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JP7434707B2 - Frp前駆体、frp、積層板、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びにfrp前駆体の製造方法 - Google Patents

Frp前駆体、frp、積層板、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びにfrp前駆体の製造方法 Download PDF

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JP7434707B2 JP2018225341A JP2018225341A JP7434707B2 JP 7434707 B2 JP7434707 B2 JP 7434707B2 JP 2018225341 A JP2018225341 A JP 2018225341A JP 2018225341 A JP2018225341 A JP 2018225341A JP 7434707 B2 JP7434707 B2 JP 7434707B2
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Description

本発明は、FRP前駆体、FRP、積層板、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びにFRP前駆体の製造方法に関する。
FRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)は、ファイバー等の弾性率の高い材料を骨材とし、その骨材を、プラスチックのような母材(マトリックス)の中に入れて強度を向上させた複合材料であり、耐候性、耐熱性、耐薬品性及び軽量性を生かし、安価かつ軽量で高耐久性を有する複合材料である。該FRPは、造型性及び高強度を有することから、住宅機器、船舶、車両及び航空機等の構造材、並びに絶縁性を生かして電子機器等の幅広い分野で使用されている。電子機器に利用されているFRPとしてはプリプレグが挙げられ、硬化前のプリプレグはFRP前駆体に相当する。
電子機器、特にプリント配線板用途では、その製造工程における熱履歴及び電子機器における製品稼動時の熱に起因するFRPの熱膨張により、反り及びクラックの発生並びに絶縁信頼性の低下等の不具合が発生することがある。そのため、従来よりも熱膨張率の低いFRPの開発が切望されている。
ところで、前記FRPの製造方法としては、(1)骨材を敷き詰めた合わせ型に樹脂ワニスを注入するRTM(Resin Transfer Molding、樹脂トランスファー成形)法、(2)骨材を敷き、硬化剤を混合した樹脂ワニスを人の手によって脱泡しながら多重積層していくハンドレイアップ(Hand Lay-up;HLU)法、(3)樹脂ワニスを成形型へ吹き付けるスプレーアップ法、(4)予め骨材と樹脂ワニスとを混合したシート状のものを作製し、これを金型で圧縮成型するSMC(Sheet Molding Compound)プレス法等が利用されている。
プリント配線板用途では、厚みが薄く、かつ成型後の厚みのばらつき及びボイドがないこと等、他の用途と比較して、要求されるスペックが非常に高いため、通常はハンドレイアップ法で製造されているのが実情である。該ハンドレイアップ法では、予め骨材に樹脂組成物を塗布しておくことが、作業性及び周辺環境の観点から好ましく、工業的には、塗工機で骨材に樹脂ワニスを塗布した後、溶剤を除去し、次いで乾燥及び熱硬化を行うことで実施されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001-261862号公報
しかしながら、低熱膨張率化の効果がより大きな骨材、例えば、アラミド不織布(カレンダー処理無し)及び硬いガラス品種の織布等は、骨材強度が低いため、樹脂ワニスを塗布し、有機溶剤の除去及び乾燥を行う際に、FRP前駆体の自重が骨材強度を上回って骨材が切れてしまうという問題が生じ易く、また、骨材に塗工する樹脂量を低減するためにコーターと骨材との間の樹脂ワニスが入り込むスペースを狭くした際に骨材がちぎれてしまう等、作業性が悪くなる傾向にある。そのため、骨材を低熱膨張率化の効果がより大きな骨材に変更することは、検討はされるものの、工業的に実施することが困難であるために実際に実施されるには至らなかった。
本発明は、こうした事情に鑑み、骨材の特定によって熱膨張率の低いFRPを提供し得るFRP前駆体を提供すること、熱膨張率の低いFRPを提供すること、及び、該FRP前駆体を、骨材の折れ、切れ、しわ及び破れ等の不良を抑制しながら製造する方法、並びに、前記FRP前駆体又はFRPを用いた、積層板、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、(1)石英ガラスクロスを用いたFRP前駆体であれば熱膨張率の低いFRPを提供し得ること、及び(2)石英ガラスクロスを用いたFRP前駆体であっても、熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧含浸させる方法であれば、骨材の折れ、切れ、しわ及び破れ等の不良を抑制しながらFRP前駆体を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
本発明は下記[1]~[10]に関する。
[1]石英ガラスクロスと熱硬化性樹脂組成物とを含有してなるFRP前駆体。
[2]石英ガラスクロスに熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧含浸させてなるFRP前駆体。
[3]上記[1]又は[2]に記載のFRP前駆体を硬化してなるFRP。
[4]30~100℃の平均熱膨張率が9ppm/℃以下である、上記[3]に記載のFRP。
[5]上記[1]又は[2]に記載のFRP前駆体又は上記[3]又は[4]に記載のFRPを含有してなる積層板。
[6]上記[5]に記載の積層板上に金属箔を有する金属張積層板。
[7]上記[6]に記載の金属張積層板に配線パターンが形成された、プリント配線板。
[8]上記[7]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[9]石英ガラスクロスに熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧含浸させる工程を有する、FRP前駆体の製造方法。
[10]前記熱硬化性樹脂フィルムが、熱硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布する工程、及び塗布された熱硬化性樹脂組成物を乾燥する工程、を経て得られる、上記[9]に記載のFRP前駆体の製造方法。
本発明により、熱膨張率の低いFRPを提供し得るFRP前駆体を提供すること、熱膨張率の低いFRPを提供すること、及び、該FRP前駆体を、骨材の折れ、切れ、しわ及び破れ等の不良を抑制しながら製造する方法、並びに、前記FRP前駆体又はFRPを用いた、積層板、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
本発明のFRP前駆体の製造に利用し得る製造装置の一態様を示す概念図である。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料等は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
[FRP前駆体]
