以下、液体噴射装置の実施形態について、図を参照して説明する。液体噴射装置は、例えば、用紙等の媒体に液体の一例であるインクを噴射することによって記録(印刷)を行うプリンターである。
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置11は、略矩形箱状の筐体部12と、筐体部12から突設された収容部13と、媒体Sを載置した状態で移動可能な載置部14と、載置部14を移動させるための搬送部15と、を備えている。媒体Sは用紙に限らず、プラスチックフィルム、板材、硬質のパネル又は段ボール等でもよいし、布やTシャツ等の衣服であってもよい。
なお、本実施形態では、筐体部12から収容部13が突出する方向を後方といい、筐体部12から搬送部15が突出する方向を前方という。そして、筐体部12と収容部13とが並ぶ前後方向に沿って搬送部15が載置部14を移動させる方向を搬送方向Yとして図示する。また、鉛直方向に沿う上下方向Z及び移動方向Yの双方と交差(本実施形態では直交)する方向であって、筐体部12の長手方向となる方向を走査方向Xとして図示する。
筐体部12の前面側には、搬送方向Yに沿う移動に伴って載置部14が筐体部12に出入りすることを許容する開口部16が形成されている。また、筐体部12及び収容部13の内部には、載置部14の搬送方向Yに沿う移動を許容する空間が筐体部12及び収容部13に亘って形成されている。
載置部14は、図1及び図2に実線で示す載置位置と、図1及び図2に二点鎖線で示す印刷開始位置と、の間を搬送方向Yに沿って往復移動する。なお、載置位置とは、筐体部12の外で載置部14の載置面に媒体Sを載置するための位置であり、印刷開始位置とは、印刷のために載置部14を液体噴射部23に向けて移動させる前に一時的に停止させる位置である。そして、載置部14が印刷開始位置にあるとき、載置部14の後端側は収容部13内に配置される。載置部14が移動可能な載置部移動領域は、載置部14に載置された媒体Sに対してノズル27からインクを噴射して着弾させる着弾領域A1(図6)と、既に述べた載置位置及び印刷開始位置と、を含む。
筐体部12内には、走査方向Xに沿って延びるガイド軸21が設けられている。ガイド軸21には、キャリッジ22が走査方向Xに移動可能な状態で支持されている。そして、キャリッジ22は、図示しない駆動源の駆動に伴って、走査方向Xに沿って往復移動する。
キャリッジ22には、筐体部12内において載置部14に載置された媒体Sに対してインク等の液体を噴射可能な液体噴射部23が搭載されている。そして、液体噴射部23は、載置部14とともに印刷開始位置から前方に向けて移動する媒体Sに対して液体を噴射することで、媒体Sに印刷を行う。液体噴射部23には、図5に示すように、アクチュエーターの駆動によって液体を噴射可能なノズル27が形成されたノズル面27aを有する液体噴射ヘッド24が設けられている。液体噴射ヘッド24を含む液体噴射部23はキャリッジ22の移動に伴い、走査方向Xに往復移動可能とされる。
キャリッジ22は、図5及び図6に示すように、ノズル27のノズル面27aが保湿キャップ105(後述)にキャッピングされている状態において、液体受容部108(後述)の液体を受容する開口及び吸引用キャップ101(後述)に対向する対向面22aを有している。キャリッジ22の対向面22aは、図5に示すように、上下方向Zにおいてキャリッジの底面22bとノズル面27aとの間となる位置に形成されており、ノズル27のノズル面27aが保湿キャップ105にキャッピングされている状態において、載置部14が移動可能な領域から離れている。なお、キャリッジ22の対向面22aは、上下方向Zにおいてキャリッジ22の底面22bとノズル面27aとの間となる位置であって、キャリッジ22の底面22bよりもノズル面27aに近い位置(例えば上下方向Zにおいてキャリッジ22の対向面22aとノズル面27aとの距離が0.1mm~0.5mmとなる位置)に形成されていることが好ましい。
開口部16の上方には、液体噴射装置11の動作に関する命令を入力する入力パネル18が取り付けられている。また、入力パネル18の後方には、ユーザーがメンテナンスの際に筐体部12内にアクセスするための開口部を覆う上カバー19が回動可能に設けられている。上カバー19は、基端側に設けられた図示しない回動軸を中心に回動することで、ユーザーが筐体部12内にアクセス可能な図1に示す開位置と、図2に示す閉位置と、に配置される。
筐体部12の前面側において走査方向Xで開口部16の両側となる位置には、開閉カバー17が回動可能に取り付けられている。開閉カバー17は、その下端側に設けられた図示しない回動軸を中心に上端側が揺動するように回動することで、図1に示す閉位置と、図2に示す開位置と、に配置される。
図2に示すように、筐体部12には、鉛直方向及び搬送方向Yの双方と交差する走査方向Xにおいて載置部14と異なる位置であって、開閉カバー17の後方となる位置に、装着部25が収容されている。装着部25には、液体噴射部23に供給する液体を収容可能な液体収容体30とアダプター40とが交換可能かつ着脱可能に装着される。
装着部25は、開閉カバー17が開位置に配置されると視認可能な状態になる。なお、本実施形態において、装着部25は筐体部12の走査方向Xにおける両側に設けられるが、筐体部12の走査方向Xにおける一方側のみに装着部25を設けてもよい。また、装着部25に装着可能な液体収容体30及びアダプター40の数は、任意に変更することができる。
装着部25は前方に向けて開口している。そして、液体収容体30及びアダプター40は、装着部25の開口から挿入された後、後方に向けて移動することで装着部25に装着される。また、装着部25に装着された液体収容体30及びアダプター40は、装着部25から前方に向けて移動することで装着部25から取り外される。
装着部25は、筐体部12の奥側となる後部に接続部26を備えている。液体収容体30は、装着部25に装着されるときに接続部26に接続されて、収容した液体を液体噴射部23に向けて導出可能な導出部34を有している。また、アダプター40は、装着部25に装着されるときに接続部26に接続されて、液体を液体噴射部23に向けて導出可能な導出部44を有している。
図3に示すように、アダプター40は、略矩形箱状のケース部材41と、ケース部材41内において液体を貯留可能な液体貯留部43と、液体貯留部43に液体を注入可能な注入部42と、を有する。したがって、アダプター40の液体貯留部43に貯留された液体が少なくなった場合には、注入部42を通じて液体貯留部43に液体を注入することで、液体を補充することができる。
