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JP7214992B2 - 消臭シーラントフィルム及び消臭包装材料 - Google Patents

消臭シーラントフィルム及び消臭包装材料 Download PDF

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JP7214992B2 JP2018123120A JP2018123120A JP7214992B2 JP 7214992 B2 JP7214992 B2 JP 7214992B2 JP 2018123120 A JP2018123120 A JP 2018123120A JP 2018123120 A JP2018123120 A JP 2018123120A JP 7214992 B2 JP7214992 B2 JP 7214992B2
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Description

本発明は、包装材料が元から含有している溶出性の有機物と、殺菌・滅菌処理の際に包装材料から発生する臭気成分とが、包装体内の内容物に移って内容物に変味や変臭を与えてしまうことを防ぎ、且つ内容物自体から生じる臭味成分に対する臭味改善効果を有する、長期間の耐臭味変化性に優れた、包装材料、及び該包装材料を用いて作製した、消臭包装体に関する。
包装材料において、臭気を吸着する臭気吸着剤を内包した包装材料が提案されている(特許文献1)。このような包装材料においては、合成ゼオライトや活性炭といった臭気吸着剤が、樹脂材料中に練り込まれている。
しかしながら、このような包装材料は、臭気だけでなく、大気中の湿気をも吸着し、且つ、一度吸着した臭気を、脱離させてしまうという問題があるため、十分な臭気吸着効果が得られていない。
無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有した包装材料も知られているが(特許文献2)、主な吸着対象物は特定の官能基を有する臭気成分を吸着するのみであって、樹脂材料を選定しない状況では、官能基を有さない有機物の発生量を抑制できず、臭気成分を十分に吸着し得るものではない。
特許第2538487号公報 特開2014-233408公報
本発明は、上述の問題を解決し、製造適正に優れ、シーラントフィルムが元から含有している臭気有機物と、UV照射、ホットパック、ボイル、γ線照射、EB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、シーラントフィルムを構成する樹脂の分解等により発生する臭気と、本発明のシーラントフィルムを用いて包装袋充填体を作製した場合における内容物自体から生じる臭味成分に対して、高い吸着または分解作用による消臭効果を長期間にわたって発揮してする、内容物への長期間の耐臭味変化性に優れたシーラントフィルム、及び該シーラントフィルムを用いた包装材料、包装体を提供することを目的とする。
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、特定の消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂とを含有するシーラント層を有するシーラントフィルムが、上記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、シーラント層を含む消臭シーラントフィルムであって、
前記シーラント層は、消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂とを含有し、
前記消臭体は、SiO2/Al23モル比が30/1~8000/1の疎水性ゼオライト、化学吸着剤担持無機多孔体、無機臭気分解剤なる群から選ばれる、1種または2種以上を含み、
前記無機臭気分解剤は、金属酸化物または金属塩を、無機物に混錬または担持させたものであり、
前記シーラント層中の前記消臭体の合計の含有率が、0.2質量%以上、15質量%以下である、
消臭シーラントフィルム。
2.前記消臭体が、熱可塑性樹脂と、消臭体/熱可塑性樹脂の質量比が、0.5/99.5~40/60の割合で、予め、溶融混練されている、
上記1に記載の、
消臭シーラントフィルム。
3.前記ヒートシール性熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、0.2g/10分以上、10.0g/10分以下である、
上記1または2に記載の、
消臭シーラントフィルム。
4.前記シーラント層が、前記消臭体を含有する消臭シーラント層と、前記消臭体を含有しない非消臭シーラント層とを含み、
前記非消臭シーラント層が、前記消臭シーラント層の片面および/または両面に、接して積層されている、
上記1~3の何れかに記載の、消臭シーラントフィルム。
5.前記化学吸着剤担持無機多孔体が、銅、亜鉛、銀、白金、鉄、コバルトなる群から選択される、1種または2種以上の元素を含有する、
上記1~4の何れかに記載の、
消臭シーラントフィルム。
6.前記無機臭気分解剤が、銅、亜鉛、銀、白金、鉄、コバルトなる群から選択される、1種または2種以上の元素を含有する、
上記1~5の何れかに記載の、
消臭シーラントフィルム。
7.前記消臭体は、前記疎水性ゼオライト、前記化学吸着剤担持無機多孔体、前記無機臭気分解剤なる群から選ばれる2種または3種を含有し、
前記シーラント層中の前記消臭体の合計の含有量が、0.2質量%以上、10質量%以下である、
上記1~6の何れかに記載の、
消臭シーラントフィルム。
8.基材層と、上記1~7の何れかに記載の消臭シーラントフィルムとを含む、消臭積層体。
9.さらに、中間層を含み、
前記中間層は、金属箔、金属蒸着膜、金属酸化物蒸着膜なる群から選ばれる、1種または2種以上からなるガスバリア層を含む、
上記8に記載の、消臭積層体。
10.さらに、中間層として、アルミニウム箔を含む、
上記8に記載の、消臭積層体。
11.上記8~10の何れかに記載の消臭積層体から作製された、消臭包装材料。
12.上記11に記載の消臭包装材料から作製された、消臭包装体。
13.上記11に記載の消臭包装材料から作製された、液体内容物用消臭包装体。
14.上記11に記載の消臭包装材料から作製された、酒類用消臭包装体。
本発明の消臭シーラントフィルムは、特定の消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂を含有するシーラント層を有しているため、臭気を効率的に吸着または分解して消臭することと、優れたヒートシール性を発揮することができる。
