[フルオレン誘導体]
本発明の新規なフルオレン誘導体(第1の多官能性(メタ)アクリレート)は、下記式(1)で表される化合物である。
(式中、
R1は置換基を示し、kは0~8の整数を示し、
Z1a及びZ1bは、互いに同一で又は異なって、アレーン環を示し、
R2a及びR2bは、互いに同一で又は異なって、置換基を示し、m1及びm2は、互いに同一で又は異なって、0以上の整数を示し、
A1a及びA1bは、互いに同一でまたは異なって、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、n1及びn2は、互いに同一でまたは異なって、0以上の整数を示し、
Z2a及びZ2bは、互いに同一で又は異なって、アレーン環を示し、
R3a及びR3bは、互いに同一で又は異なって、置換基を示し、p1及びp2は、互いに同一で又は異なって、0以上の整数を示し、
A2a及びA2bは、互いに同一で又は異なって、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、
A3a及びA3bは、互いに同一で又は異なって、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、q1及びq2は、互いに同一で又は異なって、0以上の整数を示し、
R4a及びR4bは、互いに同一で又は異なって、水素原子又はメチル基を示す)
前記式(1)において、R1で表される置換基(非反応性置換基又は非ラジカル重合性置換基)としては、例えば、炭化水素基、具体的には、アルキル基、アリール基など;シアノ基;ハロゲン原子、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。
kが1以上である場合、これらの基R1のうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、さらに好ましくはアルキル基、なかでも、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキル基が好ましい。
基R1の置換数kは、例えば、0~6程度の整数、好ましくは0~4の整数、さらに好ましくは0~2、より好ましくは0又は1、特に0である。なお、kが2以上である場合、基R1の種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレン環を形成する2つのベンゼン環において、それぞれ基R1が置換している場合、それぞれのベンゼン環の置換数は互いに同一又は異なっていてもよい。さらに、基R1の置換位置は特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位乃至7位のいずれかの位置であってもよく、具体的には、2位、3位及び/又は7位などであってもよい。
R2a及びR2bで表される置換基(非反応性置換基又は非ラジカル重合性置換基)としては、例えば、ハロゲン原子、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など;炭化水素基又は基[-Ra]、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など;基[-ORa](式中、Raは前記炭化水素基を示す)、具体的には、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など;基[-SRa](式中、Raは前記炭化水素基を示す)、具体的には、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基など;アシル基、具体的には、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基など;ニトロ基;シアノ基;モノ又はジ置換アミノ基、具体的には、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基が挙げられる。
前記Raで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。前記Raで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。前記Raで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノ乃至トリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。前記Raで表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
前記基[-ORa]として具体的には、前記炭化水素基Raの例示に対応する基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基が挙げられる。
前記基[-SRa]として具体的には、前記炭化水素基Raの例示に対応する基が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基が挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基が挙げられる。
モノ又はジ置換アミノ基において、ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
これらの基R2a及びR2bのうち、代表的には、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。m1及びm2が1以上である場合、好ましい基R2a及びR2bとしては、アルキル基、具体的には、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基;アリール基、具体的には、フェニル基などのC6-14アリール基;アルコキシ基、具体的には、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられ、なかでも、アルキル基、アリール基が好ましく、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が好ましい。なお、基R2a及びR2bがアリール基であるとき、基R2a及びR2bは、環Z1a及びZ1bとともに後述する環集合アレーン環を形成してもよい。なお、基R2aの種類と基R2bの種類とは、互いに同一又は異なっていてもよい。置換数m1又はm2が2以上である場合、同一の環Z1a又はZ1bに置換する2以上の基R2a又はR2bの種類は、それぞれの環において互いに同一又は異なっていてもよい。
基R2a及びR2bの置換数m1及びm2は、例えば、0~8程度の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1、特に1である。なお、置換数m1と置換数m2とは、互いに同一又は異なっていてもよい。基R2a及びR2bの置換位置は、特に制限されず、環Z1a及びZ1bとフルオレン環の9位との結合位置、及び環Z1a及びZ1bと(メタ)アクリロイル基含有基(すなわち、基[-O-(A1aO)n1-Z2a(R3a)p1-A2a-O-(A3aO)q1-C(=O)-CR4a=CH2]又は基[-O-(A1bO)n2-Z2b(R3b)p2-A2b-O-(A3bO)q2-C(=O)-CR4b=CH2])との結合位置以外の位置に置換していればよく、通常、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置に隣接する位置(オルト位)に置換することが多い。
Z1a及びZ1bで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)は、ベンゼン環などの単環式アレーン環や多環式アレーン環(多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、具体的には、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環など;縮合三環式アレーン環、具体的には、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環が挙げられ、さらに好ましくは縮合多環式C10-14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、例えば、ビアレーン環、具体的には、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-12アレーン環など;テルアレーン環、具体的には、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環などが例示できる。前記フェニルナフタレン環としては、例えば、1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環としては、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-10アレーン環が挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ナフタレン環骨格などの縮合多環式アレーン環骨格を含む環集合アレーン環は、環集合アレーン環に分類する。
フルオレンの9位に結合する環Z1aの種類と環Z1bの種類とは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Z1a及びZ1bのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環が好ましく、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環であり、生産性に優れ、耐スクラッチ性(又は柔軟性)を大きく低下させることなく、高屈折率及び耐熱性をバランスよく向上できる観点から、ベンゼン環が特に好ましく、屈折率及び耐熱性を高度に向上できる点から、ナフタレン環などの縮合多環式アレーン環が特に好ましい。
