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JP7429243B2 - 油路構造 - Google Patents

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Description

本発明は、油路構造に関する。
JP2014-020299Aには、油路が内部に形成されたオイルポンプカバーが開示されている。
車両用の自動変速機では、変速機構部を収容する変速機ケースと、トルクコンバータを収容するコンバータハウジングとの間に、変速機ケースの内部空間とコンバータハウジングの内部空間とを区画するダミーカバー(カバー部材)が設けられている。
カバー部材の内部にも、オイルポンプカバーと同様に油路が形成されており、油圧制御回路から供給されるオイルが、カバー部材内の油路を通って変速機構部側に供給されて、変速機構部の駆動や潤滑に用いられる。
カバー部材の中央部には、トルクコンバータの出力軸が貫通する貫通孔と、貫通孔を囲む円筒状の支持壁部が設けられている。
出力軸は、トルクコンバータから変速機構部へのトルク伝達に関わるシャフトであり、支持壁部は、シャフトの支持剛性を確保するために、径方向に厚みを持って形成されている。
ここで、カバー部材の軽量化を目的として、支持壁部の外径を小さくすることが考えられる。
しかしながら、シャフトの回転軸に沿う油路が支持壁部内に設けられている場合には、支持壁部の外径を単純に小さくすると、支持壁部におけるシャフトの支持剛性が低下してしまう。
そこで、シャフトの支持剛性を確保しつつ、軽量化できるようにすることが求められている。
本発明のある態様によれば、
シャフトの挿通孔を囲む支持壁部と、
前記支持壁部に外嵌する第1筒状部材と、
前記支持壁部に内嵌すると共に、前記シャフトの外周を支持する第2筒状部材と、を有し、
前記支持壁部と前記第1筒状部材との間に、前記シャフトの回転軸方向に沿う油路が設けられており、
前記支持壁部では、前記回転軸方向の一端に、前記支持壁部よりも外径が大きい大径部が設けられており、
前記第1筒状部材は、前記回転軸方向の他端側から前記支持壁部の外周に圧入されて、前記大径部に当接しており、
前記油路は、前記支持壁部の外周に設けた溝の開口を前記第1筒状部材の内周で塞いで形成されたものであり、
前記支持壁部の外周において前記溝は、前記一端より前記他端側にずれた位置から前記他端まで延び、前記溝を介して前記支持壁部の他端に対向配置される要素に潤滑油を供給可能であり、
前記油路は、前記支持壁部に設けた内部油路を介して、前記支持壁部の内周側で、前記大径部内の油路に連絡している、
油路構造が提供される。
上記態様によれば、シャフトの支持剛性を確保しつつ、軽量化できる。
図1は、油路構造を採用した自動変速機を説明する図である。 図2は、カバー部材の平面図である。 図3は、自動変速機の要部拡大図である。 図4は、油室へのオイルの供給経路を説明する図である。 図5Aは、クラッチドラムの内壁部の内周と、筒状部材の外周との隙間がシールリングで封止される前の状態を示した図である。 図5Bは、図5Aにおける領域Aの拡大図である。 図5Cは、図5Aにおける領域Bの拡大図である。 図5Dは、クラッチドラムの内壁部の内周と、筒状部材の外周との隙間がシールリングで封止された状態を示した図である。 図5Eは、図5Dにおける領域Cの拡大図である。 図5Fは、比較例にかかるシールリングを説明する図である。 図6Aは、油路が設けられた支持壁部を拡大して示した図である。 図6Bは、比較例にかかる支持壁部を示した図である。 図7Aは、図3におけるVIIa-VIIa断面図である。 図7Bは、図7Aにおける中心線CLに沿って、カバー部材を切断した断面を模式的に示した斜視図である。 図8Aは、変形例にかかる油路構造を説明する図である。 図8Bは、別の変形例にかかる油路構造を説明する図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、油路構造10を採用した自動変速機1の要部拡大図である。
図2は、カバー部材6を前後進切替機構3側から見た平面図である。
図3は、自動変速機1の要部拡大図であって、カバー部材6の支持壁部62周りを拡大して示した図である。
図1に示すように、車両用の自動変速機1では、トルクコンバータ2と、変速機構部の構成要素である前後進切替機構3との間に、カバー部材6(ダミーカバー)が設けられている。
カバー部材6は、断面視において板状を成す仕切壁部61を有している。仕切壁部61は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。
カバー部材6の仕切壁部61は、図示しない変速機ケースにボルトで固定されて、変速機ケースにおけるトルクコンバータ2側の開口を封止する。
仕切壁部61の内部には、複数の油路が設けられている(図2、仮想線参照)。油路の各々には、図示しない油圧制御回路からオイルが供給される。油路に供給されたオイルは、変速機構部やトルクコンバータ2に供給される。変速機構部側に供給されたオイルは、変速機構部の駆動や潤滑に用いられる。
図1に示すように、仕切壁部61の中央部には、挿通孔610が設けられている。挿通孔610は、仕切壁部61を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
仕切壁部61における前後進切替機構3側(図1における左側)には、挿通孔610を囲む円筒状の支持壁部62が設けられている。
自動変速機1では、カバー部材6の挿通孔610を、トルクコンバータ2の出力軸20が、トルクコンバータ2側から変速機構部側(図中、左側)に挿通している。
出力軸20は、トルクコンバータ2から変速機構部へのトルク伝達に関わる伝達シャフトである。出力軸20は、回転軸Xに沿って設けられている。
