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JP6921882B2 - 透光性樹脂シート、投射型表示器および移動体 - Google Patents

透光性樹脂シート、投射型表示器および移動体 Download PDF

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JP6921882B2 JP2019044054A JP2019044054A JP6921882B2 JP 6921882 B2 JP6921882 B2 JP 6921882B2 JP 2019044054 A JP2019044054 A JP 2019044054A JP 2019044054 A JP2019044054 A JP 2019044054A JP 6921882 B2 JP6921882 B2 JP 6921882B2
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Description

本発明は、透光性樹脂シート、投射型表示器および移動体に関する。
近年、自動車のような移動体に搭載して用いられる投射型表示器としてヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置(表示部)に表示された表示画像をミラーで反射して、車両の、曲面形状を有するスクリーンとしてのフロントガラスに投影することで虚像を得る装置であり、表示部を収納するハウジングには、表示画像を出射する出射窓が設けられている。
そして、この出射窓に、主として樹脂材料で構成される樹脂層と、この樹脂層に積層されたハードコート層とを備える透光性カバー部材(透光性樹脂シート)を配置(装着)することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、かかる構成の透光性カバー部材は、中央部に凹部が形成されるように湾曲させた湾曲状態で、ハウジングが備える出射窓に対して装着されている。
したがって、表示部から出射される出射光は、表示画像として、この湾曲状態とされた透過性カバー部材を透過した後に、スクリーンに到達することで、画像を形成する。
しかしながら、ヘッドアップディスプレイ装置が備える表示部として、液晶ディスプレイを用いると、スクリーン(フロントガラス)に形成される投影像(虚像)が、透光性カバー部材を透過する際に、投影像の色調に意図しない位相差が与えられ、その結果、投影像が設計した色調とは異なるものとしてスクリーンに投影されてしまうと言う問題があった。
特開2015−49464号公報 特開2017−116882号公報
本発明の目的は、投射型表示器から出射される出射光を透過させる透過性カバー部材として湾曲状態で装着されたとしても、スクリーンに出射光を設計通りの色調で投影することができる透光性樹脂シート、かかる透光性樹脂シートを備える信頼性に優れた投射型表示器および移動体を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜()に記載の本発明により達成される。
(1) 曲率半径Rが100mm以上500mm以下の範囲内で湾曲させた湾曲状態で、投射型表示器から出射される出射光を透過させる透光性カバー部材に用いられる透光性樹脂シートであって、
樹脂材料としてポリカーボネート系樹脂を主材料として構成された樹脂層と、該樹脂層の少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有し、
前記ポリカーボネート系樹脂は、その粘度平均分子量が19000以上40000以下であり、
前記樹脂層は、その平均厚さが0.375mm以上0.495mm以下であり、
測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が78nm以上114nm以下であり、
かつ、測定波長440nmにおける位相差をRe440[nm]とし、測定波長660nmにおける位相差をRe660[nm]としたとき、前記Re440[nm]が80nm以上160nm以下であり、さらに下記関係式(1)を満足することを特徴とする透光性樹脂シート。
7nm≦Re440−Re660≦15nm ・・・ (1)
) 上記()に記載の透光性樹脂シートを、前記透光性カバー部材として備えることを特徴とする投射型表示器。
) 上記()に記載の投射型表示器を備えることを特徴とする移動体。
本発明の透光性樹脂シートによれば、投射型表示器から出射される出射光を透過させる透過性カバー部材として、かかる透光性樹脂シートが湾曲状態で装着されたとしても、スクリーンに出射光を設計通りの色調で投影することができる。
