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JP7190646B2 - 下肢部用伸縮性衣料 - Google Patents

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Description

本発明は、下肢部用伸縮性衣料に関し、詳しくは、高い伸長性および伸長回復性を有する伸縮性織物を含み、耐機械的損傷性およびファッション性に優れており、縫製が容易な構造を有し、少なくとも人の下腿部に着圧を与えることにより、下肢部の静脈還流を促進し、浮腫を防止および予防することができ、かつ織物を含む伸縮性衣料が段階的圧迫法設計を有する場合に問題となる、縫合部に起因する圧痕の発生を低減することができ、着脱が容易である肢部用伸縮性衣料に関する。
下肢静脈瘤、深部静脈血栓症等の下肢静脈疾患や、リンパ浮腫等の治療および予防のための一方法として、医療用弾性ストッキングを着用する方法がある。医療用弾性ストッキングは、下肢部の静脈血や、リンパ液の鬱滞等を軽減または予防し、静脈還流を促進したり、浮腫を改善したりするために、一般的に足首への圧迫圧が最も強く、心臓方向へ段階的に減少する圧迫圧が与えられる段階的圧迫法設計を有する。
またスポーツ用レッグウェアや、労働時に履くズボン等についても、血流促進、疲労軽減、浮腫の予防等のために、段階的圧迫法設計を有するものが提案されている。例えば、特許文献1(特開2011-179137号)は、着用者の体型に関わらず、着圧を足首から上方に向けて段階的に低減するレッグウェアとして、30%伸長応力が0.5~0.7Nである強パワー編地と、30%伸長応力が0.2~0.4Nである弱パワー編地とを、所定の比率および配置で組み合せたレッグウェアを提案している。しかし、特許文献1のレッグウェアは、従来の医療用弾性ストッキングと同様に、編物からなるため、耐機械的損傷性、ファッション性等が不十分である。
そこで、特許文献2(特開2015-214784号)は、見た目のスマートさ、動き易さ、および安全性に優れ、下腿部の血流促進による疲労予防および浮腫み改善を簡単に行える快適なズボンとして、膝下部が外側生地及び内側生地からなる2重構成であり、内側生地の少なくとも一部に着用者の下腿部に対する着圧を調整するための手段を備えたズボンを提案している。このズボンでは、少なくとも外側生地に織物を使用することができるため、ファッション性や、外側生地の耐機械的損傷性を改善することができる。しかし、高い伸縮性が要求される内側生地に織物を使用するのは困難であり、実際には内側生地として編物が使用されるため、少なくとも内側生地の耐機械的損傷性が十分ではない。しかもこのズボンは、膝下部が外側生地及び内側生地からなる2重構成のため、縫製工程が複雑である。
そのため、耐機械的損傷性およびファッション性に優れた織物を含み、段階的圧迫法設計を有し、かつ縫製が容易な下肢部用衣料が望まれるが、そのような衣料に使用する織物には、大きな伸長性および伸長回復性が要求される。また織物を用いる下肢部用衣料は、通常、前身頃と後身頃とが巻縫いされた縫合部を有するが、生地の重なりのために縫合部が厚く、そのため段階的圧迫法設計を有していると、縫合部により脚部が局部的に圧迫され、圧痕が残るだけでなく、血流障害や皮膚障害が生じる恐れがある。
特開2011-179137号 特開2015-214784号
従って、本発明の目的は、高い伸長性および伸長回復性を有する伸縮性織物を含み、耐機械的損傷性およびファッション性に優れており、縫製が容易な構造を有し、少なくとも人の下腿部に着圧を与えることにより、下肢部の静脈還流を促進し、浮腫を防止および予防することができ、かつ織物を含む伸縮性衣料が段階的圧迫法設計を有する場合に問題となる、縫合部に起因する圧痕の発生を低減することができ、着脱が容易な下肢部用伸縮性衣料を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、伸縮性織物として、弾性繊維糸およびこれと複合化された異素材繊維からなる糸を含む伸縮性複合糸を含むものを用い、衣料の前身頃と後身頃との縫合部について、生地の重なりが少なく、比較的薄く、衣料の外側に設けた縫製構造とし、衣料の裾部について、裏側に一つ折りした縫製構造とすると、高い伸長性および伸長回復性を有する伸縮性織物を含み、耐機械的損傷性およびファッション性に優れており、縫製が容易な構造を有し、少なくとも人の下腿部に着圧を与えることにより、下肢部の静脈還流を促進し、浮腫を防止および予防することができ、かつ織物を含む伸縮性衣料が段階的圧迫法設計を有する場合に問題となる、縫合部に起因する圧痕の発生を低減することができ、着脱が容易な下肢部用伸縮性衣料が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第1の下肢部用伸縮性衣料は、伸縮性織物を含み、前身頃および後身頃を脇側および内股側で縫合したズボン又は筒状サポーターの形状を有し、少なくとも人の下腿部に着用し、着圧を与えるものであって、
上記伸縮性織物は、弾性繊維糸およびこれと複合化された異素材繊維からなる糸を含む伸縮性複合糸を含む緯糸と、化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を含む経糸とを含み、
上記下肢部用伸縮性衣料の脇側縫合部および内股側縫合部の縫製構造は、以下の(1)~(3)のいずれかである:
(1)上記脇側縫合部および内股側縫合部のうちの一方は、外表に合わせた上記前身頃の縫代と上記後身頃の縫代とが重ね縫いされた縫製構造を有し、上記脇側縫合部および内股側縫合部のうちの他方は、裏側に折り込まれた上記前身頃の縫代の縁と、表側に折り込まれた上記後身頃の縫代の縁とが突き合わせられ、かつ上記前身頃および後身頃の各々の折り山の際が縫われるか、表側に折り込まれた上記前身頃の縫代の縁と、裏側に折り込まれた上記後身頃の縫代の縁とが突き合わせられ、かつ上記前身頃および後身頃の各々の折り山の際が縫われた両伏せ縫いにより縫合した縫製構造を有する;
(2)上記脇側縫合部及び内股側縫合部の両方が、上記外表に設けられた重ね縫いされた縫合部による縫製構造を有する;
(3)上記脇側縫合部及び内股側縫合部の両方が、上記両伏せ縫いされた縫合部による縫製構造を有する、
ことを特徴とする。
第1の下肢部用伸縮性衣料の好ましい例では、良好な外観を得るために、上記外表に設けられた重ね縫いされた縫合部は、上記前身頃側または後身頃側に重ねられた状態で、テープ状の生地により被覆されている。
第1の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、人の足首部を被覆する裾部を有し、上記裾部は、裏側に一つ折りした裾側端部が、少なくとも下糸にウーリー糸を用いたカバーステッチまたはチェーンステッチにより縫合された縫製構造を有する。このような構成の裾部を形成することにより、裾部に優れた伸縮性を与えることができ、着脱が容易な下肢部用伸縮性衣料が得られる。
本発明の第2の下肢部用伸縮性衣料は、伸縮性織物を含み、前身頃および後身頃を脇側および内股側で縫合したズボン又は筒状サポーターの形状を有し、少なくとも人の下腿部に着用し、着圧を与える下肢部用伸縮性衣料であって、
前記伸縮性織物は、弾性繊維糸およびこれと複合化された異素材繊維からなる糸を含む伸縮性複合糸を含む緯糸と、化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を含む経糸とを含み、
前記下肢部用伸縮性衣料は、前記人の足首部を被覆する裾部を有し、前記裾部は、裏側に一つ折りした裾側端部が、少なくとも下糸にウーリー糸を用いたカバーステッチまたはチェーンステッチにより縫合された縫製構造を有することを特徴とする。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料の好ましい例では、上記伸縮性織物は、その緯糸が上記下肢部用伸縮性衣料の横断面方向に配向されるように縫製されている。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、裾部は、前裾が後裾より高い位置となるように、裾線が前方から後方へ斜め下げにカットされており、かつ末広がりの形状を有する。裾部をこのような形状とすると、着脱の利便性が向上したり、はき心地が向上したりする。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、裾部に優れた伸縮性を与え、はき心地を向上するために、裾部の裾側端部は、テープ状の伸縮性生地で被覆されている。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記下肢部用伸縮性衣料は、人の足首部を被覆する裾部および人の腓腹部を被覆する部位を有し、裾部の非着用時の周長をL(cm)とし、腓腹部を被覆する部位の非着用時の周長をL(cm)とし、人の足首部の周長をLa(cm)とし、人の腓腹部の周長をLb(cm)としたとき、LとLaとの比(L/La)は0.74~0.86の範囲であり、LとLbとの比(L/Lb)は0.86~0.95の範囲である。より好ましくは、上記下肢部用伸縮性衣料は、人の腓腹部と足首部との中間に位置する腓腹下部を被覆する部位を有し、腓腹下部を被覆する部位の非着用時の周長をL(cm)とし、腓腹下部の周長をLc(cm)としたとき、LとLcとの比(L/Lc)は0.81~0.92の範囲である。また 人の大腿部eの周長をL (cm)とし、大腿部eを被覆する部位Eの非着用時の周長を (cm)としたとき、L とL との比(L /L )は0.85~0.95の範囲 が好ましく、0.87~0.92の範囲がより好ましい。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、少なくとも人の下腿部を被覆する部分は、個別の着用者の下腿部の輪郭およびサイズに応じて調整された形状を有する。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の伸縮性複合糸の伸長率は30%以上であり、上記伸縮性複合糸の弾性回復率は70%以上である。この伸縮性複合糸の伸長率は40%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのがさらに好ましい。上記伸縮性複合糸の弾性回復率は80~100%であるのがより好ましく、90~100%であるのがさらに好ましい。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の経方向1cm幅当たりの上記弾性繊維糸の合計繊度は2,000dtex/cm以上である。この合計繊度は4,000dtex/cm以上であるのがより好ましい。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の伸縮性複合糸は、
上記弾性繊維糸の外周に、上記異素材繊維からなる糸を螺旋状に巻きつけたカバード糸;上記弾性繊維糸を、上記異素材繊維からなる短繊維粗糸とともに精紡して得られ、上記弾性繊維糸からなる芯成分と、上記短繊維粗糸から形成された短繊維糸からなる鞘成分とを有する芯鞘構造を有するコアスパン糸;
上記弾性繊維糸の外周に、上記異素材繊維からなる繊条糸を交絡させてなる交絡複合糸;および
上記弾性繊維糸と、上記異素材繊維からなる糸とを直接合撚した合撚複合糸
からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の伸縮性複合糸は、上記弾性繊維糸からなる伸縮性芯糸に、上記異素材繊維からなる糸を鞘糸として螺旋状に一重となるように巻きつけたシングルカバード糸であり、上記伸縮性芯糸1m当たりの上記鞘糸の巻回数は1,000~2,500T/mである。この鞘糸の巻回数は1,300~2,400T/mであるのがより好ましく、1,800~2,200T/mであるのがさらに好ましい。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の製織時に、上記伸縮性複合糸は上記30%以上の伸長率を保持しており、かつ製織時の上記伸縮性織物中の上記伸縮性複合糸の伸長倍率は、製織前の上記伸縮性複合糸を基準として1.30倍以下に保持されている。この伸長倍率は1.20倍以下がより好ましく、1.10倍以下がさらに好ましく、1.05倍以下がさらに好ましく、1.03倍以下が最も好ましい。
上記のように、伸縮性複合糸の伸長倍率が1.30倍以下に保持されている伸縮性織物では、緯糸方向の洗濯収縮率は5%以下である。この洗濯収縮率は、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、洗濯処理後の経糸密度は5~80本/cmである。この経糸密度は、より好ましい例では15~60本/cmであり、最も好ましい例では20~50本/cmである。
