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JP7325241B2 - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents

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JP7325241B2 JP2019113012A JP2019113012A JP7325241B2 JP 7325241 B2 JP7325241 B2 JP 7325241B2 JP 2019113012 A JP2019113012 A JP 2019113012A JP 2019113012 A JP2019113012 A JP 2019113012A JP 7325241 B2 JP7325241 B2 JP 7325241B2
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Description

本開示は、光学部材上に撥水層を形成する眼鏡レンズの製造方法及び撥水材料組成物に関する。
眼鏡の装用時、眼鏡レンズの表面には、汗、指紋などによる汚れが付着しやすい。これらの汚れの付着の防止、又は拭き取りを容易にするため、眼鏡レンズの表面に、撥水層が設けられる(例えば、特許文献1)。
特開2018-4921号公報
撥水層を形成する撥水性材料組成物として、片末端に反応性シリル基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物を用いることで、高い撥水性を示す撥水層が形成される。しかしながら、眼鏡レンズの表面の汚れを布などで拭き取る動作を繰り返すことで、撥水層の撥水性が低下することがあり、撥水層の耐払拭性の向上が求められる。
すなわち、本開示に係る実施形態は、優れた撥水性を示しつつ、優れた耐払拭性を示す撥水層を有する眼鏡レンズの製造方法に関する。
片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1)を含有する撥水材料組成物を部分的に加水分解することで、優れた撥水性を示しつつ、優れた耐払拭性を示す撥水層が形成されることが見出された。
すなわち、本開示に係る実施形態は、以下のとおりである。
本開示に係る一実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法は、
式(1a):*-Si(OR)3・・・(1a)(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、*は結合部位である。)で表される基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1)を含有する撥水材料組成物を部分的に加水分解する加水分解工程と、
当該加水分解工程を経た撥水材料組成物を用いて光学部材上に撥水層を形成する撥水層形成工程を含む。
上述の実施形態においては以下の形態が好ましい。
加水分解工程前における前記フッ素含有シラン化合物(1)の含有量が、撥水材料組成物の固形分全量に対して、好ましくは50~100質量%である。
フッ素含有シラン化合物(1)は、好ましくは、式(1):
(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、Rfは、炭素数1~16の直鎖状又は分岐状のフッ素化アルキル基であり、Lは、炭素数1~6のアルキレン基であり、aは0~10であり、pは1~4であり、bは0~10であり、mは2~4であり、nは1~3であり、(m-n)は1以上であり、xは10~60であり、yは10~60であり、zは0~10である。なお、aが2以上の場合、複数のm及び複数のnはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数のbは同一であっても異なっていてもよく、各種構造単位の配列順序は限定されない。)で表される。
加水分解工程において、前記フッ素含有シラン化合物(1)100質量部に対して0.5~20質量部の水の存在下でフッ素含有シラン化合物(1)を部分的に加水分解することが好ましい。加水分解工程において、好ましくはpH1.0~7.0の水を添加する。加水分解工程において、好ましくは炭素数1~10の水溶性アルコールの存在下で部分的に加水分解する。
加水分解工程において、温度20~70℃、相対湿度60%以上の雰囲気下に前記撥水材料組成物を配することで、フッ素含有シラン化合物(1)を部分的に加水分解することが好ましい。当該温度が40~50℃であり、前記相対湿度が90%以上であることが好ましい。
撥水層形成工程において、撥水材料組成物を蒸着することで、撥水層を形成することが好ましい。当該蒸着は、好ましくは400~1000℃で行われる。
本開示に係る実施形態によれば、優れた撥水性を示しつつ、優れた耐払拭性を示す撥水層を有する眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズ及び当該製造方法に用いる撥水材料組成物が提供される。
図1は、本実施形態の製造方法により製造する眼鏡レンズ1の模式断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態の眼鏡レンズの製造方法は、
式(1a):*-Si(OR)3・・・(1a)(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、*は結合部位である。)で表される基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1)を含有する撥水材料組成物を部分的に加水分解する加水分解工程と、
