以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、以下の説明において、「前方」とは、電動自転車の走行時の進行方向であり、「後方」とはその反対方向である。具体的には、電動自転車のサドルに対してハンドル側が「前方」である。「左右方向」は、前後方向に対して直交する方向である。
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る電動自転車1の構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る電動自転車1を示す側面図である。
図1に示すように、電動自転車1は、車輪が地面から離間する場合に、車輪の空転を弱めるように、電動モータ21の第2補助駆動力を弱めることができる。
電動自転車1は、第1モードと、第2モードとを有する。第1モードは、例えばアシストモードであり、ペダル17へのユーザの踏力に基づく車体10の前進を補助する。第2モードには、例えば押し歩きモード又は自走モードが含まれる。押し歩きモードでは、ユーザが電動自転車1を押して歩くときに、ユーザによる車体10を前へ押す力に基づいて、車体10の前進が補助される。自走モードでは、電動自転車1を支えながら進むときの車体10の前進が補助される。なお、第2モードでは、ユーザが電動自転車1を支えながら進むときに、電動自転車1が自走してもよい。
電動自転車1は、車体10と、車体10に取り付けられたモータ駆動ユニット20と、操作部40と、バッテリー50と、前照灯60と、クランク回転センサ31と、踏力センサ33と、電流センサ130と、車速センサ243と、手動スイッチ42と、変速段計測部70とを備える。
車体10は、フレーム11と、前輪12と、後輪13と、ハンドル14と、サドル15と、クランク16と、ペダル17と、スプロケット18と、チェーン19とを備える。
フレーム11は、ヘッドパイプ111と、メインフレーム112と、立パイプ113と、フォーク114と、チェーンステー115とを備える。ヘッドパイプ111は、前輪12を支持するフォーク114およびハンドル14を、ヘッドパイプ111の軸を中心に回転自在に支持する。ハンドル14を左右に回すことで、フォーク114に支持された前輪12の向きを左右に回転させることができる。
メインフレーム112は、ヘッドパイプ111と立パイプ113とを連結する部分である。メインフレーム112の下端部には、クランク16およびモータ駆動ユニット20が取り付けられている。本実施の形態に係る電動自転車1は、クランク16とモータ駆動ユニット20とが一体化された、いわゆるセンターユニット方式の電動自転車1である。
立パイプ113は、サドル15を着脱可能に支持する。具体的には、立パイプ113には、サドル15を支持するシートポストが挿入されて固定される。本実施の形態では、立パイプ113に、バッテリー50が着脱可能に取り付けられている。
フォーク114は、前輪12を回転自在に支持する。前輪12を支持するフォーク114には、前照灯60が取り付けられている。チェーンステー115は、後輪13を回転自在に支持する。
図2は、実施の形態に係る電動自転車1のハンドル14および操作部40の斜視図である。
図2に示すように、ハンドル14には、一対のグリップ141およびブレーキレバー142が左右に設けられている。一対のグリップ141は、適切な姿勢で乗車された場合に、手で握られる部分である。また、一対のグリップ141は、電動自転車1を押して又は支えて歩く際にも手で握られて、前方への押力を受ける。一対のグリップ141の少なくとも一方には、握る力又は押力を検知するグリップセンサが設けられていてもよい。
一対のブレーキレバー142は、前輪12および後輪13の各々に取り付けられた、図示しないブレーキ装置の動作レバーである。一方のブレーキレバー142を操作することで、前輪12に取り付けられたブレーキ装置が駆動され、前輪12に対して機械的な制動力を与える。他方のブレーキレバー142を操作することで、後輪13に取り付けられたブレーキ装置が駆動され、後輪13に対して機械的な制動力を与える。
ブレーキレバー142には、ブレーキセンサが設けられており、このブレーキセンサがブレーキレバー142に対する操作を検出するようになっている。
図1に示すように、サドル15は、ユーザが適切な姿勢で乗車した場合に、人が座る部分である。
クランク16は、クランク軸161と、一対のクランクアーム162とを有する。クランクアーム162は、メインフレーム112の両側に1つずつ設けられており、左右方向に延びるクランク軸161の両端に固定されている。クランクアーム162の一方端がクランク軸161に固定され、他方端には、ペダル17が回転自在に固定されている。ペダル17に踏力が加えられた場合、クランクアーム162がクランク軸161を中心に回転し、当該回転による人力駆動力がスプロケット18およびチェーン19を介して後輪13に伝達される。第1モードで動作する場合には、踏力に基づく人力駆動力と、当該人力駆動力に付加された電動モータ21による第1補助駆動力とが後輪13に伝達される。