アダプター40の注入部42は、ケース部材41の上面から鉛直方向上方に向けて突出するように設けられているとともに、液体貯留部43に連通している。そして、装着部25に装着されたアダプター40の注入部42は、鉛直方向において、載置部14より下側に配置される。
液体収容体30は、略矩形箱状のケース部材31と、ケース部材31内において液体を収容可能な液体収容部33と、を備えるが、液体収容部33に液体を注入するための注入部は備えない。従って、装着部25に装着された液体収容体30は、液体収容部33に収容した液体がなくなった場合には、液体を収容した別の液体収容体30に交換される。なお、液体収容体30のケース部材31には、装着部25に装着された場合に前側となる部分の上部に、装着部25に対する着脱操作を行う際に指を掛けることができる指掛け凹部35が形成されている(図1を併せて参照)。
図1及び図2に示すように、装着部25には、筐体部12の奥行方向となる搬送方向Yにおける長さが異なる液体収容体30及びアダプター40が交換可能に装着される。図2に示すように、装着部25には、例えば搬送方向Yにおける長さが異なる2種類の液体収容体30(30M,30S)と、搬送方向Yにおける長さが異なる2種類のアダプター40(40L,40M)と、が装着される。なお、液体収容体30Mとアダプター40Mとは搬送方向Yにおける長さがほぼ等しく、液体収容体30Sは液体収容体30Mよりも搬送方向Yにおける長さが短く、アダプター40Lはアダプター40Mよりも搬送方向Yにおける長さが長いものとする。
液体収容体30は、導出部34が装着部25の接続部26に接続された場合に、液体噴射部23に液体を供給可能な状態になる。また、アダプター40は、導出部44が装着部25の接続部26に接続された場合に、液体噴射部23に液体を供給可能な状態になる。そのため、液体収容体30及びアダプター40は、装着部25に装着されるときには、いずれのサイズであっても、装着部25の奥まで挿入される。
よって、液体収容体30Sと、液体収容体30M及びアダプター40Mと、アダプター40Lと、が装着部25に装着されると、それぞれの前端位置がずれた状態になる。具体的には、液体収容体30M及びアダプター40Mは前端位置が装着部25の開口の内側に位置する態様となり、液体収容体30Sは前端位置が液体収容体30M及びアダプター40Mよりも後方(装着部25の奥側)に位置する態様となる。また、アダプター40Lは前端位置が装着部25の開口よりも前方に突出する態様となる。
すなわち、アダプター40Lは、装着部25に装着された場合に筐体部12の外側となる前方(搬送方向Yに沿う方向)に向けて突出する突出部48を有している。そして、アダプター40Lの注入部42は、突出部48の上部に、鉛直方向上方に向けて突出するように配置されている。なお、アダプター40Lを装着部25に装着すると、注入部42及び突出部48が筐体部12の外に露出した状態になるので、開閉カバー17を開位置に配置した状態で印刷を行うことになる。
載置部14が筐体部12の外に露出する載置位置にあるときに、装着部25に装着されたアダプター40Lの突出部48及び注入部42は、搬送方向Yにおいて載置部14よりも筐体部12に近い位置であって、載置部14の移動領域の外側となる位置に配置される。
筐体部12内において装着部25の開口付近における上部には、装着部25に対する液体収容体30の着脱操作を行うための操作空間SAが設けられている。すなわち、操作空間SAは、例えばユーザーが装着部25に装着された液体収容体30(30M,30S)を取り外すために、液体収容体30の指掛け凹部35に上方から指を掛ける際に、ユーザーの手を挿入するためのスペースとなる。
そして、アダプター40Mが装着部25に装着された場合には、アダプター40Mの注入部42は操作空間SAに配置される。すなわち、アダプター40Mはケース部材41から上方に突設された注入部42を有するが、筐体部12内には注入部42を収容可能な操作空間SAがあるため、注入部42と装着部25との干渉が回避される。
液体噴射装置11は、図4~図6に示すように、液体噴射ヘッド24に関するメンテナンス動作を行うメンテナンスシステム100を備えている。メンテナンスシステム100は、メンテナンス動作としての吸引クリーニング動作を行う吸引用キャップ101及び吸引ポンプ102からなるメンテナンスユニット(メンテナンス部)と、ワイピング動作を行うワイピングユニット(払拭部)103と、フラッシングにより生じた廃液を受容するフラッシングユニット104と、キャッピングを行う保湿キャップ105と、駆動源106と、を備える。なお、フラッシングとは、ノズル27の目詰まりを予防又は解消する目的で、液体噴射ヘッド24がノズル27から印刷とは無関係の液滴を強制的に噴射(排出)するメンテナンス動作のことをいう。駆動源106は、例えば、メンテナンスシステム100の各構成部材を駆動させるための1つ又は複数のモーターである。
吸引用キャップ101(メンテナンスキャップ)及び保湿キャップ105は、液体噴射ヘッド24に対して相対移動可能に構成され、液体噴射ヘッド24に近づく方向に相対移動したときに、ノズル27が開口する閉空間を形成するキャッピングを行う。そして、保湿キャップ105は、キャッピングを行うことによってノズル27の乾燥を抑制する。
なお、保湿キャップ105は、保湿キャップ105を保持するホルダーを、ノズル面27aと接触するキャッピング位置と、キャッピング位置より下方でかつ走査方向において着弾領域A1側となる退避位置と、の間でスライド可能に支持しておき、ホルダーの着弾領域A1と反対側に設けた突起にキャリッジ22の側面が接触した状態でキャリッジ22が走査方向Xに移動することによりキャッピング位置と退避位置との間を移動するようにしてもよい。
ワイピングユニット103は、円弧状のワイパー103aを2個有しており、これらワイパー103aが図6の矢印方向に退避位置から移動することにより、ワイパー103a1個につき2つのノズル列NL(例えばI列とJ列)を払拭する(すなわちワイピングユニット103の2個のワイパー103aにより4つのノズル列を払拭する)ことができるようになっている。
液体噴射装置11が印刷を行わない時、液体噴射ヘッド24は保湿キャップ105と対応する位置に移動して、保湿キャップ105にキャッピングされた状態で待機する。そのため、走査方向Xにおいて保湿キャップ105がある位置を液体噴射ヘッド24のホームポジションという。