本発明の透光性樹脂シートを、透光性カバー部材として有する、自動車のヘッドアップディスプレイ装置の実施形態を示す側面図である。 図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]を拡大した拡大断面図である。 図2中の透光性カバー部材に適用された本発明の透光性樹脂シートの拡大断面図である。 図2中の透光性カバー部材を拡大した拡大断面図である。
以下、本発明の透光性樹脂シート、投射型表示器および移動体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の透光性樹脂シート、投射型表示器および移動体を説明するのに先立って、本発明の透光性樹脂シートを、透光性カバー部材として有する、自動車のヘッドアップディスプレイ装置(投射型表示器)について説明する。
<ヘッドアップディスプレイ装置>
図1は、本発明の透光性樹脂シートを、透光性カバー部材として有する、自動車のヘッドアップディスプレイ装置の実施形態を示す側面図である。図2は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]を拡大した拡大断面図である。図3は、図2中の透光性カバー部材に適用された本発明の透光性樹脂シートの拡大断面図である。図4は、図2中の透光性カバー部材を拡大した拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図4中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1、図2、図4中の左側を「前」または「前方」、右側を「後」または「後方」と言う。また、図3中では、理解を容易にするため、透光性カバー部材を平坦な状態で図示するとともに、厚さ方向を誇張して模式的に図示している。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置10(Head-Up Display)は、自動車100に搭載して用いられる。このヘッドアップディスプレイ装置10は、自動車100が有するダッシュボード101の上部に内蔵されている。
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置10は、表示部11と、反射部材12と、収納体13とを備えている。
表示部11は、本実施形態では、液晶ディスプレイで構成され、出射光として表示画像LSを出射するものであり、表示画像LSにおける各画素を構成する赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色の光が表示部11から出射されることでフルカラーの表示画像LSが形成されるように構成されている。
反射部材12は、例えば、ミラーで構成されており、表示部11からの表示画像LSを反射することができる。反射部材12で反射された表示画像LSは、フロントガラス102をスクリーンとして、当該フロントガラス102の裏面102a(内側の面)に投影される。そして、この投影光は、表示画像LSとして運転手Hに認識される(図1、図2参照)。
図2に示すように、収納体13(ハウジング)は、箱状をなし、その内側に、表示部11や反射部材12、その他、ヘッドアップディスプレイ装置10を構成する部品等が収納されている。また、収納体13は、フロントガラス102側に向かって開口した開口部で構成された窓部131を有している。この窓部131を介して、表示画像LSは、収納体13の外部、すなわち、フロントガラス102に向かって出射光として出射される。
また、収納体13の窓部131には、透光性を有する透光性カバー部材1が、中央部に凹部を形成して、収納体13側が凸、フロントガラス102側が凹となるように湾曲させた湾曲状態で、当該窓部131を覆うように、設置(装着)されている。これにより、表示画像LSのフロントガラス102に向けた出射が可能となるとともに、塵や埃等の異物が窓部131を介して収納体13内に侵入するのを防止することができる。したがって、表示部11の表示画像LSや反射部材12が当該異物によって曇ったり汚れたりするのを防止することができる。また、凹部が形成された湾曲状態とすることにより、透光性カバー部材1は、太陽光を反射し易いものとなり、太陽光の収納体13内への侵入を的確に抑制することができる。また、例えば透光性カバー部材1がダッシュボード101から突出するのを防止することができ、よって、透光性カバー部材1が運転手Hの視界を遮るのを防止することができる。
透光性カバー部材1は、光透過性を有する、本発明の透光性樹脂シートで構成され、測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が145nm以下であり、かつ、測定波長440nmにおける位相差をRe440[nm]とし、測定波長660nmにおける位相差をRe660[nm]としたとき、下記関係式(1)を満足するものとなっており、本実施形態では、図3に示すように、基材としての樹脂層3と、この樹脂層3の上面(一方の面)に積層されたハードコート層5とを備える積層板で構成されている。