臭気には、シーラントフィルムが元から含有している臭気性の有機物と、UV照射、γ線照射、EB照射、ホットパック、ボイル等の殺菌・滅菌処理の際にシーラントフィルムを構成する樹脂の分解等により発生する臭気と、本発明の消臭シーラントフィルムを用いて包装袋充填体を作製した場合における内容物自体から生じる臭味成分による臭気とがあり、本発明の消臭シーラントフィルムは、上記臭気が内容物へ移ることまたは残留することを抑制し、内容物の臭味変化を抑制することができる。
そして、且つ、一度吸着した臭気を脱離し難く効率的に臭気吸着し、臭気分解を行うことが可能であるため消臭能が低下せず、長期にわたって高い消臭効果を発揮することができる。
したがって、本発明の消臭シーラントフィルムは、殺菌・滅菌処理に付される、食品や医薬品、医療品の包装材料用途として好適である。
本発明の消臭シーラントフィルムの層構成について、その一例を示す概略的断面図である。 本発明の消臭積層体の層構成について、その一例を示す概略的断面図である。 本発明の消臭積層体の層構成について、別態様の一例を示す概略的断面図である。 化学吸着剤担持無機多孔体の臭気物質に対する吸着機構を示す図である。
本発明の消臭シーラントフィルム、及び該消臭シーラントフィルムを用いて作製した消臭包装材料、消臭包装体について、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<消臭シーラントフィルムの層構成>
本発明の消臭シーラントフィルムは、図1に示すように、少なくともシーラント層を含み、該シーラント層は、消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂とを含有する。さらには、必要に応じて、図2、3に示すように、基材層や中間層や接着層等の他の層を含むこともできる。
<基材層>
本発明における基材層は、熱可塑性樹脂等を含むことができるが、これらには限定されない。さらに基材層は、上記を含む層のそれぞれを、1層または2層以上含むこともできる。
また、基材層を構成する各層間には、接着性を向上させるために、接着剤層を設けたり、各層の表面に、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けたりすることができる。
例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いたる酸化処理等の前処理を任意に施して、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を形成して設けることができる。
或いは、表面に、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、蒸着アンカーコート剤層等の各種コート剤層を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
上記の各種コート剤層には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフイン系樹脂またはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を用いることができる。
基材層の厚さは、素材にもよるが、樹脂フィルムの場合には、好ましくは5~30μm、より好ましくは10~30μmである。
上記の要件を満たす基材層用のフィルムは、商業的にも入手可能であり、本発明において好適に用いられるものとしては、例えば、東洋紡株式会社製の二軸延伸PETフィルムE5100(厚さ12μm、片面コロナ処理)、二軸延伸PETフィルムE5200(厚さ12μm、両面コロナ処理)、ユニチカ株式会社製の二軸延伸ナイロンフィルムONBC(厚さ15μm、両面コロナ処理)が挙げられる。
(基材層の熱可塑性樹脂)
基材層に用いられる熱可塑性樹脂は、フィルム状に成型されて用いられるものであり、化学的または物理的強度に優れることが好ましい。
このような樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフイン系樹脂、環状ポリオレフイン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。
本発明においては、上記樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、またはポリアミド系樹脂のフィルムまたはシートを使用することが好ましい。
本発明において、基材層に用いられる熱可塑性樹脂は、公知公用の各種製膜法でフィルム化することができる。
例えば、1種の樹脂を使用して、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて製膜する方法、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜する方法、2種以上の樹脂を製膜する前に混合して上記製膜法で製膜する方法、等が挙げられる。さらに、テンター方式やチューブラマ方式等を利用して1軸または2軸方向に延伸したフィルムとすることができる。
なお、熱可塑性樹脂には、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を使用することができる。
<接着層>
本発明では、図2に示すように、接着層によって、各層間を接着することも可能である。
接着層は、ドライラミネート用接着剤、EC(エクストルージョンコート)用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、任意のアンカーコート剤等からなる層であってよい。
接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等であってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
このような接着層を形成する成分としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、LDPE等のポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
ドライラミネーションコートする際は、例えば、接着層用の樹脂組成物を一方の層上に塗布し乾燥させて、もう一方の接着対象層を重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層することができる。
EC用接着剤を用いる場合は、エクストルージョンコート用接着剤を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、該溶融物を接着対象層上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、接着層の形成と接着対象層への接着と積層を同時に行う。
消臭接着層がエクストルージョン法によって形成されることで、消臭接着層を無溶剤で形成することが容易であり、溶剤臭の発生を防止できる。
