以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、本発明に係る駐車制御装置を、駐車制御システムに適用した場合を例にして説明する。駐車制御装置は、車載装置と情報の授受が可能な可搬の操作端末(スマートフォン、PDA:Personal Digital Assistantなどの機器)に適用してもよい。また、本発明に係る駐車制御方法は後述する駐車制御装置において使用できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る駐車制御装置100を有する駐車制御システム1000のブロック図である。本実施形態の駐車制御システム1000は、カメラ1a~1dと、測距装置2と、情報サーバ3と、操作端末5と、駐車制御装置100と、車両コントローラ70と、駆動システム40と、操舵角センサ50aと、車速センサ60とを備える。本実施形態の駐車制御装置100は、操作端末5から入力された操作指令に基づいて、駐車スペースに制御対象である車両Vを移動させる(駐車させる)動作を制御する。
操作端末5は、車両Vの外部に持ち出し可能な携帯型の入力機能及び通信機能を備えるコンピュータである。操作端末5は、駐車対象である車両Vの運転(動作)を制御するための操作者Mの操作指令の入力を受け付ける。運転には駐車(入庫及び出庫)の操作を含む。操作者Mは、操作端末5を介して駐車を実行させるための操作指令を含む命令を入力する。操作指令は、駐車制御の実行・停止、目標駐車スペースの選択・変更、駐車経路の選択・変更その他の駐車に必要な情報を含む。なお、操作者Mは、操作端末5を用いることなく、操作者Mのジェスチャなどにより操作指令を含む命令を、駐車制御装置100に認識させる(入力する)こともできる。
操作端末5は通信機を備え、駐車制御装置100、情報サーバ3と情報の授受が可能である。操作端末5は、通信ネットワークを介して、車外で入力された操作指令を駐車制御装置100へ送信し、操作指令を駐車制御装置100に入力させる。操作端末5は、固有の識別記号を含めた信号を用いて、駐車制御装置100と交信する。
操作端末5は、ディスプレイ53を備える。ディスプレイ53は、入力インターフェイス、各種情報を提示する。ディスプレイ53がタッチパネル型のディスプレイである場合には、操作指令を受け付ける機能を有する。
操作端末5は、本実施形態の駐車制御方法に用いられる操作指令の入力を受け付けるとともに、駐車制御装置100へ向けて操作指令を送出するアプリケーションがインストールされたスマートフォン、PDA:Personal Digital Assistantなどの携帯型の機器であってもよい。
情報サーバ3は、通信可能なネットワーク上に設けられた情報提供装置である。情報サーバは、通信装置31と、記憶装置32を備える。記憶装置32には、読み取り可能な地図情報33と、駐車場情報34と、障害物情報35とを備える。駐車制御装置100、操作端末5は、情報サーバ3の記憶装置32にアクセスして各情報を取得できる。
本実施形態の駐車制御装置100は、制御装置10と、入力装置20と、出力装置30とを備える。駐車制御装置100の各構成は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続される。入力装置20は、通信装置21を備える。通信装置21は、外部の操作端末5から送信された操作指令を受信し、入力装置20に入力する。外部の操作端末5に操作指令を入力する主体は人間(ユーザ、乗員、ドライバ、駐車施設の作業員)であってもよい。入力装置20は、受け付けた操作指令を制御装置10に送信する。出力装置30は、ディスプレイ31を含む。出力装置30は、駐車制御情報をドライバに伝える。本実施形態のディスプレイ31は、入力機能及び出力機能を備えるタッチパネル式のディスプレイである。ディスプレイ31が入力機能を備える場合には、ディスプレイ31が入力装置20として機能する。操作端末5から入力された操作指令に基づいて車両Vが制御されている場合であっても、乗員が入力装置20を介して緊急停止などの操作指令を入力できる。
本実施形態の駐車制御装置100の制御装置10は、駐車制御プログラムが格納されたROM12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、本実施形態の駐車制御装置100として機能する動作回路としてのCPU11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM13とを備える、駐車制御用のコンピュータである。
本実施形態の駐車制御プログラムは、車両Vが停止している第1状態から移動を開始した第2状態に移行する際に、車両Vを操舵させる操舵命令を含む制御命令に従って車両Vの駐車制御を実行させるプログラムを含む。駐車制御プログラムは本実施形態の駐車制御装置100の制御装置10により実行される。
本実施形態の駐車制御装置100は、外部から操作指令を送り、車両Vの動きを制御して、車両Vを所定の駐車スペースに駐車させるリモートコントロールタイプのものである。乗員は車室外にいてもよいし、車室内にいてもよい。
本実施形態の駐車制御装置100は、操舵操作、アクセル・ブレーキ操作が自動的に行われる自動制御タイプであってもよい。駐車制御装置100は、操舵操作を自動で行い、アクセル・ブレーキ操作をドライバが行う半自動タイプであってもよい。
本実施形態の駐車制御プログラムでは、ユーザが目標駐車スペースを任意に選択してもよいし、駐車制御装置100又は駐車設備側が目標駐車スペースを自動的に設定してもよい。
本実施形態に係る駐車制御装置100の制御装置10は、駐車経路の算出処理、制御命令の算出処理、及び駐車制御処理を実行させる機能を備える。制御装置10は、さらに障害物検出処理を実行させ、障害物の位置を考慮して駐車経路を算出させる機能を備える。各処理を実現するためのソフトウェアと上述したハードウェアの協働により、上記各処理を実行する。
