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JP2004226942A - 光学部材、光学部材の製造方法及び薄膜の製造方法 - Google Patents

光学部材、光学部材の製造方法及び薄膜の製造方法 Download PDF

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JP2004226942A
JP2004226942A JP2003066563A JP2003066563A JP2004226942A JP 2004226942 A JP2004226942 A JP 2004226942A JP 2003066563 A JP2003066563 A JP 2003066563A JP 2003066563 A JP2003066563 A JP 2003066563A JP 2004226942 A JP2004226942 A JP 2004226942A
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Japan
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optical member
organosilicon compound
water
fluorine
alkyl group
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JP2003066563A
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English (en)
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Yukihiro Takahashi
幸弘 高橋
Masakazu Matsumoto
雅一 松本
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Hoya Corp
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Hoya Corp
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Publication date
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Abstract

【課題】従来の撥水膜の耐久性特性よりも、さらに耐久性の特性を向上させた光学部材及び光学部材の製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に反射防止膜を有する光学部材において、前記反射防止膜の最外層が蒸着法によって蒸着された二酸化ケイ素を主成分とする層であり、さらに該層の外側にフッ素を含有した撥水層を有し、かつ、以下の(1)及び(2)の特性を有する光学部材である。
(1)撥水層を施したときの水に対する静止接触角(摩擦前静止接触角)が104度以上である。
(2)セ−ム皮を25℃の水に5分間漬浸した後、該セ−ム皮で500グラム重の加重をかけて撥水層表面を10000回擦ったときの静止接触角(摩擦後静止接触角)が、前記摩擦前静止接触角よりも0〜10度小さい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた撥水性薄膜を有する光学部材及び光学部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンズ等の光学部材上に施された反射防止膜は、一般にZrO,SiOなどの無機酸化物により形成されている。そのため、汗、指紋などによる汚れが付着しやすく、かつこれらの汚れを除去することが困難であった。こうした問題を解決するために、反射防止膜上に撥水膜を施すことはよく知られている。
かかる撥水膜において、近年、撥水性が時間とともに、できるだけ低下しない性能が求められている。その性能を得る方法として、真空下、有機ケイ素化合物を加熱蒸着させて反射防止膜上に撥水膜を形成する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に開示される方法は、段落番号[0031]に記載された耐久性の促進処理を行う前と行った後の水に対する静止接触角の差が10度〜13度であり、更なる性能の向上が望まれていた。
【特許文献1】
特開平5−215905号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の撥水膜の耐久性特性よりも、さらに耐久性の特性を向上させた光学部材及び光学部材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、以下の手段によりその目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、基材上に反射防止膜を有する光学部材において、前記反射防止膜の最外層が蒸着法によって蒸着された二酸化ケイ素を主成分とする層であり、さらに該層の外側にフッ素を含有した撥水層を有し、かつ、(1)撥水層を施したときの水に対する静止接触角(摩擦前静止接触角)が104度以上であり、(2)セ−ム皮を25℃の水に5分間漬浸した後、該セ−ム皮で500グラム重の加重をかけて撥水層表面を10000回擦ったときの静止接触角(摩擦後静止接触角)が、前記摩擦前静止接触角よりも0〜10度小さいという特性を有する光学部材、及び、必要に応じて溶媒で希釈したフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を減圧下、加熱して基材上に該物質を蒸着させ、基材上に薄膜を形成する工程を含む光学部材の製造方法において、該有機ケイ素化合物の加熱温度が、該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの範囲であって、かつ該有機ケイ素化合物の加熱開始から加熱蒸発の完結までの時間(加熱開始から該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度に達するまでの時間を含む)が90秒以内であることを特徴とする光学部材の製造方法、がその目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明に係る光学部材は、基材上に反射防止膜を有する光学部材であって、前記反射防止膜の最外層が蒸着法によって蒸着された二酸化ケイ素を主成分とする層であり、さらに該層の外側にフッ素を含有した撥水層を有することを特徴とする。ここで主成分とは該層中の二酸化ケイ素の含有量が50質量%以上であることをいい、さらには70質量%以上であることが好ましい。
