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JP4581608B2 - 薄膜の製造方法、光学部品の製造方法および成膜装置 - Google Patents

薄膜の製造方法、光学部品の製造方法および成膜装置 Download PDF

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Description

本発明は、含シリコン化合物の表面に、フッ素含有有機ケイ素化合物の薄膜を製造する方法に関し、特に、光学部品の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物の薄膜を製造する方法に関するものである。
眼鏡レンズには、光の反射を抑制し、光の透過性を高めるために、その表面に反射防止膜が形成され、さらにこの反射防止膜の表面に、撥水性を備えた防汚層が設けられている。この防汚層は、ユーザが使用する際に付着する手垢、指紋、汗または化粧料などによる汚れを防ぎ、あるいは汚れを拭き取り易くするために設けられている。
特開平9−258003号公報 特開2004−145283号公報
フッ素含有有機ケイ素化合物による表面処理は、高い撥水性が要求される面や、上記のように防汚性の面を形成する際に採用される。特許文献1および特許文献2には、防汚性の優れたフッ素含有有機ケイ素化合物の一例が開示されている。フッ素含有有機ケイ素化合物は、分子量が大きい方が防汚性は優れており、その一方で分子量が大きすぎると膜強度が低下しやすいと言われている。このため、表面処理に用いられるフッ素含有有機ケイ素化合物の分子量は500以上、数万程度以下が望ましいとされている。
レンズの防汚層を形成する際に使用されるフッ素含有有機ケイ素化合物の一例は、信越化学工業株式会社製のKP−801Mであり分子量498である。よりフッ素含有量の高い分子量の大きなフッ素含有有機ケイ素化合物の一例は、信越化学工業株式会社製のKY−130であり、分子量は2000〜3000と推定される。また、ダイキン社製のオプツールDSXは分子量が4000〜5000の範囲である。
フッ素含有有機ケイ素化合物の表面処理は、最表層がガラスなどのシリコンを含む層であればより効果的である。フッ素含有有機ケイ素化合物は、ガラス表面のシラノール基と結合し、シロキサン結合を形成するからである。ただし、この反応には、加水分解および脱水と縮重合とを必要とする。このため、フッ素含有有機ケイ素化合物の表面処理は、通常、高湿度雰囲気でアニールを行う後工程を含む。膜が厚いと、膜強度を得るために長時間アニールする必要があり、一定の膜強度を得ることも難しい。また、レンズの性能を阻害しないように膜厚は薄いことが望ましく、膜厚が大きいと、余分な膜を拭き取るという作業が必要になり、膜強度が低いとその過程で膜がはがれてしまうという問題もある。
一方、シロキサン結合を形成するプロセスは、反応速度はそれほど高くないが、適当な湿度があれば常温でも進むプロセスである。このため、膜が十分に薄ければ拭き取り作業が不要になるので、フッ素含有有機ケイ素化合物を成膜した後に適当なエージングの期間を確保するだけで実用に供することができる可能性がある。しかしながら、薄い膜を製造しようとすると、歩留まりを確保するためには、製造過程の膜厚公差を要求される膜厚に対して十分に小さくする必要がある。
蒸着により薄膜を製造する場合、チェンバー内の圧力は膜厚公差に影響を与える1つのパラメータとなる可能性がある。チェンバー内を高真空にすることにより、膜厚公差を縮小できると予想されるが、高真空にすればするほどチェンバーの設備費用は高くなり、ランニングコストも高くなる。したがって、適度な膜厚公差を得るのに必要な条件を見極める必要がある。そして、その条件は、膜厚差が小さく、撥水または防汚性が高く、高耐久性のフッ素含有有機ケイ素化合物の薄膜を経済的に製造するために必要な条件である。そこで、本発明においては、防汚層を成膜するのに適したフッ素含有有機ケイ素化合物を経済的に成膜するための条件を提供することを目的としている。
さらに、現状でも、防汚層を成膜するのに適したフッ素含有有機ケイ素化合物は1種類ではなく、今後も分子量の異なるフッ素含有有機ケイ素化合物であって、防汚層を製造するのに適したフッ素含有有機ケイ素化合物が開発される可能性は十分にある。分子量などの物性値の異なるフッ素含有有機ケイ素化合物に対して、同じ条件で蒸着することが最も経済的であるかは不明であり、多くの場合、異なる可能性がある。そこで、本発明においては、さらに、物性値の異なるフッ素含有有機ケイ素化合物からなる、経済的で高耐久性および高性能の薄膜を成膜するための条件を提供することを目的としている。
本発明においては、ワークの含シリコン化合物の表面に、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着源として、薄膜を生成する成膜工程を有する薄膜の製造方法であって、成膜工程では、チェンバー内に設置された蒸着源とワークとの最大距離Lmに対する、フッ素含有有機ケイ素化合物の平均自由行程λの比率、すなわち、λ/Lmが0.2%以上になるようにチェンバーの圧力を設定する薄膜の製造方法を提供する。成膜工程では、最大距離に対する平均自由行程の比率λ/Lmが1.0%以上になるように圧力を設定することがさらに好ましい。