モータ駆動ユニット20は、電動モータ21および制御装置22が、樹脂製又は金属製の筐体に収納されてユニット化されている。
電動モータ21は、制御装置22による制御に基づいて、バッテリー50からの電力を受けて駆動する。電動モータ21の回転トルクは後輪13のスプロケットに伝達されて、後輪13が回転する。回転トルクは、第1補助駆動力および第2補助駆動力を意味する。また、電動モータ21は、モータ出力を出さない非駆動時に回生電力を発生させてバッテリー50を充電する回生動作を行うことができ、回生ブレーキとして作動することができる。
電動モータ21は、第1補助駆動力および第2補助駆動力となるモータである。電動モータ21は、第1モードを実行中に、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、第1補助駆動力を付加する。また、電動モータ21は、第2モードを実行中に、電動自転車1に対する押して又は支えて歩く力に、第2補助駆動力を付加する。
図3は、実施の形態に係る電動自転車1の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置22は、クランク回転センサ31、踏力センサ33、電流センサ130、車速センサ243、変速段計測部70などのセンサによるセンシング情報に基づいて、電動モータ21の動作を制御する。本実施の形態では、制御装置22は、モータ駆動ユニット20の筐体の内部に収納されているが、これに限らない。制御装置22は、モータ駆動ユニット20とは別体で設けられていてもよい。
制御装置22は、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)などで実現され、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで構成されている。あるいは、制御装置22は、専用の電子回路で実現されてもよい。
制御装置22には、電動モータ21、クランク回転センサ31、踏力センサ33、電流センサ130、車速センサ243、変速段計測部70、手動スイッチ42、操作部40、バッテリー50および前照灯60が接続されている。制御装置22には、各スイッチに対する操作信号、および、各センサによる検出結果が入力される。
クランク回転センサ31および踏力センサ33は、クランク軸161の近傍に配置されている。電流センサ130は、電動モータ21の回転軸の近傍に配置されている。
クランク回転センサ31は、単位時間当たりのクランク16の回転数を検出することができる。クランク回転センサ31は、歯車状の回転体と、回転体の歯を挟むように配置された光出射部と受光部とを有する光検出器とを有することで実現する。なお、クランク回転センサ31は、クランク16の回転数を検出することができればいかなる構成でもよい。
電流センサ130は、電動モータ21に流れる電流値を算出する回路であり、電流値を示す電流情報を出力する。電流センサ130は、モータ回転センサ32と、モータトルクセンサ131とを有する。電流センサ130は、モータ回転センサ32が検知した単位時間当たりの電動モータ21の回転数と、モータトルクセンサ131が検知した電動モータ21のトルクとを用いて電流値を算出する。なお、電流値の算出は、モータ回転センサ32、及びモータトルクセンサ131がそれぞれ単独でも行うことが可能である。このため、電流値の算出には、モータ回転センサ32、及びモータトルクセンサ131の両方を必ず用いる必要はない。
モータ回転センサ32は、電動モータ21の回転軸と一体的に回転する磁石と、ホールICとを有する。ホールICは、磁石の回転に応じて変化する磁界の変化を検出することで、単位時間当たりの磁石の回転数、すなわち、電動モータ21の回転数を検出する。なお、モータ回転センサ32は、電動モータ21の回転数を検出することができればいかなる構成でもよい。
モータトルクセンサ131は、電動モータ21のトルクを検出することができる。モータトルクセンサ131は、例えば磁歪式、歪みゲージ式、光学式等のトルクセンサであるが、これに限定されず、電動モータ21のトルクを検出することができればいかなる構成でもよい。
踏力センサ33は、磁歪式のトルクセンサであり、ペダル17への人力駆動力に基づいてクランク軸161が回転することにより発生する人力駆動力を検出する。踏力センサ33は、コイルと、磁歪発生部とを有する。例えば、ペダル17に踏力が加えられて人力駆動力が発生した場合に、磁歪発生部に歪みが発生する。磁歪発生部には、透磁率が増加する部位と減少する部位とが発生する。このコイルのインダクタンス差を検出することで、人力駆動力を検出する。なお、踏力センサ33の構成は特に限定されず、ペダル17への人力駆動力が検出できればいかなる構成でもよい。人力駆動力は、踏力と同義である。
車速センサ243は、例えば、フォーク114の下端部に設けられている。車速センサ243は、前輪12の回転から電動自転車1の走行速度を検出し、走行速度を示す速度情報を制御装置22に送信する。車速センサ243は、例えば、速度センサ等である。車速センサ243は、電動自転車1の走行速度に関する速度情報を制御部221に出力する。速度センサは、例えば、ホイルセンサなどであってもよいが、対地速度により算出するサイクルコンピュータであってもよく、電動自転車1の速度を検知することができればいかなる構成でもよい。