高い伸長性及び伸長回復性を得るために、伸縮性織物の伸縮性複合糸の弾性繊維糸はポリウレタン弾性糸であるのが好ましく、上記伸縮性複合糸に加工する前のポリウレタン弾性糸の繊度は20dtex以上であるのが好ましい。ポリウレタン弾性糸の繊度は40~1,300dtexであるのがより好ましく、200~650dtexであるのが最も好ましい。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の伸縮性複合糸の異素材繊維からなる糸は、化学繊維糸及び/又は天然繊維糸から選択され、上記化学繊維糸は、ポリアミド繊維糸、ポリエステル繊維糸およびポリオレフィン繊維糸からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、上記天然繊維糸は綿糸である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物の伸縮性複合糸の異素材繊維からなる糸は、ポリアミド繊維糸、ポリエステル繊維糸および綿糸からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記ポリエステル繊維糸は、ポリエチレンテレフタレート繊維糸及び/又はポリブチレンテレフタレート繊維糸である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記ポリオレフィン繊維糸は、ポリエチレン繊維糸及び/又はポリプロピレン繊維糸である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、伸縮性織物の緯糸方向の定荷重伸長率(JIS-L-1096)は40%以上である。この定荷重伸長率は、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、緯糸方向の伸長回復率(JIS-L-1096)は85%以上である。この伸長回復率は、より好ましくは90%以上である。
高い伸長性及び伸長回復性を得るために、洗濯処理後の複合糸密度は10~40本/cmであるのが好ましく、15~30本/cmがより好ましい。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物は、綾組織を有するストレッチデニムであるか、綾組織を有し、かつ上記経糸が双糸のコーマ糸を含むストレッチチノクロスである。
第1及び第2の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の好ましい例では、上記伸縮性織物は綾組織を有するストレッチデニムであり、上記下肢部用伸縮性衣料はストレッチジーンズの形態を呈する。
本発明によれば、高い伸長性および伸長回復性を有する伸縮性織物を用いるので、足首から心臓方向へ漸減的な着圧を安定的に与えられ、少なくとも人の下腿部に着圧を与えることにより、下肢部の静脈還流を促進し、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症等の下肢静脈疾患や、リンパ浮腫等の治療および予防に有効な医療用の下肢部用伸縮性衣料が得られる。本発明の下肢部用伸縮性衣料はまた、衣料の前身頃と後身頃との縫合部について、生地の重なりが少なく、比較的薄く、衣料の外側に設けた縫製構造としたので、脚部に長時間着圧を与えても圧痕の発生を低減することができる。また衣料の裾部について、裏側に一つ折りした縫製構造としたので、脚部に長時間着圧を与えても圧痕の発生を低減することができ、かつ着脱が容易である。本発明の下肢部用伸縮性衣料はまた、耐機械的損傷性およびファッション性に優れており、縫製が容易な構造を有しているので、医療用途のみならず、スポーツ用レッグウェア、労働時に履くズボン、一般的なファッションアイテム等としても使用でき、血流促進、疲労軽減、浮腫の予防等に優れた効果が得られる。特に、伸縮性複合糸に、その打ち込み方向とほぼ反対方向に空気を吹き付ける手段を具備するグリッパー織機を用いて製織した場合、伸縮性織物は、その伸縮性複合糸の延伸が抑制されているので、低い洗濯収縮率を有しており、洗濯を繰り返しても、上記の人の下腿部への着圧を安定的に与えることができる。
本発明の下肢部用伸縮性衣料の一例を示す正面図および背面図である。 本発明の下肢部用伸縮性衣料を着用する人の下肢部を示す側面図である。 図1に示す下肢部用伸縮性衣料の脇側縫合部を示す部分拡大図である。 図1に示す下肢部用伸縮性衣料の内股側縫合部を示す部分拡大図である。 下肢部用伸縮性衣料の裾部の一例を示す部分拡大図である。 本発明の下肢部用伸縮性衣料の別の例を示す正面図および背面図である。 下肢部用伸縮性衣料の裾部の別の例を示す部分拡大図である。 本発明の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の例を示す正面図である。 本発明の下肢部用伸縮性衣料のさらに別の例を示す正面図である。 本発明の下肢部用伸縮性衣料に用いる伸縮性織物が含む伸縮性複合糸の一例を概略的に示す斜視図である。 伸縮性複合糸を製造する装置の一例を概略的に示す正面図である。 伸縮性織物を製造する織機の一例を示す概略斜視図である。 図12に示す織機による製織工程を模式的に示す工程説明図である。 図12に示す織機のエアーノズル及びその近傍を概略的に示す部分拡大図である。 エアーノズルの別の例を概略的に示す部分拡大図である。 (a)はエアーノズルのさらに別の例を概略的に示す部分拡大図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。 エアーノズルのさらに別の例を概略的に示す部分拡大図である。 織機のメインシャフトの回転角(度)と、メインシャフトにより各々駆動されるスレイソード及びベルトの動き並びに緯糸入れ動作との関係の一例を示すフローチャートである。
本発明の各実施形態を添付図面を参照して詳細に説明するが、特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更をしても良い。
[1]下肢部用伸縮性衣料
本発明の下肢部用伸縮性衣料(以下単に「下肢部用伸縮性衣料」又は「本発明の衣料」とよぶことがある)は、伸縮性織物を含み、少なくとも人の下腿部(膝から足首までの範囲)に着用し、着圧を与えるように形成されている。
図1は、各々下肢部用伸縮性衣料の一例を示す正面図および背面図である。この例では、下肢部用伸縮性衣料は、前身頃1および後身頃1’を脇側および内股側で縫合したズボンの形状を有し、全体的に伸縮性織物からなる。後述するように、本発明の衣料に使用する伸縮性織物は、緯糸が伸縮性を有するので、伸縮性織物は、通常その緯糸が下肢部用伸縮性衣料の横断面方向に配向されるように縫製される。後述するように、伸縮性織物としては綾組織を有するストレッチデニムか、綾組織を有し、かつ経糸が双糸のコーマ糸を含むストレッチチノクロスが好ましく、この場合、下肢部用伸縮性衣料はストレッチジーンズやストレッチチノパンツの形態を呈し、静脈還流等の機能のみならず、ファッション性にも優れており、一般的な衣料としても着用することができる。
下肢部用伸縮性衣料は、少なくとも人の下腿部のほぼ全体に着圧を与えるために、少なくとも人の下腿部を被覆する部分10が、長手方向のほぼ全体に亘って人の下腿部に密着し、圧迫するように形成されている。すなわち、下肢部用伸縮性衣料は、少なくとも人の下腿部を被覆する部分10が、非着用時において、人の下腿部の輪郭にほぼ沿った筒形で、かつ長手方向のほぼ全体に亘って人の下腿部より細い形状を有しており、伸縮性織物の弾性により、着用時に少なくとも周方向に伸びて長手方向のほぼ全体に亘って人の下腿部に密着し、周囲から圧迫力を与える。
好ましくは、下肢部用伸縮性衣料は、人の大腿部から下腿部までの範囲(以下単に「脚部」とよぶことがある)を被覆する部分11が、長手方向のほぼ全体に亘って人の脚部に密着し、圧迫するように形成されており、これにより人の脚部全体に着圧を与えることができる。この場合、下肢部用伸縮性衣料は、人の脚部を被覆する部分11が、非着用時において、人の脚部全体の輪郭にほぼ沿った筒形で、かつ長手方向のほぼ全体に亘って人の脚部より細い形状を有しており、伸縮性織物の弾性により、着用時に少なくとも周方向に伸びて長手方向のほぼ全体に亘って人の脚部全体に密着し、周囲から圧迫力を与える。
好ましくは、下肢部用伸縮性衣料は、少なくとも人の下腿部を被覆する部分10が、個別の着用者の下腿部の輪郭およびサイズに合うように調整された形状を有しており、より好ましくは、人の脚部を被覆する部分11の全体が、個別の着用者の脚部全体の輪郭およびサイズに合うように調整された形状を有する。
図2は、本発明の衣料を着用する人の下肢部を示す側面図である。本発明の衣料は、足首から心臓方向へ漸減的な着圧が与えられるように設計されている。漸減的な着圧は、段階的又は連続的に弱くなるように与えられればよい。足首から心臓方向へ漸減的な着圧を与えることにより、下肢部の静脈血や、リンパ液の鬱滞等を軽減または予防し、静脈還流を促進したり、浮腫を改善したりすることができる。
足首部(下肢部のうち最も細い部分)aに対する、本発明の衣料による着圧値Pは33±10hPaの範囲であるのが好ましく、33±5hPaの範囲であるのがより好ましい。腓腹部(下腿部のうち最も太い部分)b、足首部aと腓腹部bとの中間に位置する腓腹下部c、膝頭中央部dおよび大腿部(膝頭中央部dから大腿付け根部までの範囲を長手方向に三等分した場合の、膝頭中央部dから3分の2の部分)eの各部位に対する本発明の衣料による着圧値は、上記足首部aに対する着圧値Pを100%として、それぞれ、腓腹部bに対する着圧値Pが40~60%の範囲であり、腓腹下部cに対する着圧値Pが60~80%の範囲であり、膝頭中央部dに対する着圧値Pが20~40%の範囲であり、大腿部eに対する着圧値Pが20~40%の範囲であるのが好ましい。着圧は、エアパック式衣服圧測定器で測定することができる。
下肢部用伸縮性衣料は、上記着圧値P~Pを得るために、各部位a~eの周長に対し、各部位a~eを被覆する下肢部用伸縮性衣料の各部位A~Eの非着用時の周長が設定される。足首部aの周長をL(cm)とし、足首部aを被覆する裾部Aの非着用時の周長をL(cm)としたとき、LとLとの比(L/L)は0.74~0.86の範囲が好ましく、0.76~0.84の範囲がより好ましい。腓腹部bの周長をL(cm)とし、腓腹部bを被覆する部位Bの非着用時の周長をL(cm)としたとき、LとLとの比(L/L)は0.86~0.95の範囲が好ましく、0.88~0.93の範囲がより好ましい。腓腹下部cの周長をL(cm)とし、腓腹下部cを被覆する部位Cの非着用時の周長をL(cm)としたとき、LとLとの比(L/L)は0.81~0.92の範囲が好ましく、0.83~0.90の範囲がより好ましい。膝頭中央部dの周長をL(cm)とし、膝頭中央部dを被覆する部位Dの非着用時の周長をL(cm)としたとき、LとLとの比(L/L)は0.87~0.97の範囲が好ましく、0.90~0.94の範囲がより好ましい。大腿部eの周長をL(cm)とし、大腿部eを被覆する部位Eの非着用時の周長をL(cm)としたとき、LとLとの比(L/L)は0.85~0.95の範囲が好ましく、0.87~0.92の範囲がより好ましい。
上述のように、下肢部用伸縮性衣料は、個別の着用者の脚部の輪郭およびサイズに合うように調整された形状を有しているのが好ましい。そのために、下肢部用伸縮性衣料は、前身頃1および後身頃1’の各々について、下肢部の各部位a~eの断面形状に合わせて、各部位A~Eにおける幅を設定する。
図3は、脇側縫合部12を示す部分拡大図である。脇側縫合部12は、外表に合わせた前身頃1の縫代と後身頃1’の縫代とが重ね縫いされた縫製構造を有する。重ね縫い部分120を、下肢部用伸縮性衣料の外側に設けることにより、縫合部120により脚部が局部的に圧迫されるのを防止し、周方向において脚部に均等に着圧を付与することができる。一般的なズボンやジーンズのように、重ね縫い部分120を下肢部用伸縮性衣料の内側に設けたり、前身頃1と後身頃1’とを内表に合わせて縫ったのち縫代を割り開いた割縫いによる縫製構造を形成したりすると、縫合部120により局部的に圧迫された脚部上の部位に圧痕が残るだけでなく、血流障害や皮膚障害が生じる恐れがある。また一般的なズボンやジーンズのように巻縫いを用いた場合、縫合部における生地の重なりが四重となるので、縫合部が厚くなり、縫合部により脚部が局部的に圧迫される恐れがある。
図示の例では、合わせた両縫代は、オーバーロックステッチにより重ね縫いされているが、ステッチの種類はこれに限定されない。図3に示すように、良好な外観を得るために、外表に設けられた重ね縫い部分120は、後身頃1’側に重ねられた状態で、テープ状の生地121により被覆されている。重ね縫い部分120は前身頃1側に重ねてもよい。限定的ではないが、図示のように、テープ状生地121は、その長手方向の両側端部を本縫いステッチにより前身頃1および後身頃1’と縫合すればよい。テープ状生地121は、織物でも編物でもよく、またこれを構成する糸も制限されず、後述する化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を使用することができる。テープ状生地121が織物からなる場合、前身頃1および後身頃1’と同じ伸縮性織物でもよいし、異なる織物でもよい。