Re440−Re660<40nm ・・・ (1)
このように、透光性カバー部材1を、光透過性を有する、本発明の透光性樹脂シートで構成することで、透光性カバー部材1が、図2に示すように、収納体13の窓部131に湾曲状態で装着されたとしても、スクリーンとしてのフロントガラス102の裏面102aに、表示部11から出射された表示画像LS(出射光)を設計通りの色調で投影することができる。
以下、この透光性カバー部材1、すなわち、本発明の透光性樹脂シートを構成する各層について説明する。
樹脂層3は、透光性カバー部材1の主たる層を構成する基材であり、樹脂材料を主材料として構成されるものである。そして、この樹脂層3が、リタデーション(位相差;複屈折率×厚さ)および厚み方向位相差(Rth)を有することで、透光性カバー部材1の測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が145nm以下であり、かつ、測定波長440nmにおける位相差Re440[nm]と、測定波長660nmにおける位相差Re660[nm]との関係が、前記関係式(1)を満足するものとなっている。
この樹脂層3は、例えば、樹脂材料を主材料とするシート材を、延伸状態とする延伸加工を施して形成されることで、リタデーション(位相差;複屈折率×厚さ)および厚み方向位相差(Rth)を有するものとなっている。具体的には、シート材として、樹脂層3の平均厚さtよりも厚く形成されたものを用意し、その後、軟化または溶融状態とされたシート材を平均厚さtとなるまで一方向に向かって延伸した延伸状態とすることで、樹脂層3の層中において、樹脂材料(高分子)を延伸した一方向に沿って配列させる。この樹脂材料の配列により、樹脂層3は、リタデーション(位相差;複屈折率×厚さ)および厚み方向位相差(Rth)を有するものとなる。
さらに、樹脂層3は、上記のような延伸加工の他、軟化または溶融状態とされた樹脂材料を主材料とする軟化・溶融材料を、軟化または溶融状態のシート材として押出した後に、シート材を搬送しつつ冷却する押出加工を施すことで、形成される樹脂層3の層中において、樹脂材料(高分子)が押し出された一方向に沿って配列し、その結果、リタデーション(位相差;複屈折率×厚さ)および厚み方向位相差(Rth)を有するものとされたものであってもよい。
なお、延伸加工を施す場合、樹脂層3のリタデーション(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、軟化または溶融状態とされたシート材を一方向に向かって延伸させる際の条件、すなわち、シート材の加熱条件、延伸させた後のシート材の冷却条件およびシート材の延伸条件(延伸力、延伸スピード)等の条件を適宜設定することで、所望の大きさを有するものに設定し得る。
さらに、押出加工を施す場合、樹脂層3のリタデーション(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、軟化または溶融状態とされた軟化・溶融材料をシート材として押出す際の条件、すなわち、軟化・溶融材料(シート材)の加熱条件、押出されたシート材の冷却条件およびシート材の押出条件(搬送スピード)等の条件を適宜設定することで、所望の大きさを有するものに設定し得る。
樹脂材料としては、透光性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂の硬化物は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度および耐熱性に富むため、樹脂材料としてポリカーボネート系樹脂を用いることで、透光性カバー部材1の透明性や耐衝撃性および耐熱性を向上させることができる。さらに、ポリカーボネート系樹脂を用いることで、透光性カバー部材1を、より確実に、その測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が145nm以下であり、かつ、位相差Re440[nm]と位相差Re660[nm]との関係が前記関係式(1)を満足するものとし得る。
さらに、このポリカーボネート系樹脂としては、その粘度平均分子量が19000以上40000以下であるのが好ましく、19500以上35000以下であるのがより好ましい。これにより、樹脂材料としてポリカーボネート系樹脂を用いる効果をより顕著に発揮させることができる。
樹脂層3の平均厚さtは、好ましくは0.3mm以上0.6mm以下であり、より好ましくは0.32mm以上0.54mm以下に設定される。樹脂層3の平均厚さtをかかる範囲内に設定することにより、透光性カバー部材1を湾曲させた湾曲状態で、収納体13の窓部131を覆うように、装着した際に、透光性カバー部材1に、窓部131を覆うカバー部材としての機能を確実に発揮させることができる。そして、前記カバー部材としての機能を発揮させるために、樹脂層3の平均厚さtがかかる範囲内に設定されたとしても、透光性カバー部材1の測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)を145nm以下とし、かつ、位相差Re440[nm]と位相差Re660[nm]との関係を、前記関係式(1)を満足するものとし得る。
