以下に図面を参照して、本発明の実施例を例示する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨のものではない。
(実施例1)
[画像形成装置]
図1は、本実施例の画像形成装置100の構成を示す概略断面図である。なお、本実施例の画像形成装置100は、a~dの複数の画像形成部を設けている、いわゆるタンデム型の画像形成装置である。第1の画像形成部aはイエロー(Y)、第2の画像形成部bはマゼンタ(M)、第3の画像形成部cはシアン(C)、第4の画像形成部dはブラック(Bk)の各色のトナーによって画像を形成する。これら4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されており、各画像形成部の構成は収容するトナーの色を除いて実質的に共通である部分が多い。したがって、以下、第1の画像形成部aを用いて本実施例の画像形成装置100について説明する。
第1の画像形成部aは、ドラム状の感光体である感光ドラム1aと、帯電部材である帯電ローラ2aと、現像手段4aと、ドラムクリーニング手段5aと、を有する。
感光ドラム1aは、トナー像を担持する像担持体であり、図示矢印R1方向に所定のプロセススピード(本実施例では200mm/sec)で回転駆動される。現像手段4aは、イエローのトナーを収容する現像容器41aと、現像容器41aに収容されたイエロートナーを担持し、感光ドラム1aにイエロートナー像を現像するための現像部材としての現像ローラ42aと、を有する。ドラムクリーニング手段5aは、感光ドラム1aに付着したトナーを回収するための手段である。ドラムクリーニング手段5aは、感光ドラム1aに接触するクリーニングブレードと、クリーニングブレードによって感光ドラム1aから除去されたトナーなどを収容する廃トナーボックスと、を有する。
制御手段(不図示)が画像信号を受信することによって画像形成動作が開始されると、感光ドラム1aは回転駆動される。感光ドラム1aは回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性(本実施例では負極性)で所定の電位(帯電電位)に一様に帯電処理され、露光手段3aにより画像信号に応じた露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像は現像位置において現像手段4aにより現像され、イエロートナー像(以下、単にトナー像と称する。)として可視化される。ここで、現像手段4aに収容されたトナーの正規の帯電極性は、負極性である。この実施例では帯電部材による感光ドラムの帯電極性と同極性に帯電したトナーにより静電潜像を反転現像しているが、本発明は、感光ドラムの帯電極性とは逆極性に帯電したトナーにより静電潜像を正現像するようにした画像形成装置にも適用できる。
無端状で移動可能な中間転写体としての中間転写ベルト10は、各画像形成部a~dの各感光ドラム1a~1dと当接する位置に配置され、張架部材である支持ローラ11、張架ローラ12、対向ローラ13の3軸で張架されている。中間転写ベルト10は、張架ローラ12により総圧60Nの張力で張架されており、駆動力を受けて回転する対向ローラ13の回転によって図示矢印R2方向に移動する。なお、詳細は後述するが、本実施例における中間転写ベルト10は、複数の層によって構成されている。
感光ドラム1aに形成されたトナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10とが接触する一次転写部N1aを通過する過程で、一次転写電源23から一次転写ローラ6aに正極性の電圧を印加することで中間転写ベルト10に一次転写される。その後、中間転写ベルト10に一次転写されることなく感光ドラム1aに残留したトナーは、ドラムクリーニング手段5aによって回収されることで感光ドラム1aの表面から除去される。
ここで、一次転写ローラ6aは、中間転写ベルト10を介して感光ドラム1aに対応する位置に設けられ、中間転写ベルト10の内周面に接触する一次転写部材(接触部材)である。また、一次転写電源23は、一次転写ローラ6a~6dに正極性又は負極性の電圧を印加することが可能な電源である。本実施例においては、複数の一次転写部材に対して共通の一次転写電源23から電圧を印加する構成について説明するが、これに限らず、各一次転写部材に対応させて複数の一次転写電源を設ける構成であっても本発明を適用できる。
以下、同様にして、第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10に順次重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト10には、目的のカラー画像に対応した4色のトナー像が形成される。その後、中間転写ベルト10に担持された4色のトナー像は、二次転写ローラ20と中間転写ベルト10とが接触して形成する二次転写部を通過する過程で、給紙手段50により給紙された紙やOHPシートなどの転写材Pの表面に一括で二次転写される。