図4は、内股側縫合部13を示す部分拡大図である。内股側縫合部13は、裏側に折り込まれた前身頃1の縫代130の縁と、表側に折り込まれた後身頃1’の縫代131の縁とが突き合わせられ、かつ前身頃1および後身頃1’の各々の折り山の際が縫われた両伏せ縫いにより縫合した縫製構造を有する。詳しくは、前身頃1の端部を裏側に折り、折り込んだ前身頃1の縫代130を後身頃1’の端部近傍に平行に当接しておき、前身頃1の折り山の際を縫って前身頃1および後身頃1’を縫い合わせ、次に折り込んだ前身頃1の縫代130の一部を長手方向に切り落とし、後身頃1’の端部を表側に折り込み、前身頃1の縫代130の縁と後身頃1’の縫代131の縁とを突き合わせ、後身頃1’の折り山の際を縫って前身頃1に縫い付けてある。両伏せ縫いのステッチの種類は本縫いステッチでよいが、これに限定されない。
図示のように、内股側縫合部13は、前身頃1の折り山が後方に向くように形成されているのが好ましいが、必要に応じて後身頃1’の折り山が前方に向くように形成されていてもよい。すなわち、内股側縫合部13は、表側に折り込まれた前身頃1の縫代130の縁と、裏側に折り込まれた後身頃1’の縫代131の縁とが突き合わせられ、かつ前身頃1および後身頃1’の各々の折り山の際が縫われた両伏せ縫いにより縫合した縫製構造を有してもよい。この縫製構造は、後身頃1’の端部を裏側に折り込み、前身頃1の端部を表側に折る以外、上記と同様にして形成することができる。
両伏せ縫いを用いると、縫合部13における生地の重なりが三重で済み、縫合部13における生地の厚さを比較的軽減することができるので、縫合部13により脚部が局部的に圧迫されるのを防止し、周方向において脚部に均等に着圧を付与することができる。一般的なズボンやジーンズのように巻縫いを用いると、縫合部における生地の重なりが四重となるので、両伏せ縫いを用いる場合より縫合部が厚くなり、縫合部により脚部が局部的に圧迫される恐れがある。また一般的なズボンやジーンズのように、内表に合わせた前身頃1の縫代と後身頃1’の縫代とが重ね縫いされた縫製構造を形成したり、前身頃1と後身頃1’とを内表に合わせて縫ったのち縫代を割り開いた割縫いによる縫製構造を形成したりすると、縫合部により局部的に圧迫された脚部上の部位に圧痕が残るだけでなく、血流障害や皮膚障害が生じる恐れがある。
図示のように、脇側縫合部12が、外側に設けた重ね縫い部分120をテープ状生地121で被覆した縫製構造を有し、かつ内股側縫合部13が両伏せ縫いによる縫製構造を有しているのが好ましいが、これに限定されない。例えば、脇側縫合部12が両伏せ縫いによる縫製構造を有し、かつ内股側縫合部13が、外側に設けた重ね縫い部分120をテープ状生地121で被覆した縫製構造を有する構成でもよいし、脇側縫合部12及び内股側縫合部13の両方が、外側に設けた重ね縫い部分120をテープ状生地121で被覆した縫製構造を有する構成であってもよいし、脇側縫合部12及び内股側縫合部13の両方が、両伏せ縫いによる縫製構造を有する構成であってもよい。
図5は、下肢部用伸縮性衣料の裾部14の一例を示す部分拡大図である。この例では、裾部14は、裏側に一つ折りした裾側端部140が、カバーステッチ(二重環下飾り縫い)により縫合された縫製構造を有する。ステッチの種類は、カバーステッチに限定されず、チェーンステッチ(二重環縫い)でもよい。カバーステッチおよびチェーンステッチのいずれの場合でも、少なくとも下糸にウーリー糸(フィラメント伸縮加工糸)を用いるのが好ましい。ウーリー糸の材料は、ポリアミド(ナイロン)およびポリエステルのいずれでもよい。このような構成の裾部14を形成することにより、裾部14に優れた伸縮性を与えることができ、着脱が容易な下肢部用伸縮性衣料が得られる。一般的なズボンやジーンズのように、裏側に三つ折りした裾側端部を本縫いステッチにより縫合した縫製構造とすると、裾部の伸縮性が低下し、衣料の着脱が容易でなくなる恐れがある。上述の、裾部14について、裏側に一つ折りした構成は、図1に示す衣料および後述の図6に示す衣料のいずれに対しても適用することができる。
裾部14は、縫製されていることにより、延びが拘束されているので、着脱の利便性も考慮すると、裾部14が優れた強度と伸縮性を兼ね備えている必要がある。上記のように、少なくとも下糸にウーリー糸を用いるカバーステッチまたはチェーンステッチで裾部14を縫合すると、伸縮性織物による強度および伸縮性と協働することにより、優れた強度と伸縮性を裾部14に付与することができる。なお、着脱の利便性向上のために、裾部14は、図1に示すように、末広がりにした形状を有するのが好ましい。
図6は、下肢部用伸縮性衣料の別の例を示す正面図および背面図である。なお図1に示す例と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この例においては、下肢部用伸縮性衣料の裾部14を、前裾が後裾より高い位置となるように、裾線を前方から後方へ斜め下げにカットし(一般的にアングルドボトムまたはモーニングカットと呼ばれる)、かつ末広がりとした形状にしたこと以外は図1に示す例と同じである。下肢部用伸縮性衣料の裾部14は人の足首部aより細いため、裾部14をこのような形状とすると、着脱の利便性が向上したり、はき心地が向上したりする。
図7は、下肢部用伸縮性衣料の裾部14の別の例を示す部分拡大図である。この例では、裾部14の裾側端部が、テープ状の伸縮性生地141で被覆されている。テープ状伸縮性生地141として、編物または伸縮性織物を用いることができるが、編物が好ましい。テープ状伸縮性生地141として編物を用いる場合、編物を構成する糸は制限されず、後述する化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を使用することができる。伸縮性織物を用いる場合、前身頃1および後身頃1’と同じ伸縮性織物でもよいし、異なる織物でもよい。テープ状伸縮性生地141を裾部14の端部に縫い合わせる糸は、伸縮性を有するのが好ましい。伸縮性糸として、上記のようなウーリー糸が挙げられる。テープ状伸縮性生地141による被覆構成は、図1および6に示す下肢部用伸縮性衣料のいずれに対しても適用することができる。
図8は、下肢部用伸縮性衣料の別の例を示す正面図である。なお図1に示す例と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この例においては、下肢部用伸縮性衣料が、大腿部から下腿部までの範囲(脚部)11を被覆する一対の筒状サポーターの形状を有していること以外は図1に示す例と同じである。
図9は、下肢部用伸縮性衣料のさらに別の例を示す正面図である。なお図1に示す例と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この例においては、下肢部用伸縮性衣料が、下腿部のうち膝部から足首部までの範囲10を被覆する一対の筒状サポーターの形状を有していること以外は図1に示す例と同じである。
図8および9に示すような筒状サポーター型の下肢部用伸縮性衣料は、ショートパンツ、スカート等の他の下半身用衣料と併用することができる。特に伸縮性織物としてストレッチデニムまたはストレッチチノクロスを用いる場合、筒状サポーター型の下肢部用伸縮性衣料は、静脈還流等の機能のみならず、ファッション性にも優れており、他の下半身用衣料とともに、ファッションアイテムとして併用することができる。また筒状サポーター型の下肢部用伸縮性衣料は、必要に応じて一方の脚部のみに着用することができる。
[2]伸縮性織物
本発明の下肢部用伸縮性衣料は、少なくとも人に着圧を与える部位に、以下に述べる伸縮性織物を含んでいればよいが、全体的に伸縮性織物からなるのが好ましい。本発明の衣料に使用する伸縮性織物は、緯糸が伸縮性を有するので、通常は緯糸が下肢部用伸縮性衣料の横断面方向に配向されるように縫製される。
伸縮性織物は、緯糸が、弾性繊維糸と、これと複合化された異素材繊維からなる糸とを含む伸縮性複合糸を含み、経糸が化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を含む。
(A)緯糸
緯糸は、以下に述べる伸縮性複合糸を主成分とする。緯糸は、本発明の効果を損なわない限り、下記伸縮性複合糸以外の伸縮性糸を少なくとも一種含んでもよいが、伸縮性複合糸のみからなるのが好ましい。伸縮性複合糸として、弾性繊維糸の外周に、異素材繊維からなる糸を螺旋状に巻きつけたカバード糸;弾性繊維糸を、異素材繊維からなる短繊維粗糸とともに精紡して得られ、弾性繊維糸からなる芯成分と、上記短繊維粗糸から形成された短繊維糸からなる鞘成分とを有する芯鞘構造を有するコアスパン糸;弾性繊維糸の外周に、空気ノズル等を用いて異素材繊維からなる繊条糸を交絡させてなる交絡複合糸;弾性繊維糸と、異素材繊維からなる糸とを直接合撚した合撚複合糸等が挙げられるが、これらに限定されない。伸縮性複合糸としては、カバード糸およびコアスパン糸が好ましい。
(A-1)カバード糸
カバード糸は、弾性繊維糸(伸縮性芯糸)の外周に、異素材繊維からなる糸(鞘糸)を螺旋状に巻きつけてなる。図10は、カバード糸の一例を示す概略斜視図である。この例では、伸縮性複合糸2は、伸縮性芯糸20の外周に鞘糸21を螺旋状に一重となるように巻きつけたシングルカバード糸である。伸縮性複合糸2は、伸縮性芯糸20の外周に鞘糸21を螺旋状に二重となるように巻きつけたダブルカバード糸でもよいが、シングルカバード糸が好ましい。
(1)伸縮性芯糸
伸縮性芯糸20は、破断伸度が大きく、所定範囲内で伸長した後に張力を除去すると、ほぼ元の長さに戻る特性を有する。高い伸長性及び伸長回復性を有し、所定の着圧値が得られ、かつ着脱の容易な下肢部用伸縮性衣料を得るために、伸縮性芯糸20の繊度は、20dtex以上であるのが好ましく、40~1,300dtexであるのがより好ましく、200~650dtexであるのが最も好ましい。
伸縮性芯糸20を構成する繊維としては、ポリウレタン繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、天然ゴム繊維、合成ゴム繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維等が挙げられる。伸長性及び伸長回復性の高さ、市場での汎用性などの点からポリウレタン繊維が好ましい。
ポリウレタン繊維としては、ポリエステル系ウレタン繊維、ポリエーテル系ウレタン繊維、エステル系ウレタン化合物とエーテル系ウレタン化合物との共重合体繊維等が挙げられる。ポリウレタン繊維は、一般的にポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られた弾性ポリウレタンを紡糸して得られる。ポリオール及び有機ポリイソシアネートは、一般的にポリウレタンの製造に使用される公知のものでよく、ポリオールとしては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリマージオール等のジオールが挙げられ、有機ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の有機ジイソシアネートが挙げられる。
上記のように、伸縮性芯糸20としては、ポリウレタン繊維からなるポリウレタン弾性糸が好ましいが、ポリウレタン弾性糸はモノフィラメント糸でもマルチフィラメント糸でもよい。本発明の効果を損なわない限り、伸縮性芯糸20は、ポリウレタン繊維と他の伸縮性繊維との混合繊維からなるものであってもよい。
(2)鞘糸
鞘糸21としては、水、特に熱水に溶解しない水不溶性の繊維からなるものが好ましく、そのような繊維からなるものであれば、化学繊維糸及び天然繊維糸のいずれでもよい。化学繊維糸を構成する繊維としては、ポリアミド(ナイロン)繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン繊維、水(熱水)不溶性のポリビニルアルコール繊維等の合成繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維等の再生繊維およびこれらの組合せ等が挙げられる。
ポリアミド(ナイロン)繊維としては、脂肪族ポリアミド系繊維(ポリアミド6、ポリアミド66等)、脂環族ポリアミド系繊維、芳香族ポリアミド系繊維等が挙げられる。ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート繊維糸及び/又はポリブチレンテレフタレート繊維が好ましい。ポリオレフィン繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等が挙げられる。アクリル繊維としては、アクリロニトリルと酢酸ビニル又はアクリル酸メチルとの共重合体からなり、ポリアクリロニトリル成分が85%以上の繊維等が挙げられる。アクリル系繊維としては、アクリロニトリルと塩化ビニルとの共重合体からなり、ポリアクリロニトリル成分が35~85%の繊維等が挙げられる。低熱収縮性、風合い、触感、強度、洗濯耐久性、染料との相性等の点から、化学繊維糸としては合成繊維糸が好ましく、中でもポリアミド(ナイロン)繊維糸、ポリエステル繊維糸およびポリオレフィン繊維糸からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましく、ポリアミド繊維糸及び/又はポリエステル繊維糸がより好ましい。
天然繊維糸を構成する繊維としては、綿、麻等の植物繊維(セルロース高分子繊維)、および羊毛(ウール)、絹等の動物繊維(タンパク質高分子繊維)が挙げられる。低熱収縮性、風合い、触感、強度、洗濯耐久性、染料との相性等の点から、天然繊維糸としては植物繊維糸が好ましく、綿糸がより好ましい。綿糸はカード糸でもコーマ糸でもよい。