変速段計測部70は、後輪13の変速段を計測し、変速段を示す情報を制御部221へ送信する。変速段の計測は、例えば、変速段切替装置が出力する変速段を示す情報を制御部221に出力することで実現してもよい。
制御装置22は、クランク回転センサ31、踏力センサ33、電流センサ130、車速センサ243、変速段計測部70などのセンサによるセンシング情報に基づいて、電動モータ21の動作、つまり、適切な第1補助駆動力および第2補助駆動力を付与するための電動モータ21の出力を制御する。本実施の形態では、制御装置22は、モータ駆動ユニット20の筐体の内部に収納されているが、これに限らない。制御装置22は、モータ駆動ユニット20とは別体で設けられていてもよい。
制御装置22は、バッテリー50から供給される電力を、電動モータ21および前照灯60に供給する。
制御装置22は、制御部221を有する。制御部221は、電動自転車1の動作モードに応じて、電動モータ21を駆動する。具体的には、制御部221は、第1モードと第2モードとを有し、第1モードと第2モードとを切り替えて実行する。
第1モードの一例であるアシストモードは、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するモードである。アシストモードは、電源スイッチ41が押下されて電源がオンされた後、人が電動自転車1に乗車している場合に実行される。具体的には、アシストモードは、踏力センサ33で検知したペダル17への踏力が所定の閾値より大きい場合に実行される。
第2モードは、車体10への押力に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は第2補助駆動力を付加して自走させるモード(押し歩きモード又は自走モード)を有する。つまり、押し歩きモードは、電動自転車1を人が押し歩き力に、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩くモードである。押し歩きモードは、人が電動自転車1に乗車しておらず、電動自転車1の車体10を押しながら歩く場合に実行される。
自走モードは、電動自転車1を人が支えた状態で、車体10に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して自走させるモードである。自走モードは、押し歩きモードと同様に、人が電動自転車1に乗車しておらず、電動自転車1の車体10を支えながら歩く場合に実行される。自走モードにおいて、人は、車体10を前方に押す力を加えていない。
なお、押し歩きモードと自走モードとは、車体10に対する前方への押す力の有無によって判別可能である。制御部221は、例えば、グリップ141などに設けられたグリップセンサなどによって前方への押す力の有無を検知し、検知結果に応じて押し歩きモードと自走モードとを切り替えて実行してもよい。あるいは、制御部221は、押し歩きモードと自走モードと判別することなく、第2補助駆動力を付加する第2モードとして実行してもよい。
本実施の形態では、押し歩きモード又は自走モードは、手動スイッチ42が押下されている期間に実行される。なお、押し歩きモード又は自走モードは、ペダル17への踏力が所定の閾値より大きい場合には実行されなくてもよい。つまり、アシストモードと押し歩きモード又は自走モードとは、排他的に実行される。
制御部221は、アシストモードを実行する場合、ペダル17への踏力と電動自転車1の走行速度とに基づいて、電動モータ21が生成する第1補助駆動力の大きさを決定する。ペダル17への踏力は、踏力センサ33による検出結果から得られる。電動自転車1の走行速度は、車速センサ243によって算出される。
なお、クランク16の回転数と電動自転車1の速度とを予め対応付けたテーブルが、制御装置22のメモリに記憶されていてもよい。制御部221は、当該テーブルを参照することで、クランク16の回転数から電動自転車1の走行速度を決定してもよい。
アシストモードにおける第1補助駆動力は、電動自転車1の走行速度に応じて異なるが、例えば、ペダル17への踏力の2倍以下の大きさである。例えば、制御部221は、電動自転車1の走行速度が時速10km未満の場合に、電動モータ21を駆動することで、ペダル17への踏力の2倍以下の第1補助駆動力を発生させる。制御部221は、速度が時速24km以上の場合は、電動モータ21に第1補助駆動力を発生させない。制御部221は、速度が時速10km以上24km未満の場合には、電動モータ21を駆動することで、速度に応じて定められた第1補助駆動力を発生させる。
制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを実行する場合、電動自転車1の走行速度が予め定められた上限値を超えないように、電動モータ21に第2補助駆動力を生成させる。押し歩きモード又は自走モードにおける第2補助駆動力は、例えば、電動自転車1の速度が時速6km未満になる大きさである。ここでは、電動自転車1の走行速度の上限値が時速6kmとしたが、3kmでもよく、特に限定されない。