FRPとは、ファイバー等の弾性率の高い材料を骨材とし、その骨材を、プラスチックのような母材(マトリックス)の中に入れて強度を向上させた複合材料である。FRPは、住宅機器、船舶、車両及び航空機等の構造材、並びに電子機器等の幅広い分野で使用可能である。電子機器に利用されるFRPとしては、プリント配線板用のプリプレグを含有する積層板等が挙げられる。ここで、プリント配線板用のFRP前駆体としては、プリプレグが挙げられる。以下のFRP前駆体に関する説明は、プリプレグに関する説明と読み替えることもできる。
本発明のFRP前駆体は、石英ガラスクロスと熱硬化性樹脂組成物とを含有してなるFRP前駆体である。FRP前駆体の補強基材(骨材とも称する)として一般的によく利用されるガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いた織布又は短繊維を有機バインダーで接着したガラス織布が挙げられ、Eガラスを使用したガラス織布が多用されているのが現状である。
本発明では、骨材として石英ガラスクロスを使用することで、低熱膨張率化のさらなる向上を成し遂げた。石英ガラスクロスは骨材強度が低いため、石英ガラスクロスへ樹脂ワニスを塗布し、有機溶剤の除去及び乾燥を行う際に、FRP前駆体の自重が骨材強度を上回って石英ガラスクロスが折れたり切れたりしてしまう等の問題が生じ易いため、工業的に実施することが容易ではない上、価格の高い石英ガラスクロスを用いるにも関わらず歩留まりが低くなってしまうため、従来は採用できなかった。しかし、本発明では、後述するFRP前駆体の製造方法によって、石英ガラスクロスを骨材として使用した場合であっても、骨材の折れ、切れ、しわ及び破れ等の不良を抑制しながらFRP前駆体を製造することが可能になったため、石英ガラスクロスと熱硬化性樹脂組成物とを含有してなるFRP前駆体を提供することが可能となった。
石英ガラスクロスは、平均フィラメント径が好ましくは3.5~9μm(より好ましくは3.5~6μm)の石英ガラスフィラメントを好ましくは50~200本(より好ましくは50~100本)束ねてストランドとし、該ストランドを必要に応じて撚り掛けをするか又は撚り掛け処理を施さずに構成される石英ガラス糸を、タテ糸及びヨコ糸の織り密度がそれぞれ好ましくは50~120本/cm(より好ましくは50~80本/cm)で織布されてなるガラスクロスである。また、石英ガラスクロスは、タテ糸及びヨコ糸を合わせた総フィラメント数に特に制限はないが、例えば50,000~300,000本/mであってもよい。
石英ガラスクロスは、SiO純度が好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは99.9%以上、最も好ましくは99.99%以上のガラスクロスである。材料となる石英ガラスは、溶融石英ガラスであってもよいし、合成石英ガラスであってよいが、合成石英ガラスであることが好ましい。
石英ガラスクロスは表面処理されていなくてもよいが、各種シラン系カップリング剤によって表面処理されたものであってもよい。
石英ガラスクロスとしては、特に制限されるものではないが、例えば、比重1.8~2.5、軟化点1,200~1,800℃、弾性率60~90GPa、熱膨張率0.5~0.6ppm/℃の石英ガラスを用いて得られた石英ガラスクロスが好ましい。また、使用する石英ガラスクロスは、特に制限されるものではないが、坪量9~15g/m(好ましくは坪量11~13.5g/m)の石英ガラスクロスであることが好ましい。
FRP前駆体の厚み(乾燥されたFRP前駆体の厚み)は、特に制限されるものではないが、2~70μmとすることができ、5~50μmとすることもでき、10~40μmとすることもでき、15~35μmとすることもできる。
〔熱硬化性樹脂組成物〕
前記熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含有する。また、さらに、相分離構造(海島構造)を形成する観点から、変性シリコーンオイルを含有することが好ましい。他にも、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材、カップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、揺変性付与剤、増粘剤、チキソ性付与剤、可撓性材料、界面活性剤、光重合開始材等が挙げられ、これらから選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
以下、熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について順に説明する。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また、特にこれらに制限されず、公知の熱硬化性樹脂を使用できる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点から、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂及びマレイミド樹脂を併用することも好ましい。
エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールT型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニル型エポキシ樹脂、テトラフェニル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、エチレン性不飽和基を骨格に有するエポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、これらのエポキシ樹脂にリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂も使用できる。エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、絶縁信頼性及び耐熱性の観点から、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の市販品としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である「EPICLON(登録商標)N-660」(DIC株式会社製)、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である「NC-7000L」(日本化薬株式会社製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、「EPICLON(登録商標)840S」(DIC株式会社製)、「jER828EL」、「YL980」(以上、三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
ここで、エポキシ樹脂としては、特に制限されるわけではないが、柔軟性を付与する観点から、1分子中に2個以上のエポキシ基を有すると共に、アルキレン基の炭素数3以上のアルキレングリコールに由来する構造単位を主鎖に有するエポキシ樹脂であってもよい。また、柔軟性をより向上させる観点からは、アルキレン基の炭素数3以上のアルキレングリコールに由来する構造単位は、2個以上連続して繰り返していてもよい。
アルキレン基の炭素数3以上のアルキレングリコールとしては、アルキレン基の炭素数4以上のアルキレングリコールが好ましい。アルキレン基の炭素数の上限は、特に限定されないが、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。
また、エポキシ樹脂として、難燃性の観点から、ハロゲン化エポキシ樹脂を用いてもよい。
マレイミド樹脂としては、未変性マレイミド樹脂であってもよいし、変性マレイミド樹脂であってもよい。変性マレイミド樹脂としては、p-アミノフェノール等のモノアミン化合物とマレイミド樹脂とを反応させた変性マレイミド樹脂;p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のジアミン化合物とマレイミド樹脂とを反応させた変性マレイミド樹脂;モノアミン化合物及びジアミン化合物とマレイミド樹脂とを反応させた変性マレイミド樹脂;等が挙げられる。