フルオレンの9位に結合する環Z1a及びZ1bの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z1a及びZ1bがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に結合する環Z1a及びZ1bに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよく、通常、2-ナフチル基であることが多い。また、環Z1a及びZ1bがビフェニル環の場合、フルオレンの9位に結合する環Z1a及びZ1bに対応する基は、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基などであってもよく、通常、3-ビフェニリル基であることが多い。
前記(メタ)アクリロイル基含有基は、環Z1a及びZ1bの適当な位置に置換できる。環Z1a及びZ1bがベンゼン環である場合には、(メタ)アクリロイル基含有基は、例えば2~4位、好ましくは3位又は4位、さらに好ましくは4位である。環Z1a及びZ1bがナフタレン環である場合には、(メタ)アクリロイル基含有基は、フルオレン環の9位に置換したナフチル基(1-ナフチル基又は2-ナフチル基)の5~8位のいずれかに置換している場合が多く、通常、1,5位、2,6位などの関係、特に2,6位の関係で置換している場合が多い。環Z1a及びZ1bがビフェニル環である場合、(メタ)アクリロイル基含有基は、フルオレン環の9位に置換したビフェニリル基、例えば、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基などに対して、フルオレン環の9位と結合する環に置換していてもよく、隣接するベンゼン環に置換していてもよい。環Z1a及びZ1bとしてのビフェニル環の3位がフルオレンの9位に結合している場合、(メタ)アクリロイル基含有基は、ビフェニル環の2位、4位、5位、6位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、通常、6位、3’位、4’位、好ましくは6位又は4’位、特に、6位に置換することが多い。
A1a及びA1bで表される直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状C2-6アルキレン基が挙げられ、好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基であり、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基が挙げられ、好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基であり、特にプロピレン基が好ましい。これらのアルキレン基A1a及びA1bのうち、好ましくは以下段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基であり、なかでも、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
なお、環Z1a及びZ1bに置換する2つの(ポリ)オキシアルキレン基[-(OA1a)n1-]及び[-(OA1b)n2-]において、基A1aの種類と基A1bの種類とは、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。また、繰り返し数n1及びn2がそれぞれ2以上である場合、同一のポリオキシアルキレン基を形成する2以上の基A1a又はA1bの種類は、それぞれ、互いに異なっていてもよいが、同一であることが多い。
オキシアルキレン基(OA1a)およびオキシアルキレン基(OA1b)の繰り返し数n1及びn2は、例えば、それぞれ0~20程度の範囲の整数から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~15、0~10、0~8、0~5、0~3、0~2、0~1であり、特に0であることが多い。
また、環Z1a及びZ1bに置換するそれぞれの(ポリ)オキシアルキレン基において、n1とn2とは、互いに同一又は異なっていてもよい。なお、繰り返し数n1及びn2は平均値(又は相加平均値、算術平均値)、すなわち、平均付加モル数であってもよく、その範囲は、好ましい態様を含めて前記整数の範囲と同様である。
また、繰り返し数n1及びn2の合計数は、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体1分子中のオキシアルキレン基の合計数(又は合計付加モル数の平均値)を意味し、単にn1+n2という場合がある。n1+n2は、例えば、0~30程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~25、0~20、0~15、0~10、0~6、0~4であり、通常、0~2、特に0であることが多い。また、n1+n2は前記のように整数であってもよいが、合計付加モル数の平均値であってもよく、その範囲は、好ましい態様を含めて前記整数の範囲と同様である。
n1及びn2、又はn1+n2の値が大きすぎると、高屈折率、高耐熱性などの特性が低下するおそれがある。
なお、n1+n2は、慣用の方法で測定することができ、例えば、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などの前記式(1)で表されるフルオレン誘導体の原料の調製において、所定のヒドロキシ化合物にアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)の付加反応により(ポリ)アルキレンオキシ基を形成する際に、ヒドロキシ化合物の量(又は水酸基価)と、反応で消費されるアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)の量との割合から、相加平均又は算術平均の値として算出する方法、例えば、特開2013-53310号公報記載の方法などにより測定できる。
Z2a及びZ2bで表されるアレーン環としては、例えば、前記Z1a及びZ1bに例示したアレーン環と同様の環が例示できる。環Z2aの種類と環Z2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Z2a及びZ2bのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環が好ましく、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環であり、生産性に優れ、耐スクラッチ性(柔軟性)を大きく低下させることなく、高屈折率及び耐熱性をバランスよく向上できる観点から、ベンゼン環が特に好ましい。
酸素原子[又はオキシアルキレン基(-A1aO-)及びオキシアルキレン基(-A1bO-)]に結合する環Z2a及びZ2bの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z2a及びZ2bがナフタレン環の場合、前記酸素原子に結合する環Z2a及びZ2bに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよく、通常、2-ナフチル基であることが多い。また、環Z2a及びZ2bがビフェニル環の場合、前記酸素原子に結合する環Z2a及びZ2bに対応する基は、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基などであってもよい。
R3a及びR3bで表される置換基としては、R2a及びR2bの項に例示した置換基(非反応性置換基又は非ラジカル重合性置換基)と同様の基が例示でき、好ましい態様も含めて同様である。R3a及びR3bがアリール基である場合、Z2a及びZ2bとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。
また、基R3a及びR3bの置換数p1及びp2は、例えば、0~8程度の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、置換数p1と置換数p2とは、互いに同一又は異なっていてもよく、基R3aの種類と基R3bの種類とは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、p1及びp2がそれぞれ2以上の場合、同一の環Z2a又はZ2bにおける2以上の基R3a及びR3bの種類は、それぞれ、互いに同一又は異なっていてもよい。
基R3a及びR3bの置換位置は、特に制限されず、環Z2a及びZ2bと酸素原子[又はオキシアルキレン基(-A1aO-)及びオキシアルキレン基(-A1bO-)]との結合位置、及び環Z2a及びZ2bとアルキレン基A2a及びA2bとの結合位置以外の位置に置換していればよい。
A2a及びA2bで表される直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基が挙げられる。アルキレン基A2aの種類とアルキレン基A2bの種類とは、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。好ましいアルキレン基A2a及びA2bとしては、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキレン基が挙げられ、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキレン基、さらに好ましくはC1-2アルキレン基、特にメチレン基が好ましい。アルキレン基A2a及びA2bの炭素数が多すぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがある。
環Z2a及びZ2bにおけるアルキレン基A2a及びA2bの置換位置は、特に制限されないが、環Z2a及びZ2bがベンゼン環である場合、生産性の観点から、環Z2a及びZ2bと酸素原子[又はオキシアルキレン基(-A1aO-)及びオキシアルキレン基(-A1bO-)]との結合位置に対して、メタ位にアルキレン基A2a及びA2bが置換することが多い。