平均自由行程は以下の式(3)で表される。
λ=1/(√2・π・n・d2) ・・・(3)
ただし、λは平均自由行程[m]、nは1m3中の分子数[個/m3]、dは分子の直径
[m]である。
発明者の実験の結果を、平均自由行程を基準として評価することにより、上記の条件が見出された。この条件で蒸着を行うことにより、物性値の異なるフッ素含有有機ケイ素化合物を用い、蒸着源から最大距離の範囲内に配置されたワークに対して、蒸着量が過剰にならない範囲で、外観チェックによる蒸着量に差が見られない程度の薄膜を製造することができる。したがって、本発明により、膜厚が不足しない範囲で、物性値の異なるフッ素含有有機ケイ素化合物の薄い膜を安定して製造することが可能となる。このため、本発明により、比較的低コストの分子量が500程度のフッ素含有有機ケイ素化合物から、防汚性が優れている分子量が数千以上のフッ素含有有機ケイ素化合物を用いて、耐久性の高い薄膜を歩留まりよく、経済的に製造できる。
すなわち、本発明により、分子量が500程度のフッ素含有有機ケイ素化合物に限らず、分子量が1000から10000程度の範囲の高分子のフッ素含有有機ケイ素化合物を用いた薄膜を、安定して製造することができる。高分子のフッ素含有有機ケイ素化合物の一例は、以下の一般式(1)および/または一般式(2)で表されるものである。
ただし、一般式(1)において、式中、Rf1はパーフルオロアルキル基、Xは水素、臭素、またはヨウ素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基、R1は水酸基または加水分解可能な基、R2は水素または1価の炭化水素基を表す。a、b、c、d、eは0以上の整数で、a+b+c+d+eは少なくとも1以上の整数であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1、2のいずれかを表す。gは1、2、3のいずれかを表す。hは1以上の整数を表す。
Figure 0004581608
一般式(2)において、式中、Rf2は、式:−(Ck2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。R3は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子を表す。pは0、1、2のいずれかを表す。nは1〜5の整数を表す。m及びrは2または3を表す。
Figure 0004581608
さらに、本発明者らは、上記の条件により成膜することにより、同一のフッ素含有有機ケイ素化合物を用いた場合であっても撥水性をさらに向上できることを見出した。したがって、本発明の薄膜の製造方法は、より撥水性が優れており、また、防汚性が優れている薄膜を製造できるという顕著な効果を奏するものである。
本発明の製造方法を実現する成膜装置の1つの形態は、ワークの含シリコン化合物の表面に、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着源として、薄膜を生成する第1のチェンバーと、第1のチェンバー内に設置された蒸着源とワークとの最大距離に対する、フッ素含有有機ケイ素化合物の平均自由行程の比率λ/Lmが0.2%以上になるように、第1のチェンバー内の圧力を設定する真空生成装置とを有する成膜装置である。真空生成装置は、第1のチェンバー内の圧力を、最大距離に対する平均自由行程の比率が1.0%以上になるように設定できることがさらに好ましい。分子量が500程度であれば、この条件はチェンバー内を100〜10-1Pa程度にすることにより達成でき、ルーツポンプで達成できる場合が多い。また、分子量が数千程度であれば、この条件はチェンバー内を10-2〜10-3Pa程度にすることにより達成でき、ターボ分子ポンプを利用することにより十分に達成でき、チェンバーもその程度の真空を保持できる構成で十分である。
平均自由行程は、上記式(3)からわかるように、ファクタn(1m3中の分子数)を低減することにより増加する。このため、真空ポンプの能力を向上し、チェンバーを高真空に耐えられる構造にしてチェンバー内の圧力を低くすることにより、蒸着源とワークとの最大距離に対する平均自由行程の上限は特に制限されるものではない。しかしながら、チェンバー内の圧力を無駄に下げること、すなわち、真空度を必要以上に上げることは経済的な効果を減ずるものであり、本願の発明の意図するところではない。したがって、蒸着源とワークとの最大距離に対し平均自由行程が同程度、すなわち、蒸着源とワークとの最大距離に対する平均自由行程の比率λ/Lmが1(100%)以上となるような真空度は本発明においては、ほとんど無用であり、蒸着源とワークとの最大距離に対する平均自由行程の比率λ/Lmが2(200%)以上にする必要はない。歩留まりの良い薄膜を経済的に製造するという目的からは、蒸着源とワークとの最大距離に対する平均自由行程の比率λ/Lmは、50%程度以下であることがさらに好ましく、10%程度以下であっても十分に好ましい。高真空にすることは歩留まりが低下したり、薄膜の性能が低下することには繋がらないので、積極的に蒸着源とワークとの最大距離に対する平均自由行程の比率の上限を制御する必要がないことは上述した通りである。
