以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
(実施例1)
[画像形成装置の構成]
図1は、本実施例の画像形成装置100の構成を示す概略断面図である。なお、本実施例の画像形成装置100は、a~dの複数の画像形成部を設けている、いわゆるタンデム型の画像形成装置である。第1の画像形成部aはイエロー(Y)、第2の画像形成部bはマゼンタ(M)、第3の画像形成部cはシアン(C)、第4の画像形成部dはブラック(Bk)の各色のトナーによって画像を形成する。これら4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されており、各画像形成部の構成は収容するトナーの色を除いて実質的に共通である部分が多い。したがって、以下、第1の画像形成部aを用いて本実施例の画像形成装置100について説明する。
像担持体としての感光ドラム1aは、金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層などからなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。感光ドラム1aは、不図示の駆動源からの駆動力を受けて、図示矢印R1方向に所定の周速度で回転する。
帯電部材としての帯電ローラ2aは、感光ドラム1aに当接し、図示矢印R1方向で示される感光ドラム1aの回転にともなって、従動回転しなから感光ドラム1aの表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aは、帯電電源20aから直流電圧を印加されることで、帯電ローラ2aと感光ドラム1aとが当接する帯電部の上下流の微小な空気ギャップで発生する放電によって感光ドラム1aを帯電する。
現像手段8aは、現像部材としての現像ローラ4aと、現像剤塗布ブレード7aとを有し、イエローのトナーを収容している。現像ローラ4aは、現像電源21aに接続されている。また、クリーニング手段3aは、感光ドラム1aに接触するクリーニングブレードと、クリーニングブレードによって感光ドラム1aから除去されたトナーなどを収容する廃トナーボックスと、を有し、感光ドラム1aに残留したトナーを回収する。露光手段11aは、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1aに照射する。なお、感光ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニング手段3a、現像手段8aは、画像形成装置100に対して着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9aとして構成されている。
中間転写ベルト13は、張架部材としての二次転写対向ローラ15(以下、対向ローラ15と称する)、テンションローラ14、補助ローラ19の3本のローラにより張架されている。テンションローラ14は、中間転写ベルト13に対して適切なテンション力が維持されるように、不図示のバネによって付勢されている。対向ローラ15は、不図示の駆動源からの駆動力を受けて図示矢印R2方向に回転し、中間転写ベルト13は対向ローラ15の回転に伴って図示矢印AA方向に移動する。なお、中間転写ベルト13は感光ドラム1a~1dに対して順方向に略同速度で移動可能である。
補助ローラ19、テンションローラ14及び対向ローラ15は電気的に接地されている。また、対向ローラ15は、アルミニウム製の芯金に、肉厚が0.5mmのEPDMゴムを被覆して形成した外径24.0mmのローラであり、電気抵抗値が約1×105Ωとなるように、EPDMゴムにはカーボンを導電剤として分散している。
一次転写ローラ10aは、中間転写ベルト13を介して感光ドラム1aに対向する位置に設けられており、中間転写ベルト13の内周面に接触し、中間転写ベルト13の移動にともなって従動回転する。また、一次転写ローラ10aは一次転写電源22aに接続されている。なお、本実施例では、一次転写ローラ10a~10dは、外径5mmのニッケルメッキ鋼棒の芯金の周囲に、外径14mmとなるよう発泡性弾性体からなる弾性層を被覆して構成しており、電気抵抗値が約1×106Ωになるように調整した。一次転写ローラ10の電気抵抗は、103~107Ωの範囲であることが、良好な画像形成を行う点で好ましい。
二次転写ローラ25は、中間転写ベルト13を介して対向ローラ15と対向する位置に設けられており、中間転写ベルト13の外周面に接触している。また、二次転写ローラ25は、二次転写電源26に接続されている。なお、本実施例においては、二次転写ローラ25は、外径6mmのニッケルメッキ鋼棒の芯金の周囲に、外径18mmとなるよう発泡性弾性体からなる弾性層を被覆して構成しており、電気抵抗値が約1×108Ωになるように調整した。二次転写ローラ25の電気抵抗は、107~109Ωの範囲であることが、良好な画像形成を行う点で好ましい。
[画像形成動作]