アルキレン基A3a及びA3bとしては、前記A1a及びA1bに例示したアルキレン基と好ましい態様を含めて同様の基が挙げられる。なお、異なる2つのアルキレンオキシ基(-A2aO-)及び(-A2bO-)に置換する(ポリ)オキシアルキレン基[-(OA3a)q1-]及び[-(OA3b)q2-]において、基A3a及びA3bの種類は、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。また、繰り返し数q1及びq2がそれぞれ2以上である場合、同一のポリオキシアルキレン基を形成する2以上の基A3a又はA3bの種類は、それぞれ、互いに異なっていてもよいが、同一であることが多い。
オキシアルキレン基(OA3a)及び(OA3b)の繰り返し数(又は平均付加モル数)q1及びq2は、前記n1及びn2と好ましい態様を含めて同様である。また、q1及びq2は、互いに同一又は異なっていてもよい。繰り返し数q1及びq2の合計数(又は合計付加モル数の平均値;単にq1+q2という場合がある)は、前記n1+n2と好ましい態様を含めて同様である。
q1及びq2、又はq1+q2の値が大きすぎると、高屈折率、高耐熱性などの特性が低下するおそれがある。なお、q1+q2は、慣用の方法、例えば、前記n1+n2の測定方法に準じた方法で測定できる。
R4a及びR4bは水素原子又はメチル基のいずれであってもよいが、反応性(又は硬化性)や屈折率を向上できる点から、水素原子であるのが好ましい。基R4aの種類と基R4bの種類とは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。
前記式(1)で表される好ましいフルオレン誘導体としては、R1が、炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、より好ましくはアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、さらに好ましくはアルキル基であり;kが0~2、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0であり;Z1a及びZ1bがベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環又はナフタレン環、最も好ましくはナフタレン環であり;R2a及びR2bが炭化水素基、より好ましくはメチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、さらに好ましくはメチル基などのC1-4アルキル基であり;m1及びm2が0~2の整数、より好ましくは0又は1であり;A1a及びA1bが直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、より好ましくはエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基、さらに好ましくはエチレン基であり;n1及びn2が0~6、より好ましくは0~3、さらに好ましくは0又は1であり;Z2a及びZ2bがベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環であり;R3a及びR3bが炭化水素基、より好ましくはメチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、さらに好ましくはメチル基などのC1-4アルキル基であり;p1及びp2が0~2、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0であり;A2a及びA2bが直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキレン基、より好ましくはC1-2アルキレン基、さらに好ましくはメチレン基であり;A3a及びA3bが直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、より好ましくはエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基、さらに好ましくはエチレン基であり;q1及びq2が0~6、より好ましくは0~3、さらに好ましくは0又は1であり;R4a及びR4bが水素原子である化合物が挙げられる。これらの好ましいフルオレン誘導体には、各特定事項において段階的に記載された範囲を適宜組み合わせた化合物が含まれる。
これらのフルオレン誘導体の中でも、高屈折率、高耐熱性及び耐スクラッチ性のバランスに特に優れ、生産性が高く、皮膚刺激性も低い(安全性が高い)点から、式(1)におけるR1がアルキル基であり;kが0~2であり;Z1a及びZ1bがベンゼン環又はナフタレン環であり;R2a及びR2bがメチル基などのアルキル基であり;m1及びm2が1~2であり;A1a及びA1bがエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基であり;n1及びn2が0又は1であり;Z2a及びZ2bがベンゼン環であり;R3a及びR3bがメチル基などのアルキル基であり;p1及びp2が0又は1であり;A2a及びA2bがメチレン基、エチレン基などのC1-2アルキレン基であり;A3a及びA3bがエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基であり;q1及びq2が0又は1であり;R4a及びR4bが水素原子である化合物が好ましく;特に、kが0であり;Z1a及びZ1bがベンゼン環又はナフタレン環であり;R2a及びR2bがメチル基などのC1-4アルキル基であり;m1及びm2が1~2であり;A1a及びA1bがエチレン基であり;n1及びn2が0又は1であり;Z2a及びZ2bがベンゼン環であり;R3a及びR3bがメチル基などのC1-4アルキル基であり;p1及びp2が0又は1であり;A2a及びA2bがメチレン基であり;A3a及びA3bがエチレン基であり;q1及びq2が0又は1であり;R4a及びR4bが水素原子である化合物が好ましい。
前記式(1)で表されるフルオレン誘導体は、高い屈折率を有している。前記式(1)で表されるフルオレン誘導体の屈折率(硬化前屈折率)は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.6~1.7程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.605~1.63、1.61~1.625であり、さらに好ましくは1.615~1.62である。高い屈折率が要求される用途では、前記フルオレン誘導体の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.63~1.7、好ましくは1.64~1.69、さらに好ましくは1.65~1.68、最も好ましくは1.66~1.67である。
なお、硬化前屈折率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
[式(1)で表されるフルオレン誘導体の製造方法及び式(2)で表される中間体]
前記式(1)で表されるフルオレン誘導体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下に示す反応工程式に従って製造してもよい。
(式中、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、A1a、A1b、A2a、A2b、A3a、A3b、k、m1、m2、n1、n2、p1、p2、q1及びq2は前記式(1)とそれぞれ好ましい態様を含めて同じであり、X1及びX2は、互いに同一で又は異なって、ハロゲン原子、R5a及びR5bは、互いに同一で又は異なって、ヒドロキシル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す)。
(前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の調製方法及びその特性)
前記式(2)で表される第1のジヒドロキシ化合物は、新規な化合物であり、例えば、前記式(4)で表される第2のジヒドロキシ化合物と、前記式(5a)で表される化合物及び前記式(5b)で表される化合物とを反応させることにより合成できる。
前記式(4)で表される第2のジヒドロキシ化合物としては、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体として例示した好ましいフルオレン誘導体に対応する化合物などが挙げられる。具体的には、前記式(4)において、n1及びn2が0である9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類;n1及びn2が1以上である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などが挙げられる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン、具体的には、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(ヒドロキシ-アルキルアリール)フルオレン、具体的には、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシ-モノ又はジC1-4アルキルC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(ヒドロキシ-アリールアリール)フルオレン、具体的には、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシ-C6-10アリールC6-10アリール)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン、具体的には、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(ヒドロキシペンタ又はヘキサエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)C2-3アルコキシC6-10アリール]フルオレン;9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アルキルアリール]フルオレン、具体的には、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)C2-3アルコキシ-モノ又はジC1-4アルキルC6-10アリール]フルオレン;9,9-ビス(ヒドロキシ-アリールアリール)フルオレン、具体的には、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)C2-3アルコキシ-C6-10アリールC6-10アリール]フルオレンなどが挙げられる。