制御装置10は、駐車経路RTと、駐車経路RTに従って車両Vを移動させる制御命令を算出する。制御命令には、駐車経路RTを移動する際の速度、加減速度、加減速制御の実行位置(タイミング)、切り返し地点、操舵量などを含む。
以下、図2に示すフローチャートに基づいて駐車制御の制御手順を説明する。
図2は、本実施形態に係る駐車制御システム1000が実行する駐車制御処理の制御手順を示すフローチャートである。駐車制御処理の開始のトリガは、特に限定されず、駐車制御装置100の起動スイッチが操作されたことをトリガとしてもよい。
本実施形態の駐車制御装置100は、車外から取得した操作指令に基づいて、車両Vを自動的に駐車スペースへ移動させる機能を備える。
ステップ101において、本実施形態に係る駐車制御装置100の制御装置10は、車両Vの複数個所に取り付けられた測距装置2によって測距信号をそれぞれ取得する。制御装置10は、車両Vの複数個所に取り付けられたカメラ1a~1dによって撮像された撮像画像をそれぞれ取得する。特に限定されないが、車両Vのフロントグリル部にカメラ1aを配置し、リアバンパ近傍にカメラ1dを配置し、左右のドアミラーの下部にカメラ1b、1cを配置する。カメラ1a~1dとして、視野角の大きい広角レンズを備えたカメラを使用できる。カメラ1a~1dは、車両Vの周囲の駐車スペースの境界線及び駐車スペースの周囲に存在する物体を撮像する。カメラ1a~1dは、CCDカメラ、赤外線カメラ、その他の撮像装置である。
ステップ102において、制御装置10は、駐車可能な駐車スペースを検出する。制御装置10は、カメラ1a~1dの撮像画像に基づいて、駐車スペースの枠(領域)を検出する。制御装置10は、測距装置2の検出データ、撮像画像から抽出された検出データを用いて、空いている駐車スペースを検出する。制御装置10は、駐車スペースのうち、空車(他車両が駐車していない)であり、駐車を完了させるための経路が算出可能である駐車スペースを、駐車可能スペースとして検出する。
本実施形態において駐車経路が算出可能であるとは、障害物(駐車車両を含む)と干渉することなく、現在位置から目標駐車スペースに至る経路の軌跡を路面座標に描けることである。
ステップ103において、制御装置10は、駐車可能スペースを、操作端末5に送信し、そのディスプレイ53に表示し、車両Vを駐車させる目標駐車スペースの選択情報の入力を操作者Mに要求する。目標駐車スペースは、制御装置10、駐車施設側が自動的に選択してもよい。一の駐車スペースを特定する操作指令が操作端末5に入力された場合には、その駐車スペースを目標駐車スペースとして設定する。
本実施形態では、ステップ104において、乗員を降車させる。この後は、リモート操作により目標駐車スペースに車両Vを移動させる。目標駐車スペースは、乗員が降車後に選択してもよい。
ステップ105において、制御装置10は、障害物の存在及び障害物の位置を検出する。障害物は、駐車場の壁、柱などの構造物、車両周囲の設置物、歩行者、他車両、駐車車両等を含む。制御装置10は、車両Vに設けられた複数の測距装置2の検出結果、カメラ1の撮像画像に基づいて障害物を検出する。測距装置2は、レーダー装置の受信信号に基づいて物体の存否、物体の位置、物体の大きさ、物体までの距離を検出する。各カメラ1a~1dの撮像画像に基づいて物体の存否、物体の位置、物体の大きさ、物体までの距離を検出する。なお、障害物の検出は、カメラ1a~1dによるモーションステレオの技術を用いて行ってもよい。この検出結果は、駐車スペースが空いているか否か(駐車中か否か)の判断に用いられる。また、制御装置10は、情報サーバ3の記憶装置32から取得した駐車場情報34に基づいて、駐車場の壁、柱などの構造物を含む障害物を検出できる。駐車場情報は、各駐車場(パーキングロット)の配置、識別番号、駐車施設における通路、柱、壁、収納スペースなどの位置情報を含む。情報サーバ3は駐車場が管理するものであってもよい。
ステップ106において、制御装置10は、車両Vの停止位置から目標駐車スペースに至る駐車経路を算出する。駐車経路は、駐車スペースに移動するために必要な切り返し地点を含む。このとき、駐車経路は線として定義されるとともに、車幅に応じた車両Vの占有領域に応じた帯状の領域として定義される。車両Vの占有領域は、車幅と移動のために確保される余裕幅とを考慮して定義される。
ステップ107において、制御装置10は、操作者から取得した操作指令に基づき、車両V1を目標駐車スペースへ移動させる制御命令を算出する。本実施形態の制御命令は、少なくとも、ステップ106において算出された目標駐車スペースへ至る駐車経路に沿って車両Vを移動させる第1行動を車両V実行させる第1制御命令を含む。第1制御命令は、車両Vの操舵量、操舵速度、操舵加速度、シフトポジション、速度、加速度、及び減速度のうちの何れか一つ以上についての動作命令を含む。また、制御命令は、上記車両Vの動作命令の実行タイミング又は実行位置を含む。
図3は、ステップ107のサブルーチンである。
図3のステップ121において、制御装置10は、目標駐車スペースへ至る駐車経路を算出するとともに、その駐車経路に沿って移動させるという第1行動のための第1制御命令を算出する。制御命令の算出に必要な車両Vの諸元情報は、予め制御装置10が記憶する。制御命令は、車両Vが駐車経路を走行する際における、タイミング又は位置に対応づけられた車両Vの操舵量、操舵速度、操舵加速度、シフトポジション、速度(ゼロを含む)、加速度、減速度その他の動作命令を含む。この駐車経路及び駐車経路に対応づけられた動作命令が車両Vによって実行されることにより、目標駐車スペースに車両Vを移動させる(駐車させる)ことができる。
続くステップ122において、制御装置10は、第2制御命令を算出する。本実施形態の制御命令は、第1行動の実行開始の際に、加減速を含む第2行動を車両Vに実行させる第2制御命令を含む。制御装置10は、第1制御命令と第2制御命令とを含む制御命令を算出し、これを車両Vに実行させる。