二次転写ローラ20は、外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗率108Ω・cm、厚さ5mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いている。なお、発泡スポンジ体のゴム硬度はアスカー硬度計C型を用いて測定し、500g荷重時に硬度30°であった。二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の外周面に接触しており、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20に対向する位置に配置された対向ローラ13に対して50Nの加圧力で押圧され、二次転写部N2を形成している。
二次転写ローラ20は中間転写ベルト10に対して従動回転しており、二次転写電源21から電圧が印加されることにより、二次転写ローラ20から対向ローラ13に向かって電流が流れる。これにより、中間転写ベルト10に担持されていたトナー像は二次転写部において転写材Pに二次転写される。なお、中間転写ベルト10のトナー像を転写材Pに二次転写する際には、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20から対向ローラ13に向かって流れる電流が一定になるように、二次転写電源21から二次転写ローラ20に印加される電圧が制御される。また、二次転写を行うための電流の大きさは、画像形成装置100が設置される周囲環境や転写材Pの種類により、予め決定されている。二次転写電源21は、二次転写ローラ20に接続しており、転写電圧を二次転写ローラ20に印加する。また、二次転写電源21は、100[V]から4000[V]の範囲の出力が可能である。
二次転写によって4色のトナー像を転写された転写材Pは、その後、定着手段30において加熱および加圧されることにより、4色のトナーが溶融混色して転写材Pに定着される。二次転写後に中間転写ベルト10に残ったトナーは、中間転写ベルト10の移動方向に関して二次転写部N2よりも下流側に設けられたベルトクリーニング手段16(回収手段)により清掃、除去される。ベルトクリーニング手段16は、対向ローラ13に対向する位置で中間転写ベルト10の外周面に当接する当接部材としてのクリーニングブレード16aと、クリーニングブレード16aによって回収されたトナーを収容する廃トナー容器16bと、を有する。なお、以下の説明においては、クリーニングブレード16aを単にブレード16aと称する。
本実施例の画像形成装置100においては、以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
[ベルトクリーニング手段16]
図2(a)は、ブレード16aと中間転写ベルト10の当接状態を説明する模式図であり、図2(b)はブレード16aと中間転写ベルト10との接触点を拡大した模式図である。本実施例におけるブレード16aは、中間転写ベルト10の移動方向(以下、ベルト搬送方向と称する)と交差する中間転写ベルト10の幅方向(以下、ベルト幅方向と称する)に関して長い板状部材である。
本実施例におけるブレード16aは、中間転写ベルト10に接触しトナーをかきとる弾性部53と、その弾性部53を支持する板金部52(支持部)を有する。弾性部53は、ポリウレタンから形成されたブレード部材であり、弾性部53の短手方向に関して一端側を板金部52に固定されており、他端側は自由端の状態で中間転写ベルト10に対して当接されている。より詳しくは、ブレード16aは、中間転写ベルト10と接触する弾性部53の幅が長さ230mmのブレード形状となっており、弾性部53と板金部52が接着されて構成されている。ブレード16aの弾性部53は、ベルト幅方向の長手幅が230mm、厚さが2mmであり、板金部52との接着点からの長さである自由長が13mmである。また、ブレード16aの硬度はJIS K 6253規格で77度である。
ブレード16aに対向して、中間転写ベルト10の内周側には、対向ローラ13が配置されている。ブレード16aは、対向ローラ13に対向する位置で、ベルト搬送方向に対してカウンター方向で中間転写ベルト10の表面に当接されている。すなわち、ブレード16aは、ベルト搬送方向側の自由端がベルト搬送方向の上流側を向くようにして、中間転写ベルト10の表面に当接されている。これにより、ブレード16aと中間転写ベルト10との間に図2(a)のようなブレードニップ部Nbが形成されている。ブレード16aは、ブレードニップ部Nbにおいて、移動する中間転写ベルト10の表面からトナーを掻き取り、廃トナー容器16bに回収する。なお、本実施例においては、ブレード16aと中間転写ベルト10とが接触するブレードニップNbの、ベルト搬送方向の幅は75μmである。
図2(b)に示すように、本実施例の構成によれば、ブレード16aがカウンター方向で配置されているため、ブレード16aの中間転写ベルト10と接触する先端部は、ベルト搬送方向に関して摩擦力を受ける。ブレード16aの先端部が受ける摩擦力は、ブレード16aの先端部をベルト搬送方向に追従して曲げる方向の力となる。その結果、接触部分の摩擦力により、ブレード16aの接触部が図2(b)に示すように湾曲し、ブレード16aが中間転写ベルト10に巻き込まれる形状となる。このときのブレード16aが巻き込まれた領域を巻き込み部M、ベルト搬送方向に関する巻き込み部Mの距離(長さ)を巻き込み量mと定義する。また、図2(c)に示すように、ブレード16aが中間転写ベルトに接触して押し込まれた際、湾曲せずに伸ばした仮想線において、ブレード先端面方向において対向ローラ13に侵入した深さを侵入量δと定義する。