フッ素を含有した撥水層は、加熱蒸着可能な撥水組成物から得られたものが用いられる。その撥水組成物の例としては、特開昭61−130902号公報、特開昭58−172246号公報、特開昭58−122979号公報、特開昭58−172242、特開昭60−40254号公報、特開昭50−6615号公報、特開昭60−221470号公報、特開昭62−148902号公報、特開平9−157582号公報、特開平9−202648号公報、特開平9−263728号公報に開示されるものが挙げられる。
好ましい組成物としては、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が挙げられ、これを原料として前記撥水層が形成されることが好ましい。フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の中でも、特に以下の一般式(I)で表せる化合物が好ましく用いられる。
【化3】
Figure 2004226942
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、R1は加水分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整数、pは1〜10の整数)
上記R1で示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
また、上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の分子量は、良好な薄膜を得るとの観点から3500〜6500であることが好ましい。
【0006】
また前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物としては、下記単位式(II):
+1CHCHSi(NH ・・・(II)
(ただし、qは1以上の整数である)で表される化合物も好適に用いられる。ここでqは6〜10の範囲であることが好ましい。またかかる化合物は、特に良好な物性を得るとの観点から、その分子量が300〜700であるものが特に好ましい。
具体的には、n−CFCHCHSi(NH;n−トリフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)プロピルシラザン、n−CCHCHSi(NH;n−ヘプタフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ペンチルシラザン、n−CCHCHSi(NH;n−ノナフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ヘキシルシラザン、n−C13CHCHSi(NH;n−トリデオフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)オクチルシラザン、n−C17CHCHSi(NH;n−ヘプタデカフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)デシルシラザン等を例示することができる。
尚、市販されている撥水処理剤として好ましいものとしては、KP−801(商品名、信越化学工業(株)製)、X−71−130(商品名、信越化学工業(株)製)、オプツ−ルDSX(商品名、ダイキン工業(株)製)などが挙げられる。
【0007】
本発明の光学部材は、撥水層を施したときの水に対する静止接触角(摩擦前静止接触角)が104度以上であることを必須とし、十分な撥水性を得るためにはさらに104度〜120度の範囲であることが好ましい。
また、セ−ム皮を25℃の水に5分間漬浸した後、該セ−ム皮で500グラム重の加重をかけて撥水層表面を前後に10000回擦ったときの静止接触角(摩擦後静止接触角)が、前記摩擦前静止接触角よりも0〜10度小さいという性能を有することを必須とする。この範囲であると耐久性を確保できるためであるが、さらに十分な耐久性を確保するとの観点から、この静止接触角の減少の程度は、0〜8度であることが好ましく、さらには0〜6度、1〜4度、最も好ましくは2〜3度である。尚、セーム皮を用いた耐久性試験は図1に示す装置を用いて行うことができる。
また、本発明の光学部材において、撥水層を施す前と施した後の視感反射率及び視感透過率が実質的に同一であることが好ましい。ここで実質的に同一とはその差が±1%以内、さらに好ましくは±0.1%以内であることをいう。実質的に同一であれば、撥水層が光学部材の反射防止性能を低下させないからである。
【0008】
前記フッ素を含有した撥水層を形成する薄膜の膜厚は、基本的にフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の蒸発量に依存して変化する。従って、該薄膜の膜厚をオングストロ−ムオ−ダ−で制御する際には、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を、溶媒で希釈した溶液を用いることが好ましい。かかる溶媒としては、m−キシレンヘキサフロライド、パーフルオロヘキサン、ハイドロフロロエーテルなどのフッ素系溶媒およびオクタフロロブチルエーテル、メチルノナフロロブチルエーテル、メチルデカフロロブチルエーテルなどのハイドロフロロエーテル等が挙げられる。
また、溶液中のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の濃度は、所望の目的を果たせれば特に制限はなく、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の種類及び所望する薄膜の膜厚などを考慮して、当業者が通常の知識をもって適宜決めることができる。