ここで第2行動について説明する。停止乃至低速走行中の車両Vに所定値以上の加減速をさせると車両Vにピッチングが起きる。ピッチングとは、図4(a)に示すように、車両Vの左右方向を軸として上下方向に回転する運動である。なお、車両Vの操舵角/タイヤ角が切られている場合には、加減速を含む第2行動を車両Vに実行させると、車両Vにヨーイングやローリングが起きることがある。ヨーイングは、走行面に対して垂直方向を軸として回転する運動である。ローリングは、車両の前後方向を軸として回転する運動である。第2制御命令は、第1行動の実行開始の際に、加減速を含む第2行動を車両Vに実行させる。
第1制御命令に加えて、目標駐車スペースに車両Vを移動させる第1行動の実行開始の際に、加減速を含む第2行動を車両Vに実行させる第2制御命令を実行させることにより、車両Vが駐車経路を目標駐車スペースに向かって動き出す(移動し始める)場面で、第2行動によるピッチングなどの動きの変化を車両Vにさせることができる。
車両Vの動きの変化は、車両外部に所在する者により視認できる。しかも、停止乃至低速移動している車両Vが、図4(a)に示すように上下方向にピッチングするなどの第2行動をすると、周囲の者はその車両Vの動きの変化によって、車両Vに注目することができる。このような車両Vの動きの変化は、目立つので、車両Vが視界に入っている車両外部の者は、車両Vの動きの変化(第2行動)を見て、車両Vの動きに変化があることを予測できる。駐車処理のための移動である第1行動が開始されることを、事前に外部に知らせることができる。通常、車両Vが目標駐車スペースへ向けて移動を開始するときには、ピッチング/ヨーイング/ローリングなどの動きの変化はない。一般的な駐車制御において行われることのない特徴的な動作を車両Vが行うことにより、車両Vの挙動の変化(移動を開始すること)を周囲に報知できる。
本実施形態の制御装置10は、第2行動における車両Vの加速度を、第1行動における車両Vの加速度よりも大きい値となるように、第2制御命令を算出する。第2行動における加速度を、駐車経路を移動するための第1行動の加速度よりも大きく設定することにより、第2行動は、移動による第1行動とは異なる挙動となるようにすることができる。車両外部の者は、車両Vの動きの変化(第2行動)を見て、車両Vの動きの変化が特別なものであることを認識し、車両Vに変化があることを予測する。一般的な駐車制御における移動のための第1行動とは識別可能な第2行動を車両Vに実行させることにより、車両Vが移動を開始することを周囲に報知できる。第2行動が行われる時間は、第2行動が周囲に認識されるようにするために、1秒間~3秒間、好ましくは2秒間程度とすることができる。第2行動の実行時間は、距離によっても定義できる。第2行動は、車両Vの移動が30cm~80cm以内、好ましくは50cm以下とすることができる。
本実施形態の制御装置10は、第2行動の実行を開始させる第2タイミングが、第1行動の実行を開始させる第1タイミングの前の第1所定時間以内又は第1タイミングの後の第1所定時間以内となるように、第1制御命令と第2制御命令を組み合わせる。第1行動の実行を開始させる、つまり車両Vの移動を開始させる前に第2行動(ピッチング等)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出す前に、車両Vが動き出すことを周囲に知らせることができる。第1行動の実行の開始後、つまり車両Vの移動が開始された後に第2行動(ピッチング等)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出したことを、周囲に知らせることができる。駐車支援において目標駐車スペースに移動し始めたときの車速は低い。低い車速であれば移動量も小さく、周囲に与える影響も小さい。第2行動の実行のタイミングは、第1行動の前に限定されるべきものではなく、第1行動の後のタイミングであってもよい。ただし、第1行動の開始を知らせるために第1行動を実行するという観点から、第1行動と第2行動とは関連付けられた方が好ましい。このため、第1行動と第2行動の時間の間隔は限定された第1所定時間であることが好ましい。第1所定時間は3秒以内程度、好ましくは1秒程度とすることができる。第1行動の実行開始後、所定時間以内に第2行動を実行する場合も、第1行動の実行開始前、所定時間以内に第2行動を実行する場合と同様の作用効果を得ることができる。
第2行動の実行を開始させる第2タイミングが、第1タイミングの後の第1所定時間以内とする場合には、車両の発進後に第2行動が実行されることになる。このように、第1制御命令の後に第2制御命令を実行させる制御命令は、路面状態が滑りやすいときに好ましい。降雨、降雪、路面凍結の場合には、路面に対するタイヤの摩擦力が低く、このような場合に、第2行動(加減速)を実行させると、タイヤが空転してしまう可能性がある。先に第1制御命令の実行を開始しておき、その後に第2制御命令を実行することにより、加減速の変化率を低減させ、タイヤの空転を防止することができる。
制御装置10は、路面状態の情報を取得し、路面状態が滑りやすい状態であると判断した場合には、第1行動の実行開始後に、加減速を含む第2行動を車両Vに実行させる第2制御命令を算出する。制御装置10は、図示はしないが、車両Vに搭載されたABS(Antilock Brake System)、電子制御ブレーキシステム、TRC(Traction Control)、TCL(Traction Control)、VDC(Vehicle Dynamics Control)などの走行制御装置が検出した路面状態情報を、車両コントローラ70を介して取得する。制御装置10は、車両Vのワイパーの稼働状態の情報を、車両コントローラ70を介して取得し、ワイパーの稼働状態に基づいて降雨、降雪、路面の濡れを判断することができる。制御装置10は、車載のGPS受信機を含む現在位置検出装置から現在位置を取得し、現在位置の天候を外部の情報提供サーバから通信装置21を介して取得し、車両Vの現在位置(駐車場)の降雨、降雪、路面の濡れを判断することができる。