出力軸20の一端20aには、タービンハブ231がスプライン嵌合している。タービンハブ231には、トルクコンバータ2のタービンランナ23が固定されている。タービンランナ23は、タービンハブ231を介して、出力軸20に一体回転可能に連結されている。
トルクコンバータ2では、ポンプインペラ21と、タービンランナ23とが、共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられている。ポンプインペラ21とタービンランナ23との間には、ステータ22が位置している。ステータ22は、ワンウェイクラッチ24を介して、ステータシャフト8で支持されている。
ステータシャフト8は、回転軸Xに沿う向きで設けられている。ステータシャフト8は、トルクコンバータ2の出力軸20に外挿されており、ステータシャフト8の先端8a側の外周に、ワンウェイクラッチ24のインナレース24aがスプライン嵌合している。
ステータシャフト8は、カバー部材6の挿通孔610を、変速機構部側からトルクコンバータ2側(図中、右側)に貫通している。ステータシャフト8の基端8b側の嵌合部81は、カバー部材6の支持壁部62の内周に圧入されており、ステータシャフト8は、固定側部材であるカバー部材6で支持されている。
ステータシャフト8の先端8a側は、トルクコンバータ2のハウジング25に設けた開口部251を貫通して、ハウジング25の内部に位置している。
ステータシャフト8には、ポンプインペラ21と一体に形成されたスリーブ211が外挿されている。
スリーブ211は、回転軸Xに沿う向きで設けられた筒状部材であり、スリーブ211の内周は、ブッシュBSを介して、ステータシャフト8の外周で支持されている。
スリーブ211は、ハウジング25の開口部251を変速機構部側に横切って設けられている。スリーブ211の先端211aは、カバー部材6の仕切壁部61に対向している。
スリーブ211の外周には、ハウジング25の開口部251に設けたリップシールRSが弾性的に接触しており、リップシールRSにより、ハウジング25の内部空間Aが油密にシールされている。
スリーブ211の先端211aは、ドライブスプロケット27の内周に圧入されており、スリーブ211とドライブスプロケット27は相対回転不能に連結されている。
ドライブスプロケット27の内周は、ブッシュBSを介して、ステータシャフト8の外周で支持されている。
ここで、トルクコンバータ2では、図示しない駆動源の出力回転が、ポンプインペラ21に入力されて、ポンプインペラ21が回転軸X回りに回転する。
そうすると、ポンプインペラ21と一体に形成されたスリーブ211と、スリーブ211に固定されたドライブスプロケット27もまた、回転軸X回りに回転する。
ドライブスプロケット27には、図示しないチェーンが巻き掛けられており、スリーブ211の回転が、チェーンを介してオイルポンプ(図示せず)に伝達されて、オイルポンプが駆動される。これにより、図示しない油圧制御回路に元圧が供給される。
この際に、ドライブスプロケット27がブッシュBSを介して外周に支持されたステータシャフト8には、オイルポンプとは反対側の領域(図1における上側の領域)に、ドライブスプロケット27に巻き掛けられたチェーンから、回転軸X側に向かう応力が作用する。そして、ステータシャフト8に入力された応力は、ステータシャフト8が支持されたカバー部材6(支持壁部62)に作用する。
さらに、ポンプインペラ21の回転は、ハウジング25内の流体を介してタービンランナ23に伝達される。そうすると、タービンランナ23の回転が、タービンハブ231を介して、出力軸20に伝達されて、出力軸20が回転軸X回りに回転する。
出力軸20は、カバー部材6に設けた支持壁部62を回転軸X方向に貫通して、前後進切替機構3の内径側に及んでいる。
出力軸20における支持壁部62から突出した領域の外周には、クラッチドラム54の連結部545がスプライン嵌合している。
出力軸20は、前後進切替機構3側のクラッチドラム54に相対回転不能に連結されている。
よって、自動変速機1では、トルクコンバータ2の出力回転が、出力軸20を介して、前後進切替機構3のクラッチドラム54に入力される。
前後進切替機構3は、遊星歯車機構4と、前進クラッチ5と、後進ブレーキ(図示せず)と、を有する。
図3に示すように、遊星歯車機構4は、サンギア41と、リングギア42と、ピニオンギア43と、ピニオンシャフト44と、キャリア45と、を有している。
遊星歯車機構4は、前進クラッチ5のクラッチドラム54(外壁部542)の内側に収容されている。
前進クラッチ5は、内径側プレート51と、外径側プレート52と、回転軸X方向にストロークするピストン53と、を有している。
内径側プレート51は、クラッチハブ55の筒壁部551の外周にスプライン嵌合している。クラッチハブ55の内径側は、サンギア41の側面に固定されており、クラッチハブ55は、サンギア41と一体に回転軸X回りに回転する。
外径側プレート52は、クラッチドラム54の外壁部542の内周にスプライン嵌合している。内径側プレート51と外径側プレート52は、回転軸X方向で交互に配置されている。
クラッチドラム54は、回転軸Xに直交する向きで設けられた底壁部541を有している。回転軸X方向から見て底壁部541は、リング状を成しており、底壁部541の外周と内周は、それぞれ、筒状の外壁部542と内壁部543で全周に亘って囲まれている。
内壁部543は、筒状部材7(第1環状部材)に外挿されている。筒状部材7は、支持壁部62の外周に圧入されている。内壁部543は、筒状部材7を介して、カバー部材6の支持壁部62で回転可能に支持されている。
内壁部543の先端には、内径側に延びる円板部544が設けられている。円板部544は、サンギア41と支持壁部62との間の隙間に配置されている。
円板部544とサンギア41との間には、サンギア41の側面で位置決めされたスラストニードルベアリングNB1が位置している。
円板部544と支持壁部62との間には、円板部544で位置決めされたスラストニードルベアリングNB2が位置している。
