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JP7035699B2 - 射出成型接着用の塗装金属素形材、複合体および複合体の製造方法 - Google Patents

射出成型接着用の塗装金属素形材、複合体および複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗装金属素形材、複合体および複合体の製造方法に関する。
金属板もしくはそのプレス成形品、または鋳造、鍛造、切削、粉末冶金などにより成形された金属製の部材である、いわゆる「金属素形材」は、自動車などの様々な工業製品に使用されている。また、金属素形材と樹脂組成物の成形体とが接合された複合体は、金属のみからなる部品よりも軽量であり、かつ樹脂のみからなる部品よりも強度が高いため、携帯電話機やパーソナルコンピューターなどの様々な電子機器に使用されている。従来、このような複合体は、金属素形材と樹脂組成物の成形体を嵌合させることにより製造されていた。しかしながら、嵌合による複合体の製造方法は、作業工程数が多く、生産性が低かった。そこで、近年は、インサート成形により金属素形材と樹脂組成物の成形体とを接合して、複合体を製造するのが一般的である。
インサート成形により複合体を製造する場合、金属素形材と樹脂組成物の成形体との密着性を向上させることが重要である。金属素形材と樹脂組成物の成形体との密着性を高める方法としては、例えば、インサート成形を行う前に、金属素形材の表面を粗面化処理することが提案されている(特許文献1~4参照)。特許文献1~4の方法では、アルミニウム合金の表面を粗面化処理して超微細凹凸を形成し、形成された超微細凹凸に樹脂組成物を侵入させることで、アルミニウム合金と樹脂組成物の成形体との接合性を向上させている。
なお、樹脂合計質量に対するポリカーボネートユニットの質量の割合が15~80質量%となるようなポリカーボネートユニット含有ポリウレタン樹脂を含む有機樹脂層を金属素形材の表面に形成し、形成された有機樹脂層によって金属素形材と樹脂組成物の成形体との密着性を高めることが提案されている(特許文献5参照)。
特開2006-027018号公報 特開2004-050488号公報 特開2005-342895号公報 特開2013-244725号公報 国際公開第2013/145712号
特許文献1~4に記載の方法で製造した複合体では、金属素形材と樹脂組成物の成形体の密着性および耐熱衝撃性が十分でないという問題があった。また、特許文献1~4に記載の複合体の製造方法では、金属素形材の表面を粗面化処理するため、製造工程が煩雑となり、製造費用が増大してしまうという問題もあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性および耐熱衝撃性に優れる塗装金属素形材、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の塗装金属素形材、複合体および複合体の製造方法に関する。
[1]金属素形材と、前記金属素形材の表面に形成された有機樹脂層と、を有し、前記有機樹脂層は、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含み、前記有機樹脂層中の樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、5質量%以上85質量%以下であり、前記有機樹脂層の膜厚は、0.5μm以上である、塗装金属素形材。
[2]前記ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂は、ポリエステルユニットまたはポリカーボネートユニットをさらに含む、[1]に記載の塗装金属素形材。
[3]前記有機樹脂層は、Ti、Zr、V、MoおよびWからなる群から選択される金属の酸化物、水酸化物もしくはフッ化物、またはこれらの組み合わせを含む、[1]または[2]に記載の塗装金属素形材。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の塗装金属素形材と、前記塗装金属素形材の前記有機樹脂層が形成された表面に接合された、熱可塑性樹脂組成物の成形体と、を有する、複合体。
[5]前記有機樹脂層と前記成形体との界面に、前記ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶してなる相溶層を有し、前記相溶層の厚みは、25nm以上500nm以下である、[4]に記載の複合体。
[6]前記熱可塑性樹脂組成物は、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはこれらの組み合わせである、[4]または[5]に記載の複合体。
[7]塗装金属素形材と、熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体の製造方法であって、塗装金属素形材を準備する工程と、前記塗装金属素形材を射出成形金型に挿入する工程と、前記射出成形金型に熱可塑性樹脂組成物を射出して、前記塗装金属素形材の表面に接合された前記熱可塑性樹脂組成物の成形体を成形する工程と、を有し、前記塗装金属素形材は、金属素形材と、前記金属素形材の表面に形成された有機樹脂層とを有し、前記有機樹脂層は、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含み、前記有機樹脂層中の樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、5質量%以上85質量%以下であり、前記有機樹脂層の膜厚は、0.5μm以上である、複合体の製造方法。
