能である必要はなく、少なくともどちらか一方を製造可能であればよい。本開示の不織布について、濾過性能に優れたフィルタが得られる観点から好ましい物性、構成等(フィルタに関する好ましい物性等)と、吸音性能に優れた吸音材が得られる観点から好ましい物性、構成等(吸音材に関する好ましい物性等)とはそれぞれ独立している。そのため、本開示の不織布の好ましい態様は、フィルタに関する好ましい物性等及び吸音材に関する好ましい物性等を両方満たす必要はない。
本開示の不織布は、コア層における繊維の融着個数Bがスキン層における繊維の融着個数Aよりも少なくなっており、不織布内であるコア層に空気等の気体を多く含むことができる。これにより、本開示の不織布は、保温性能、断熱性能、吸音性能等に優れる傾向にあり、吸音材、断熱材、保湿剤、クッション材などの嵩高さが求められる用途に好適に用いることができる。さらに、本開示の不織布は、フィルタ用途にも好適に用いることができる。
濾過性能により優れたフィルタ、吸音性能により優れた吸音材等を製造可能とする観点から、スキン層における繊維の融着個数Aとコア層における繊維の融着個数Bとの差(A-B)は、50個/0.2mm以上であり、100個/0.2mm以上あることが好ましく、150個/0.2mm以上であることがより好ましい。
濾過性能により優れたフィルタ、吸音性能により優れた吸音材等を製造可能とする観点から、スキン層における繊維の融着個数Aとコア層における繊維の融着個数Bとの差(A-B)は、500個/0.2mm以下であることが好ましく、350個/0.2mm以下であることがより好ましい。
スキン層における繊維の融着個数Aは、前述のA-Bが50個/0.2mm以上であれば特に限定されず、100個/0.2mm以上であることが好ましく、200個/0.2mm~500個/0.2mmであることがより好ましく、250個/0.2mm~400個/0.2mmであることがさらに好ましい。スキン層における融着個数Aが上記範囲であると、濾過性能及び/又は吸音性能により優れる傾向にある。
コア層における繊維の融着個数Bは、前述のA-Bが50個/0.2mm以上であれば特に限定されず、250個/0.2mm以下であることが好ましく、50個/0.2mm~200個/0.2mmであることがより好ましく、100個/0.2mm~180個/0.2mmであることがさらに好ましい。コア層における融着個数Bが上記範囲であると、濾過性能及び/又は吸音性能により優れる傾向にある。
本開示において、スキン層における繊維の融着個数は、スキン層の主面における合計面積0.2mmの範囲内での繊維間融着点の個数を意味する。
本開示において、コア層における繊維の融着個数は、コア層の厚さ方向における中央部分から厚さ方向に上下15%の領域にて合計面積0.2mmの範囲内での繊維間融着点の個数を意味する。
スキン層における繊維の融着個数の測定方法及びコア層における繊維の融着個数の測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
スキン層の厚さは、0.5mm~5.0mmであってもよく、0.7mm~3.0mmであってもよい。なお、スキン層の厚さとは、コア層を挟持するいずれか一方の面側のスキン層の厚さを意味する。スキン層の厚さは、断面観察によって、それぞれ無作為に選ばれた5箇所の厚さの平均値として求める。
不織布の厚さに対するスキン層の厚さの比率(スキン層の厚さ/不織布の厚さ)は、0.01~0.20であってもよく、0.05~0.10であってもよい。前述のスキン層の厚さ及びスキン層の厚さ/不織布の厚さは、例えば、後述するように溶融された熱可塑性樹脂又は樹脂組成物を紡糸することで得られた繊維状物をローラにより加熱するときの加熱条件、2つのローラ間の距離等を調整することで適宜調整することができる。
本開示における不織布の厚さの測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
本開示の不織布に含まれる繊維の平均繊維径は、不織布をフィルタに用いたときの粉塵の捕集効率と圧力損失とのバランスの観点、不織布を吸音材に用いたときの吸音性能の観点等から、0.1μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~8.0μmであることがより好ましく、1.0μm~7.0μmであることがさらに好ましい。
不織布に含まれる繊維の平均繊維径は、以下のようにして求めた値である。倍率500倍である不織布の電子顕微鏡写真から、繊維の直径(幅)を測定し、これが合計で1000本(n=1000)を超えるまで撮像と直径の測定とを繰り返す。得られた繊維の直径の算術平均値を平均繊維径とする。
不織布の目付は、用途により適宜決めればよく、例えば、10g/m~1000g/mであることが好ましく、50g/m~700g/mであることがより好ましく、100g/m~400g/mであることがさらに好ましい。目付が10g/m以上であると、不織布の強度が向上して製造しやすくなる傾向、及び、不織布を吸音材に用いた場合に吸音性能により優れる吸音材が得られる傾向にある。目付が500g/m以下であると、不織布をフィルタに用いた場合に圧力損失が高くなり過ぎず、フィルタとして好適に用いることができる傾向にある。また、不織布をフィルタに用いた場合、圧力損失と捕集効率とをより向上させる観点から、不織布の目付は、10g/m~300g/mであることが好ましく、30g/m~200g/mであることがより好ましい。また、不織布を吸音材に用いた場合、吸音性能をより向上させる観点から、不織布の目付は、100g/m~700g/mであることが好ましく、200g/m~500g/mであることがより好ましい。