本実施形態の制御装置10は、第2制御命令が実行された後の所定時間経過後、第1制御命令を実行させるようにしてもよい。車両Vが第2制御命令に従い第2行動を実行した後に、第1制御命令に従い第2行動を開始して、目標駐車スペースへ移動を開始してもよい。第2行動の後に第1行動を開始すれば、車両外部の者は、車両Vの特別な動き(第2行動)を見て、その車両Vに変化があることを予測することができる。先に第2行動を車両Vに実行させることにより、車両Vが移動を開始することを周囲に報知できる。
続くステップ123において、制御装置10は、第3制御命令を算出する。本実施形態の制御命令には、第1制御命令と第3制御命令を含ませることができる。本実施形態の制御命令には、第1、第2及び第3制御命令を含ませることもできる。
制御装置10は、第1行動の実行開始の際に、車両Vを操舵させる第3行動を車両に実行させる第3制御命令を算出し、第1制御命令と第3制御命令を含む制御命令を算出して、制御命令を車両に実行させる。本実施形態の制御命令には、先述した第2制御命令を含めて、第1、第2及び第3制御命令を含ませることもできる。
ここで第3行動について説明する。第3行動は、車両が停止している状態において、車両Vを操舵させる行動である。車両Vが停止している状態から、第1行動である移動を開始する際に、操舵命令を車両Vの操舵装置50に実行させると、車両Vが動き出す前後にタイヤが転舵され、タイヤを動かすことができる。模式的な図ではあるが、図4(b)に示すように、操舵行動によりタイヤの向きを変化させることができる。タイヤは車両外部に所在する者により視認できる。車両Vが視界に入っている車両外部の者は、タイヤの動きを見て、車両Vの動きに変化があることを予測できる。駐車処理を実行する制御命令に、動き出すことを知らせるための操舵制御の命令を含ませることにより、車両Vが動き出すことを車両外部の者に報知することができる。タイヤの動きと合わせてステアリングホイールが回転するようにしてもよい。車両外部の者が車室内のステアリングホイールの動きも見ることができ、更に車両Vの動きに変化があることを予測しやすくなる。
本実施形態における第2制御命令において、操舵量はステアリング角として360度以上に相当する量であることが好ましい。ステアリングホイールを一回転(ステアリング角で360度)させると、タイヤの操舵量としては、タイヤ幅の約半分(50%)が車体から出る状態となり、車外の者がタイヤの移動(回転)を確認できる。操舵命令における操舵量がステアリング角として540度以上であることが好ましい。ステアリングホイールを1.5回転させると、タイヤの操舵量として、タイヤ幅の75%程度が車体から出る状態となり、車外の者がタイヤの移動(回転)を明確に確認できる。第2制御命令(操舵命令)における操舵量がステアリング角として720度以上であることが好ましい。ステアリングホイールを2回転させると、タイヤの操舵量としては、タイヤ幅の全部(一本分の幅)が車体から出る状態となり、車外の者がタイヤの移動(回転)をより明確に確認できる。車体からタイヤが出る量が多い方が車外の者からの確認は容易になるが、一般的な自動車の操舵機構のラック可動範囲から操舵命令における操舵量は、ステアリング角として900度(2.5回転)程度が最大となる。
図5(a)に示すように、一般的な駐車制御開始の車両Vが停車している状態VSにおけるタイヤSTFの向きは車長方向に沿う方向である。移動を開始して切り返し地点VTへ移動する際に車両Vは直進する。一般的な駐車経路RT1は、駐車制御開始地点VSから所定長の直進区間を含む。同様に、切り返し地点VTにおいて一時的に停止した状態におけるタイヤSTFの向きは車長方向に沿う方向である。切り返し地点VTで車両Vのシフトポジションはチェンジされ、車両Vは後退を開始するときもタイヤSTFの向きは車長方向であるので、移動を開始して目標駐車スペースVPに移動する際に車両Vは直進する。一般的な駐車経路RT2は、切り返し地点VPから所定長の直進区間を含む。一般的な駐車経路RT1、RT2は、直進区間に対応する直線部分と操舵区間に対応する円弧部分と、直線部分と円弧部分とをつなぐクレソイド曲線部分とを含む。
他方、図5(b)に示す例では、駐車制御開始の車両Vが停車している状態におけるタイヤSTFの向きは切り返し地点VTが存在する方向(同図では右折方向)に操舵されている。同様に、切り返し地点VTにおいて一時的に停止した状態におけるタイヤSTFの向きは後方の目標駐車スペースVPが存在する方向(同図では進行方向を基準として後方左側)に操舵されている。このように、第3行動における第3制御命令(操舵命令)による移動方向は駐車経路の方向に沿うことが好ましい。操舵命令における操舵方向は、駐車経路における切り返し地点又は目標駐車スペースに至る方向である。第3制御命令の実行後のタイヤの切れ角は、車両Vの移動方向と共通するので、車外の者はタイヤの切れ角を見て、その車両Vの進行方向を推測できる。操舵方向が共通するので、車両Vが動き出すことを車外の者に知らせるために操舵命令を実行しても、駐車経路に沿って移動する車両Vの動きを妨げることがない。加えて、図5(b)に示したように、操舵命令における操舵方向が、駐車経路RTの曲線の旋回方向に沿う場合には、操舵命令の実行により車両Vを旋回させることができるので、駐車経路RTの長さを短くできる。結果として駐車完了までの時間を短縮できる。
なお、図5(b)に示すように、第2行動(前後に加減速する行動)は、駐車制御開始の車両Vが停車している状態VSや、切り返し地点VTにおいて一時的に停止した状態において実行することができる。