本実施例では、ブレード16aは、設定角θが22°、侵入量δが1.5mm、当接圧が14Nとなるようにして、中間転写ベルト10に対して配置されている。ここで、設定角θは、中間転写ベルト10とブレード16a(より詳細にはその自由端側の端面)との交点における対向ローラ13の接線と、ブレード16a(より詳細にはその厚さ方向に略直交する一方の表面)とがなす角度である。また、侵入量δは、ブレード16aが対向ローラ13に対して重なる厚さ方向の長さである。また、当接圧は、ブレードニップ部Nbにおけるブレード16aからの押圧力(長手方向における線圧)で定義され、フィルム式加圧力測定システム(商品名:PINCH,ニッタ社製)を用いて測定される。
なお、ブレード16aは、中間転写ベルト10との間の摩擦力によって巻き込まれたブレード16aの巻き込み部Mが中間転写ベルト10に対して圧をかけることで、中間転写ベルト10に残留したトナーをせき止める。その後、ブレード16aによってせき止められたトナーは廃トナー容器16bに回収される。したがって、トナーの回収性を確保するために、ブレード16aは中間転写ベルト10に対して、トナーのすり抜けがないように所定の圧をかけて当接されている。
しかしながら、中間転写ベルト10に対するブレード16aの圧が高くなりすぎると、ブレード16aの先端にかかる摩擦力が大きくなることでブレード16aの巻き込み部Mの巻き込み量mも大きくなる。この巻き込み量mが大きくなり過ぎると、カウンター方向で中間転写ベルト10に対して当接しているブレード16aが、ベルト搬送方向に沿って当接した状態になってしまう現象(以下、メクレと称する)が発生するおそれがある。メクレが発生した場合、ブレード16aによって中間転写ベルト10に残留したトナーをせき止めることが困難になることで、クリーニング不良が発生してしまうおそれがある。したがって、中間転写ベルト10に残留したトナーの回収性を確保するためには、ブレード16aの巻き込み量mを適切に設定する必要がある。
ブレード16aの巻き込み量mの調整手段として、中間転写ベルト10の動摩擦係数を調整して、ブレード16aの巻き込み部Mにかかる摩擦力を調整する方法がある。例えば、中間転写ベルト10の表面に、ベルト搬送方向に沿った溝や凹凸を複数設けて、ブレード16aと中間転写ベルト10の接触面積を低下させ、中間転写ベルト10とブレード16aの動摩擦係数を減らして摩擦力を低下させることが可能である。これにより、中間転写ベルト10に対するブレード16aの巻き込み量mを調整することができる。また、ブレード16aの巻き込み量mの調整手段としては、予めブレード16aの先端に、フッ化黒鉛などの潤滑剤を塗布して、ブレード16aの巻き込み部Mにかかる摩擦力を調整する方法がある。
[中間転写ベルト]
次に、本実施例における中間転写ベルト10の構成について説明する。図3は、中間転写ベルト10の全体構成を説明する模式図である。図4(a)は、図3の領域Xにおいて、ベルト搬送方向に略直交する方向に中間転写ベルト10を切った(ベルト搬送方向に沿って見た)場合の、中間転写ベルト10の模式的な拡大部分断面図である。また、図4(b)は、図4(a)と同様の断面において後述する中間転写ベルト10の表層60をより詳しく示したものである。図4(c)は、図3の領域Yにおいて、ベルト搬送方向に略直交する方向に中間転写ベルト10を切った(ベルト搬送方向に沿って見た)場合の、中間転写ベルト10の模式的な拡大部分断面図である。また、図4(d)は、図4(c)と同様の断面における表層60をより詳しく示したものである。
中間転写ベルト10は、基層61と表層60との2層からなる無端状のベルト部材(或いはフィルム状部材)であり、中間転写ベルト10の周長は700mm、ベルト幅方向の長手幅は250mmである。ここで、基層とは、中間転写ベルト10の厚さ方向に関して、中間転写ベルト10を構成する層のうち、最も厚い層であると定義する。本実施例では基層61は、ポリエチレンナフタレート樹脂に電気抵抗の調整剤としてイオン導電剤である第4級アンモニウム塩を分散した、厚さ70μmの層である。
基層61の材料は上記のものに限るものではなく、例えば、基層61としてはポリエチレンナフタレート樹脂以外でもポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン-1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上使用することもできる。また、基層61に添加するイオン導電剤としては、イオン液体、導電性オリゴマー及び第4級アンモニウム塩なども使用することができる。これらの導電材料の中から1種又はそれ以上を適宜選択して用いても良く、電子導電性材料とイオン導電性材料を混合して用いてもよい。
表層60は、中間転写ベルト10の外周面側に形成される層である。本実施例における表層60は、基材46としてのアクリル樹脂に、電気抵抗調整剤43としてアンチモンドープの酸化亜鉛を分散し、固体潤滑剤44として、フッ素含有粒子であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を添加した厚さ3μmの層である。