本発明において、表面の滑り性を向上させるために、上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物に、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを混合することが好ましい。このケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとしては、種々の構造のものを用いることができるが、本発明においては、下記の一般式(III)
−(RO)− ・・・(III)
(式中、Rは炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である)
で表される単位からなるものが好ましく用いられ、重量平均分子量が1000〜10000、特に2000〜10000のものが好ましい。Rは具体的には、CF,CFCF,CFCFCF,CF(CF)CF等の基が挙げられる。これらのパ−フルオロポリエ−テル(以下「PFPE」ということがある)は常温で液状であり、いわゆるフッ素オイルと称されるものである。
本発明に使用可能なPFPEとしては、例えばダイキン工業(株)製の商品名デムナムシリーズ(S−20(平均分子量2700)、S−65(平均分子量4500)、S−100(平均分子量5600)、S−200(平均分子量8400))、NOKクリューバー社製の商品名バリエルタシリーズ、旭硝子(株)製の商品名フォンブリンシリーズ、デュポン社製の商品名KRYTOXシリーズ、ダウコ−ニング社製の商品名モリコ−トHF−30オイルなどが挙げられる。
本発明では上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物とケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を混合し、これを主成分とする原料を用いて撥水層を設けることが好ましいが、その混合割合は混合溶液中の重量換算として、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物1に対して、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルが0.01〜100の範囲内であることが好ましい。
【0009】
上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物溶液および必要に応じて溶媒やケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを混合した溶液はそのまま容器に入れて加熱しても良いが、均一した蒸着膜を多く得られるとの観点から、多孔性材料に含浸させることがより好ましく、多孔性材料としては、銅やステンレスなどの熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィルターを用いることが好ましい。
又、多孔性材料は、適度な蒸着速度を得るという観点からそのメッシュを40〜200ミクロン、好ましくは、80〜120ミクロンとすることが適当である。
【0010】
本発明において、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物は、加熱蒸着によって反射防止膜を有する基材上に蒸着されるが、かかる場合に減圧下、原料を加熱して蒸着することが好ましい。その場合の真空蒸着装置内の真空度としては、特に限定はないが、均質の撥水膜を得るとの観点から、好ましくは、1.33×10−1Pa〜1.33×10−6Pa(10−3〜10−8Torr)、特に好ましくは、6.66×10−1Pa〜8.00×10−4Pa(5.0×10−3〜6.0×10−6Torr)である。
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を加熱する際の具体的温度は、有機ケイ素化合物の種類、蒸着する真空条件により異なるが、所望の真空度における該有機ケイ素化合物の蒸着開始温度以上から該有機ケイ素化合物の分解温度を超えない範囲で行うことが好ましい。ここで蒸着開始温度とは該有機ケイ素化合物を含む溶液の蒸気圧が真空度と等しくなったときの温度をいい、また有機ケイ素化合物の分解温度とは1分間の間に該化合物の50%が分解する温度(窒素雰囲気下、該化合物と反応性のある物質が存在しない条件で)をいう。
【0011】
蒸着速度は、上記温度範囲に保つことを条件に、前記有機ケイ素化合物加熱開始から蒸着を完結させるまでの時間を90秒以内とすることが好ましく、さらには50秒以内、40秒以内、30秒以内、20秒以内、10秒以内と短くするほど好ましく、特には5秒以内とすることが好ましい。該加熱時間の下限については特に制限はないが5秒程度である。上記加熱温度範囲で、且つ短時間で蒸着を完結させること、即ち、前記有機ケイ素化合物に短時間で高エネルギ−を与えることにより、耐久性に優れた撥水膜を有する光学部材を提供することができる。また、蒸着開始温度が多少異なる2成分の撥水剤を用いても、蒸発開始温度の高い原料の蒸発開始温度から分解温度の低い原料の分解温度の範囲で蒸着温度を選択することにより、ほぼ同時に蒸着でき、均一な膜を得ることができる。
【0012】
前記蒸着速度を達成する方法としては、前記有機ケイ素化合物に電子ビ−ムを照射する方法が好ましく挙げられる。電子ビ−ムを発生する方法は、従来、蒸着装置で用いられている電子銃を用いることができる。電子銃を用いれば、前記有機ケイ素化合物全体に、均一のエネルギ−を照射することができ均一な撥水膜を施しやすくなる。
電子銃のパワーについては、使用物質、蒸着装置、真空度、照射面積によって異なるが、好ましい条件は、加速電圧が6kV前後で、印加電流5〜80mA程度である。
かかる方法で光学部材を製造すると、撥水層を施したときの水に対する静止接触角(摩擦前静止接触角)が104度以上で、セ−ム皮を25℃の水で5分間漬浸した後、このセ−ム皮で500グラム重の加重をかけて撥水層表面を10000回擦ったときの静止接触角(摩擦後静止接触角)が、前記摩擦前静止接触角よりも0〜10度程度、好ましくは0〜5度程度小さくなるという特性が得られ、従来の製法に比べ、耐久性に優れた撥水膜を有する光学部材を提供することができる。