フッ素含有有機ケイ素化合物の薄膜は、シリコンを含む素材と強力に結合する。したがって、含シリコン化合物の表面を備えた光学基板に、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着源として、薄膜を生成する成膜工程を有する光学部品の製造方法に本発明は適している。光学基板には、多種多様なレンズ、プリズム、フィルタ、ミラー、光学スイッチなどが含まれる。
フッ素含有有機ケイ素化合物の薄膜は非ガラス製のワークであっても、ワークの表面がシリコンを含む層で形成されていれば、強固な膜を形成できる。二酸化ケイ素を主成分とする層は、その一例であり、透明なのでプラスチック製の光学基板にコーティングすることにより本発明を適用できる。二酸化ケイ素を主成分とする層は単層である必要はなく、そのような例としては、反射防止膜がある。たとえば、SiO2とZrO2からなる多層膜である。また、ガラス基板に反射防止膜が施されている場合も、表面が二酸化ケイ素を主成分とする層となるので本発明の製造方法に適している。基板にハードコートが施されているようなケースであっても、光学素子の場合は、その表面に反射防止膜が形成されているので、本発明の製造方法に適している。
このように本発明においては、蒸着源のフッ素含有有機ケイ素化合物の平均自由行程の比率を指標とし、チェンバーの圧力を設定することにより、物性値の異なるフッ素含有有機ケイ素化合物を用いて、高性能の薄膜を歩留まり良く、経済的に製造することができる。したがって、本発明により、レンズなどの光学素子の表面に防汚膜を製造するのに適した製造方法および成膜装置を提供できる。
図1(a)および(b)に、ワークを搭載する支持装置80の概要を示してある。この支持装置80は、上方に凸に湾曲した円盤状のドーム81を備えており、ドーム81に同心円状に複数のワーク40を配列し、その配列を保持した状態で回転できるようになっている。図1(a)に示した支持装置80においては、ワークとしてメガネレンズとなる複数の基板40を、回転軸82を中心に同心円状に1〜4段にセットできるようになっている。
図2に、支持装置80に搭載された基板(ワーク)40の表面をコーティングする成膜装置50の概略構成を示してある。成膜装置50は、支持装置80が内部を通過可能な3つのチェンバーCH1、CH2およびCH3を備えている。これらのチェンバーCH1〜CH3は連結され、支持装置80が基板40を保持した状態で通過可能である。また、各々のチェンバーCH1〜CH3は相互に密封できるようになっており、各チェンバーCH1〜CH3の内圧を真空生成装置52、53および54によりそれぞれ制御できるようになっている。
チェンバーCH1は、エントランスまたはゲートチェンバーであり、外部から支持装置80を導入した後、一定時間、一定の圧力以下にチェンバーCH1の内部を保持することにより、脱ガスを行う。チェンバーCH1には、ロータリポンプ52a、ルーツポンプ52bおよびクライオポンプ52cを備えた真空生成装置52が設けられている。
チェンバーCH2は、反射防止膜(AR膜)43を成膜する第2のチェンバーである。このため、このチェンバーCH2の内部には、AR膜蒸着源55aおよび55b、このAR膜蒸着源55を蒸着させる電子銃56、および蒸着量を調整する開閉可能なシャッター57が設けられている。AR膜43は、二酸化ケイ素を主成分とする薄膜と、他の部材の薄膜、たとえば、TiO2、Nb23、Ta25、ZrO2の1つまたは複数が積層された構造が採用される。このため、少なくとも2つの膜蒸着源55aおよび55bが用意されている。チェンバーCH2は、ロータリポンプ53a、ルーツポンプ53bおよびクライオポンプ53cを備えた真空生成装置53により適当な圧力に保持される。
チェンバーCH3は、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着することにより防汚性の最表面層を形成する第1のチェンバーである。そのため、チェンバー内部には、フッ素含有有機ケイ素化合物が含浸された蒸着源59と、加熱ヒータ(ハロゲンランプ)68と、補正板67とが設置されている。補正板67は、固定式であり開度を調整することにより、支持装置80に向かって放出される蒸着量を調整できるようになっている。チェンバーCH3は、ロータリポンプ54a、ルーツポンプ54bおよびターボ分子ポンプ54cを備えた真空生成装置54により適当な圧力に保持される。
図3に、この成膜装置50において、ワーク40に薄膜を形成するプロセスを示してある。ワーク40がセットされた支持装置80がチェンバーCH1に導入され、脱ガスされる(ST1)。プラスチックレンズの場合は、プラスチック基板41に予めハードコート層42が形成されたワーク40が支持装置80にセットされる。ガラスレンズの場合は、ハードコート層が形成されてないワーク40が支持装置80にセットされる。
次に、支持装置80はチェンバーCH2に導かれ、ワーク40の表面に反射防止膜(AR膜)43が成膜される(ST2)。この過程では、複数の薄膜が積層され、最上層43aは、二酸化ケイ素を主成分とする薄膜が形成される。