鞘糸21は、特にその熱収縮率が小さいのが好ましい。その理由は、伸縮性織物を製織した後、織物の染色工程などの加工工程で加熱されることが多く、熱収縮率の大きい糸を使用すると糸が収縮して織物が収縮してしまう原因となるからである。鞘糸21の熱収縮率は180℃×30分の条件でのフリー収縮率が30%以内であるのが好ましい。
風合い、触感、強度、洗濯耐久性等の点から、鞘糸21の繊度は、一般的に5~1,000dtexであるのが好ましい。鞘糸21の繊度は、化学繊維糸の場合、10~500dtexであるのが好ましく、天然繊維糸の場合、100~1,000dtexであるのが好ましい。
鞘糸21は、繊維の種類等に応じて、短繊維糸(ステープル糸)及び繊条糸(フィラメント糸)のいずれでも使用することができる。繊条糸の場合、モノフィラメント糸でもマルチフィラメント糸でもよい。
鞘糸21は撚糸であるのが好ましいが、必ずしも撚糸に限定されない。鞘糸21が撚糸である場合、その撚数は特に制限されないが、撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数Kが3~6の鞘糸21が、品質安定性、複合糸製造時の生産性、入手容易性などの点から好ましく用いられる。
必要に応じて、鞘糸21には、ロープ染色法等の公知の染色方法により、インディゴ又はそれ以外の染料を使った染色加工を施してもよい。
(3)鞘糸の巻形態
優れた伸長性および弾性回復性を得るために、カバード糸からなる伸縮性複合糸2は、伸縮性芯糸20に鞘糸21を螺旋状に一重となるように巻きつけたシングルカバード糸とするのが好ましい。シングルカバード糸は、伸縮性芯糸20に鞘糸21を二重となるように巻きつけたダブルカバード糸に比べて伸長性および弾性回復性に優れているので、シングルカバード糸を用いることにより、ダブルカバード糸を用いた場合より優れた伸長性及び伸長回復性を有する伸縮性織物が得られる。
鞘糸21による伸縮性芯糸20の被覆度は、伸縮性芯糸20が全体に被覆され、製織後に芯糸20が露見していない程度であるのが好ましいが、伸縮性複合糸2の優れた伸縮性が確保される限り、製織後に芯糸20が少々露見していても構わない。
鞘糸のコイルスプリング状の効果により、伸縮性複合糸2に高い伸長性及び伸長回復性を付与し、伸縮性織物の高い伸長性及び伸長回復性を得るために、シングルカバード糸における伸縮性芯糸1m当たりの鞘糸21の巻回数は、1,000~2,500T/mとする。この巻回数が1,000T/m未満だと、伸縮性織物の伸長性及び伸長回復性が不十分である。一方2,500T/m超としても効果が飽和する。この巻回数は1,300~2,400T/mとするのが好ましく、1,800~2,200T/mとするのがより好ましい。
(A-2)コアスパン糸
コアスパン糸は、弾性繊維糸を、異素材繊維からなる短繊維粗糸とともに精紡して得られ、弾性繊維糸からなる芯成分と、上記短繊維粗糸から形成された短繊維糸からなる鞘成分とを有する芯鞘構造を有する。コアスパン糸の芯成分である弾性繊維糸は、カバード糸の伸縮性芯糸と同様のものを用いることができる。コアスパン糸の鞘成分である短繊維糸は、カバード糸の鞘糸と同様の天然繊維及び/又は化学繊維からなるものでよいが、天然繊維糸が好ましい。天然繊維糸としては、綿糸、麻糸等の植物繊維糸が好ましく、綿糸がより好ましい。綿糸はカード糸でもコーマ糸でもよい。
コアスパン糸の撚数は、撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数Kが3~6であるのが好ましく、4~5であるのがより好ましい。撚係数Kが3未満だと、糸の伸縮時に芯と鞘のずれが大きくなり易く、6超だと織物の風合いが堅くなる。
(A-3)伸縮性複合糸の伸長率および弾性回復率
伸縮性織物の高い伸長性及び伸長回復性を得るために、伸縮性複合糸として、伸長率が30%以上であり、弾性回復率が70%以上であるものを用いる。この伸長率は40%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。織物の強度を低下させないために、この伸長率は120%以下であるのが好ましく、110%以下であるのがより好ましい。この弾性回復率は80~100%であるのが好ましく、90~100%であるのがより好ましい。
(B)経糸
経糸には、上記鞘糸21と同様のものを用いることができる。ただし、風合い、触感、強度、洗濯耐久性等の点から、経糸の繊度は、100~2,000dtexであるのが好ましく、300~900dtexであるのがより好ましい。特に、経糸としては、綿等のセルロース系短繊維を主成分とする50英国式綿番手(118dtex)より繊度が大きい紡績糸が好ましい。特にストレッチチノクロスを形成する場合、双糸のコーマ糸を使用する。必要に応じて、経糸には、ロープ染色法等の公知の染色方法により、インディゴ又はそれ以外の染料を使った染色加工を施してもよい。
(C)伸縮性織物の構造
伸縮性織物の織り組織に制限はない。ストレッチデニムおよびストレッチチノクロスとして使用する場合、織り組織は綾組織とする。特にストレッチデニムの場合、一般的に2/1綾組織(三つ綾組織)、3/1綾組織(四つ綾組織)、2/2綾組織等とする。綾組織は、ライトハンドツイル(右綾)、レフトハンドツイル(左綾)およびブロークンツイルのいずれでもよく、またこれらに限定されない。
(D)伸縮性織物の物性
上記伸縮性複合糸を含む伸縮性織物の緯糸方向の定荷重伸長率(JIS-L-1096)は40%以上と非常に高い。この定荷重伸長率は50%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましい。伸縮性織物の緯糸方向の伸長回復率(JIS-L-1096)は85%以上と非常に高い。この伸長回復率90%以上であるのが好ましい。またこの伸縮性織物は、高い伸長性のために伸長時の通気性が高い。さらに塩素系薬品等に対する耐薬品性にも優れているので、漂白や洗浄に対する耐久性が高い。
洗濯処理後の複合糸密度は10~40本/cmである。これにより、高い伸長性及び伸長回復性が得られる。洗濯処理後の複合糸密度は15~30本/cmが好ましい。緯糸が伸縮性複合糸2のみからなる場合、複合糸密度は緯糸密度と等しい。
本発明の衣料に安定的で十分な着圧力を付与するために、経方向1cm幅当たりの弾性繊維糸(伸縮性芯糸)の合計繊度は2,000dtex/cm以上であるのが好ましく、4,000dtex/cm以上であるのがより好ましい。一方10,000dtex/cm超としても効果が飽和する。
後述するグリッパー型の織機であって、伸縮性複合糸に、その打ち込み方向とほぼ反対方向に空気を吹き付ける手段を具備するグリッパー織機を用いて製織した場合、伸縮性織物は、その伸縮性複合糸の延伸が抑制されている。具体的には、製織時の伸縮性織物中の伸縮性複合糸の伸長倍率は、製織前の伸縮性複合糸を基準として1.30倍以下に保持されている。これにより、高い伸長性及び伸長回復性のみならず低い洗濯収縮率が得られる。この伸長倍率は1.20倍以下が好ましく、1.10倍以下がより好ましく、1.05倍以下がさらに好ましく、1.03倍以下が最も好ましい。
伸縮性複合糸の延伸が上記のように抑制された伸縮性織物は、5%以下の非常に小さい緯糸方向の洗濯収縮率を有する。この洗濯収縮率は3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
上記のように洗濯収縮率が低い伸縮性織物の洗濯処理後の経糸密度は5~80本/cmと比較的小さい。この洗濯処理後の経糸密度は、好ましい例では15~60本/cmであり、より好ましい例では20~50本/cmである。
伸縮性複合糸の延伸が上記のように抑制された伸縮性織物は、高い伸長性及び伸長回復性のみならず低い洗濯収縮率を有しているので、生産性(歩留まり性)、縫製の作業性および製品のデザイン性に優れている。しかも、この伸縮性織物を用いる本発明の下肢部用伸縮性衣料は、低い洗濯収縮率を有しているので、洗濯を繰り返しても、足首から心臓方向へ漸減的な着圧を安定的に与えることができる。
[3]伸縮性織物の製造方法
(A)伸縮性複合糸の製造
(A-1)カバード糸の製造
限定されないが、カバード糸からなる伸縮性複合糸2は中空スピンドル法により製造するのが好ましい。図11は、中空スピンドル法によりシングルカバード糸である伸縮性複合糸2を製造する装置の一例を概略的に示す正面図である。芯糸20用の伸縮性糸を巻回したボビン20’から引き出した伸縮性糸を、フィードローラー20a及び給糸ローラー21aを経て、中空スピンドル2aに導き、これを芯糸20とする。フィードローラー20aと給糸ローラー21aの間で、伸縮性糸を、0.8~1.3倍のフィード倍率でドラフトするのが好ましい。このフィード倍率は約1倍とするのがより好ましい。
フィード倍率は糸の送り出し速度(V1)と巻き取り速度(V2)の比(V2/V1)で表される。フィード倍率が1倍の場合、送り出し速度と同じ速度で巻き取ることを意味し、フィード倍率が1.3倍の場合、比(V2/V1)を1.3とすることを意味する。フィード倍率が1倍未満の場合、送り出し速度が巻き取り速度より大きく、いわゆるオーバーフィードの状態で糸が送り出されるので、送り出しローラーと巻き取りローラーの間で糸が弛むことになる。オーバーフィードで糸を供給することは糸に撚りをかける撚糸工程で撚り縮みを考慮するときや、仮撚り加工の際によく採用されている手法である。しかし、通常は5%以下のオーバーフィードで行われる。
本願では、フィード倍率が0.8倍と非常に小さいフィード倍率で複合糸2を作製してもよい。伸縮性糸がポリウレタン弾性糸のように伸縮性に富んでおり、さらにポリウレタン弾性糸が、出荷される形態、例えばチーズ巻きの形態において伸ばされた状態で巻かれている場合、フィード倍率が0.8倍と云うような大きいオーバーフィードでも糸が元の長さに戻ろうとするため、糸が弛むことはなく、通常の加工ができる。フィード倍率が0.8倍のような条件で非伸縮性糸を加工しようとしても、糸が弛んで満足な作業ができない。
また撚糸業界および仮撚加工業界では、オーバーフィードで糸を供給する場合、オーバーフィードの程度を示すために、倍率の前にマイナス符号(-)を付けて表示されることがある。この場合、(-)は負の数値を表すのではなく、単にフィード倍率が1未満であることを示しているに過ぎないことに注意すべきである。例えば、-0.8倍と表示される場合、これは負の数値を示しているのではなく、フィード倍率が0.8倍であることを意味する。
中空スピンドル2aには鞘糸21用の糸を巻いたカバーリングボビン22aが差し込まれている。中空スピンドル2aに導かれてきた伸縮性芯糸20はバルーンガイド23aとの間で鞘糸21により、所定回数被覆された後、デリベリーローラー24aおよびテークアップローラー25aを経て複合糸巻き取りボビン2’に巻き取られる。
作製された複合糸2は、伸縮性糸を芯糸20とし、その外周が鞘糸21で被覆され、束ねられて2本が一体化された構造である。織物の伸び縮みに追随して伸縮性芯糸20および鞘糸21が共に伸び縮みするので、伸縮性に優れた織物が得られる。さらに伸縮性織物は、製織後も収縮しない。
織物の収縮を回避するには、用いる複合糸2が重要である。伸縮性芯糸20は、できるだけ元の長さに近い状態であることが好ましい。そのため、伸縮性糸のフィード倍率を0.8~1.3倍にする。フィード倍率0.8倍では、伸縮性糸を弛ませた状態で給糸しているように思えるが、実際は、上記のように伸縮性糸が伸ばされた状態から元の長さに戻ろうとするため、弛んでいるわけではなく、伸縮性糸ならではの独特の操作である。一般に市販されている伸縮性糸の代表例であるポリウレタン弾性糸はチーズ巻きの形態で供給されているのが普通である。チーズ巻きの際にかかる張力のため、ポリウレタン弾性糸は若干伸びた状態で巻かれているので、オーバーフィードすることでチーズ巻き前の糸長に戻るようにする。その程度が0.8倍との推定である。従って、フィード倍率が1と云うことはチーズに巻かれたポリウレタン弾性糸の長さそのものを表している。
フィード倍率が1.3倍を超えると、伸縮性糸が伸ばされた状態で供給されるので、製織後、伸縮性糸が縮もうとする力が大きくなり、織物幅の収縮が起こり好ましくない。鞘糸21は伸縮性糸から構成されている芯糸20の外周を螺旋状に被覆しているため、その糸長は伸縮性糸の長さより長く、織物の伸縮変化に追随するに必要な糸長を十分に有している。
伸縮性芯糸1m当たりの鞘糸21の巻回数は、上記の通りでよい。色糸が欲しい場合には、鞘糸21を染色しておいて芯糸20の周囲に被覆した複合糸2とすれば良い。
(A-2)コアスパン糸の製造
コアスパン糸からなる伸縮性複合糸の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一般的には、精紡機において、弾性繊維糸に所定のテンションを加えながら、弾性繊維糸を精紡機のフロントローラーから供給し、短繊維粗糸とともに精紡することによって得られる。例えば、特開2000-45141号、特開2008-297646号等に記載のコアスパン糸の製造方法を用いることができる。
(B)製織方法