次に本発明の画像形成装置100の画像形成動作を説明する。コントローラ等の制御手段(不図示)が画像信号を受信することによって画像形成動作が開始され、感光ドラム1a~1d、及び対向ローラ15等は不図示の駆動源からの駆動力によって所定の周速度(プロセススピード)で回転を始める。本実施例ではプロセススピードは200mm/sである。
感光ドラム1aは、帯電電源20aからトナーの正規の帯電極性(本実施例においては負極性)と同極性の電圧を印加された帯電ローラ2aによって一様に帯電される。その後、露光手段11aから走査ビーム12aを照射されることによって画像情報に従った静電潜像が形成される。現像ユニット8aに収容されたトナーは、現像剤塗布ブレード7aによって、負極性に帯電され、現像ローラ4aに塗布される。そして、現像電源21aから現像ローラ4aに所定の電圧を印加することで、現像ローラ4aと感光ドラム1aとが接触する現像部において静電潜像をトナーによって現像し、感光ドラム1aにイエロー画像成分に対応したトナー像を形成する。
その後、感光ドラム1aに担持されたイエロートナー像は、感光ドラム1aの回転に伴って、感光ドラム1aと中間転写ベルト13とが当接する一次転写部N1aに到達する。そして、一次転写電源22aから一次転写ローラ10aに正極性の電圧を印加することにより、一次転写部N1aにおいて感光ドラム1aから中間転写ベルト13にイエロートナー像を壱次転写する。
以下、同様にして、第2,3,4の画像形成部b、c、dによって第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト13に順次重ねて一次転写される。これにより、中間転写ベルト13には、目的のカラー画像に対応した4色のトナー像が形成される。その後、中間転写ベルト13に担持された4色のトナー像は、2次転写ローラ25と中間転写ベルト13とが接触して形成する2次転写部N2を通過する過程で、紙やOHPシートなどの転写材Pの表面に一括で二次転写される。この時、二次転写電源26から二次転写ローラ25に正極性の電圧を印加することにより、二次転写部N2において中間転写ベルト13から転写材Pにトナー像を二次転写している。
転写材Pは、給紙カセット16に収容されており、給紙ローラ17によって給紙カセット16から搬送ローラ18に向けて給送された後に、搬送ローラ18によって二次転写部N2に向けて搬送される。そして、二次転写部N2において4色のトナー像を転写された転写材Pは、定着手段50において加熱および加圧されることにより、4色のトナーが溶融混色して転写材Pに定着される。その後、転写材Pは画像形成装置100から排出され、積載部としての排紙トレイ52に積載される。
二次転写後に中間転写ベルト13に残った転写残トナーは、中間転写ベルト13を介して対向ローラ15に対向して設けられたベルトクリーニング手段30(回収手段)によって、中間転写ベルト13の表面から除去される。後に詳細に説明するが、ベルトクリーニング手段30は、対向ローラ15に対向する位置で中間転写ベルト13の外周面に当接するクリーニングブレード31(当接部材)を有する。
本実施例の画像形成装置100においては、以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
なお、本実施例の画像形成装置100には、画像形成装置の各部の動作の制御を行うための電気回路が搭載された制御基板(不図示)が設けられている。制御基板には、制御手段としてのCPU(不図示)と、各種の制御情報が格納された記憶手段としてのメモリ(不図示)などが搭載されている。CPUは、転写材Pの搬送に関する制御や、中間転写ベルト13、及びプロセスカートリッジ9の駆動に関する制御、画像形成に関する制御、更には故障検知に関する制御などを実行する。
[ベルトクリーニング手段]
次に、ベルトクリーニング手段30の構成について説明する。図2(a)は、後述するクリーニングブレード31が弾性変形していない場合のクリーニングブレード31の取り付け位置を説明した仮想断面図であり、図2(b)は、ベルトクリーニング手段30の構成を説明する概略断面図である。
ベルトクリーニング手段30は、クリーニング容器32と、クリーニング容器32内に設けられたクリーニング作用部33と、を有する。クリーニング容器32は、中間転写ベルト13等を有する中間転写ユニット(不図示)の枠体の一部として構成されている。クリーニング作用部33は、クリーニング部材(当接部材)としてのクリーニングブレード31と、クリーニングブレード31を支持する支持部材34と、を有する。クリーニングブレード31は、弾性材料であるウレタンゴム(ポリウレタン)から構成される弾性ブレードであり、メッキ鋼板を材料とする板金で形成された支持部材34に接着された状態で支持されている。