制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間を計測する計時部222を有する。制御部221は、計時部222が算出した経過期間が第1所定期間以上であるか否かを判断する。制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が、第1所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。つまり、押し歩きモード又は自走モードを開始してから第1所定期間が経過していれば、手動スイッチ42を押下していても、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。
また、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を、規定時間をかけて次第に低下させ、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。なお、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる場合、急に停止させてもよい。
制御部221は、予め設定した期間中での押し歩きモード又は自走モードで電動モータ21が起動した期間を示す積算時間を計測し、押し歩きモード又は自走モードにおいて、積算時間が第2所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。制御部221は、予め設定した期間中での電動自転車1が起動した期間を示す積算時間を示す情報を、計時部222から取得する。ここで、予め設定した期間は、例えば、1時間、1日、1週間といった期間である。積算時間は、予め設定した期間内で、電動モータ21が起動している時間の総和である。
また、制御部221は、経過期間を用いた判断よりも、積算時間を用いた判断を先に行う。つまり、制御部221は、計時部222が積算時間と経過期間とを算出すると、積算時間が第2所定期間以上である場合、経過期間が第1所定期間未満であっても、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。このため、ユーザが、手動スイッチ42をオンにしてから経過期間が経過するまでに、積算時間が第2所定期間以上となれば、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。
制御部221は、電動モータ21の駆動時間、電動モータ21に流れる電流値、電動モータ21の単位時間当たりの回転数、クランクの単位時間当たりの回転数、電動自転車1の変速状態、電動自転車1の走行距離、および、電動自転車1の走行速度のうちの、少なくとも1つの情報に基づいて第1所定期間を算出する。制御部221は、電流センサ130から電動モータ21に流れる電流値を示す情報、モータ回転センサ32から電動モータ21の単位時間当たりの回転数を示す情報を取得する。また、制御部221は、クランク回転センサ31からクランクの単位時間当たりの回転数を示す情報、変速段計測部70から電動自転車1の変速状態を示す情報、車速センサ243から電動自転車1の走行速度を示す速度情報を取得する。さらに、制御部221は、電動モータ21の駆動時間を示す情報などを、計時部222から取得する。また、制御部221は、例えば、電動自転車1の走行距離を示す情報を、積算時間を示す情報と速度情報とから算出してもよい。
制御部221が算出する第1所定期間について説明する。
押し歩きモード又は自走モードを実行する場合において、電動自転車1が平地を走行する場合と、坂道を下る場合と、坂道を上る場合とで電動モータ21にかかる負荷が異なる。制御部221が電動モータ21の駆動時間に基づいて第1所定期間を算出する場合について一例を挙げる。例えば、押し歩きモード又は自走モードで、ユーザが電動自転車1を押し歩いて坂道を下る場合では、ユーザが平地を電動自転車1で押し歩く場合に比べて、電動モータ21の駆動時間が短くなりがちである。このため、電動モータ21の駆動時間が短ければ、押し歩きモード又は自走モードで平地を移動する場合に算出する第1所定期間に比べて、第1所定期間を短くする。
一方、例えば、押し歩きモード又は自走モードで、ユーザが電動自転車1を押し歩いて坂道を上る場合では、ユーザが平地を電動自転車1で押し歩く場合に比べて、電動モータ21の駆動時間が長くなりがちである。このため、電動モータ21の駆動時間が長ければ、押し歩きモード又は自走モードで平地を移動する場合に算出する第1所定期間に比べて、第1所定期間を長くする。
具体的には、平地の場合の第1所定期間を10分と設定しておくと、上りの坂道であれば、10分(デフォルト期間)に1よりも大きい所定係数を乗算することで、新しい所定期間を算出してもよい。また、下りの坂道であれば、10分(第1所定期間)に1未満の所定係数を乗算することで、新しい所定期間を算出してもよい。また、坂道の傾斜角度に応じて所定係数を変動させてもよい。