本発明によれば、熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性および耐熱衝撃性に優れる塗装金属素形材、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に関する塗装金属素形材と、PPS系樹脂の成形体と、を接合させたときの、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合面を含む断面を電子マイクロアナライザ(EPMA)元素分析して得られる分析結果の一例である。
1.塗装金属素形材
本発明の一実施形態に関する塗装金属素形材は、金属素形材と、金属素形材の表面に形成された有機樹脂層とを有する。また、塗装金属素形材は、金属素形材と有機樹脂層との間に化成処理皮膜が形成されていてもよい。以下、塗装金属素形材の各要素について説明する。
(1)金属素形材
金属素形材とは、金属に熱や力などが加えられ、形を与えられたものをいう。塗装基材となる金属素形材は、金属板、そのプレス成形品、あるいは、鋳造、鍛造、切削、粉末冶金などにより成形された金属製の部材である。金属素形材の種類は、特に限定されない。金属素形材の例には、金属板、金属板のプレス加工品および金属部材などが含まれる。上記金属板の例には、亜鉛めっき鋼板、Zn-Al合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg-Si合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、およびフェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、および銅板などが含まれる。金属板は、冷延鋼板などの圧延された鋼板でもよい。上記金属部材の例には、アルミダイカストおよび亜鉛ダイカストを含む鋳造、鍛造、切削加工、および粉末冶金などにより成形された各種金属部材などが含まれる。金属素形材は、必要に応じて、脱脂、酸洗などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。
(2)化成処理皮膜
前述のように、塗装金属素形材は、金属素形材と有機樹脂層との間に化成処理皮膜が形成されていてもよい。化成処理皮膜は、金属素形材の表面に形成されており、金属素形材と有機樹脂層との間の密着性および金属素形材の耐食性を向上させる。化成処理皮膜は、金属素形材の表面のうち、少なくとも後述する被接合体と接合する領域(接合面)に形成されていればよいが、皮膜形成を容易にする観点からは、金属素形材の表面全体に形成されることが好ましい。
化成処理皮膜を形成するための化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、およびリン酸塩処理などが含まれる。化成処理によって形成された化成処理皮膜の付着量は、金属素形材と有機樹脂層との間の密着性および金属素形材の耐食性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5~100mg/mとなるように付着量を調整すればよい。また、クロムフリー皮膜の場合、Ti-Mo複合皮膜では皮膜の付着量が10~500mg/m、フルオロアシッド系皮膜ではフッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3~100mg/mの範囲内となるように付着量を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、皮膜の付着量が0.1~5g/mとなるように付着量を調整すればよい。
(3)有機樹脂層
有機樹脂層は、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含む層であり、金属素形材に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の密着性を向上させる。後述するように、有機樹脂層は、任意成分としてポリエーテルユニット非含有樹脂をさらに含んでいてもよい。有機樹脂層は、金属素形材の表面のうち有機樹脂層を形成すべき領域を均一に被覆してもよいし、上記領域に分散されて金属素形材の表面を被覆してもよい。有機樹脂層は、化成処理皮膜と同様に、金属素形材表面のうちの接合面に形成されていればよいが、通常は金属素形材(または化成処理皮膜)の表面全体に形成されている。
有機樹脂層の膜厚は、0.5μm以上であれば特に限定されない。有機樹脂層の膜厚が0.5μm以上であると、金属素形材に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の密着性を十分に向上させることができる。有機樹脂層の膜厚の上限値は、特に限定されないが、20μm程度である。有機樹脂層の膜厚を20μm超としても、それ以上の密着性向上を期待することができない。
ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂は、分子鎖中にポリエーテルユニットを有する。「ポリエーテルユニット」とは、ポリウレタン樹脂の分子鎖中において下記に示す構造をいう。ポリエーテルユニットは、ソフトセグメントとも言われ、ポリウレタン樹脂に柔軟性および伸び性などを付与する。また、ポリエーテルユニットは、分子運動性が高いことから、塗装金属素形材に対して熱可塑性樹脂組成物をインサート成形する場合、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を熱可塑性樹脂と相溶させて、これらを強固に結合させる。したがって、有機樹脂層にポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含ませておくことで、有機樹脂層に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の密着性を向上させることができる。