これらのうち、生産性の点から、通常、n1及びn2が0である9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類である場合が多く、高屈折率、高耐熱性及び耐スクラッチ性のバランスに優れる点から、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシ-アルキルフェニル)フルオレンが好ましく、皮膚刺激性が低く取り扱い性に優れる点から、特に、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシ-モノ又はジC1-4アルキルフェニル)フルオレンが好ましい。さらに、屈折率及び耐熱性が特に高い点から、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンが好ましい。
これらの前記式(4)で表される第2のジヒドロキシ化合物は、市販品を使用してもよく、慣用の方法、例えば、9-フルオレノンなどの9-フルオレノン類と、フェノール、o-クレゾール、2-ナフトールなどのヒドロキシ(ポリ)アルコキシアレーン類とを、硫酸などの酸触媒及びβ-メルカプトプロピオン酸などの助触媒の存在下で反応させる方法などにより調製してもよい。
前記式(5a)及び(5b)において、X1及びX2で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。基X1の種類と基X2の種類とは、異なっていてもよいが、通常、同一である。好ましいX1及びX2としては、臭素原子、ヨウ素原子であり、通常、臭素原子であることが多い。また、X1及びX2の置換位置は特に制限されないが、環Z2a及びZ2bがベンゼン環である場合、アルキレン基A2a及びA2bの結合位置に対して、メタ位であることが多い。
アルコキシ基(-A3aO-)及び(-A3bO-)の繰り返し数q1及びq2は、前記式(2)におけるq1及びq2に対応して、好ましい態様も含めて同様であり、通常、0であることが多い。なお、式(1)又は(2)において、q1及びq2が1以上である化合物は、式(5a)及び(5b)においてq1及びq2が0である化合物を用いて合成した後、得られた化合物(式(2)においてq1及びq2が0である化合物)と、アルコキシ基(-A3aO-)及び(-A3bO-)に対応するアルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネートもしくはハロアルカノール)とを反応させることにより調製してもよい。
前記式(5a)及び(5b)で表される化合物としては、例えば、m-クロロベンジルアルコール、m-ブロモベンジルアルコール、m-ヨードベンジルアルコールなどのハロベンジルアルコール;アルキル-ハロベンジルアルコール;フェニル-ハロベンジルアルコールなどのアリール-ハロベンジルアルコール;クロロナフタレンメタノール、ブロモナフタレンメタノール、ヨードナフタレンメタノールなどのハロナフタレンメタノール;アルキル-ハロナフタレンメタノール;及びこれらの化合物のアルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネートもしくはハロアルカノール)付加体、具体的には、エチレンオキシド付加体などが挙げられる。前記式(5a)で表される化合物の種類と前記(5b)で表される化合物の種類とは、異なっていてもよいが、通常、同一である。これらの前記式(5a)及び(5b)で表される化合物のうち、m-ブロモベンジルアルコールなどのハロベンジルアルコールがよく利用される。
前記式(5a)及び(5b)で表される化合物の合計割合は、前記式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、2~5モル、好ましくは2.1~3モル、さらに好ましくは2.2~2.5モルである。
反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基として代表的には、無機塩基、例えば、金属水酸化物、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物など;金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩など;金属炭酸水素塩、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。これらの塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基のうち、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩がよく利用される。塩基の割合は、前記式(4)で表される化合物のヒドロキシル基に対して、例えば、1~3当量程度、好ましくは1~2当量、さらに好ましくは1.2~1.8当量である。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、例えば、銅又はその誘導体などが挙げられる。銅としては、例えば、銅粉などの銅単体が挙げられる。銅の誘導体としては、例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)などのハロゲン化銅、酸化銅(I)などの酸化銅、炭酸銅、銅メトキシド(I)などの銅アルコキシド(I)などが挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの触媒のうち、銅粉、ハロゲン化銅(I)、銅アルコキシド(I)がよく利用され、なかでも、塩化銅(I)などのハロゲン化銅(I)がよく利用される。触媒の割合は、前記式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.001~0.2モル、好ましくは0.01~0.15モルである。
また、前記触媒、例えば、塩化銅(I)などのハロゲン化銅(I)などは、単独で利用してもよいが、通常、配位子とともに錯体を形成させて利用することが多い。配位子としては、例えば、8-キノリノール(8-オキシキノリン又は8-キノリノラト)などが挙げられる。配位子の割合は、前記触媒1モルに対して、例えば、0.5~3モル、好ましくは0.8~2モル、さらに好ましくは0.9~1.1モルである。
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒として代表的には、非プロトン性極性溶媒、例えば、アミド類、具体的には、N,N’-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;スルホン類、具体的には、スルホランなど;ホスホルアミド類、具体的には、ヘキサメチルホスホルアミドなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、N,N’-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどのアミド類がよく利用される。溶媒の割合は特に制限されず、前記式(4)で表される化合物及び前記式(5a)及び(5b)で表される化合物の総量100質量部に対して、例えば、10~500質量部程度であってもよい。
反応温度は、例えば、80~200℃、好ましくは120~160℃、さらに好ましくは130~150℃である。反応時間は、特に制限されず、例えば、1~144時間、好ましくは48~96時間である。
反応は、空気中又は窒素ガス、希ガスなどの不活性雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
反応終了後、生成した前記式(2)で表される化合物は、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
なお、前記式(2)で表される第1のジヒドロキシ化合物(ジオール化合物)は、新規な化合物であり、高い屈折率及び高い耐熱性を有している。前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.6~1.7程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.605~1.65、1.61~1.64、1.615~1.635、1.62~1.63であり、さらに好ましくは1.622~1.628である。高い屈折率が要求される用途では、前記ジヒドロキシ化合物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.63~1.7、好ましくは1.64~1.69、さらに好ましくは1.65~1.68、最も好ましくは1.66~1.67である。
また、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の5質量%減少温度は、例えば、300~500℃、特に300~450℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、330~430℃、350~410℃、360~400℃であり、さらに好ましくは370~390℃である。高い耐熱性が要求される用途では、前記ジヒドロキシ化合物の5質量%減少温度は、例えば400~480℃、好ましくは430~470℃、さらに好ましくは440~460℃である。
なお、屈折率及び5質量%減少温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