クリーニングブレード31は、中間転写ベルト13の移動方向(以下、ベルト搬送方向と称する)と交差する中間転写ベルト13の幅方向(クリーニングブレード31の長手方向)に関して長い板状部材である。また、クリーニングブレード31は、短手方向に関して、自由端側の端部31aを中間転写ベルト13に対して当接されており、固定端側の端部31bを支持部材34に対して接着された状態で固定されている。このクリーニングブレード31の長手方向の長さは230mmであり、厚さは2mmであり、クリーニングブレード31の硬度はJIS K 6253規格で77度である。
クリーニング作用部33は、中間転写ベルト13の表面に対して揺動可能に構成されている。すなわち、支持部材34は、クリーニング容器32に固定された揺動軸35を介して、中間転写ベルト13の表面に対して揺動可能に支持されている。クリーニング容器32内に設けられた付勢手段として加圧バネ36によって支持部材34が加圧されることで、揺動軸35を中心としてクリーニング作用部33が可動し、クリーニングブレード31が中間転写ベルト13に付勢(押圧)される。
クリーニングブレード31に対向して、中間転写ベルト13の内周側には、対向ローラ15が配置されている。クリーニングブレード31は、対向ローラ15に対向する位置で、ベルト搬送方向に対してカウンター方向で中間転写ベルト13の表面に当接されている。すなわち、クリーニングブレード31は、その短手方向における自由端側の端部31aがベルト搬送方向に関する上流側を向くようにして、中間転写ベルト13の表面に当接されている。これにより、図2(b)に示すように、クリーニングブレード31と中間転写ベルト13との間にブレードニップ部37が形成されている。クリーニングブレード31は、ブレードニップ部37において、移動する中間転写ベルト13の表面から転写残トナーを掻き取り、クリーニング容器32に回収する。
本実施例では、クリーニングブレード31の取り付け位置は、次のように設定されている。図2(a)に示すように、設定角θが22°、侵入量δが1.3mm、当接圧が0.6N/cmである。ここで、設定角θは、中間転写ベルト13とクリーニングブレード31(より詳細にはその自由端側の端面)との交点における対向ローラ15の接線と、クリーニングブレード31(より詳細にはその厚さ方向に略直交する一方の表面)とがなす角度である。また、侵入量δは、クリーニングブレード31が対向ローラ15に対して重なる厚さ方向の長さである。また、当接圧は、ブレードニップ部37におけるクリーニングブレード31からの押圧力(長手方向における線圧)で定義され、フィルム式加圧力測定システム(商品名:PINCH,ニッタ社製)を用いて測定される。このように設定することで、高温高湿環境下でのクリーニングブレード31の捲れやスリップ音を抑制でき、良好なクリーニング性能を得ることができる。また、このように設定することで、低温低湿環境下でのクリーニング不良を抑制して、良好なクリーニング性能を得ることができる。
また、一般にウレタンゴムと合成樹脂とは摺動による摩擦抵抗が大きく、クリーニングブレード31の初期の捲れが起こりやすい。そこで、予めクリーニングブレード31の自由端側の端部31aに、フッ化黒鉛などの初期潤滑剤を塗布することができる。
なお、中間転写ベルト13の材料などに応じて適宜選定されるものであるが、クリーニングブレード31のゴム硬度は、JIS K 6253規格で70度以上、且つ80度以下の範囲が好ましい。ゴム硬度が上記範囲よりも低いと、使用による摩耗量が増加して、耐久性が低下することがあり、上記範囲よりも高いと弾性力が減少して、中間転写ベルト13との摩擦により欠けなどが発生することがある。また、中間転写ベルト13の材料などに応じて適宜選定されるものであるが、クリーニングブレード31の当接圧は、0.4N/cm以上、0.8N/cm以下の範囲が好ましい。当接圧が上記範囲よりも小さいと、良好なクリーニング性能が得られないことがあり、上記範囲よりも大きいと中間転写ベルト13を回転駆動するための負荷が大きくなりすぎることがある。
[中間転写ベルト]
次に、本実施例における中間転写ベルト13の構成について説明する。図3(a)は、ベルト搬送方向に略直交する方向に切った(ベルト搬送方向に沿って見た)中間転写ベルト13の模式的な拡大部分断面図であり、図3(b)は、同様の断面において後述する中間転写ベルト13の表層40をより詳しく示したものである。
中間転写ベルト13は、基層41と表層40との2層からなる無端状のベルト部材(或いはフィルム状部材)であり、中間転写ベルト13の周長は790mmである。ここで、基層とは、中間転写ベルト13の厚さ方向に関して、中間転写ベルト13を構成する層のうち、最も厚い層であると定義する。本実施例では基層41は、ポリエチレンナフタレート樹脂に電気抵抗の調整剤としてイオン導電剤である第4級アンモニウム塩を分散した、厚さ70μmの層である。また、表層40は、中間転写ベルト13の外周面側に形成され、基材42としてのアクリル樹脂に、電気抵抗調整剤43としてアンチモンドープの酸化亜鉛を分散し、固体潤滑剤44としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を添加した層である。本実施例においては、表層40の厚さは3μmに設定した。