Figure 0007035699000001
ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂は、例えば以下の工程により調製することができる。ハードセグメント成分となる有機ポリイソシアネートと、ソフトセグメント成分となるポリエーテルポリオールと、三級アミノ基またはカルボキシル基を有するポリオールとを反応させてウレタンプレポリマーを生成する。このウレタンプレポリマーは、そのままポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂をして使用することができる。なお、熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性および熱可塑性樹脂への有機樹脂層の相溶性を高める観点から、ポリエーテルユニット含有ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール化合物以外のポリオール、例えばポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールなどを併用することは可能である。
また、製造したウレタンプレポリマーの三級アミノ基を、酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した後、水で鎖伸長することで、カチオン性ポリカーボネートユニット含有ポリウレタン樹脂を生成することができる。
また、製造したウレタンプレポリマーのカルボキシル基を、トリエチルアミンやトリメチルアミン、ジエタノールモノメチルアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリウムなどの塩基性化合物で中和してカルボン酸の塩類に変換することで、アニオン性ポリカーボネートユニット含有ポリウレタン樹脂を生成することができる。
ポリエーテルポリオールは、各種アルコールを酸触媒下にて縮合させることで得られる化合物である。ポリエーテルポリオールの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびその他のポリアルキレンエーテルグリコールなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールは、イソシアネート化合物によって鎖延長されたものでもよい。これらのポリエーテルポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステルポリオールは、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などを含むジカルボン酸化合物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、および1,6-ヘキサンジオールなどを含むジオール化合物と、を反応させることで得られる化合物とすることができる。これらのポリエステルポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリカーボネートポリオールは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートなどを含むカーボネート化合物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、および1,6-ヘキサンジオールなどを含むジオール化合物と、を反応させることで得られる化合物とすることができる。ポリカーボネートポリオールは、イソシアネート化合物によって鎖延長されたものでもよい。これらのポリカーボネートポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機ポリイソシアネートの種類は、特に限定されない。有機ポリイソシアネートの例には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが含まれる。これらの有機ポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機樹脂層は、金属素形材に対する有機樹脂層の密着性をさらに向上させる観点から、任意成分としてポリエーテルユニット非含有樹脂をさらに含んでいてもよい。ポリエーテルユニット非含有樹脂の種類は、分子鎖中にポリエーテルユニットを含んでいないものであれば特に限定されないが、金属素形材に対する有機樹脂層密着性を向上させる観点からは、極性基を含むものが好ましい。ポリエーテルユニット非含有樹脂の種類の例には、エポキシ系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、およびフェノール系樹脂などが含まれる。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ系樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、およびビスフェノールAD型エポキシ樹脂などが含まれる。酸変性オレフィン系樹脂の例には、酸変性ポリエチレン樹脂および酸変性ポリプロピレン樹脂などが含まれる。フェノール系樹脂には、ノボラック型樹脂およびレゾール型樹脂などが含まれる。
樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、5質量%以上85質量%以下である。ポリエーテルユニットの質量の割合が5質量%以上であると、有機樹脂層と熱可塑性樹脂とを十分に相溶させて、有機樹脂層に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の密着性を十分に高めることができる。一方、ポリエーテルユニットの質量の割合を75質量%以下とすると、十分な量のハードセグメントをポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂に導入することにより、有機樹脂層に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の密着性を十分に高めることができる。樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、有機樹脂層をクロロホルムに溶解させたサンプルを用いて、核磁気共鳴分光法(NMR分析)により求めることができる。上記観点から、樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、5質量%以上85質量%以下であることが好ましく、10質量%以上75質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以上65質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以上65質量%以下であることが特に好ましい。
有機樹脂層は、本発明の効果が得られる範囲において、添加剤をさらに含有していてもよい。当該添加剤の例には、金属酸化物、防錆剤、リン化合物、潤滑剤、消泡剤、エッチング剤、無機化合物、ならびに色材などが含まれる。
上記防錆剤は、塗装金属素形材の耐食性を向上させ、その結果、複合体の耐食性を向上させる。防錆剤は、一種でもそれ以上でもよい。防錆剤の例には、金属化合物系防錆剤、非金属化合物系防錆剤、および有機化合物系防錆剤が含まれる。有機樹脂層における防錆剤の含有量は、防錆剤の種類に応じて、防錆剤による防錆効果と本発明の効果とが得られる範囲から適宜に決めることができる。
上記金属化合物系防錆剤の例には、Ti、Zr、V、MoおよびWからなる群から選択される金属(バルブメタル)の酸化物、水酸化物またはフッ化物が含まれる。これらの金属化合物系防錆剤は、金属素形材の耐食性をより向上させることができる。特に、これらのバルブメタルのフッ化物は、自己修復作用により、皮膜欠陥部における腐食を抑制することも期待できる。
有機樹脂層における上記防錆剤の含有量は、当該金属酸化物の機能が発現される範囲において、適宜に決めることができる。たとえば、有機樹脂層における当該防錆剤の含有量は、上記耐食性の観点からは、Si換算含有量が0.5質量%以上、Ti換算含有量が0.005質量%以上、Zr換算含有量が0.05質量%以上、Mo換算含有量が0.005質量%以上、V換算含有量が0.02質量%以上であることが好ましい。また、有機樹脂層における防錆剤の含有量は、上記有機樹脂塗料の保管安定性の観点から、Si換算含有量が23.5質量%未満、Ti換算含有量が0.6質量%未満、Zr換算含有量が12.0質量%未満、Mo換算含有量が3.0質量%未満、V換算含有量が3.0質量%未満であることが好ましい。
上記非金属化合物系防錆剤の例には、リン酸水素二アンモニウムなどのリン酸化合物、および、チオ尿素などのチオール化合物、が含まれる。
上記有機化合物系防錆剤の例には、インヒビターおよびキレート化剤が含まれる。当該インヒビターの例には、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸などのカルボン酸、カルボン酸金属石鹸(ラノリンCa、ナフテン酸Zn、酸化ワックスCa、Ba塩など)、スルフォン酸塩(Na、Ca、Baスルフォネート)、アミン塩、および、エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステル,ソルビタンモノイソステアレート,ソルビタンモノオレートなど)が含まれる。上記キレート化剤の例には、EDTA(エチランジアミンテトラ酢酸)、グルコン酸,NTA(ニトリロトリ酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチル、エチレンジアミン三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、および、クエン酸Naが含まれる。
上記潤滑剤は、塗装金属素形材の表面におけるカジリの発生を抑制することができる。潤滑剤は、一種でもそれ以上でもよく、潤滑剤の種類は、特に限定されない。潤滑剤の例には、フッ素系やポリエチレン系、スチレン系、ポリプロピレン系などの有機ワックス、および、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤、が含まれる。有機樹脂層中の潤滑剤の含有量は、有機樹脂層における上記有機樹脂および上記他の樹脂の総量100質量部に対して1~20質量部であることが好ましい。潤滑剤が1質量部未満の場合、カジリの発生を十分に抑制することができないことがある。一方、潤滑剤が20質量部超の場合、カジリの発生を抑制する効果が頭打ちとなり、また、潤滑性が高すぎて取り扱い性が劣ることがある。
上記消泡剤は、後述する有機樹脂塗料の調製時における気泡の発生を抑制する。消泡剤は、一種でもそれ以上でもよい。消泡剤の種類は、特に限定されない。消泡剤は、シリコーン系消泡剤などの既知の消泡剤を適量添加すればよい。
上記エッチング剤は、金属素形材の表面を活性化することで、金属素形材に対する有機樹脂層の密着性を向上させる。エッチング剤の例には、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、ジルコンフッ化水素、チタンフッ化水素などのフッ化物が含まれる。