当該加水分解工程を経た撥水材料組成物を用いて光学部材上に撥水層を形成する撥水層形成工程を含む。
以上の構成によれば、優れた撥水性を示しつつ、優れた耐払拭性を示す撥水層を有する眼鏡レンズの製造方法が提供される。
本明細書における各種用語の定義は以下のとおりである。
「片末端」とは、鎖状分子の一末端を意味する。
撥水材料組成物における「固形分全量」とは、撥水材料組成物の溶剤以外の成分を意味する。
「加水分解」とは、式(1a)で表される基が水と反応し、ケイ素原子上にOH基が導入され、アルコールが脱離する反応である。
「部分的に加水分解」とは、式(1a)で表される基中のアルコキシ基のすべてが加水分解せず、1又は2のアルコキシ基が加水分解することを意味する。
[眼鏡レンズ]
図1は、本実施形態の製造方法により製造する眼鏡レンズ1の模式断面図である。本実施形態の眼鏡レンズ1は、眼鏡レンズ用基材11と、この基材11の物体側の面11a側に設けられたハードコート層21fと、このハードコート層21fの物体側の面21fa側に設けられた機能層31fと、この機能層31fの物体側の面31fa側に設けられた撥水層41fと、を備えている。
また、眼鏡レンズ用基材11がフィニッシュレンズである場合、本実施形態の眼鏡レンズ1は、基材11の眼球側の面11b側に設けられたハードコート層21bと、このハードコート層21bの眼球側の面21bb側に設けられた機能層31bと、この機能層31bの眼球側の面31bb側に設けられた撥水層41bと、を更に備えている。
なお、図示しないが、基材11とハードコート層21fとの間、又は基材11とハードコート層21bとの間には、下地層が設けられていてもよい。
<眼鏡レンズ用基材>
眼鏡レンズ用基材(以下、単に「基材」ともいう。)の材質としては、プラスチックであっても、無機ガラスであってもよい。基材の材質としては、例えば、ポリチオウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系材料;ポリスルフィド樹脂等のエピチオ系材料;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のポリカーボネート系材料;が挙げられる。
基材の材質は、好ましくは、ポリチオウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、及びポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、ポリチオウレタン樹脂、及びポリスルフィド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
基材としては、フィニッシュレンズ、セミフィニッシュレンズのいずれであってもよい。
基材の表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等のいずれであってもよい。
本開示の眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。例えば、一例として、累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が、前述の下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
基材としては、通常無色のものが使用されるが、透明性を損なわない範囲で着色したものを使用することもできる。
基材の厚さ及び直径は、特に限定されるものではないが、厚さは通常1~30mm程度、直径は通常50~100mm程度である。
基材の屈折率neは、好ましくは1.53以上であり、より好ましくは1.55以上であり、より好ましくは1.58以上であり、更に好ましくは1.60以上である。基材の屈折率neは、その上限は特に限定されないが、好ましくは1.80以下である。
<ハードコート層>
ハードコート層は、例えば、無機酸化物とケイ素化合物とを含む硬化性組成物による硬化膜である。硬化性組成物は、好ましくは多官能エポキシ化合物を更に含む。
無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、これらのうち2種以上の無機酸化物による複合酸化物が挙げられる。これらは、1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機酸化物の中でも、酸化ケイ素が好ましい。なお、無機酸化物として、コロイダルシリカを用いてもよい。
無機酸化物の含有量は、硬化性組成物の固形分中、好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以上50質量%以下である。
ケイ素化合物は、例えば、アルコキシ基などの加水分解性基を有するケイ素化合物である。ケイ素化合物は、好ましくは、ケイ素原子に結合する有機基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤である。ケイ素原子に結合する有機基は、好ましくは、グリシドキシ基などのエポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等の官能基を有する有機基であり、より好ましくはエポキシ基を有する有機基である。なお、ケイ素化合物は、ケイ素に結合するアルキル基を有していてもよい。
上述のシランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE402、KBE403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007等が挙げられる。