伸縮性織物の製織方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、公知のグリッパー型織機、エアージェット式織機等を用いて、稼働速度や、張力等を適宜調整することにより、製織することができる。
好ましくは、伸縮性織物は、以下のような、伸縮性複合糸に、その打ち込み方向とほぼ反対方向に空気を吹き付ける手段を具備するグリッパー型の織機(以下単に「グリッパー織機」とよぶ)を用いて製織する。図12は、空気吹き付け手段を具備するグリッパー織機の一例を示す概略斜視図であり、図13は、この織機による製織工程A~Gを模式的に示す工程説明図である。給糸チーズ2”から引き出された緯糸(伸縮性複合糸)2は、緯糸ブレーキ3及びウェフトテンショナー4を経て、エアーブロワーチューブ50内を通り、ピッキングユニット70に設けられたプロジェクタイルフィーダー6に導かれ、プロジェクタイル7に受け渡される(工程A~B)。緯糸2を把持したプロジェクタイル7は、トーションバー74により弾き飛ばされ、多数のガイドチース72に沿って緯方向に経糸開口の中を飛走し、レシービングユニット71に設けられた停止ブレーキ8により把持されて停止され、定位置までプロジェクタイルリターナー9により押し戻される(工程C~D)。緯糸2は、布22の両端で一対のウェフトエンドグリッパー75、75により把持され、プロジェクタイルフィーダー6から鋏76により切断される(工程E~F)。次いで、プロジェクタイル7はコンベヤ73上へ押し出され、コンベヤ73により経糸開口の外側を通ってピッキングユニット70側へ戻される。
図14に示すように、織機には、ウェフトテンショナー4とプロジェクタイルフィーダー6との間にエアーブロワーチューブ50が設けられており、空気吹き付け手段5としてエアーノズルが、エアーブロワーチューブ50内に挿入されている。エアーノズル5のノズル口5aはチューブ50内で、緯糸2の打ち込み方向とほぼ反対方向に配向されており、緯糸2に空気を吹き付けられるようになっている。エアーノズル5はエアーコンプレッサー53に接続されており、これらの間に設けられた電磁弁51の開閉により、ノズル口5aからの空気の噴出及び停止が切り替えられる。電磁弁51は、作動用近接スイッチ52により開閉が切り替えられ、作動用近接スイッチ52は、その前面側に設けられ、織機のメインシャフト55に連結された遮断板54により、織機のメインシャフト55の所定の回転角範囲でオンにされる。図13に示す工程C~Gの間、緯糸2に、その打ち込み方向とほぼ反対方向に、継続して空気が吹き付けられるようになっている。
図13に示す各工程A~Gについて、さらに詳しく述べる。工程Aでは、コンベヤ73により戻されたプロジェクタイル7がピッキング位置にセットされる。工程Bでは、緯糸2が、プロジェクタイルフィーダー6によりプロジェクタイル7に受け渡され、プロジェクタイルフィーダー6は、その口を開いた状態で停止される。工程Cでは、プロジェクタイル7の飛走開始直前又は開始時点から継続して、エアーノズル5により、エアーブロワーチューブ50内で、緯糸2の打ち込み方向とほぼ反対方向に緯糸2に空気が吹き付けられ、かつプロジェクタイル7の飛走中に、緯糸ブレーキ3とウェフトテンショナー4がピッキング時の緯糸2の負荷を最小限に抑えるように働く。工程Dでは、継続して緯糸2に空気が吹き付けられながら、プロジェクタイル7がレシービングユニット71において停止ブレーキ8で把持されることによって停止され、定位置までプロジェクタイルリターナー9で押し戻されるが、その間ウェフトテンショナー4により緯糸2が軽く張った状態に保持され、プロジェクタイルフィーダー6が布22の近くまで接近させられる。プロジェクタイル7がレシービングユニット71に到着した後の惰性による緯糸2の経糸への侵入を抑えるために、プロジェクタイル7が停止ブレーキ8によって停止される直前に、緯糸ブレーキ3およびウェフトテンショナー4で緯糸2に掛ける張力を最も強くする。このとき、本方法では、緯糸2の打ち込み方向とほぼ反対方向に緯糸2に空気が吹き付けられているので、緯糸ブレーキ3およびウェフトテンショナー4で緯糸2に掛ける上記の最大張力を低減することができる。そのため製織過程における緯糸(伸縮性複合糸)2の延伸を抑制することができる。
工程Eでは、緯糸2に空気が吹き付けられながら、プロジェクタイルフィーダー6が緯糸2を把持すると同時に一対のウェフトエンドグリッパー75、75が布22の両端で緯糸2を保持する。工程Fでは、緯糸2に空気が吹き付けられながら、緯糸2は布12のピッキングユニット側で鋏76によって切断され、かつ布12のレシービングユニット側でプロジェクタイル7から離され、プロジェクタイル7はコンベヤ73上へ押し出され、ピッキングユニット70側へ戻される。筬打ちの後、工程Gにおいて、緯糸2に空気が吹き付けられながら、プロジェクタイルフィーダー6が後退するが、これにより生ずる緯糸2の緩みはウェフトテンショナー4が取り上げるとともに、吹き付ける空気により抑制される。次いで、工程Aに戻るが、このとき緯糸2への空気の吹き付けは停止されている。
従来のグリッパー織機では、空気吹き付け手段5を設けていないため、プロジェクタイル7がレシービングユニット71に到着した後の惰性による緯糸2の経糸への侵入を抑えるために、プロジェクタイル7の飛走中に、急激に且つ強く緯糸ブレーキ3を掛ける必要があり、そのため緯糸2に大きなテンションが掛かり、その緯糸(伸縮性複合糸)2が大きく延伸されてしまうことがあった。製織工程で緯糸(伸縮性複合糸)2が大きく延伸されてしまうと、製織された織物は、織機から外したときの収縮率が高くなる。
本グリッパー織機では、緯糸ブレーキ3の近傍に空気吹き付け手段5を設けており、プロジェクタイル7の飛走中に、緯糸2の打ち込み方向とほぼ反対方向に、緯糸2に空気を吹き付けるので、プロジェクタイル7が停止ブレーキ8によって停止される直前に、緯糸ブレーキ3およびウェフトテンショナー4で緯糸2に掛ける最大張力、特に緯糸ブレーキ3で掛ける最大ブレーキ力を小さくしても、プロジェクタイル7がレシービングユニット71に到着した後の惰性による緯糸2の経糸への侵入を抑えることができ、経糸中で緯糸2の緩みが生じない。緯糸ブレーキ3で掛けるブレーキ力を小さくできるので、緯糸2に掛かるテンションが小さくなり、製織過程における緯糸(伸縮性複合糸)2の延伸を抑制することができる。
上述のように、緯糸2に、その打ち込み方向とほぼ反対方向に空気を吹き付けることの意義は、工程Cのピッキング中におけるウェフトテンショナー4および緯糸ブレーキ3により掛ける張力の低減、および工程C~Dに掛けてプロジェクタイル7が停止ブレーキ8によって停止される直前に、緯糸ブレーキ3およびウェフトテンショナー4で緯糸2に掛ける最大張力の低減、特に緯糸ブレーキ3で掛ける最大ブレーキ力の低減にある。さらに、このような空気を吹き付けることの意義は、工程D中のプロジェクタイル7がプロジェクタイルリターナー9で押し戻される工程、および一対のウェフトエンドグリッパー75、75が布22の両端で緯糸2を保持する工程Eにおいても、経糸中での緯糸2の緩みを生じさせず、さらに緯糸2を切断したときの工程F、及びプロジェクタイルフィーダー6が後退する工程Gにおいても、緯糸2の緩みを抑制できることにある。
空気吹き付け手段5としては、エアーノズルが好ましい。ただし緯糸2に十分な空気圧を掛けられる空気吹き付け手段であれば、エアーノズル5に限定されず、エアーブロワー等でもよい。空気吹き付け手段5の配置については、図示のように、ウェフトテンショナー4とプロジェクタイルフィーダー6との間が好ましいが、これに限定されるものではなく、空気吹き付け手段5の位置は緯糸ブレーキ3の近傍であればよい。
本方法では、製織時の伸縮性織物中の伸縮性複合糸2の伸長倍率が、製織前の伸縮性複合糸を基準として1.30倍以下、好ましくは1.20倍以下、より好ましくは1.10倍以下、さらに好ましくは1.05倍以下、最も好ましくは1.03倍以下に保持されるように、工程C及びD中において、空気吹き付け手段5により伸縮性複合糸2に吹き付ける圧縮空気流の吐出圧力と、緯糸ブレーキ3およびウェフトテンショナー4で伸縮性複合糸2に掛ける張力とを調整するのが好ましい。ここで言う「張力」とは、具体的には、工程Cのピッキング中におけるウェフトテンショナー4および緯糸ブレーキ3により緯糸1に掛ける張力、および工程C~Dに掛けてプロジェクタイル7が停止ブレーキ8によって停止される直前に、緯糸ブレーキ3およびウェフトテンショナー4で緯糸2に掛ける最大張力、特に緯糸ブレーキ3で掛ける最大張力である。
空気吹き付け手段5により吹き付ける圧縮空気流の吐出圧力、すなわち、緯糸2にかける、打ち込み方向と反対方向への圧縮空気流の吐出圧力(ゲージ圧)は、通常200kPa以上であればよい。この吐出圧力は、ウェフトテンショナー4および緯糸ブレーキ3で掛ける張力、特に最大張力を十分に小さくして、製織過程における伸縮性複合糸2の延伸を十分に抑制するために、300kPa以上とするのが好ましく、350kPa以上とするのがより好ましい。この吐出圧力の上限は600kPaとするのが好ましい。600kPa超としても、効果が飽和する。エアーノズル5のノズル口5aの中心から緯糸2までの最短距離(チューブ50の断面における径方向の距離)は2cm以下とするのが好ましい。なおプロジェクタイル7の飛走速度は、一般的な速度、例えば40~47m/sでよい。
エアーノズル5のノズル口5aの内径は、緯糸2の外周全体を覆いながら圧縮空気流が流れるように3mm以上が好ましく、3~5mmがより好ましい。また図15に示すように、ノズル口5aは、圧縮空気流が緯糸2の外周全体を覆う程度に拡散するように端部が拡開していてもよい。さらに図16(a)、(b)に示すように、ノズル5の先端部を複数個に分岐して、複数のノズル口5aを緯糸2の外周の周囲に配置してもよい。
エアーブロワーチューブ50は必須ではないが、図示の例のように、エアーノズル5の配置位置にエアーブロワーチューブ50を設け、エアーノズル5の先端部を、エアーブロワーチューブ50内に挿入する構成とするのが好ましい。エアーブロワーチューブ50内に圧縮空気流を流通させることにより、圧縮空気流の無駄な拡散を防止し、緯糸2の外周全体に沿って圧縮空気流を効率的に流通させることができ、圧縮空気流の圧力を効率的に緯糸2に掛けることができる。
エアーブロワーチューブ50は円筒状であるのが好ましい。上記のようなエアーブロワーチューブ50の効果を十分に得るために、円筒状エアーブロワーチューブ50のサイズについては、少なくともノズル口5aの挿入部分において、内径が5cm以下であるのが好ましく、3cm以下であるのがより好ましく、長さが25cm以上であるのが好ましい。
また図17に示すように、円筒状エアーブロワーチューブ50の中央部50aの流路を狭くしてもよい。このような形状とすると、中央部50aを流通する圧縮空気流の動圧を一層高くでき、圧縮空気流の圧力を一層効率的に緯糸2に掛けることができる。
図18は、織機のメインシャフト(織機軸)55の回転角(度)と、メインシャフト55により各々駆動されるスレイソード及びベルトの動き並びに緯糸入れ動作との関係の一例を示すフローチャートである。この例では、緯糸2が打ち込まれてからレシービング側に到着するまでのメインシャフト55の回転角が110~300度の範囲の間(工程C)、プロジェクタイル7が定位置までプロジェクタイルリターナー9で押し戻される300~352度の範囲の間(工程D)、ウェフトエンドグリッパー75、75が布22の両端で緯糸2の保持開始時である352度(工程E)、鋏76による緯糸2の切断時360度、すなわち0度(工程F)、およびプロジェクタイルフィーダー6が後退するメインシャフト55の回転角が0~50度の範囲の間(工程G)、緯糸2の打ち込み方向とは反対方向に空気を吹き付ける。すなわち、メインシャフト55の回転角が110度から360度(0度)を経て50度までの範囲の間、作動用近接スイッチ52がオンされ、電磁弁51が作動してコンプレッサー53からの空気がノズル口5aから噴出されるようになっている。
上記のような工程により得られた伸縮性織物には、必要に応じて、精錬(糊抜き、不純物の除去等)、漂白、染色、水洗、熱セット、シルケット加工等の公知の加工を施すことができる。
以上述べた空気吹き付け手段を具備するグリッパー織機で製織することにより、製織時の伸縮性織物の伸縮性複合糸2の伸長倍率を、製織前の伸縮性複合糸を基準として1.30倍以下となるようにすることができる。詳しくは、グリッパー織機が上記のような空気吹き付け手段を具備しているので、特別な温度調整装置、例えば伸縮性複合糸2を冷却する装置等を必要とせず、常温下で製織時の伸縮性複合糸2の伸長倍率を抑制することができる。換言すると、伸縮性複合糸2を温度調整する必要がないので、伸縮性織物の製織時に、伸縮性複合糸が元来有する30%以上の伸長率を保持している状態でありながら、伸縮性複合糸2の伸長倍率を抑制することができる。上記の伸長倍率は1.20倍以下が好ましく、1.10倍以下がより好ましく、1.05倍以下がさらに好ましく、1.03倍以下が最も好ましい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(1)伸縮性複合糸の作製