なお、樹脂層3の屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.58以上1.60以下であるのが好ましく、1.585以上1.595以下であるのがより好ましい。
ハードコート層5は、図3に示すように、樹脂層3の上面に形成され、紫外線硬化性樹脂で構成され、樹脂層3を保護することで、透光性カバー部材1に優れた耐候性、耐久性、耐擦傷性、熱成形性を付与するために設けられる。なお、このハードコート層5を備える透光性カバー部材1は、ハードコート層5をフロントガラス102側にして、湾曲させた湾曲状態で、収納体13が備える窓部131に装着される。
ハードコート層5を構成する紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする紫外線硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂等のうちの少なくとも1種を主成分とする紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。そして、これらの中でもアクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂が好ましい。これにより、樹脂層3との密着性の向上を図ることができる。
ハードコート層5の平均厚さtとしては、特に限定されず、例えば、0.002mm以上0.020mm以下であるのが好ましく、0.003mm以上0.015mm以下であるのがより好ましい。これにより、樹脂層3を保護するコート層としての機能を確実に付与することができる。
ハードコート層5の屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
このハードコート層5は、例えば、ワニス状の紫外線硬化性樹脂組成物を樹脂層3上に塗布して液状被膜を形成し、この液状被膜に紫外線を照射することで液状被膜を硬化させることで形成される。
以上のような構成の透光性カバー部材1は、その総厚tが例えば0.3mm以上0.7mm以下であるのが好ましく、0.37mm以上0.65mm以下であるのがより好ましい。これにより、透光性カバー部材1をできる限り薄いものとすることができるとともに、自動車100内での通常の使用に耐え得る程度の剛性を有するものとすることができる。
また、透光性カバー部材1は、その平面視で長方形をなすものであり、縦が50mm以上200mm以下であるのが好ましく、60mm以上190mm以下であるのがより好ましく、横が100mm以上400mm以下であるのが好ましく、130mm以上380mm以下であるのがより好ましい。
さて、以上のような構成をなす、透光性カバー部材1(本発明の透光性樹脂シート)において、本発明では、前述の通り、透光性カバー部材1の測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が145nm以下であり、かつ、測定波長440nmにおける位相差Re440[nm]と、測定波長660nmにおける位相差Re660[nm]との関係が、下記関係式(1)を満足している。
Re440−Re660<40nm ・・・ (1)
ここで、表示部11は、本実施形態では、表示画像LSを構成する1つの画素に着目したとき、赤(R)、緑(G)および青(B)それぞれの色の画素PI、画素PIおよび画素PIを独立して出射することができるように構成され、これら3つの画素PIを実質的に重ね合わせて1つの画素を形成することで、フルカラー化された表示画像LS(投影像)が形成される。この際、画素PI、画素PIおよび画素PIは、反射部材12の角度を変更することで、異なる位置から出射される。そのため、窓部131に湾曲状態で装着された透光性カバー部材1に対して、各画素PI、画素PIおよび画素PIは、異なる角度で入射することとなる(図4参照)。このように各画素PI、PI、PIの入射角度が異なるが、この状態で、従来通り、透光性カバー部材1の厚み方向位相差(Rth)の設定を省略すると、各画素PI、PI、PIを実質的に重ねて1つの画素を形成することで表示画像LSを得る際に、この表示画像LSを、設計通りの色調で投影することができないと言う問題があった。
これに対して、本願発明では、視感度が高い緑色領域である測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)を、145nm以下のように低く設定している。したがって、窓部131に湾曲状態で装着された透光性カバー部材1に対して、各画素PI、PI、PIを、それぞれ、互いに異なる角度で入射させたとしても、これに起因する、形成される表示画像LSの色調のズレを的確に抑制または防止することができる。