さらに、本方法では撥水膜の膜厚を制御することができ、撥水層を施す前と施した後の光学部材の視感反射率及び視感透過率を実質的に同一にすることができる。ここで視感反射率とはISO(International Organization for Standardization)によって2000年に発行された国際規格8980−4に準拠して測定したものをいい、視感透過率とはISOによって1999年に発行された国際規格8980−3に準拠して測定したものをいう。
尚、セ−ム皮は、米国連邦規格(Federal Specifications and Standards)KK−C−300(米国政府印刷局発行No. 1963‐653355/340, 1969 0−395−523 (4077) およびNo. 1972 0−482−195 (3363))で規定されているグレ−ドAまたはBが用いられる。
また、本発明において光学部材とは、眼鏡レンズのみならず、カメラレンズ、ワードプロセッテーのディスプレー等に付設する光学フィルター、自動車の窓ガラス等に用いられる広義の光学部材を意味する。
【0013】
本発明に用いる光学基板としては、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチック製光学基板、あるいは無機ガラス製光学基板などが挙げられる。尚、上記基板は基板上にハードコード層を有するものであってもよい。ハードコード層としては、有機ケイ素化合物、アクリル化合物等を含んだ硬化膜を例示できる。
【0014】
また、反射防止膜(蒸着膜)とは、例えばレンズ等の光学基板表面の反射を減少させるために設けられた ZrO、SiO、TiO、Ta、Y、MgF、Alなどから形成される単層または多層膜(但し、最外層にSiO膜を有する)またCrOなどの着色膜(但し、最外層にSiO膜を有する)を言う。本発明においては、反射防止膜の最外層に二酸化ケイ素を主成分とする層が用いられることを必須とする。ここで二酸化ケイ素を主成分とするとは、実質的に二酸化ケイ素からなる層、あるいは二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び有機化合物からなるハイブリッド層をいう。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.反射防止膜付プラスチックレンズの作成
プラスチックレンズとして、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト重合体系レンズ(HOYA(株)製Hi−Lux(商品名)、屈折率1.499、度数0.00)を用い、かかるプラスチックレンズ基材上に、特開昭63−10640号公報に開示されている硬化膜を施した。具体的には、SiO濃度40%のコロイダルシリカ(スノーテックス−40、水分散シリカ、日産化学(株)製)240質量部に、0.5N塩酸2.0質量部、酢酸20質量部を加えた溶液を、35℃にして攪拌しながら、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3官能有機ケイ素化合物)95質量部を滴下し、室温にて8時間攪拌し、室温にて16時間放置した。この加水分解溶液に、メチルセロソルブ80質量部、イソプロピルアルコール120質量部、ブチルアルコール40質量部、アルミニウムアセチルアセトン16質量部、シリコーン系界面活性剤(NUCシルウェットY−7006(商品名)、日本ウニカ(株)製)0.2質量部、紫外線吸収剤(チヌビンP(商品名)、チバガイギー製)0.1質量部を加えて、8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させコーティング組成物を得た。該組成物を、引き上げ速度15cm/minで浸漬法により塗布、室温にて15分放置後、120℃で2時間加熱硬化して硬化膜を施した。
次に、前記硬化膜上に真空蒸着法(真空度2.67×10 Pa(2×10−5Torr) )により、二酸化ケイ素からなる下地層〔屈折率1.46、膜厚0.5λ(λは550nmである)〕を形成し、該下地層の上に、プラスチックレンズに酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られる二酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)、真空蒸着法で得られる二酸化ケイ素からなる層(膜厚0.12λ)、さらにイオンビームアシスト法で得られる二酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)よりなる3層等価膜である第1層〔屈折率1.70、膜厚0.24λ〕を形成した。この第1層の上に、イオンビームアシスト法により二酸化チタンからなる第2層(屈折率2.40、膜厚0.5λ)を形成し、該第2層の上に、真空蒸着法(真空度2.67×10 Pa(2×10−5Torr) )により二酸化ケイ素からなる第3層〔屈折率1.46、膜厚0.25λ〕を形成して、反射防止膜付きプラスチックレンズを得た。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
【0016】
2.使用撥水剤
(1)撥水処理剤1
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物であるオプツ−ルDSX(商品名、ダイキン工業(株)製)を撥水処理剤1とした。
(2)撥水処理剤2
単位式C−(OCFCFCF24−O(CF−[CHCH(Si−(OCH)]1−10で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物(平均分子量約5000)をパーフルオロヘキサンで3重量%に希釈した溶液を撥水処理剤2とした。
(3)撥水処理剤3
単位式C−(OCFCFCF−O(CF−[CHCH(Si−(OCH)]1−10で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物(平均分子量約2000)をパーフルオロヘキサンで3重量%に希釈した溶液を撥水処理剤3とした。
(4)撥水処理剤4