続いて、支持装置80は、チェンバーCH3に導かれ、ワーク40の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物による防汚層44が成膜される(成膜工程、ST3)。
防汚層44が成膜された後、チェンバーCH3は徐々に大気圧に戻され、ワーク40が支持装置80ごと取り出される。ワーク40は、恒温恒湿槽(不図示)に投入され適当な湿度と温度の雰囲気でアニールされる。または、所定時間室内放置することによってエージングが行われる(ST4)。
図4に、チェンバーCH3における、ワーク40を搭載した支持装置80と蒸着源59との関係を拡大して示してある。ワーク40が配列された支持装置80のドーム81は湾曲しており、蒸着源59との距離の差が小さくなる形態ではあるが、各段のワーク40a〜40dと蒸着源59との蒸着距離L1〜L4は異なる。この装置においては、回転軸82から外側に向かって順番に、ドーム1段目のワーク40aの蒸着距離L1は287mm、ドーム2段目のワーク40bの蒸着距離L2は263mm、ドーム3段目のワーク40cの蒸着距離L3は257mm、ドーム4段目のワーク40dの蒸着距離L4は278mmとなる。したがって、本例の成膜装置50においては、蒸着源59とワーク40との最大距離Lmは、287mmであり、この範囲で蒸着量にむらのない条件が、均一で薄い薄膜を製造するために求められる。
以下に、成膜装置50を用いて眼鏡レンズの表面に防汚層を形成した実施例を説明する。
(実施例1)
ワーク40として、プラスチック基板41の上にハードコート層42が形成された眼鏡用プラスチックレンズ(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン)を支持装置80にセットし、チェンバーCH1で脱ガスした後、チェンバーCH2において、SiO2とZrO2の層を交互に蒸着し、これらの層からなる反射防止膜43を成形した。この反射防止膜43の最上層は、SiO2層である。その後、チェンバーCH3に支持装置80を移動して防汚層44を成膜した。なお、チェンバーCH3に至るまでのプロセスは、以下に説明する実施例および比較例において共通するので、以下では省略する。
この実施例1においては、蒸着源59として、信越化学工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(KY−130、以降では試料1)を用いた。試料1の分子量Mは2000〜3000の範囲、分子径nは2nmと推定される。試料1は、下記の一般式(2)で表される組成物を含有している。
Figure 0004581608
一般式(2)において、式中、Rf2は、式:−(Ck2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。R3は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子を表す。pは0、1、2のいずれかを表す。nは1〜5の整数を表す。m及びrは2または3を表す。
試料1を、フッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに1g含浸させ乾燥させたものを蒸着源59としてチェンバーCH3にセットした。
チェンバーCH3は、ターボ分子ポンプ54cを用い、圧力が2.0〜3.0×10―2Paの範囲を維持するようにして蒸着した。この圧力範囲における平均自由工程λは、8.5〜12.8mmであり、最大蒸着距離Lm(287mm)に対する比率λ/Lmは、3.0〜4.4%になる。
成膜中は、ハロゲンランプを加熱ヒータ68として蒸着源59のペレットを600℃に加熱して、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸発させた。蒸着時間は5分である。蒸着終了後、チェンバー(蒸着機)CH3内を徐々に大気圧に戻して、ワーク40を取り出し、60℃、60%RHに設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。
(実施例2)
実施例2においては、蒸着源59として、実施例1と同じ試料1を用い、同じ条件で多孔質セラミックス製のペレットを作成し、蒸着源59としてチェンバーCH3にセットした。チェンバーCH3は、ターボ分子ポンプ54cを用い、圧力が6.0〜7.0×10-2Paの範囲を維持するようにして蒸着した。この圧力範囲における平均自由工程λは、3.6〜4.3mmであり、最大蒸着距離Lmに対する比率λ/Lmは、1.3〜1.5%になる。成膜条件およびその後のアニーリングの条件は実施例1と同じにした。
(実施例3)
実施例3においては、蒸着源59として、実施例1と同じ試料1を用い、同じ溶剤を用いて固形分濃度3%溶液を調製し、その他は条件で多孔質セラミックス製のペレットを作成し、蒸着源59としてチェンバーCH3にセットした。チェンバーCH3は、ターボ分子ポンプ54cを用い、圧力が1.0〜2.0×10-1Paの範囲を維持するようにして蒸着した。この圧力範囲における平均自由工程λは、1.3〜2.6mmであり、最大蒸着距離Lmに対する比率λ/Lmは、0.4〜0.9%になる。成膜条件およびその後のアニーリングの条件は実施例1と同じにした。