上記無機化合物は、有機樹脂層を緻密化して耐水性を向上させる。無機化合物の例には、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどの無機系酸化物ゾル、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マンガン、リン酸マグネシウムなどのリン酸塩などが含まれる。
上記色材は、有機樹脂層に所定の色調を付与する。色材の例には、無機顔料、有機顔料および有機染料などが含まれる。
上記塗装金属素形材の製造方法は、特に限定されない。たとえば、上記塗装金属素形材は、以下の方法により製造されうる。
まず、塗装基材となる金属素形材を準備する。化成処理皮膜を形成する場合は、有機樹脂層を形成する前に化成処理を行う。化成処理皮膜を形成しない場合は、このまま有機樹脂層を形成する。
金属素形材の表面に化成処理皮膜を形成する場合、化成処理皮膜は、金属素形材の表面に化成処理液を塗布し、乾燥させることで形成することができる。化成処理液の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよい。上記塗布方法の例には、ロールコート法、カーテンフロー法、スピンコート法、スプレー法、および浸漬引き上げ法などが含まれる。化成処理液の乾燥条件は、化成処理液の組成などに応じて適宜設定すればよい。たとえば、化成処理液を塗布した金属素形材を水洗することなく乾燥オーブン内に投入し、到達板温が80~250℃の範囲内となるように加熱することで、金属素形材の表面に均一な化成処理皮膜を形成することができる。
有機樹脂層は、金属素形材(または化成処理皮膜)の表面に、前述のポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含む塗料を塗布し、焼き付けることで形成することができる。塗料の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよい。上記塗布方法の例には、ロールコート法、カーテンフロー法、スピンコート法、スプレー法、および浸漬引き上げ法などが含まれる。塗料の焼き付け条件は、塗料の組成などに応じて適宜設定すればよい。たとえば、塗料を塗布した金属素形材を乾燥オーブン内に投入し、到達板温が110~200℃の範囲内となるように熱風乾燥機で乾燥させることで、金属素形材(または化成処理皮膜)の表面に均一な有機樹脂層を形成することができる。
以上のように、本実施形態に関する塗装金属素形材は、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含む塗料を塗布し、焼き付けるだけで、容易に製造されうる。
2.複合体
本発明の別の実施形態に関する複合体は、上述した塗装金属素形材と、上記塗装金属素形材の有機樹脂層が形成された表面に接合された、熱可塑性樹脂組成物の成形体と、を有する。
熱可塑性樹脂組成物の成形体は、前述の塗装金属素形材の表面(より正確には、有機樹脂層の表面)に接合されている。熱可塑性樹脂組成物の成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択されうる。
熱可塑性樹脂組成物の成形体を構成する熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されない。熱可塑性樹脂の例には、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリアミド(PA)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂またはこれらの組み合わせが含まれる。これらの中でもPET樹脂およびPBT樹脂が特に好ましい。また、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオールなどを併用して合成されたものであるときは、ベンゼン環を有する熱可塑性樹脂が好ましく、PBT系樹脂およびPPS系樹脂が特に好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、成形収縮率を低めたり、材料強度、機械的強度および耐傷付き性などを高めたりする観点から、無機フィラーおよび熱可塑性ポリマーなどを含んでいてもよい。
無機フィラーは、熱可塑性樹脂組成物の成形体の剛性を向上させる。無機フィラーの種類は、特に限定されず、既知の物質を使用することができる。無機フィラーの例には、ガラス繊維、炭素繊維、およびアラミド樹脂などの繊維系フィラー、カーボンブラック、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、粘土、リグニン、雲母、石英粉、およびガラス球などの粉フィラー、ならびに、炭素繊維およびアラミド繊維の粉砕物などが含まれる。無機フィラーの配合量は、特に限定されないが、5~50質量%の範囲内が好ましい。無機フィラーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性ポリマーは、熱可塑性樹脂組成物の成形体の耐衝撃性を向上させる。熱可塑性ポリマーの種類は、特に限定されず、ベンゼン環を有する熱可塑性ポリマーでもよいし、ベンゼン環を有しない熱可塑性ポリマーでもよい。ベンゼン環を有する熱可塑性ポリマーの例には、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリフェニレンエーテル系樹脂などが含まれる。また、ベンゼン環を有しない熱可塑性ポリマーの例には、ポリオレフィン系樹脂などが含まれる。熱可塑性ポリマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合面には、有機樹脂層に含まれるポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂などの有機樹脂と、熱可塑性樹脂組成物の成形体を構成する熱可塑性樹脂と、が相溶してなる相溶層が形成される。有機樹脂層が5質量%以上85質量%以下のポリエーテルユニットを含むことで、上記有機樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶して、十分な厚みの相溶層が形成される。上記相溶層は、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との間の密着性および耐熱衝撃性を高めることができる。