EC用接着剤には、公知のエクストルージョンコート用接着剤を用いることができる。
例えば、汎用のポリエチレンや、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物等が好適であるが、これらの樹脂に限定されない。
ノンソルベントラミネート用接着剤を用いる場合は、公知のノンソルベントラミネート用接着剤を、溶媒へ分散または溶解せずに接着剤自身を層上に塗布し乾燥させて、もう一方の接着対象層を重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層する。
アンカーコート剤としては、例えば、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、酸変性ポリエチレン系、ポリブタジエン系等のアンカーコート剤を使用するこ
とができる。
塗布手段としては、例えばロールコート、グラビアロールコート、キスコート等が挙げられ、そのコーティング量としては、0.1~10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。接着剤のコーティング量を上記範囲とすることで、良好な接着性が得られる。
<消臭体>
本発明において、消臭体は、消臭作用を奏する化合物であり、SiO2/Al23モル比が、30/1~8000/1の疎水性ゼオライト、化学吸着剤担持無機多孔体、無機臭気分解剤なる群から選ばれる、1種または2種以上を含む。
[疎水性ゼオライト]
本発明において用いられる疎水性ゼオライトは、SiO2/Al23モル比が、30/1~8000/1であることが好ましい。ゼオライトは、一般的にSiO2/Al23モル比が高い程、疎水性が高くなる。
疎水性ゼオライトは、本発明の消臭積層体が230℃以上に晒される場合であっても、臭気成分の吸着効果が維持される。
疎水性ゼオライトは、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、樹脂中に分散させた際の、均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
本発明において、疎水性ゼオライトの平均粒子径は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、平均粒子径0.01μm~10μmのものが好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が0.01μmよりも小さい場合には疎水性ゼオライトの凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が10μmよりも大きい場合には、該疎水性ゼオライトを含む層の製膜性が劣る傾向になる為に、疎水性ゼオライトを多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分な消臭効果が得られない可能性が生じる。
疎水性ゼオライトは、疎水性である為に、極性の高い水分子等は吸着し難く、逆に極性の低い、臭い分子、疎水性ガス、親油性ガス(溶剤系ガスも含む)との親和性が高く、これらを吸着し易い。更に、ゼオライト表面に存在する、Ca、Na、K等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の効果によりゼオライト表面は塩基性を示し、酸性ガスを中和反応によって吸着し易い。
[化学吸着剤担持無機多孔体]
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体とは、無機多孔体に化学吸着剤を担持させたものであり、溶出性の有機物や、UV照射、γ線照射、EB照射や、ホットパック、ボイル等の殺菌・滅菌処理時に包装体から発生する臭気物質を吸着する機能を有するものである。
担持方法としては、公知または慣用の担持方法を適用することができ、例えば、下記で説明する化学吸着剤を含有する溶液を、無機多孔体に含浸させて、乾燥することにより、担持させることができる。
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体を用いることにより、化学吸着剤の単位質量当たりの吸着能を大幅に高めることができ、積層体中の化学吸着剤及び化学吸着剤担持
無機多孔体の含有率を減らすことができる。また無機多孔体の孔部分に対する物理吸着特性も期待できる。
これらにより、高い接着強度やシール強度が得られ、接着層として求められる優れた接着性及び塗布性や製膜性を保持することができ、シーラント層として求められる優れたヒートシール性及び製膜性を保持することができる。
化学吸着剤担持無機多孔体は、銅、亜鉛、銀、白金、鉄、コバルトなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有することが好ましい。
また、化学吸着剤担持無機多孔体は、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、上記製膜性や、均一な分散性や混練特性等の観点から、粉体状が好ましい。
化学吸着剤担持無機多孔体は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、本発明においては特に、平均粒子径0.01μm~10μmのものが好ましく、0.1μm~8μmのものがより好ましく、1μm~7μmのものが更に好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が0.01μmよりも小さい場合には、化学吸着剤担持無機多孔体の凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。
また、平均粒子径が10μmよりも大きい場合には上記製膜性が劣るために、化学吸着剤担持無機多孔体を多くは含有し難い傾向となり、十分な吸着効果が得られない可能性が生じる。
市販品の具体例としては、東亞合成(株)社製のNS-241、NS-231(アミノ基含有化合物担持無機多孔体)、(株)シナネンゼオミック社製のダッシュライトM(アミノ基含有化合物担持無機多孔体)、ダッシュライトCZU(化学吸着剤担持銅亜鉛含有無機多孔体。)等を本発明において好適な消臭体として用いることができる。
(無機多孔体)
本発明において、無機多孔体としては、その表面に多数の細孔を有する任意の無機化合物を用いることができ、例えば、ゼオライト、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、活性炭、チタニア、燐酸カルシウム等の無機燐酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