第1のジヒドロキシ化合物は、このように優れた性質を有しているため、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体(アクリレート化合物)のみならず、他の樹脂又はモノマーの原料、例えば、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂などの原料や;屈折率向上剤、耐熱性向上剤などの樹脂添加剤などとして利用することにより、樹脂に高い屈折率及び耐熱性を付与できる。
(前記式(1)で表されるフルオレン誘導体の調製)
前記式(1)で表されるフルオレン誘導体(又は第1の多官能性(メタ)アクリレート)は、前記式(2)で表される第1のジヒドロキシ化合物と、前記式(3a)及び(3b)で表される(メタ)アクリル酸又はそのエステル形成性誘導体とを反応させることにより製造できる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において特に断りのない限り、「エステル形成性誘導体」は、アルキルエステル(又は低級アルキルエステル)、具体的には、メチルエステル、エチルエステルなどのC1-4アルキルエステル;酸クロリドなどの酸ハライド;酸無水物などを意味する。
前記式(2)で表される第1のジヒドロキシ化合物としては、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体(又は前記式(4)で表される第2のジヒドロキシ化合物)として具体的に例示した化合物に対応する化合物が挙げられる。
前記式(3a)及び(3b)において、R5a及びR5bで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、さらに好ましくは塩素原子である。R5a及びR5bで表されるアルコキシ基としては、低級アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基などのC1-2アルコキシ基である。基R5aの種類と基R5bの種類とは、異なっていてもよいが、通常、同一である。通常、R5a及びR5bはヒドロキシル基であることが多い。
前記式(3a)及び(3b)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその無水物;(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミドなどの(メタ)アクリル酸ハライド;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステルなどが挙げられる。これらの前記式(3)で表される化合物は、市販品などを利用できる。前記式(3a)で表される化合物の種類と前記(3b)で表される化合物の種類とは、異なっていてもよいが、通常、同一である。前記式(3a)及び(3b)で表される化合物のうち、通常、(メタ)アクリル酸がよく利用される。
前記式(3a)及び(3b)で表される化合物の合計割合は、前記式(2)で表される第1のジヒドロキシ化合物が有するヒドロキシル基1モルに対して、例えば、1~10モル、好ましくは1.1~5モル、より好ましくは1.2~2モル、さらに好ましくは1.3~1.5モルである。
前記式(3a)及び(3b)において、R5a及びR5bがハロゲン原子である場合[前記式(3a)及び(3b)で表される化合物が(メタ)アクリル酸ハライドである場合]、反応で生成するハロゲン化水素を捕捉(トラップ)するため、塩基の存在下で反応させてもよい。塩基としては、例えば、無機塩基、有機塩基に大別できる。
無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物など;金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩など;金属炭酸水素塩、具体的には、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩などが挙げられる。
有機塩基としては、例えば、アミン類、具体的には、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなどの複素環式アミンなどが挙げられる。塩基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの塩基のうち、アミン類、例えば、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどがよく利用される。塩基の使用量は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ハライド1モルに対して、例えば、1~2モル、好ましくは1.05~1.5モル、さらに好ましくは1.1~1.2モルである。
また、前記式(3a)及び(3b)において、R5がヒドロキシル基又はアルコキシ基である場合[前記式(3a)及び(3b)で表される化合物が(メタ)アクリル酸(又はその無水物)又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合]、反応は、慣用のエステル化触媒を使用してもよい。触媒としては、酸触媒;塩基触媒;金属アルコキシドなどの金属触媒、具体的には、チタン(IV)テトライソプロポキシドなどのチタン(IV)アルコキシドなどが挙げられる。これらの触媒のうち、酸触媒を好適に使用できる。
酸触媒としては、特に限定されず、無機酸;有機酸;三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化スズなどのルイス酸;陽イオン交換樹脂などの固体酸触媒などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、これらの酸触媒は、水和物であってもよい。
前記無機酸としては、例えば、強酸、具体的には、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など;ホモ又はヘテロポリ酸、具体的には、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、スルホン酸、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのフッ化アルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。酸触媒としては、通常、p-トルエンスルホン酸一水和物などのアレーンスルホン酸などがよく利用される。
触媒の割合は、特に限定されず、前記式(2)で表される第1のジヒドロキシ化合物1モルに対して、例えば、0.001~1モル、好ましくは0.01~0.5モルである。
反応は、熱重合禁止剤の存在下で行ってもよく、及び/又は反応終了後に熱重合禁止剤を添加してもよい。熱重合禁止剤としては、例えば、ベンゾキノン;ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、t-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノンなどのヒドロキノン類;p-t-ブチルカテコール、2-メトキシフェノールなどのカテコール類;N,N-ジエチルヒドロキシルアミンなどのアミン類;1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル;トリ-p-ニトロフェニルメチル;フェノチアジンなどが挙げられる。熱重合禁止剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの熱重合禁止剤のうち、2-メトキシフェノールなどのカテコール類がよく利用される。
熱重合禁止剤の割合は、前記式(3a)及び(3b)で表される化合物100質量部に対して、例えば、0.001~10質量部程度であってもよく、反応により得られる前記式(1)で表されるフルオレン誘導体100質量部に対して、例えば、0.0001~0.1質量部程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトンなど;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、トルエンなどの芳香族炭化水素類がよく利用される。溶媒の割合は特に制限されず、前記式(2)で表される化合物及び前記式(3a)及び(3b)で表される化合物の総量100質量部に対して、例えば、10~1000質量部程度であってもよく、通常、100~150質量部である。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択でき、前記式(3a)及び(3b)で表される化合物が(メタ)アクリル酸ハライドである場合、反応温度は、例えば、-10℃~30℃、好ましくは0~20℃、さらに好ましくは2~10℃である。前記式(3a)及び(3b)で表される化合物が(メタ)アクリル酸(又はその無水物)又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、反応温度は、例えば、50~150℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは100~120℃である。なお、反応は、還流温度で行ってもよい。反応時間は、特に制限されず、例えば、1~24時間程度であってもよい。
反応は、空気中又は窒素ガス、希ガスなどの不活性雰囲気中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。また、反応時の不測の重合を効果的に防止するために、反応液中に空気を吹き込みながら行ってもよい。
反応終了後、生成した前記式(1)で表されるフルオレン誘導体は、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、吸着、濃縮、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
[硬化性組成物及びその硬化物]