図11に示す装置を用い、中空スピンドル法により伸縮性複合糸を作製した。芯糸として繊度が311dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸(東レ株式会社製)を巻いたボビンをカバーリング機台の芯糸用ボビンスタンドにセットし、そのフィード倍率を1倍とした。この芯糸を3.8m/分の糸速で、鞘糸である繊度83dtex(表示テックス数)のポリエチレンテレフタレート糸(東レ株式会社製)を巻いたボビンを差し込んである1個の中空スピンドルに導き、芯糸1m長に対して2,000T/mになるように鞘糸で螺旋状に被覆し、巻き取り、シングルカバード型の複合糸を得た。
(2)伸縮性織物の作製
図12に示すグリッパー織機を用い、緯糸として上記(1)で作製した伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度591dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、ライトハンドツイルの3/1綾組織を有するストレッチデニムからなる伸縮性織物を作製した。プロジェクタイルの飛走開始直前から、プロジェクタイルの飛走中に、エアーノズルにより、エアーブロワーチューブ内で、緯糸の打ち込み方向とほぼ反対方向に、400kPaの吐出圧力(ゲージ圧)で緯糸に空気を吹き付けた。空気の吹き付けは、図13に示す工程C~Gの間継続した。得られた生織をグリッパー織機から外し、温水に浸漬して糊抜きをした後、乾燥し、ストレッチデニムを得た。
(3)下肢部用伸縮性衣料の作製
上記(2)で作製したストレッチデニムを裁断して前身頃および後身頃を形成し、これらを縫製することにより、図1に示すストレッチジーンズ型の下肢部用伸縮性衣料を作製した。脇側縫合部は、図3に示すように、外表に合わせた前身頃の縫代と後身頃の縫代とがオーバーロックステッチにより重ね縫いされた縫製構造とし、重ね縫い部分を後身頃側に重ねた状態で、テープ状の生地により被覆した。内股側縫合部は、図4に示すように、裏側に折り込まれた前身頃の縫代の縁と、表側に折り込まれた後身頃の縫代の縁とが突き合わせられ、かつ前身頃および後身頃の各々の折り山の際が縫われた両伏せ縫いにより縫合した縫製構造とした。裾部は、図5に示すように、裏側に一つ折りした裾側端部が、カバーステッチ(二重環下飾り縫い)により縫合された縫製構造とした。
足首部a、腓腹部b、腓腹下部c、膝頭中央部dおよび大腿部e(図2参照)を各々被覆する下肢部用伸縮性衣料の部位A~E(図1参照)の各周長L、L、L、LおよびLは、以下のように調整した。健康な成人被験者について、仰臥位において安静時に両脚の上記部位a~eの各周長L、L、L、LおよびLを測定し、各周長L~Lと対応する各周長L~Lとの比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.83、0.91、0.89、0.91および0.88となるように、衣料のサイズを調整した。
上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.83、0.92、0.89、0.90および0.88となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.77、0.90、0.89、0.90および0.90となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
伸縮性織物の緯糸として、経糸として繊度591dtex(表示テックス数)の綿/ポリエチレンテレフタレート混紡糸(東レ株式会社製)を用い、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.80、0.90、0.87、0.91および0.89となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
伸縮性織物の緯糸として、繊度395dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸を伸縮性芯糸とし、繊度22dtex(表示テックス数)のナイロン紡績糸(東レ株式会社製)を鞘糸とする伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度656dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.79、0.89、0.86、0.91および0.88となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
伸縮性織物の緯糸として、繊度196dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を鞘糸とする伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度843dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.80、0.90、0.87、0.93および0.90となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
伸縮性織物の緯糸として、繊度233dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸を伸縮性芯糸とし、繊度295dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を鞘糸とする伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度843dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.80、0.90、0.87、0.93および0.91となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
伸縮性織物の緯糸として、繊度66.6dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸を芯成分とし、繊度492dtex(表示テックス数)の綿紡績糸を鞘成分とするコアスパン糸(撚係数K:4.61)からなる伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度656dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、製織時に伸縮性芯糸に対してプロジェクタイルの飛走中のエアーノズルによる空気の吹き付けを行なわず、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.82、0.91、0.89、0.94および0.90となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
比較例1
(1)伸縮性複合糸の作製
繊度22.3dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸(東レ株式会社製)と、繊度333dtex(表示テックス数)のポリエチレンテレフタレート糸(東レ株式会社製)とを引き揃え、450T/mで撚り合わせて合撚複合糸を得た。
(2)伸縮性織物の作製
上記(1)で作製した合撚複合糸を緯糸として用い、経糸に492dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、製織時に伸縮性芯糸に対してプロジェクタイルの飛走中のエアーノズルによる空気の吹き付けを行なわなかった以外実施例1と同様にして伸縮性織物を作製した。
(3)下肢部用伸縮性衣料の作製
上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.70、0.77、0.75、0.84および0.86となるようにした以外実施例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
比較例2
伸縮性織物の緯糸として、繊度22.3dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸を芯成分とし、繊度295dtex(表示テックス数)の綿紡績糸を鞘成分とするコアスパン糸からなる伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度686dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、製織時に伸縮性芯糸に対してプロジェクタイルの飛走中のエアーノズルによる空気の吹き付けを行なわず、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.72、0.78、0.76、0.81および0.88となるようにした以外比較例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した。
比較例3
伸縮性織物の緯糸として、繊度22.3dtex(表示テックス数)のポリウレタン弾性糸を芯成分とし、繊度369dtex(表示テックス数)の綿紡績糸を鞘成分とするコアスパン糸からなる伸縮性複合糸を用い、経糸として繊度686dtex(表示テックス数)の綿紡績糸(カイハラ産業株式会社製)を用い、製織時に伸縮性芯糸に対してプロジェクタイルの飛走中のエアーノズルによる空気の吹き付けを行なわず、上記の比L/L、L/L、L/L、L/LおよびL/Lが、各々0.75、0.82、0.79、0.87および0.86となるようにした以外比較例1と同様にして、下肢部用伸縮性衣料を作製した
実施例1~8及び比較例1~3で得られた織物の物性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
(1)伸縮性複合糸の伸長率および弾性回復率
寸法変化の安定した状態に調整した試料に、単位繊度当たり1.764×10-3cN/dtex(2mg/d)の初荷重を掛け、試料長L=100mmで引張試験機にセットし、引張速度50mm/分で伸長し、荷重が試料の単位繊度当たり8.82×10-2cN/dtex(0.1g/d)になった時点で伸長を停止し、伸びLを読み取った。そのまま1分間放置した後、同じ速度で元の長さまで戻し、3分間放置後、再び同じ速度で伸長し、初荷重と同じ応力になった時点の伸びLを読み取り、下記式で伸長率(%)、弾性回復率(%)を算出した。
伸長率(%)=L/L×100
弾性回復率(%)=[(L-L)/L]×100
測定は各々の試料につき10回ずつ行い、平均値を算出した。
(2)伸縮性複合糸の繊度
JIS-L-1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)の8.3.1(正量繊度)のB法(簡便法)に記載の方法に準じて測定した。初荷重としては、JIS-L-1013の5.1に基づいて決定される初荷重(伸長せず、まっすぐになる程度の荷重)を加えた。なお、初荷重の決定にあたり、伸縮性複合糸の見掛けの繊度(表示テックス数)としては、複合糸作製前の芯糸および鞘糸の表示テックス数と、複合糸作製時の芯糸および鞘糸の各々の消費質量とから、複合糸作製時の芯糸のフィード倍率を1倍として算出した計算値を用いた。
(3)製織時の伸縮性織物中の伸縮性複合糸の伸長倍率
製織開始から長さ5mの織物を製造した時の伸縮性複合糸の消費質量(図12中、給糸チーズ2”から引き出された緯糸1の質量(g))を計測し、得られた消費質量を、伸縮性複合糸の繊度(dtex)から、同長さの織物を製造した時の伸縮性複合糸の消費長さLa(メートル)に換算した。また同長さの織物を製造した時における緯入れ回数N(回)も計測した。織機の緯糸飛走長[織り幅(筬通し幅)+捨て耳幅(メートル)]をLbとして、下記式に従い、製織時の伸縮性織物中の伸縮性複合糸の伸長倍率Esf(倍)を算出した。
Esf(倍)=(Lb×N)/La
ここで、上記「捨て耳」は、織り幅部分(筬通し幅部分)の両側に設けられるもので、一般的に、1本の緯糸を経糸の開口に挿入する毎に、捨て耳の部分を掴んで開口を閉じ、緯糸が筬打ちされる。通常、緯糸は、織り幅部分(筬通し幅部分)と、その両側に設けられた捨て耳からなる基本単位から構成される。
(4)洗濯収縮率
試料をJIS-L-1096(織物及び編物の生地試験方法)の8.39.5(寸法変化)に記載の方法に準じて洗濯処理した後、緯糸密度および経糸密度を測定した。充分に寸法安定化した試料より経緯60cm×60cmの試験布を採取し、経緯とも500mm間隔の印を各3対入れた。まず同JISの8.39.5b)2.2.2)F-2法(中温ワッシャ法)に準拠し、洗濯装置に試験片が覆われるのに十分な量(約60L)の温水(約60℃)を入れ、試験片が1.4kgになるようにして、その中に投入し、同時にJIS-K-3303に規定する無添剤粉末洗濯石けん(1種)を約0.1%溶液になるように加え、30分間運転した。続いて、新しい約40℃の温水に替えて5分間運転し、再び新しい約40℃の温水に替えて10分間運転した。排水後、試験片を取り出し、タンブル乾燥機に投入し、60℃で40分間乾燥した後、加熱を止め、更に乾燥機を約5分間回転して試験片を冷却し、乾燥機を止めた後直ちに試験片を取り出した。室温下で拡布して1時間放置後、経緯各3対の印間隔(cm)を測定し、経緯各々平均値を算出した。