制御装置10は、第3行動の実行を開始させる第3タイミングは、第1行動の実行を開始させる第1タイミングの前後の第2所定時間以内とする。第3行動の実行を開始させる第3タイミングが、第1行動の実行を開始させる第1タイミングの前の第2所定時間以内又は第1タイミングの後の第2所定時間以内となるように、第1制御命令と第3制御命令を組み合わせる。第2制御命令と第3制御命令の順番の前後は特に限定されない。第1行動の実行を開始させる、つまり車両Vの移動を開始させる前に第2行動(すえ切り等)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出す前に、車両Vが動き出すことを周囲に知らせることができる。第1行動の実行の開始後、つまり車両Vの移動が開始された後に第3行動(タイヤの回転)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出したことを、周囲に知らせることができる。駐車支援において目標駐車スペースに移動し始めたときの車速は低い。低い車速であれば移動量も小さく、周囲に与える影響も小さい。第3行動の実行は、第1行動の前に限定されるべきものではなく、第1行動の後であってもよい。ただし、第1行動の開始を知らせるために第3行動を実行するという観点から、第1行動と第3行動の時間の間隔は限定された第1所定時間であることが好ましい。第1所定時間は、車速が低い状態を考慮して1秒間~3秒間、好ましくは1秒間程度とすることができる。
本実施形態の制御装置10は第3制御命令を実行させた後の所定時間経過後、第1制御命令を実行させるようにしてもよい。車両Vが第2制御命令に従い第3行動を実行した後に、第1制御命令に従い第1行動を開始して、目標駐車スペースへ移動を開始してもよい。第3行動の後に第1行動を開始すれば、車両外部の者は、車両Vのタイヤの特別な動き(第3行動)を見て、その車両Vに変化があることを予測することができる。先に第3行動を車両Vに実行させることにより、車両Vが移動を開始することを周囲に報知できる。
続くステップ124において、制御装置10は、第4制御命令を算出する。本実施形態の制御命令には、少なくとも第1制御命令と第4制御命令を含ませることができる。本実施形態の制御命令には、第1制御命令と、第2、第3及び第4制御命令のうちの少なくとも1つ以上の制御命令を含ませることもできる。
ここで第4行動について説明する。第4行動は、第1行動の実行開始を予告する報知の行動である。報知とは、外部に対して情報を示すことであり、音、光、音声、テキストにより示すことができる。外部に対する報知とは、図4(c)に示すように、車外のライトなどを用いて情報を伝達することである。
具体的には、以下のような報知が可能である。車両Vが備える警報装置にクラクション等の音を出力させて第1行動の実行開始を報知する。車両Vが備えるスピーカーに音声出力させて第1行動の実行開始を報知する。車両Vが備える方向指示器を発光させて第1行動の実行開始を報知する。車両Vの外部で駆動可能なワイパーを稼働させて第1行動の実行開始を報知する。このように、車両がそもそも備える車載機器によって第1行動の実行開始を報知することが可能である。車両Vが外部に対する表示装置を備える場合には、その表示装置にテキストメッセージを表示させて第1行動の実行開始を報知する。第4行動を実行することにより、車外の歩行者等に、車両の車体の挙動に加えて、重畳的に情報を提示できるので、車両Vが第1行動を実行することを正確に伝達することができる。
図5(b)に示すように、第4行動は、駐車制御開始の車両Vが停車している状態VSや、切り返し地点VTにおいて一時的に停止した状態において実行することができる。
最後に、ステップ125において、制御装置10は、制御命令を算出する。この制御命令には、少なくとも第1制御命令が含まれる。本実施形態の制御命令は、第1及び第2制御命令を含む。加えて、制御命令には、第3制御命令及び/又は第4制御命令を制御命令に含ませることができる。
図6A及び図6Bに基づいて、本実施形態の制御命令を説明する。
図6Aは、駐車制御の開始から完了までのタイムチャートを示す。図6Aに示す制御命令は、第1制御命令、第2制御命令、及び第4制御命令を含む。つまり、本制御命令が実行されるとき、車両は第1行動、第2行動及び第4行動を実行する。駐車制御が開始された後、車両Vは移動開始を待機する停止状態から、発進の動作を経て移動を開始する。移動を開始した車両Vは駐車経路に沿って走行し、目標駐車スペースへ至る。
制御装置10は、車両Vに第4行動(報知行動)を実行させる。制御装置10は、車両コントローラ70を介して、車両Vにライトの点灯又は点滅(図4(c)を参照)を実行させる。この第4行動により、車両が第1行動(駐車のための移動)を実行することを車両外部の者に知らせることができる。
制御装置10は、第4制御命令の実行に相前後して、第2制御命令を実行する。第2制御命令の実行時間は3秒以内程度である。制御装置10は、第2制御命令により、車両Vに第2行動を実行させる。制御装置10は、車両コントローラ70を介して、車両Vに所定値域の加速と減速を実行させる。加速量、減速量は、車両の性能に応じて適宜に決定する。これにより、車両はピッチングの挙動(図4(a)を参照)を示す。この第2行動により、車両が第1行動(駐車のための移動)を実行することを車両外部の者に知らせることができる。
第2制御命令の実行が完了したら、休止をとって第1制御命令の実行を開始する。休止の時間は短くてよい。特に限定されないが、0.1秒間~1秒間程度とする。この一拍の休止により、第2行動を第1行動から明確に識別させることができる。また車外の者は、この休止により、車両Vの移動開始に対応した行動を検討することができる。第2行動の実行後、第1行動の実行を開始する。第1行動は、目標駐車スペースへ移動するための走行である。なお、本例では、第2行動を第1行動の前に組み込んだが、第1行動の開始直後であってもよい。駐車制御において移動開始時の速度は低く設定されることがあるため、第1行動の開始直後に第2行動を行うことで、第1行動への注意喚起をすることができる。