本実施例における中間転写ベルト13の体積抵抗率は、Hiresta・UP MCP-HT450(三菱化学社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の測定環境下で、1×1010Ω・cmである。なお、中間転写ベルト13の体積抵抗率は、109~1012Ω・cmの範囲であることが、良好な画像形成を行う上で好ましい。
また、基層41及び表層40の材料は上記のものに限るものではなく、他の材料であっても良い。例えば、基層41としてはポリエチレンナフタレート樹脂以外でもポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン-1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上使用することもできる。
表層40に関してもアクリル樹脂以外にも有機材料としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、フッ素系硬化性樹脂(含フッ素硬化性樹脂)などの硬化性樹脂が挙げられる。無機材料としては、アルコキシシラン・アルコキシジルコニウム系材料、ケイ酸塩系材料などが挙げられる。有機・無機ハイブリッド材料としては、無機微粒子分散有機高分子系材料、無機微粒子分散オルガノアルコキシシラン系材料、アクリルシリコン系材料、オルガノアルコキシシラン系材料などが挙げられる。
中間転写ベルト13の表層40の耐摩耗性、耐クラック性などの強度の観点から、硬化性材料の中でも樹脂材料(硬化性樹脂)が好ましく、硬化性樹脂の中でも、不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が好ましい。本実施例においては、中間転写ベルト13の表層40は、基層41の表面に、紫外線硬化性モノマー及び/又はオリゴマー成分を含有してなる液を塗布し、これに紫外線等のエネルギー線を照射して硬化させることで得た。
電子導電性材料としては、例えば、カーボンブラック、PAN系炭素繊維及び膨張化黒鉛粉砕品などの粒子状、繊維状又はフレーク状のカーボン系導電性フィラーが挙げられる。また、例えば、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス及び鉄などの粒子状、繊維状又はフレーク状の金属系導電性フィラーが挙げられる。また、例えば、アンチモン酸亜鉛、アンチモンドープの酸化スズ、アンチモンドープの酸化亜鉛、スズドープの酸化インジウム及びアルミニウムドープの酸化亜鉛などの粒子状の金属酸化物系導電性フィラーが挙げられる。イオン導電性材料としては、例えば、イオン液体、導電性オリゴマー及び第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの導電材料の中から1種又はそれ以上が適宜選択され、電子導電性材料とイオン導電性材料を混合して用いてもよい。
また、図3(a)~(b)に示すように、本実施例においては、表層40には、クリーニングブレード31の摩耗を抑制するために、表面加工処理が施されており、ベルト搬送方向に沿って溝(溝形状、溝部)45が形成されている。
表面材料に固体潤滑剤を添加した中間転写ベルトにクリーニングブレードなどの当接部材を当接させて転写残トナーのクリーニングを行う構成においては、表面の固体潤滑剤がクリーニングブレードに削り取られてブレードニップ部に堆積する傾向がある。本実施例のように表層40に溝形状を形成した中間転写ベルト13では、中間転写ベルト13の表面積が増えることから、固体潤滑剤44(本実施例ではPTFE)の露出面積が増えるため、特にその傾向が顕著である。固体潤滑剤44が過度にブレードニップ部37に堆積すると、堆積していた固体潤滑剤44の一部がブレードニップ部37から剥がれてブレードニップ部37においてトンネル状の空隙ができるおそれがある。その結果、トンネル状の空隙から容易にトナーが通過してしまうことでクリーニング不良が発生するおそれがある。
そこで本発明は、中間転写ベルト13の表層40に固体潤滑剤44を添加する構成において、ブレードニップ部37に堆積する固体潤滑剤44の高さがトナーの平均粒径未満となるように、表層40に溝形状を付与することを特徴とする。なお、固体潤滑剤44の高さとは、中間転写ベルト13の厚さ方向に関して、ブレードニップ部37における、表層40の溝が形成されていない面から表層40と対向するクリーニングブレード31の表面までの距離を指す。詳細は後に説明する。