本発明は、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体(又は第1の多官能性(メタ)アクリレート)を含む硬化性組成物及びその硬化物を包含する。前記硬化性組成物は、少なくとも第1の多官能性(メタ)アクリレートを含んでいればよく、第1の多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて含まれていてもよい。また、前記硬化性組成物は、前記式(1)とは異なる第2の多官能性(メタ)アクリレート、単官能性(メタ)アクリレートなどの他の重合成分を含んでいてもよい。
第2の多官能性(メタ)アクリレートとしては、特に制限されず、複数(2以上)の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であればよい。1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数は、例えば、2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、なかでも、2~3、特に、2である。
第2の多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環族エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂のポリ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート(ビニルエステル樹脂);ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート(2以上のヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート);アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;ビフェノール類もしくはビスフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のジ(メタ)アクリレート;3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物又はそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの第2の多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの第2の多官能性(メタ)アクリレートは、市販品を利用してもよい。
前記脂肪族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記脂環族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するエポキシ化合物(ジグリシジルエーテル)のジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの後述する芳香族エポキシ(メタ)アクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体の水添物のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの、ビスフェノール類もしくはビフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSが挙げられる。ビフェノール類としては、例えば、p,p’-ビフェノール、m,m’-ビフェノール、o,o’-ビフェノールが挙げられる。
前記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ乃至ヘキサC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなどの前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体の水添物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物又はそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記式(1)で表される第1の多官能性(メタ)アクリレートの割合は、第1及び第2の多官能性(メタ)アクリレート総量に対して、例えば、10質量%以上、具体的には、30~100質量%程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に、実質的に100質量%、すなわち、多官能性の重合成分が第1の多官能性(メタ)アクリレートのみであるのが好ましい。なお、前記割合は、例えば、60~99質量%程度の範囲から選択してもよく、具体的には、80~97質量%であってもよい。
前記単官能性の重合成分(又は反応性希釈剤)としては、重合性基(又は重合性不飽和結合)、例えば、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、(メタ)アクリロイル基などを1つ有する化合物であればよく、具体的には、単官能性ビニル系モノマー;単官能性(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。単官能性ビニル系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどのα-オレフィン系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。単官能性(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN-置換(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの単官能性の重合成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの単官能性の重合成分のうち、単官能性(メタ)アクリル系モノマー、なかでも、単官能性(メタ)アクリレートがよく利用される。
単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族単官能性(メタ)アクリレート;脂環族単官能性(メタ)アクリレート;芳香族単官能性(メタ)アクリレート;硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
脂肪族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのC1-20アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂環族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5-10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、具体的には、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC6-12アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど;ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のモノ(メタ)アクリレートなどのビスフェノール類又はビフェノール類(又はそのアルキレンオキシド付加体)のモノ(メタ)アクリレート;9-(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレンなどのフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキルチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルチオ(メタ)アクリレートなどのC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリールチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アラルキルチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリールチオアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルチオエチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオC2-4アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(重合成分以外の成分)
硬化性組成物は、重合成分(又はモノマー成分)の他に、重合開始剤、溶媒、添加剤などをさらに含んでいてもよい。
重合開始剤は熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシド類;ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、過酢酸t-ブチルなどの過酸(又は過酸エステル)類;ケトンパーオキシド類;パーオキシカーボネート類;パーオキシケタール類が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1などのアミノアセトフェノン類;アントラキノン、2-メチルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン類などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤(熱及び/又は光重合開始剤)の割合は、重合成分の総量100質量部に対して0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~5質量部である。