円板部544の内周は、ステータシャフト8の内径側まで及んでいる。円板部544の内径側の端部には、筒状の連結部545が設けられている。
連結部545は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、連結部545は、トルクコンバータ2の出力軸20の外周にスプライン嵌合している。
クラッチドラム54では、内壁部543と外壁部542との間にピストン53が設けられている。
ピストン53は、回転軸X方向から見てリング状を成す基部531と、基部531の外周を囲む周壁部532と、を有している。
周壁部532の先端側は、外径側に折り曲げられており、回転軸X方向から見てリング状を成す押圧部533を形成している。
回転軸X方向において押圧部533は、内径側プレート51と外径側プレート52とが重なる領域に対向している。押圧部533と外径側プレート52との間には、皿バネ523が位置している。
ピストン53は、遊星歯車機構4側(図中、左側)からクラッチドラム54の内壁部543と外壁部542との間に挿入されている。ピストン53の基部531と、クラッチドラム54の底壁部541との間には、ピストン53の作動油圧(オイルOL)が供給される油室Rが形成されている。
ピストン53の基部531には、スプリングSpの一端が回転軸X方向から当接している。 スプリングSpの他端は、スプリングリテーナ56で支持されている。スプリングリテーナ56は、ピストン53から離れる方向(図中、左方向)への変位が、内壁部543の外周に係合したスナップリング561により規制されている。
ピストン53は、スプリングSpにより、遊星歯車機構4から離れる方向に付勢されている。
ピストン53は、油室Rに作動油圧が供給されると、スプリングSpを回転軸X方向に圧縮しながら、遊星歯車機構4に近づく方向(図中、左方向)に変位する。これにより、内径側プレート51と外径側プレート52とが、スナップリング521で位置決めされたリテーニングプレート522と、ピストン53の押圧部353との間で相対回転不能に締結される。
また、ピストン53は、油室Rへの作動油圧(オイルOL)の供給が停止すると、スプリングSpの付勢力で、遊星歯車機構4から離れる方向(図中、右方向)に変位して、内径側プレート51と外径側プレート52の相対回転が許容される。
図4は、油室RへのオイルOLの供給経路を説明する図である。
図5A-5Fは、シールリング9と、シールリング9の作用を説明する図である。
図5Aは、クラッチドラム54の内壁部543の内周543aと、筒状部材7の外周7cとの隙間がシールリング9で封止される前の状態を示した図である。
図5Bは、図5Aにおける領域Aの拡大図である。
図5Cは、図5Aにおける領域Bの拡大図である。
図5Dは、クラッチドラム54の内壁部543の内周543aと、筒状部材7の外周7cとの隙間がシールリング9で封止された状態を示した図である。
図5Eは、図5Dにおける領域Cの拡大図である。
図5Fは、比較例にかかるシールリング9'を説明する図である。
図4に示すように、カバー部材6には、オイルOLの供給路68、69が設けられている。供給路68は、図示しない油圧制御回路に連絡していると共に、支持壁部62の内周に開口している。支持壁部62では、供給路68に隣接する位置に供給路69が設けられている。供給路69は、支持壁部62の内周と外周とを連通させている。
供給路69は、ステータシャフト8の外周に設けた油溝821を介して、供給路68に連絡している。供給路69には、図示しない油圧制御回路から供給路68に供給されたオイルOLが、油溝821を介して供給される。
供給路69は、支持壁部62における筒状部材7が圧入された領域の外周に開口している。筒状部材7では、供給路69に対向する領域の内周に、油孔71が開口している。
油孔71は、筒状部材7の外周に開口する油溝72に連通している。油孔71は、回転軸X方向における油溝72の略中央に開口している。
クラッチドラム54の内壁部543では、油孔71と油溝72に対向する領域に油孔546が形成されている。油孔546は、前記した油室Rに連通している。
油室Rは、内壁部543の油孔546と、筒状部材7の油溝72および油孔71と、を介して、供給路69に連絡している。
支持壁部62の外周に圧入された筒状部材7では、回転軸X方向における油孔71の両側に、リング溝73、73が設けられている。
図7Bに示すように、リング溝73、73は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
図5Aに示すようにリング溝73、73には、低フリクションタイプのシールリング9、9が外嵌している。
図5Bに示すようにシールリング9は、外径側の基部91と、基部91の内周から突出する突出部92とを有している。突出部92は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って、所定高さh(図5C参照)で突出している。
突出部92は、基部91の幅方向(回転軸X方向)における略中央部から内径側に突出している。断面視においてシールリング9は、略T字形状を有している。
突出部92の回転軸X方向の幅W1は、基部91の回転軸X方向の幅W2よりも狭い(図5B参照)。
回転軸X方向における突出部92の一方の側面92bは、基部91の側面91bから、他方の側面92c側にオフセットした位置にある。
シールリング9は、リング溝73に遊嵌しており、回転軸X方向(図5Aにおける左右方向)と、径方向(図5Aにおける上下方向)に変位可能となっている。
リング溝73には、前記した油室Rに油圧が供給される際に、クラッチドラム54の内壁部543の内周543aと、筒状部材7の外周7cとの間の隙間を通って、油溝72側からオイルOLが供給される。
リング溝73に供給されたオイルOLは、シールリング9の基部91の内周91dおよび側面91cと、突出部92の内周92dおよび側面92cと、に作用して、シールリング9を、図5Eに示す位置まで移動させる。
