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JP7167938B2 - 口腔バイオフィルム形成抑制剤及び口腔用組成物 - Google Patents

口腔バイオフィルム形成抑制剤及び口腔用組成物 Download PDF

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JP7167938B2 JP2019557225A JP2019557225A JP7167938B2 JP 7167938 B2 JP7167938 B2 JP 7167938B2 JP 2019557225 A JP2019557225 A JP 2019557225A JP 2019557225 A JP2019557225 A JP 2019557225A JP 7167938 B2 JP7167938 B2 JP 7167938B2
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Description

本発明は、口腔バイオフィルム形成抑制剤及びこれを含有する口腔用組成物に関する。
口腔疾患は病原菌が原因で発症するが、この病原菌は歯面にプラーク(歯垢)を形成することで口腔内に定着し病原性を発揮する。そこで、口腔疾患の予防には、プラークコントロールが非常に重要である。プラークコントロールの手段としては、プラークの形成抑制や除去、殺菌などが挙げられ、中でもプラークの除去が重要とされている。
しかし、プラーク除去の基本であるブラッシング等の物理的な除去方法では、歯間や歯周ポケット等、ブラシが届きにくい箇所があるために除去効果には限界があることもあり、プラークが形成されるのを予め防止する技術が注目され、プラーク形成を抑制する技術の確立が期待されている。
近年、プラークは、単なる細菌の汚れという認識から、細菌凝集体と細菌外代謝物などからなるバイオフィルムであると考えられるようになり、このバイオフィルムは強固に構築されているため、殺菌剤等に対する抵抗性や、歯面から剥がれ難いといった物理的な抵抗性を有することも知られている。このような現状から、耐性の高いバイオフィルムを形成させないような抑制技術が望まれている。
歯垢に対する形成抑制技術として、抗菌剤であるトリクロサンの滞留性向上技術(特許文献1;特開平4-139118号公報)が提案されているが、抗菌剤を用いた効果であるため、バイオフィルムに対する効果は十分とは言い難い。また、特殊なアクリル酸コポリマーによる歯垢の付着抑制技術も提案されている(特許文献2;特開平3-14512号公報)が、歯垢の初期付着を抑制する技術であり、付着後の強固なバリア形成を抑制する効果ではなく、十分な効果とは言えない。
特開平4-139118号公報 特開平3-14512号公報 特公平7-29907号公報 特開2000-247851号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、新たな口腔バイオフィルム形成抑制剤及びこれを含有する口腔用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、重量平均分子量が特定値以下のポリアクリル酸塩が、口腔バイオフィルムの形成を抑制する作用を有し、優れたバイオフィルム形成抑制効果を奏すること、更に、非イオン性殺菌剤を併用すると、前記ポリアクリル酸塩による作用が増強し、バイオフィルム形成抑制効果が格段に向上することを知見した。そして、これにより、前記ポリアクリル酸塩、好ましくはこのポリアクリル酸塩と非イオン性殺菌剤との併用系を口腔用組成物に配合することで、優れたバイオフィルム形成抑制効果を付与し、また、良好な使用感を与えることができることを見出し、本発明をなすに至った。
口腔用組成物用の粘結剤としてポリアクリル酸又はその塩は公知であるが、一般的に重量平均分子量10万以上、通常は30万程度の架橋型のポリアクリル酸又はその塩が用いられている。これに対して、本発明では、(a)重量平均分子量20,000以下である特定分子量のポリアクリル酸塩、特に直鎖状のポリアクリル酸塩に、口腔内でバイオフィルムが形成されるのを抑制するという、今まで知られていなかった作用効果があることが判明し、これにより、重量平均分子量が20,000を超えるポリアクリル酸塩、あるいは重量平均分子量が20,000以下でも塩の形態ではないポリアクリル酸を使用した場合には達成し得ない、格別顕著な作用効果が得られた。
後述の表1、表3中の比較例に示すように、重量平均分子量300,000のポリアクリル酸ナトリウム、あるいは重量平均分子量6,000のポリアクリル酸によるバイオフィルム形成抑制効果はいずれも×であったが、表1~3中の実施例に示すように、(a)成分によるバイオフィルム形成抑制効果はいずれも○又は◎以上であり、優れるものであった。
また、非イオン性殺菌剤は、バイオフィルム浸透殺菌作用があることが知られているが、バイオフィルム形成の抑制作用は認識されておらず、実際、後述の表3中の比較例3に示すように、イソプロピルメチルフェノールによるバイオフィルム形成抑制効果は低いものであった。しかし、本発明では、(a)成分と(b)非イオン性殺菌剤とを併用すると両者が相乗的に作用し、(a)成分による不快な臭いを抑制しつつバイオフィルム形成抑制効果が格段に増強した(後述の表1~3中の実施例参照)。
なお、本発明におけるバイオフィルム形成抑制の作用機序の詳細は明らかではないが、(a)成分に特有の化学的作用によって、(a)成分がバイオフィルム自体に作用し、特に、バイオフィルムが歯面で成長する際の強固なバリア形成が阻害されることで、新たなバイオフィルムの形成が防止されると推測される。