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤として代表的には、第3級アミン類、例えば、トリアルキルアミン;トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン;ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、具体的には、p-(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなどのN,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルや、p-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなどのN,N-ジメチルアミノ安息香酸アミルなど;4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン;4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなどの慣用の光増感剤が挙げられる。これらの光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
光増感剤の割合は、前記重合開始剤100質量部に対して、1~200質量部、好ましくは5~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部である。
硬化性組成物は、溶媒を含んでいなくてもよいが、取り扱い性を調整するために、必要に応じて溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;エステル類、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など;グリコールエーテルアセテート類、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類など;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;ニトリル類、具体的には、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせた混合溶媒として使用することもできる。
溶媒の割合は特に制限されず、固形分(溶媒以外の成分)の濃度が、硬化性組成物全体に対して、例えば、0.1~50質量%程度となるように含有させてもよい。
硬化性組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、重合禁止剤などを含んでいてもよい。前記安定剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
添加剤の合計割合は、硬化性組成物全体に対して、例えば、30質量%以下、好ましい範囲としては、以下段階的に、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下である。なお、前記割合は、0.001~15質量%、具体的には、0.01~3質量%であってもよい。
(硬化物)
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー(又は活性エネルギー線)を付与することで容易に硬化し、硬化物を生成する。前記活性エネルギーとしては、熱エネルギー及び/又は光エネルギー、例えば、紫外線、X線などが有用である。
熱エネルギーを利用して加熱処理する場合、加熱温度としては、例えば、50~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~120℃である。
また、光エネルギー(例えば、紫外線など)を利用して光照射する場合、光照射エネルギー量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50~10000mJ/cm2、好ましくは70~8000mJ/cm2、さらに好ましくは100~5000mJ/cm2、特に、500~3000mJ/cm2である。
硬化物の形状は、特に制限されず、レンズ状、管状などの三次元構造の硬化物であってもよく、フィルム状、シート状、板状などの二次元構造の硬化物(又は硬化膜)、線状又は繊維状、棒状などの一次元構造の硬化物であってもよい。
硬化物の製造方法は、特に限定されず、例えば、硬化物の形状に応じて、前記硬化性組成物を成形又は所定の型内に注型(注入)した後、硬化処理(加熱及び/又は光照射)して製造してもよい。また、二次元構造の硬化物の場合、例えば、前記硬化性組成物を基材又は基板、例えば、アルミニウムなどの金属;酸化チタン、ガラス、石英などの無機材料又はセラミックス;環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など有機材料又はプラスチック;木材などの多孔質体などに塗布してフィルム状の塗膜(又は薄膜)を形成させた後、硬化処理を施すことにより製造してもよい。
本発明の硬化物は、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体で形成されるため、高い屈折率及び高い耐熱性を示す。
前記硬化物の屈折率(硬化後屈折率)は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.61~1.7程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.62~1.65、1.625~1.64であり、さらに好ましくは1.63~1.635である。高い高屈折率が要求される用途では、前記硬化物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.63~1.7、好ましくは1.64~1.69、さらに好ましくは1.65~1.68、最も好ましくは1.66~1.67である。
また、前記硬化物のガラス転移温度Tgは、例えば、150~250℃程度、好ましくは180~220℃、さらに好ましくは190~210℃である。高い耐熱性が要求される用途では、前記硬化物のTgは、例えば180~250℃、好ましくは190~230℃、さらに好ましくは200~220℃である。
前記硬化物の5質量%減少温度は、例えば、350~500℃程度、好ましくは370~450℃、さらに好ましくは400~420℃である。
なお、硬化後屈折率、ガラス転移温度Tg及び5質量%減少温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。評価方法及び原料を以下に示す。
[評価方法]
(HPLC)
以下の測定装置及び条件に基づいて、高性能(又は高速)液体クロマトグラフィー(HPLC)により、試料のHPLC純度[面積%]を算出した。
装置:(株)日立ハイテクノロジーズ製「L-2000」
カラム:Imtakt(株)製「Cadenza CL-C18(3μm) 3.0×250mm」
ガードカラム:Imtakt(株)製「GCCD0S」
検出器:L-2420形UV-VIS検出器(D2ランプ、254nm)
移動相:アセトニトリル/蒸留水(体積比)=80/20(関東化学(株)製、LCグレード)(実施例1及び2)又はアセトニトリル/蒸留水(体積比)=90/10(関東化学(株)製、LCグレード)(実施例3及び4)
流量:0.5ml/分。
(1H-NMR)
核磁気共鳴装置(BRUKER社製「ULTRA SHIELD(登録商標)300」)を使用し、溶媒としての重クロロホルム(CDCl3)、標準物質としてのテトラメチルシラン(TMS)を用いて、1H-NMRスペクトルを測定した。
(FD-MS)
以下の測定装置及び条件に基づいて、質量分析(MS)を行った。
使用装置:日本電子(株)製「JMS-T200GC」
イオン化法:FD(電界脱離)
エミッタ:カーボン
エミッタ電流:0~50mA(25mA/分)
(加熱残分)
測定装置(メトラー・トレド(株)製「HG53ハロゲン水分計」)を用いて、硬化前のアクリレート化合物に対して、200℃の設定条件で加熱残分(質量%)を測定し、反応溶媒などの揮発成分がほぼ残っていないことを確認した。
(屈折率nD)
硬化前後の試料の屈折率は、屈折率計((株)アタゴ製、DR-M2<循環式恒温水槽60-C3>)を用いて、温度25℃、波長589nmで測定した。なお、実施例1のジドロキシ化合物及び実施例2の硬化前のジアクリレート化合物の屈折率は、試料を溶媒に溶解して、所定の濃度の溶液(実施例1:8.4質量%及び25.6質量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液、実施例2:11.4及び25.6質量%のトルエン溶液、実施例3:12.5質量%及び26.3質量%のTHF溶液、実施例4:18.2及び74.0質量%のトルエン溶液)を調製し、得られた溶液の屈折率を測定することで作成した検量線(近似直線)において、濃度を100質量%に外挿して算出した。
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC6220」)を用い、測定温度30~220℃、昇温時間10℃/分にて、硬化物のガラス転移温度を測定した。
(5%質量減温度)
熱重量測定-示差熱分析装置(TG-DTA)(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TG/DTA6200」)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件下で、試料の質量が5質量%減少した温度を測定した。なお、アクリレート化合物については、硬化物を試料として用いた。
(耐スクラッチ性)
表面性測定器(新東科学(株)製「HEIDON-14DR」)を用いて、スチールウール♯0000を表面性測定器の先端に装着し、硬化物(50mm×15mm×2mm)に荷重250gを垂直負荷させ、速度1mm/sで硬化物上を移動させ、傷の有無及び傷の回復性を目視にて確認した。この操作を5本の硬化物について行った。
[原料]
BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BNF:9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