(実施例4)
実施例4においては、蒸着源59として、ダイキン工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(オプツールDSX、以降では試料2)を用いた。試料2の分子量Mは4000〜5000の範囲であり、分子径nは4nmと推定される。試料2は、下記の一般式(1)で表される組成物を含有する。
Figure 0004581608
ただし、一般式(1)において、式中、Rf1はパーフルオロアルキル基、Xは水素、臭素、またはヨウ素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基、R1は水酸基または加水分解可能な基、R2は水素または1価の炭化水素基を表す。a、b、c、d、eは0以上の整数で、a+b+c+d+eは少なくとも1以上の整数であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1、2のいずれかを表す。gは1、2、3のいずれかを表す。hは1以上の整数を表す。
試料2を、フッ素系溶剤(ダイキン工業株式会社製:デムナムソルベント)に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに1g含浸させ乾燥させたものを蒸着源59としてチェンバーCH3にセットした。チェンバーCH3は、ターボ分子ポンプ54cを用い、圧力が1.0〜2.0×10-2Paの範囲を維持するようにして蒸着した。この圧力範囲における試料2の平均自由工程λは、3.2〜6.4mmであり、最大蒸着距離Lmに対する比率λ/Lmは、1.1〜2.2%になる。
成膜中は、蒸着源59のペレットを加熱ヒータ68により630℃に加熱することにより、シラン化合物を蒸発させた。蒸着時間は5分である。蒸着終了後、チェンバー(蒸着機)CH3内を徐々に大気圧に戻して、ワーク40を取り出し、60℃、90%RHに設定した恒温恒湿槽に投入し、2時間保持することによりアニーリングした。
(比較例1)
比較例1においては、蒸着源59として、試料1を用い、実施例1と同じ溶剤に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに2g含浸させ乾燥させたものを蒸着源59としてチェンバーCH3にセットした。低真空度において蒸発量を確保するために含浸する量を増やした。チェンバーCH3は、ロータリーポンプ54aとルーツポンプ54bを用い、圧力が1.0〜2.0×100Paの範囲を維持するようにして蒸着した。
この圧力範囲における試料1の平均自由工程λは、0.1〜0.3mmであり、最大蒸着距離Lmに対する比率λ/Lmは、0.04〜0.10%になる。
成膜中は、蒸着源59のペレットを加熱ヒータ68により600℃に加熱することにより、シラン化合物を蒸発させた。蒸着時間は5分である。蒸着終了後、実施例1と同じ条件でアニーリングした。
(比較例2)
比較例2においては、蒸着源59として、試料2を用い、実施例4と同じ溶剤に希釈して固形分濃度3%溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに2g含浸させ乾燥させたものを蒸着源59としてチェンバーCH3にセットした。本例においても、低真空度において蒸発量を確保するために含浸する量を増やした。チェンバーCH3は、ロータリーポンプ54aとルーツポンプ54bを用い、圧力が1.0〜3.0×100Paの範囲を維持するようにして蒸着した。この圧力範囲における試料2の平均自由工程λは、0.02〜0.1mmであり、最大蒸着距離Lmに対する比率λ/Lmは、0.01〜0.02%になる。
成膜中は、蒸着源59のペレットを加熱ヒータ68により630℃に加熱することにより、シラン化合物を蒸発させた。蒸着時間は5分である。蒸着終了後、実施例4と同じ条件でアニーリングした。
図5に上記の条件で防汚層(撥水膜)44を形成したワーク40を評価した結果を纏めて示してある。まず、蒸着後(アニール後)のレンズの外観評価により、蒸着量の適・不適と、各段のワーク40a〜40dにおける蒸着量の差(段むら)を評価している。蒸着量の適・不適は、アニール後のレンズの外観を暗箱にて観察し、水滴跡発生の有無を調べている。蒸着量が過大な場合は、レンズ表面に防汚層を形成する撥水剤分子が表面に凝縮した水滴によって分布ムラを生じ、水滴跡として残ることを利用している。表中、「○」は水滴跡なしを示し蒸着量が適正であることを示している。「×」は水滴状の汚れが発生していることを示し、蒸着量が過剰であることを示している。
段むらは、アニール後のレンズの外観を暗箱にて評価すると共に、レンズの表面をレンズペーパーで拭き、その拭き跡を観察することにより評価している。蒸着量が多いほど、レンズペーパーで拭き取られる量も多くなるので拭き跡が強くなる。蒸着量が適正もしくは不足していれば、拭き跡はつかない。表中、「○」はドーム各段のワークの拭き跡及び水滴跡がほとんどなく、適正な厚みの膜が段むらなく、均一に蒸着されていることを示している。一方、「×」は一部の段のワークに強い拭き跡又は水滴跡が残り、ドーム各段で蒸着量が異なることを示している。