特に、吸着対象物質の分子サイズやクラスターサイズに対して有効な孔サイズの多孔状態を有することや安全面の観点から、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ケイ酸塩を適用することが好ましい。
また、これらは、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、化学吸着剤を担持して化学吸着剤担持無機多孔体とした後で、上記製膜性や均一な分散や混練特性等の観点から、粉体状が好ましい。
無機多孔体は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、上記、化学吸着剤担持無機多孔体の平均粒子径を達成するために、平均粒子径0.01μm~10μmのものが好ましく、0.1μm~8μmのものがより好ましく、1μm~7μmのものが更に好ましい。
(化学吸着剤)
本発明において、化学吸着剤とは、溶出性の有機物や、殺菌・滅菌処理時に樹脂の分解等により発生する臭気物質と化学反応を起こして結合する反応性官能基を有し、且つ、上記無機多孔体上に担持され得る化合物である。
より具体的には、UV照射、γ線照射、EB照射や、ホットパック、ボイル等の殺菌・滅菌処理時に生じる種々のアルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等と結合する反応性を有する官能基を有する化合物である。
このような化合物としては、アミノ基を含有する化合物、例えばアルキルアミン、テトラメチレンジアミン等のポリアミン、エタノールアミン、ピペリジン、ヒドロキシル基等の塩基性官能基を有する化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸等のアミド基含有化合物等が挙げられる。
本発明において、特に優れた吸着効果を発揮する化学吸着剤としては、アミノ基を有する化合物、例えばポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
化学吸着剤の、溶出する有機物や臭気物質等の吸着対象物質に対する吸着機構を、図4(a)~(b)の具体例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、吸着対象物質が酸系臭気物質である場合は、図4(a)に示すように、化学吸着剤として、例えばヒドロキシル基を有する化合物を無機多孔体上に担持してなる化学吸着剤担持無機多孔体を用いることができる。これにより、カルボキシル基とヒドロキシル基とが化学反応を起こして結合し、吸着対象物質が吸着される。
また、吸着対象物質がアルデヒド類である場合は、図4(b)に示すように、化学吸着剤として、例えばアミノ基を有する化合物を無機多孔体上に担持してなる化学吸着剤担持無機多孔体を用いることができる。これにより、アルデヒド基とアミノ基とが化学反応を起こして結合し、吸着対象物質が吸着される。
この際、化学吸着であることにより、一旦吸着した吸着対象物質は脱離することがなく、効率的に臭気吸着を行うことができる。
さらに、臭気と水蒸気とが同一の吸着部位に吸着される物理吸着剤とは異なり、本発明における化学吸着剤は、吸着対象物質は化学吸着剤の特定の官能基と結合するため、臭気吸着能を低下させる種々の物質、例えば水蒸気等の影響を受けにくい。
[無機臭気分解剤]
本発明における前記無機臭気分解剤は、金属酸化物または金属塩を、無機物に混錬または担持させたものであり、好ましくは、少なくとも、酸化銅(II)と、酸化珪素と、酸化アルカリ金属とを含む無機臭気分解剤組成物から形成されたものである。
本発明における無機臭気分解剤は、無機臭気分解剤中に保持された金属成分等がイオン化して、硫黄系悪臭物質の分解反応を促進する触媒作用を発揮することによって、硫黄系悪臭物質に対する消臭効果を奏するものである。硫黄系悪臭物質の中でも、特に、親水性
の化合物、例えば硫化水素等に対する消臭効果が高い。
無機臭気分解剤組成物は、上記のイオン化する成分として、更に、銅、亜鉛、銀、白金、金、鉄、コバルトなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を含むことが好ましく、特に、銅、亜鉛、銀なる群から選ばれる1種または2種以上の元素を含むことが好ましい。それぞれの元素は、金属、金属酸化物、金属イオン、金属錯体等として無機臭気分解剤組成物に含有されることが好ましい。
金属酸化物としては、例えば、CuO、Cu2O、ZnO、Ag2O、PtO2、Au23、FeO、Fe34、Fe23、CoO、Co23、Co34等が挙げられる。
また、無機臭気分解剤組成物は、必要に応じて、化学的性能や物理的性能を調整する為に、酸化ホウ素を更に含み、酸化アルカリ土類金属や、酸化アルミニウム等を更に含むこともできる。
粉体状の無機臭気分解剤は、各原料を混合して無機臭気分解剤組成物を調整し、瓶ガラスなどの汎用ガラス作製と同様な常法により溶融して均質化して、冷却後に粉砕することによって、得ることができる。
無機臭気分解剤は、触媒として硫黄系悪臭物質の分解反応を促進するため、化学吸着、物理吸着を利用して表面積に依存する従来技術に比べて、消臭容量を増大させることができ、消臭効果を長期間に亘って安定して発揮することができる。
無機臭気分解剤組成物中の酸化銅(II)(CuO)の含有率は、0.01~23モル%が好ましく、1~13モル%がより好ましく、4~13モル%がさらに好ましい。上記範囲よりも少ないと消臭効果が十分に発揮され難くなる傾向になり、上記範囲よりも多いと金属銅が析出し易くなるため、好ましくない。
酸化珪素(SiO2)は、無機臭気分解剤の構造骨格を形成する主成分である。無機臭気分解剤組成物中の酸化珪素の含有率は、46~70モル%が好ましく、51~70モル%がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、無機臭気分解剤の化学的耐久性及び耐水性が不十分になりやすく、更には酸化銅(II)の触媒作用による消臭効果も低下し易くなる。上記範囲よりも多いと、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度が高過ぎて、無機臭気分解剤が不均質になり易い。
酸化アルカリ金属は、Li2O、Na2O、K2Oなる群から選ばれる1種または2種以上であり、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度を低下させる成分である。
無機臭気分解剤組成物中の酸化アルカリ金属の含有率は、10~33モル%が好ましく、12~24モル%がより好ましく、12~20モル%がさらに好ましい。
上記範囲よりも少ないと、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度を低下させる効果が不十分になり易い。上記範囲よりも多いと、無機臭気分解剤の化学的耐久性及び耐水性が不十分になり易く、消臭効果が低下し易くなる。