本開示における目付の測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
本開示の不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等の、種々公知の不織布が挙げられる。不織布に含まれる繊維の繊維径が小さく、濾過性能により優れたフィルタ及び吸音性能により優れた吸音材の少なくとも一方を好適に製造可能である観点から、不織布はメルトブローン不織布であることが好ましい。
本開示の不織布は、単層不織布として用いられてもよく、積層体の少なくとも一つの層を構成する不織布として用いられてもよい。積層体を構成する他の層の例には、本開示の不織布の他に、従来のメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチング、スパンレース不織布等の他の不織布、織物、編物、紙、フィルムなどが挙げられる。
本開示の不織布は、帯電されていてもよい。帯電されている不織布は、エアフィルタに好適に用いられる。帯電されている不織布は、後述するように不織布の製造工程にて繊維状物に帯電加工すること、帯電前の不織布に帯電加工をすること等で得られる。
本開示の不織布に含まれる繊維は、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマーなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種からなるものであってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
α-オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテンランダム共重合体等のエチレンランダム共重合体などのエチレン系重合体;ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体等のプロピレンランダム共重合体などのプロピレン系重合体;ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、プロピレン系重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は、紡糸性、機械的強度、耐薬品性、平均繊維径等に優れる観点から、プロピレン系重合体を含むことが好ましい。
プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、主成分であるプロピレンと副成分である1種又は2種以上のα-オレフィンとの共重合体であるプロピレンランダム共重合体等が挙げられ、中でも、プロピレン単独重合体が好ましい。プロピレンランダム共重合体では、α-オレフィンに由来する構成単位の含有率は、全体の1モル%~10モル%であることが好ましく、全体の1モル%~5モル%であることがより好ましい。
プロピレンランダム共重合体の共重合に用いるα-オレフィンとしては、炭素数2以上のα-オレフィン(プロピレンを除く)が好ましく、炭素数2又は4~8のα-オレフィンがより好ましい。α-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が好ましい。
プロピレン系重合体の融点(Tm)は、155℃以上であることが好ましく、157℃~165℃であることがより好ましい。
本開示において、融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて後述のようにして測定できる。
プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR:ASTM D-1238、230℃、荷重2160g)は、溶融紡糸可能な値であれば限定されず、50g/10分~5000g/10分であることが好ましく、200g/10分~4000g/10分であることがより好ましく、500g/10分~2500g/10分であることがさらに好ましい。プロピレン系重合体のMFRが上記範囲にあると、紡糸性が良好で糸切れが生じにくく、かつ、平均繊維径を細くできる傾向にある。
本開示の不織布における繊維は、不織布全量に対して、熱可塑性樹脂を93.0質量%~100質量%含むことが好ましく、94.0質量%~99.5質量%含むことがより好ましい。また、本開示の不織布における繊維は、不織布全量に対して、プロピレン系重合体を70.0質量%~100質量%含むことが好ましく、90.0質量%~99.5質量%含むことがより好ましい。
本開示の不織布に含まれる繊維は、必要に応じて、通常用いられる添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電剤、静電防止剤、吸収性粒子、ナノ粒子、イオン交換樹脂、消臭剤、芳香剤、接着剤、表面改質剤、殺生物剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤が挙げられる。
例えば、本開示の不織布に含まれる繊維は、帯電剤をさらに含有していてもよい。これにより、帯電されている不織布を容易に製造することができる。