また、防汚層の性能を接触角、インク弾き性、インク拭取性で評価している。合わせて、最初にこれらの試験を行った後に、人工的にエージングを行い、その後に同じ評価をして耐久性も検証している。本例では、木綿布を用い、レンズの凸面(表面)を200gの荷重をかけながら、5000回往復し、その前後で防汚層の性能を評価することにより、耐久性を評価している。
接触角は、接触角計(協和科学株式会社製:CA−D型)を使用し、液滴法による純水の接触角を測定した結果を示してある。これにより、防汚層の撥水性が評価できる。
インクの弾き性は、レンズの凸面に、黒色油性マーカー(ゼブラ株式会社製:ハイマッキーケア)により約4cmの直線を引き、インクの弾き状態を次の基準にて判定する。「○」はインクが1本の線状または点状になることを示し、「△」はインクが部分的に弾かれていることを示し、「×」はインクではっきりと線が引けることを示している。インクの弾き性は、水よりもさらに濡れ性の高いインクの付着状態を観察しており、防汚層の表面の状態をさらに詳しく判断することができる。インクの弾き性がよければ、防汚層の表面は安定しており表面エネルギーが低いと考えられる。一方、インクの弾き性が悪ければ、防汚層の表面は粗れており、表面エネルギーが高いと考えられる。
インクの拭取性は、インクの弾き性で示した方法と同様に線を引き、5分間放置後、該マーク部をワイプ紙(クレシア製:ケイドライ)によって拭き取りを行い、その拭き取り易さを示したものである。「○」は10回以下の拭き取りで完全に除去できたことを示し、「△」は11回〜20回の拭き取りで完全に除去できたことを示し、「×」は20回の拭き取り後も除去されない部分が残ったことを示している。インクの拭取性は、ワークの表面におけるフッ素含有有機ケイ素化合物の残存状態を示しており、特に、耐久性試験において重要な評価値である。
図5の評価結果から分かるように、比較例1および2においては、ドーム2段及び3段の蒸着量が過大であり、ドーム1段と4段は外観上は蒸着量は適正であるものの、試験前の接触角が100°未満であることから、蒸着量が不足していることがわかる。従って、段むらが発生していることは明らかである。また、耐久性試験前においては、インクの拭取性は良好であるが、インクの弾き性は良くない。耐久性試験後においては、接触角、インクの弾き性および拭取性とも劣化しており、総合評価としては、比較例1および2の条件は、製品の製造方法として使用できる条件ではない。
これに対し、実施例1、2および4においては、ドーム各段にわたって蒸着量は適正であり、段むらは見られない。耐久性試験後も、接触角、インク弾き性およびインク拭取性は良好である。したがって、実施例1、2および4のワークに対する総合評価は良好であり、実施例1、2および4の条件は、製品の製造方法として使用できる条件である。
実施例3においては、ドーム4段の耐久性試験後の接触角およびインク弾き性が低下している。
しかしながら、インク拭取性は十分に良好である。したがって、実施例3のワークに対する総合評価は良好であり、実施例3の条件も、製品の製造方法として使用できる条件であると言える。しかしながら、実施例1、2および4の条件の方が製品の製造方法として適している。
このような評価結果を、最大蒸着距離Lmに対する平均自由工程λの比率λ/Lmに当て嵌めてみると、比率λ/Lmが0.4%以上においては、段むらなく適当な膜厚の層が成膜でき、さらに製造された防汚膜の性能および耐久性は良好である。これに対し、比率λ/Lmが0.1%以下においては、段むらがあり、膜厚も過剰になり、さらには、製造された防汚膜の耐久性は低い。したがって、最大蒸着距離Lmに対する平均自由工程λの比率λ/Lmは、適当な膜厚の防汚膜を段むらなく製造するために管理すべきパラメータの1つであり、その下限は0.2%程度にあると考えて良いことがわかる。
さらに、図5に示した評価より、最大蒸着距離Lmに対する平均自由工程λの比率λ/Lmは、適当な膜厚の防汚層を製造するために重要なファクタであるだけではなく、フッ素含有有機ケイ素化合物により耐久性の高い防汚層を製造するために重要なファクタであることも、この明細書において初めて明らかにされている。すなわち、図5に示した評価より、蒸着により成膜される防汚層の耐久性の点からも、比率λ/Lmは、0.2%程度以上であることが要求される。さらに、実施例3と実施例1、2および4との評価を比較すると、比率λ/Lmは1.0%以上であることがさらに好ましいことが分かる。
最大蒸着距離Lmに対する平均自由工程λとの比率λ/Lmと、防汚層の撥水性能との関係は定性的に残留ガス濃度を参考に説明できる。成膜中に含まれる残留ガス濃度Cgは、次の式(4)によって表される。
Cg=4.37×10―4×(P/√(Mg・T))×(M/(ρ・d))・・・(4)
但し、P;残留ガス圧[Pa]、Mg;残留ガスの分子量[g/mol]、T;温度[K]、M;蒸発物の分子量[g/mol]、ρ;膜の密度[g/cm3]、d;蒸着速度[cm/s]である。