ケイ素化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分中、好ましくは20質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上75質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以上75質量%以下である。
多官能エポキシ化合物は、一分子中に2つ以上のエポキシ基を含む多官能エポキシ化合物であり、より好ましくは一分子中に2つ又は3つのエポキシ基を含む多官能エポキシ化合物である。多官能エポキシ化合物の市販品としては、ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール」シリーズのEX-201,EX-211,EX-212,EX-252,EX-313,EX-314,EX-321,EX-411,EX-421,EX-512,EX-521,EX-611,EX-612,EX-614,EX-614B等が挙げられる。
多官能エポキシ化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分中、好ましくは0質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
上述の硬化性組成物は、以上説明した成分の他、必要に応じて、有機溶剤、レベリング剤、硬化触媒等の任意成分を混合して調製することができる。
上述のハードコート層は、硬化性組成物を基材上に塗布し、硬化処理(熱硬化、光硬化等)を施すことにより形成することができる。硬化性組成物の塗布手段としては、ディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の通常行われる方法を適用することができる。硬化処理は、多官能エポキシ化合物を含む硬化性組成物については、通常、加熱により行われる。加熱硬化処理は、例えば上述の硬化性組成物を塗布したレンズを50~150℃の雰囲気温度の環境下に30分~3時間程度配置することで行うことができる。
<下地層>
上述の下地層としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含む水系樹脂組成物により形成することができる。
上述の水系樹脂組成物としては、市販されている水性ポリウレタンをそのまま、又は必要に応じて水系溶媒で希釈して使用することも可能である。市販されている水性ポリウレタンとしては、例えば、日華化学株式会社製の商品名「エバファノール」シリーズ、第一工業製薬株式会社製の商品名「スーパーフレックス」シリーズ、株式会社ADEKA製の商品名「アデカボンタイター」シリーズ、三井化学株式会社製の商品名「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「ボンディック」シリーズ、商品名「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の商品名「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン株式会社製の商品名「ソフラネート」シリーズ、花王株式会社製の商品名「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業株式会社製の商品名「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業株式会社製の商品名「アイゼラックス」シリーズ、ゼネカ株式会社製の商品名「ネオレッツ」シリーズが挙げられる。
下地層は、例えば、上述の水系樹脂組成物を基材の表面に塗工及び乾燥させることによりを形成することができる。
<機能層>
上述の機能層としては、例えば、反射防止層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、フォトクロミック層、帯電防止層、防曇層が挙げられる。これらの機能層は、1種を単独又は2種以上を組合せて用いてもよい。これらの機能層については、眼鏡レンズに関する公知技術を適用することができる。これらの中でも、反射防止層を有することが好ましい。
(反射防止層)
反射防止層は、例えば、交互に配置された低屈折率層及び高屈折率層を有する。反射防止層が有する層数は、好ましくは4~11層であり、より好ましくは5~8層である。
低屈折率層の屈折率は、波長500~550nmにおいて、好ましくは1.35~1.80であり、より好ましくは1.45~1.50である。低屈折率層は、無機酸化物からなり、好ましくは酸化ケイ素からなる。
高屈折率層の屈折率は、波長500~550nmにおいて、好ましくは1.90~2.60であり、より好ましくは2.00~2.40である。高屈折率層は、例えば、無機酸化物からなる。高屈折率層に用いられる無機酸化物は、好ましくは、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化チタニウム、酸化ニオブ及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは酸化ジルコニウム及び酸化タンタルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
反射防止層は、真空蒸着法にて、低屈折率層及び高屈折率層を交互に積層することで、反射防止層を形成することができる。
<撥水層>
撥水層は、後述の撥水材料組成物を用いて形成する。撥水層は、ハードコート層上に形成されていても、機能層上に形成されていてもよいが、好ましくは反射防止層上に形成されていることが好ましい。そして、撥水層は、好ましくは最表面に位置することが好ましい。撥水材料組成物等の詳細は、後述する。