(5)伸縮性織物の定荷重伸長率及び伸長回復率
上記洗濯処理後の伸縮性織物の定荷重伸長率及び伸長回復率を、JIS-L-1096の8.16.1「伸び率」B法(織物の定荷重法)および8.16.2「伸長回復率及び残留ひずみ率」B-1法(定荷重法)に準じて測定した。
[定荷重伸長率(緯方向)]
寸法変化の安定した状態に調整した試料から、経方向に60mm、緯方向に300mmの試験片3枚を採取し、試験片とする。この試験片を、引張試験機を用い、試験片の上端を上部クランプで固定し、目付(g/m)の5%の荷重を初荷重としてかけ、250mm間隔に印を付け、試験片の下端に、無荷重の状態から静かに14.7N(1.5kgf)の荷重を加える。1分間放置後の印間の長さ(mm)を各々測り、次式に従い定荷重伸長率(%)を求め、3回の平均値を算出する。
=[(L’-L’)/L’]×100
ここで、E:定荷重伸長率(%)、L’:もとの印間の長さ(250mm)、L’:14.7Nの荷重を加え1分間放置後の印間の長さ(mm)。
[伸長回復率(緯方向)]
荷重を掛けた試験片の放置時間を1時間とする以外定荷重伸長率測定と同様にして試験片に14.7Nの荷重を掛け、1時間放置後の印間の長さ(mm)を測る。次いで荷重を取り除き、30秒後および1時間後に再度、目付(g/m)の5%の初荷重を加えて再び印間の長さ(mm)を測り、次式より伸長回復率(%)を求め、3回の平均値を算出する。
Er=[(L’-L’)/(L’-L’)]×100
ここで、Er:伸長回復率(%)、L’:もとの印間の長さ(250mm)、L’:14.7Nの荷重を加え1時間放置後の印間の長さ(mm)、L’:荷重を取り除いた後30秒後及び1時間後に初荷重を加えた時の印間の長さ(mm)。
(6)複合糸密度および経糸密度
上記洗濯処理前後の伸縮性織物の複合糸密度および経糸密度を、織編物密度自動測定器で計測した。
(7)引張強度および引裂強度
上記洗濯処理前後の伸縮性織物の引張強度および引裂強度を、各々JIS-L-1096(織物及び編物の生地試験方法)の8.14(引張強さ及び伸び率)および同8.17(引裂強さ)に準じて測定した。
(8)弾性繊維糸の合計繊度
経方向1cm幅当たりの弾性繊維糸(伸縮性芯糸)の合計繊度(dtex/cm)を、弾性繊維糸の繊度(dtex)と洗濯処理後の複合糸密度(本/cm)の積を算出することにより求めた。ここで、弾性繊維糸の繊度は、以下の方法により求めた。上記洗濯処理後の伸縮性織物の一部を解体して伸縮性複合糸を取り出し、さらに伸縮性複合糸を芯糸と鞘糸に解体した。芯糸(弾性繊維糸)の繊度を、JIS-L-1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)の8.3.1(正量繊度)のB法(簡便法)に記載の方法に準じて測定した。初荷重としては、JIS-L-1013の5.1に基づいて決定される初荷重(伸長せず、まっすぐになる程度の荷重)を加えた。なお、初荷重の決定にあたり、弾性繊維糸の見掛けの繊度(表示テックス数)として、複合糸作製前の弾性繊維糸の表示テックス数を用いた。
Figure 0007190646000001
表1(続き)
Figure 0007190646000002
表1(続き)
Figure 0007190646000003
注:(1)PUはポリウレタンを表す。
(2)PETはポリエチレンテレフタレートを表す。
(3)シングルカバード型
(4)芯鞘構造
(5)合撚構造の撚数。
表1から明らかなように、実施例1~8の織物は、伸縮性複合糸として、伸長率が30%以上であり、弾性回復率が70%以上であるものを用いたので、高い伸長性及び伸長回復性を有していた。特に、実施例1~7の織物は、グリッパー織機での製織時に、伸縮性複合糸の打ち込み方向とほぼ反対方向に、伸縮性複合糸に圧縮空気流を吹き付けることにより形成した伸縮性芯糸を用いたので、洗濯処理前の複合糸の伸長倍率が低く、そのため低い洗濯収縮率を有していた。
比較例1~3の織物はいずれも、伸縮性複合糸として、芯糸であるポリウレタン弾性糸の繊度が100dtex未満のものを用い、かつ経方向1cm幅当たりの弾性繊維糸の合計繊度が小さいので、実施例1~8に比較して、定荷重伸長率が劣っており、特に比較例2および3では伸長回復率も劣っていた。
実施例1~8で得られた下肢部用伸縮性衣料の上記部位a~eにおける着圧値P~P、着圧値測定後の衣料の周長変化、および着用後の脚部の周長変化を以下の方法により測定し、また圧痕の発生の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例1~3で得られた下肢部用伸縮性衣料の上記部位a~eにおける着圧値P~P、および着圧値測定後の衣料の周長変化を以下の方法により測定した。結果を表3に示す。
参考例として、従来の編物製の医療用弾性ストッキングである、ジョブスト(登録商標)ウルトラシアー20および同30(テルモ株式会社製)についても、上記部位a~cにおける着圧値P~Pcを測定した(参考例1および2)。結果を表4に示す。
(1)着圧値の測定
実施例1~8および比較例1~3の各々について、衣料と脚部との周長比L/L~L/Lを上記のように調整したときの各成人被験者の下肢部の輪郭およびサイズと同じ筒状のプラスチック製下肢部模型をそれぞれ作製した。得られた各下肢部模型に、対応する下肢部用伸縮性衣料をそれぞれ装着し、10分後の各部位a~eの着圧値P~Pを、エアパック式衣服圧測定器(株式会社エイエムアイ・テクノ製)により各々3回測定し、平均値を求めた。比較例1~3については、さらに装着を継続して測定値がほぼ変動しなくなった後の各部位a~eの着圧値P~Pを各々3回測定し、平均値を求めた。
参考例1,2については、各ストッキングをマネキン(Fair Lady RC9 株式会社七彩製)に装着し、上記と同様にしてマネキンにおける各部位a~eの着圧値P~Pを求めた。
(2)着圧値測定後の衣料の周長変化の測定
上記(1)に記載の通り着圧値を測定した後、装着から4時間経過するまで放置し、下肢部用伸縮性衣料の各部位A~Eにおける測定後の周長変化を求め、各部位A~Eについて平均値を算出した。判定基準について、○は周長の増加が2mm以内であったことを表し、×は周長の増加が2mm超であったことを表す。
(3)着用後の脚部の周長変化の測定
実施例1~8の各々において、衣料と脚部との周長比L/L~L/Lを上記のように調整した各成人被験者について、仰臥位において安静時に両脚の各部位a~eの周長L、L、L、LおよびLを測定した。次いで、各人に対応する衣料を着用してもらい、8時間仰臥位で安静に保持した後、衣料を脱いでもらい、各部位a~eの周長L、L、L、LおよびLを再び測定し、両脚の各部位a~eにおける着用前後での周長変化を求め、各部位a~eについて平均値を算出した。着用開始から3日後にも、同様にして着用後の周長変化を測定した。判定基準について、◎は周長に変化が生じなかったことを表し、○は周長の増加が2mm以内であったことを表し、△は周長の増加が5mm以内であったことを表す。
(4)圧痕の発生の有無
1日目および3日目の両日について、上記のように着用した衣料を脱いだ後、衣料の脇側縫合部、内股側縫合部および裾部により圧迫された脚部上の部位を目視により観察し、圧痕の有無を調べた。判定基準について、〇は圧痕が僅かに生じたことを表し、△は比較的浅い圧痕が生じたことを表す。
Figure 0007190646000004
表2(続き)
Figure 0007190646000005
注:(1)装着から10分以内に安定値になる。また装着から4時間経過後もほぼ変化なし。
Figure 0007190646000006
注:(1)装着からから10分後の測定値
(2)装着から10分超後のほぼ安定した測定値
(3)脚部への装着困難のため測定不能
Figure 0007190646000007
表2および4から明らかなように、実施例1~8の下肢部用伸縮性衣料では、着圧値が従来の編物製の医療用弾性ストッキングと同等で、かつ安定した着圧値が得られ、人の下腿部に着圧を与えることにより、着用後の脚部の周長増加が無いか小さく、すなわち、下肢部の浮腫を防止および予防することができ、かつ圧痕の発生を低減することができた。
表3に示すように、比較例1~3では、伸縮性複合糸として、芯糸であるポリウレタン弾性糸の繊度が100dtex未満のものを用い、かつ経方向1cm幅当たりの弾性繊維糸の合計繊度が小さいので、足首部に対する着圧値は、装着から10分経過後の初期には30hPa程度ではあったものの、ほぼ安定した測定値が得られるまで装着を継続すると6~7割程度の値まで低下した。また足首部および腓腹下部における着圧値測定後の衣料の周長変化が、実施例1~8に比較して大きく、安定した着圧値が得られなかった。そのため、足首部に対して30hPa程度の着圧値が得られるように下肢部用伸縮性衣料の足首部の周長を設定すると、下肢部用伸縮性衣料の着脱が困難となる程、足首部の寸法が小さくなり、着用後の脚部の周長変化および圧痕の発生の有無を調べることができなかった。
本発明によれば、高い伸長性および伸長回復性を有する伸縮性織物を用いるので、足首から心臓方向へ漸減的な着圧を安定的に与えられ、少なくとも人の下腿部に着圧を与えることにより、下肢部の静脈還流を促進し、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症等の下肢静脈疾患や、リンパ浮腫等の治療および予防に有効な医療用の下肢部用伸縮性衣料が得られる。本発明の下肢部用伸縮性衣料はまた、衣料の前身頃と後身頃との縫合部について、生地の重なりが少なく、比較的薄く、衣料の外側に設けた縫製構造としたので、脚部に長時間着圧を与えても圧痕の発生を低減することができる。また衣料の裾部について、裏側に一つ折りした縫製構造としたので、脚部に長時間着圧を与えても圧痕の発生を低減することができ、かつ着脱が容易である。本発明の下肢部用伸縮性衣料はまた、耐機械的損傷性およびファッション性に優れており、縫製が容易な構造を有しているので、医療用途のみならず、スポーツ用レッグウェア、労働時に履くズボン、一般的なファッションアイテム等としても使用でき、血流促進、疲労軽減、浮腫の予防等に優れた効果が得られる。特に、伸縮性複合糸に、その打ち込み方向とほぼ反対方向に空気を吹き付ける手段を具備するグリッパー織機を用いて製織した場合、伸縮性織物は、その伸縮性複合糸の延伸が抑制されているので、低い洗濯収縮率を有しており、洗濯を繰り返しても、上記の人の下腿部への着圧を安定的に与えることができる。
1・・・前身頃
1’・・・後身頃
10・・・人の下腿部を被覆する部分
11・・・人の脚部を被覆する部分
12・・・脇側縫合部
120・・・重ね縫い部分
121・・・テープ状生地
13・・・内股側縫合部
130・・・前身頃の縫代
131・・・後身頃の縫代
14・・・裾部
140・・・裾側端部
141・・・テープ状伸縮性生地
2・・・伸縮性複合糸
2’・・・複合糸巻き取りボビン
2”・・・給糸チーズ
20・・・伸縮性芯糸
20’・・・伸縮性糸を巻回したボビン
21・・・鞘糸
22・・・布
2a・・・中空スピンドル
20a・・・フィードローラー
21a・・・給糸ローラー
22a・・・カバーリングボビン
23a・・・バルーンガイド
24a・・・デリベリーローラー
25a・・・テークアップローラー
3・・・緯糸ブレーキ
4・・・ウェフトテンショナー
5・・・空気吹き付け手段(エアーノズル)
5a・・・ノズル口
50・・・エアーブロワーチューブ
50a・・・チューブの中央部
51・・・電磁弁
52・・・作動用近接スイッチ
53・・・コンプレッサー
54・・・遮断板
55・・・織機のメインシャフト
6・・・プロジェクタイルフィーダー
7・・・プロジェクタイル
70・・・ピッキングユニット
71・・・レシービングユニット
72・・・ガイドチース
73・・・コンベヤ
74・・・トーションバー
75・・・ウェフトエンドグリッパー
76・・・鋏
8・・・停止ブレーキ
9・・・プロジェクタイルリターナー
a・・・足首部
b・・・腓腹部
c・・・腓腹下部
d・・・膝頭中央部
e・・・大腿部
A・・・足首部を被覆する裾部
B・・・腓腹部を被覆する部位
C・・・腓腹下部を被覆する部位
D・・・膝頭中央部を被覆する部位
E・・・大腿部を被覆する部位

Claims (31)

  1. 伸縮性織物を含み、前身頃および後身頃を脇側および内股側で縫合したズボン又は筒状サポーターの形状を有し、少なくとも人の下腿部に着用し、着圧を与える下肢部用伸縮性衣料であって、
    前記伸縮性織物は、弾性繊維糸およびこれと複合化された異素材繊維からなる糸を含む伸縮性複合糸を含む緯糸と、化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を含む経糸とを含み、前記 緯糸が前記下肢部用伸縮性衣料の横断面方向に配向されるように縫製されており、
    前記下肢部用伸縮性衣料の脇側縫合部および内股側縫合部の縫製構造は、以下の(1)~(3):