相溶層は、複合体の、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合面を含む断面を元素分析したときに、有機樹脂層に特有の原子組成から熱可塑性樹脂組成物に特有に原子組成へと、原子組成が変化する層である。上記相溶層は、有機樹脂層に近づくにつれ有機樹脂層に近い組成となり、熱可塑性樹脂組成物の成形体に近づくにつれ熱可塑性樹脂組成物に近い組成となる。そのため、相溶層は、有機樹脂層の線膨張率と熱可塑性樹脂組成物の成形体の線膨張率との差を小さくして、高温および低温の繰り返しにより上記界面に加わる熱疲労を緩和し、上記熱疲労による接合力の低下を抑制できると考えられる。
一方で、特許文献1~4に記載の複合体のように、金属素形材と樹脂組成物とを直接接合させると、金属と樹脂との間の線膨張率の差が大きいことにより、温度変化による熱疲労で金属素形材と樹脂組成物との間の接合力が低下しやすい。これに対し、樹脂組成物にフィラーを添加して上記線膨張率の差を小さくすることもできる。しかし、特許文献1~4に記載の複合体では、アルミニウム合金の表面を粗面化処理して形成した超微細凹凸のサイズが数百nm~数十μmと小さいため、超微細凹凸の間にフィラーが侵入しにくく、上記線膨張率の差を十分に小さくすることが困難である。そのため、特許文献1~4に記載の複合体では、上記線膨張率の差により、温度変化時に超微細凹凸と樹脂組成物との間に空隙が発生しやすく、上記空隙により耐熱衝撃性は低下しやすい。
有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との間の密着性および耐熱衝撃性を十分に高める観点から、相溶層の厚みは、25nm以上500nm以下である。相溶層の厚みが25nm以上であると、上記有機樹脂の分子鎖と熱可塑性樹脂の分子鎖とが十分に絡み合って、相溶性が十分に高まるほか一方の分子鎖が容易に引き抜かれにくくなるため、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との間の密着性が高まるほか、上記作用により耐熱衝撃性も十分に高めることができる。相溶層の厚みの上限は、特に限定されないものの、厚みがありすぎるとかえって耐熱衝撃性が低下することから、500nm以下とすることが好ましい。上記観点から、相溶層の厚みは50nm以上450nm以下であることが好ましく、40nm以上400nm以下であることがさらに好ましく、50nm以上350nm以下であることが特に好ましい。相溶層の厚みは、有機樹脂層に含まれるポリエーテルユニットの量および接合時の接合温度などによって調整することができる。
図1は、有機樹脂層が5質量%以上85質量%以下のポリエーテルユニットを含む塗装金属素形材と、PPS系樹脂の成形体と、を接合させたときの、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合面を含む断面を電子マイクロアナライザ(EPMA)元素分析して得られる分析結果の一例である。図中左側が有機樹脂層、右側が熱可塑性樹脂組成物の成形体であり、接合面には、原子組成(図1にはN、CおよびSに相当する波長について得られた強度を示す)が、有機樹脂層に特有の原子組成(ウレタン結合に由来するNが多い)から熱可塑性樹脂組成物に特有に原子組成(PPSに由来するSが多い)へと、変化していく相溶層が形成されていることがわかる。
3.複合体の製造方法
本発明の別の実施形態に関する複合体の製造方法は、上述した複合体の製造方法であり、1)塗装金属素形材を準備する第1工程と、2)塗装金属素形材を射出成形金型に挿入する第2工程と、3)塗装金属素形材の表面に熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する第3工程と、を有する。
以下、本実施形態の各工程について説明する。
(1)第1工程
前述の手順により、塗装金属素形材を準備する。
(2)第2工程
第2工程では、第1工程で準備した塗装金属素形材を射出成形金型の内部に挿入する。塗装金属素形材は、プレス加工などにより所望の形状に加工されていてもよい。
(3)第3工程
第3工程では、第2工程で塗装金属素形材を挿入した射出成形金型の内部に、高温の熱可塑性樹脂組成物を高圧で射出する。このとき、射出成形金型にガス抜きを設けて、熱可塑性樹脂組成物が円滑に流れるようにすることが好ましい。高温の熱可塑性樹脂組成物は、塗装金属素形材の表面に形成された有機樹脂層に接触し、有機樹脂層に含まれるポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂などの有機樹脂と熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂とが相溶する。その後、冷却により熱可塑性樹脂組成物が射出成形金型の形状に成形されて、塗装金属素形材の表面に接合された前記熱可塑性樹脂組成物の成形体が成形される。射出成形金型の温度は、熱可塑性樹脂組成物の融点近傍であることが好ましい。
射出終了後、金型を開き離型して複合体を得る。射出成形により得られた複合体は、成形後にアニール処理をして、成形収縮による内部歪みを解消してもよい。