[眼鏡レンズの製造方法]
本実施形態の眼鏡レンズの製造方法は、
式(1a)で表される基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1)を含有する撥水材料組成物を部分的に加水分解する加水分解工程と、
当該加水分解工程を経た撥水材料組成物を用いて光学部材上に撥水層を形成する撥水層形成工程を含む。
<撥水材料組成物>
(フッ素含有シラン化合物(1))
本実施形態の製造方法に用いられる撥水材料組成物は、式(1a)で表される基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1)を含有する。本実施形態の撥水材料組成物によれば、当該撥水材料組成物を用いて撥水層を形成することで、優れた撥水性を示す眼鏡レンズが得られる。
フッ素含有シラン化合物(1)は、式(1a):*-Si(OR)3・・・(1a)(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、*は結合部位である。)で表される基を片末端に有する。フッ素含有シラン化合物(1)は、好ましくは直鎖状フッ素含有シラン化合物である。
Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
フッ素含有シラン化合物(1)は、得られる眼鏡レンズの撥水性及び耐払拭性をより向上させる観点から、好ましくは、式(1):
(式中、Rは、式(1a)の定義と同じであり、Rfは、炭素数1~16の直鎖状又は分岐状のフッ素化アルキル基であり、Lは、炭素数1~6のアルキレン基であり、aは0~10であり、pは1~4であり、bは0~10であり、mは2~4であり、nは1~3であり、(m-n)は1以上であり、xは10~60であり、yは10~60であり、zは0~10である。なお、aが2以上の場合、複数のm及び複数のnはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数のbは同一であっても異なっていてもよく、各種構造単位の配列順序は限定されない。)で表される化合物である。
Rfのフッ素化アルキル基は、好ましくは直鎖状のフッ素化アルキル基であり、より好ましくは直鎖状パーフルオロアルキル基である。
Rfのフッ素化アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~3である。
Rfのフッ素化アルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-tert-ブチル基、パーフルオロ-n-へキシル基、パーフルオロ-n-オクチル基、パーフルオロ-n-デシル基、パーフルオロ-n-ドデシル基が挙げられる。これらの中でも、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、又はパーフルオロ-n-プロピル基が好ましく、パーフルオロメチル基がより好ましい。
Lのアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状が好ましい。
Lのアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~5であり、より好ましくは2~4である。
Lのアルキレン基としては、例えば、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基が挙げられる。これらの中でも、プロパン-1,3-ジイル基が好ましい。
aは、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~3である。
pは、好ましくは2~3であり、より好ましくは3である。
bは、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~3である。
mは、好ましくは2~3であり、より好ましくは3である。
nは、好ましくは1~2であり、より好ましくは2である。
xは、好ましくは20~60であり、より好ましくは25~50であり、更に好ましくは30~45である。
yは、好ましくは20~60であり、より好ましくは25~50であり、更に好ましくは30~45である。
zは、好ましくは0~8であり、より好ましくは0~5であり、更に好ましくは0~3である。
繰り返し数aで示される構造単位及び繰り返し数bで示される構造単位の配列順序は、式(1)で示される配列順序であることが好ましい。この場合、繰り返し数x、y、zで示される構造単位の配列順序は限定されない。
フッ素含有シラン化合物(1)としては、下記式(1-1)で表される化合物が挙げられる。
(式中、xは35~40であり、yは35~40であり、zは0又は1であり、aは1であり、bは1である。)
フッ素含有シラン化合物(1)の合計含有量は、撥水材料組成物の固形分全量に対して、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは60~100質量%であり、更に好ましくは70~100質量%であり、より更に好ましくは80~100質量%である。当該合計含有量が当該範囲に含まれることで、撥水性及び耐払拭性がより向上する。
(フッ素含有シラン化合物(3))
撥水性組成物は、反応性シリル基を両末端に有するフッ素含有シラン化合物(3)(以下、単に「フッ素含有シラン化合物(3)」ともいう。)を含有していてもよい。フッ素含有シラン化合物(3)としては、例えば、以下の式(3-1)~(3-6)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