酸化アルカリ土類金属は、MgO、CaO、SrO、BaOなる群から選ばれる1種または2種以上であり、必要に応じて無機臭気分解剤組成物中に含有される成分であり、無機臭気分解剤の化学的耐久性を向上させる作用を有する。
無機臭気分解剤組成物中に酸化アルカリ土類金属を含有させる場合の、無機臭気分解剤組成物中の酸化アルカリ土類金属の含有率は、2~10モル%が好ましく、2~7モル%がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、酸化アルカリ土類金属を含有した効果を十分に発揮することが困難になり易く、上記範囲よりも多いと、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度が高過ぎて不均質になり易い。
酸化ホウ素(B23)は、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度を低下し、無機臭気分解剤を化学的に安定性させる効果を有する。
無機臭気分解剤組成物中に酸化ホウ素を含有させる場合の、無機臭気分解剤組成物中の酸化ホウ素の含有率は、5~20モル%が好ましく、8~17モル%がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、酸化ホウ素を含有した効果を十分に発揮することが困難になり易く、上記範囲よりも多いと、無機臭気分解剤の化学的耐久性及び耐水性が不十分になりやすく、更には消臭効果も低下し易くなる。
酸化ホウ素は、酸化アルカリ金属と同様に無機臭気分解剤の融点と溶融粘度を低下させる作用がある為、酸化ホウ素と酸化アルカリ金属との合計量についても含有率を考慮することが好ましく、無機臭気分解剤組成物中の酸化ホウ素と酸化アルカリ金属との合計含有率は、15~50モル%が好ましく、21~39モル%がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度を低下させる効果が不十分になり易い。上記範囲よりも多いと、無機臭気分解剤が不均質になり易く、無機臭気分解剤の耐水性が不十分になりやすい傾向になり、更には消臭効果も低下し易くなる。
酸化アルミニウム(Al23)は、必要に応じて無機臭気分解剤組成物中に含有される成分であり、無機臭気分解剤の均質性を高め、化学的耐久性を向上させる作用を有する。
無機臭気分解剤組成物中に酸化アルミニウムを含有させる場合の、無機臭気分解剤組成物中の酸化アルミニウムの含有率は、0.1~6モル%が好ましく、0.1~5.5モル%がより好ましく、0.1~4.5モル%がさらに好ましい。
上記範囲よりも少ないと、酸化アルミニウムを含有した効果を十分に発揮することが困難になり易く、上記範囲よりも多いと、無機臭気分解剤の融点と溶融粘度が高過ぎて不均質になり易い。
上記成分以外にも、微量成分として、TiO2、ZrO2、Nb25、P25、Cs2O、Rb2O、TeO2、BeO、GeO2、Bi23、La23、Y23、WO3、MoO3、Sb23、SnO2等を含有することもできる。
無機臭気分解剤の粒子径分布は、重量平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、D96が40μm以下である粉体であることが好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により粒度分布測定を行って測定された値であり、D96は、累積分布させたときの積分値が96質量%に当たる粒径を意味する。
平均粒子径が1μmよりも小さい場合には無機臭気分解剤の凝集が生じ易く、シーラント層中での分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が30μmよりも大きい場合
にはシーラント層の製膜性が劣る傾向になる為に、無機臭気分解剤を多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分な消臭効果を得難いおそれがある。
96が40μmを超えると、ヒートシール性樹脂中への均一分散が困難になり易く、製膜性が低下するおそれがある。
<シーラント層>
本発明におけるシーラント層は、ヒートシール性熱可塑性樹脂と消臭体を含有する。
シーラント層が、ヒートシール性熱顔性樹脂を含有することによって、本発明の消臭シーラントフィルムは、優れたヒートシール性を発揮することができ、消臭体を含有することによって、優れた消臭効果を発揮することができる。
シーラント層で含有される消臭体には、消臭接着層における消臭体を用いることができ、ひとつの積層体内で、消臭接着層とシーラント層とで同一組成の消臭体を用いても、異なる組成の消臭体を用いてもよい。
シーラント層は、図1のように、消臭体を含有する消臭シーラント層のみであってもよく、図3のように、消臭シーラント層と消臭体を含有しない非消臭シーラント層との多層構造であってもよい。
非消臭シーラント層は。シール強度及び層間接着強度を向上させることができるため、消臭シーラント層の片面および/または両面に、接して積層されていることが好ましい。
包装体を作製した際は、該包装体の内容物と接する最内層は、消臭シーラント層であっても、非消臭シーラント層であってもよい。非消臭シーラント層が最内層の場合は包装体のシール強度を向上させることができ、消臭シーラント層が最内層の場合は包装体内の層間接着強度を向上させることができる。
消臭シーラント層には、消臭体として、SiO2/Al23モル比が30/1~8000/1の疎水性ゼオライト、化学吸着剤担持無機多孔体、無機臭気分解剤なる群から選ばれる1種または2種以上を含有することができ、消臭シーラント層と非消臭シーラント層を含むシーラント層中の消臭体の合計の含有量は、0.2質量%以上、15質量%以下が好ましい。
消臭体の含有量が、上記範囲よりも少ないと充分な消臭効果を発揮し難く、上記範囲よりも多いと、良好な製膜性とヒートシール性を発揮することが困難になり易い。
消臭体として、前記群から選ばれる2種または3種を併用する場合には、消臭効率が向上することによって、消臭シーラント層を含むシーラント層中の消臭体の含有量は、0.2質量%以上、10質量%以下であっても、充分な消臭効果を得ることができる。
[ヒートシール性熱可塑性樹脂]
ヒートシール性熱可塑性樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等の低溶出化されたもの及びそれらの樹脂の混合物が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
上記の中でも、ポリエチレンは、UV等の滅菌・殺菌処理に対して耐性があって分解され難い性質があるという点で、好適であり、ポリエチレンの中でも、LLDPEがより好ましい。
さらに、シーラント層は、滑剤、酸化防止剤、アンチブロック剤、その他の添加剤を含むことができる。