特許文献3(特公平7-29907号公報)では、抗歯石剤として重量平均分子量が約3,500~7,500であるポリアクリル酸重合体又はポリアクリル酸共重合体が約2.5%以上の量で口腔用組成物に配合されることを提案している。特許文献4(特開2000-247851号公報)は、特定のアニオン性高分子化合物および/またはその塩として分子量2万以上のポリアクリル酸重合体等を含む歯牙の着色抑制コーティング剤を提案するが、これはコーティングによる着色抑制であり、コーティング後の歯牙表面が親水化することでステインドペリクルの容易な除去及び蓄積防止が達成されるものである。これらに対して、本発明は、(a)特定分子量のポリアクリル酸塩による口腔バイオフィルム形成抑制であり、かかる作用効果は、塩形態ではないポリアクリル酸では劣り、一方で、口腔用組成物中の(a)成分量が2質量%以下でも優れるものである。
従って、本発明は、下記の口腔バイオフィルム形成抑制剤及び口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩を含有する口腔バイオフィルム形成抑制剤。
〔2〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(b)非イオン性殺菌剤
を含有する口腔バイオフィルム形成抑制剤。
〔3〕
(b)成分が、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン及びチモールから選ばれる1種以上の非イオン性殺菌剤である〔2〕に記載の口腔バイオフィルム形成抑制剤。
〔4〕
(a)/(b)が質量比として0.01~200である〔2〕又は〔3〕に記載の口腔バイオフィルム形成抑制剤。
〔5〕
ポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1,000以上10,000以下である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の口腔バイオフィルム形成抑制剤。
〔6〕
(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び
(b)非イオン性殺菌剤
を含有する口腔用組成物。
〔7〕
ポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1,000以上10,000以下である〔6〕に記載の口腔用組成物。
〔8〕
(b)成分が、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン及びチモールから選ばれる1種以上の非イオン性殺菌剤である〔6〕又は〔7〕に記載の口腔用組成物。
〔9〕
(a)/(b)が質量比として0.01~200である〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔10〕
(a)成分を0.01~2質量%、(b)成分を0.01~1質量%含有する〔6〕~〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔11〕
口腔バイオフィルム抑制用である〔6〕~〔10〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔12〕
歯磨剤組成物である〔6〕~〔11〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
本発明によれば、口腔バイオフィルムの形成を抑制する作用効果が優れる口腔バイオフィルム形成抑制剤及びこれを含有する口腔用組成物を提供できる。本発明の口腔用組成物は、バイオフィルム形成抑制効果が高く、使用感もよいことから、効果的にバイオフィルムを抑制することができるため、歯周病等の口腔疾患の予防又は抑制に好適である。
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔バイオフィルム形成抑制剤は、(a)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩であり、上記(a)成分を有効成分として含有する。
(a)成分のポリアクリル酸塩は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上20,000以下である。この場合、バイオフィルム形成抑制効果の点から、重量平均分子量は1,000以上であり、また、20,000以下であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下である。重量平均分子量が1,000未満であると、バイオフィルム形成抑制効果が劣る。20,000を超えると、バイオフィルム形成抑制効果が低下し、十分な効果が得られない。
上記重量平均分子量の測定は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー法)により、特許第5740859号公報に記載された方法及び測定条件で行った。具体的には下記に示す(以下同様)。
重量平均分子量の測定方法;
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC-MALLS)を用いて測定された値であり、条件は以下の通りである。
移動相:0.3M NaClO4
NaN3水溶液カラム:TSKgelα-M 2本
プレカラム:TSKguardcolumn α