吸引用キャップ101がキャッピングをした状態で吸引ポンプ102が駆動することにより、吸引用キャップ101が液体噴射ヘッド24との間に囲み形成する閉空間が負圧となり、その負圧によってノズル27から液体が吸引排出される吸引クリーニングが実行される。吸引クリーニングによってノズル27から排出された液体は、廃液として廃液回収体110に収容される。
メンテナンスシステム100は、ノズル27に対する吸引により液体噴射ヘッド24から排出された液体を廃液として回収するヘッド吸引流路107を有している。ヘッド吸引流路107は、例えば吸引用キャップ101に連通する弾性変形可能なチューブからなり、吸引ポンプ102は、例えばチューブであるヘッド吸引流路107の途中に設けられたチューブポンプである。
液体噴射ヘッド24においては、搬送方向Yに所定の間隔で並ぶ複数のノズル27がノズル列NLを形成するように開口している。本実施形態においては、色の異なる2つのノズル列NL(例えば図6に示すように、A列とB列の2つ、C列とD列の2つ、……)を走査方向Xに並べて一組としている。また、図6に示すように2つ一組のノズル列NLを搬送方向Yに沿って配置することにより、一度の走査で印刷可能な幅はLとなる。
A列、B列、C列、D列、E列、F列、G列、H列、I列、J列に各々対応するノズル列NLの色としては、例えば、LM(ライトマゼンタ)、C(シアン)、LGY(ライトグレー)、GY(グレー)、PBK(フォトブラック)、MBK(マットブラック)、DGY(ダークグレー)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、LC(ライトシアン)を採用することができる。また、上記の配色のうち、F列のMBKをWH(ホワイト)に変更してもよい。また、上記の10色仕様の配色を、5色仕様に変更する(例えば、A列をCに変更し、C列及びD列をBKに変更し、E列及びF列をWHに変更し、G列及びH列をYに変更し、I列及びJ列をMに変更する)こともできる。
媒体SとしてTシャツを採用する場合には、白インクを液体収容体30又はアダプター40に収容しておき、A列からJ列の何れか(例えばF列)から白インクを吐出して下地印刷を行うことができる。なお、下地印刷が必要な場合は、後述する操作部71(図8)を操作して下地印刷を指示し、下地印刷が行われたTシャツを載置部14から取り外し定着処理を行った後、再度Tシャツを載置部14にセットした後、操作部71を操作して印刷指示を行うようにする。
メンテナンスシステム100は、二色のインクに対応する4つのノズル列NL毎に吸引クリーニングを行うように、走査方向X及び搬送方向Yにおける位置が異なる2つの吸引用キャップ101を有する。また、2つの吸引用キャップ101は、その枠状の先端が液体噴射ヘッド24に接触することにより、ノズル27が開口する閉空間を形成する。
フラッシングユニット104は、フラッシングのために液体噴射ヘッド24が廃液として噴射した液体を受容する有底箱状の液体受容部108と、液体受容部108の開口を覆うための蓋部材109と、を備える。液体受容部108は、二色のインクに対応する4つのノズル列NL毎に行われたフラッシングで排出された液滴を受容することができるように、4つのノズル列NLに対応する大きさに形成される。
蓋部材109は、図示しない駆動機構により、液体受容部108の開口を覆う閉位置と、液体受容部108の開口を露出させる開位置と、の間で移動する。フラッシングを行わない時には、蓋部材109が閉位置に移動することにより、液体受容部108において、受容した廃液の乾燥や固化を抑制する。
メンテナンスシステム100は、液体噴射ヘッド24がフラッシングで廃液として噴射した液体を受容する液体受容部108に対する吸引により廃液を回収する受容部吸引流路111を有する。受容部吸引流路111は、例えばチューブポンプである吸引ポンプ102から延びる弾性変形可能なチューブである。
吸引ポンプ102が駆動すると、液体受容部108が受容した液体が受容部吸引流路111を通じて廃液回収体110に収容される。すなわち、吸引ポンプ102が駆動すると、吸引クリーニングが実行されるのと同時に、液体受容部108に対する吸引により廃液が回収される。液体受容部108に対する吸引を行う際には、蓋部材109を開位置に配置して、廃液の流動を妨げないようにすることが好ましい。なお、廃液回収体110を、載置部14を移動させる搬送部15や装着状態の液体収容体30やアダプター40より上方となる位置に配置してもよい。
ここで、液体噴射ヘッド24が移動可能なヘッド移動領域は、図6に示すように、載置部14の載置面に載置された媒体Sに対してノズル27からインク(液体)を噴射して着弾させる着弾領域A1と、フラッシングユニット104の液体受容部108が設けられた受容領域A2と、メンテナンスキャップ(吸引用キャップ101)が設けられたメンテナンス領域A3と、ワイピングユニット103が設けられた払拭領域A4と、保湿キャップ105が設けられた待機領域A5と、を含んでいる。なお、本実施形態では、載置部14の載置面の大きさが着弾領域A1の最大寸法となっている。
そして、図6に示すように、受容領域A2は、走査方向Xにおいてメンテナンス領域A3よりも着弾領域A1から遠く離れた位置に配置されている。払拭領域A4は、走査方向Xにおいてメンテナンス領域A3と受容領域A2との間の位置に配置されている。その結果、受容領域A2は、走査方向Xにおいて払拭領域A4よりも着弾領域A1から遠く離れた位置に配置されている。待機領域A5は、走査方向Xにおいて受容領域A2よりも着弾領域A1から遠く離れた位置に配置されている。
また、受容領域A2は、着弾領域A1の受容領域側端部A12と、受容領域A2の着弾領域側端部A21と、の間の走査方向における距離D1が、ノズル面27aに形成された複数のノズル27のうち走査方向両端位置に配置されたノズル27間の距離D2より長くなる(D1>D2となる)ように、配置されている。このため、ノズル列NLのうち最も左側にあるA列が着弾領域A1の受容領域側端部A12に達したとき、ノズル列NLのうち最も右側にあるJ列が受容領域A2内にない。すなわち、液体噴射ヘッド24が受容領域A2から着弾領域A1へ移動する際に、最も左側のA列が印刷制御を開始したとき、最も右側のJ列は既にフラッシングを終了している。また、液体噴射ヘッド24が着弾領域A1から受容領域A2へ移動する際に、最も左側のA列が印刷制御を終了したとき、最も右側のJ列はまだフラッシングを開始していない。