トナーの平均粒径の測定は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて行った。データの解析は、コールターマルチサイザーIIに個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びパーソナルコンピュータを接続して行った。測定に用いる電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を用いた。このような電解液として、例えば、ISOTON R-II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法は、次のとおりである。上記電解液100~150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1~5ml加え、更に測定試料を2~20mg加えた。試料を添加した電解液は、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、上述のコールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒径が2μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布を算出した。これらの値を用いて、重量基準の重量平均粒径を求め、この値をトナーの平均粒径とした。本実施例では、トナーの平均粒径Dは6μmであった。
図3(b)に示すように、長手軸線方向と略直交する方向(中間転写ベルト13の幅方向)における溝45の開口部の幅W(以下、単に幅Wと称する)は1μmである。また、中間転写ベルト13の厚さ方向における、表層40の溝が形成されていない面(開口部)から溝45の底部までの深さd(以下、単に深さdと称する)は2μmである。さらに、ベルト搬送方向に略直交する方向における溝45の間隔K(以下、単にピッチKと称する)は20μmである。
溝45の幅Wは、クリーニング性能の観点からトナーの平均粒径の半分程度までの幅が好ましい。溝45の幅Wが広すぎると、トナーが溝45に嵌まってしまった場合にブレードニップ部37をすり抜けてしまうことでクリーニング不良が発生するおそれがある。また、溝45の幅Wが狭すぎると、クリーニングブレード31と中間転写ベルト13との間の接触面積が大きくなり過ぎることでブレードニップ部37における摩擦が大きくなり、クリーニングブレード31の先端の摩耗を促進してしまうおそれがある。したがって、本実施例の構成においては、溝45の幅Wは0.5μm以上3μm以下に設定するのが好ましい。
本実施例においては、表層40の厚さが3μmであるため、溝45は基層41までは至らず、表層40のみに存在している。また、溝45は、中間転写ベルト13の周方向(回転方向)に沿って中間転写ベルト13の一周全域にわたって、連続的に形成されている。なお、本実施例では、表面に凸形状を形成した金型を、表層40に押し付けることによって、中間転写ベルト13の表面に溝形状を付与した。
ここで、表層40の厚さは、溝45を形成することが可能な厚さ、即ち、溝45の深さd以上である必要がある。表層40の厚さが溝45の深さdよりも小さい場合、溝45が基層41に到達し、基層41に添加された物質が表層40の表面に析出してしまうことでクリーニング不良などが発生するおそれがある。一方で、表層40の厚さが厚すぎると、アクリル樹脂から構成される表層40が割れてしまうことでクリーニング不良が発生するおそれがある。したがって、本実施例の構成においては、表層40の厚さは、1μm以上5μm以下の間で設定することが好ましく、長期使用での表層40の割れを考慮すると1μm以上3μm以下の間で設定することがより好ましい。
[クリーニング性の評価]
図4(a)は、本実施例の中間転写ベルト13の溝形状の断面プロファイルである。図4(b)は、断面プロファイルから求められた、本実施例の中間転写ベルト13に形成した溝45の近似断面形状である。
溝形状の断面プロファイルの測定にはL-trace&NanoNaviII(SIIナノテクノロジー社製)を用いた。カンチレバーにはハイアスペクト探針SI-40Hを用いた。測定はDFMモードで、測定範囲が50μm四方の形状像を測定した。測定した断面プロファイルCから近似形状を算出した。本実施例では、近似断面形状は、溝45が形成されていない平坦部を直線J1で近似し、溝部は溝の両側の側壁を直線J2、J3で近似した。側壁の直線J2、J3は溝45の最深部である点P1を交点とした。側壁の直線J2、J3と平坦部の直線J1との交点を点P2、P3とした。図4(b)に示すように、直線J1、直線J2、直線J3の各線分の距離をそれぞれj1、j2、j3とした。さらに、中間転写ベルト13上の任意の5点で、中間転写ベルト13の断面プロファイルを測定し平均近似形状を算出し、溝形状として定義した。なお、本実施例においては、溝45の間隔Kが20μmであるため、測定範囲を50μm四方と設定した。しかし、この測定範囲は、溝45の間隔Kの値に応じて、前述の直線及び交点が求められるように適宜設定してよい。
以下、本実施例と本実施例の変形例、比較例を用いて上述の効果について詳しく説明する。変形例として変形例1~変形例6、比較例として比較例1~比較例5を用いた。各変形例、及び比較例は、中間転写ベルトの表層に形成した溝形状のピッチK、固体潤滑剤であるPTFE粒子の入れ目(添加量)が異なる点を除いてその他の構成は実質同一である。後掲表1に各変形例及び比較例のピッチKとPTFE粒子の入れ目を示す。