この式(4)は、圧力が高く、蒸着物質の分子量が大きいほど薄膜中に取り込まれる残留ガス量が多くなることを示している。比較例1および2の低い比率λ/Lmで蒸着することは、式(4)において残留ガス圧が高い状態に相当する。さらに、試料1および2は、高い撥水性を得るために分子量が2000以上と、従来のフッ素含有有機ケイ素化合物に対して分子量が大きな試料が採用されている。したがって、成膜されたフッ素含有有機ケイ素化合物の膜中に空孔が多く、いわゆる「がさがさ」の膜となっていると考えられる。このため、比較例1および2の条件で製造されたフッ素含有有機ケイ素化合物の膜は、ワーク40であるレンズの表面の二酸化ケイ素を主成分とする層との結合点も少なくなるため、シロキサン結合の数量が相対的に少なく耐久性が低下すると考えられる。さらに、蒸着量が過剰になりやすく膜が厚くなるために、同じ条件でアニールしてもフッ素含有有機ケイ素化合物と二酸化ケイ素を主成分とする層との界面における水分量が不足し、アニールによる反応速度が遅く、この点でもシロキサン結合の数量が相対的に少ないと考えられる。フッ素含有有機ケイ素化合物の防汚膜の耐久性が低いことは、耐久性試験後のインク拭取性に顕著に現れており、防汚膜が剥がされてワークの表面の残量が少なく、弾き性だけではなく拭き取り性能も劣化している。
比較例1および2で製造された膜は、表面エネルギーの点からも防汚性が低下していると考えられる。撥水・防汚性を発現させるためには、表面エネルギーをできるだけ低下させる必要があり、この表面エネルギーは、撥水剤分子の配向性に強く影響されるからである。例えば、撥水剤分子が垂直配向した場合の表面エネルギーは、6dyn/cmであるのに対して、配向方向が傾くと18〜20dyn/cmに増加する。比率λ/Lmが小さいということは、平均自由行程λが短く分子同士の衝突を頻繁に繰り返すことを意味する。したがって、撥水剤分子がワーク40の表面に到達するまでに互いに絡み合い、ワーク40の表面に付着する段階では、分子の配向方向がかなり乱れていると考えられる。
表面エネルギーの増加は、インクの弾き性に顕著に現れている。比較例1および2の条件で製造されたワークは、実施例1〜4の条件で製造されたワーク40に対し、水との接触角では差を示さない。しかしながら、濡れ性が高く、表面エネルギーの小さなインクの弾き性では、耐久性試験を行う前の段階で顕著な差を見せている。比較例1および2のワークは、水に対する弾き性は同等でも、インクに対する弾き性が悪いので、含フッ素化合物であることから表面エネルギーは小さくなっているといっても、膜表面の配向状態の点からは表面エネルギーは小さくないと考えられる。
実施例1〜4の条件で製造されたワークは、耐久性試験の前および後において、インクの弾き性および拭取性とも優れており、製品として十分な性能を見せている。したがって、比較例1および2に対して、実施例1〜4の条件で製造されたワーク40は、残留ガス濃度の点においても、表面エネルギーの点においても優れていると考えられる。実施例3は、耐久性試験後におけるインクの弾き性が若干低下しているが、比率λ/Lmがほぼボーダラインであるために、他の実施例に対して膜の耐久性が若干低いことが要因であると考えられる。
このように、図5に示した評価結果より、比率λ/Lmを0.2%以上に設定することにより、緻密で耐久性が高く、さらに、フッ素含有有機ケイ素化合物の分子配列が整った表面エネルギーの小さな防汚層を製造できることが分かる。また、比率λ/Lmを0.2%以上にすることにより蒸着量も適正に保持でき、段むらの発生も防止できるので、フッ素含有有機ケイ素化合物からなる防汚層の膜厚を10nm程度あるいはそれ以下に蒸着により制御できる可能性がある。蒸着により所望の膜厚に制御できることは、蒸着後に余分な膜厚を拭き取る工程を省略できることを意味し、さらに、拭き取りのために膜の強度を確保しているアニーリング工程(図3におけるST4)を省略できることを示唆している。したがって、比率λ/Lmを本発明の範囲に設定することにより、段むらがなく、耐久性および防汚性の優れた防汚膜をフッ素含有有機ケイ素化合物により安定して製造できるだけではなく、アニーリング工程を省略し、防汚膜が成膜されたワークをさらに経済的に製造できる製造方法を提供できる。
なお、上記の例では、プラスチック製のレンズの表面に、ハードコートと反射防止膜を形成した後に、フッ素含有有機ケイ素化合物を成膜しているが、ガラス製のレンズの表面に直にフッ素含有有機ケイ素化合物を成膜する場合でも、実質的な条件は変わらないので、本発明を適用できる。ガラスレンズの表面に反射防止膜を成膜した後に、フッ素含有有機ケイ素化合物により防汚層を成膜する場合も同様であり、防汚層との界面が含シリコン化合物の層であれば、シラン化合物との結合力を生かした膜を成形できる。本発明は、表面の汚れによる性能の劣化が予想される光学素子の表面処理に好適であるが、撥水性の表面を形成することが要望される他のアプリケーションにおいても適用できる。
図1(a)は、ワークを支持するドーム型の支持装置の概要を示す平面図であり、図1(b)は断面図である。 成膜装置の概要を示す図である。 図2の成膜装置によりワークの表面に反射防止膜および防汚膜を製造する過程を示す図である。 成膜装置の蒸着用のチェンバーにおけるワークと蒸着源との関係を拡大して示す図である。 幾つかの条件で成膜されたワークの評価を示す図である。