帯電剤は、例えば、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。不織布に含まれる繊維は、例えば、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種が熱可塑性樹脂に添加され、次いで練り込まれた樹脂組成物を用いて形成されたものであってもよい。
ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等が挙げられる。
また、トリアジン系化合物としては、前述のポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール等が挙げられる。
本開示の不織布に含まれる繊維が帯電剤を含む場合、帯電剤の含有率、好ましくはヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物の合計含有率は、不織布全量に対して、0.01質量%~7.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~6.0質量%であることがより好ましい。
以下、本開示の不織布を製造する方法の例として、メルトブローン不織布の製造方法を説明する。本開示の不織布を製造する方法はこれらの製造方法に限定されない。
[メルトブローン不織布の製造方法]
本開示のメルトブローン不織布の製造方法は、熱可塑性樹脂又は前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させ紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し繊維状物とする工程と、前記繊維状物を温度が40℃~160℃である2つのローラの間に供給して捕集する工程と、を含む方法である。
本開示の製造方法では、溶融させた熱可塑性樹脂又は樹脂組成物を加熱ガスとともに紡糸口金から吐出して繊維状物とし、当該繊維状物を温度が40℃~160℃である2つのローラの間に供給することで不織布を製造する。
2つのローラの温度を40℃以上とすることでコア層における繊維の融着個数Bと比較してスキン層における繊維の融着個数Aが増加する傾向にあり、A-Bの値が高いメルトブローン不織布が得られる。A-Bの値が高いメルトブローン不織布を用いることにより、濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能である。
2つのローラの温度を160℃以下とすることで、コア層に含まれる熱可塑性樹脂が過度に融解することが抑制されるため、コア層における繊維の融着個数Bが多くなりすぎず、スキン層における繊維の融着個数Aとコア層における繊維の融着個数Bとの差の低下が抑制される。これにより、A-Bの値が高く維持されたメルトブローン不織布(例えば、A-Bの値が50個/0.2mm以上のメルトブローン不織布)が得られ、濾過性能に優れたフィルタ及び吸音性能に優れた吸音材の少なくとも一方を製造可能である。
さらに、本開示の製造方法では、溶融した樹脂組成物を、紡糸口金から繊維状に吐出させるときに、溶融状態の吐出物(吐出された樹脂組成物)に加熱ガスを当てるとともに、加熱ガスを随伴させるメルトブローン法を採用している。これにより、吐出物の径を小さくすることができ、繊維径の小さいメルトブローン不織布が得られる。繊維径の小さいメルトブローン不織布を用いることで濾過性能により優れたフィルタ、吸音性能により優れた吸音材等を製造することができる。
本開示の製造方法は、熱可塑性樹脂又は前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させ紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し繊維状物とする工程を含む。
繊維状物とする工程では、原料となる熱可塑性樹脂又は前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物、押出機などを用いて溶融する。熱可塑性樹脂の好ましい構成は、前述の本開示の不織布の項目にて説明した熱可塑性樹脂の好ましい構成と同様である。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とともに、熱可塑性樹脂以外の添加剤を含む。添加剤としては、前述の本開示の不織布の項目にて説明した通常用いられる添加剤が挙げられる。添加剤は、例えば、前述の帯電剤が好ましい。
樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有率は、樹脂組成物全量に対して、93.0質量%~99.9質量%であることが好ましく、94.0質量%~99.5質量%であることがより好ましい。
樹脂組成物が前述の帯電剤をさらに含む場合、当該帯電剤はヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。樹脂組成物に含まれる帯電剤の含有率は、樹脂組成物全量に対して、0.01質量%~7.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~6.0質量%であることがより好ましい。