単位式C17CHCHSi(NHで表されるフッ素含有有機ケイ素化合物をm−キシレンヘキサクロライドで3重量%に希釈した溶液(商品名:KP−801,信越化学工業(株)製)を撥水処理剤4とした。
(5)撥水処理剤5
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物であるオプツ−ルDSX(商品名、ダイキン工業(株)製)とケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テル(商品名:デムナムシリ−ズS−100、ダイキン工業(株)製、平均分子量5600)の混合物を撥水処理剤5とした。
(6)撥水処理剤6
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物であるX−71−130(商品名、信越化学(株)製)を撥水処理剤6とした。
(7)撥水処理剤7
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物であるX−71−130(商品名、信越化学(株)製)と、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テル(商品名:デムナムシリ−ズS−20、平均分子量2700,ダイキン工業(株)製)の混合物を撥水処理剤7とした。
【0017】
3.物性評価
本実施例及び比較例で得られたプラスチックレンズは以下に示す評価方法により諸物性を評価した。
(1)水に対する静止接触角
接触角計(協和界面科学(株)製品、CA−D型)を使用し、25℃において直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは水滴の半径(水滴がレンズ表面に接触している部分の半径)をrとし、水滴の高さをhとしたときに、以下の式で求められる。
θ=2×tan (h/r)
なお、静止接触角の測定は水の蒸発による測定誤差を最小限にするために水滴をレンズに触れさせた後10秒以内に行った。
(2)外観
目視にて干渉色の色ムラ及び干渉色変化があるかどうかを調べ、眼鏡レンズとして使用できる外観かどうか評価した。
(3)耐久性
セーム皮を25℃の水に5分間浸漬し、その後空気中に取出した。空気中で(25℃、相対湿度50〜60%)、1分間放置した後、該セーム皮で500gの荷重をかけて撥水膜を有するプラスチックレンズ表面を5000回及び10000回前後に擦り(25℃、相対湿度50〜60%)、その後(1) に記載した方法でそれぞれの水に対する静止接触角を測定した。5000回および10000回擦るための時間は、それぞれ65分、130分をかけた。なお、セ−ム皮は、米国連邦規格(Federal Specifications and Standards)KK−C−300Cのグレ−ドBを用いた。またセーム皮は久保田鹿皮(株)製のものを用い、耐久性試験は図1に示す装置を用いて行った。
(4)視感反射率(片面)
日立製作所製U−3410型自記分光高度型を用い、視感反射率を測定した。
【0018】
実施例1
撥水処理剤1を0.15mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルタ−(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルタ−全体を加熱して、上記反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜を形成した。
▲1▼真空度:3.1×10 〜 8.0×10 Pa(2.3×10−6 〜 6.0×10−6Torr)
▲2▼電子銃の条件
加速電圧:6kV、印加電流:40mA、照射面積:3.5×3.5cm、蒸着時間:5秒
【0019】
実施例2〜10
表1に示す条件で、実施例1と同様に撥水膜を形成した。実施例2〜4は、実施例1に対して撥水剤をそれぞれ代え、実施例5〜10は、実施例1と同様の撥水剤を用い、蒸着時間を変えて実験を行った。評価結果を表2に示す。
実施例11〜13
表1に示す条件で、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルの混合液を原料として撥水膜を形成し、評価を行った。使用液量を表1に、評価結果を表2に示す。
また、表3には、実施例10〜13で得られたレンズを、新東科学(株)製の連続加重式表面性測定機TYPE:22Hを使用して動摩擦係数を各々3回測定した結果を示す。
【0020】
比較例1
撥水処理剤をしみ込ませたステンレス製焼結フィルターの加熱方法としてハロゲンヒ−タを用い、蒸着時間を360秒としたこと以外は実施例1と同様に撥水膜を形成した。結果を表2に示す。
【0021】
比較例2
表1に示す撥水処理剤及び撥水剤液量とし、蒸着時間を300秒とした以外は比較例1と同様の方法で撥水膜を形成した。結果を表2に示す。これら比較例の実験結果から、表2に示すように撥水性の耐久性が、実施例で示した撥水膜の耐久性に比べ劣ることが判る。
【0022】
【表1】
Figure 2004226942
注:蒸着時間は、加熱開始時間から蒸着完了時間を意味する。
真空度:3.1×10 〜 8.0×10 Pa (2.3×10−6 〜 6.0×10−6Torr)
加速電圧:6kV
【0023】
【表2】
Figure 2004226942
【表3】
Figure 2004226942
【0024】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の光学部材は、耐久性特性が高く、また本発明の製造方法によれば、耐久特性の高い光学部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における耐久性試験を行う装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1:レンズ
2:セーム皮
3:六面体板

Claims (18)

  1. 基材上に反射防止膜を有する光学部材において、前記反射防止膜の最外層が蒸着法によって蒸着された二酸化ケイ素を主成分とする層であり、さらに該層の外側にフッ素を含有した撥水層を有し、かつ、以下の(1)及び(2)の特性を有する光学部材。