式中のr、s及びtはそれぞれ独立に1以上の整数であり、好ましくは1~50の整数、より好ましくは10~40の整数である。
フッ素含有シラン化合物(3)の含有量は、撥水材料組成物の固形分全量に対して、好ましくは0質量%以上50質量%以下であり、フッ素含有シラン化合物(3)が含まれる場合、より好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より更に好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
本実施形態の撥水材料組成物は、テトラアルキルオルトシリケート、フッ素樹脂などを含んでいてもよい。
テトラアルキルオルトシリケートは、アルキルオキシ基を有する。当該アルキルオキシ基の炭素数は、好ましは1~6であり、より好ましくは1~3である。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、ブトキシ基が挙げられる。これらの中でもメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。テトラアルキルオルトシリケートとしては、例えば、テトラエチルオルトシリケート、テトラメチルオルトシリケートが挙げられる。これらの中でもテトラエチルオルトシリケートが好ましい。
撥水性材料組成物におけるテトラアルキルオルトシリケートの含有量は、撥水性材料組成物の固形分全量に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上20質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
フッ素樹脂としては、例えば、フッ素含有オレフィン系化合物の重合体、並びにフッ素含有オレフィン系化合物及びこれと共重合可能な単量体からなる共重合体が挙げられる。より具体的には、フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリフッ化ビニルが挙げられる。
撥水性材料組成物におけるフッ素樹脂の含有量は、撥水性材料組成物の固形分全量に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上20質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
(溶剤)
撥水材料組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含有することで、粘度を低下させることができるため、蒸着用ペレットに含侵させることが容易になる。
溶剤としては、フッ素変性溶剤;石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等のアルコール溶剤が挙げられる。これらは1種を単独、又は2種以上を組み合わせてもよい。これらの溶剤の中でも、フッ素変性溶剤が好ましい。
フッ素変性溶剤としては、例えば、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン等のフッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤;1,3-ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤;メチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)等のフッ素変性エーテル系溶剤;パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン等のフッ素変性アルキルアミン系溶剤が挙げられる。これらは1種を単独、又は2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、1,3-ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)又はパーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
撥水性材料組成物中の固形分全量は、撥水性材料組成物の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。
<加水分解工程>
加水分解工程では、式(1a)で表される基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1)を含有する撥水材料組成物を部分的に加水分解する。
部分的に加水分解する方法は、特に限定されないが、例えば、(A)フッ素含有シラン化合物(1)100質量部に対して0.5~20質量部の水の存在下でフッ素含有シラン化合物(1)を部分的に加水分解すること(以下、「方法(A)」ともいう。)、又は(B)温度20~70℃、相対湿度60%以上の雰囲気下に撥水材料組成物を配することで、フッ素含有シラン化合物(1)を部分的に加水分解すること(以下、「方法(B)」ともいう。)、が挙げられる。これらの中でも、(A)の方法が好ましい。
(方法(A))
(A)の方法では、撥水材料組成物に対して水を添加することが好ましい。方法(A)で水を添加することで、式(1a)で表される基の加水分解を安定的に進行させることができる。
(A)の方法における、水の量は、フッ素含有シラン化合物(1)100質量部に対して、好ましくは0.5~20質量部であり、より好ましくは0.6~10質量部であり、更に好ましくは0.7~5.0質量部であり、より更に好ましくは0.8~3.0質量部より更に好ましくは1.0~3.0質量部である。