標準物質:ポリエチレングリコール
(a)成分のポリアクリル酸塩は、バイオフィルム形成抑制効果の点から直鎖状のポリアクリル酸塩が好ましい。
塩としては、一価塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、更に好ましくはアルカリ金属塩であり、ナトリウム塩が特に好ましい。
このようなポリアクリル酸塩としては、ポリサイエンス社や東亞合成(株)から販売されている市販品を使用し得る。
具体的な市販品として、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000);直鎖状,東亞合成(株)製,AC-10NP,AC-10NPD,アロンT-50、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:8,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000);直鎖状,東亞合成(株)製,アロンA-20UN等を使用することができる。
なお、(a)成分のポリアクリル酸塩は、通常、歯磨剤に使用される粘結剤の架橋型のポリアクリル酸塩よりも重量平均分子量が低く、粘結剤として公知のポリアクリル酸塩とは異なるものである。
(a)成分に代えて、(a)成分以外のポリアクリル酸塩を使用した場合、あるいは塩の形態ではないポリアクリル酸を使用した場合は、バイオフィルム形成抑制効果が劣り、更に(b)成分を併用しても効果が劣り、また、不快な臭いが抑えられなくなって使用感が悪くなることもあり、本発明の目的は達成されない。
本発明の口腔バイオフィルム形成抑制剤では、有効成分として(a)成分に加えて(b)非イオン性殺菌剤を併用することが好ましい。(a)及び(b)成分を併用すると、バイオフィルム形成抑制効果がより向上する。
非イオン性殺菌剤には、バイオフィルム浸透殺菌作用を有するものがあることは知られており、また、わずかではあるがバイオフィルム形成抑制作用があると認識されるもののその作用は十分ではなかった。これに対して、(b)成分を(a)成分に併用すると、バイオフィルム形成抑制作用が増強して発現し、予想外の格別な作用効果が得られる。なお、殺菌剤であってもカチオン性殺菌剤を(a)成分と併用した場合はバイオフィルム形成抑制作用の増強は認められず、(b)成分特有の効果である。
(b)非イオン性殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、チモールを使用し得る。これらは、1種単独でも2種を組み合わせてもよい。なお、イソプロピルメチルフェノールは、4-イソプロピル-3-メチルフェノール(ビオゾール(登録商標))である。チモールは、2-イソプロピル-5-メチルフェノールである。中でも、イソプロピルメチルフェノール(4-イソプロピル-3-メチルフェノール)が、口腔用組成物として使用した際の味の点で好ましい。これらは、市販品を使用できる。
更に、(a)成分と(b)成分との量比を示す(a)/(b)は、質量比として0.01~200が好ましく、より好ましくは0.01~100、更に好ましくは0.03~100、最も好ましくは0.03~80である。この範囲内であると、バイオフィルム形成抑制効果がより優れる。
本発明の口腔バイオフィルム形成抑制剤は、有効成分として(a)成分を単独で、好ましくは更に(b)成分を併用し、前記成分を配合することで得ることができる。また更に、必要に応じて、その他の口腔用として公知の成分を含んでいてもよく、この場合、公知成分は本発明の効果を妨げない範囲で配合し得る。
本発明の口腔用組成物は、(a)成分、更には(b)成分を含有するものである。口腔用組成物としては、具体的には、ペースト状、ジェル状又は液状の歯磨剤(練歯磨、ジェル状歯磨、液状歯磨、液体歯磨等)、洗口剤、マウススプレー、塗布剤、貼付剤等に好適に配合できる。中でも歯磨剤組成物、とりわけ練歯磨剤組成物として好適である。また、優れたバイオフィルム抑制効果を有するため、口腔バイオフィルム抑制用口腔用組成物として好適である。
この場合、本発明において、口腔バイオフィルム形成抑制剤として(a)及び(b)成分を併用する場合は、前記特定の比率で規定することができる。また更に、本発明において、(a)成分、更には(b)成分の配合量は、バイオフィルム形成抑制効果及び使用感の点から、それぞれ後述の範囲が好ましく、前記成分はこれらを満たす濃度で使用することが好ましい。
(a)成分の配合量は、組成物全体の0.01~2%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.01~1%、更に好ましくは0.03~1%、最も好ましくは0.08~0.8%である。0.01%以上であると、十分なバイオフィルム形成抑制効果が得られる。2%以下であると、(a)成分由来の不快な臭いを十分に抑制することができる。
(b)成分の配合量は、組成物全体の0.01~1%が好ましく、より好ましくは0.03~0.5%である。0.01%以上であると、十分なバイオフィルム形成抑制効果が得られ、また、(a)成分による不快な臭いを十分に抑制できる。1%以下であると、それ自身による異味を抑え、(a)及び(b)成分の併用によって生じる苦味を十分に抑えることができる。
本発明の口腔用組成物には、更に任意成分として、剤型等に応じた公知成分を必要に応じて配合できる。任意成分は、本発明の効果を妨げない範囲で添加することが好ましい。具体的に歯磨剤には、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、更には甘味剤、防腐剤、着色剤、香料、有効成分等を配合でき、これら成分と水とを混合し、製造できる。