よって、液体噴射ヘッド24を制御する制御部70(図8)は、1つの液体噴射ヘッド24のノズル列NLについて同時期に異なる制御を行わなくて済む。すなわち、着弾領域A1と受容領域A2とが、両者の間に配置されるメンテナンス領域A3及び払拭領域A4の分だけ離れて位置するので、制御部70は、1つの液体噴射ヘッド24に対して一部のノズル列NLに対する印刷制御と、他のノズル列NLに対するフラッシング制御と、を同時期に混在させて行う必要がない。
液体噴射装置11の液体噴射ヘッド24は、図7に示すように、流路形成部材60と、振動板61と、流路形成部材62と、ノズルプレート63と、を備えている。また、液体噴射ヘッド24には、流路形成部材60及び振動板61によって共通液室64及び収容室65が形成され、振動板61、流路形成部材62及びノズルプレート63によって個別液室(圧力室)66が形成されている。さらに、液体噴射ヘッド24において、流路形成部材60には供給孔60aが形成され、振動板61には連通孔61aが形成され、ノズルプレート63には上述したノズル27が形成されている。
供給孔60aには、上流端が液体収容体30(アダプター40)に接続された液体供給流路60bの下流端が接続されている。このため、共通液室64には、液体供給流路60bを介して、液体収容体30(アダプター40)に収容される液体が供給される。また、液体供給流路60bの途中には、インクの流れを許容する開弁状態とインクの流れを制限する閉弁状態とに切り替わる開閉弁60cが設けられている。
また、共通液室64は、複数の連通孔61aを介して、複数の個別液室66に連通している。このため、複数の個別液室66には、共通液室64から複数の連通孔61aを介して、インクが供給される。個別液室66は、振動板61を介して収容室65と区画されている。収容室65には、振動板61を振動させる圧電素子等のアクチュエーター67が配設されている。アクチュエーター67は、入力される駆動信号に基づいて伸長したり収縮したりすることで、個別液室66の容積が変化するように振動板61を振動させる。
そして、液体噴射ヘッド24において、アクチュエーター67の駆動により、個別液室66の容積が増大されると共通液室64から個別液室66にインクが供給される。また、アクチュエーター67の駆動(アクチュエーター67が圧電素子の場合、圧電素子への電圧の印加を停止する)により、個別液室66の容積が縮小されると個別液室66内のインクがノズル27からインク滴として吐出される。こうして、液体噴射ヘッド24は、媒体Sに対してノズル27からインク滴を吐出することで、媒体Sに文字や画像を形成する記録処理を実行する。
メンテナンスシステム100のメンテナンスユニット(メンテナンス部)は、図7に示すように、液体噴射ヘッド24のノズル面27aに当接可能な吸引用キャップ101と、吸引用キャップ101を昇降させる昇降機構101aと、吸引用キャップ101内を吸引する吸引ポンプ102と、吸引用キャップ101及び吸引ポンプ102を接続するヘッド吸引流路107と、を備えている。昇降機構101aは、例えば、モーターと、モーターの回転運動を直線運動に変換する機構と、によって構成することができる。そして、メンテナンスユニットは、インクの増粘又は気泡の混入等の要因によってインクを正常に吐出できなくなったノズル(以下、「異常ノズル」とも言う。)の吐出異常を回復させるために、メンテナンス動作の一例としてのクリーニング動作を実行する。
メンテナンスユニットにおけるクリーニング動作では、昇降機構101aによって吸引用キャップ101を上昇させることで、ノズル面27aに当接した吸引用キャップ101とノズル面27aとによってノズル27の開口が面する閉空間を形成する。続いて、吸引ポンプ102が閉空間の内部を吸引することで、ノズル27を介して、液体噴射ヘッド24内のインクを上記閉空間に強制的に排出させる。こうして、異常ノズルからインクとともに気泡を排出したり、増粘したインクを排出したりすることで、異常ノズルの吐出異常が回復させる。
なお、以降の説明では、液体噴射ヘッド24のノズル27のうち、インクの吐出異常が起きていないノズル27を「正常ノズル」とも言う。すなわち、異常ノズルは、インクの吐出異常が起きているノズル27であって、正常ノズルでないノズル27と言うこともできる。
次に、図8を参照して、本実施形態に係る液体噴射装置11の電気的構成について説明する。
図8に示すように、液体噴射装置11は、液体噴射装置11における各種の動作を制御する制御部70を備えている。また、液体噴射装置11は、液体噴射装置11に関する各種の設定を変更したり、液体噴射装置11に対して記録(印刷)の指示を行ったりする際にユーザーによって操作される操作部71と、液体噴射装置11に関する各種の情報を表示する表示部72と、を備えている。操作部71は、液体噴射装置11の外面に配置される物理キーであればよく、例えば入力パネル18に設けられた各種スイッチやタッチパネル等を採用することができる。表示部72としては、液体噴射装置11の外面(例えば入力パネル18)に配置される液晶ディスプレイ等を採用することができる。
制御部70の入力側のインターフェースには、アクチュエーター67及び操作部71が接続され、制御部70の出力側のインターフェースには、開閉弁60c、アクチュエーター67、昇降機構101a、吸引ポンプ102及び表示部72が接続されている。
そして、制御部70は、インクの吐出に関わる構成の駆動を制御することで記録ジョブに基づいて記録処理(印刷処理)を実行させたり、メンテナンスユニットの駆動を制御することでクリーニング動作を実行させたりする。なお、記録処理を実行する場合には、制御部70は、キャリッジ22を走査方向Xに移動させつつ液体噴射ヘッド24から媒体Sに向けてインクを吐出させる動作と、媒体Sを搬送方向Yに搬送する動作と、を交互に行わせる。
また、制御部70は、吸引ポンプ102の駆動態様等を変更することで、液体噴射ヘッド24のノズル27から排出されるインク量が異なる複数のクリーニング動作を実行させる。具体的には、制御部70は、クリーニング動作を行うにあたって、吸引ポンプ102を比較的弱く駆動する(吸引ポンプ102がチューブポンプである場合、ローターの回転速度を遅くしたり、回転数を少なくしたりする)ことでノズル27から排出されるインク量が少量となる「弱クリーニング動作」を実行させる。また、制御部70は、クリーニング動作を行うにあたって、吸引ポンプ102を比較的強く駆動する(吸引ポンプ102がチューブポンプである場合、「弱クリーニング動作」よりローターの回転速度を速くしたり、回転数を多くしたりする)ことでノズル27から排出されるインク量が中程度となる「中クリーニング動作」を実行させる。また、制御部70は、クリーニング動作において、吸引ポンプ102を駆動している状態で開閉弁60cを閉弁状態として閉空間内に負圧を蓄積させた後に開閉弁60cを開弁状態に切り替えることで、ノズル27から排出されるインク量が多量となる「強クリーニング動作」を実行させる。なお、ノズル27から排出されるインク量が多いクリーニング動作ほど、ノズル27の吐出異常を回復させる性能が高くなる。