溶融した熱可塑性樹脂又は樹脂組成物は、押出機の先端に接続された紡糸口金に導入され、紡糸口金の紡糸ノズルから、繊維状に吐出される。繊維状に吐出された熱可塑性樹脂又は樹脂組成物に、紡糸口金のガスノズルから噴出される加熱ガスが当てられて、当該加熱ガスにより熱可塑性樹脂又は樹脂組成物が延伸されることにより、当該熱可塑性樹脂又は樹脂組成物が細化される。
本開示の製造方法では、熱可塑性樹脂としてプロピレン系重合体を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂又は樹脂組成物の溶融温度は、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜調整すればよい。熱可塑性樹脂がプロピレン系重合体である場合、熱可塑性樹脂又は樹脂組成物の溶融温度は、例えば200℃~380℃であることが好ましく、220℃~350℃であることがより好ましい。
加熱ガスの温度は、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜調整すればよい。熱可塑性樹脂がプロピレン系重合体である場合、加熱ガスの温度は、例えば200℃~380℃であることが好ましく、220℃~350℃であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂又は樹脂組成物の溶融温度は、紡糸口金(ダイ)の設定温度として測定することができる。
加熱ガスの温度は、紡糸口金(ダイ)から吐出された直後の加熱ガスの温度として測定することができる。具体的には、加熱ガスの温度は、紡糸口金(ダイ)のガスノズルの開口部における加熱ガスの温度として測定することができる。加熱ガスの温度の調整は、例えば紡糸口金(ダイ)のガスノズルの開口部の加熱ガスの温度を測定しながら、当該ガスノズルの開口部の加熱ガスの温度が所定の温度となるように、加熱ガスの供給温度を調整することによって行ってもよいし;所定の条件(例えばダイ温度、加熱ガス流量)下で、ガスノズルの開口部の加熱ガスの温度と加熱ガスの供給温度との関係を示すデータ(検量線)を予め準備しておき、そのデータに基づいて、ガスノズルの開口部の加熱ガスの温度が所定の温度となるように、加熱ガスの供給温度を調整することによって行ってもよい。
紡糸口金の紡糸ノズル1つ当たりの熱可塑性樹脂又は樹脂組成物の吐出量は、0.01g/分~3.0g/分であることが好ましく、0.05g/分~2.0g/分であることがより好ましい。吐出量が0.01g/分以上であると、メルトブローン不織布の生産性が損なわれにくく、かつ繊維の糸切れを抑制しやすい。吐出量が3.0g/分以下であると、繊維径を充分に小さくしやすい。
加熱ガスの流量は、不織布に含まれる繊維の繊維径を小さくし、かつ繊維径のばらつきを少なくする(例えば、繊維径分布を狭くする)観点から、150Nm/時/m~1000Nm/時/mであることが好ましい。加熱ガスの流量が150Nm/時/m以上であると、吐出された熱可塑性樹脂又は樹脂組成物を充分に延伸しやすく、充分に繊維径を小さくしやすい。加熱ガスの流量が1000Nm/時/m以下であると、気流の乱れによる繊維径のばらつきの増大を抑制しやすい。同様の観点から、加熱ガスの流量は、250Nm/時/m~850Nm/時/mであることが好ましい。
加熱ガスの種類は特に限定されず、例えば、空気(エア)、炭酸ガス、窒素ガスなどの溶融した樹脂組成物に対して不活性なガスが挙げられる。これらの中でも、経済性の観点から空気(エア)が好ましい。
吐出された熱可塑性樹脂又は樹脂組成物は、加熱ガスによって延伸されることで、繊維状物が得られる。
本開示の製造方法は、繊維状物を温度が40℃~160℃である2つのローラの間に供給して捕集する工程を含む。熱可塑性樹脂又は樹脂組成物が加熱ガスによって延伸されて得られた繊維状物が2つのローラの間に供給され、2つのローラによって繊維状物が加熱及び成形される。2つのローラは水平方向にて対面し、2つのローラの間に繊維状物が鉛直上側から供給され、鉛直下側にてコレクター上に捕集されることが好ましい。これにより、鉛直下側方向に突出した弧状構造が鉛直方向に連続して積層されてなる積層構造を有する繊維状物が形成される。さらに、ローラと繊維状物とが接触して繊維状物が加熱されることにより、ローラと繊維状物とが接触している部分、すなわち、2つのローラと接触している繊維状物の両側面にスキン層が形成され、スキン層に含まれる繊維同士が融着する。
2つのローラと接触している繊維状物の両側面にスキン層が形成されることで、両側面のスキン層によって挟持されたコア層を有する繊維状物が得られる。2つのローラの温度が40℃~160℃であることにより、コア層における繊維の融着個数Bと比較してスキン層における繊維の融着個数Aが増加する傾向にあり、これにより、A-Bの値が高いメルトブローン不織布(例えば、A-Bの値が50個/0.2mm以上のメルトブローン不織布)が得られる。
2つのローラの温度は40℃~160℃であり、前述のA-Bの値が高いメルトブローン不織布を得る観点から、50℃~120℃であることが好ましく、60℃~100℃であることがより好ましい。
本開示にて、2つのローラの温度は、2つのローラの表面温度を意味する。2つのローラの温度は一致していてもよく、一致していなくてもよい。2つのローラの温度差が一致していない場合、2つのローラの温度差は10℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましい。