表層60の基材46については、アクリル樹脂以外の有機材料として、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、フッ素系硬化性樹脂(含フッ素硬化性樹脂)などの硬化性樹脂が挙げられる。無機材料としては、アルコキシシラン・アルコキシジルコニウム系材料、ケイ酸塩系材料などが挙げられる。有機・無機ハイブリッド材料としては、無機微粒子分散有機高分子系材料、無機微粒子分散オルガノアルコキシシラン系材料、アクリルシリコン系材料、オルガノアルコキシシラン系材料などが挙げられる。
また、表層60に添加する導電剤料としては、他にも、カーボンブラック、PAN系炭素繊維及び膨張化黒鉛粉砕品などの粒子状、繊維状又はフレーク状のカーボン系導電性フィラーが挙げられる。また、例えば、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス及び鉄などの粒子状、繊維状又はフレーク状の金属系導電性フィラーが挙げられる。また、例えば、アンチモン酸亜鉛、アンチモンドープの酸化スズ、アンチモンドープの酸化亜鉛、スズドープの酸化インジウム及びアルミニウムドープの酸化亜鉛などの粒子状の金属酸化物系導電性フィラーが挙げられる。
表層60は耐摩耗性、耐クラック性などの強度の観点から、硬化性材料の中でも樹脂材料(硬化性樹脂)が好ましく、硬化性樹脂の中でも、不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が好ましい。本実施例においては、中間転写ベルト10の表層60は、基層61の表面に、紫外線硬化性モノマー及び/又はオリゴマー成分を含有してなる液を塗布し、これに紫外線等のエネルギー線を照射して硬化させることで得た。
本実施例における中間転写ベルト10の体積抵抗率は、1×1010Ω・cmである。体積抵抗率は、三菱化学株式会社のHiresta-UP(MCP-HT450)にURプローブ(型式MCP-HTP12)を接続し、印加電圧100V、測定時間10秒で測定した。体積抵抗率を測定する測定室の環境は、温度23℃、湿度50%に設定し、測定室内に4時間放置した後の中間転写ベルト10の体積抵抗率を測定した。
図3、図4(a)~(d)に示すように、本実施例の中間転写ベルト10は、ブレード16aの摩耗を抑制するために表層60に表面加工処理が施された領域X(第1の領域)と領域Y(第2の領域)とを有する。表面加工処理はブレード16aの幅以上でかつ、ベルト搬送方向全域にわたって形成される。また、図3に示すように、中間転写ベルト10は、ベルト搬送方向に関して、領域Xから領域Yに切替わる第1切替点と、領域Yから領域Xに切替わる第2切替点と、をそれぞれ1つずつ有する。即ち、中間転写ベルト10は、ベルト搬送方向に関して連続して形成された領域Xと、ベルト搬送方向に関して連続して形成された領域Yと、をそれぞれ1つずつ有する。以下の説明においては、ベルト搬送方向に関して、第1切替点から第2切替点までの距離を領域Yの距離、第2切替点から第1切替点までの距離を領域Xの距離と定義する。本実施例においては、領域Yの距離は50mm、領域Xの距離は650mmである。
図4(a)~(d)に示すように、本実施例において、領域Xと領域Yとには、ベルト幅方向に関して、ベルト搬送方向に沿った溝(溝形状、溝部)45が複数形成されている。詳細は後述するが、領域Xにおける溝45の間隔K1は20μm、領域Yにおける溝45の間隔K2は10μm間隔である。この構成により、本実施例の中間転写ベルト10は、領域Xにおける動摩擦係数よりも領域Yにおける動摩擦係数が小さい値となる。
以下、領域X及び、領域Yにおける中間転写ベルト10に形成された溝45の構成に関して、図4(a)~(d)を用いて説明する。なお、以下の説明における溝45の形状は、L-trace&NanoNaviII(SIIナノテクノロジー社製)を使用し、測定はDFMモードで、カンチレバーにはハイアスペクト探針SI-40Hを用いて測定した。
図4(a)、(b)に示すように、領域Xにおいて、ベルト幅方向における溝45の開口部の幅W1(以下、単に幅W1と称する)は1μmである。また、中間転写ベルト10の厚さ方向における、表層60の溝が形成されていない面(開口部)から溝45の底部までの深さd(以下、単に深さdと称する)は2μmである。さらに、ベルト幅方向の溝45の間隔K1は20μmである。なお、本実施例では、中間転写ベルト10の領域Xに関しては、表層60に対して20μm間隔の凸形状を形成した円柱状の金型を押し付けながら回転させることによって、図4(a)~(b)に示す溝形状を形成した。
続いて、図4(c)、(d)に示すように、領域Yにおいて、ベルト幅方向における溝45の開口部の幅W2(以下、単に幅W2と称する)は、領域X同様1μmである。また、中間転写ベルト10の厚さ方向における、表層60の溝が形成されていない面(開口部)から溝45の底部までの深さd(以下、単に深さdと称する)は、領域Xと同様2μmである。一方で、領域Yにおいては、ベルト幅方向の溝45の間隔K2を、領域Xにおける間隔K1よりも狭い10μmとしている。なお、本実施例では、中間転写ベルト10の領域Yに関しては、表層60に対して10μm間隔の凸形状を形成した円柱状の金型を押し付けながら回転させることによって、図4(c)~(d)に示す溝形状を形成した。