研磨剤は、例えば、無水ケイ酸、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物等のリン酸カルシウム系研磨剤、ゼオライト、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用し得るが、中でも、使用性の観点から、無機研磨剤である無水ケイ酸等のシリカ系研磨剤、リン酸カルシウム系研磨剤、とりわけ無水ケイ酸が好ましい(研磨剤の配合量は、通常、5~60%、練歯磨の場合には10~55%)。
また、特に練歯磨等のペースト状組成物の場合には、粘結剤として、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸誘導体、キサンタンガム、トラガカントガム、ジェランガム、カラヤガム、アラビアガム等のガム類、重量平均分子量20,000超の架橋型のポリアクリル酸塩、カラギーナン、更にはカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンといった有機粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトといった無機粘結剤を配合できる(配合量は通常、0.3~10%)。
更に、特にペースト状や液状の歯磨剤では、粘稠剤として、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール等の多価アルコールを1種又は2種以上配合し得る(配合量は通常、5~70%)。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合し得る。これらは、1種又は2種以上を使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、炭素数が12~14、特に12のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩等が挙げられる。アシルアミノ酸塩及びアシルタウリン塩のアシル基は、それぞれ炭素数12~14、特に12がよい。
具体的にアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、アシルアミノ酸塩としては、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩等のアシルグルタミン酸塩、ラウロイルサルコシン塩等のアシルサルコシン塩が挙げられ、アシルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリン塩が挙げられる。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩がよい。特に、アルキル硫酸塩、アシルサルコシン塩、アシルタウリン塩が好ましい。中でも、炭素数12の炭化水素基(ラウリル基)を有するアニオン性界面活性剤が好ましく、特にアルキル硫酸塩(ナトリウム塩)が、他の界面活性剤よりも味の点で優れることから、より好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらのうち、汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルが好適である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルキル鎖の炭素数が14~30、エチレンオキサイド平均付加モル数(平均付加EO)が3~30が好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、平均付加EOが10~100が好ましい。アルキロールアミドは、アルキル鎖の炭素数が12~14が好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12~18が好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が16~18、平均付加EOが10~40が好ましい。
両性界面活性剤としては、炭素数12~14のアシル基を有するアシルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインが挙げられる。アシルアミノ酢酸ベタインとしては、ラウロイルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが挙げられる。
界面活性剤の配合量は、通常、0.01~15%、特に0.01~10%である。
なお、アニオン性界面活性剤の配合量は0.1~3%、特に0.5~2%がよく、ノニオン性界面活性剤の配合量は0.01~10%がよい。
本発明において、(a)成分に、ノニオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を併用すると、その添加量によって臭いや味が悪くなり使用感が低下することがあるが、アルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤と共に上記ノニオン性界面活性剤を添加すると、このような臭いや味の悪化が防止され、使用感が低下することなくバイオフィルム形成抑制効果がより向上する。