この状態においてシールリング9は、基部91の外周91aを内壁部543の内周543aに圧接させると共に、側面91bを、リング溝73の側面73bに圧接して、内壁部543の内周543aと、筒状部材7の外周7cとの間の隙間を封止する。
これにより、油室Rに供給されるオイルOLの一部が、内壁部543の内周543aと、筒状部材7の外周7cとの隙間を通って、リング溝73の部分から漏出しないようにされる。
そして、油室RへのオイルOLの供給が停止すると、リング溝73内のオイルも排出されて、シールリング9は、内壁部543の内周543aと、筒状部材7の外周7cとの隙間を封止しない開放位置(図5A-5C参照)まで変位可能となる。
この際に、シールリング9の外周91aと側面91bが、内壁部543の内周543aと、リング溝73の側面73bに、それぞれ接触したままの状態で保持されることがある。
この状態で、クラッチドラム54と、支持壁部62(筒状部材7)とが相対回転すると、リング溝73の側面73bに圧接するシールリング9の側面91bが、相対回転に対する抵抗となり、自動変速機1を搭載した車両の燃費に影響が及ぶ可能性がある。
本実施形態では、所定高さhの突出部92を有するシールリング9を採用して、リング溝73の側面73bに圧接する面積(側面91bの面積)が、突出部92を有していない比較例のシールリング9'(図5F参照)よりも狭くなるようにしている。
シールリング9の場合、同じ径方向高さh'を持つ比較例のシールリング9'(図5F参照)に比べて、突出部92の高さh分だけ、リング溝73の側面73bとの接触面積が小さくなっている。
そのため、シールリング9の外周91aと側面91bが、内壁部543の内周543aとリング溝73の側面73bにそれぞれ接触したままの状態で、クラッチドラム54と、支持壁部62(筒状部材7)とが相対回転しても、比較例のシールリング9'の場合よりも、抵抗(フリクション)が小さくなるようにしている。
さらに、所定高さhの突出部92を設けることで、突出部92の側面92bに作用するオイルOLの圧力が、シールリング9の側面91bをリング溝73の側面73bから離す方向に作用する。そのため、シールリング9の側面91bのリング溝73の側面73bに対する圧接力が比較例のシールリング9'に比べて、低減されるようになっている。
これにより、リング溝73内へのオイルOLの流入が停止したのち、シールリング9の側面91bが、リング溝73の側面73bに接触したままの状態で保持され難くなる。
このことによっても、クラッチドラム54と、支持壁部62(筒状部材7)とが相対回転する際の抵抗(フリクション)が小さくなるようにしている。
前記したようにシールリング9は、油室RへのオイルOLの供給/非供給の切り替えに連動してリング溝73内を摺動変位する。また、クラッチドラム54と筒状部材7とが相対回転する際に、リング溝73内を摺動する。
そのため、本実施形態では、リング溝73が形成された筒状部材7を、アルミニウム系の素材で形成されたカバー部材6(支持壁部62)とは別体に形成すると共に、シールリング9に対する耐摩耗性の高い鉄系の素材で形成している。
これにより、摺動変位するシールリング9により、リング溝73が摩耗しにくくなるようにしている。
図6A-6Bは、本実施形態にかかる油路構造10の優位性を説明する図である。
図6Aは、油路63が設けられた支持壁部62を拡大して示した図である。図6Bは、比較例にかかる支持壁部62'を示した図である。
図7A-7Bは、本実施形態にかかる油路構造10を説明する図である。図7Aは、図3におけるVIIa-VIIa断面図である。図7Bは、図7Aにおける中心線CLに沿って、カバー部材6を切断した断面を模式的に示した斜視図である。なお、図7Bでは、カバー部材6の支持壁部62を、油路63の部分で切断した断面が示されている。
図3に示すように、支持壁部62の内部にも、仕切壁部61と同様に、油路63が形成されている。油路63は、支持壁部62の先端62bに対向配置されたスラストニードルベアリングNB2に潤滑用のオイルOLを供給するために設けられている。
油路63は、内部油路64と、筒状部材7で外周側の開口が閉じられた油溝65と、から構成される。
内部油路64は、支持壁部62内を仕切壁部61から離れる方向(図中、左方向)に延びている。内部油路64は、回転軸Xに対して傾斜した直線Lに沿って設けられている。内部油路64は、仕切壁部61から離れるにつれて、支持壁部62の外周に近づく向きで形成されている。
内部油路64の内径側の端部は、仕切壁部61内に設けられた油路611に、仕切壁部61の内径側で連通している。仕切壁部61において油路611は、挿通孔610の内周に開口しており、油路611の開口は、支持壁部62の内周に圧入されたステータシャフト8の外周で封止されている。
そのため、図示しない油圧制御回路から油路611に供給されたオイルOLが、支持壁部62内の内部油路64に流入するようになっている。
内部油路64の外径側の端部は、支持壁部62の外周に開口する油溝65に連通している。
図7Aに示すように、支持壁部62において油溝65は、回転軸X周りの周方向の1箇所に設けられている。回転軸X方向から見て油溝65は、頂点Pを回転軸X側に向けた半円形状を有している。
図6Aおよび図7Bに示すように、支持壁部62の外周において油溝65は、回転軸Xに沿う向きで設けられている。油溝65は、仕切壁部61の先端62bから仕切壁部61側(図中、右側)に向けて直線状に延びている。
図6Aに示すように支持壁部62の外周には、段部622が設けられている。
油溝65は、先端62bから、段部622より所定距離Wxだけ先端62b側にずれた位置まで形成されている。
油溝65における仕切壁部61側(図中、右側)の端部には、座ぐり部651が設けられている。座ぐり部651は、前記した油路63の中心を通る直線Lに沿う向きで油溝65よりも内径側(回転軸X側)に及んで形成されている。
