JP7284692B2 - 芳香族アルコール類の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の一実施形態に係る芳香族アルコール類の製造方法は、芳香族過酸化物類、アルカリ金属、及び有機溶媒を含む組成物を水洗浄する水洗浄工程を含む。
本発明の一実施形態において、前記芳香族過酸化物類は、ヒドロペルオキシ基を有する芳香族化合物であれば特に限定されるものではなく、単一の化合物からなる物質であっても、2種類以上の化合物を含む混合物からなる物質であってもよい。中でも、前記芳香族過酸化物類は、ヒドロペルオキシ基を有する炭化水素基が少なくとも1つ、環構成炭素に結合している芳香族化合物であることがより好ましい。前記ヒドロペルオキシ基を有する炭化水素基は少なくとも1つ、環構成炭素に結合していればよく、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ結合していてもよい。前記炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。前記炭化水素基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。前記炭化水素基は、炭素数が1~8であればよいが、2~8であることがより好ましく、2~6であることがさらに好ましく、2~5であることが特に好ましい。前記炭化水素基は、特に好ましくは、炭素数2~5のアルキル基である。前記芳香族化合物も特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等を挙げることができる。ヒドロペルオキシ基を有する炭化水素基は、炭化水素基のどの炭素原子で環構成炭素に結合していてもよい。
本発明の一実施形態において、アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムからなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、特に限定されるものではないが、前記芳香族過酸化物類を溶解できるものであることがより好ましい。かかる有機溶媒としては、炭素数4~10のケトン類、炭素数4~10のエーテル類、炭素数4~8のアルコール類等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、前記有機溶媒は、メチルイソブチルケトンであることが特に好ましい。
本発明の一実施形態において、前記芳香族過酸化物類、前記アルカリ金属、及び前記有機溶媒を含む組成物は、後述する水素化工程により芳香族アルコール類を製造するための原料液である。
本発明の一実施形態において、水洗浄工程にて用いる水洗浄の方法は特に限定されるものではなく、操作方式は、バッチ方式でも連続方式でも良い。水洗浄には、例えば、混合装置及び油水分離装置を備えた装置を用いることができる。前記混合装置としては、例えば、撹拌機を備えた槽、前記組成物を輸送する撹拌機を備えた配管等を用いることができる。本工程において、混合装置及び油水分離装置を備えた装置を用いる場合は、前記混合装置にて、前記組成物と水とを撹拌下混合し、その後油水分離装置で、水相と油相とを分離した後、水相を油水分離装置から抜き出せばよい。
本発明の一実施形態に係る芳香族アルコール類の製造方法は、アルミナ担持遷移金属触媒と反応液とを分離するための濾過器を備えた装置の中で、前記水洗浄工程にて水洗浄された組成物中の前記芳香族過酸化物類を、アルミナ担持遷移金属触媒の存在下で水素化する水素化工程を含む。
本発明の一実施形態に係る芳香族アルコール類の製造方法は、さらにその他の工程を含み得る。その他の工程としては、前記水洗浄工程に供する前記組成物に含まれる前記芳香族過酸化物類を製造する芳香族過酸化物類製造工程、及び、前記水素化工程にて得られた芳香族アルコール類を精製する後処理工程等を挙げることができる。
本発明の一実施形態において、芳香族過酸化物類製造工程は特に限定されるものではない。以下に、前記芳香族過酸化物類が、例えば1-(ヒドロペルオキシイソプロピル)-3-(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンを主成分として含む場合を例に挙げて説明するが、芳香族過酸化物類製造工程はこれに限定されるものではない。
酸化工程は、ジイソプロピルベンゼンを含有する酸化原料液を酸素又は空気で酸化する工程である。酸化原料液中には、主原料であるメタジイソプロピルベンゼン1~100重量%が通常含有される。通常の反応条件としては、温度70~110℃、圧力0~1MPa(ゲージ圧)、滞留時間0~50時間等を挙げることができる。酸化工程に用いることができる装置としては、例えば流通式反応槽、回分式反応槽、及び反応塔を挙げることができる。酸化工程で得られる酸化反応液としては、1,3-ビス(ヒドロペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1-(ヒドロペルオキシイソプロピル)-3-(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン及びメタジイソプロピルベンゼンを含む液を挙げることができる。
分離工程は、酸化工程で得られた酸化反応液を水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作及び有機溶媒による抽出操作に供すことにより、1,3-ビス(ヒドロペルオキシイソプロピル)ベンゼンと1-(ヒドロペルオキシイソプロピル)-3-(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンとを、各々を含む液に分離する工程である。