撥水材料組成物に対して添加する水のpHは、好ましくは1.0~7.0であり、より好ましくは1.5~6.5であり、更に好ましくは2.0~6.0であり、より更に好ましくは2.0~4.0である。pHは、JIS Z 8802:2011に準拠して測定される。
添加する水のpHは、例えば、pH調整剤を添加することで行われる。pH調整剤としては、酸性物質が好ましい。酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
(A)の方法では、更に、炭素数1~10の水溶性アルコールの存在下でフッ素含有シラン化合物(1)を部分的に加水分解することが好ましい。水に加えて水溶性アルコールを共存させることで、撥水材料組成物中に水が均一にいきわたりやすくなり、安定した耐払拭性を示す撥水層が得られる。水溶性アルコールの炭素数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。水溶性アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、トリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールが挙げられる。これら水溶性アルコールは、1種を単独又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの水溶性アルコールの中でも、イソプロピルアルコールが好ましい。
水溶性アルコールの量は、フッ素含有シラン化合物(1)100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは3~20質量部であり、更に好ましくは5~15質量部である。
(A)の方法は、上述の条件下で、攪拌してもよい。攪拌することで、撥水材料組成物中に水が均一にいきわたりやすくなり、安定した耐払拭性を示す撥水層が得られる。
(A)の方法における処理温度は、好ましくは10~60℃であり、より好ましくは20~50℃であり、更に好ましくは30~45℃である。当該温度で処理することで、加水分解が促進され、処理時間を短縮することができる。
(A)の方法における処理時間は、好ましくは1時間以上8日以下であり、より好ましくは12時間以上6日以下であり、更に好ましくは3日以上5日以下である。
(方法(B))
方法(B)では、温度20~70℃、相対湿度60%以上の雰囲気下に撥水材料組成物を配することで、フッ素含有シラン化合物(1)を部分的に加水分解する。耐払拭性をより向上させる観点から、当該温度は好ましくは40~50℃であり、当該相対湿度は、90%以上である。
方法(B)における温度は、好ましくは20~70℃であり、より好ましくは30~60℃であり、更に好ましくは40~50℃である。
方法(B)における相対湿度は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70~100%であり、更に好ましくは80~100%であり、より更に好ましくは90~100%である。
(B)の方法は、上述の条件下で、攪拌してもよい。攪拌することで、撥水材料組成物中に水が均一にいきわたりやすくなり、安定した耐払拭性を示す撥水層が得られる。
(B)の方法における処理時間は、好ましくは1時間以上8日以下であり、より好ましくは12時間以上6日以下であり、更に好ましくは3日以上5日以下である。
<撥水層形成工程>
撥水層形成工程で用いられる光学部材としては、例えば、上述の基材、又はハードコート層を積層した基材、ハードコート層及び機能層を積層した基材が挙げられる。これらの中でも、ハードコート層及び機能層を積層した基材が好ましく、ハードコート層及び反射防止層を積層した基材がより好ましい。
撥水層形成工程における光学部材上に撥水層を形成する方法は、例えば、蒸着又は塗工により形成することができるが、好ましくは撥水材料組成物を蒸着することで、撥水層を形成する。
蒸着は、例えば、真空蒸着により行なわれる。真空蒸着における加熱温度は、好ましくは400℃以上であり、より好ましくは500℃以上であり、更に好ましくは550℃以上であり、更に好ましくは600℃以上である。真空蒸着における加熱温度は、好ましくは1000℃以下である。蒸着に関する加熱温度とは、蒸着時に撥水材料組成物が含浸された蒸着ペレット等が加熱される温度を意味する。なお、真空蒸着は、3.0×10-2Pa以下の真空度に制御した蒸着空間内で行うことが好ましい。
蒸着における加熱は、例えば、ハロゲンヒーター、抵抗加熱、電子銃等を使用することができるが、これらの中でも電子銃を用いて加熱して蒸着すると、精度の良い薄膜を成製することができる。電子銃のパワーについては、使用物質、蒸着装置、真空度、照射面積によって異なるが、好ましい条件は、加速電圧が200~1000Vで、印加電流5~400mA程度である。
蒸着は、撥水材料組成物を含浸させた蒸着用ペレットを用いて行うことが好ましい。
蒸着用ペレットとしては、例えば、金属容器と当該金属容器に充填されたスチールウールを備えるペレット、多孔性材料からなるペレット挙げられる。
多孔性材料としては、溶融シリカ多孔体、銅やステンレスなどの熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィルターを用いることが好ましい。焼結フィルターは、適度な蒸着速度を得るという観点からそのメッシュを40~200ミクロン、好ましくは、80~120ミクロンとすることが適当である。