図6Bも、駐車制御の開始から完了までのタイムチャートを示す。図6Bに示す制御命令は、第1制御命令、第2制御命令、第3制御命令及び第4制御命令を含む。つまり、本制御命令が実行されるとき、車両は第1行動、第2行動、第3行動及び第4行動を実行する。
制御装置10は、車両Vに第4行動(報知行動)を第4制御命令により実行させる(図4(c)を参照)。制御装置10は、第4制御命令の実行に相前後して、第3制御命令を実行する。制御装置10は、車両Vに第3行動(操舵によるすえ切り行動)を実行させる(図4(b)を参照)。操舵量は540度とする。第3行動に相前後して、制御装置10は、第2制御命令により、車両Vに第2行動を実行させる。車両はピッチング挙動(図4(a)を参照)を示す。第2行動~第4行動により、車両が第1行動(駐車のための移動)を実行することを車両外部の者に知らせることができる。
第2制御命令の実行が完了したら、休止をとって第1制御命令の実行を開始する。この処理は図6Aにおけるものと同様である。なお、本例では、第2行動及び第3行動を第1行動の前に組み込んだが、第2行動及び/又は第3行動を第1行動の開始直後に実行させてもよい。駐車制御において移動開始時の速度は低く設定されることがあるため、第1行動の開始直後に第2行動及び/又は第3行動を行うことで、第1行動への注意喚起をすることができる。
車両Vが目標駐車スペースへ向かって移動を開始する際に第2行動(ピッチングなど)、第3行動(すえ切り)、及び第4行動(報知)の内の何れか一つ以上を実行することにより、車両Vが動き出すことを車両Vの外にいる者に報知できる。車両V自体が発進前に特徴的な動作を追加して行うため、車両周囲の歩行者や他車両の運転者は車両Vが動き出すことを認知することができる。一般的な駐車制御において、発進する前に、停止状態において操舵制御を実行することはない。このように特徴的な動作を車両Vが行うことにより、車両Vの挙動の変化を周囲に報知できる。
図7A~図7Cは、第1制御命令と第2制御命令を含む制御命令の一例を示すタイムチャート図である。
図7Aに示す制御命令は、車両Vの加速度を一時的に高めるタイプの制御を実行させる。同図に示すように、第1制御命令の実行前に第2制御命令が実行される。同図に示すように、制御命令の最初に第2制御命令に基づいて、第2行動としての車両に加減速を実行させる。この第2行動の実行時間は特に限定されないが、1秒間~3秒間程度、好ましくは2秒間である。移動距離に基づいて第2制御命令の実行時間を定義してもよい。その場合には30cm~60cm程度、好ましくは50cmである。第1制御命令における加速度、減速度は、車両Vの性能に応じて適宜に設定する。その後、第1制御命令に基づいて、第1行動としての目標駐車スペースへの移動を開始・実行させる。第1行動の前に予備的な加減速を行うことにより、移動を開始する前に車両Vにピッチング(上下の動き)をさせるので、移動開始のタイミングを車両の周囲の歩行者に知らせることができる。
図7Bに示す制御命令は、車両Vの速度を一時的に高めるタイプの制御を実行させる。車両制御のパラメータを、図7Bに示す加減速から速度としたものであるが、速度を上げるためには必ず加速がされるので、この制御命令は、先述した図7Aに示す制御命令の変形例である。図7Bに示すように、第1制御命令の実行前に第2制御命令が実行され、第2制御命令の後、休止をとって、第1制御命令が実行される。本例においても、制御命令の最初に第2制御命令に基づいて、第2行動としての車両に加減速が行われ車速を高めた後に、低くする。図7Aの例と同様に、第1行動の前に予備的な速度の上昇と下降を行うことにより、移動を開始する前に車両Vにピッチング(上下の動き)をさせるので、移動開始のタイミングを車両の周囲の歩行者に知らせることができる。
図7Cに示す制御命令は、車両Vの第1制御命令の実行開始の際であって、第1制御命令の開始後のタイミングで第2制御命令を実行する。同図に示すように、制御命令の最初に、第1制御命令に基づいて、第1行動としての目標駐車スペースへの移動が実行される。第1制御命令の開始直後に第2制御命令に基づいて、第2行動としての車両の加減速が行われる。第1制御命令の開始タイミングと第2制御命令の開始タイミングとの間隔は3秒以内程度で、好ましくは1秒程度である。この時間は、車両の性能、第1行動の初速、路面の滑りやすさによっても異なるので、車両ごと、初速ごと、路面状態ごとに適宜に設定できる。
駐車制御における初速は低いので、第1制御命令の開始後に車速が急上昇することはない。車速は低いので、移動距離も短く周囲に与える影響は少ない。第2制御命令の実行後も第1制御命令の実行を継続する。第1行動の開始の際、第1制御命令の実行開始直後(所定時間の経過後)に予備的な加減速を行うことにより、車両が移動しはじめたときに車両Vにピッチング(上下の動き)をさせるので、移動開始のタイミングを車両の周囲の歩行者に知らせることができる。
また、本例のような第1制御命令の後に第2制御命令を実行させる制御命令は、路面状態が滑りやすいときに適用できる。路面に対するタイヤの摩擦力が低い場合に、第2行動(加減速)を実行させると、タイヤが空転する可能性がある。このため、先に第1制御命令の実行を開始しておき、その後に第2制御命令を実行することにより、加減速の変化率を低減させ、タイヤの空転を防止することができる。