座ぐり部651の底面641aは、直線Lに直交する平坦面となっており、座ぐり部651の底面641aでは、当該底面641aに直交する向きで形成された内部油路64が開口している。
支持壁部62の先端62bでは、油溝65と交差する位置に凹部621が形成されている。
図7Aに示すように、凹部621は、支持壁部62の先端62b側の領域を、径方向に切り欠いて形成されている。回転軸X方向から見て凹部621は、所定幅Wyを有しており、凹部621の内側に油溝65が開口している。
図6Aに示すように凹部621は、筒状部材7の他端7bや、ステータシャフト8の基端8bよりも、所定深さD1分だけ仕切壁部61側(図中、右側)に窪んでいる。
支持壁部62の延長上には、クラッチドラム54(円板部544)で支持されたスラストニードルベアリングNB2が位置している。
支持壁部62の先端62bは、筒状部材7の他端7bや、ステータシャフト8の基端8bよりも、スラストニードルベアリングNB2側にΔLだけ突出している。そのため、クラッチドラム54が回転軸X方向に変位した際に、支持壁部62のみが、クラッチドラム54と共に変位するスラストニードルベアリングNB2に接触するようになっている。
支持壁部62の外周の段部622には、支持壁部62の外周に圧入された筒状部材7の一端7aが、回転軸X方向から突き当てられている。
この状態において油溝65の外周側の開口は、筒状部材7により塞がれている。これにより、支持壁部62の外周62cと筒状部材7の内周7dとの間に、回転軸Xに沿って支持壁部62の先端62bまで延びる油路が形成される。
前記したように、油溝65は、仕切壁部61よりも先端62b側にずれた位置(仕切壁部61に対して先端62b側にオフセットさせた位置)まで形成されている。そのため、支持壁部62の外周62cと筒状部材7の内周7dとの間には、油路の形成に関与しない所定距離Wxのシール領域SLが形成される。
これにより、内部油路64を通って油溝65に供給されたオイルOLが、支持壁部62の外周62cに圧入された筒状部材7と、仕切壁部61側の段部622との隙間から漏出しないようにされている。
本実施形態では、筒状部材7の一端7a側の内周に、曲面加工Rxが施されており、筒状部材7の一端7a側の内周にポケットPK1が形成されている。
このポケットPK1は、筒状部材7を支持壁部62の外周に圧入した際に生じる夾雑物を、捕捉するために設けられている。
筒状部材7を支持壁部62の外周に圧入すると、支持壁部62の表面が削られて、夾雑物が発生する。圧入の過程で発生した夾雑物は、筒状部材7により押されて、段部622側まで移動する。
ポケットPK1が設けられていない場合には、発生した夾雑物が、筒状部材7の一端7aと段部622との間に挟まって隙間を生じさせてしまう可能性がある。また、発生した夾雑物が、筒状部材7の内周7dと、支持壁部62の外周62cとの間に隙間を生じさせる可能性がある。かかる場合、内部油路64から油溝65に供給されたオイルOLが、生じた隙間を通って、仕切壁部61側から漏出してしまう可能性がある。
本実施形態では、筒状部材7の一端7a側の内周にポケットPK1を形成することで、かかる事態の発生を防止できるようにしている。
前記したように支持壁部62の内周には、ステータシャフト8の嵌合部81が圧入されている。嵌合部81は、圧入部810と、セレーション嵌合部811と、を有している。
セレーション嵌合部811は、圧入部810よりも大きい外径で形成されている。セレーション嵌合部811は、圧入部810から見て基端8b側(図中、左側)に位置している。
セレーション嵌合部811の外周には、セレーション加工が施されている。
セレーション811aは、回転軸Xに沿う向きで直線状に形成されており、セレーション嵌合部811の外周では、回転軸X周りの周方向の全周に亘ってセレーション811aが設けられている。セレーション嵌合部811においてセレーション811aは、回転軸X方向の全長に亘って設けられている。
支持壁部62では、油溝65が設けられた領域の内径側が、セレーション嵌合部811が嵌合する被嵌合部623となっている。
支持壁部62では、油溝65における座ぐり部651よりも先端62b側(図中、左側)の領域が、被嵌合部623となっている。
本実施形態では、セレーション嵌合部811を支持壁部62(被嵌合部623)の内周にセレーション嵌合すると、セレーション嵌合部811と圧入部810との間に、ポケットPK2が形成されるようになっている。
セレーション嵌合部811を支持壁部62の内周にセレーション嵌合すると、支持壁部62の表面(被嵌合部623の内周)が削られて、夾雑物が発生する。
セレーション嵌合の過程で発生した夾雑物は、セレーション嵌合部811により押されて移動する。
ポケットPK2が設けられていない場合には、発生した夾雑物が、支持壁部62(被嵌合部623)の内周と、嵌合部81の外周との間に隙間を生じさせる可能性がある。
本実施形態では、セレーション嵌合部811と支持壁部62との間に、回転軸X方向のポケットPK2を形成することで、かかる事態の発生を防止できるようにしている。
ここで、本件発明者は、カバー部材6を軽量化するために、カバー部材6の構成素材を、従来の鉄系の素材から、アルミニウム合金系の素材に単純に変更したところ、支持壁部62'の外周に設けたリング溝67、67(図6B参照)が摩耗することを見いだした。
これは、以下のような理由によるものである。
・油室Rへの作動油圧(オイルOL)の供給/遮断を繰り返す過程や、クラッチドラム54と支持壁部62とが相対回転する過程で、シールリング9がリング溝67内を摺動する。アルミニウム合金系の素材は、フッ素系の素材からなるシールリング9に対する耐摩耗性が、鉄系の素材よりも低いために、リング溝67が摺動するシールリング9により削られる。