また、制御部70は、載置部14が着弾領域A1から離れた位置(例えば図1及び図2に示す載置位置)にある状態で、記録処理を実行する前に、メンテナンスユニットにクリーニング動作を行わせる。また、制御部70は、後に詳述するように、記録処理の実行中にクリーニング動作を行わせることもできる。
また、制御部70は、アクチュエーター67の駆動態様に基づいて、ノズル27における吐出異常(噴射異常)を検査する。かかる検査は、検査対象となるノズル27(ノズル列NL)が液体受容部108に対向した状態で行われる。なお、以降の説明では、ノズル27の吐出異常の有無を検査することを「ノズルチェック」とも言う。特に、制御部70は、載置部14に媒体Sが載置された後、噴射異常の検出を行う。本実施形態における制御部70は、操作部71を介してユーザーによる媒体載置完了の入力操作があった場合に、載置部14に媒体Sが載置されたものと判定して、噴射異常の検出を行うようにしている。
制御部70は、ノズルチェックを行う場合に、アクチュエーター67に対してノズルチェック用の駆動信号を出力する。すると、個別液室66の壁部の一部を構成する振動板61が、駆動信号に応じて変位した後に、個別液室66内のインクの状態に応じて振動(残留振動)する。その後、制御部70は、振動板61の残留振動に応じて、アクチュエーター67から出力される電気信号を残留振動情報として取得する。
なお、ノズルチェック用の駆動信号とは、個別液室66の容積を変化させる駆動信号であればよい。例えば、駆動信号は、ノズル27からインクが吐出される程度に振動板61を振動させる駆動信号でもよいし、ノズル27からインクが吐出されない程度に振動板61を振動させる駆動信号でもよい。
図9には、アクチュエーター67が制御部70に出力する残留振動情報の一例を示している。図9に示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はアクチュエーター67から出力される電気信号の電圧値を示している。図9に示すように、ノズル27から正常にインクを吐出できる状態では、実線で示す基準信号Aが得られたとする。この基準信号Aに対し、例えば、個別液室66内のインクに気泡が発生して吐出異常が起きた場合には、一点鎖線で示す第1吐出不良信号Bのように信号の周期が短くなる。一方、例えば、個別液室66内のインクが増粘して吐出異常が起きた場合には、破線で示す第2吐出不良信号Cのように信号の周期が長くなる。
そこで、本実施形態では、制御部70が第1吐出不良信号Bの半周期の時間t1から第2吐出不良信号Cの半周期の時間t2までの期間を、ノズル27からのインクの吐出状態が不良か否かを判断するための閾値時間Tt(t1<Tt<t2)としている。すなわち、制御部70は、取得した電気信号の半周期の時間が、閾値時間Ttの範囲内(t1よりも大きく且つt2未満)であればノズル27に吐出異常が起きていないと判断する。一方、制御部70は、取得した電気信号の半周期の時間が、閾値時間Ttの範囲外(t1以下もしくはt2以上)であればノズル27に吐出異常が起きていると判断する。なお、閾値時間Ttは、個別液室66のサイズや形状、インクの種類によっても異なるため、液体噴射装置11毎に適切な値が設定されることが好ましい。
こうして、本実施形態において、アクチュエーター67は、ノズル27からインクを吐出させる機能を有するとともに、ノズル27における噴射(吐出)異常を検出する機能を有する。この点で、アクチュエーター67は、「噴射異常検出部」の一例に相当する。
また、制御部70は、異常ノズルが発生している場合には、その異常ノズルから吐出されるべきインクを、正常ノズルから吐出するインクで補って記録処理を実行する補完処理を実行可能としている。ここで、補完処理における補完方法には、以下に示すものがある。
記録処理を実行する場合における単位搬送量を搬送方向Yにおけるノズル列NLの長さ未満(例えば、半分)とする場合には、媒体S上の同一領域に対して異なるノズル27からインクを吐出することが可能となる。言い換えれば、媒体S上の同一領域に対して、異なるパスで異なるノズル27からインクを吐出することが可能となる。そこで、第1の補完方法として、異常ノズルが発生した場合には、その異常ノズルから吐出すべきドットを他のパスで他のノズル27から吐出する方法がある。
また、第2の補完方法として、異常ノズルで記録する画像データを、所定のアルゴリズムに従って、異常ノズルの搬送方向Yにおける上下流に隣接する他のノズル27(正常ノズル)に振り分ける方法がある。この方法によれば、異常ノズルからのインクの不吐出によって記録されない画像が、他のノズル27を用いて記録される。
また、第3の補完方法として、異常ノズルの搬送方向Yの上流又は下流に隣接する他のノズル27について、画像データの濃度値を増加させる方法がある。この方法によれば、異常ノズルの搬送方向Yの上流又は下流に隣接する正常ノズルによって形成される画像の濃度を高め、インクを通常より大きく滲ませることで画像の欠落が補完される。
さて、本実施形態において、制御部70は、記録処理の実行中に定期的にノズルチェックを行う。そして、制御部70は、記録処理の実行中に実行したノズルチェックにおいて、異常ノズルが検出された場合であっても、その異常ノズルの数(以下、「異常ノズル数Na」とも言う。)が第1許容ノズル数N1(許容ノズル数)以下である場合には記録処理を継続する。一方、制御部70は、異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多い場合には、原則的に、記録処理を中断してクリーニング動作を実行させる。なお、第1許容ノズル数N1は、「2」以上であって液体噴射ヘッド24が有するノズル数未満の範囲で設定可能とされる。