溝45の幅W1及び幅W2は、クリーニング性能の観点からトナーの平均粒径の半分程度までの幅が好ましい。溝45の幅W1及び幅W2が広すぎると、トナーが溝45に嵌まってしまった場合にブレードニップ部Nbをすり抜けてしまうことでクリーニング不良が発生するおそれがある。また、溝45の幅W1及び幅W2が狭すぎると、ブレード16aと中間転写ベルト10との間の接触面積が大きくなり過ぎることでブレードニップ部Nbにおける摩擦が大きくなり、ブレード16aの先端の摩耗を促進してしまうおそれがある。したがって、本実施例の構成においては、溝45の幅W1及び幅W2は0.5μm以上3μm以下に設定するのが好ましい。
本実施例においては、表層60の厚さが3μmであるため、溝45は基層61までは至らず、表層60のみに存在している。また、溝45は、中間転写ベルト10の周方向(回転方向)に沿って中間転写ベルト10の650mm分にわたって、ほぼ連続的に形成されている。
ここで、本実施形態では領域Xと領域Yにおける溝45は、それぞれ凸形状の間隔の異なる円柱型を使用して形成した。しかし、これに限らず、凸形状の間隔が領域Xと同じであっても、円柱の回転方向に関して斜めに凸形状が形成された円柱型を用いて、領域Yの範囲だけ2周にわたって円柱型を押し付けることで、溝45を形成してもよい。即ち、円柱型を中間転写ベルト10の周方向に関して1周分押し付けた後に、領域Yの範囲分だけ継続して円柱型を中間転写ベルト10に押し付けることで、既に溝45が形成された表層60に対してオーバーラップして溝45が形成される。その結果、領域Yにおいて、領域Xよりも狭い間隔の溝45を形成することが可能となり、本実施例のように、領域Xと領域Yとで動摩擦係数の異なる中間転写ベルト10を得ることが可能である。
また、斜めに凸形状が形成された円柱型を用いずに、周方向に関して平行に凸形状が形成された円柱型を、中間転写ベルト10の表層60に対して斜めに押し付けて、領域Xと領域Yを形成しても良い。この場合においても、中間転写ベルト10の周方向に関して1周分斜めに円柱型を押し付けた後に、領域Yの範囲分だけ継続して円柱型を中間転写ベルト10に押し付けることで、既に溝45が形成された表層に対してオーバーラップして溝45が形成される。その結果、領域Yにおいて、領域Xよりも狭い間隔の溝45を形成することが可能となり、本実施例のように、領域Xと領域Yとで動摩擦係数の異なる中間転写ベルト10を得ることが可能である。
ここで、表層60の厚さは、溝45を形成することが可能な厚さ、即ち、溝45の深さd以上である必要がある。表層60の厚さが溝45の深さdよりも小さい場合、溝45が基層61に到達し、基層61に添加された物質が表層60の表面に析出してしまうことでクリーニング不良などが発生するおそれがある。一方で、表層60の厚さが厚すぎると、アクリル樹脂から構成される表層60が割れてしまうことでクリーニング不良が発生するおそれがある。したがって、本実施例の構成においては、表層60の厚さは、1μm以上5μm以下の間で設定することが好ましく、長期使用での表層60の割れを考慮すると1μm以上3μm以下の間で設定することがより好ましい。
このように、本実施例では、中間転写ベルト10に関して、領域Xと領域Yとでそれぞれ間隔の異なる溝45を形成することによって、ブレード16aと中間転写ベルト10の接触面積を調整している。これにより、ブレード16aと中間転写ベルト10との間の動摩擦係数を調整してブレード16aの巻き込み部Mにかかる力を調整し、ブレード16aの摩耗を抑制することが可能となる。なお、本実施例においては、ベルト幅方向に関して、ブレード16aの幅よりも広い範囲で溝45を形成している。言い換えると、中間転写ベルト10は、ベルト幅方向に関して、領域X及び領域Yの幅がブレード16aの幅よりも広い構成である。これにより、ブレード16aの幅全域において安定してブレード16aの摩耗を抑制することが可能である。
<巻き込み部Mの調整>
図3に示すように、本実施例の中間転写ベルト10は、表層60に20μm間隔で溝45を形成した領域Xと、10μm間隔で溝45を形成した領域Yと、を有する。領域Xは、領域Yと比べてブレード16aと中間転写ベルト10の接触面積が大きいため、ブレード16aが中間転写ベルト10との間の摩擦力が大きく、その結果として巻き込み量mが大きくなる。一方、領域Yでは溝45の間隔が狭いため、ブレード16aと中間転写ベルト10の接触面積が低下し、且つ、中間転写ベルト10の表面積が増加することで、固体潤滑剤44の露出面積が増える。その結果、領域Yにおいては、領域Xに対してブレード16aと中間転写ベルト10との間の動摩擦係数が低下する。
表1は、領域Xと領域Yとにおける、動摩擦係数及び巻き込み量mの大きさを比較する表である。領域Xに対応する動摩擦係数及び巻き込み量mは、ベルト搬送方向全面に関して間隔K1で溝45が形成された(領域Xのみで構成された)中間転写ベルトを用いて測定した。また、領域Yに対応する動摩擦係数及び巻き込み量mは、ベルト搬送方向全面に関して間隔K2で溝45が形成された(領域Yのみで構成された)中間転写ベルトを用いて測定した。
動摩擦係数は、表面性試験機(新東科学株式会社製「ヘイドン14FW」を用い、測定圧子としてウレタンゴム製ボール圧子(外径3/8インチ、ゴム硬度90度)を使用して測定した。測定条件は、試験荷重50gf、速度10mm/secとし、測定距離は50mmとした。表1における動摩擦係数の値は、測定開始から1秒から4秒までに計測された摩擦力(gf)の平均値を、試験荷重(gf)で除した値である。