ここで、支持壁部62'の内部に油路63'の総てを埋め込んで形成すると、支持壁部62'の剛性を確保するために、支持壁部62'の構成素材のうち、油路63'を囲む領域の構成素材の量を多くして、油路63'を囲む構成素材の径方向の厚みWc、Wd(図6B参照)を厚くする必要がある。
そのため、アルミニウム合金系の素材で形成したカバー部材6において、さらなる軽量化を目的として支持壁部62'の径方向の厚みWbを小さくすると、径方向の厚みWc、Wdもまた小さくなるため、油路63'を囲む領域の構成素材の総量が少なくなる。
そうすると、支持壁部62'に占める構成素材の割合が低下する結果、支持壁部62'の支持剛性が低下する。さらに、リング溝67の摩耗により、シールリング9'によるシール性の低下などが生じる可能性がある。
そこで、本実施形態では、アルミニウム合金系の素材からなる支持壁部62の外周に、シールリング9に対する耐摩耗性が高い鉄系の素材からなる筒状部材7を圧入して、筒状部材7の外周に、シールリング9が遊嵌するリング溝67、67を形成した。
これにより、アルミニウム合金系の素材からなる支持壁部62が、摺動するシールリング9により摩耗しないようにした。
さらに、支持壁部62の外周と、支持壁部62の外周に圧入した筒状部材7内周との間に、回転軸X方向に沿う油路63を形成した油路構造10を採用して、回転軸Xに沿う油路が、支持壁部62の内部に完全に埋め込まれた状態で形成されないようにした。
これにより、支持壁部62では、油路63の内径側の厚みWe(図6A参照)を確保するだけで、支持壁部62の剛性を確保できる。
よって、支持壁部62の外周に圧入された筒状部材7の厚みを含む支持壁部62全体の径方向の厚みWa(図6A参照)を、内部に油路が埋め込まれている比較例の支持壁部62'(図6B)参照)の厚みWbよりも薄くできるものとなった。
また、前記したように、支持壁部62で支持されたステータシャフト8には、ドライブスプロケット27と一体に回転するスリーブ211が外挿されている。そのため、ステータシャフト8には、オイルポンプ(図示せず)の駆動時に、ドライブスプロケット27に巻き掛けられたチェーンから、回転軸X側に向かう応力が作用する。そして、ステータシャフト8に入力された応力は、ステータシャフト8が支持されたカバー部材6(支持壁部62)に作用する。
前記したように、支持壁部62の外周と、支持壁部62の外周に圧入した筒状部材7内周との間に、回転軸X方向に沿う油路63を形成した油路構造10では、支持壁部62の支持強度を確保しつつ、径方向の厚みを薄くできる。
よって、ステータシャフト8側から入力される応力、より具体的にはトルクコンバータ2のステータ22から、ステータシャフト8を介して入力される応力に耐え得る支持強度を、支持壁部62に持たせることが可能になる。
以上の通り、本実施形態にかかる油路構造10は、以下の構成を有している。
(1)油路構造10は、
出力軸20(シャフト)の挿通孔610を囲む支持壁部62と、
支持壁部62に外嵌する筒状部材7(第1筒状部材)と、
支持壁部62に内嵌すると共に、出力軸20の外周を支持するステータシャフト8(第2筒状部材)と、を有し、
回転軸Xの径方向において、支持壁部62と筒状部材7との間に、出力軸20の回転軸X方向に沿う油路63が設けられている(図3参照)。
図6Bに示すように、支持壁部62'の内部に油路63'の総てを埋め込んで形成すると、支持壁部62'の剛性を確保するためには、支持壁部62'の構成素材のうち、油路63'を囲む領域の構成素材の量を多くする必要がある。
かかる場合、油路63を囲む構成素材の径方向の厚みWc、Wd(図6B参照)を両方とも厚くする必要がある。
そのため、軽量化を目的として支持壁部62'の外径を小さくすると、油路63'を囲む領域の構成素材の総量が少なくなって、支持壁部62'に占める構成素材の割合が低下する結果、支持壁部62'の支持剛性が低下する。
上記のように構成すると、支持壁部62と筒状部材7との合わせ面を利用して油路63が形成される。
これにより、支持壁部62の外径を小さくした際に、油路63を囲む構成素材の外径側の厚みを厚くする必要がない。
すなわち、支持壁部62では、油路63の内径側の厚みWe(図6A参照)を確保するだけで、支持壁部62の剛性を確保できる。
よって、支持壁部62の外周に圧入された筒状部材7の厚みを含む支持壁部62全体の径方向の厚みWa(図6A参照)を、内部に油路が埋め込まれている比較例の支持壁部62'(図6B参照)の厚みWbよりも薄くできるものとなった。
本実施形態にかかる油路構造10は、以下の構成を有している。
(2)油路63は、支持壁部62の外周に設けた油溝65の外周側の開口を、筒状部材7の内周7dで塞いで形成した領域を有する。
例えば、支持壁部62の外周に設けた油溝65の外周側の開口を筒状部材7の内周7dで塞いで油路を形成すると、径方向の厚みを小さくした支持壁部62において油路の周りの構成素材の量を、油路が支持壁部62の内部に形成される場合よりも多くできる。
これにより、支持壁部62における出力軸20(シャフト)の支持剛性を確保できる。
また、支持壁部62の外周に油溝65を設けるだけで油路を形成できるので、支持壁部62の内部に油路を設ける場合よりも作業負荷が少なくなる。これにより、油路を形成する作業コストの低減が期待できる。
本実施形態にかかる油路構造10は、以下の構成を有している。
(3)ステータシャフト8では、基端8b側のセレーション嵌合部811の外周にセレーション加工が施されている。
ステータシャフト8は、セレーション加工が施されたセレーション嵌合部811を、支持壁部62の内周にセレーション嵌合して、支持壁部62の内周に固定されている。
支持壁部62におけるステータシャフト8がセレーション嵌合した領域には、セレーション嵌合に起因する応力が作用する。
そのため、支持壁部62'の内部に油路63'(図6B参照)が埋め込まれて形成されている場合には、油路63'を囲む構成素材の径方向の厚みWc、Wd(図6B参照)を厚くする、すなわち、支持壁部62'を径方向に厚くする必要がある。出力軸20の支持剛性を確保しつつセレーション嵌合に耐え得る剛性を確保するためである。