ところで、吐出異常が起きた異常ノズルが放置されると、異常ノズル内の乾燥が進む等して、吐出異常が悪化することによって、クリーニング動作を実行しても異常ノズルの吐出異常の回復が困難になることがある。そこで、制御部70は、異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1以下であっても、異常ノズルが起きた状態での経過時間に応じて加算される加算値Vaが、許容加算値Vbよりも大きなノズル27がある場合には、クリーニング動作を実行させることとした。
なお、加算値Vaは、異常ノズル毎に、吐出異常が発生してからの経過時間が長いほど大きくなるように演算される。このため、吐出異常の起きたタイミングが異なる複数の異常ノズルがある場合には、異常ノズル毎に異なる値の加算値Vaが演算される。さらに、制御部70は、吐出異常が起きたノズル27(異常ノズル)を特定する情報と、そのノズル27において吐出異常が起きたタイミングに関する情報と、を記憶することとなる。
また、液体噴射ヘッド24の周囲温度が高い場合には、その周囲温度が低い場合よりも、異常ノズル内の乾燥が進みやすく、吐出異常が悪化しやすい。このため、液体噴射ヘッド24の周囲温度が高い場合には、その周囲温度が低い場合よりも短期間で、クリーニング動作を実行したときに異常ノズルの吐出異常の回復が困難になりやすい。そこで、制御部70は、液体噴射ヘッド24の周囲温度が高い場合には、その周囲温度が低い場合よりも大きくなるように加算値Vaを演算することとした。
こうして、本実施形態によれば、予め実験等により、許容加算値Vbを適切な値に設定したり、加算値Vaを演算する際における液体噴射ヘッド24の周囲温度の影響度を設定したりすることで、異常ノズルのクリーニング動作が実行されないまま時間が経過することに伴って、異常ノズルの吐出異常の回復が困難になることが抑制される。
また、制御部70は、異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多くなることで、クリーニング動作を実行した場合には、そのクリーニング動作の実行後にノズルチェックを行う。そして、制御部70は、ノズルチェックで検出される異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1未満の範囲で設定される第2許容ノズル数N2以下である場合には、中断していた記録処理を再開させることとした。一方、制御部70は、異常ノズル数Naが第2許容ノズル数N2よりも多い場合には、記録処理を再開することなく中止することとした。こうして、クリーニング動作を実行しても異常ノズル数Naが減少傾向にない場合、すなわち、液体噴射ヘッド24の液滴吐出性能の回復が見込めない場合には、記録処理が再開されなくなる。
また、本実施形態の制御部70は、記録ジョブに基づく記録を行う際の各種の処理条件の設定変更が可能とされている。すなわち、制御部70は、表示部72に各種の処理条件の設定画面を表示させるとともに、操作部71を介したユーザーからの入力に基づいて設定の変更を受け付ける。なお、ここでいう処理条件の設定とは、第1許容ノズル数N1、第2許容ノズル数N2、記録処理中に異常ノズルが発生した場合の処理内容等である。その結果、本実施形態に係る液体噴射装置11は、異常ノズルが発生したときの液体噴射装置11がユーザーの所望の動作を取るようにできる。
例えば、Tシャツへの下地印刷(通常はベタ印刷)に使用される白インクのノズル列NL(例えばF列)は、数ノズル吐出されない場合も目立たないため、メンテナンス動作を行うかどうかを決定するための閾値(許容ノズル数)を、他の色のノズル列NLより多くする設定が可能である。また、ノズル状態の検査をするかどうかを色毎にON/OFFすることが可能であり、全色OFFにして操作部71を操作し、載置台14の載置面にセットした透明シート等にノズルチェック用のパターンを印刷させ、抜けノズルがある場合は必要に応じてマニュアルクリーニングを実行させることも可能である。こうした点で、本実施形態では、操作部71及び表示部72を含んで「設定変更部」の一例が構成されている。
また、制御部70は、印刷データに基づいて、インク吐出数と1吐出当たりのインク量からインク消費量を計算する。この際、制御部70は、ノズルの噴射異常の検査結果を考慮する(例えば、印刷データに基づくインクの吐出のうち抜けノズルによる吐出分は実際に消費されていないのでカウントしないようにする)ことができる。
また、制御部70は、液体噴射ヘッド24をメンテナンス領域A3に移動させて吸引用キャップ101にノズル27から液体を排出させる工程と、液体噴射ヘッド24を払拭領域A4に移動させてワイピングユニット103でノズル面27aを払拭させる工程と、液体噴射ヘッド24を受容領域A2に移動させて液体受容部108にノズル27から液体を噴射させる工程と、を含む排出メンテナンスを実行することができる。このようにすると、排出メンテナンスを実行する際の液体噴射ヘッド24の走査方向Xにおける移動を、一方の向き(液体噴射ヘッド24が着弾領域A1から受容領域A2へと移動する向き)で行うことができる。また、制御部70は、載置部14が載置位置にある状態で排出メンテナンスを実行することもできる。このようにすると、排出メンテナンスにおいて液体受容部108に向かって液体を噴射(フラッシング)した時のミストや噴射液滴の飛沫によって載置部14や載置部14上の媒体Sが汚染されることを抑制することができる。
次に、図10に示すフローチャートを参照して、液体噴射装置11の起動時に制御部70が実行する処理について説明する。
図10に示すように、制御部70は、液体噴射装置11が記録処理を実行するにあたっての各種の条件設定を行うための画面を表示部72に表示させて、ユーザーからの処理条件の設定を受け付ける(ステップS11)。このステップS11では、制御部70は、以降のステップS12~S15でセットされる各種のフラグ及び変数の情報を受け付ける。
続いて、制御部70は、ステップS11で受け付けた内容に基づいて、記録優先フラグF1をセットする(ステップS12)。記録優先フラグF1は、第1許容ノズル数N1よりも多くの異常ノズルが発生したときに、原則的にクリーニング動作を実行するか、例外的に記録処理を継続するかを選択するためのフラグである。記録優先フラグF1は、記録処理を優先する場合にオンにされ、クリーニング動作を優先する場合にオフにされる。
そして、制御部70は、ステップS11で受け付けた内容に基づいて、補完記録フラグF2をセットする(ステップS13)。補完記録フラグF2とは、異常ノズルが発生した場合に、補完処理により記録処理を継続するか、原則的にクリーニング動作を実行するかを選択するためのフラグである。補完記録フラグF2は、補完処理により記録処理を継続することを優先する場合にはオンにされ、クリーニング動作を優先する場合にはオフにされる。