また、ブレード16aの巻き込み量mの大きさは次のように測定した。まず、先端部にフッ化黒鉛を塗付したブレード16aを中間転写ベルト10に対して設置し、画像形成装置を非画像形成状態で2分間動作させた後に、ブレード16aを画像形成装置から取り外して、ブレード16aの先端部を顕微鏡で観察する。そして、中間転写ベルト10と摺擦することによってブレード16aの先端部に塗布されたフッ化黒鉛がはがれた部分の幅を測定し、この幅を巻き込み量mとした。
表1に示すように、動摩擦係数が領域Xより小さい領域Yでは、巻き込み量mも小さくなっている。即ち、第1の動摩擦係数を有する領域Xと、第1の動摩擦係数よりも小さい値である第2の動摩擦係数を有する領域Yと、を有する中間転写ベルト10によれば、ブレードニップ部Nbにおけるブレード16aの巻き込み量mの大きさを変化させることができる。
図5(a)は、ブレードニップ部Nbにおける、ブレード16aが領域Xと当接している状態を説明する概略的な拡大断面図である。図5(b)は、中間転写ベルト10の移動によってブレード16aが第1切替点を通過した後の、ブレード16aが領域Yと当接している状態を説明する概略的な拡大断面図である。図5(c)は、中間転写ベルト10の移動によってブレード16aが第2切替点を通過した後の、ブレード16aが再び領域Xと当接している状態を説明する概略的な拡大断面図である。
ブレード16aが領域Xを通過している時、ブレード16aと領域Xとの間の摩擦によって、ブレード16aの巻き込み部Mの形状は図5(a)のようになっている。そして、図5(b)に示すように、中間転写ベルト10が周回移動すると、ブレード16aは、第1切替点を通過した後に、領域Yと接触する状態となる。表1で説明したように、領域Xと領域Yにおいてはそれぞれ動摩擦係数が異なり、領域Xから領域Yに切替わる第1切替点においては動摩擦係数が減少する。すると、図5(b)に表すようにブレード16aの巻き込み部Mの形状が変形して、巻き込み量mが小さくなる。その後、中間転写ベルト10が更に移動してブレード16aが第2切替点を通過し再び領域Xと当接する状態となると、図5(c)に示すように、巻き込み部Mの形状は図5(a)の形状に戻る。
以上説明したように、ブレード16aが第1切替点及び第2切替点を通過することにより、ブレード16aの巻き込み部Mの形状が変化し、巻き込み量mの大きさが変化する。これにより、図5(a)~(c)に示すように、中間転写ベルト10の移動に伴って、ブレード16aと中間転写ベルト10の接触状態を変化させることが可能となる。
図6(a)は、領域Xを通過しているときのブレード16aの巻き込み部Mにかかる力を説明する模式図であり、図6(b)は、領域Yを通過しているときのブレード16aにかかる力を説明する模式図である。図6(a)に示すように、ブレード16aが領域Xを通過する際に巻き込み部Mでは、ブレード16aが巻き込み部Mの変形を復元しようとする復元力F1xと、中間転写ベルト10の回転により生じる摩擦力F2xとが生じている。そして、復元力F1xと摩擦力F2xとが交差する位置には、巻き込み部Mへのせん断力が集中する応力集中部Pxが形成される。また、図6(b)に示すように、ブレード16aが領域Yを通過する際に巻き込み部Mでは、ブレード16aが巻き込み部Mの変形を復元しようとする復元力F1yと、中間転写ベルト10の回転により生じる摩擦力F2yとが生じている。そして、復元力F1yと摩擦力F2yとが交差する位置には、巻き込み部Mへのせん断力が集中する応力集中部Pyが形成される。
本実施例の構成においては、領域Xと、領域Xよりも動摩擦係数が小さい領域Yと、を有する中間転写ベルト10を用いることによって、ブレード16aの巻き込み部Mの巻き込み量mを変化させることが可能である。その結果、図6(a)、(b)に示すように、領域Yにおいてはブレード16aの応力集中部Pxを解放して新たな応力集中部Pyを形成することで、ブレード16aの応力集中部Pxにおける摩耗を抑制することが可能である。
ここで、本実施例においては、ベルト搬送方向に関して、領域Yの距離はブレードニップ部Nbの距離よりも大きく、且つ、領域Xの距離よりも短く設定している。ベルト搬送方向に関して、領域Yにブレードニップ部Nbの全域が入ることにより、ブレード16aの巻き込み部Mの巻き込み量mを変化させ、ブレード16aの応力集中部Pxを解放することが可能となる。したがって、ベルト搬送方向に関して、領域Yの距離はブレードニップ部Nbの距離よりも長く設定する必要がある。
また、ベルト搬送方向に関して領域Yの距離が領域Xの距離よりも長い場合、中間転写ベルト10において動摩擦係数が低い領域が多くなることで、転写残トナーが回収ニップ部を通過してしまい、クリーニング不良が発生してしまうおそれがある。このようなクリーニング不良は、中間転写ベルト10の動摩擦係数が低く、ブレードニップ部Nbに到達する転写残トナーの量が、ベルト搬送方向と直交するブレード16aの幅方向に関して異なる場合に発生しやすい。具体的には、画像形成時の画像パターンなどによって、ブレード16aの幅方向に関して到達する転写残トナーの量が異なると、局所的に中間転写ベルト10とブレード16aとの間の摩擦力が低下する場合がある。この場合、領域Yの巻き込み量mは小さいことで応力集中部Pyが解放され、ブレード16aの巻き込み部Mが浮いてしまうことでブレードニップ部Nbが局所的に解消されてしまうおそれがある。すると、ブレードニップ部Nbが解消された位置において、転写残トナーのすり抜けによるクリーニング不良が発生するおそれがある。したがって、ベルト搬送方向に関して、領域Yの距離は領域Xの距離よりも短く設定するのが望ましい。