紡糸口金からローラまでの最短距離は、100mm~500mmであることが好ましく、200mm~450mmであることがより好ましく、250mm~400mmであることがさらに好ましい。紡糸口金からローラまでの最短距離を調節することで、スキン層における繊維の融着個数Aを調節することができる。例えば、前述の最短距離を短くすることで、融着個数Aが増加する傾向にあり、前述の最短距離を長くすることで、融着個数Aが減少する傾向にある。
2つのローラ間の距離は、その間に繊維状物が供給可能であり、かつローラの表面と繊維状物とを接触させて繊維状物を加熱可能であれば特に限定されず、例えば、5mm~100mmであることが好ましく、30mm~50mmであることがより好ましい。2つのローラ間の距離は、製造されるメルトブローン不織布の厚さ、嵩高さ等と関係があり、前述の距離を大きくすることでメルトブローン不織布の厚さ、嵩高さ等が大きくなる傾向にあり、前述の距離を小さくすることでメルトブローン不織布の厚さ、嵩高さ等が小さくなる傾向にある。2つのローラ間の距離が5mm以上であることにより、コア層がより好ましい上述の態様で形成できる傾向にあり、2つのローラ間の距離が100mm以下であることにより、コア層が多くなり過ぎずフィルタ性能、吸音性能等により優れる傾向にある。
2つのローラ間の距離は、2つのローラの表面間の最短距離を意味する。
2つのローラは、円柱状の部材であってもよく、その長さ方向において2つのローラが対面して設けられていてもよい。2つのローラが円柱状の部材である場合、2つのローラの長さは、繊維状物の供給条件、製造されるメルトブローン不織布の幅の設計等に応じて適宜決定すればよい。
2つのローラの材質は特に限定されず、例えば、金属製、ゴム製等であってもよい。
捕集する工程では、2つのローラに供給された後の繊維状物をウェブ状に捕集してもよい。例えば、コレクター上に、得られた繊維状物をウェブ状に捕集する。また、コレクター上に捕集する際には、繊維状物から見てコレクターの裏側から、エアを吸引するなどして捕集を促進してもよい。
コレクターの具体例としては、多孔ベルト、多孔ドラム等が挙げられる。なお、コレクターの裏面側からエアを吸引するなどして、繊維状物の捕集を促進してもよい。
また、コレクター上に予め設けた所望の基材上に、細化された繊維状物を捕集してもよい。予め設けておく基材の例には、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチング及びスパンレース不織布等の他の不織布、織物、編物、紙などが挙げられる。これにより、高性能フィルタ、ワイパー等で使用する極細繊維不織布積層体を得ることもできる。
本開示の不織布の製造方法に用いられる不織布の製造装置について、図1を参照しながら説明する。
図1は、不織布の製造装置10の構成の一例を示す模式図である。図1に示されるように、不織布の製造装置10は、押出機20と、ダイ(紡糸口金)30と、捕集機構40とを有し、さらに、ダイ30と、捕集機構40との間に一対のローラ11を有する。
押出機20は、ホッパー21と、圧縮部22とを有する。そして、押出機20は、ホッパー21に投入された固体の熱可塑性樹脂又は固体の樹脂組成物を、圧縮部22で溶融させる。押出機20は、一軸押出機であってもよいし、多軸押出機であってもよい。
ダイ(紡糸口金)30は、押出機20の先端に繋がって配置されている。ダイ30は、複数の紡糸ノズル31と、2つのガスノズル32とを有する。
複数の紡糸ノズル31は、通常、列状に配置されている。そして、紡糸ノズル31は、押出機20から搬送された、溶融した熱可塑性樹脂又は樹脂組成物Pが導入され、ノズル開口から、当該熱可塑性樹脂又は樹脂組成物を繊維状に吐出させる。紡糸ノズルの直径は、例えば0.05mm~0.80mmでありうる。熱可塑性樹脂又は樹脂組成物の溶融温度は、ダイ30の設定温度によって調整することができる。
紡糸口金の紡糸ノズルにおける小孔間距離は、0.1mm~2.0mmが好ましく、0.15mm~1.8mmがより好ましい。小孔間距離が0.1mm以上であると、繊維径のばらつきをより少なくできる傾向にある。小孔間距離が2.0mm以下であると、生産効率をより向上できる傾向にある。
2つのガスノズル(エアノズル)32は、紡糸ノズル31のノズル開口部の近傍、具体的には、複数の紡糸ノズル31の列を挟んだ両側に配置されている。そして、ガスノズル32は、紡糸ノズル31の開口部付近に加熱ガス(加熱圧縮ガス)を噴射する。図1に示されるように、ガスノズル32は、紡糸ノズル31の開口部から吐出された直後の熱可塑性樹脂又は樹脂組成物に、加熱ガスを噴射する。
ガスノズル32に供給される加熱ガスは、ガス加熱装置50から供給される。加熱ガスの温度は、ガス加熱装置50に付属の加熱温度調整手段(不図示)によって調整することができる。
捕集機構40は、多孔ベルト(コレクター)41と、それを支持し、かつ搬送させるローラ42と、多孔ベルト41の捕集面の裏側に配置されたエア吸引部43とを有する。エア吸引部43は、ブロワー44と連結されている。そして、捕集機構40は、得られた繊維状物を、移動する多孔ベルト41上に捕集する。
一対のローラ11は、ダイ30と、捕集機構40との間に配置されており、水平方向にて対面している。図1中の矢印Lは、前述の紡糸口金からローラまでの最短距離と対応するダイ30から一対のローラ11までの最短距離を意味する。紡糸ノズル31の開口部から吐出された熱可塑性樹脂又は樹脂組成物が加熱ガスによって延伸及び細化されて得られた繊維状物が一対のローラ11の間に供給される。繊維状物が一対のローラ11の間に供給される際に、一対のローラ11の温度は40℃~160℃に調整される。