マレイミド樹脂としては、例えば、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド;N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2’-ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等の芳香族炭化水素基含有マレイミドが挙げられる。これらは1種を単独で使用してよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、有機溶剤への溶解性の観点からは、フェノキシ基を有するマレイミド樹脂であることが好ましく、反応性が高く、より耐熱性を良好にできるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンがより好ましい。
(変性シリコーンオイル)
剛直であり高弾性な熱硬化性樹脂に対して、柔軟で低弾性である変性シリコーンオイルを併用することによって、高弾性な部分と低弾性な部分を有する相分離構造となり、応力を緩和し、低熱膨張率化に寄与し、そりを抑制する効果が得られる。変性シリコーンオイルは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
変性シリコーンオイルとは、直鎖状のシロキサン骨格を有し、分子構造中に、水素又は炭化水素基以外の基を有するものを言う。変性シリコーンオイルとしては、変性シリコーンオイルとして市販されているものを使用することができる。中でも、分子構造中にジメチルシリコーン骨格を有するものが好ましい。また、分子構造中に反応性基を有するものが好ましく、分子構造中にジメチルシリコーン骨格を有し、かつ分子構造中に熱硬化性樹脂との反応が可能な、反応性基を有するものが特に好ましい。
反応性基としては、ポリシロキサンの側鎖の一部に導入されたものであってもよいし、ポリシロキサンの片末端又は両末端に導入されたものであってもよいし、ポリシロキサンの側鎖に加えて、片末端又は両末端に導入されたものであってもよい。
上記反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メタクリル基、メルカプト基、カルボキシル基、アルコキシ基及びシラノール基などが挙げられる。
分子構造中にエポキシ基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端にエポキシ基を有する「X-22-163」(官能基当量200)、「KF-105」(官能基当量490)、「X-22-163A」(官能基当量1,000)、「X-22-163B」(官能基当量1,750)、「X-22-163C」(官能基当量2,700)、両末端に脂環式エポキシ基を有する「X-22-169AS」(官能基当量500)、「X-22-169B」(官能基当量1,700)、一方の末端にエポキシ基を有する「X-22-173DX」(官能基当量4,500)、側鎖及び両末端にエポキシ基を有する「X-22-9002」(官能基当量5,000)、側鎖にエポキシ基を有する「X-22-343」(官能基当量525)、「KF-101」(官能基当量350)、「KF-1001」(官能基当量3,500)、「X-22-2000」(官能基当量620)、「X-22-4741」(官能基当量2,500)、「KF-1002」(官能基当量4,300)、側鎖に脂環式エポキシ基を有する「X-22-2046」(官能基当量600)及び「KF-102」(官能基当量3,600)(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
分子構造中にアミノ基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端にアミノ基を有する「KF-8010」(官能基当量430)、「X-22-161A」(官能基当量800)、「X-22-161B」(官能基当量1,500)、「KF-8012」(官能基当量2,200)、「KF-8008」(官能基当量5,700)、「X-22-9409」(官能基当量700)、「X-22-1660B-3」(官能基当量2,200)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY-16-853U」(官能基当量460)、「BY-16-853」(官能基当量650)、「BY-16-853B」(官能基当量2,200)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、側鎖にアミノ基を有する「KF-868」(官能基当量8,800)、「KF-865」(官能基当量5,000)、「KF-864」(官能基当量3,800)、「KF-880」(官能基当量1,800)、「KF-8004」(官能基当量1,500)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
分子構造中に水酸基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端に水酸基を有する「KF-6001」(官能基当量900)、「KF-6002」(官能基当量1,600)、両末端にフェノール性水酸基を有する「X-22-1821」(官能基当量1,470)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY-16-752A」(官能基当量1,500)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、一方の末端に水酸基を有する「X-22-170BX」(官能基当量2,800)、「X-22-170DX」(官能基当量4,670)、「X-22-176DX」(官能基当量1,600)、「X-22-176F」(官能基当量6,300)(以上、信越化学工業株式会社製)、側鎖に水酸基を有する「X-22-4039」(官能基当量970)「X-22-4015」(官能基当量1,870)(以上、信越化学工業株式会社製)、両末端ポリエーテル中に水酸基を有する「SF8427」(官能基当量930、東レ・ダウコーニング株式会社製)、「X-22-4952」(官能基当量1,100、信越化学工業株式会社製);側鎖ポリエーテル中に水酸基を有する「FZ-2162」(官能基当量750)及び「SH3773M」(官能基当量800)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
分子構造中にメタクリル基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端にメタクリル基を有する「X-22-164A」(官能基当量860)、「X-22-164B」(官能基当量1,630)及び一方の末端にメタクリル基を有する「X-22-174DX」(官能基当量4,600)(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
分子構造中にメルカプト基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端にメルカプト基を有する「X-22-167B」(官能基当量1,670)、側鎖にメルカプト基を有する「KF-2001」(官能基当量1,900)、「KF-2004」(官能基当量30,000)(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