以上説明したように、本実施例の構成によれば、画像形成装置のコストアップやスループットの低下を生じることなく、クリーニング不良の発生を抑制することが可能である。
なお、領域Yのベルト幅方向の幅はブレード16aの幅よりも大きく形成することが望ましい。これは、領域Yの幅がブレードニップ部Nbの幅よりも大きければ、第1切替点を通過する際にブレード16aの全体を動作させて、巻き込み部Mを大きく動かすことができるためである。
また、本実施例の構成では領域Yにおける溝45の間隔K2を10μmとしたが、必ずしも10μm間隔でなくても良い。領域Xと領域Yにおける、ブレード16aと中間転写ベルト10との間の動摩擦係数の差が大きすぎると、ブレード16aが第1切替点及び第2切替点を通過する際に巻き込み部Mにおける巻き込み量mの変化量が大きくなる。この場合、巻き込み量mが変化する途中で転写残トナーのすり抜けが発生しやすくなる恐れがあるため、領域Xと領域Yとの間の動摩擦係数の差は0.3以下であることが望ましい。
また、領域Yにおける溝45の間隔K2は必ずしも溝45ごとに同一の間隔である必要はなく、溝45の延在方向と直交する方向に関して領域Xの溝間隔である20μmの範囲における平均値が、前述の動摩擦係数の差の関係を満たす間隔であれば良い。
[クリーニング性の評価]
次に、画像形成装置100において、本実施例の中間転写ベルト10と比較例の中間転写ベルトに関して、クリーニング性の評価を行った。ここで、比較例としては、溝45を形成しておらず、中間転写ベルト一周に渡って常に一定の巻き込み量が形成される中間転写ベルトを用いた。
クリーニング性の評価としては、レターサイズ用紙(商標Vitality、Xerox社製)を用いて、2枚間欠モードで各色1%の文字画像を形成する耐久評価において、5千枚ごとにクリーニング不良発生を確認するための画像を形成した。なお、評価は、温度15℃、湿度10%の環境下で行った。
前述の耐久評価での5千枚ごとに行うクリーニング不良発生の確認は、以下の方法を用いた。まず、二次転写電源21からの出力をオフ(0V)にした状態でレッドベタ画像(イエロー100%、マゼンタ100%のベタ画像)を形成した後に、二次転写電源21からの出力を適正値に設定して、画像を形成しない5枚の転写材Pを連続通紙する。即ち、二次転写部N2で転写材Pへほとんど転写されずに残ったレッドベタ画像のトナーがブレード16aによって除去できているかを確認することによって、クリーニング不良の発生の有無を確認する。
レッドベタ画像のトナーが中間転写ベルト10から除去できていれば、連続通紙する5枚の転写材Pは実質的に全くの白紙状態で出力される。一方で、レッドベタ画像のトナーが除去できなければ、ブレード16aをすり抜けたトナーが再び二次転写部N2に到達することで、連続通紙する5枚の転写材Pにトナーが転写されてクリーニング不良画像として出力される。以上のようなクリーニング不良の発生の確認を5千枚の転写材Pの通紙毎に行い、10万枚の転写材Pに関して評価を行った。
クリーニング性の評価を行った結果、本実施例の構成は、10万枚までクリーニング不良が発生しなかったが、比較例の構成は5万枚の通紙でクリーニング不良が発生した。
比較例で使用したクリーニングブレードの先端を顕微鏡で観察すると、中間転写ベルト10との摩擦によりウレタンゴムが摩耗して巻き込み部の中間地点付近からクリーニングブレードが摩耗していた。これは、中間転写ベルト10とクリーニングブレードとの間の動摩擦係数が大きいことで、巻き込み部Mにおいてクリーニングブレードの摩耗が発生しやすくなるためである。
以上説明したように、本実施例の構成によれば、領域Xと、領域Xに対して動摩擦係数の低い領域Yと、を有する中間転写ベルト10を用いることで、ブレード16aの巻き込み部Mにおける応力集中部Pxを定期的に解放することができる。その結果、ブレード16aの摩耗を抑制して耐久性を向上しつつ、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
本実施例では、中間転写ベルト10の動摩擦係数を変化させるために、中間転写ベルト10の表層60に対して溝45を形成する加工を行ったが、これに限らない。他の方法として、例えば、ラッピングフィルムなどの研磨部材を用いて中間転写ベルト10の表層60を研磨して研磨強度を変える構成としても良い。また、領域X及び領域Yの何れか一方に溝を形成する加工を行い、他方を研磨する構成としても良く、領域X及び領域Yをそれぞれ粗さの異なるラッピングフィルムを用いて研磨する構成としてもよい。具体的には、中間転写ベルト10の表層60の領域Xを、細やかなラッピングフィルム(Lapika#10000(商品名)、KOVAX社製)で研磨し、領域Yを粗いラッピングフィルム(Lapika#2000(商品名)、KOVAX社製)で研磨する。細やかなラッピングフィルムに比べて粗いラッピングフィルムで研磨した方が、表面粗さが大きく、また、固体潤滑剤の露出面積が増えるため動摩擦係数を小さくすることができる。
また、本実施例では、図3に示すように、領域X及び領域Yにおいてベルト搬送方向に対して平行に溝45を形成したが、これに限らない。溝45は、中間転写ベルト10の移動方向に直交する幅方向に対して交差する方向に沿って延在していればよく、中間転写ベルト10の移動方向に対して角度を有した状態で形成されていても良い。ただし、ブレード16aとの間の動摩擦係数を低減する効果を得るためには、中間転写ベルト10の移動方向に対して溝45が延在する方向がなす角度は、好ましくは45°以下、より好ましくは10°以下に設定するのがよい。