そうすると、軽量化を目的として、支持壁部62'の径方向の厚み(外径)を小さくすることが困難になる。
支持壁部62の外周に設けた油溝65の開口を筒状部材7の内周7dで塞いで油路を形成すると、少なくとも、油路63の総てを支持壁部62の内部に埋め込んで形成する場合よりも支持壁部62の外径を小さくしても、支持壁部62の剛性を確保できる。
よって、支持壁部62の外径を抑えつつ、出力軸20の支持剛性と、セレーション嵌合に耐えうる剛性を確保し易くなる。
よって、油路63'が支持壁部62'内に形成される場合に比べて、支持壁部62の外径を小さくしつつ、軽量化できる。
また、油路63が、支持壁部62の外周側に設けられているので、ステータシャフト8のセレーション嵌合部811を支持壁部62の内周に圧入する際に生じる切削片が、油路63に混入する可能性を低減できる。
本実施形態にかかる油路構造10は、以下の構成を有している。
(4)支持壁部62では、回転軸X方向の一端に、支持壁部62よりも外径が大きい仕切壁部61(大径部)が設けられている。
支持壁部62において筒状部材7は、回転軸X方向の先端62b(他端)側から支持壁部62の外周に圧入されている。
油路63は、支持壁部62の外周に設けた油溝65の開口を筒状部材7の内周7dで塞いで形成されたものである。
支持壁部62の外周において油溝65は、仕切壁部61よりも先端62b側にずれた位置から先端62bまで延びている。
油路63は、支持壁部62に設けた内部油路64を介して、支持壁部62の内周側で、仕切壁部61内の油路611に連絡している。
このように構成すると、支持壁部62の仕切壁部61側の外周では、仕切壁部61に隣接する領域であって油溝65が設けられていない領域が、支持壁部62の外周62cと筒状部材7の内周7dとの隙間を封止するシール領域SLとして機能する。
支持壁部62の外周の油溝65が仕切壁部61まで及んで形成されていると、回転軸X方向における筒状部材7の一端7aと仕切壁部61との間に、筒状部材7の圧入により生じた研削物が挟まって、隙間を生ずる可能性がある。
かかる場合、支持壁部62の外周62cと筒状部材7の内周7dとの隙間を封止するシール領域SLが存在しないので、油路63を通流するオイルOLの一部が、生じた隙間から外部に漏出する可能性がある。
上記のように構成して、支持壁部62の外周62cと筒状部材7の内周7dとの間にシール領域SLとして機能する部位を設けることで、油路63を通流するオイルOLの一部が、筒状部材7と、仕切壁部61や支持壁部62との間に生じた隙間から外部に漏出することを好適に防止できる。
本実施形態にかかる油路構造10は、以下の構成を有している。
(5)仕切壁部61は、自動変速機の変速機ケースの開口を塞ぐカバー部材6である。
出力軸20は、トルクコンバータ2の出力軸であり
ステータシャフト8は、トルクコンバータ2のステータシャフトである。
このように構成すると、トルクコンバータ2の出力軸20やステータシャフト8の支持剛性を確保しつつ、車両の自動変速機の軽量化が可能である。
自動変速機の軽量化により、自動変速機を搭載した車両の燃費向上が期待できる。
本実施形態にかかる油路構造10は、以下の構成を有している。
(6)筒状部材7の外周7cには、シールリング9、9が遊嵌するリング溝73、73が設けられている。
筒状部材7は、支持壁部62を構成する材料よりもシールリング9に対する耐摩耗性が高い材料で形成されている。
筒状部材7が支持壁部62に外嵌しておらず、リング溝73、73が支持壁部62に直接設けられている場合には、アルミニウム合金系の素材からなる支持壁部62の外径を小さくするにあたり、シールリング9によるリング溝の摩耗を考慮する必要がある。
上記のように構成すると、支持壁部62の外径を小さくするに当たり、シールリング9による摩耗を考慮する必要が無い。よって、支持壁部62に外嵌した筒状部材7を含む径方向の厚みWa(図6A参照)を、支持壁部62'に直接リング溝67が設けられている場合の径方向の厚みWb(図6B参照)よりも小さくできる。
例えば、筒状部材7を鉄系の素材で形成すると共に、支持壁部62を、鉄系の素材よりも軽量であるもののシールリング9に対する耐摩耗性が鉄系の素材よりも低いアルミニウム合金系の素材で形成すると、出力軸20の支持剛性を確保しつつ、軽量化できる。
また、アルミニウム合金系の素材は、鉄系の素材よりも加工しやすいので、支持壁部の外周への溝の加工を容易に行える。
(7)鉄系の素材からなる筒状部材7(第1筒状部材)には、前進クラッチ5の回転体であるクラッチドラム54(内壁部543)が外挿されている。
クラッチドラム54は、筒状部材7の外周7cで回転可能に支持されている。
筒状部材7の外周7cでは、2つのリング溝73、73が、回転軸X方向に間隔をあけて設けられている。
回転軸X方向で間隔をあけて設けられたリング溝73、73の間に、前進クラッチ5(摩擦締結装置)の駆動用のオイルOLの供給路(油孔71、油溝72)が開口している。
リング溝73に遊嵌したシールリング9は、供給路から供給されるオイルにより筒状部材7の外周7cと内壁部543の内周543aとの隙間を封止する。
このように構成すると、アルミニウム合金系の素材からなる支持壁部62の外周に直接リング溝67を設ける場合に比べて、リング溝67の摩耗を抑えることができる。
(8)シールリング9は、クラッチドラム54の内壁部543の内周543aに径方向から圧接する環状の基部91と、基部91の内周から内径側に突出する突出部92と、から一体に形成されている。
このように構成すると、シールリング9は、同じ径方向高さh'を持つ比較例のシールリング9'(図5E参照)に比べて、突出部92の高さh分だけ、リング溝73の側面73bとの接触面積が小さくなる。