また、シーラント層に含有されるヒートシール性熱可塑性樹脂は、単体でフィルムにした際に、屈曲に起因する耐ピンホール性に優れていることが好ましい。
包装体は、包装工程中や輸送中の振動による局所的繰り返し屈曲によって疲労破壊が進行してピンホールを発生することがある為、特に食品・医療用品等用の包装材料は耐ピンホール性が重要である。
シーラント層に含有されるヒートシール性熱可塑性樹脂の耐ピンホ-ル性は、例えば、ヒートシール性熱可塑性樹脂単体からなる50μm厚のフィルムの、23℃における5000回のゲルボフレックス後のピンホール発生個数が、0個、または1個以上、160個以下であることが好ましい。
該フィルムのピンホール発生個数が上記範囲であれば、ピンホール耐性が必要な用途の場合に、実用に耐え得る包装体を作製することができる。
[非消臭シーラント層]
本発明におけるシーラント層中の非消臭シーラント層は、ヒートシール性熱可塑性樹脂を含有するが、消臭体を含有しないシーラント層である。
[消臭シーラント層]
消臭シーラント層は、消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂とを含有するシーラント層である。
消臭シーラント層は、主体となるヒートシール性熱可塑性樹脂の種類や、消臭体の種類や含有率が同一または異なる層からなる多層構造であってもよい。
さらに、図示しないが、消臭シーラント層は、主体となるヒートシール性熱可塑性樹脂の種類や、消臭体の種類や含有率が同一または異なる3層またはそれ以上からなっていてもよい。
消臭シーラント層中において、消臭体は、層中に均一に分散していてもよく、濃度勾配を持って分散していてもよい。
例えば、包装体形成時の内側表面から外側表面に向かって、増加傾向の濃度勾配をもって分散していてもよく、この構成により、ヒートシール性が向上する。これとは逆に、包装体形成時の内側表面から外側表面に向かって、減少傾向の濃度勾配をもって分散していてもよく、この構成により、層間接着強度が向上する。
更に、消臭シーラント層の厚み方向中心部から両表面に向かって、減少傾向の濃度勾配をもって分散していてもよく、この構成により、ヒートシール性と層間接着強度とが向上する。
消臭シーラント層の層厚は、5μm以上あれば製膜は可能であるが、良好な製膜性とヒ
ートシール性、層間接着強度及び消臭性を得るためには、10μm~200μmが好ましい。
[消臭シーラント層または非消臭シーラント層の形成]
(消臭体の分散方法)
消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂とを混練する方法としては、公知または慣用の混練方法を適用することができる。
消臭体を直接、ヒートシール性熱可塑性樹脂と混合して混練することも可能であり、或いは、消臭体を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練(メルトブレンド)してマスターバッチを作製し、これを、目標含有率に応じた比率でヒートシール性熱可塑性樹脂と混合、溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によっても可能である。
マスターバッチ中の、疎水性ゼオライトの含有率は、0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましい。
マスターバッチ中の、化学吸着剤担持無機多孔体の含有率は、0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましい。
マスターバッチ中の、無機臭気分解剤の含有率は、0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましい。
マスターバッチ方式の場合には、凝集が発生し易い消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂の組み合わせであっても、効率的に、均質に分散させることができる。
この際、マスターバッチ中の熱可塑性樹脂は、消臭シーラント層中のヒートシール性熱可塑性樹脂と同一であっても、異なっていてもよく、目的に応じてヒートシール性熱可塑性樹脂と該熱可塑性樹脂の種類を組み合わせることが可能である。
例えば、予め消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂を溶融混合しておけば、再度、ヒートシール性熱可塑性樹脂と混合または溶融混練した際に、均質で、良好な製膜性、ヒートシール性、層間接着強度及び消臭性を、効率的に得ることが可能である。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂としては、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
該熱可塑性樹脂は、本発明におけるヒートシール性熱可塑性樹脂と同等程度のヒートシール性を有するものが好ましいが、シーラント層全体のヒートシール性や製膜性に大きな悪影響を与えない範囲内で用いることができる。
(シーラント層の製膜・積層方法)
本発明において、シーラント層中の各層の製膜、積層方法は特に限定されず、公知または慣用の製膜方法、積層方法を適用することができる。
消臭シーラント層や非消臭シーラント層を、場合により接着層を介して、他の層上にエクストルージョンコート法により積層することや、例えば、複数の、消臭シーラント層と非消臭シーラント層とを、インフレーション法やキャスト法により共押出しにより形成することもできる。
エクストルージョンコート法により積層する場合においては、まず、消臭シーラント層を形成する樹脂組成物や非消臭シーラント層を形成する樹脂組成物を加熱して溶融させて
、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、該溶融樹脂を被積層面上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、消臭シーラント層や非消臭シーラント層の形成と被積層面への接着と積層を同時に行う。
エクストルージョンコート法により積層する場合の、消臭シーラント層や非消臭シーラント層に含まれるヒートシール性熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.2~50g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~30g/10分である。なお、本明細書において、MFRとはJIS K7210に準拠した手法から測定された値である。
MFRが0.2g/分未満、又は50g/分超では加工適正の面で有効になり難い。