クリーニング性の評価としては、A4サイズ、坪量80g/m2の用紙(Red Label/Oce社製)を用いて、2枚間欠モードで各色1%の文字画像を形成する耐久評価において、5千枚ごとにクリーニング不良発生を確認するための画像を形成した。なお、評価は、温度23℃、湿度50%の環境下、プロセススピードが200mm/sec(スループット:1分間に40枚)、普通紙印刷用の画像形成モードの条件で行った。
前述の耐久評価での5千枚ごとに行うクリーニング不良発生の確認は、以下の方法を用いた。まず、二次転写電源26からの出力をオフ(0V)にした状態でレッドベタ画像(イエロー100%、マゼンタ100%のベタ画像)を形成した後に、二次転写電源26からの出力を適正値に設定して、画像を形成しない3枚の転写材Pを連続通紙する。即ち、二次転写部N2で転写材Pへほとんど転写されずに残ったレッドベタ画像のトナーがクリーニングブレード31によって除去できているかを確認することによって、クリーニング不良の発生の有無を確認する。
レッドベタ画像のトナーが中間転写ベルト13から除去できていれば、連続通紙する3枚の転写材Pは実質的に全くの白紙状態で出力される。一方で、レッドベタ画像のトナーが除去できなければ、クリーニングブレード31をすり抜けたトナーが再び二次転写部N2に到達することで、連続通紙する3枚の転写材Pにトナーが転写されてクリーニング不良画像として出力される。以上のようなクリーニング不良の発生の確認を5千枚の転写材Pの通紙毎に行い、10万枚の転写材Pを通紙した後に、クリーニング不良画像が出力されていなければ「○」、クリーニング不良画像が出力されていれば「×」として評価した。
また、10万枚の転写材Pの通紙を終えるまでに至らずにクリーニング不良が発生した構成に関しては、クリーニング不良が発生した時点でクリーニングブレード31の当接ニップに堆積している固体潤滑剤44の高さを測定した。10万枚の転写材Pを終えてもクリーニング不良が発生しなかった構成に関しては、10万枚の転写材Pの通紙を終えた時点での固体潤滑剤44の高さを測定した。
図5(a)はクリーニングブレード31の固体潤滑剤44の高さの測定位置を説明する図である。固体潤滑剤44の高さ測定は、クリーニングブレード31の中間転写ベルト13への当接状態を解除し、クリーニングブレード31単体を顕微鏡で観察することで行った。測定位置は図5(a)の点線で示す領域である。図5(b)は、クリーニングブレード31に堆積した固体潤滑剤44の模式図である。なお、測定に用いた顕微鏡は、コンフォーカル顕微鏡(OPTELICS、レーザーテック社製)である。観察領域は100μm四方、測定波長は546nm、クリーニングブレード31の当接位置の垂線方向のスキャン頻度を0.1μmとして測定した。以下の評価で用いる固体潤滑剤44の高さHの値は、クリーニングブレード31の長手方向における最大値である。
固体潤滑剤44の高さHは、図5(a)に示すように、クリーニングブレード31の中間転写ベルト13に対する当接面31cから、中間転写ベルト13の外周面(表面)までの距離である。本実施例の評価方法においては、固体潤滑剤44の高さHは、図5(b)に示すように、クリーニングブレード31の当接面31cから、中間転写ベルト13に向かう方向に堆積した固体潤滑剤44の厚さである。
また、本実施例の評価においては、10万枚の転写材Pを通紙し終えるまで至らずにクリーニング不良が発生した構成に関しては、クリーニング不良が発生した時点でクリーニングブレード31の端部31a(先端部)の摩耗量を測定した。10万枚の転写材Pを終えてもクリーニング不良が発生しなかった構成に関しては、10万枚の転写材Pの通紙を終えた時点でのクリーニングブレード31の端部31aの摩耗量を測定した。
摩耗量の測定は、クリーニングブレード31の中間転写ベルト13への当接状態を解除し、クリーニングブレード31単体を顕微鏡で観察することで行った。測定に用いた顕微鏡は、コンフォーカル顕微鏡(OPTELICS、レーザーテック社製)である。観察領域は10μm四方、測定波長は546nm、クリーニングブレード31の当接位置の垂線方向のスキャン頻度を0.1μmとして測定した。このような測定によって、摩耗量がトナーの平均粒径を超えた場合を「×」、超えていない場合を「○」としてブレードの摩耗の評価を行った。以上の評価の結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1の構成では、10万枚の転写材Pを通紙した耐久評価後においてクリーニング不良画像は発生しておらず、クリーニングブレード31の摩耗状態も良好であった。変形例1、変形例2、変形例3、変形例4、変形例5、変形例6においても実施例1と同様に、耐久評価後においてクリーニング不良画像の発生はなく、クリーニングブレード31の摩耗に関しても、トナーの平均粒径である6μm以上の摩耗は見られなかった。さらに、実施例1、変形例1~変形例6において、耐久評価後の固体潤滑剤44の高さHは、トナーの平均粒径である6μm未満であった。