分子構造中にカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端にカルボキシル基を有する「X-22-162C」(官能基当量2,300)、一方の末端にカルボキシル基を有する「X-22-3710」(官能基当量1,450)及び側鎖にカルボキシル基を有する「X-22-3701E」(官能基当量4,000)(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
分子構造中にアルコキシ基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、側鎖にアルコキシ基を有する「FZ-3704」(官能基当量150)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
分子構造中にシラノール基を有する変性シリコーンオイルは、市販品を用いることができ、例えば、両末端にシラノール基を有する「X-21-5841」(官能基当量500、信越化学工業株式会社製)及び「Z-6018」(官能基含有量6質量%、東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
これらのうち、特にエポキシ基、アミノ基又は水酸基で変性されたシリコーンオイルが好ましい。
以上の中でも、反応性の観点から、両末端変性シリコーンオイルが好ましく、相溶性の観点から、官能基当量5,000以下のものがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が変性シリコーンオイルを含有する場合、その含有量は、特に制限されるものではないが、熱硬化性樹脂及び後述する必要に応じて含有する硬化剤の配合量の総量100質量部に対して、2~80質量部であることが好ましい。前記変性シリコーンオイルの配合量が2質量部以上であると、相分離構造が生じ易くなる傾向にある。同様の観点から、変性シリコーンオイルの配合量は5質量部以上がより好ましく、7質量部以上がさらに好ましい。一方、変性シリコーンオイルの配合量の上限値については特に制限はないが、FRP前駆体の成形性及び接着性の観点から、60質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。
(硬化剤)
硬化剤としては、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、活性エステル基含有化合物等のエポキシ樹脂用硬化剤などが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂以外の樹脂である場合、その熱硬化性樹脂用の硬化剤として公知のものを用いることができる。硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系硬化剤としては、特に制限されないが、クレゾールノボラック型硬化剤、ビフェニル型硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ナフチレンエーテル型硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤等が好ましく挙げられる。
フェノール系硬化剤の市販品としては、KA-1160、KA-1163、KA-1165(いずれもDIC株式会社製)等のクレゾールノボラック型硬化剤;MEH-7700、MEH-7810、MEH-7851(いずれも明和化成株式会社製)等のビフェニル型硬化剤;フェノライト(登録商標)TD2090(DIC株式会社製)等のフェノールノボラック型硬化剤;EXB-6000(DIC株式会社製)等のナフチレンエーテル型硬化剤;LA3018、LA7052、LA7054、LA1356(いずれもDIC株式会社製)等のトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤などが挙げられる。
前記シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限はないが、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテル等が挙げられる。
前記酸無水物系硬化剤としては、特に制限はないが、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
前記アミン系硬化剤としては、特に制限はないが、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族アミン;メタフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミン(但し、後述の酸性置換基を有するアミン化合物を除く。);p-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等の酸性置換基を有するアミン化合物;などが挙げられる。
また、硬化剤としては、ユリア樹脂等も用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂及び後述する必要に応じて含有する硬化剤の配合量の総量100質量部に対して、好ましくは3~150質量部、より好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは5~50質量部、特に好ましくは5~25質量部である。
なお、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、その含有量は、官能基当量を用いて表してもよく、また、そうすることが好ましい。具体的には、(熱硬化性樹脂の質量/官能基当量)≒(硬化剤の質量/熱硬化性樹脂と反応し得る官能基当量)×定数Cとなるように硬化剤を含有させることが好ましい。定数Cは、硬化剤の官能基の種類によって変化し、該官能基がフェノール性水酸基の場合には0.8~1.2が好ましく、アミノ基の場合には0.2~0.4が好ましく、活性エステル基の場合には0.3~0.6が好ましい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合には、前記式は、(エポキシ樹脂の質量/エポキシ基当量)≒(硬化剤の質量/エポキシ基と反応し得る官能基当量)×定数Cとなる。
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、前記熱硬化性樹脂の硬化に用いられる一般的な硬化促進剤を使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化促進剤としては、イミダゾール化合物及びその誘導体;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機金属塩又は有機金属錯体;リン系化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。硬化反応の促進の観点から、イミダゾール化合物及びその誘導体が好ましい。
イミダゾール化合物及びその誘導体の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-1-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン等のイミダゾール化合物;2-メチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾリン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物;前記イミダゾール化合物とトリメリト酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とジイソシアネート化合物との付加反応物;前記イミダゾール化合物と臭化水素酸との付加反応物などが挙げられる。イミダゾール化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂及び後述する必要に応じて含有する硬化剤の配合量の総量100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.05~10質量部、さらに好ましくは0.1~6質量部である。