インフレーション法を用いる場合においては、消臭シーラント層や非消臭シーラント層に含まれるヒートシール性熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.2~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.2~9.5g/10分である。
MFRが0.2g/10分未満、又は10g/10分超の場合は加工適正の面で劣る傾向にある。
または、予め製膜された消臭シーラント層と非消臭シーラント層とを、接着剤の、エクストルージョンコート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等により、接着層を介してラミネートしてもよい。
<中間層>
本発明の消臭積層体は、図3に示すように、中間層を含むことができ、必要に応じて様々な機能を付与することができる。
例えば、バリア層として、金属箔、金属蒸着膜層または金属酸化物蒸着膜層が形成された熱可塑性樹脂フィルムや、更に、前記金属蒸着膜層上にバリアコート樹脂層を含むことでもできる。
バリア層の具体例としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム蒸着膜、酸化珪素蒸着膜等が挙げられる。
上記のようなバリア層を含むことによって、積層体のガスバリア性を向上させることができ、内容物の酸化や香味成分の散逸を防ぐ効果が高まり、内容物の風味を維持する効果を高めることができる。
特に、液体飲料や酒類等の嗜好品においては、風味の維持が重要であり、大きな効果を発揮する。
更に、上記の要件を満たす、中間層用のフィルムは、商業的にも入手可能であり、本発明において好適に用いられるものとしては、例えば、PVD法によりアルミナを片面に蒸着したPETフィルムである、大日本印刷株式会社製のアルミナ蒸着IB-PET-PIR(厚さ12μm)、シリカ蒸着IB-ON-UB(厚さ15μm)が挙げられる。
<消臭積層体>
本発明の消臭積層体は、本発明の消臭シーラントフィルムから作製されるものであり、必要に応じて、公知の基材層、中間層、印刷層、他の積層体を公知の方法で積層して用いることができる。
<消臭包装材料>
本発明の消臭包装材料は、本発明の消臭シーラントフィルム、または消臭積層体から作製されるものである。
<消臭包装体>
本発明の消臭包装体は、例えば、本発明の消臭包装材料を製袋してなるものであり、ヒートシール性が良好な面が対向するように、包装材料を折り曲げるかまたは2枚を重ね合せ、その周辺端部を例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールすることにより作製することができる。
ヒートシールの方法としては、例えばバーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知方法を適用することができる。
本発明の消臭包装体は、内容物を充填するための内容物用消臭包装体として用いることができる。
<内容物>
本発明において、内容物は、主に食料品全般を指すものである。
<原材料>
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
[基材層]
・PETフィルム1:東洋紡(株)社製PETフィルム、エスペットT4102。厚さ12μm。
[中間層]
・アルミニウム箔1:厚さ7μm。
[疎水性ゼオライト]
・ミズカシーブスEX-122:水澤化学工業(株)社製。SiO2/AL23モル比=32/1、平均粒子径=2.5~5.5μm。
・シルトンMT400:水澤化学工業(株)社製。SiO2/AL23モル比=400/1、平均粒子径=5~7μm。
・シルトンMT-8000:水澤化学工業(株)製。SiO2/AL23モル比=8000/1、平均粒子径=0.8μm。
[化学吸着剤担持無機多孔体]
・ダッシュライトCZU1721:(株)シナネンゼオミック社製。酸化銅・酸化亜鉛複合化アルミノケイ酸、平均粒子径=3~5μm。
[無機臭気分解剤]
・無機臭気分解剤1:石塚硝子(株)社製。酸化銅混錬硝子、平均粒子径=3~4μm。[ドライラミネート用接着剤]
・ポリエステル系接着剤1:ロックペイント(株)社製、アドロックRU004/H1。[ヒートシール性熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂、EC用接着剤]
・ウルトゼックス1520L:プライムポリマー(株)社製。LLDPE、密度=0.916g/cm3、MFR=2.3。
・ノバテックLC600A:日本ポリエチレン(株)社製。LDPE、密度=0.918g/cm3、MFR=7.0。
<消臭シーラント層マスターバッチの調整>
表1の配合に従った割合で、熱可塑性樹脂と消臭体とをメルトブレンドし、消臭シーラント層マスターバッチ1~10(MB1~10)を得た。
Figure 0007214992000001
<消臭シーラント層樹脂組成物の調製>
表2に記載された配合比に従って、ヒートシール性熱可塑性樹脂と、消臭シーラント層マスターバッチとをメルトブレンドして、消臭シーラント層組成物1~15を得た。
Figure 0007214992000002
[実施例1]
基材層用のPETフィルム1と、中間層用のアルミニウム箔1とを、ポリエステル系接着剤1を乾燥塗布量3.5g/m2で用いて、ドライラミネート法により積層し、下記構成の積層体を得た。
PETフィルム1(12μm)/ポリエステル系接着剤1(3.5g/m2)/アルミニウム箔1(7μm)
次に、非消臭シーラント層用にヒートシール性熱可塑性樹脂であるウルトゼックス1520Lを用い、消臭シーラント層用に消臭シーラント層樹脂組成物1を用いて、160℃でインフレーション製膜により、下記の3層構成で合計50μm厚の消臭シーラントフィルムを作製した。
非消臭シーラント層(10μm)/消臭シーラント層(30μm)/非消臭シーラント層(10μm)
上記で得た積層体のアルミニウム箔1面に、ポリエステル系接着剤1を塗布及び乾燥して、ドライラミネート法によって消臭シーラントフィルムを接着して、下記構成の消臭包装材料を得て、各種評価を実施した。消臭包装材料の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
PETフィルム1(12μm)/ポリエステル系接着剤1(3.5g/m2)/アルミニウム箔1(7μm)/ドライラミネート接着層(3.5g/m2)/非消臭シーラント層(10μm)/消臭シーラント層(30μm)/非消臭シーラント層(10μm)
[実施例2~10、15~18]
表3の記載に従って消臭シーラント層樹脂組成物を選択し、実施例1と同様に操作して、消臭シーラントフィルム、消臭包装材料を得て、各種評価を実施した。消臭包装材料の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
[実施例11]