比較例1、比較例3、比較例4の構成では、10万枚の転写材Pを通紙し終えるまで至らずにクリーニング不良画像が発生した。しかしながら、クリーニング不良画像が発生した時点での、クリーニングブレードの先端位置の摩耗量はトナーの平均粒径である6μm以下であり、摩耗状態は良好であった。
比較例2、及び比較例5の構成では、10万枚の転写材Pを通紙し終えるまで至らずにクリーニング不良画像が発生した。また、クリーニング不良画像が発生した時点での、クリーニングブレードの先端位置の摩耗量はトナーの平均粒径である6μm以上であった。これは、クリーニングブレードと中間転写ベルトとの間における摩擦力が大きいことに起因しているものと考えられる。
表2は、表1の結果をもとに作成したものであり、固体潤滑剤44の高さHとクリーニング性の関係を示している。
表1、表2に示すように、固体潤滑剤44の高さHがトナーの平均粒径である6μm以上の構成においては、クリーニングブレード31の長手方向に関して固体潤滑剤44が欠落する部分が発生することによるスジ状のクリーニング不良が継続的に発生した。一方で、固体潤滑剤44の高さHがトナーの平均粒径である6μm未満であった構成においては、許容できないレベルのクリーニング不良は発生しなかった。
固体潤滑剤44の高さHが6μm未満の場合には、クリーニングブレード31の長手方向に関して、堆積した固体潤滑剤44が欠落する部分が発生したとしても、大部分のトナーはクリーニングブレード31によって回収される。この時、トナーの粒度分布の小粒径側の一部のトナーは欠損位置をすりぬける可能性があるものの、クリーニングブレード31によって回収されたトナーが欠落した位置を塞ぐことにより、許容できないレベルのクリーニング不良は発生しなかった。
図6は、上でクリーニング性能の評価を行った各構成における、中間転写ベルト13の表面に露出している固体潤滑剤44(PTFE粒子)の面積SPと、固体潤滑剤44の高さHの関係を説明するグラフである。中間転写ベルト13の表面に露出している固体潤滑剤44の面積SPは、下記の式1で算出することが可能である。なお、式1において、断面長さJ(J=J1+J2+J3)は、図4で算出した溝一つ当たりの断面長さであり、(1/K)は、中間転写ベルト13の幅方向に関する単位長さ当たりの溝本数である。また、下記式1では、溝45が形成された領域に対応する中間転写ベルト13の周長L、固体潤滑剤44であるPTFE粒子の入れ目Q(重量部)、PTFEの密度ρP、表層40を構成するアクリル樹脂の密度ρAを用いて面積SPを求めた。
SP=J×(1/K)×L×(Q/ρP)/((Q/ρP)+(100/ρA))…(式1)
上式から算出される本実施例の単位長さ(ここでは、長手1mm)当たりの面積Spは、約130mm2であった。なお、このとき、断面長さJ、溝ピッチK、周長Lに関して、単位を全てmmに統一して計算を行った。
図6において、グラフ中の横軸は固体潤滑剤44の面積SPmm2であり、縦軸は、クリーニングブレード31に付着した固体潤滑剤44の高さH(μm)を、トナーの平均粒径D(μm)で除した値である。図6のグラフは、H/D≧1となる領域では、クリーニングブレード31に堆積した固体潤滑剤44の高さHがトナーの平均粒径D以上となることを表している。また、図6中の点線で示される線分Aは、10万枚通紙までクリーニング不良画像が発生せず、クリーニング性が「○」だったプロットの近似線である。
図6に示すように、H/D≧1となる領域ではクリーニング不良が発生し、H/D<1の領域ではクリーニング不良は発生しなかった。ここで、線分AとH/D=1の交点に対応する、面積SPの値は大凡240mm2となっている。即ち、面積SPが240mm2未満であれば、クリーニングブレード31に堆積した固体潤滑剤44が欠落することによるクリーニング不良の発生を抑制することができる。したがって、以下に示される式2を満たすことによって、クリーニングブレード31の先端に固体潤滑剤44が堆積することによるクリーニング不良の発生を抑制することが可能である。
J×(1/K)×L×(Q/ρP)/((Q/ρP)+(100/ρA))<240…(式2)
本実施例で面積SPが240mm2未満となる具体的な構成としては、例えば、溝ピッチKが3μmの場合では固体潤滑剤44であるPTFE粒子の入れ目(含有量)が30重量部以下の構成が挙げられる。また、例えば、溝ピッチKが10μmの場合ではPTFE粒子の入れ目が54重量部以下、溝ピッチKが20μmの場合ではPTFE粒子の入れ目が63重量部以下の構成において、上記式2が満たされる。
以上で説明したように、本実施例の構成によると、フッ素含有粒子などの固体潤滑剤44を含有する表層40に、クリーニングブレード31の先端に堆積する固体潤滑剤44の高さHがトナーの平均粒径D未満となるような溝を形成している。これにより、クリーニングブレード31の先端に堆積した固体潤滑剤44が欠落してトナーがクリーニングブレード31と中間転写ベルト13との当接部をすり抜けることによるクリーニング不良の発生を抑制することができる。