このような構成によれば、押出機20で溶融した熱可塑性樹脂又は樹脂組成物は、ダイ(紡糸口金)30の紡糸ノズル31に導入され、紡糸ノズル31の開口部から吐出される。一方、ガスノズル32からは、加熱ガスが紡糸ノズル31の開口部付近に向かって噴射される。そして、吐出された熱可塑性樹脂又は樹脂組成物は、加熱ガスにより延伸及び細化されて繊維状物となる。
加熱ガスにより延伸及び細化されて得られた繊維状物は一対のローラ11の間に供給され、一対のローラ11によって繊維状物が加熱及び成形される。このとき一対のローラ11の間に繊維状物が鉛直上側から供給され、鉛直下側にて多孔ベルト41上に捕集される。これにより、鉛直下側方向に突出した弧状構造が鉛直方向に連続して積層されてなる積層構造を有する繊維状物が形成され、当該繊維状物が多孔ベルト41上に捕集される。
一対のローラ11と繊維状物とが接触して繊維状物が加熱されることにより、一対のローラ11と繊維状物とが接触している部分、すなわち、一対のローラ11と接触している繊維状物の両側面にスキン層が形成され、スキン層に含まれる繊維同士が融着する。
一対のローラ11と接触している繊維状物の両側面にスキン層が形成されることで、両側面のスキン層によって挟持されたコア層を有する繊維状物が得られる。
一対のローラ11と接触している繊維状物の両側面にスキン層が形成されることで、両側面のスキン層によって挟持されたコア層を有する繊維状物が得られる。一対のローラ11の温度が40℃~160℃であることにより、コア層における繊維の融着個数Bと比較してスキン層における繊維の融着個数Aが増加する傾向にあり、これにより、A-Bの値が高いメルトブローン不織布(例えば、A-Bの値が50個/0.2mm以上のメルトブローン不織布)が得られる。
一対のローラ11に供給された後の繊維状物は、鉛直下側にて多孔ベルト41上にウェブ状に捕集される。多孔ベルト41上にウェブ状に捕集された繊維状物は、ローラ42によって水平方向に搬送される。以上により、メルトブローン不織布が得られる。
図2は、図1における点線部αの拡大図であり、多孔ベルト41上に繊維状物がウェブ状に捕集された得られるメルトブローン不織布の拡大図である。図2では、矢印Xがメルトブローン不織布の長さ方向を意味し、矢印Yがメルトブローン不織布の厚さ方向を意味する。
図2に示すように、メルトブローン不織布は、スキン層1及びコア層2を備え、スキン層1は、厚さ方向にてコア層2を挟持している。コア層2は、鉛直方向上側から厚さの中心方向に向かって湾曲し、かつ鉛直方向下側から厚さの中心方向に向かって湾曲して構成される矢印X方向に突出した弧状構造3を有する。弧状構造3は、矢印X方向に連続して積層されている。
弧状構造3がメルトブローン不織布の幅方向に沿って延設している。そのため、メルトブローン不織布の幅方向と直交する断面においても弧状構造3が確認される。なお、メルトブローン不織布の幅方向は、矢印X方向及び矢印Y方向の両方に直交する方向を意味する。
メルトブローン不織布における弧状構造の湾曲の度合いは、加熱ガスの条件、ダイ30から一対のローラ11までの最短距離、一対のローラ11の間の距離等によって調整し得る。
メルトブローン不織布の製造工程にて繊維状物に帯電加工することでメルトブローン不織布を帯電させてもよく、帯電前のメルトブローン不織布に帯電加工をすることでメルトブローン不織布を帯電させてもよい。
メルトブローン不織布の製造工程にて繊維状物に帯電加工する方法としては、熱可塑性樹脂及び帯電剤を含む樹脂組成物が加熱ガスによって延伸及び細化されて得られた繊維状物が2つのローラに供給される前に、当該繊維状物に水又は水溶性有機溶剤水溶液を噴霧し、乾燥させる方法が挙げられる。あるいは、2つのローラに供給された後の繊維状物をコレクター上にウェブ状に捕集した後、捕集された繊維状物に水又は水溶性有機溶剤水溶液を噴霧し、乾燥させる方法が挙げられる。
帯電前のメルトブローン不織布に帯電加工する方法としては、熱可塑性樹脂及び帯電剤を含む樹脂組成物を用いてメルトブローン不織布を製造し、例えば、コロナ荷電法、メルトブローン不織布に水又は水溶性有機溶剤水溶液を付与した後に乾燥させることにより帯電させる方法(例えば、特表平9-501604号公報、特開2002-115177号公報等に記載されている方法)などが挙げられる。コロナ荷電法の場合は15kV/cm以上の電界強度が好ましく、20kV/cm以上の電界強度がより好ましい。
[フィルタ]
本開示のフィルタは、前述の本開示の不織布を含む。これにより、本開示のフィルタは、粉塵の捕集効率と圧力損失とのバランスが好適に確保されており、濾過性能に優れる。濾過性能により優れる観点から、本開示のフィルタは、帯電されている前述の本開示の不織布を含むことが好ましい。
[吸音材]
本開示の吸音材は、前述の本開示の不織布を含む。これにより、本開示の吸音材は、吸音性能に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例にて得られた不織布の各物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)目付(g/m