図8は、第1~第4制御命令を含む制御命令の例を示すタイムチャート図である。わかりやすくするために、第3制御命令と第4制御命令を別のチャートとして示す。本例の制御命令では、先に第2制御命令を実行し、その後、第1制御命令を実行する。先述した図7Aと同じパターンである。それに加えて、制御命令は、第3制御命令を含む。第3制御命令は、第2制御命令よりも先に実行される。第3制御命令は、車両を操舵させる制御であり、第3行動としてはすえ切りである。タイヤが動くので、車両の周囲の歩行者等は、車両が動きだすことを認識できる。本制御命令は第4制御命令を含む。第4制御命令は、第1行動の実行開始を報知する第4行動を実行させる命令である。第4行動は、ランプの点灯や警告音・音声の出力などである。制御命令は必ず第1制御命令を含むため、第1制御命令の実行開始のタイミングに応じて第4制御命令の実行タイミングが決定される。第1~第4制御命令を含む制御命令は、共通の時間軸において実行される。この制御命令が実行されると、まず、ウィンカランプが点灯する第4行動が実行され、第4行動と相前後してタイヤを切り込む(すえ切り)第3行動が実行される。そして、車両に加減速をさせる第2行動を実行させる第2制御命令が実行される。その後、車両を目標駐車スペースに移動させる第1行動が実行される。第1行動の実行開始タイミングは図7Bに示すように、第2行動の後に休止時間をおいてからでもよいし、図7Cに示すように、第1行動の開始後に第2行動を実行させてもよい。
図2に戻り、ステップ108以降の処理を説明する。本実施形態の駐車制御装置100は、車両Vに搭乗することなく、外部から車両Vに目標駐車スペースの設定指令、駐車制御処理の開始指令、駐車中断・中止指令などを送信して駐車を行うリモート操作による駐車制御処理を実行する。
ステップ108において、駐車経路が適当であると操作者に確認された場合には、車外の操作者Mの実行命令を受け付けて、ステップ109に進む。ステップ109において、制御装置10は制御命令を実行する。ステップ107において算出された制御命令には、第1制御命令と第2制御命令が含まれる。加えて、第3制御命令及び/又は第4制御命令を制御命令に含ませることができる。
本実施形態の駐車制御装置100は、車両Vが駐車経路に沿って移動するように、制御命令に従い、車両コントローラ70を介して駆動システム40の動作を制御する。駐車制御装置100は、計算された駐車経路に車両Vの走行軌跡が一致するように操舵装置50が備える操舵角センサ50aの出力値をフィードバックしながらEPSモータなどの車両Vの駆動システム40への指令を演算し、この指令の信号を駆動システム40又は駆動システム40を制御する車両コントローラ70へ送出する。
本実施形態の駐車制御装置100は、駐車制御コントロールユニットを備える。駐車制御コントロールユニットは、AT/CVTコントロールユニットからのシフトレンジ情報、ABSコントロールユニットからの車輪速情報、舵角コントロールユニットからの舵角情報、ECMからのエンジン回転数情報等を取得する。駐車制御コントロールユニットは、これらに基づいて、EPSコントロールユニットへの自動操舵に関する指示情報、メータコントロールユニットへの警告等の指示情報等を演算し、出力する。制御装置10は、車両Vの操舵装置50が備える操舵角センサ50a、車速センサ60その他の車両Vが備えるセンサが取得した各情報を、車両コントローラ70を介して取得する。
本実施形態の駆動システム40は、駐車制御装置100から取得した指令信号に基づく駆動により、車両Vを現在位置から目標駐車スペースに移動(走行)させる。本実施形態の操舵装置50は、車両Vの左右方向への移動を行う駆動機構である。駆動システム40に含まれるEPSモータは、駐車制御装置100から取得した制御指令信号に基づいて操舵装置50の操舵機構が備えるパワーステアリング機構を駆動してタイヤの操舵量を制御し、車両Vを目標駐車スペースへ移動する際の操作を制御する。なお、駐車をさせるための車両Vの制御内容及び動作手法は特に限定されず、出願時において知られた手法を適宜に適用できる。
本実施形態における駐車制御装置100は、車両Vの位置と目標駐車スペースの位置とに基づいて算出された経路に沿って、車両Vを目標駐車スペースへ移動させる際に、アクセル・ブレーキが指定された制御車速(設定車速)に基づいて自動的に制御されるとともに、操舵装置50の操作が車速に応じて自動で車両Vの動きを制御する。
駐車制御の開始後、ステップ110において、本実施形態の制御装置10は、障害物、目標駐車スペースなどの検出内容を検討し、駐車制御に影響を与える駐車環境要因の変化の有無を判断する。駐車環境要因の監視は継続的に行われる。
駐車環境要因に変化があった場合には、再度、駐車経路を算出し、制御命令を再計算する。駐車環境要因に変化がなければ、ステップ109において算出された制御命令の実行を継続する。
ステップ111において、制御装置10は、車両Vが切り返し地点に到達するまで、車両周囲の障害物を監視する。車両Vが切り返し地点に到達したら、ステップ112において、制御命令に含まれるシフトチェンジを実行する。その後、ステップ113において制御命令を継続的に実行し、ステップ114の駐車制御の完了に至る。
本発明の実施形態の駐車制御方法は、以上のように駐車制御装置において使用されるので、以下の効果を奏する。本実施形態の駐車制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、目標駐車スペースに車両Vを移動させる第1行動を実行させる第1制御命令に加えて、第1行動の実行開始の際に、加減速を含む第2行動を車両Vに実行させる第2制御命令を実行させることにより、車両Vが駐車経路を目標駐車スペースに向かって動き出す(移動し始める)場面で、第2行動により車両Vにピッチングなどの動きの変化をさせることができる。このような車両Vの動きの変化は、車両外部に所在する者により視認できる。車両Vが視界に入っている車両外部の者は、車両Vの動きの変化(第2行動)を見て、車両Vの動きに変化があることを予測できる。駐車処理のための移動である第1行動が開始されることを、事前に外部に知らせることができる。通常、車両Vが目標駐車スペースへ向けて移動を開始するときには、ピッチング/ヨーイング/ローリングなどの動きの変化はない。一般的な駐車制御において行われることのない特徴的な動作を車両Vが行うことにより、車両Vの挙動の変化(移動を開始すること)を周囲に報知できる。