領域Xと領域Yにおける動摩擦係数を変化させる他の方法としては、潤滑粒子を含む塗工液を領域Yにスプレー塗布する方法もある。スプレー塗布部は表面粗さが大きく、また、固体潤滑剤の露出面積が増えるため動摩擦係数を小さくすることができる。
(実施例2)
実施例1においては、中間転写ベルト10の表層60に形成する溝45の間隔K1、K2を調整することで領域Xと領域Yの動摩擦係数を変化させる構成について説明した。これに対し、実施例2においては、第1切替点、および第2切替点の前後で、中間転写ベルト10の表層60に形成する溝45の幅W1、W2を調整することで領域Xと領域Yの動摩擦係数を変化させる構成について説明する。なお、本実施例の構成は、溝45の幅W1、W2を調整する点を除いて実施例1と実質同一であるため、実施例1と共通する構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
図7(a)は、本実施例の領域Xにおける溝45の間隔K1及び幅W1について説明する模式図であり、図7(b)は、本実施例の領域Yにおける溝45の間隔K1及び幅W1について説明する模式図である。図7(a)、(b)に示すように、本実施例においては、領域Xと領域Yの溝45の間隔K1及び間隔K2は変更せずに、領域Yにおける溝45の幅W2を領域Xにおける溝45の幅W1よりも大きく設定している。
より具体的には、実施例1では、領域Xにおける溝45の間隔K1を20μm、領域Yにおける溝45の間隔K2を10μmとしており、この場合、ブレード16aと中間転写ベルト10との接触面積は、領域Xでは95%、領域Yでは90%である。このため、実施例1と同様の動摩擦係数の関係を満たすように、本実施例においては、間隔K1と間隔K2を共に20μmに設定し、領域Xにおける溝45の幅W1を1μm、領域Yにおける溝45の幅W2を2μmに設定した。これにより、実施例1と同様の効果を得ることができた。
なお、本実施例においても実施例1と同様に、溝45の幅W1及び幅W2は、クリーニング性能の観点からトナーの平均粒径の半分程度までの幅が好ましい。これは、溝45の幅W1及び幅W2が広すぎると、トナーが溝45に嵌まってしまった場合にブレードニップ部Nbをすり抜けてしまうことでクリーニング不良が発生するおそれがあるためである。また、溝45の幅W1及び幅W2が狭すぎると、ブレード16aと中間転写ベルト10との間の接触面積が大きくなり過ぎることでブレードニップ部Nbにおける摩擦が大きくなり、ブレード16aの先端の摩耗を促進してしまうおそれがあるためである。したがって、本実施例の構成においても、溝45の幅W1及び幅W2は0.5μm以上3μm以下に設定するのが好ましい。これに加え、本実施例においても実施例1と同様に、領域Xと領域Yとの間の動摩擦係数の差は0.3以下であることが望ましい。
以上、本実施例の構成によれば、実施例1と同様の効果が得られるのに加え、領域Xから領域Y、もしくは領域Yから領域Xへの動摩擦係数の変化が連続的になるように溝45を調整することが可能である。これにより、中間転写ベルト10の移動方向に関して巻き込み部Mを連続的に変化させることができ、ブレード16aの姿勢が変化する際の、転写材トナーのすり抜けや、ブレード16aのメクレをより効果的に抑制することができる。
なお、本実施例においては、領域Xと領域Yの溝45の間隔K1及び間隔K2は変更せずに、領域Yにおける溝45の幅W2を領域Xにおける溝45の幅W1よりも大きく設定する構成について説明したが、これに限らない。領域Xと領域Yとの間の動摩擦係数の差は0.3以下であって、溝45の幅W1及び幅W2が0.5μm以上3μm以下の条件を満たす範囲で、領域Xと領域Yの溝45の間隔K1及び間隔K2を異なる値で適宜設定しても良い。
(その他の実施例)
ここでは、実施例1の画像形成装置100の構成において、ブレード16aの耐久性をより向上させる構成について説明する。なお、以下の説明において実施例1と共通する構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
具体的には、本実施例においては、長期間画像形成を実施しない場合に、領域Yにおいてブレード16aが中間転写ベルト10に当接する状態で、中間転写ベルト10の移動を停止させ、画像形成装置100の動作を停止する。この場合、領域Xにおいてブレード16aが中間転写ベルト10に当接する状態で画像形成装置100の動作を停止させる場合と比べて、巻き込み量mが小さいことからブレード16aの応力集中部Pyにかかる力を小さくすることができる。その結果、ブレード16aのエッジ部における変形をより抑制し、ブレード16aの耐久性を更に向上させることが可能となる。
中間転写ベルト10とブレード16aとが接触する領域が、領域X、領域Yの何れかであるかは、例えば、中間転写ベルト10の位置を検知する検知手段を設けることで判断することが可能である。若しくは、画像形成条件を設定するために感光ドラム1から中間転写ベルト10に転写される検知用トナー像を検知するセンサなどの検知手段を用いて、中間転写ベルト10の位置を検知することで領域X及び領域Yの位置を判断する構成としても良い。