塗工により撥水層を形成する場合、、有機溶剤を含む撥水材料組成物を光学部材上に塗布する方法を採用することができる。塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、フロー法、ドクターブレード法、ロールコート塗装、グラビアコート塗装、カーテンフロー塗装等が用いられる。
有機溶剤としては、上述のフッ素系溶剤であることが好ましい。有機溶剤で希釈するときの撥水材料組成物の固形分濃度は、0.03質量%以上1質量%以下が好ましい。
本実施形態に係る撥水層は、常温で反応して光学部材上に固定されるが、本実施形態の眼鏡レンズの製造方法は、必要に応じ、フッ素含有シラン化合物と光学部材表面との反応を進行させるため、撥水材料組成物により膜が形成された光学部材を加熱する加熱処理工程を有していてもよい。
加熱処理工程により、眼鏡レンズ表面の払拭や洗剤の付着など日常使用での物理的、化学的負荷による撥水性の低下を抑制して耐払拭性をより向上させることができる。
加熱処理工程における加熱温度は、好ましくは40~90℃であり、より好ましくは50~80℃であり、更に好ましくは55~70℃である。
加熱の時間は、特に限定されないが、例えば0.5~10時間である。
本実施形態の眼鏡レンズの製造方法は、膜を形成した後、未反応分子や反応が完了していない分子を膜から除去するため、フッ素系溶剤で防汚剤の未反応分を除去する工程を有していてもよい。当該工程を行うことで、眼鏡レンズ表面の撥水性を向上させることができる。フッ素系溶剤の例としては、上述の撥水材料組成物におけるフッ素系溶剤と同様である。
フッ素系有機溶媒を用いて防汚剤の未反応分を除去する方法としては、薬剤をしみこませた紙あるいは布によって拭き洗浄する方法か、薬剤を入れた容器(洗浄槽)中にレンズを浸漬し、揺動あるいは超音波等物理的なエネルギーを加えることによって行う。
上記の製造方法によれば、優れた撥水性を有し、皮脂の拭き取りが容易な眼鏡レンズが得られる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例A1
トリアルコキシシリル基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1-1)を含む撥水材料組成物に、塩酸を添加しpH2.7に調整した水を撥水性組成物100質量部に対して1質量部添加し、更に、水溶性アルコールとして、撥水性組成物100質量部に対して10質量部のイソプロピルアルコールを添加した。その後、40℃で4日間攪拌した。
処理後の撥水材料組成物を固形分全量が15mgとなるように、銅製の容器にスチールウールを充填した蒸着用ペレットに含浸させた。撥水材料組成物を含侵後、80℃に設定したオーブンで20分間加熱することにより溶媒を蒸発させた。
ガラス製容器に、コロイダルシリカ「スノーテックス 40」(製品名、日産化学工業株式会社)90質量部、他の有機ケイ素化合物として、メチルトリメトキシシラン81.6質量部、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン176質量部、0.5N塩酸2.0質量部、酢酸20質量部、水90質量部を加えた液を、室温にて8時間攪拌後、室温にて16時間放置して加水分解溶液を得た。この溶液に、イソプロピルアルコール120質量部、n-ブチルアルコール120質量部、アルミニウムアセチルアセトン16質量部を加え、室温にて8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させハードコート液を得た。
アルカリ水溶液で前処理した眼鏡レンズ基材「EYAS」(製品名、HOYA株式会社製、チオウレタン樹脂、処方S0.00、C0.00)を、上述のハードコート液の中に浸漬させ、浸漬終了後、引き上げ速度20cm/分で引き上げた眼鏡レンズを120℃で2時間加熱して硬化膜を形成しハードコート層を形成した。
次に、ハードコート層の上に、真空蒸着法にて、シリカと、ジルコニアを交互に積層した反射防止層を形成した。反射防止層蒸着後、表面を活性化するためにイオンガン処理を行った。イオンガン処理は以下の条件とした。
加速電圧:450V
加速電流:200mA
導入ガス:酸素(20sccm)
イオン照射時間:30秒
その後、眼鏡レンズを撥水材料組成物を蒸着するチャンバーに移動した。当該チャンバーには1で準備した撥水材料組成物を含浸した蒸着用ペレットをハロゲンヒーター加熱台にセットした。ハロゲンヒーターで加熱し、蒸着用ペレットに含まれる撥水材料組成物を蒸着した。加熱時の到達温度は約600℃であった。撥水層後の眼鏡レンズを取り出し、60℃に設定したオーブンに投入し、4時間保持した。
実施例A2~A8
撥水材料組成物に、添加する水のpH及び量、処理温度、並びに、処理時間を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例A1と同様の方法で、撥水層を形成した眼鏡レンズを得た。
実施例A9
撥水材料組成物に、水溶性アルコールを添加しなかった以外は、実施例A1と同様の方法で、撥水層を形成した眼鏡レンズを得た。
比較例A1
撥水材料組成物に対して水及び水溶性アルコールを添加せず、処理も行わずに、撥水材料組成物を固形分全量が15mgとなるように、銅製の容器にスチールウールを充填した蒸着用ペレットに含浸させたこと以外は、実施例A1と同様の方法で、撥水層を形成した眼鏡レンズを得た。
実施例B1
トリアルコキシシリル基を片末端に有するフッ素含有シラン化合物(1-1)を含む撥水材料組成物を温度40℃相対湿度90%の環境下で4日間攪拌した。当該処理後の撥水材料組成物を固形分全量が15mgとなるように、銅製の容器にスチールウールを充填した蒸着用ペレットに含浸させたこと以外は、実施例A1と同様の方法で、撥水層を形成した眼鏡レンズを得た。