符号の説明
40 ワーク
41 レンズ本体、42 ハードコート層、43 反射防止膜
44 防汚層(撥水膜)
50 成膜装置、54 真空生成装置
59 蒸着源
80 支持装置

Claims (10)

  1. フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸着源からの蒸着距離が異なる複数のワークが設置されたチェンバーを用いて、前記ワークの含シリコン化合物の表面に薄膜を生成する成膜工程を有する薄膜の製造方法であって、
    前記成膜工程では、前記チェンバー内の圧力が1×10 -2 〜7×10 -2 Paであるとともに、前記蒸着距離のうち最大距離に対する前記フッ素含有有機ケイ素化合物の平均自由行程の比率が、1.1〜4.4%となるように前記チェンバーの圧力を設定する薄膜の製造方法。
  2. 請求項1において、前記フッ素含有有機ケイ素化合物が、下記の一般式(1)および/または一般式(2)で表される、薄膜の製造方法。
    ただし、一般式(1)において、式中、Rf1はパーフルオロアルキル基、Xは水素、臭素、またはヨウ素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基、R1は水酸基または加水分解可能な基、R2は水素または1価の炭化水素基を表す。a、b、c、d、eは0以上の整数で、a+b+c+d+eは少なくとも1以上の整数であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1、2のいずれかを表す。gは1、2、3のいずれかを表す。hは1以上の整数を表す。
    Figure 0004581608
    一般式(2)において、式中、Rf2は、式:−(Ck2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。R3は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子を表す。pは0、1、2のいずれかを表す。nは1〜5の整数を表す。m及びrは2または3を表す。
    Figure 0004581608
  3. 請求項1において、前記フッ素含有有機ケイ素化合物の分子量が1000から10000程度の範囲である、薄膜の製造方法。
  4. 請求項1において、前記ワークの表面は二酸化ケイ素を主成分とする層である、薄膜の製造方法。
  5. フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸着源からの蒸着距離が異なる複数のワークが設置されたチェンバーを用いて、前記ワークの含シリコン化合物の表面に薄膜を生成する成膜工程を有する光学部品の製造方法であって、
    前記成膜工程では、前記チェンバー内の圧力が1×10 -2 〜7×10 -2 Paであるとともに、前記蒸着距離のうち最大距離に対する前記フッ素含有有機ケイ素化合物の平均自由工程の比率が、1.1〜4.4%となるように前記チェンバーの圧力を設定する光学部品の製造方法。
  6. 請求項5において、前記フッ素含有有機ケイ素化合物が、下記の一般式(1)および/または一般式(2)で表される、光学部品の製造方法。
    ただし、一般式(1)において、式中、Rf1はパーフルオロアルキル基、Xは水素、臭素、またはヨウ素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基、R1は水酸基または加水分解可能な基、R2は水素または1価の炭化水素基を表す。a、b、c、d、eは0または1以上の整数で、a+b+c+d+eは少なくとも1以上の整数であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1、2のいずれかを表す。gは1、2、3のいずれかを表す。hは1以上の整数を表す。
    Figure 0004581608
    一般式(2)において、式中、Rf2は、式:−(Ck2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。R3は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子を表す。pは0、1、2のいずれかを表す。nは1〜5の整数を表す。m及びrは2または3を表す。
    Figure 0004581608
  7. 請求項5において、前記フッ素含有有機ケイ素化合物の分子量が1000から10000程度の範囲である、光学製品の製造方法。
  8. 請求項5において、前記光学基板の表面は二酸化ケイ素を主成分とする層である、光学部品の製造方法。
  9. 請求項8において、前記二酸化ケイ素を主成分とする層は、前記光学基板に成膜された反射防止膜の一部を形成している、光学部品の製造方法。
  10. 請求項9において、前記反射防止膜は、前記光学基板の上に成膜されたハードコート膜の上に成膜されている、光学部品の製造方法。
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