甘味剤は、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン酸ジカリウム、ペリラルチン、ソーマチン、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステルが挙げられる。防腐剤は、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
着色剤は、青色1号、黄色4号、二酸化チタンが挙げられる。
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
また、上記の香料素材は、組成物全体の0.000001~1%使用するのが好ましい。上記香料素材を使用した賦香用香料としては、組成物中に0.001~2.0%使用するのが好ましい。
任意の有効成分は、例えば、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)等の酵素;モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート;フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸等の抗炎症剤;硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等の知覚過敏改善剤;グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウムや、塩化亜鉛、酸化亜鉛、クエン酸亜鉛等の亜鉛化合物;グルコン酸銅、硫酸銅等の銅化合物;ポリリン酸ナトリウム等の水溶性無機リン酸化物;ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類;オウバクやチャ等の生薬が挙げられる。これら有効成分は、1種又は2種以上で使用でき、また、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
口腔用組成物のpH(25℃)は、通常範囲でよく、pH5~9、特に6~8がよい。なお、公知のpH調整剤を添加してpH調整してもよく、例えば塩酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を使用できる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
また、重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー法)によって上記と同様の方法及び測定条件で測定した。
[実施例、比較例]
表1に示す種類及び量のポリアクリル酸塩、更には(b)成分を配合した口腔用製剤を調製し、下記方法でバイオフィルム形成抑制効果を評価した。結果を表1に併記した。
また、表2、3に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を常法で調製し、アルミニウムラミネートチューブ容器に充填した。下記方法でバイオフィルム形成抑制効果及び使用感(臭い)を評価した。結果を表2、3に併記した。
(1)バイオフィルム形成抑制効果の評価方法
モデルバイオフィルムを作製するために使用した菌は、下記4種類である。
(i)アクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146
(ii)フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953
(iii)ポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)ATCC33277
(iv)ベイヨネラ パルビュラ(Veillonella parvula)ATCC17745
(i)、(ii)、(iii)の菌は、5mg/Lのヘミン(Sigma社製)及び1mg/LのビタミンK(和光純薬工業(株)製)を含むトッドへヴィットブロス(Becton and Dickinson社製)培養液により培養した。(iv)の菌は、1.26%乳酸ナトリウム(Sigma社製)を含むトッドへヴィットブロス(Becton and Dickinson社製)培養液により培養した。なお、培養は37℃で一晩嫌気培養(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)した。
前記培養した4菌種を、予めベイサルメディウムムチン培養液(BMM)*1を3,000mL入れたRotating Disk Reactor(培養槽)に、それぞれ1×107cfu/mLになるように接種した。前記培養槽内に、0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したハイドロキシアパタイト板(HOYA(株)製、直径φ7.0mm×厚さ3.5mm、以下、HA板と略記する)をモデルバイオフィルム形成の担体として設置した。この状態で、嫌気条件下(95vol%窒素、5vol%二酸化炭素)で24時間培養を行った。
次に、嫌気条件下(95vol%窒素、5vol%二酸化炭素)で、BMMを置換率5vol%/時間の流量で、別の流路から試験溶液(口腔用製剤の場合は人工唾液3倍希釈液、対照試験の場合はBMM)を置換率5vol%/時間の流量で、各々連続的に供給しながら、10日間連続培養した。
前記連続培養処理後のHA板を取り出し、24穴マルチプレート(住友ベークライト(株)製)に移し、リン酸緩衝生理食塩水*2(Phosphate Buffered Saline、以下、PBSと略記する)1mLで7回洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット溶液に15分間浸漬して、HA板表面に形成されたバイオフィルムを染色した。クリスタルバイオレット溶液を除去し、1mLのPBSで5回洗浄した後、30%酢酸水溶液2mLで色素を抽出し、550nmの吸光度を測定し、吸光度の強さをバイオフィルム形成量とした。