    (1)撥水層を施したときの水に対する静止接触角(摩擦前静止接触角)が104度以上である。
    (2)セ−ム皮を25℃の水に5分間漬浸した後、該セ−ム皮で500グラム重の加重をかけて撥水層表面を10000回擦ったときの静止接触角(摩擦後静止接触角)が、前記摩擦前静止接触角よりも0〜10度小さい。
  2. 撥水層を施す前と施した後の光学部材の視感反射率及び視感透過率が実質的に同一である請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記撥水層が、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を原料として形成される請求項1または2に記載の光学部材。
  4. 前記撥水層が、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを原料として形成される請求項3に記載の光学部材。
  5. 前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が、下記一般式(I)
    Figure 2004226942
    (式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、R1は加水分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整数、pは1〜10の整数)
    で表される請求項3または4に記載の光学部材。
  6. 前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が、下記単位式(II):
    +1CHCHSi(NH ・・・(II)
    (ただし、qは1以上の整数である)で表される請求項3または4に記載の光学部材。
  7. 前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルが、下記一般式(III):
    −(RO)− ・・・・・・(III)
    (式中、Rは炭素数1〜3のパ−フルオロアルキレン基である)で表される単位からなる請求項4〜6のいずれか1項に記載の光学部材。
  8. 前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルの重量平均分子量が1000〜10000である請求項7記載の光学部材。
  9. フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物含有溶液を減圧下、加熱して基材上に該物質を蒸着させ、基材上に薄膜を形成する工程を含む光学部材の製造方法において、該有機ケイ素化合物の加熱温度が、該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの範囲であって、かつ該有機ケイ素化合物の加熱開始から加熱蒸発の完結までの時間が90秒以内である光学部材の製造方法。
  10. 前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物含有溶液にさらにケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを含むことを特徴とする請求項9に記載の光学部材の製造方法。
  11. 前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が、下記一般式(I)
    Figure 2004226942
    (式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、R1は加水分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整数、pは1〜10の整数)
    で表される請求項9または10に記載の光学部材の製造方法。
  12. 前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が、下記単位式(II):
    +1CHCHSi(NH
    (ただし、qは1以上の整数である)で表される請求項9または10に記載の光学部材の製造方法。
  13. 前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルが、一般式(III):
    −(RO)− ・・・・・・(III)
    (式中、Rは炭素数1〜3のパ−フルオロアルキレン基である)で表される単位からなる請求項10〜12のいずれか1項記載の光学部材の製造方法。
  14. 前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルの平均分子量が1000〜10000である請求項13に記載の光学部材の製造方法。
  15. 前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物含有溶液を電子銃で加熱することを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
  16. 請求項9〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られる光学部材。
  17. 溶媒で希釈したフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物含有溶液を減圧下、加熱して基材上に該化合物を蒸着させ、基材上に薄膜を形成する薄膜の製造方法において、該有機ケイ素化合物の温度が、該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの温度範囲であり、該有機ケイ素化合物の蒸発開始後、蒸着完了まで、該有機ケイ素化合物の温度が分解温度を超えることがなく、かつ、該有機ケイ素化合物の加熱開始から90秒以内に該有機ケイ素化合物の加熱蒸発を完結させることを特徴とする薄膜の製造方法。
  18. 前記有機ケイ素化合物含有溶液を電子ビ−ムで照射して加熱することを特徴とする請求項17記載の薄膜の製造方法。
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