JP7059702B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
しかし、シリカはゴム成分との親和性が低く、また、シリカ同士の凝集性が高いため、ゴム成分に単にシリカを配合してもシリカが分散せず、ウェットグリップ性能を向上させる効果が十分に得られないという問題があった。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、120質量部以上であり、
上記樹脂の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、10~60質量部であり、
上記有機ケイ素化合物の含有量が、上記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記樹脂が、α-メチルスチレンに由来する繰り返し単位を有する、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記シランカップリング剤が、後述する式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンであり、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、2~20質量%である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有される各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムを少なくとも含むジエン系ゴムとシリカと軟化点が80~160℃の樹脂とシランカップリング剤と後述する式(I)で表される有機ケイ素化合物とを含有する。
ここで、上記シリカの含有量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して120質量部以上であり、上記樹脂の含有量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して10~60質量部であり、上記有機ケイ素化合物の含有量は上記シリカの含有量に対して1~20質量%である。
一方、本発明の組成物は、特定の樹脂及び特定の構造を有する有機ケイ素化合物等を所定の割合で含有するため、上述した物性のバランスが達成され、結果として、優れたシート性を示すものと推測される。
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムを少なくとも含む。
上記ジエン系ゴム中の芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されず100質量%である。
また、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の共役ジエン中のビニル結合量は、本発明の効果がより優れる理由から、30~80%であることが好ましく、50~70%であることがより好ましい。ここで、ビニル結合量とは、共役ジエンの結合様式であるシス-1,4-結合、トランス-1,4-結合および1,2-ビニル結合のうち、1,2-ビニル結合の割合をいう。
また、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムを製造する際に使用される単量体としての、芳香族ビニル、共役ジエンは特に限定されない。
ここで、上記共役ジエン単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどが挙げられる。
一方、上記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
そのようなジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
また、本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は、50,000以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5,000,000以下であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。
なお、ジエン系ゴムに含まれる少なくとも1種のジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることが好ましく、ジエン系ゴムに含まれるすべてのジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることがより好ましい。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
本発明の組成物に含有されるシリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。上記シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
上述のとおり、本発明の組成物は、軟化点が80~160℃の樹脂(以下、「特定樹脂」とも言う)を含有する。特定樹脂の軟化点は、本発明の効果がより優れる理由から、100~150℃であることが好ましい。
なお、上記軟化点は、JIS K6220-1に準拠して測定したものとする。
本発明の組成物に含有されるシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
特定ポリシロキサンは下記式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンである。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
式(1)中のSiはポリシロキサンのSi原子を表す。また、式(1)中のOはポリシロキサンのO原子を表す。なお、O原子は2価の基であり、必ず2つのSi原子(ポリシロキサンのSi原子)に結合する。式(1)中の(4-2a-b-c-d-e)/2は、ポリシロキサンのSi原子にポリシロキサンのO原子が結合する平均の数を表す。
式(1)中のA、B、C、D及びR1はいずれもポリシロキサンのSi原子に結合する基を表す。なお、Aは2価の基であり、必ず2つのSi原子(ポリシロキサンのSi原子)に結合する。式(1)中のa、b、c、d及びeはそれぞれポリシロキサンのSi原子に結合するA、B、C、D及びR1の平均の数を表す。
ポリシロキサンのSi原子に直接結合する各基の合計(a×2+b+c+d+e+((4-2a-b-c-d-e)/2)×2)が4(Si原子の価数)になることから分かるように、ポリシロキサンのSi原子には、A、B、C、D、R1及びO以外の基は直接結合しない。なお、上記合計の計算において、a及び(4-2a-b-c-d-e)/2)を2倍にするのは、A及びOが2価の基であるからである。
*-(CH2)n-Sx-(CH2)n-* (2)
上記式(2)中、nは1~10の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2~4の整数であることが好ましい。
上記式(2)中、xは1~6の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましい。
上記式(2)中、*は、結合位置を示す。
上記式(2)で表される基の具体例としては、例えば、*-CH2-S2-CH2-*、*-C2H4-S2-C2H4-*、*-C3H6-S2-C3H6-*、*-C4H8-S2-C4H8-*、*-CH2-S4-CH2-*、*-C2H4-S4-C2H4-*、*-C3H6-S4-C3H6-*、*-C4H8-S4-C4H8-*などが挙げられる。
本発明の効果がより優れる理由から、Aに含有されるスルフィド基はテトラスルフィド基(-S4-)であることが好ましい。
*-OR2 (3)
上記式(3)中、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2~10のアルケニル基を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(3)中、*は、結合位置を示す。
*-(CH2)m-SH (4)
上記式(4)中、mは1~10の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1~5の整数であることが好ましい。
上記式(4)中、*は、結合位置を示す。
上記式(4)で表される基の具体例としては、*-CH2SH、*-C2H4SH、*-C3H6SH、*-C4H8SH、*-C5H10SH、*-C6H12SH、*-C7H14SH、*-C8H16SH、*-C9H18SH、*-C10H20SHが挙げられる。