対照試験を行った場合のバイオフィルム形成量を100として、それに対する各試験溶液を添加した際のバイオフィルム形成量率(%)を算出し、バイオフィルム形成抑制効果を評価した。
評価基準
◎◎:30%未満
◎ :30%以上50%未満
○ :50%以上70%未満
△ :70%以上90%未満
× :90%以上
*1;BMMの組成(1リットル中の質量で表す。)
プロテオースペプトン(Becton and Dickinson社製):
4g/L
トリプトン(Becton and Dickinson社製): 2g/L
イーストエキス(Becton and Dickinson社製):
2g/L
ムチン(Sigma社製): 5g/L
ヘミン(Sigma社製): 2.5mg/L
ビタミンK(和光純薬工業(株)製): 0.5mg/L
KCl(和光純薬工業(株)製): 1g/L
システイン(和光純薬工業(株)製): 0.2g/L
蒸留水: 残
(全量が1Lになるようにメスアップし、120℃で20分間オートクレー
ブした。)
*2;PBSの組成(1リットル中の質量で表す。)
NaCl(和光純薬工業(株)製): 8.0g
KCl(和光純薬工業(株)製): 0.2g
Na2HPO4・12H2O(和光純薬工業(株)製): 3.63g
KH2PO4(和光純薬工業(株)製): 0.24g
蒸留水: 残
(1N HClによりpH7.4に調整し、全量が1Lになるようにメスア
ップした。)
(2)使用感の評価方法
10名の被験者モニターが、歯磨剤組成物1gを歯ブラシにのせ、3分間ブラッシングして口腔内を洗浄した際の使用感(臭い)を下記の評点基準により評価した。10名の評価点の平均を算出し、下記の評価基準により判定した。
使用感(臭い)の評点基準
4点:口腔内で不快な臭いを感じない
3点:口腔内で不快な臭いをやや感じるが問題ないレベルである
2点:口腔内で不快な臭いを感じる
1点:口腔内で不快な臭いを強く感じる
使用感(臭いのなさ)の評価基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
使用原料の詳細を下記に示す。
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、AC-10NP
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:8,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
(a)ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、アロンA-20UN
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:300,000、比較品)
架橋型、ポリサイエンス社製
ポリアクリル酸(Mw:6,000、比較品)
直鎖状、東亞合成(株)製、アロンA-10SL
(b)イソプロピルメチルフェノール
4-イソプロピル-3-メチルフェノール(ビオゾール)、
大阪化成(株)製
(b)チモール
2-イソプロピル-5-メチルフェノール、大阪化成(株)製
(b)トリクロサン
BASF(株)製
Figure 0007167938000001
Figure 0007167938000002
Figure 0007167938000003

Claims (10)

  1. (a)重量平均分子量が1,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩を含有する口腔バイオフィルム形成抑制剤(但し、次亜塩素酸塩を含有するものを除く)
  2. (a)重量平均分子量が1,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、及び
    (b)イソプロピルメチルフェノール及びチモールから選ばれる1種以上の非イオン性殺菌剤
    を含有する口腔バイオフィルム形成抑制剤(但し、次亜塩素酸塩を含有するものを除く)
  3. (b)成分が、イソプロピルメチルフェノールある請求項2記載の口腔バイオフィルム形成抑制剤。
  4. (a)/(b)が質量比として0.01~200である請求項2又は3記載の口腔バイオフィルム形成抑制剤。
  5. (a)重量平均分子量が1,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、及び
    (b)イソプロピルメチルフェノール及びチモールから選ばれる1種以上の非イオン性殺菌剤
    を含有する口腔用組成物(但し、次亜塩素酸塩を含有する口腔用組成物を除く)
  6. (b)成分が、イソプロピルメチルフェノールある請求項記載の口腔用組成物。
  7. (a)/(b)が質量比として0.01~200である請求項5又は6記載の口腔用組成物。
  8. (a)成分を0.01~2質量%、(b)成分を0.01~1質量%含有する請求項のいずれか1項記載の口腔用組成物。
  9. 口腔バイオフィルム抑制用である請求項のいずれか1項記載の口腔用組成物。
  10. 歯磨剤組成物である請求項のいずれか1項記載の口腔用組成物。
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