(無機充填材)
無機充填材により、熱膨張率の低減及び塗膜強度を向上させることができる。
無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化アルミニウム、ジルコニア、ムライト、マグネシア、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、ガラス短繊維、ガラス粉及び中空ガラスビーズ等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく使用される。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。これらの中でも、熱膨張率の低減、比誘電率及び誘電正接の低減の観点から、シリカ、アルミナが好ましく、シリカがより好ましい。
前記シリカとしては、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)が挙げられる。
無機充填材は、耐湿性を向上させるためにシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていてもよく、分散性を向上させるために疎水性化処理されていてもよい。
無機充填材の平均一次粒子径としては、特に制限されるものではないが、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.1~5μmである。ここで、「平均一次粒子径」とは、凝集した粒子の平均径、つまり二次粒子径ではなく、凝集していない単体での平均粒子径を指す。当該一次平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で測定して求めることができる。また、該平均一次粒子径は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径である。
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、その含有量は、添加目的によっても異なるが、熱硬化性樹脂及び後述する必要に応じて含有する硬化剤の配合量の総量100質量部に対して、好ましくは20~400質量部、より好ましくは50~350質量部、さらに好ましくは100~300質量部、特に好ましくは150~270質量部である。無機充填材の含有量を前記範囲とすることで、FRP前駆体の成形性及び低熱膨張性を良好な状態に維持することができる傾向にある。
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、熱可塑性樹脂及びエラストマ、並びに、難燃剤、酸化防止剤、有機充填材、流動調整剤等の添加剤、などが挙げられる。
(有機溶剤)
熱硬化性樹脂フィルムを形成し易くするため、樹脂組成物へさらに有機溶剤を含有させてもよい。本明細書では、有機溶剤を含有する樹脂組成物を、樹脂ワニスと称することがある。
該有機溶剤としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブタノン、シクロヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらの中でも、溶解性及び塗布後の外観の観点から、ケトン系溶剤が好ましく、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましく、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンがさらに好ましい。
有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の含有量は、塗布容易性の観点から、例えば、樹脂ワニスの不揮発分が好ましくは20~85質量%、より好ましくは40~80質量%となるように有機溶剤の使用量を調節する。
(熱硬化性樹脂組成物の調製方法)
前記熱硬化性樹脂組成物の調製方法に特に制限はなく、従来公知の調製方法を採用できる。
例えば、前記有機溶剤中に、熱硬化性樹脂及び必要に応じてその他の成分を加えた後、各種混合機を用いて混合及び攪拌することにより、樹脂ワニスとして調製することができる。前記混合機としては、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式及び自転公転式分散方式等の混合機が挙げられる。
(熱硬化性樹脂フィルムの形成方法)
本発明では、前記樹脂ワニスから熱硬化性樹脂フィルム(以下、単に樹脂フィルムと称することもある。)を形成し、該樹脂フィルムを用いて後述する方法にてFRP前駆体を製造する。
熱硬化性樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布する工程(以下、塗布工程と称することがある。)、及び塗布された熱硬化性樹脂組成物を乾燥する工程(以下、乾燥工程と称することがある。)、を経ることによって、キャリアフィルム付き熱硬化性樹脂フィルムとして形成することができる。
熱硬化性樹脂フィルムの厚み(乾燥後の厚み)は、特に制限されるものではないが、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~50μm、さらに好ましくは5~30μmである。
前記塗布工程では、キャリアフィルム上に、熱硬化性樹脂組成物を、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置で塗布することができる。
キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリビニルフルオライド、ポリイミド、などの有機フィルム;銅、アルミニウム、又はこれら金属の合金、からなる金属フィルムなどが挙げられる。キャリアフィルムの厚みは、5~100μmの範囲から適宜選択すればよいが、好ましくは5~60μm、より好ましくは15~45μmである。
キャリアフィルムには離型処理が施されていてもよい。
前記乾燥工程において、熱硬化性樹脂組成物を塗布して形成される塗膜の乾燥は、熱風乾燥、遠赤外線、又は、近赤外線を用いた乾燥機等を用いることができる。乾燥温度としては、好ましくは60~150℃、より好ましくは80~140℃、さらに好ましくは100~130℃である。また、乾燥時間としては、好ましくは1~60分、より好ましくは2~30分、さらに好ましくは5~20分である。
また、本発明の熱硬化性樹脂フィルムは、キャリアフィルムと接する面とは反対側の面に保護フィルムを設けることもできる。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどを用いることができる。また、上述するキャリアフィルムと同様の重合体フィルムを用いてもよく、異なる重合体フィルムを用いてもよい。該保護フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムを石英ガラスクロスに加熱加圧含浸させる前に剥離するものである。
[FRP前駆体の製造方法]
本発明のFRP前駆体の製造方法は、石英ガラスクロスに熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧含浸させる工程(以下、加熱加圧含浸工程と称することがある。)を有する。ゆえに、本発明は、石英ガラスクロスに熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧含浸させてなるFRP前駆体も提供する。