(実施例2)
実施例1においては、図3~図4に示されるような溝45を設けた中間転写ベルト13の構成について説明した。これに対し、実施例2では、図7(a)~(b)に示すように、実施例1とは異なる形状の溝145を設けた中間転写ベルト113の構成について説明する。なお、本実施例の構成は、中間転写ベルト113の表層140に形成する溝145の形状が異なる点を除いて、実施例1と実質的に同一である。したがって、実施例1と共通する部分に関しては同一符号を付し、説明を省略する。
図7(a)は、ベルト搬送方向に略直交する方向に切った(ベルト搬送方向に沿って見た)中間転写ベルト113の模式的な拡大部分断面図であり、図7(b)は、同様の断面において後述する中間転写ベルト113の表層140をより詳しく示したものである。本実施例では、中間転写ベルト113に溝形状を付与する金型の形状を変更した。溝145の幅Wは3μm、溝の底辺の幅Vは2μm、深さdは2μmである。また、溝145のピッチKは20μmである。
図8(a)は、本実施例の中間転写ベルト113の溝形状の断面プロファイルEである。図8(b)は、断面プロファイルEから求められた、本実施例の中間転写ベルト113に形成した溝145の近似断面形状である。溝145の断面プロファイルの測定条件及び測定方法は実施例1と同じである。本実施例では、図8(b)に示すように、溝145が形成されていない平坦部を直線J4で近似し、溝145の両側の側壁を直線J5、J6で近似し、溝145の底部を直線J7で近似して近似断面形状を得た。底部の直線J7は直線J4と平行とし、直線J4と直線J5の交点を点P4、直線J4と直線J6の交点を点P5、直線J7と直線J5の交点を点P6、直線J7と直線J6との交点を点P7とした。また、本実施例においても実施例1と同様に、中間転写ベルト113上の任意の5点で、中間転写ベルト113の断面プロファイルEを測定し、平均近似形状を算出して溝形状として定義した。さらに、直線J4、直線J5、直線J6、直線J7の各線分の距離をそれぞれj4、j5、j6、j7とした。
本実施例の中間転写ベルト113の表面に露出している固体潤滑剤144(PTFE粒子)の面積SPは、上記で算出した溝145一つ当たりの断面長さをJ=J4+J5+J6+J7として、実施例1と同様に式1で算出される。ここで、下記式2から算出される本実施例の長手1mm当たりの面積SPは実施例1と同じで、約130mm2であった。
以下、本実施例と、本実施例の変形例7、比較例6を用いて効果について詳しく説明する。変形例7、及び比較例6は、中間転写ベルト113の表層140に形成した溝145のピッチK、固体潤滑剤144であるPTFE粒子の入れ目(添加量)が異なる点を除いてその他の構成は実質同一である。下記表3において、クリーニング性およびクリーニングブレード31のブレードの摩耗の評価は、実施例1と同じ方法で行ったため説明を省略する。
表3に示すように、実施例2、及び変形例7の構成では、10万枚の転写材Pを通紙した耐久評価後においてクリーニング不良画像は発生しておらず、クリーニングブレード31の摩耗状態も良好であった。また、両構成とも、耐久評価後の固体潤滑剤144の高さHは、トナーの平均粒径である6μm未満であった。一方で、比較例6の構成では、10万枚の転写材Pを通紙し終えるまで至らずにクリーニング不良画像が発生した。しかしながら、クリーニング不良画像が発生した時点での、クリーニングブレードの先端位置の摩耗量はトナーの平均粒径である6μm以下であり、摩耗状態は良好であった。
図9は、上でクリーニング性能の評価を行った各構成における、中間転写ベルト113の表面に露出している固体潤滑剤144(PTFE粒子)の面積SP(mm2)と、固体潤滑剤144の高さHの関係を説明するグラフである。なお、参考として、実施例1における各構成のデータも図9のグラフに記している。図9に示すように、本実施例における評価結果も実施例1での評価結果群と一致しており、溝145の形状が異なっていてもH/Dと面積SP(mm2)の関係性は同じであった。即ち、本実施例においても実施例1と同様に、面積SPが240mm2未満であれば、クリーニングブレード31に堆積した固体潤滑剤144が欠落することによるクリーニング不良の発生を抑制することができる。
なお、実施例1、実施例2では、楔型、台形型に近似できる形状の溝を有する中間転写ベルトを例に説明したが、溝形状はこれに限らず、例えば、半円形の断面形状をもった溝形状などであっても良い。
また、実施例1、実施例2では、式1で示すように、中間転写ベルトの移動方向に関して、中間転写ベルトの一周全域にわたって連続的に溝を形成した構成について説明した。しかし、これに限らず、面積SPが240mm2未満の条件を満たすようであれば、溝は連続的に形成されずに途中で途切れていても良い。この場合、溝が形成されていない領域の長さを、式1の中間転写ベルトの周長Lの値から除くことで、固体潤滑剤の面積SPを算出することが可能である。