また、制御部221が電動自転車1の走行距離に基づいて第1所定期間を算出する場合について一例を挙げる。例えば、押し歩きモード又は自走モードでユーザが電動自転車1を押し歩いて移動する場合では、さほど速度は出ないため、押し歩きに時間がかかる。例えば、1日当たりの押し歩きモード又は自走モードでの移動距離が、規定距離以上となれば、第1所定期間を長くする。一方、1日当たりの押し歩きモード又は自走モードでの移動距離が、規定距離未満である場合、さほど押し歩きモード又は自走モードでの移動を行わないことが考えられるため、第1所定期間を短くする。
第1所定期間の算出については、電動モータ21に流れる電流値、電動モータ21の単位時間当たりの回転数、クランクの単位時間当たりの回転数、および、電動自転車1の変速状態においてもこれらと同様である。また、本実施の形態では、これらの情報を組み合わせて第1所定期間を設定してもよい。
なお、制御部221が、電動モータ21の駆動時間、電動モータ21に流れる電流値、電動モータ21の単位時間当たりの回転数、クランクの単位時間当たりの回転数、電動自転車1の変速状態、電動自転車1の走行距離、および、電動自転車1の走行速度を示すそれぞれの情報に基づいて、それぞれの第1所定期間を算出してもよい。そして、制御部221は、それぞれ算出した第1所定期間の中から、最も短い第1所定期間を採用してもよく、最も長い第1所定期間を採用してもよい。
このようにして、制御部221は、それぞれの情報に基づいて、第1所定期間を算出することで、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させるための最適な時間を算出する。
計時部222は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの、電動モータ21の駆動時間、電動モータ21が起動した期間を示す積算時間を算出する。計時部222は、算出した時間を制御部221に出力する。
バッテリー50は、電動モータ21の駆動用の電力を貯める蓄電池である。バッテリー50は、例えば、二次電池であるが、キャパシタなどであってもよい。バッテリー50は、電動モータ21に電気的に接続されている。具体的には、バッテリー50は電動モータ21に対して電力を供給するとともに、電動モータ21からの回生電力を充電する。
操作部40は、電源スイッチ41、前照灯60を点灯させるライトスイッチ等が設けられている端末装置である。操作部40は、ユーザによる操作を受け付ける、タッチパネルディスプレイ、機械式のボタンなどである。
図4は、実施の形態に係る電動自転車1の表示部44を示す模式図である。図4に示すように、操作部40は、後輪13の空転が起こっていることを表示する表示部44を備える。表示部44は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
[動作]
図5は、実施の形態に係る電動自転車1の動作を示すフローチャートである。
ここでは、予め電源スイッチ41がオンされている場合を想定し、電動自転車1の押し歩きモード又は自走モードの停止を行う動作について説明する。このフローでは、電源スイッチ41をオフにする、または、手動スイッチ42をオフにすることで、経過期間のカウントをリセットしたり、処置の途中にこれらがオフにされても、処理を最初に戻したりする。
図5に示すように、まず、手動スイッチ42は、ユーザにより押されている(S11)。制御部221は、押し歩きモード又は自走モード(第2モード)を実行する(S12)。具体的には、制御部221は、電動モータ21を駆動することで、第2補助駆動力を発生させる。これにより、ユーザによる押し歩き力に、電動モータ21の回転に応じた第2補助駆動力が付加される。なお、手動スイッチ42を押下していない場合、アシストモードを実行していてもよい。ステップS12は、モード実行工程の一例である。
次に、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの時間を、計時部222によりカウントさせる(S13)。計時部222は、押し歩きモード又は自走モードを開始後にカウントを開始し、所定の時間間隔で制御部221に時間を示す時間情報を出力する。つまり、計時部222は、ステップS16で用いる積算時間を計測し、ステップS17で用いる経過期間も計測する。
次に、制御部221は、各々のセンサからセンシング情報を取得する(S14)。
次に、制御部221は、センシング情報に基づいて、第1所定期間を算出する(S15)。制御部221は、経過期間と比較するための第1所定期間と、積算時間と比較するための第2所定期間とを算出する。
次に、制御部221は、ステップS13で計時部222が計測している時間情報と、ステップS14で算出した積算時間と比較するための第2所定期間とに基づいて、積算時間が第2所定期間以上であるか否かを判断する(S16)。