不織布から100mm(繊維の流れ方向:MD)×100mm(繊維の流れ方向と直交する方向(CD方向))の試験片を、10点採取した。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とした。次いで、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定して各試験片の質量の平均値を求めた。上記で求めた平均値を1m当たりの質量〔g〕に換算し、各不織布の目付〔g/m〕とした。
(2)厚さ(mm)
上記目付の測定と同様に試験片を10点採取した。採取した各試験片について、荷重が2g/cmの厚み計を使用して中央及び四隅の5点の厚さを測定した。測定した50点の厚さの平均値を算出し、各不織布の厚さ(mm)とした。
(3)平均繊維径(μm)
測定対象の不織布の表面を、電子顕微鏡(型番;S-3500N、(株)日立製作所製)を用いて、倍率500倍の写真を撮影した。撮影された写真から、繊維の直径(幅)を測定し、これが合計で1000本(n=1000)を超えるまで撮影と直径の測定とを繰り返した。得られた繊維の直径の算術平均値を平均繊維径とした。
(4)融着個数(個)
測定対象の不織布を上記電子顕微鏡を用いて倍率500倍で観察したとき、合計面積0.2mmの範囲内での繊維間融着点の個数(以下、「融着個数」とも称する。)を数えることで求められる。
スキン層における繊維の融着個数は、スキン層の主面における合計面積0.2mmの範囲内での繊維間融着点の個数を数えた。
コア層における繊維の融着個数は、コア層の厚さ方向における中央部分から厚さ方向に上下15%の領域にて合計面積0.2mmの範囲内での繊維間融着点の個数を数えた。
スキン層における繊維の融着個数を以下の評価基準に基づいて評価した。スキン層における繊維の融着個数が多いほど、融着個数差(A-B)が大きくなる傾向にあり好ましい。
-評価基準-
A:スキン層における繊維の融着個数が250個以上である。
B:スキン層における繊維の融着個数が200個以上250個未満である。
C:スキン層における繊維の融着個数が200個未満である。
(5)捕集効率(%)
不織布の任意の部分から、15cm×15cmのサンプルを3個採取し、それぞれのサンプルについて、捕集性能測定装置(東京ダイレック(株)社製、Model8130)を用いて捕集効率を測定した。捕集効率の測定にあたっては、個数中央径:0.07μmをもつNaCl粒子ダストをアトマイザーで発生させ、次にサンプルをホルダーにセットし、風量をフィルタ通過速度が5.3cm/secになるように流量調整バルブで調整し、ダスト濃度を15mg/m~20mg/mの範囲で安定させた。サンプルの上流のダスト個数D2及び下流のダスト個数D1をレーザー式粒子検出器で検出し、下記計算式にて求めた数値の小数点以下第2位を四捨五入し捕集効率(%)を求めた。なお、表1中に記載の捕集効率(%)は、3個のサンプルを用いて測定した算術平均値である。
捕集効率(%)=〔1-(D1/D2)〕×100
(D1:下流のダスト個数、D2:上流のダスト個数)
(6)圧力損失(Pa)
圧力損失は捕集効率測定時のサンプルの上流及び下流の静圧差を圧力計で読み取ることで求めた。なお、表1中に記載の圧力損失は、3個のサンプルを用いて求めた算術平均値である。
(7)Q値
濾過性能の指標となるQ値は、捕集効率及び圧力損失を用いて以下の式により計算される。低圧力損失かつ高捕集性能であるほどQ値は高くなり、不織布をフィルタに用いたときの濾過性能が良好であることを示す。
Q値(Pa-1)=-[ln(1-[捕集効率(%)]/100)]/[圧力損失(Pa)]
(8)吸音性能
不織布の吸音性能は、以下のようにして垂直入射吸音率を測定することで評価できる。不織布の任意の部分から29mmφの円形の試験片を採取し、垂直入射吸音率測定装置(ブリュエル&ケアー社製、TYPE4206)を用い、ASTM E 1050に準拠し、周波数1000Hz~6400Hzの平面音波が試験片に垂直に入射するときの垂直入射吸音率を測定した。得られた1000Hz~6400Hzの吸音率カーブから、1000Hz、2000Hz、4000Hz及び6000Hzの垂直入射吸音率を求めた。
[実施例1]
熱可塑性樹脂であるプロピレン単独重合体〔MFR=1000g/10分(ASTM D1238に準拠し温度230℃、荷重2.16kgで測定)、PPと表記する〕100質量部に対して帯電剤(Chimassorb944、BASFジャパン株式会社)1質量部を添加してなるプロピレン単独重合体組成物を280℃で溶融した。ノズル径0.20mmφメルトブローン用紡糸ノズルを装着したメルトブローン不織布製造装置を用い、溶融したプロピレン単独重合体組成物を単孔吐出量0.28g/min、紡糸ノズル両側から吹き出す加熱エア(温度:280℃、流量:320Nm/m/時)で繊維化をした。紡糸ノズルと金属ローラとの間にてこの繊維に対し水を120mL/min/mの条件で噴霧しながら、紡糸ノズルからの距離300mm、金属ローラ間の距離40mm、表面温度70℃の金属ローラ対の間に繊維を供給し、紡糸ノズルからの距離が450mmの位置にある金属製ベルトで繊維を捕集し、目付140g/mの不織布を得た。得られた不織布における各物性の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