[実施例1]
四ツ口の2Lフラスコに、窒素気流下、BCF167g(0.44mol)、m-ブロモベンジルアルコール198g(1.06mol)、N,N’-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)334g、炭酸カリウム91.5g(0.66mol)、塩化銅(I)3.5g(35.4mmol)及び8-キノリノール5.1g(35.1mmol)を仕込み、140℃で72時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、トルエン600g、イオン交換水300gにて抽出分液した。1N塩酸150gで有機層を2回洗浄して、不溶物を分解処理(pH2~3で分解)し、イオン交換水100gにて2回洗浄した。その後、2質量%水酸化ナトリウム水溶液150gで中和処理を2回行い、イオン交換水200gで10回洗浄して、水層のpHを7にした。有機層の減圧濃縮により、褐色粘稠液体329gを得た。トルエン450gで褐色粘稠液体を50℃で溶解し、種結晶を投入(添加)して一晩冷凍庫にて再結晶後、析出物をトルエン50gで3回洗浄して回収した。同様の再結晶操作を5回実施して析出物を回収し、60~80℃で減圧乾燥することで、下記式(2-1)で表される目的物、9,9-ビス[4-(3-(ヒドロキシメチル)フェニルオキシ)-3-メチルフェニル]フルオレンを淡褐色結晶の形態で81.0g(収率31.1%、HPLC純度96.4面積%)得た。1H-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)1.6(t,2H),2.1(s,6H),4.6(d,4H),6.7-7.8(m,22H)。
[実施例2]
ディーンスタークを付けた500mL三ツ口フラスコに、実施例1で得られた9,9-ビス[4-(3-(ヒドロキシメチル)フェニルオキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン49.0g(0.08mol)、アクリル酸15.5g(0.22mol)、トルエン81g、及び2-メトキシフェノール0.18g(1.5mmol)を仕込んだ。系内を窒素置換し、60℃まで昇温して前記成分を均一化させた後、p-トルエンスルホン酸一水和物1.97g(10.4mmol)を添加し、再度窒素置換した後、4時間還流脱水させた。反応温度は110~115℃であった。得られた溶液(反応混合液)をトルエン289g及び20質量%食塩水30gで洗浄後、10質量%苛性ソーダ水(水酸化ナトリウム水溶液)30gと20質量%食塩水30gとで中和し、水層のpHが10以上であることを確認した。有機層全体に対して500質量ppmの2-メトキシフェノールを有機層に添加して溶液(有機層)を均一化した後、20質量%食塩水30gで2回、イオン交換水30gで2回洗浄し、水層がpH7であることを確認した。その後、有機層を活性炭処理し、セライトろ過及び精密ろ過後、ろ液を濃縮して下記式(1-1)で表される目的物(BCFベンジルアルコール)、9,9-ビス[4-(3-(アクリロイルオキシメチル)フェニルオキシ)-3-メチルフェニル]フルオレンを淡黄色粘稠液体の形態で得た。得られた目的物のHPLC純度は85.0面積%であり、加熱残分は95.6質量%であった。1H-NMR、FD-MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)2.1(s,6H),5.1(s,4H),5.8(dd,2H),6.1(dd,2H),6.4(dd,2H),6.7-7.8(m,22H)
FD-MS:m/z 698(M+)
実施例2で得られた目的物を褐色瓶に採取し、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン(株)製)を、実施例2で得られた目的物100質量部に対して3質量部添加し、120℃に加熱して溶解し硬化性組成物を得た。離型剤をスプレー付着させたガラスに金型を載せ、この金型に得られた硬化性組成物を流し込み、同じ処理を施したガラスでもう一方を挟み、UV照射(500mJ/cm2)を4回繰り返し、硬化物を作製した。
[実施例3]
四ツ口の2Lフラスコに、窒素気流下、BNF150g(0.33mol)、m-ブロモベンジルアルコール150g(0.80mol)、N,N’-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)500g、炭酸カリウム69.0g(0.50mol)、塩化銅(I)3.3g(33.3mmol)及び8-キノリノール4.8g(33.1mmol)を仕込み、140℃で72時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)960g、イオン交換水300gにて抽出分液した。1N塩酸150gで有機層を2回洗浄して、不溶物を分解処理(pH2~3で分解)し、イオン交換水100gにて2回洗浄した。その後、2質量%水酸化ナトリウム水溶液150gで中和処理を2回行い、イオン交換水200gで10回洗浄して、水層のpHを7にした。有機層の減圧濃縮により、褐色結晶246gを得た。イソプロパノール(IPA)780gで褐色結晶を80℃で溶解し、室温まで放冷後、氷浴で5℃まで冷却させ、1時間撹拌した。その後、デカントして析出物を回収、乾燥させ淡褐色結晶131gを得た。結晶をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル担体1.5kg、展開溶剤:トルエン/THF=10/1)にて粗精製し、黄色結晶94.5gを得た。得られた結晶をn-ヘキサン180gに展開させ、室温で1時間撹拌後、ろ過し、n-ヘキサン20gで3回洗浄した。ろ物を120℃で一晩減圧乾燥させることで、下記式(2-2)で表される目的物(BNFベンジルアルコール)、9,9-ビス[6-(3-(ヒドロキシメチル)フェニルオキシ)-2-ナフチル]フルオレンを黄色結晶の形態で83.7g(収率37.9%、加熱残分98.4%、HPLC純度91.4面積%)得た。1H-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)1.7(s,2H),4.7(s,4H),6.9-7.8(m,28H)
[実施例4]
ディーンスタークを付けた500mL三ツ口フラスコに、実施例3で得られた9,9-ビス[6-(3-(ヒドロキシメチル)フェニルオキシ)-2-ナフチル]フルオレン41.0g(0.06mol)、アクリル酸11.6g(0.16mol)、トルエン60g、及び2-メトキシフェノール0.13g(1.1mmol)を仕込んだ。系内を窒素置換し、60℃まで昇温して前記成分を均一化させた後、p-トルエンスルホン酸一水和物1.47g(7.7mmol)を添加し、再度窒素置換した後、4時間還流脱水させた。反応温度は110~115℃であった。得られた溶液(反応混合液)をトルエン215g及び20質量%食塩水22gで洗浄後、10質量%苛性ソーダ水(水酸化ナトリウム水溶液)22gと20質量%食塩水22gとで中和し、水層のpHが10以上であることを確認した。有機層全体に対して500質量ppmの2-メトキシフェノールを有機層に添加して溶液(有機層)を均一化した後、20質量%食塩水22gで2回、イオン交換水22gで2回洗浄し、水層がpH7であることを確認した。その後、有機層を活性炭処理し、セライトろ過及び精密ろ過後、ろ液を濃縮、乾燥して下記式(1-2)で表される目的物、9,9-ビス[6-(3-(アクリロイルオキシメチル)フェニルオキシ)-2-ナフチル]フルオレンを黄色結晶の形態で得た。得られた目的物のHPLC純度は68.0面積%であり、加熱残分は97.3質量%であった。1H-NMR、FD-MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)5.2(s,4H),5.8(dd,2H),6.1(dd,2H),6.4(dd,2H),7.0-7.8(m,28H)
FD-MS:m/z 770(M+)
実施例4で得られた目的物を褐色瓶に採取し、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン(株)製)を、実施例4で得られた目的物100質量部に対して3質量部添加し、120℃に加熱して溶解し硬化性組成物を得た。離型剤をスプレー付着させたガラスに金型を載せ、この金型に得られた硬化性組成物を流し込み、同じ処理を施したガラスでもう一方を挟み、UV照射(500mJ/cm2)を4回繰り返し、硬化物を作製した。
[比較例1]
特許第6017222号公報の比較例1に従って、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFAという)を調製した。実施例2で得られた化合物に代えて、BPEFAを用いて、100℃に加熱して溶解する以外は同様にして硬化性組成物及び硬化物を調製した。
評価結果を下記表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1及び3で得られたジオール化合物、実施例2及び4で得られたアクリレート化合物及びその硬化物は、高い屈折率及び高い耐熱性を示した。なお、比較例1及び実施例2の硬化物の耐スクラッチ性は、ほぼ同等であった。
また、実施例2の硬化前の屈折率nDは、同じくBCF骨格を有する特許文献1記載の比較例4及び6の屈折率nD(1.606及び1.591)に比べて意外にも高かった。なお、光学材料の分野では、0.001の屈折率増加でも有意差があると認識されているため、実施例2の増加度合いは極めて顕著なことが分かった。
フルオレン骨格の9,9位に置換するアレーン環に対して、ベンジル基を導入した特許文献1では、屈折率が低下することが示唆されているため、ベンジル基に類似する分子骨格を前記アレーン環及びアクリロイル基の間に導入した本願実施例2において、屈折率を顕著に向上できたのは極めて意外な結果であった。
さらに、実施例3及び4の屈折率nDは、いずれも高い上に、実施例1及び2とは異なり、実施例4のアクリレート化合物が実施例3のジオール化合物よりも高い屈折率nDを有することも意外であった。