制御部221は、積算時間が第2所定期間以上である場合(S16でYes)、電動モータ21の第2補助駆動力をゼロにする、つまり、電動モータ21を停止するように、電動モータ21を制御する(S18)。
次に、制御部221は、ステップS13で計時部222がカウントした時間をリセットする(S19)。そして、電動自転車1は、この処理を終了し、最初に戻る。
一方、制御部221は、積算時間が第2所定期間未満である場合(S16でNo)、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が第1所定期間以上であるか否かを判断する(S17)。
制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が第1所定期間以上であると判断すると(S17でYes)、ステップS18に進み、同様の処理を行う。
一方、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの積算時間が第2所定期間未満である場合(S16でNo)、ステップS16に進み、同様の処理を行う。
[作用効果]
次に、本実施の形態における電動自転車1および電動自転車1の制御方法の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る電動自転車1は、電動モータ21を備える電動自転車1である。電動自転車1は、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモードと、車体10への押力に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は第2補助駆動力を付加して自走させる第2モード(押し歩きモード又は自走モード)とを切り替えて実行する制御部221を備える。そして、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が、第1所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。
このように、押し歩きモード又は自走モードにおいて、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が第1所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。このため、この電動自転車1では、押し歩きモード又は自走モードを実行する装置が故障したとしても、電動モータ21の第2補助駆動力を第1所定期間経過後に停止させることができるため、押し歩きモード又は自走モードの実行が長時間に及ぶこともない。
したがって、この電動自転車1では、押し歩きモード又は自走モードを停止させることで、安全性を高めることができる。
また、本実施の形態に係る電動自転車1の電動自転車1は、電動モータ21を備える電動自転車1である。電動自転車1は、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行する第1モードと、車体10への押力に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードとを切り替えて実行する制御部221を備える。そして、制御部221は、使用者による操作を要さずに第2モードを停止する自動停止機能を有する。
また、本実施の形態に係る電動自転車1の制御方法は、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ21による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモードと、車体10への押力に、電動モータ21による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードとを切り替えて実行するモード実行工程と、押し歩きモード又は自走モードにおいて、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が第1所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる停止制御工程とを含む。
これらにおいても、上述と同様の作用効果を奏する。
また、本実施の形態に係る電動自転車1は、さらに、予め設定した期間中での押し歩きモード又は自走モードで電動モータ21が起動した積算時間を計測する計時部222を備える。そして、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードにおいて、計時部222が計測した積算時間が第2所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。
この構成によれば、計時部222は、予め設定した期間として例えば1日の内の、押し歩きモード又は自走モードを実行している積算時間を算出する。制御部221は、計時部222が算出した積算時間が第2所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。このように、予め設定した期間内で、押し歩きモード又は自走モードを実行することが可能な期間を決めることで、断続的に押し歩きモード又は自走モードが実行されても、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させることができる。このため、この電動自転車1では、安全性をより高めることができる。