以上の手順により、本発明の複合体を製造することができる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.塗装金属板の作製
(1)金属板
塗装金属素形材の塗装基材として、片面あたりのめっき付着量が45g/mの溶融Zn-6質量%Al-3質量%Mg合金めっき鋼板を準備した。基材鋼板は板厚が0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を使用した。
(2)有機樹脂塗料の調製
ガス導入菅、冷却菅、温度計および攪拌装置を備えたフラスコに、ソフトセグメント成分としてポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社、DKポリオール3776)を加え、90℃で10分間加熱した後に75℃の温度で保持した。次に、有機ポリイソシアネート(三井化学株式会社、コスモネートPH(「コスモネート」は同社の登録商標))と触媒をフラスコに加え、90℃で3時間反応させた後に50℃まで冷却することでウレタンプレポリマーを製造した。
得られたウレタンプレポリマーにアセトンを滴下することで希釈し、60℃でさらに1時間反応させた後に、トリエチルアミンを添加してウレタンプレポリマーのカルボキシル基の中和反応を30分間行った。
中和されたウレタンプレポリマー溶液に水を滴下して乳化させた。この乳化したウレタンプレポリマー溶液に鎖延長剤を滴下し、鎖延長反応を行った。反応後、ロータリーエバポレーターによる減圧蒸留にてアセトンおよび水を除去した。固形分調整のため適量の水を添加し、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂(ポリウレタンエマルション)を得た。核磁気共鳴分光法(NMR分析)により求められた、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂中のポリエーテルユニットの質量の割合は、85質量%だった。
樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合が表1に示す所定の割合となるように、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂、ポリエーテルユニット非含有ポリウレタン樹脂(三洋化成工業株式会社、ユーコートUWS-145)および各種添加剤を水に添加して、不揮発成分が20%の塗料を調製した(表1参照)。また、塗料には、エッチング剤としてフッ化アンモニウム(森田化学株式会社)を0.5質量%、無機系化合物としてコロダイルシリカ(日産化学株式会社)を2質量%およびリン酸(キシダ化学株式会社)を0.5質量%それぞれ配合した。両者を混合して、樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合を調整した。
(3)有機樹脂層の形成
塗装原板を液温60℃のアルカリ脱脂水溶液(pH:12)に1分間浸漬して、表面を脱脂した。次いで、脱脂した塗装基材の表面に、塗料をロールコータ-で塗布し、到達板温が150℃となるように、熱風乾燥機で乾燥させて、表1に示す膜厚の有機樹脂層を有する塗装金属素形材1~塗装金属素形材8を形成した。
Figure 0007035699000002
2.複合体の作製
(1)塗装金属素形材
実施例1の塗装金属素形材No.1~8を作製した。
(2)熱可塑性樹脂組成物
表2に示される熱可塑性樹脂組成物を準備した。表2に示される各熱可塑性樹脂組成物について、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂組成物は、テクノポリマー株式会社製、エクセロイCK10G20(明確な融点は認められず)を使用した。ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂組成物は、樹脂メーカー試供品(融点230℃)を使用した。ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂組成物は、三菱エンジニアプラスチックス株式会社製、ノバデュラン5710F40(融点230℃)を使用した。ポリカーボネート(PC)系樹脂組成物は、三菱エンジニアプラスチックス株式会社製、ユーロピンGS-2030MR2(融点250℃)を使用した。ポリアミド(PA)系樹脂組成物は、東レ株式会社製、アミランCM3511G50(融点216℃)を使用した。ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂組成物は、ポリプラスチックス株式会社製、1130MF1(融点280℃)を使用した。各熱可塑性樹脂組成物は、表2に示す各種フィラー(括弧内の数値は、フィラーの配合量を示す。)を含有している。なお、成型収縮率は、流動方向で測定した値を示す。
Figure 0007035699000003
(3)熱可塑性樹脂組成物の成形体の接合
射出成形金型に塗装金属素形材を挿入し、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を射出成形金型内に射出した。射出成形金型内の熱可塑性樹脂組成物を流入させる部分の容積は、幅30mm×長さ100mm×厚さ4mmであり、幅30mm×長さ30mmの領域で塗膜と熱可塑性樹脂組成物とが接触している。熱可塑性樹脂組成物を射出成形金型内に射出した後、熱可塑性樹脂組成物を固化させて、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との複合体を得た。
塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物との組み合わせを変更して、表3に示す複合体1~21を作製した。
3.複合体の評価
(1)相溶層の厚み