そのため、シールリング9の外周91aと側面91bが、内壁部543の内周543aとリング溝73の側面73bにそれぞれ接触したままの状態で、クラッチドラム54と、支持壁部62(筒状部材7)とが相対回転しても、抵抗(フリクション)が小さくなる。
さらに、シールリング9に突出部92を設けたことにより、リング溝73の径方向の深さが深くなるが、リング溝73が支持壁部62に外嵌する筒状部材7に設けられているので、少なくとも、油路63の総てを支持壁部62の内部に埋め込んで形成する場合よりも支持壁部62の外径を小さくしても、支持壁部62の剛性を確保できる。
(9)回転軸X方向において、支持壁部62の先端62bは、クラッチドラム54の円板部544で支持されたスラストニードルベアリングNB2に対向している。
支持壁部62の先端62bは、支持壁部62の外周に圧入した筒状部材7の他端7bと、支持壁部62の内周に圧入したステータシャフト8の基端8bよりも、スラストニードルベアリングNB2側に位置している。
このように構成すると、クラッチドラム54が回転軸X方向に変位した際に、支持壁部62のみが、クラッチドラム54と共に変位するスラストニードルベアリングNB2に接触するようになる。
スラストニードルベアリングNB2が、筒状部材7の他端7bや、ステータシャフト8の基端8bにも接触すると、接触面積が大きくなる結果、クラッチドラム54の回転に対する抵抗が大きくなる。
支持壁部62のみが、クラッチドラム54と共に変位するスラストニードルベアリングNB2に接触することで、クラッチドラム54の回転に対する抵抗を抑制できる。
[変形例]
図8A-8Bは、変形例にかかる油路構造10A、10Bを説明する図である。
前記した実施形態では、支持壁部62の外周に設けた油溝65を、支持壁部62の外周に圧入した筒状部材7の内周で塞いで、回転軸X方向に沿う油路を形成した油路構造10を例示した。
図8Aに示すように、筒状部材7の内周に設けた油溝75を、支持壁部62の外周62cで塞いで、回転軸X方向に沿う油路63Aを形成した油路構造10Aとしても良い。
この油路構造10Aの油路63Aは、支持壁部62内に直線Lに沿って設けられた内部油路64Aと、油路65Aとから構成される。
前記した実施形態では、支持壁部62と、支持壁部62の外周に圧入した筒状部材7との間に油路を設ける場合を例示した。
図8Bに示すように、支持壁部62と、支持壁部62の内周に圧入したステータシャフト8Bとの間に、油路63Bを設けた構成としても良い。
この油路構造10Bでは、支持壁部62の内部に、回転軸Xに沿う内部油路64Bが設けられており、この内部油路64Bの延長上に、内周側に開口する油溝624が設けられている。
この油溝624の内周側の開口を、支持壁部62の内周に圧入されたステータシャフト8Bの大径部811Bで塞いで、油路65Bを形成している。
このようにすることによっても、支持壁部62の径方向の厚みを小さくしつつ、支持壁部62の支持剛性を確保できる。
このように、変形例にかかる油路構造10Bは、以下の構成を有している。
(10)油路63Bは、支持壁部62の内周に設けた油溝624の開口を、ステータシャフト8(第2筒状部材)の外周で塞いで形成した油路65Bを有する。
例えば、油路63Bが、支持壁部62の内周に設けた油溝624の開口を、ステータシャフト8の外周で塞いで形成されたものである場合には、外径を小さくした支持壁部62において油路65Bの周りの構成素材の量を、油路が支持壁部の内部に形成される場合よりも多くして、支持壁部62の径方向の厚みを厚くできるので、支持壁部62における出力軸20の支持剛性を確保できる。
なお、ステータシャフト8(第2筒状部材)の外周に設けた油溝の開口を、支持壁部62の内周で塞いで油路を形成しても良い。
かかる場合には、支持壁部の外径を、出力軸20(シャフト)の支持に必要な支持剛性を発揮できる最小の外径まで小さくできるので、いっそうの軽量化が可能となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
本願は、2019年12月14日付けで日本国特許庁に出願した特願2019-226017号に基づく優先権を主張し、その出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (3)

  1. シャフトの挿通孔を囲む支持壁部と、
    前記支持壁部に外嵌する第1筒状部材と、
    前記支持壁部に内嵌すると共に、前記シャフトの外周を支持する第2筒状部材と、を有し、
    前記支持壁部と前記第1筒状部材との間に、前記シャフトの回転軸方向に沿う油路が設けられており、
    前記支持壁部では、前記回転軸方向の一端に、前記支持壁部よりも外径が大きい大径部が設けられており、
    前記第1筒状部材は、前記回転軸方向の他端側から前記支持壁部の外周に圧入されて、前記大径部に当接しており、
    前記油路は、前記支持壁部の外周に設けた溝の開口を前記第1筒状部材の内周で塞いで形成されたものであり、
    前記支持壁部の外周において前記溝は、前記一端より前記他端側にずれた位置から前記他端まで延び、前記溝を介して前記支持壁部の他端に対向配置される要素に潤滑油を供給可能であり、
    前記油路は、前記支持壁部に設けた内部油路を介して、前記支持壁部の内周側で、前記大径部内の油路に連絡している、
    油路構造。
  2. 前記大径部は、車両の自動変速機の変速機ケースの開口を塞ぐカバー部材であり、
    前記シャフトは、トルクコンバータの出力軸であり
    前記第2筒状部材は、前記トルクコンバータのステータシャフトである、
    請求項1に記載の油路構造。
  3. 前記第1筒状部材の外周には、シールリングが遊嵌するリング溝が設けられており、
    前記第1筒状部材は、前記支持壁部を構成する材料よりも前記シールリングに対する耐摩耗性が高い材料で形成されている、
    請求項1または2に記載の油路構造。
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