JP7126093B2 - 熱間プレス部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)電着塗装の付き回り性劣化は、熱間プレス部材が有するZn系めっき層表面の最大高さ粗さRzに相関があり、最大高さ粗さが15.0μm以下であれば、電着塗装の付き回り性を向上することが出来る。
(2)電着塗装後の熱間プレス部材の耐食性はZn系めっき層のZnO被覆率に相関があり、Zn系めっき層のZnO被覆率を85%以上にすることで熱間プレス部材の耐食性を更に向上することが出来る。
(3)熱間プレス加工前に熱処理を行い、熱処理時の鋼板の最高到達温度Tが860℃以下であり、かつ室温から加熱工程終了までの総加熱時間が(24.5-0.025T)min以上とすることで、Zn系めっき層表面の最大高さ粗さRzが15.0μm以下である熱間プレス部材を得る事が出来る。
[1]鋼板の少なくとも一方の面にZn系めっき層を有し、
前記Zn系めっき層表面の最大高さ粗さRzが15.0μm以下であることを特徴とする熱間プレス部材。
[2]前記Zn系めっき層のZnO被覆率が85%以上であることを特徴とする[1]に記載の熱間プレス部材。
[3]前記鋼板が、質量%で、
C:0.20~0.35%、
Si:0.1~0.5%、
Mn:1.0~3.0%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の熱間プレス部材。
[4]さらに前記鋼板が、質量%で、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0002~0.0050%、
Cr:0.1~0.3%、
Sb:0.003~0.03%のうちから選ばれる1種または2種以上の成分組成を含有することを特徴とする、[3]に記載の熱間プレス部材。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の熱間プレス部材の製造方法であって、
鋼板の最高到達温度Tが860℃以下であり、かつ室温から加熱工程終了までの総加熱時間tが(24.5-0.025T)min以上で加熱した後、熱間プレス加工を行うことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法。
上述したように、本発明者らは熱間プレス部材の電着塗装付き回り性とZn系めっき層表面の最大高さ粗さRzに相関があることを見出した。具体的には、Zn系めっき層表面の最大高さ粗さRzが15.0μm以下の場合では、電着塗装の膜厚最少部が厚いことが明らかになった。これは、電着塗装後の熱処理において、Zn系めっき層表面の最大高さ粗さRzが15.0μmを超える場合は、電着塗装の熱フローの障壁となるため、塗装膜厚が薄い部分が存在したためと考えられる。部分的にでも塗装膜厚が薄い部分が存在する場合は、その薄膜部を起点として部材の腐食が進行するため、塗膜厚さが均一に担保されている場合に比べて電着塗装の付き回り性が不十分となり、その結果、耐食性は劣化する。したがって、Zn系めっきの最大高さ粗さRzは15.0μm以下とする。
より耐食性に優れた熱間プレス部材を得るために、本発明では、Zn系めっき層のZnO被覆率を85%以上とすることが好ましい。ZnO被覆率により耐食性が向上されるメカニズムは明らかではないが、めっき露出部(すなわち、ZnOに被覆されていない部分)はZnO被覆部に比べて化成処理性が劣位であり、塗装密着性が低下している可能性が考えられる。なお、ZnO被覆率については、加熱時間を制御することにより所望のZnO被覆率が得られる。
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで強度を向上させる。1470MPa級を超えるような強度を得るためには0.20%以上必要である。一方、0.35%を超えるとスポット溶接部の靱性が劣化する。したがって、C量は0.20~0.35%とすることが好ましい。
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素である。そのためには0.1%以上必要である。一方、0.5%を超えるとフェライトが安定化されるため、焼き入れ性が低下する。したがって、Si量は0.1~0.5%とすることが好ましい。
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが必要である。一方、3.0%を超えると焼鈍時の表面濃化が増加し、めっき密着性の確保が困難になる。したがって、Mn量は1.0~3.0%とすることが好ましい。
P量が0.02%を超えると鋳造時のオーステナイト粒界へのP偏析に伴う粒界脆化により、局部延性の劣化を通じて強度と延性のバランスが低下する。したがって、P量は0.02%以下とすることが好ましい。
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。したがって、極力低減することが望ましく0.01%以下とすることが好ましい。また、良好な伸びフランジ性を確保するため、より好ましくは0.005%以下とする。
Al量が0.1%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.1%以下とすることが好ましい。
N量が0.01%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス前の加熱時にAlNの窒化物を形成し、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.01%以下とすることが好ましい。
Nbは鋼の強化に有効な成分であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下する。したがって、Nbを含有させる場合は0.05%以下とする。
TiもNbと同様に鋼の強化には有効であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下するという課題がある。したがって、Tiを含有させる場合は0.05%以下とする。