上記式(1)中、cは、本発明の効果がより優れる理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(1)中、dは、本発明の効果がより優れる理由から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
上記特定ポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加-チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550~700g/molであるのが好ましく、600~650g/molであるのがより好ましい。
なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、上記第2の好適な態様であることが好ましい。
上記式(5)中、R52は炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表す。上記炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアリール基の具体例は上記R51と同じである。
上記式(5)中、nの定義および好適な態様は、上記nと同じである。
上記式(5)中、xの定義および好適な態様は、上記xと同じである。
上記式(5)中、yは1~3の整数を表す。
上記式(6)中、R62の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(6)中、zの定義は、上記yと同じである。
上記式(6)中、pは5~10の整数を表す。
上記式(7)中、R72の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(7)中、mの定義および好適な態様は、上記mと同じである。
上記式(7)中、wの定義は、上記yと同じである。
上記式(8)中、R82の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(8)中、vの定義は、上記yと同じである。
上記式(8)中、qは1~4の整数を表す。
上記触媒は、金属としてSn、TiまたはAlを含有する有機金属化合物でないことが好ましい。このような有機金属化合物を使用した場合、ポリシロキサン骨格に金属が導入されて、上記特定ポリシロキサン(骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない)が得られないことがある。
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、4~10質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、4~10質量部であることがさらに好ましい。
上述のとおり、本発明の組成物は、下記式(I)で表される有機ケイ素化合物(以下、「特定有機ケイ素化合物」とも言う)を含有する。
R1が複数存在する場合、複数存在するR1は同一であっても異なっていてもよい。R2が複数存在する場合、複数存在するR2は同一であっても異なっていてもよい。
上記炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等が挙げられる。
また、上述した芳香族ビニル-共役ジエン共重合体のビニル結合量(%)(以下、「ビニル結合量A」とも言う)に対する、上述した特定有機ケイ素化合物の「(f+g)/(e+f+g)」×100(%)(以下、「ビニル結合量B」とも言う)の割合(ビニル結合量B/ビニル結合量A)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~1.0であることが好ましく、0.2~0.8であることがより好ましく、0.4~0.6であることがさらに好ましい。なお、例えば、後述する実施例において、タフデンE680のビニル結合量Aは65%であり、特定有機ケイ素化合物のビニル結合量Bは29.7(=22/(52+0+22)×100)%であるため、ビニル結合量B/ビニル結合量Aは0.46である。
特定有機ケイ素化合物の製造方法は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、下記スキームに示されるように、式(II)で表されるブタジエン-スチレンコポリマーと式(III)で表される有機ケイ素化合物とを白金化合物含有触媒の存在下、好ましくは白金化合物含有触媒および助触媒の存在下でヒドロシリル化することで製造する方法が好ましい。
ヒドロシリル化の際の選択性の面から、0価の白金錯体が好ましく、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエンまたはキシレン溶液がより好ましい。
白金化合物含有触媒の使用量は特に限定されるものではないが、反応性や、生産性等の点から、式(3)で示される有機ケイ素化合物1molに対し、含有される白金原子が1×10-7~1×10-2molとなる量が好ましく、1×10-7~1×10-3molとなる量がより好ましい。
無機酸のアンモニウム塩の具体例としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸二水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジ亜リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウフッ化アンモニウム等が挙げられるが、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、pKaが2以上の無機酸のアンモニウム塩が好ましく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムがより好ましい。
使用可能な溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒などが挙げられ、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、このような観点から、反応温度は40~110℃がより好ましく、40~90℃がより一層好ましい。
また、反応時間も特に限定されるものではなく、通常、1~60時間程度であるが、本発明の効果がより優れる理由から、1~30時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
本発明の組成物において、特定有機ケイ素化合物の含有量は、上述したシリカの含有量に対して、1~20質量%である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2~10質量%であることがより好ましい。
本発明の組成物において、上述した特定樹脂の含有量に対する上述した特定有機ケイ素化合物の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましく、15~20質量%であることがさらに好ましい。
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、上述した特定樹脂以外の樹脂、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す空気入りタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコにビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業製 KBE-846)107.8g(0.2mol)、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE-803)190.8g(0.8mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE-3083)442.4g(1.6mol)、エタノール190.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸37.8g(2.1mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。その後、80℃にて2時間攪拌した。その後、濾過、5%KOH/EtOH溶液17.0gを滴下し80℃で2時間攪拌した。その後、減圧濃縮、濾過することで褐色透明液体のポリシロキサン480.1gを得た。GPCにより測定した結果、平均分子量は840であり、平均重合度は4.0(設定重合度4.0)であった。また、酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加-チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によりメルカプト当量を測定した結果、730g/molであり、設定通りのメルカプト基含有量であることが確認された。以上より、下記平均組成式で示される。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.071(-C8H17)0.571(-OC2H5)1.50(-C3H6SH)0.286SiO0.75