前記加熱加圧含浸工程は、特に制限されるものではないが、例えば、図1に示すFRP前駆体の製造装置等を利用することによって工業的に実施できる。
以下、図1を参照して、FRP前駆体の製造装置1について説明する。なお、FRP前駆体の製造装置1は、一対の樹脂フィルム(熱硬化性樹脂フィルム)54を、それぞれ、シート状の骨材40の両面に貼付する装置として説明するが、1つの樹脂フィルム54をシート状の骨材40の一方の表面にのみ貼付する装置としてもよい。この場合、図1において、骨材40より下側(又は上側)にある、一方の樹脂フィルム送出装置3、保護フィルム剥がし機構4、及び、保護フィルム巻取装置5は不要である。また、図1に関する下記説明はあくまで一実施態様であって、下記説明に制限されるものではない。
FRP前駆体の製造装置1は、大気圧下におかれる。ここで、本明細書中、「大気圧下」は「常圧下」と同義である。大気圧下でFRP前駆体を製造する場合、例えば真空ラミネータ等を採用した場合に生じ易い作業性の問題を避けられる点で有利である。
FRP前駆体の製造装置1は、骨材送出装置(本発明では石英ガラスクロス送出装置)2と、一対の樹脂フィルム送出装置3及び3と、シート加熱圧接装置6と、FRP前駆体巻取装置8と、を備える。FRP前駆体の製造装置1は、さらに、シート加圧冷却装置7と、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4と、一対の保護フィルム巻取装置5及び5と、を備えることが好ましい。
骨材送出装置2は、シート状の骨材(本発明では石英ガラスクロス)40が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた骨材40を送り出す装置である。図1において、骨材送出装置2は、骨材40をロールの下側からシート加熱圧接装置6に向けて送り出している。
一対の樹脂フィルム送出装置3及び3は、保護フィルム付き樹脂フィルム50が巻かれたロールと、送り出される保護フィルム付き樹脂フィルム50に所定の張力を付与させながらロールを回転可能に支持する支持機構とを有し、保護フィルム付き樹脂フィルム50が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた保護フィルム付き樹脂フィルム50を送り出す装置である。保護フィルム付き樹脂フィルム50は、樹脂フィルム54と、樹脂フィルム54の片方の骨材側フィルム表面(樹脂フィルム54の両表面のうち、骨材40側の表面)54aに積層された保護フィルム52とを含むシート状のフィルムである。
一対の樹脂フィルム送出装置3及び3は、それぞれ、送り出された骨材40の表面40a側及び裏面40b側に位置する。
一方の樹脂フィルム送出装置3は、送り出された骨材40の表面40a側に位置し、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム50をロールの下側から一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出す装置である。
同様に、他方の樹脂フィルム送出装置3は、送り出された骨材40の裏面40b側に位置し、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50をロールの上側から他方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出す装置である。
一対の保護フィルム剥がし機構4及び4は、それぞれ、送り出された骨材40の表面40a側及び裏面40b側に位置する転向ロールである。
一方の保護フィルム剥がし機構4は、一方の樹脂フィルム送出装置3から送り出され、一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて進む保護フィルム付き樹脂フィルム50を、回転する転向ロールの表面で受け、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム50のうち一方の樹脂フィルム54をシート加熱圧接装置6に向けて進ませると共に、一方の保護フィルム52を一方の保護フィルム巻取装置5に向けて進ませることにより、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム50から一方の保護フィルム52を剥がす機構である。これにより、一方の樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
同様に他方の保護フィルム剥がし機構4は、他方の樹脂フィルム送出装置3から送り出され、他方の保護フィルム剥がし機構4に向けて進む他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50を、回転する転向ロールの表面で受け、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50のうち他方の樹脂フィルム54をシート加熱圧接装置6に向けて進ませると共に、他方の保護フィルム52を他方の保護フィルム巻取装置5に向けて進ませることにより、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50から他方の保護フィルム52を剥がす機構である。これにより、他方の樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
一対の保護フィルム巻取装置5及び5は、それぞれ、送り出された骨材40の表面40a側及び裏面40b側に位置し、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4で剥がされた、保護フィルム52及び52を巻き取る巻取装置である。
シート加熱圧接装置6は、一対の加圧ロールと、一対の加圧ロールに圧縮力を付与する機構(図示せず)とを有する。該一対の加圧ロールは、所定の設定された温度で加熱ができるよう、内部に加熱体を有する。
シート加熱圧接装置6は、入り込んだ骨材40に樹脂フィルム54及び54を回転する一対の加圧ロールで圧接させてシート状のFRP前駆体60を形成する(フィルム圧接工程)と共に、FRP前駆体60をシート加圧冷却装置7に向けて送り出す。具体的には、骨材送出装置2から送り出された骨材40の表面40a及び裏面40bに、それぞれ、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4から送り出された樹脂フィルム54及び54が積層するように、骨材送出装置2から送り出された骨材40と、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4からそれぞれ送り出された樹脂フィルム54及び54とが、一対の加圧ロールの間に入り込む。
このとき、一方の樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54a側が骨材40の表面40a側に接着するように、一方の樹脂フィルム54が骨材40に積層し、また、他方の樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54a側が骨材40の裏面40b側に接着するように、他方の樹脂フィルム54が骨材40に積層してFRP前駆体60が形成される。シート加熱圧接装置6から送り出されたFRP前駆体60は高温状態である。
シート加圧冷却装置7は、一対の冷却加圧ロールと、一対の冷却加圧ロールに圧縮力を付与する機構(図示せず)とを有する。一対の冷却加圧ロールは、シート加熱圧接装置6から送り出された、高温のFRP前駆体60を回転する一対の冷却加圧ロールで圧縮すると共に冷却し、FRP前駆体巻取装置8に送り出す。