本発明の一実施形態において、後処理工程は、水素化工程で得られた芳香族アルコール類を含む反応液から芳香族アルコール類を、晶析、濾過及び乾燥を含む操作を用いて精製する工程である。晶析操作の前に蒸留により有機溶媒の一部を留去する濃縮操作を行ってもよい。
メタジイソプロピルベンゼンの空気による酸化反応により、1-(ヒドロペルオキシイソプロピル)-3-(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン(以下、CHPOと称することがある)及び1,3-ビス(ヒドロペルオキシイソプロピル)ベンゼン(以下、DHPOと称することがある)を含有する酸化油を得た。得られた酸化油に対し、7重量%水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作、次いで、メチルイソブチルケトンによる抽出操作を行い、CHPO及びDHPOを含有するメチルイソブチルケトン溶液(溶液I、芳香族過酸化物類、アルカリ金属、及び有機溶媒を含む組成物)を得た。
水洗浄に用いた水の量を、溶液Iに対し、0.018重量比から0.014重量比に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、溶液II-2を得た。溶液II-2は、0.048mmol/kgのナトリウム、5.4重量%のCHPO及び0.2重量%のDHPOを含有していた。
水洗浄に用いた水の量を、溶液Iに対し、0.018重量比から0.011重量比に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、溶液II-3を得た。溶液II-3は、0.061mmol/kgのナトリウム、5.3重量%のCHPO及び0.2重量%のDHPOを含有していた。
水洗浄に用いた水の量を、溶液Iに対し、0.018重量比から0.009重量比に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、溶液II-4を得た。溶液II-4は、0.10mmol/kgのナトリウム、5.5重量%のCHPO及び0.3重量%のDHPOを含有していた。
水洗浄を行わないこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、溶液II-5を得た。溶液II-5は、0.19mmol/kgのナトリウム、5.8重量%のCHPO及び0.2重量%のDHPOを含有していた。
表1に示されるように、溶液Iを水洗浄する工程が含まれる実施例1~4の製造方法では、溶液Iを水洗浄して得られた、水素化の原料液である溶液II(II-1~II-4)は、溶液II中のアルカリ金属濃度が、溶液Iを水洗浄する工程が含まれない比較例1の製造方法と比べて減少していることがわかる。また、溶液II中のアルカリ金属濃度が低いほど差圧上昇が減少する傾向にあることがわかる。また、溶液Iを水洗浄して得られた、水素化の原料液である溶液II(II-1~II-4)を原料液として使用した実施例1~4では、溶液Iを水洗浄する工程が含まれない比較例1と比較して、差圧上昇が顕著に減少していることが示された。これは、溶液II中のアルカリ金属濃度が低いと金属フィルターの目詰まりが減少していることを示す。
Claims (6)
- 芳香族過酸化物類、アルカリ金属、及び有機溶媒を含む組成物を水洗浄する水洗浄工程と、
アルミナ担持遷移金属触媒と反応液とを分離するための濾過器を備えた装置の中で、前記水洗浄工程にて水洗浄された組成物中の前記芳香族過酸化物類を、アルミナ担持遷移金属触媒の存在下で水素化する水素化工程と、
を含む、芳香族アルコール類の製造方法。 - 前記水洗浄工程にて水洗浄された前記組成物のアルカリ金属濃度は、0.0005mmol/kg以上0.18mmol/kg以下である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記芳香族過酸化物類が、(ヒドロペルオキシイソプロピル)(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(ヒドロペルオキシイソプロピル)ベンゼン、又はこれらの混合物であり、前記水素化工程により得られる芳香族アルコール類の主成分が、ビス(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼンである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記芳香族過酸化物類が、1-(ヒドロペルオキシイソプロピル)-3-(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンであり、前記水素化工程により得られる芳香族アルコール類の主成分が、1,3-ビス(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼンである請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記アルカリ金属が、ナトリウムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記遷移金属が、パラジウム、ニッケル、及び白金から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
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