消臭シーラントフィルムを、消臭シーラント層樹脂組成物10を用いた50μm厚の単層構成にした以外は、実施例1と同様に操作して、消臭包装材料を得て、各種評価を実施した。消臭包装材料の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
[実施例12~14]
実施例1と同様に、積層体を作製し、表3の記載に従って消臭シーラント層樹脂組成物を選択して消臭シーラントフィルムを作製した。
次に、得られた積層体と消臭シーラントフィルムとを、ノバテックLC600Aを用いたエクストリュージョンコート法によって15μm厚の接着層を形成して、接着して、消臭包装材料を得て、各種評価を実施した。消臭包装材料の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
[比較例1]
実施例1と同様に、積層体を作製した。
次に、得られた積層体のアルミニウム箔1面に、シーラント層として、ウルトゼックス1520Lを押出しラミネートによって積層し、包装材料を得て、実施例1と同様に各種評価を実施した。包装材料の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
[比較例2]
シーラント層として、消臭シーラント層樹脂組成物10を用いた以外は、比較例1と同様に操作して、包装材料を得て、実施例1と同様に各種評価を実施した。包装材料の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
<評価>
[シーラント層のヒートシール性]
実施例及び比較例で得られた包装材料を10cm×10cmに切り分け、半分に折って重ね合せ、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、1cm×10cmの領域をヒートシールして、端部はヒートシールされずに接着しておらず、二股に分かれている状態のサンプルを作製した。
このサンプルを、15mm幅で短冊状に切り、二股に分かれている各端部を引張試験機に装着して引張強度(N/15mm)を測定して、合否判定した。
(ヒートシール条件)
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
(引張強度試験条件)
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
(合否判定基準)
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
[臭気濃度]
実施例及び比較例で得られた包装材料(11cm×15cm×2枚)をガスサンプリングバッグ(テドラーバック)で作製したパウチ(13cm×17cm)に入れ、下記の評価ガスをパウチ袋内に注射器で注入した評価パウチを各評価ガス毎に作製し、2日間25
℃で放置した後に、各評価パウチ袋内の空気を注射器で採取して、ジメチルトリスルフィド、硫化水素、アセトアルデヒドの濃度をGC及び検知管で測定して、パウチ袋内のジメチルトリスルフィド、硫化水素、アセトアルデヒドの各々の濃度を測定した。
(評価ガス)
ジメチルトリスルフィド:35ppm
硫化水素:25ppm
アセトアルデヒド:30ppm
その他成分:空気
Figure 0007214992000003
<結果まとめ>
全ての実施例は、優れたシール強度と、優れた臭気濃度の減少を示した。
しかし、シーラント層に消臭体を含有しない比較例1は、シール強度は優れているものの、臭気濃度はほとんど減少せず、シーラント層の消臭体含有量が高すぎる比較例2は、ヒートシール性が劣った。
1 消臭シーラントフィルム
2 基材層
3 接着層
4 中間層
4c 金属箔層
6 シーラント層
6a 非消臭シーラント層
6b 消臭シーラント層
20 化学吸着剤担持無機多孔体

Claims (13)

  1. 少なくとも、シーラント層を含む消臭シーラントフィルムであって、
    前記シーラント層は、消臭体とヒートシール性熱可塑性樹脂とを含有し、
    前記消臭体は、化学吸着剤担持無機多孔体、無機臭気分解剤なる群から選ばれる、1種または2種を含み、
    前記消臭体が前記化学吸着剤担持無機多孔体を含む場合には、前記化学吸着剤担持無機多孔体は、銅、亜鉛、銀、白金、コバルトなる群から選択される、1種または2種以上の元素を含有し、
    前記消臭体が前記無機臭気分解剤を含む場合には、前記無機臭気分解剤は、金属酸化物を、無機物に混錬または担持させたものであり、銅、亜鉛、銀、白金、コバルトなる群から選択される、1種または2種以上の元素を含有し、
    前記シーラント層中の前記消臭体の合計の含有率が、0.2質量%以上、15質量%以下である、消臭シーラントフィルム。
  2. 前記消臭体が、熱可塑性樹脂と、消臭体/熱可塑性樹脂の質量比が、0.5/99.5~40/60の割合で、予め、溶融混練されている、
    請求項1に記載の、消臭シーラントフィルム。
  3. 前記ヒートシール性熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、0.2g/10分以上、10.0g/10分以下である、
    請求項1または2に記載の、消臭シーラントフィルム。
  4. 前記シーラント層が、前記消臭体を含有する消臭シーラント層と、前記消臭体を含有しない非消臭シーラント層とを含み、
    前記非消臭シーラント層が、前記消臭シーラント層の片面および/または両面に、接して積層されている、
    請求項1~3の何れか1項に記載の、消臭シーラントフィルム。
  5. 前記消臭体は、前記化学吸着剤担持無機多孔体、および前記無機臭気分解剤を含有し、
    前記シーラント層中の前記消臭体の合計の含有量が、0.2質量%以上、10質量%以
    下である、
    請求項1~4の何れか1項に記載の、消臭シーラントフィルム。
  6. 前記消臭体は、SiO2/Al23モル比が30/1~8000/1の疎水性ゼオライトを、さらに含有する、
    請求項1~5の何れか1項に記載の、消臭シーラントフィルム。
  7. 基材層と、請求項1~6の何れか1項に記載の消臭シーラントフィルムとを含む、消臭積層体。
  8. さらに、中間層を含み、
    前記中間層は、金属箔、金属蒸着膜、金属酸化物蒸着膜なる群から選ばれる、1種または2種以上からなるガスバリア層を含む、
    請求項7に記載の、消臭積層体。
  9. さらに、中間層として、アルミニウム箔を含む、請求項7に記載の、消臭積層体。
  10. 請求項7~9の何れか1項に記載の消臭積層体から作製された、消臭包装材料。
  11. 請求項10に記載の消臭包装材料から作製された、消臭包装体。
  12. 請求項10に記載の消臭包装材料から作製された、液体内容物用消臭包装体。
  13. 請求項10に記載の消臭包装材料から作製された、酒類用消臭包装体。
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