繊維の捕集速度を調整して不織布の目付を380g/mとしたこと以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における各物性の測定結果を表1に示す。
[実施例3]
繊維を捕集する金属ローラ対の表面温度を50℃としたこと以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における各物性の測定結果を表1に示す。
[比較例1]
金属ローラ対を除去し、紡糸ノズルからの距離450mmの位置にある金属製ベルトで繊維を捕集した以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における各物性の測定結果を表1に示す。
[比較例2]
繊維を捕集する金属ローラ対の表面温度を30℃としたこと以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布を室温に放冷後、オーブンを用いて全体を150℃で10分間加熱することにより、比較例2の加熱後不織布を得た。得られた加熱後不織布の測定結果を表1に示す。
[比較例3]
繊維を捕集する金属ローラ対の表面温度を30℃としたこと以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における各物性の測定結果を表1に示す。
実施例1~実施例3にて得られた不織布は、比較例1~3にて得られた不織布と比較してQ値が高く、フィルタに用いたときの濾過性能が良好であることが示された。
さらに、実施例1~実施例3にて得られた不織布は、比較例1~3にて得られた不織布と比較して表1に示す各周波数での吸音性能が良好であることが示された。
1 スキン層
2 コア層
3 弧状構造
10 不織布の製造装置
11 一対のローラ
20 押出機
21 ホッパー
22 圧縮部
30 ダイ(紡糸口金)
31 紡糸ノズル
32 ガスノズル
40 捕集機構
41 多孔ベルト
42 ローラ
43 エア吸引部
44 ブロワー
50 ガス加熱装置
P 溶融した熱可塑性樹脂又は樹脂組成物
G 加熱ガス

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂を含有する繊維を含む不織布であり、
    前記不織布は、コア層及び前記コア層を挟持するように構成されるスキン層を備え、
    前記コア層は、不織布の幅方向と直交する断面にて、厚さ方向における一方の端部から厚さの中心方向に向かって湾曲し、かつ厚さ方向における他方の端部から厚さの中心方向に向かって湾曲して構成される不織布の長さ方向に突出した弧状構造が前記不織布の長さ方向に連続して積層されてなる積層構造を含み、
    前記スキン層における繊維の融着個数をA(個/0.2mm)、前記コア層における繊維の融着個数をB(個/0.2mm)としたときに、A-Bが50個/0.2mm以上である不織布。
  2. 前記熱可塑性樹脂がプロピレン系重合体を含む請求項1に記載の不織布。
  3. 不織布の目付が10g/m~500g/mである請求項1又は請求項2に記載の不織布。
  4. 前記繊維の平均繊維径が0.1μm~10μmである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. メルトブローン不織布である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 前記スキン層における繊維の融着個数Aが100個/0.2mm以上である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の不織布。
  7. 前記コア層における繊維の融着個数Bが250個/0.2mm以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の不織布。
  8. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の不織布を含むフィルタ。
  9. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の不織布を含む吸音材。
  10. 熱可塑性樹脂又は前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させ紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し繊維状物とする工程と、
    前記繊維状物を温度が40℃~160℃である2つのローラの間に供給して捕集する工程と、
    を含むメルトブローン不織布の製造方法。
  11. 前記紡糸口金から前記ローラまでの最短距離が100mm~500mmである請求項10に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
  12. 前記繊維状物とする工程にて、前記熱可塑性樹脂又は前記樹脂組成物の溶融温度が200℃~380℃である請求項10又は請求項11に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
  13. 前記加熱ガスの温度が200℃~380℃である請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
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