[2]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、第2行動における車両Vの加速度を、第1行動における車両Vの加速度よりも大きい値となるように、第2制御命令を算出する。第2行動における加速度を、駐車経路を移動するための第1行動の加速度よりも大きく設定することにより、第2行動は、移動による第1行動とは異なる挙動となるようにすることができる。車両外部の者は、車両Vの動きの変化(第2行動)を見て、歩行者などは、車両Vの動きが特別なものであることを認識し、車両Vに変化があることを予測する。一般的な駐車制御における移動のための第1行動とは識別可能な第2行動を車両Vに実行させることにより、車両Vが移動を開始することを周囲に報知できる。
[3]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、第2行動の実行を開始させる第2タイミングが、第1行動の実行を開始させる第1タイミングの前の第1所定時間以内又は第1タイミングの後の第1所定時間以内となるように、第1制御命令と第2制御命令を組み合わせる。第1行動の実行を開始させる、つまり車両Vの移動を開始させる前に第2行動(ピッチング等)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出す前に、車両Vが動き出すことを周囲に知らせることができる。第1行動の実行の開始後、つまり車両Vの移動が開始された後に第2行動(ピッチング等)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出したことを、周囲に知らせることができる。駐車支援において目標駐車スペースに移動し始めたときの車速は低い。低い車速であれば移動量も小さく、周囲に与える影響も小さい。第2行動の実行は、第1行動の前に限定されるべきものではなく、第1行動の後であってもよい。
[4]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、第2制御命令が実行された後の所定時間経過後、第1制御命令を実行させるようにしてもよい。車両Vが第2制御命令に従い第2行動を実行した後に、第1制御命令に従い第2行動を開始して、目標駐車スペースへ移動を開始してもよい。第2行動の後に第1行動を開始すれば、車両外部の者は、車両Vの特別な動き(第2行動)を見て、その車両Vに変化があることを予測することができる。先に第2行動を車両Vに実行させることにより、車両Vが移動を開始することを周囲に報知できる。
[5]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、車両Vが停止している状態から、第1行動である移動を開始する際に、操舵命令を車両Vの操舵装置50に実行させると、車両Vが動き出す前後にタイヤが転舵され、タイヤを動かすことができる。タイヤは車両外部に所在する者により視認できる。車両Vが視界に入っている車両外部の者は、タイヤの動きを見て、車両Vの動きに変化があることを予測できる。駐車処理を実行する制御命令に、動き出すことを知らせるための操舵制御の命令を含ませることにより、車両Vが動き出すことを車両外部の者に報知することができる。タイヤの動きと合わせてステアリングホイールが回転するようにしてもよい。車両外部の者が車室内のステアリングホイールの動きも見ることができ、更に車両Vの動きに変化があることを予測しやすくなる。
[6]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、第3行動の実行を開始させる第3タイミングは、第1行動の実行を開始させる第1タイミングの前後の第2所定時間以内とする。第3行動の実行を開始させる第3タイミングが、第1行動の実行を開始させる第1タイミングの前の第2所定時間以内又は第1タイミングの後の第2所定時間以内となるように、第1制御命令と第3制御命令を組み合わせる。第2制御命令と第3制御命令の順番の前後は特に限定されない。第1行動の実行を開始させる、つまり車両Vの移動を開始させる前に第2行動(すえ切り等)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出す前に、車両Vが動き出すことを周囲に知らせることができる。第1行動の実行の開始後、つまり車両Vの移動が開始された後に第3行動(タイヤの回転)を車両Vに実行させることにより、車両Vが動き出したことを、周囲に知らせることができる。駐車支援において目標駐車スペースに移動し始めたときの車速は低い。低い車速であれば移動量も小さく、周囲に与える影響も小さい。第3行動の実行は、第1行動の前に限定されるべきものではなく、第1行動の後であってもよい。
[7]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、第3制御命令を実行させた後の所定時間経過後、第1制御命令を実行させるようにしてもよい。車両Vが第2制御命令に従い第3行動を実行した後に、第1制御命令に従い第1行動を開始して、目標駐車スペースへ移動を開始してもよい。第3行動の後に第1行動を開始すれば、車両外部の者は、車両Vのタイヤの特別な動き(第3行動)を見て、その車両Vに変化があることを予測することができる。先に第3行動を車両Vに実行させることにより、車両Vが移動を開始することを周囲に報知できる。
[8]本実施形態の駐車制御方法又は駐車制御装置によれば、第4行動を実行することにより、車外の歩行者等に、車両の車体の挙動に加えて、重畳的に情報を提示できるので、車両Vが第1行動を実行することを正確に伝達することができる。
[9]本実施形態の駐車制御方法が実行される駐車制御装置100においても、上記1から8に記載した作用及び効果を奏する。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。