得られたポリシロキサンを特定ポリシロキサンとする。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、Ricon181(Cray Vally社製、数平均分子量:7,100、上述した式(II)で表されるブタジエン-スチレンコポリマー、式(II)中、e=52、(f+g)=22、h=29)100g、トルエン200g、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として3.1×10-3モル)、および酢酸0.2g(1.5×10-3モル)を納めた。この中に、トリエトキシシラン51g(0.31モル)を内温75~85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで分析したトリエトキシシランの反応率は98%であった。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度:8,000mPa・s、数平均分子量:10,500の褐色透明液体を得た。分子量および1H-NMRスペクトルから、得られた液体は、上述した特定有機ケイ素化合物(上述した式(I)中、R1=エチル基、e=52、f=0、g=22、h=29、m=3)であることが分かった。
下記表1に示される成分を、同表に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、150℃のバンバリーミキサーで2分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄及び加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
なお、表1中、SBRの質量部は油展オイルを除いたSBRの正味の質量部である。
得られたタイヤ用ゴム組成物について下記のとおり評価を行った。
2本のロールを用いて、得られたタイヤ用ゴム組成物をシート状にした。そして、下記の基準に基づきシート性を評価した。
結果を表1に示す。実用上、○であることが好ましい。
○:一方のロールにのみゴム組成物が貼り付き、切り返し等の作業をスムーズに行うことができた。
△:一方のロールだけでなく、他方のロールにもゴム組成物が多少貼り付いてしまい、切り返し等の作業がやや困難であった。
×:一方のロールだけでなく、他方のロールにもゴム組成物が大量に貼り付いてしまい、切り返し等の作業が極めて困難であった。
得られたタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。得られた加硫ゴムシートを厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出して試験片とした。
得られた試験片について、JIS K6251:2010に準じ、300%モジュラス(300%伸長時の応力)[MPa]を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さい方が作動性に優れる。実用上、100以下であることが好ましい。
上述のとおり加硫ゴムシートを作製した。
得られた加硫ゴムシートについて、JISK6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件でtanδ(0℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が大きい方がウェットグリップ性能に優れる。実用上、103以上であることが好ましい。
上述のとおり加硫ゴムシートを作製した。得られた加硫ゴムシートを厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出して試験片とした。
得られた試験片について、JIS K6251:2010に準じ、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で破断伸び(=破断時の伸び率)及び破断強度(=破断時の強度)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が大きい方が好ましく、実用上、105以上であることが好ましい。
なお、特定有機ケイ素化合物は、上述した式(I)で表される有機ケイ素化合物であるため、上述した特定有機ケイ素化合物に該当する。また、特定樹脂は、軟化点が80~160℃の樹脂であるため、上述した特定樹脂に該当する。また、SBRのMnは、50,000以上である。
・SBR:タフデンE680(スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(溶液重合スチレンブタジエンゴム)、芳香族ビニル含有量:36質量%、ビニル結合量:65%、Tg:-13℃、重量平均分子量:160万、油展品(SBR100質量部に対して油展オイル37.5質量部を含む。SBR中のSBRの正味は72.7質量%、旭化成ケミカルズ社製)
・シリカ:Zeosil 1165MP(CTAB=159m2/g、ローディア社製)
・カーボンブラック:シースト9(N2SA=142m2/g、東海カーボン社製)
・シランカップリング剤1:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグサ社製)
・シランカップリング剤2:上述のとおり製造した特定ポリシロキサン
・特定有機ケイ素化合物:上述のとおり製造した特定有機ケイ素化合物
・特定樹脂:FTR2140(α-メチルスチレン-スチレン共重合体、軟化点:140℃、三井化学社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日油社製)
・老化防止剤:Santoflex 6PPD(Solutia Europe社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤1:加硫促進剤DPG(ノクセラーD、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:加硫促進剤CBS(ノクセラーCZ-G、大内新興化学工業社製)
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
Claims (3)
- 芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムを少なくとも含むジエン系ゴムと、シリカと、軟化点が80~160℃の樹脂と、シランカップリング剤と、下記式(I)で表される有機ケイ素化合物とを含有し、
前記シランカップリング剤が、下記式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンであり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、120質量部以上であり、
前記樹脂の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、10~60質量部であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、2~20質量%であり、
前記有機ケイ素化合物の含有量が、前記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
(A) a (B) b (C) c (D) d (R 1 ) e SiO (4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基を表す。Cは加水分解性基を表す。Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。R 1 は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。a~eは、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。
- 前記樹脂が、α-メチルスチレンに由来する繰り返し単位を有する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
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