続いて、制御部70は、ステップS11で受け付けた内容に基づいて、記録処理の実行中における許容ノズル数である第1許容ノズル数N1をセットし(ステップS14)、クリーニング動作後の許容ノズル数である第2許容ノズル数N2をセットする(ステップS15)。
そして、制御部70は、記録ジョブが投入されるまで待機し(ステップS16)、記録ジョブが投入されるとその記録ジョブを実行する(ステップS17)。その後、制御部70は、本処理を一旦終了する。なお、記録ジョブの実行中に新たな記録ジョブが投入された場合には、制御部70は、先の記録ジョブの実行後に新たな記録ジョブを実行する。この場合、制御部70は、ステップS11~ステップS15の処理を再度実行してもよい。
次に、図11に示すフローチャートを参照して、記録ジョブの実行中にクリーニング動作の要否を判断するために、制御部70が実行する処理の流れについて説明する。本処理は、予め設定された制御サイクル毎に実行される処理である。
図11に示すように、制御部70は、ノズルチェックを行い(ステップS21)、異常ノズルが存在しているか否かを判定する(ステップS22)。異常ノズルが存在していない場合(ステップS22:NO)、制御部70は、本処理を一旦終了する。一方、異常ノズルが存在している場合(ステップS22:YES)、制御部70は、異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多いか否かを判定する(ステップS23)。異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多い場合(ステップS23:YES)、制御部70は、記録優先フラグF1がオンであるか否かを判定する(ステップS24)。記録優先フラグF1がオフである場合(ステップS24:NO)、制御部70は、記録処理を中断し(ステップS25)、記録処理を中断した旨を表示部72に表示させる(ステップS26)。その後、制御部70は、本処理を一旦終了する。
すなわち、ステップS24が否定判定される場合とは、クリーニング動作が実行されることなく、記録処理が中止される。このように記録処理を中止する理由としては、1つの記録ジョブに基づく記録処理の実行中に、クリーニング動作が実行されると、クリーニング動作の実行前までに記録が行われた領域と、クリーニング動作の実行後に記録が行われた領域との間に境界(ムラ)が生じ、画質が低下するおそれがあるためである。したがって、画質を重視する場合には記録優先フラグF1をオフにすることが好ましく、記録速度を重視する場合には記録優先フラグF1をオンにすることが好ましい。
一方、先のステップS24において、記録優先フラグF1がオンである場合(ステップS24:YES)、制御部70は、異常ノズルが発生してからの経過時間及び液体噴射ヘッド24の周囲温度に応じた加算値Vaを異常ノズル毎に演算する(ステップS27)。なお、初めて吐出異常が起きたことが検出された異常ノズルについては、吐出異常が起きてからの経過時間が「0(零)」であるため、加算値Vaも「0(零)」とされる。そして、2回目以降に加算値Vaを演算する際にその加算値Vaが「0(零)」よりも大きく演算される。
続いて、制御部70は、加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が存在しているか否かを判定する(ステップS28)。加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が存在している場合(ステップS28:YES)、制御部70は、その処理を後述するステップS33に移行する。一方、加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が存在していない場合(ステップS28:NO)、制御部70は、補完記録フラグF2がオンであるか否かを判定する(ステップS29)。補完記録フラグF2がオフである場合(ステップS29:NO)、制御部70は、その処理を後述するステップS33に移行する。一方、補完記録フラグF2がオンである場合(ステップS29:YES)、制御部70は、通常の記録処理から異常ノズルからのインクの吐出を補完する補完処理に移行し(ステップS30)、その後、本処理を一旦終了する。
一方、先のステップS23において、異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1以下である場合(ステップS23:NO)、制御部70は、ステップS27,S28と同様に、加算値Vaを演算し(ステップS31)、この加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が存在しているか否かを判定する(ステップS32)。加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が存在していない場合(ステップS32:NO)、制御部70は、本処理を一旦終了する。すなわち、この場合には、異常ノズルが吐出異常の起きた状態で長期間に亘って放置されておらず、この異常ノズルのクリーニング動作を早期に実行しなくとも、異常ノズルの吐出異常の回復が困難にならないと判断できる場合である。
一方、加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が「1」以上存在している場合(ステップS32:YES)、液体噴射ヘッド24のクリーニング動作を実行すべく、ステップS33の処理を実行する。ステップS33において、制御部70は、記録処理を一時的に中断し、クリーニング動作におけるクリーニング強度を設定する(ステップS34)。そして、制御部70は、クリーニング動作を実行させる(ステップS35)。ステップS34において、クリーニング動作の強度を設定する場合には、ステップS34のノズルチェックによって検出された異常ノズル数Naが多いほどノズル27から排出されるインク量が多くなるクリーニング動作が選択される。