また、本実施の形態に係る電動自転車1において、制御部221は、電動モータ21の駆動時間、電動モータ21に流れる電流値、電動モータ21の単位時間当たりの回転数、クランクの単位時間当たりの回転数、電動自転車1の変速状態、および、電動自転車1の走行速度のうちの、少なくとも1つの情報に基づいて第1所定期間を算出する。
押し歩きモード又は自走モードを実行する場合において、電動自転車1が平地を走行する場合と、坂道を下る場合と、坂道を上る場合とで電動モータ21にかかる負荷が異なる。例えば、電動自転車1が坂道を下る場合では、電動自転車1が平地を走行する場合に比べて、電動モータ21には負荷がかからないため、平地の場合よりも第1所定期間を短く算出する。また、電動自転車1が坂道を上る場合では、電動自転車1が平地を走行する場合に比べて、電動モータ21には負荷がかかるため、平地の場合よりも第1所定期間を長く算出する。このようにして、制御部221は、電動モータ21に流れる電流値に基づいて第1所定期間を算出することで、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させるための最適な時間を算出することができる。
また、本実施の形態に係る電動自転車1は、さらに、電動モータ21に流れる電流値を算出し、電流値を示す電流情報を出力する電流センサ130を備える。そして、制御部221は、電流情報に基づいて、第1所定期間を算出する。
例えば、押し歩きモード又は自走モードを実行する場合において、電動自転車1が坂道を上る場合では、電動自転車1の走行速度が上がり難く、坂道を上りきるのに時間がかかる。一方で、押し歩きモード又は自走モードを実行する場合において、電動自転車1が坂道を下る場合では、電動自転車1の走行速度が上がり易く、坂道を上る場合ほどは坂道を下りきるのに時間がかからない。このため、電動自転車1が坂道を上る場合では、坂道を下る場合よりも第1所定期間を長く算出し、電動自転車1が坂道を下る場合では、第1所定期間を短く算出する。
また、本実施の形態に係る電動自転車1は、さらに、電動自転車1の走行速度を検知し、走行速度を示す速度情報を出力する車速センサ243を備える。そして、制御部221は、速度情報に基づいて、第1所定期間を算出する。
これによれば、制御部221は、電動モータ21の駆動時間、電動モータ21が起動した期間を示す積算時間、電動モータ21に流れる電流値、電動自転車1の走行速度、電動モータ21の単位時間当たりの回転数、クランクの単位時間当たりの回転数、電動自転車1の変速状態、電動自転車1の走行距離、および、電動自転車1の走行速度のうちの、少なくとも1つの情報に基づいて第1所定期間を算出する。このため、例えば、これらの情報をセンシングするある機器が故障したとしても、残りの情報に基づいて第1所定期間を算出することができる。
また、本実施の形態に係る電動自転車1において、制御部221は、押し歩きモード又は自走モードを開始してからの経過期間が第1所定期間以上である場合、電動モータ21の第2補助駆動力を次第に低下させて、電動モータ21の第2補助駆動力を停止させる。
これによれば、制御部221は、電動モータ21の第2補助駆動力を、次第に低下させて、後に停止させる。電動モータ21の第2補助駆動力が急に停止すれば、ユーザに急に負荷がかかることで違和感を与えることがあるが、電動モータ21の第2補助駆動力を次第に低下させることで、ユーザに違和感を与え難くなる。
(その他)
以上、本発明に係る電動自転車および電動自転車の制御方法について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施の形態では、押し歩きモード又は自走モードを開始する指示を受け付ける入力部の一例として、手動スイッチを備える例を示したが、これに限らない。例えば、手動スイッチの代わりに、ハンドルのグリップに設けられたグリップセンサを備えてもよい。グリップセンサが前方への押力を検出した場合に、制御部は、押し歩きモード又は自走モードを実行してもよい。グリップセンサが前方への押力を検出しない場合に、制御部は、押し歩きモード又は自走モードを停止してもよい。
また、上記の実施の形態では、電動自転車において、図5におけるステップS16およびステップS17のいずれかの処理を省略してもよい。
また、上記の実施の形態では、計時部は、制御装置に設けられているが、制御部に設けられていてもよく、制御装置の外部に設けられていてもよい。
また、上記実施の形態において、制御装置の構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、制御装置22の構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。