相溶層厚みは、得られた複合体を電子マイクロアナライザ(EPMA)で元素分析して、相溶層の厚みを確認した。前処理として、Arミリングにて複合体の断面加工を行い、ついで収束イオンビーム(FIB)加工にて厚さ500nm程度の薄片を作製し、得られた断面をオウミウム蒸着した。EPMA分析は、島津製作所製、EPMA-8050Gを使用し、加速電圧15kV、照射電流100nAにて行った。ラインプロファイルにて原子組成を確認し、有機樹脂層に特有の原子組成から熱可塑性樹脂組成物に特有の原子組成へと変化していく部分を相溶層であるとして、その厚みを算出した。
(2)耐熱衝撃性
耐熱衝撃性の評価は、冷熱衝撃試験にて行った。冷熱衝撃試験は、環境を低温状態と高温状態とに交互に繰り返すことで複合体に温度変化を与え、当該温度変化にともなう膨張と収縮により、異種材料の接合部の膨張率の違いから生じる応力にて剥離などを評価する方法である。ここでは、120℃×1時間、-40℃×1時間を1サイクルとし、500サイクルの冷熱衝撃試験前後で90°ピール試験(剥離試験)を行い、以下のように複合体の耐熱衝撃性を評価した。
◎:冷熱衝撃試験後のピール強度が、試験前の80%以上であった
○:冷熱衝撃試験後のピール強度が、試験前の50%以上80%未満であった
×:冷熱衝撃試験後のピール強度が、試験前の50%未満であった
複合体1~21の作製に用いた塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物との組み合わせ、ならびに、測定された相溶層の厚みおよび耐熱衝撃性の結果を、表3に示す。
Figure 0007035699000004
表3に示すように、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含み、樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合が5質量%以上85質量%以下であり、膜厚が0.5μm以上である有機樹脂層を有する塗装金属素形材と、熱可塑性樹脂組成物と、を接合させて複合体を作製したところ、厚みが25nm以上500nm以下である相溶層が形成され、耐熱衝撃性も高まっていた。
本発明の複合体は、塗装金属素形材と被接合体との密着性および耐熱衝撃性に優れているため、例えば各種電子機器、家庭用電化製品、医療機器、自動車車体、車両搭載用品、建築資材などに好適に用いられる。特に、本発明の複合体は、耐熱衝撃性に優れているため、外部環境の影響や電子機器本体から発生する熱による温度変動に耐えることが重要である電子機器などに好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 金属素形材と、
    前記金属素形材の表面に形成された有機樹脂層と、を有し、
    前記有機樹脂層は、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含み、
    前記有機樹脂層中の樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、5質量%以上85質量%以下であり、
    前記有機樹脂層の膜厚は、0.5μm以上である、
    射出成型接着用の塗装金属素形材。
  2. 前記ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂は、ポリエステルユニットまたはポリカーボネートユニットをさらに含む、請求項1に記載の射出成型接着用の塗装金属素形材。
  3. 前記有機樹脂層は、Ti、Zr、V、MoおよびWからなる群から選択される金属の酸化物、水酸化物もしくはフッ化物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の射出成型接着用の塗装金属素形材。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成型接着用の塗装金属素形材と、
    前記射出成型接着用の塗装金属素形材の前記有機樹脂層が形成された表面に射出成型により接合された、熱可塑性樹脂組成物の成形体と、
    を有する、複合体。
  5. 前記有機樹脂層と前記成形体との界面に、前記ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶してなる相溶層を有し、
    前記成形体は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の成形体であり、
    前記相溶層の厚みは、25nm以上500nm以下である、
    請求項4に記載の複合体。
  6. 射出成型接着用の塗装金属素形材と、熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体の製造方法であって、
    射出成型接着用の塗装金属素形材を準備する工程と、
    前記塗装金属素形材を射出成形金型に挿入する工程と、
    前記射出成形金型に溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を射出して、前記射出成型接着用の塗装金属素形材の表面に接合された前記熱可塑性樹脂組成物の成形体を成形する工程と、を有し、
    前記射出成型接着用の塗装金属素形材は、金属素形材と、前記金属素形材の表面に形成された有機樹脂層とを有し、
    前記有機樹脂層は、ポリエーテルユニット含有ポリウレタン樹脂を含み、
    前記有機樹脂層中の樹脂合計質量に対するポリエーテルユニットの質量の割合は、5質量%以上85質量%以下であり、
    前記有機樹脂層の膜厚は、0.5μm以上である、
    複合体の製造方法。
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