クリーニング動作の実行が終了すると、制御部70は、ノズルチェックを行う(ステップS36)。そして、制御部70は、異常ノズル数Naが第2許容ノズル数N2よりも多いか否かを判定し(ステップS37)、異常ノズル数Naが第2許容ノズル数N2よりも多い場合(ステップS37:YES)、異常ノズルが回復しない旨を報知し(ステップS38)、本処理を一旦終了する。すなわち、この場合には、クリーニング動作の前後で異常ノズル数Naが減少傾向になく、クリーニング動作を繰り返し実行しても吐出異常が回復していないとして、中断していた記録処理が中止される。一方、異常ノズル数Naが第2許容ノズル数N2以下である場合(ステップS37:NO)、制御部70は、ステップS33において中断していた記録処理を再開し(ステップS39)、本処理を一旦終了する。
なお、図11に示すフローチャートでは、記録処理の実行中に検出された異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多い場合(ステップS23:YES)、記録優先フラグF1がオンであると(ステップS24:YES)、加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が無いことを条件に(ステップS28:NO)、記録処理が継続され得る。一方、記録処理の実行中に検出された異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多い場合(ステップS23:YES)、記録優先フラグF1がオフであると(ステップS24:NO)、記録処理が中止される(ステップS25)。こうして、本実施形態では、記録処理の実行中に検出された異常ノズル数Naが第1許容ノズル数N1よりも多い場合の処理を、記録処理の開始前にユーザーが設定できる記録優先フラグF1で切り替えることが可能となる。
また、加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が無いことを条件に記録処理を継続する場合において、補完記録フラグF2がオンであると(ステップS29:YES)、補完処理が実行される(ステップS30)。一方、加算値Vaが許容加算値Vbよりも大きいノズル27が無いことを条件に記録処理を継続する場合において、補完記録フラグF2がオフであると(ステップS29:NO)、クリーニング動作が実行されてから記録処理が実行される(ステップS35,S39)。こうして、本実施形態では、第1許容ノズル数N1よりも多くの異常ノズルが検出された状態で記録処理を継続する場合の処理を、記録処理の開始前にユーザーが設定できる補完記録フラグF2で切り替えることが可能となる。
以上説明した実施形態に係る液体噴射装置11においては、載置部14が着弾領域A1から離れた位置にある状態でメンテナンスユニットによるクリーニング動作を行うため、クリーニング動作によって排出された液体によって載置部14や載置部14上の媒体Sが汚染されることを抑制することができる。
また、以上説明した実施形態に係る液体噴射装置11においては、異常ノズル数に基づいてメンテナンスユニットによるクリーニング動作を行うため、不要なクリーニング動作を回避することができる。従って、クリーニング動作によって排出された液体によって載置部14や載置部14上の媒体Sが汚染されることをより一層抑制することができる。
また、以上説明した実施形態に係る液体噴射装置11においては、液体の噴射が正常でないノズル27(異常ノズル)がある状態であっても印刷品質が許容される場合(異常ノズル数が許容ノズル数以下の場合)には、不要なクリーニング動作を回避することができる。従って、クリーニング動作によって排出された液体によって載置部14や載置部14上の媒体Sが汚染されることをより一層抑制することができる。
また、以上説明した実施形態に係る液体噴射装置11においては、載置部14に媒体Sが載置された後に、アクチュエーター67で噴射異常を検出するため、噴射異常の検出を不要に行うことを回避することができる。
また、以上説明した実施形態に係る液体噴射装置11においては、記録処理の実行中にクリーニング動作を行う場合においても、異常ノズル数に基づいてメンテナンスユニットによるクリーニング動作を行うため、不要なクリーニング動作を回避することができる。従って、クリーニング動作によって排出された液体によって載置部14や載置部14上の媒体Sが汚染されることをより一層抑制することができる。
なお、上記実施形態では、載置台14が載置位置にあるときに、印刷処理前のメンテナンス動作を実施した例を示したが、載置台14が印刷開始位置(図1及び図2において二点鎖線で示した位置)にあるときに、印刷処理前のメンテナンス動作を実施することもできる。
また、上記実施形態では、操作部71を介してユーザーによる媒体載置完了の入力操作があった場合に、載置部14に媒体Sが載置されたものと判定して、噴射異常の検出を行った例を示したが、媒体Sが載置部14に載置されたことを検出するセンサーを設けておき、このセンサーで媒体Sが検出された場合に噴射異常の検出を行ってもよい。
また、上記実施形態では、液体噴射ヘッド24のアクチュエーター67によるノズル状態検査を行った例を示したが、かかる機能を搭載しなくてもよい。この場合は、ノズル状態の検査を全色OFFにした場合と同様に、ノズルチェックパターン印刷による抜けノズルの確認及びマニュアルクリーニングを実行することができる。
また、上記実施形態では、メンテナンスシステム100内の配置を図6に示すように、走査方向Xにおいて、着弾領域A1に近い側から、メンテナンスキャップ(吸引用キャップ101)、ワイピングユニット103、フラッシングユニット104の液体受容部108、保湿キャップ105の順に配置していたが、走査方向Xにおいて、着弾領域A1に近い側から、ワイピングユニット103、メンテナンスキャップ(吸引用キャップ101)、フラッシングユニット104の液体受容部108、保湿キャップ105の順に配置してもよい。この場合、メンテナンス領域A3が、走査方向Xにおいて払拭領域A4と受容領域A2との間の位置に配置されることになる。
また、上記実施形態では、保湿キャップ105を、着弾領域A1の右側(図6)に配置した例を示したが、着弾領域A1の左側に保湿キャップ105を配置することもできる。かかる場合には、保湿キャップ105とメンテンスキャップ101の間に着弾領域A1が位置することとなる。
また、上記実施形態では、載置部14を一つのみ採用した例を示したが、載置部14を走査方向Xに複数並べて配置し、一度の印刷動作で複数の媒体Sに印刷することもできる。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、かかる実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。