Bはオーステナイト粒界からのフェライト生成および成長を抑制する作用を有するため、0.0002%以上の添加が好ましい。一方、過剰なBの添加は成形性を大きく損なう。したがって、Bを含有させる場合は0.0002~0.0050%とする。
Crは鋼の強化および焼き入れ性を向上させるために有用である。このような効果を発現するためには0.1%以上の添加が好ましい。一方、合金コストが高いため0.3%超えの添加では大幅なコストアップを招く。したがって、Crを含有させる場合は0.1~0.3%とする。
Sbも熱間プレスのプロセス中に鋼板表層の脱炭を抑止する効果がある。このような効果を発現するためには0.003%以上の添加が必要である。一方、Sb量が0.03%を超えると圧延荷重の増加を招くため生産性を低下させる。したがって、Sbを含有させる場合は0.003~0.03%とする。
本発明者らは、Zn系めっき層の凹凸形状と熱処理条件の相関を調査した結果、鋼板の最高到達温度Tが高くなるほどRzが増加し、特に860℃超えでは急激にRzが増加することを知見した。著者らは熱間プレス前の熱処理時に凹凸が形成するメカニズムを以下のように推定している。すなわち、熱間プレス用鋼板が熱間プレス加工前に熱処理される際、鋼板の組織がbccからfcc構造に相変態することにより、体積収縮が発生する。この際、表層の溶融めっき層が局所的に収縮した鋼板の隙間に侵入することにより、凹凸が形成する。したがって、凹凸形成を抑制するためには隙間に加熱時に鋼板隙間に侵入する溶融めっき層の体積を減少させることが有効であると考えられ、熱処理温度の低減が効果的であると推定される。上述の通り、熱間プレス部材の電着塗装付き回り性を向上し、耐食性を担保するためにはZn系めっき層の最大高さ粗さRzを抑制することが有効である。したがって、本発明の熱間プレス部材を得るために、熱間プレス時の鋼板到達温度Tは860℃以下とする。なお、熱間プレス時の鋼板到達温度の下限は母材組織によって異なり、オーステナイト単相領域に加熱されるAc3変態点以上とする。
上述の通り、本発明の重要な要件である最大高さ粗さRzを制御する上では鋼板到達温度の低温化が有効である。一方で、熱処理時の鋼板到達温度が低くなるにしたがって、熱間プレス前の鋼板組織がオーステナイト単相組織になりにくい。また、Zn系めっき層のZnO被覆率について、十分な量のZnOが形成し難い。しかしながら、加熱時間を長くすることで熱処理時の鋼板到達温度が低温であってもオーステナイト単相組織を得ることが出来るとともに、所望のZnO被覆率を得ることができる。具体的には、鋼板到達温度をT℃とすると、(24.5-0.025T)min以上加熱することで、オーステナイト単相組織が得られる。したがって、室温から加熱工程終了までの総加熱時間tが(24.5-0.025T)min以上とする。なお、上記加熱を行う方法としては、加熱時間を確保しやすい電気炉やガス炉などが例示できる。また、本発明における、室温から加熱工程終了までの総加熱時間tは、熱処理炉への鋼板投入開始から取り出しまでの時間の範囲をいう。
この冷延鋼板の表面に、表1に示すめっき方法で、種々のZn系めっき層を形成した。なお、めっき層について、溶融めっき処理の条件は、所望の組成が得られるよう溶融めっき浴組成を調整し、浴温度を各組成の融点+20℃とした。電気めっき処理の条件は、所望の組成が得られるように浴中の金属塩比および電流値を調整した。
○:D1-D2が4.0μm未満
△:D1-D2が4.0μm以上8.0μm未満
×:D1-D2が8.0μm以上
評価が○であれば、電着塗装付き回り性に優れた熱間プレス用部材であると判断した。
また、得られたハット成形部品を腐食試験(SAE-J2334)に供し、120サイクル後の側面平坦部中央(100mmC×30mmLの領域)の最大腐食深さE1および平均腐食深さE2を調査し、以下の基準で評価した。
◎:平均腐食深さが0.5mm未満であり、E1-E2が0.2mm未満
○:平均腐食深さが0.5mm未満であり、E1-E2が0.2mm以上
△:平均腐食深さが0.5mm以上1.0mm未満
×:平均腐食深さが1.0mm以上
評価が◎または○であれば、耐食性に優れるとした。表1に評価結果を示す。
○:クラック発生無しまたはクラック深さの平均値が10μm未満
△:クラック深さの平均値が10μm以上200μm未満
×:クラック深さの平均値が200μm以上
評価が○であれば、耐LME特性に優れるとした。
Claims (4)
- 鋼板の少なくとも一方の面にZn系めっき層を有し、
前記Zn系めっき層の表面の少なくとも一部の領域にZnOが形成され、
前記Zn系めっき層表面の最大高さ粗さRzが15.0μm以下である熱間プレス部材の製造方法であって、
鋼板の最高到達温度Tが860℃以下であり、かつ室温から加熱工程終了までの総加熱時間tが(24.5-0.025T)min以上で加熱した後、熱間プレス加工を行うことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法。
ここで、前記Zn系めっき層表面の最大高さ粗さRzは、前記Zn系めっき層の表面に形成されたZnO(ただし、前記Zn系めっき層が露出した露出部を有している場合には、該露出部を含む)表面の最大高さ粗さRzである。 - 前記Zn系めっき層のZnO被覆率が85%以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス部材の製造方法。
- 前記鋼板が、質量%で、
C:0.20~0.35%、
Si:0.1~0.5%、
Mn:1.0~3.0%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の熱間プレス部材の製造方法。 - さらに前記鋼板が、質量%で、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0002~0.0050%、
Cr:0.1~0.3%、
Sb:0.003~0.03%のうちから選ばれる1種または2種以上の成分組成を含有することを特徴とする、請求項3に記載の熱間プレス部材の製造方法。
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