FRP前駆体巻取装置8は、シート加圧冷却装置7から送り出されたシート状のFRP前駆体60を巻き取るロールと、ロールを回転させる駆動機構(図示せず)とを有する。
以上のFRP前駆体の製造装置1は、以下のように動作する。
先ず、骨材送出装置2からシート状の骨材40を、シート加熱圧接装置6に向けて送り出す。このとき、骨材40の表面40a及び裏面40bは、露出している。
他方、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム50を一方の樹脂フィルム送出装置3のロールの下側から一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出している。また、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50を他方の樹脂フィルム送出装置3のロールの上側から他方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出している。
次に、送り出された一方の保護フィルム付き樹脂フィルム50は、一方の保護フィルム剥がし機構4である転向ロールに架けられ転向する際に、骨材側フィルム表面54aが露出するように、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム50から一方の保護フィルム52を剥がして一方の樹脂フィルム54をシート加熱圧接装置6に向けて進ませる。これにより、一方の樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54aが露出する。同様に、送り出された他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50は、他方の保護フィルム剥がし機構4である転向ロールに架けられ転向する際に、骨材側フィルム表面54aが露出するように、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム50から他方の保護フィルム52を剥がして他方の樹脂フィルム54をシート加熱圧接装置6に向けて進ませる。これにより、他方の樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
剥がされた一対の保護フィルム52及び52は、それぞれ、一対の保護フィルム巻取装置5及び5で巻き取られる。
骨材送出装置2から送り出された骨材40に、樹脂フィルム54及び54がそれぞれ積層するように、骨材送出装置2から送り出された骨材40と、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4からそれぞれ送り出された樹脂フィルム54及び54とが一対のロールの間に入り込む。さらに、常圧下において、一対の樹脂フィルム54及び54を、骨材40にシート加熱圧接装置6で圧接させてFRP前駆体60を得る(フィルム圧接工程)。このとき、シート加熱圧接装置6が有する一対の加圧ロールの内部にある加熱体の温度制御をすることにより、一対の加圧ロールを所定の温度に維持し、フィルム圧接工程をする際に加熱しながら加圧をする。
ここで、本発明の一態様においては、骨材に樹脂フィルムを加熱圧着する際、加圧ロールの温度は、樹脂充填性の観点から、樹脂フィルムの最低溶融粘度を示す温度の+5℃~+35℃の範囲の温度が好ましく、樹脂フィルムの最低溶融粘度を示す温度の+8℃~+32℃がより好ましく、樹脂フィルムの最低溶融粘度を示す温度の+10℃~+30℃がさらに好ましい。具体的には、加圧ロールの温度は、例えば、80~170℃が好ましく、100~150℃がより好ましく、115~145℃がさらに好ましい。
加圧ロールの温度が上記条件のとき、加圧ロールのロール線圧は、樹脂充填性の観点から、好ましくは0.2~1.0MPa、より好ましくは0.3~0.8MPa、さらに好ましくは0.3~0.6MPaである。
加圧ロールの温度及び線圧が上記条件のとき、FRP前駆体を送り出す速度は、樹脂充填性の観点から、好ましくは0.5~2.0m/分、より好ましくは0.7~1.5m/分、さらに好ましくは0.7~1.2m/分である。
シート加熱圧接装置6から送り出されたFRP前駆体60を、シート加圧冷却装置7により、さらに加圧し、また、冷却する。
シート加圧冷却装置7から送り出されたFRP前駆体60を、FRP前駆体巻取装置8により、巻き取る。
[積層板及び金属張積層板]
本発明は、前記FRP前駆体又は該FRP前駆体を硬化してなるFRPを含有してなる積層板と共に、該積層板上に金属箔を有する金属張積層板も提供する。FRP前駆体を硬化してなるFRPとは、B-ステージ化(半硬化)された状態であるFRP前駆体をC-ステージ化(硬化)させて得られるFRPであり、本発明は当該FRPも提供する。本発明のFRPは、実施例に記載の方法に従って測定した30~100℃の平均熱膨張率が9ppm/℃以下となる傾向にあり、より好ましいFRPでは6ppm/℃以下にもなり、さらに好ましいFRPでは4ppm/℃以下にもなる。該平均熱膨張率の下限値に特に制限はないが、1ppm/℃以上となることが多く、2ppm/℃以上であってもよい。
具体的には、前記FRP前駆体1枚を又は2枚以上(好ましくは2~20枚)重ねた状態で、所定条件下で積層成形することにより、本発明の積層板を製造することができる。FRP前駆体の間に内層回路加工を行ってある基板を挟んでもよい。当該積層成形により、FRP前駆体は硬化(Cステージ化)されてFRPとなる。
また、前記FRP前駆体1枚を又は2枚以上(好ましくは2~20枚)重ね、その片面又は両面、好ましくは両面に、金属箔を配置した構成で積層成形することにより、金属張積層板を製造することができる。
前記積層条件としては、プリント配線板に使われる積層板の製造に利用される公知の条件を採用することができる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間で積層する条件を採用できる。
金属箔の厚みとしては、好ましくは40μm以下、より好ましくは1~40μm、さらに好ましくは5~40μm、よりさらに好ましくは5~35μm、特に好ましくは5~25μm、最も好ましくは5~17μmである。
金属箔の金属としては、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。合金としては、銅系合金、アルミニウム系合金、鉄系合金が好ましい。銅系合金としては、銅-ニッケル合金等が挙げられる。鉄系合金としては、鉄-ニッケル合金(42アロイ)等が挙げられる。これらの中でも、金属としては、銅、ニッケル、42アロイがより好ましく、入手容易性及びコストの観点からは、銅がさらに好ましい。
[プリント配線板]
また、本発明は、前記積層板に配線パターンが形成されたプリント配線板も提供する。配線パターンの形成方法としては、特に限定されるものではないが、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)又はモディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法が挙げられる。
[半導体パッケージ]
本発明は、本実施形態のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージも提供する。本実施形態の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、各例で製造したFRP前駆体又は銅張積層板を用い、下記方法に従って各評価を行った。
(1.骨材の不良)
各例においてFRP前駆体を製造する際の、熱硬化性樹脂ワニスを塗工した後の骨材(石英ガラスクロス)の不良(骨材の折れ、切れ、しわ、破れ)について目視で観察した。
また、骨材の不良の状況から、工業的に製造することが可能か否かを判断した。