実施例B2~B6
温度、湿度、処理時間を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例B1と同様の方法で、撥水層を形成した眼鏡レンズを得た。
比較例B1
撥水材料組成物に対して処理を行わずに、撥水材料組成物を固形分全量が15mgとなるように、銅製の容器にスチールウールを充填した蒸着用ペレットに含浸させたこと以外は、実施例B1と同様の方法で、撥水層を形成した眼鏡レンズを得た。
得られた眼鏡レンズの各種物性は、以下のとおり評価した。
[撥水性(初期接触角)]
接触角計「CA-D型」(製品名、協和界面科学株式会社)を使用し、25℃において直径2mmの水滴を針先に作り、これを眼鏡レンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは水滴の半径(水滴が眼鏡レンズ表面に接触している部分の半径)をrとし、水滴の高さをhとしたときに、以下の式で求められる。
θ=2×tan‐1(h/r)
なお、接触角の測定は水の蒸発による測定誤差を最小限にするために水滴を眼鏡レンズに触れさせた後10秒以内に行った。
[耐払拭性]
19mm×24mmにカットした消しゴムにレンズ拭き紙「ダスパー」(製品名、小津産業株式会社製)を巻き付け、それを往復摩擦磨耗試験機「トライボギヤ 30S」(製品名、ヤマト科学株式会社製)に取り付けた。それに2kgの荷重をかけ、眼鏡レンズ表面を払拭回数100回擦った毎に、接触角を上述の[初期接触角]に示す方法により確認し、合計払拭回数4000回擦った。耐払拭性は、以下の基準により評価した。
<評価基準>
A:払拭回数4,000回以上であっても、初期接触角から低下した接触角が5°未満である。
B:払拭回数3,000回以上4,000回未満で、初期接触角から低下した接触角が5°以下となる。
C:払拭回数2,000回以上3,000回未満で、初期接触角から低下した接触角が5°以下となる。
D:払拭回数2,000回未満で、初期接触角から低下した接触角が5°以下となる。
以上、実施例及び比較例の結果から、加水分解工程を経ることで、優れた撥水性及び耐払拭性が得られることがわかる。
実施例A1及びA9と、比較例A1との対比により、水を添加する加水分解工程を有することで、優れた撥水性及び耐払拭性を示す眼鏡レンズが得られることがわかる。
実施例A1~A3より、所定の範囲の水の添加量において優れた撥水性及び耐払拭性を示す眼鏡レンズが得られることがわかる。そして、実施例A1及びA3と、実施例A2との対比によって、特に0.5質量部超えの水を添加することで、顕著に優れた耐払拭性を示す眼鏡レンズが得られることがわかる。
実施例A1,A4~A6より、添加する水のpHが所定の範囲において優れた撥水性及び耐払拭性を示す眼鏡レンズが得られることがわかる。
実施例A1,A7~A8より、広範な処理時間の範囲内において、優れた撥水性及び耐払拭性を示す眼鏡レンズが得られることがわかる。
実施例B1と、比較例B1との対比により、所定の温度及び相対湿度の雰囲気下に撥水性組成物を配することで、優れた撥水性及び耐払拭性が得られることがわかる。
実施例B1~B3により、所定の範囲の処理温度において優れた撥水性及び耐払拭性が得られることがわかる。実施例B1及びB3と、実施例B2との対比により、40℃以上の処理温度において顕著に優れた撥水性及び耐払拭性が得られることがわかる。
実施例B1及びB4により、所定の範囲の相対湿度において優れた撥水性及び耐払拭性が得られることがわかる。
実施例B1,B5及びB6より、広範な処理時間の範囲内において、優れた撥水性及び耐払拭性を示す眼鏡レンズが得られることがわかる。
1…眼鏡レンズ、11…眼鏡レンズ用基材、11a,21fa,31fa…物体側の面、11b,21bb,31bb…眼球側の面、21f,21b…ハードコート層、31f,31b…機能層、41f,41b…撥水層

Claims (6)

  1. 下記式(1-1):
    (式中、xは35~40であり、yは35~40であり、zは0又は1であり、aは1であり、bは1である。)で表されるフッ素含有シラン化合物(1)を含有する撥水材料組成物を前記フッ素含有シラン化合物(1)100質量部に対して0.5~20質量部の水の存在下で部分的に加水分解する加水分解工程と、
    前記加水分解工程を経た撥水材料組成物を用いて光学部材上に撥水層を形成する撥水層形成工程を含む、眼鏡レンズの製造方法。
  2. 前記加水分解工程前における前記フッ素含有シラン化合物(1)の含有量が、前記撥水材料組成物の固形分全量に対して、50~100質量%である、請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  3. 前記加水分解工程において、pH1.0~7.0の水を添加する、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  4. 前記加水分解工程において、炭素数1~10の水溶性アルコールの存在下で部分的に加水分解する、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  5. 前記撥水層形成工程において、前記撥水材料組成物を蒸着することで、前記撥水層を形成する、請求項1~のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  6. 前記蒸着が、400~1000℃で行われる、請求項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
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