    (1)前記脇側縫合部および内股側縫合部のうちの一方は、外表に合わせた前記前身頃の縫代と前記後身頃の縫代とが重ね縫いされた縫製構造を有し、前記脇側縫合部および内股側縫合部のうちの他方は、裏側に折り込まれた前記前身頃の縫代の縁と、表側に折り込まれた前記後身頃の縫代の縁とが突き合わせられ、かつ前記前身頃および後身頃の各々の折り山の際が縫われるか、表側に折り込まれた前記前身頃の縫代の縁と、裏側に折り込まれた前記後身頃の縫代の縁とが突き合わせられ、かつ前記前身頃および後身頃の各々の折り山の際が縫われた両伏せ縫いにより縫合した縫製構造を有する;
    (2)前記脇側縫合部及び内股側縫合部の両方が、前記外表に設けられた重ね縫いされた縫合部による縫製構造を有する;
    (3)前記脇側縫合部及び内股側縫合部の両方が、前記両伏せ縫いされた縫合部による縫製構造を有する、
    のいずれかであり、少なくとも前記人の下腿部に着用して圧迫力を与えたときに、周方向 において少なくとも前記人の下腿部に均等に着圧が付与されて、前記脇側縫合部および内 股側縫合部に起因する圧痕の発生が低減されることを特徴とする下肢部用伸縮性衣料。
  2. 下肢部の静脈還流促進、下肢静脈疾患の治療および予防、浮腫の防止および予防、リンパ浮腫の治療および予防、血流促進、並びに疲労軽減のいずれかのために使用されることを特徴とする請求項1に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  3. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸の伸長率は30%以上であり、前記伸縮性複合糸の弾性回復率は70%以上であり、経方向1cm幅当たりの前記弾性繊維糸の合計繊度は2,000dtex/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  4. 前記外表に設けられた重ね縫いされた縫合部は、前記前身頃側または後身頃側に重ねられた状態で、テープ状の生地により被覆されていることを特徴とする請求項1~3のいず れか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  5. 前記人の足首部を被覆する裾部を有し、前記裾部は、裏側に一つ折りした裾側端部が、少なくとも下糸にウーリー糸を用いたカバーステッチまたはチェーンステッチにより縫合された縫製構造を有しており、もって、前記裾部に伸縮性を有する構造が付与されており 、少なくとも前記人の下腿部に着用して圧迫力を与えたときに、前記裾部に起因する圧痕 の発生が低減され、かつ着脱が容易であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  6. 伸縮性織物を含み、前身頃および後身頃を脇側および内股側で縫合したズボン又は筒状サポーターの形状を有し、少なくとも人の下腿部に着用し、着圧を与える下肢部用伸縮性衣料であって、
    前記伸縮性織物は、弾性繊維糸およびこれと複合化された異素材繊維からなる糸を含む伸縮性複合糸を含む緯糸と、化学繊維糸及び/又は天然繊維糸を含む経糸とを含み、前記 緯糸が前記下肢部用伸縮性衣料の横断面方向に配向されるように縫製されており、
    前記下肢部用伸縮性衣料は、前記人の足首部を被覆する裾部を有し、前記裾部は、裏側に一つ折りした裾側端部が、少なくとも下糸にウーリー糸を用いたカバーステッチまたはチェーンステッチにより縫合された縫製構造を有しており、もって、前記裾部に伸縮性を 有する構造が付与されており、少なくとも前記人の下腿部に着用して圧迫力を与えたとき に、前記裾部に起因する圧痕の発生が低減され、かつ着脱が容易であることを特徴とする下肢部用伸縮性衣料。
  7. 下肢部の静脈還流促進、下肢静脈疾患の治療および予防、浮腫の防止および予防、リンパ浮腫の治療および予防、血流促進、並びに疲労軽減のいずれかのために使用されることを特徴とする請求項6に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  8. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸の伸長率は30%以上であり、前記伸縮性複合糸の弾性回復率は70%以上であり、経方向1cm幅当たりの前記弾性繊維糸の合計繊度は2,000dtex/cm以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  9. 前記人の足首部を被覆する裾部を有し、前記裾部は、前裾が後裾より高い位置となるように、裾線が前方から後方へ斜め下げにカットされており、かつ末広がりの形状を有することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  10. 前記人の足首部を被覆する裾部を有し、前記裾部の裾側端部は、テープ状の伸縮性生地で被覆されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  11. 前記伸縮性織物は、その緯糸が前記下肢部用伸縮性衣料の横断面方向に配向されるように縫製されており、前記下肢部用伸縮性衣料は、前記人の足首部を被覆する裾部および前記人の腓腹部を被覆する部位を有し、前記裾部の非着用時の周長をLA(cm)とし、前記腓腹部を被覆する部位の非着用時の周長をLB(cm)とし、前記人の足首部の周長をLa(cm)とし、前記人の腓腹部の周長をLb(cm)としたとき、LAとLaとの比(LA/La)は0.74~0.86の範囲であり、LBとLbとの比(LB/Lb)は0.86~0.95の範囲であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  12. 前記下肢部用伸縮性衣料は、前記人の腓腹部と足首部との中間に位置する腓腹下部を被覆する部位を有し、前記腓腹下部を被覆する部位の非着用時の周長をLC(cm)とし、前記人の腓腹下部の周長をLc(cm)としたとき、LCとLcとの比(LC/Lc)は0.81~0.92の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  13. 少なくとも前記人の下腿部を被覆する部分は、個別の着用者の下腿部の輪郭およびサイズに応じて調整された形状を有することを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  14. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸は、
    前記弾性繊維糸の外周に、前記異素材繊維からなる糸を螺旋状に巻きつけたカバード糸;前記弾性繊維糸を、前記異素材繊維からなる短繊維粗糸とともに精紡して得られ、前記弾性繊維糸からなる芯成分と、前記短繊維粗糸から形成された短繊維糸からなる鞘成分とを有する芯鞘構造を有するコアスパン糸;
    前記弾性繊維糸の外周に、前記異素材繊維からなる繊条糸を交絡させてなる交絡複合糸;および
    前記弾性繊維糸と、前記異素材繊維からなる糸とを直接合撚した合撚複合糸
    からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
    前記伸縮性複合糸の伸長率は30%以上であり、
    前記伸縮性複合糸の弾性回復率は70%以上である
    ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  15. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸は、前記弾性繊維糸からなる伸縮性芯糸に、前記異素材繊維からなる糸を鞘糸として螺旋状に一重となるように巻きつけたシングルカバード糸であり、前記伸縮性芯糸1m当たりの前記鞘糸の巻回数は1,000~2,500T/mであり、
    前記伸縮性複合糸の伸長率は30%以上であり、
    前記伸縮性複合糸の弾性回復率は70%以上である
    ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  16. 前記伸縮性複合糸の伸縮性芯糸1m当たりの鞘糸の巻回数は1,300~2,400T/mであることを特徴とする請求項15に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  17. 前記伸縮性複合糸の伸縮性芯糸1m当たりの鞘糸の巻回数は1,800~2,200T/mであることを特徴とする請求項15又は16に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  18. 前記伸縮性織物の製織時に、前記伸縮性複合糸は前記30%以上の伸長率を保持しており、かつ製織時の前記伸縮性織物中の前記伸縮性複合糸の伸長倍率は、製織前の前記伸縮性複合糸を基準として1.30倍以下に保持されていることを特徴とする請求項3,8お よび1417のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  19. 前記製織時の伸縮性織物中の伸縮性複合糸の伸長倍率は1.20倍以下に保持されていることを特徴とする請求項18に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  20. 前記伸縮性織物の緯糸方向の洗濯収縮率は5%以下であることを特徴とする18又は に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  21. 前記伸縮性織物の緯糸方向の洗濯収縮率は3%以下であることを特徴とする請求項1820のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  22. 前記伸縮性織物の洗濯処理後の経糸密度は5~80本/cmであり、洗濯処理後の複合糸密度は10~40本/cmであることを特徴とする請求項1821のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  23. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸の弾性繊維糸はポリウレタン弾性糸であり、前記伸縮性複合糸に加工する前の前記ポリウレタン弾性糸の繊度は20dtex以上であることを特徴とする請求項1~22のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  24. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸の弾性繊維糸はポリウレタン弾性糸であり、前記伸縮性複合糸に加工する前の前記ポリウレタン弾性糸の繊度は40~1,300dtexであることを特徴とする請求項1~23のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  25. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸の異素材繊維からなる糸は、化学繊維糸及び/又は天然繊維糸から選択され、前記化学繊維糸は、ポリアミド繊維糸、ポリエステル繊維糸およびポリオレフィン繊維糸からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、前記天然繊維糸は綿糸であることを特徴とする請求項1~24のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  26. 前記伸縮性織物の伸縮性複合糸の異素材繊維からなる糸は、ポリアミド繊維糸、ポリエステル繊維糸および綿糸からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~25のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  27. 前記ポリエステル繊維糸は、ポリエチレンテレフタレート繊維糸及び/又はポリブチレンテレフタレート繊維糸であることを特徴とする請求項25又は26に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  28. 前記ポリオレフィン繊維糸は、ポリエチレン繊維糸及び/又はポリプロピレン繊維糸であることを特徴とする請求項25に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  29. 前記伸縮性織物の緯糸方向の定荷重伸長率(JIS-L-1096)は40%以上であり、緯糸方向の伸長回復率(JIS-L-1096)は85%以上であることを特徴とする請求項1~28のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  30. 前記伸縮性織物は、綾組織を有するストレッチデニムであるか、綾組織を有し、かつ前記経糸が双糸のコーマ糸を含むストレッチチノクロスであることを特徴とする請求項1~29のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
  31. 前記伸縮性織物は綾組織を有するストレッチデニムであり、前記下肢部用伸縮性衣料はストレッチジーンズの形態を呈することを特徴とする請求項1~29のいずれか一項に記載の下肢部用伸縮性衣料。
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