(2.熱膨張率)
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「TMA2940」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向又はY方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃の平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。なお、図1の製造装置を用いたFRP前駆体の製造時において、骨材の流れ方向をX方向とし、幅方向をY方向とした。
[調製例1]熱硬化性樹脂ワニス1(熱硬化性樹脂組成物1)の調製
両末端エポキシ変性シロキサン「X-22-163A」(信越化学工業株式会社製、エポキシ当量:1,000g/eq)10質量部、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「NC-7000L」(日本化薬株式会社製、エポキシ当量:223~238g/eq)40質量部、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン「BMI-4000」(大和化成工業株式会社製)40質量部、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン「BAPP」(和歌山精化工業株式会社製)9質量部、イソシアネートマスクイミダゾール「G-8009L」(第一工業製薬株式会社製)0.2質量部及び球状溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)200質量部をメチルエチルケトン中で混合及び攪拌し、固形分濃度65質量%の熱硬化性樹脂ワニス1を調製した。
[実施例1]FRP前駆体Aの作製
(熱硬化性樹脂フィルムaの作製)
調製例1で得た熱硬化性樹脂ワニス1を580mm幅のPETフィルム(G-2:帝人デュポンフィルム株式会社製)に塗布し、120℃で10分乾燥させて熱硬化性樹脂フィルムaを作製した。前記塗布は、塗布幅525mmで、乾燥後の厚みが10μmになるように塗布量を調整した。
(FRP前駆体Aの作製)
骨材としての石英ガラスクロス(IPC#1017、坪量12.5g/m、基材幅530mm、SiO純度99.99%、旭シュエーベル株式会社製)と、上記で得た熱硬化性樹脂フィルムaとを用い、図1に示す製造装置によって前記石英ガラスクロスの両面に熱硬化性樹脂フィルムaを加熱加圧含浸させた。この際、シート加熱圧接装置6における加圧ロール条件は、ロール温度130℃、線圧0.4MPa及び速度1.0m/分とした。
その後、シート加圧冷却装置7で冷却し、FRP前駆体巻取装置8で巻取りを行い、FRP前駆体Aを作製した。該FRP前駆体Aの作製において、前記評価方法に従って骨材の不良の有無について観察し、骨材の不良の状況から、工業的に製造することが可能か否かを判断した。結果を表1に示す。
(銅張積層板の作製)
上記で得たFRP前駆体を4枚重ね、これを、厚み12μmの銅箔「GTS-12」(古河電気工業株式会社製)2枚を用いて挟み込み、下記積層条件1にて銅張積層板Aを作製した。該銅張積層板Aを用いて、前記測定方法に従って熱膨張率を測定した。結果を表1に示す。
(積層条件1)
昇温速度3℃/分で25℃から185℃へ昇温し、185℃で90分保持後、30分冷却(計173分)
製品圧力(銅箔で挟まれた4枚のFRP前駆体にかかる圧力):4MPa(昇温開始から冷却終了まで)
[参考例1]FRP前駆体Bの作製
横型乾燥塗工機(株式会社ヒラノテクシード製)を用いて、石英ガラスクロス(IPC#1017、坪量12.5g/m、基材幅530mm、旭シュエーベル株式会社製)に対して、調製例1で調製した熱硬化性樹脂ワニス1を塗工した。その後、120℃で10分加熱乾燥し、厚み25μmのFRP前駆体Bを作製した。該FRP前駆体Bの作製において、前記評価方法に従って骨材の不良の有無について観察し、骨材の不良の状況から、工業的に製造することが可能か否かを判断した。結果を表1に示す。
[比較例1]FRP前駆体Cの作製
実施例1において、骨材として、石英ガラスクロスの代わりにEガラスクロス(IPC#1017、坪量12.5g/m、基材幅530mm、SiO純度52~56%、旭シュエーベル株式会社製)を使用したこと以外は同様にして操作を行い、FRP前駆体C及び銅張積層板Cを作製した。該FRP前駆体Cの作製において、前記評価方法に従って骨材の不良の有無について観察し、骨材の不良の状況から、工業的に製造することが可能か否かを判断した。さらに、該銅張積層板Cを用いて、前記測定方法に従って熱膨張率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007434707000001
表1中の実施例1より、骨材として石英ガラスクロスを用いた場合であっても、熱硬化性樹脂フィルムを骨材へ加熱加圧含浸することで、石英ガラスクロスの不良を発生させずに、低熱膨張率のFRP前駆体及び銅張積層板を製造できることが分かった。
また、参考例1より、石英ガラスクロスの不良を発生させずに、低熱膨張率のFRP前駆体及び銅張積層板を製造するためには、樹脂ワニスを石英ガラスクロスへ塗工する方法では、石英ガラスクロスの不良が発生してしまい、工業的な製造はできないことが確認された。
さらに、比較例1より、骨材として石英ガラスクロスの代わりに汎用のEガラスクロスを使用した場合には、低熱膨張率の点で実施例1よりも劣る結果となった。
本発明のFRP前駆体は、従来のものよりも低熱膨張率を有するため、住宅機器、船舶、車両及び航空機等の構造材、並びに電子機器等の幅広い分野で使用できるが、特に、電子機器に利用されているプリプレグとして有用である。
1 FRP前駆体の製造装置
2 骨材送出装置
3 樹脂フィルム送出装置
4 保護フィルム剥がし機構
5 保護フィルム巻取装置
6 シート加熱圧接装置
7 シート加圧冷却装置
8 FRP前駆体巻取装置
40 骨材
40a 骨材の表面(骨材の一方の表面、骨材両表面の一方)
40b 骨材の裏面(骨材の他方の表面、骨材両表面の他方)
50 保護フィルム付き樹脂フィルム
52 保護フィルム
54 樹脂フィルム(熱硬化性樹脂フィルム)
54a 樹脂フィルムの骨材側の表面(骨材側フィルム表面)
60 FRP前駆体

Claims (3)

  1. 坪量9~15g/mの石英ガラスクロスに熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧含浸させる工程を有する、FRP前駆体の製造方法であって、前記石英ガラスクロスが、平均フィラメント径3.5~9μmの石英ガラスフィラメントを50~100本束ねてストランドとし、該ストランドを撚り掛けするか又は撚り掛け処理を施さずに構成される石英ガラス糸を織布してなる石英ガラスクロスであ
    前記熱硬化性樹脂フィルムの最低溶融粘度を示す温度の+5℃~+35℃の範囲の温度を有する加圧ロールによって前記熱硬化性樹脂フィルムと前記石英ガラスクロスとを常圧下で圧接する工程を有し、前記加圧ロールのロール線圧が0.2~1.0MPaであり、FRP前駆体を送り出す速度が0.5~2.0m/分である、FRP前駆体の製造方法。
  2. 前記熱硬化性樹脂フィルムが、熱硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布する工程、及び塗布された熱硬化性樹脂組成物を乾燥する工程、を経て得られる、請求項に記載のFRP前駆体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法により得られるFRP前駆体を硬化する工程を有する、FRPの製造方法。
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