さらに、本発明では、測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)ばかりでなく、青色領域である測定波長440nmから赤色領域である測定波長660nmまでの範囲内における、リタデーションの差(位相差Re440−位相差Re660)の大きさを、前記関係式(1)のように40nm未満に設定している。これにより、画素PI、PI、PIが透光性カバー部材1を透過する際に、形成される表示画像LSが面方向において、色調にズレが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
以上の通り、本発明では、透光性カバー部材1におけるリタデーションの差と厚み方向位相差(Rth)との双方が低く設定されている。そのため、透光性カバー部材1が、図2、図4に示すように、収納体13の窓部131に湾曲状態で装着されたとしても、スクリーンとしてのフロントガラス102の裏面102aに、表示部11から出射された表示画像LS(出射光)を設計通りの色調で投影することができる。
なお、測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)は、145nm以下であればよいが、5nm以上130nm以下であることが好ましく、50nm以上115nm以下であることがより好ましい。さらに、測定波長440nmと測定波長660nmとにおける、リタデーションの差(位相差Re440−位相差Re660)は、40nm未満であればよいが、5nm以上30nm以下であることが好ましく、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
また、前記関係式(1)を満足する際には、測定波長440nmにおける位相差Re440[nm]は、好ましくは80nm以上160nm以下、より好ましくは100nm以上155nm以下に設定される。これにより、測定波長440nmにおける位相差Re440[nm]および測定波長660nmにおける位相差Re660[nm]のベースラインを低く設定することができるため、リタデーションの差(位相差Re440−位相差Re660)を、40nm未満に設定することで得られる効果、すなわち、形成される画像が面方向において、色調にズレが発生するのを的確に抑制または防止することができるという効果をより顕著に発揮させることができる。
さらに、透光性カバー部材1は、前述の通り、収納体13の窓部131を覆うように、収納体13側が凸、フロントガラス102側が凹となるように湾曲させた湾曲状態で、装着されているが、この際の透光性カバー部材1(透光性樹脂シート)の曲率半径Rは、好ましくは100mm以上500mm以下、より好ましくは120mm以上450mm以下に設定される。かかる曲率半径Rの範囲内で湾曲状態として、窓部131に透光性カバー部材1を装着させたとしても、本発明では、透光性カバー部材1の測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が145nm以下であり、かつ、測定波長440nmにおける位相差Re440[nm]と、測定波長660nmにおける位相差Re660[nm]との関係が、前記関係式(1)を満足している。そのため、スクリーンとしてのフロントガラス102の裏面102aに、表示部11から出射された表示画像LS(出射光)を設計通りの色調で投影することができる。
また、透光性カバー部材1(透光性樹脂シート)は、543nmの円偏光を発する光源と、受光部との間に、透光性カバー部材1の上面と、光源と受光部とを結ぶ直線とのなす角度が70°ないし90°となるように配置し、その後、透光性カバー部材1を透過した、光源から発光された円偏光(透過光)を、受光部において受光し、この透過光の90°における円偏光の位相差をRe90とし、70°における位相差をRe70としたとき、(Re70/Re90)×100(%)が95%以上120%以下の関係を満足するものであるのが好ましく、100%以上112%以下の関係を満足するものであるのがより好ましい。透光性カバー部材1として、かかる関係を満足するものを用いることで、スクリーンとしてのフロントガラス102の裏面102aに、表示部11から出射された表示画像LS(出射光)をより確実に設計通りの色調で投影することができる。
なお、本実施形態では、透光性カバー部材1は、樹脂層3と、この樹脂層3の上面に積層されたハードコート層5とを備える積層板で構成される場合について説明したが、かかる積層板で構成される場合に限定されず、例えば、樹脂層3の下面には、さらに、ハードコート層5、および、偏光子として機能する偏光層のうちの少なくとも一方が積層されていてもよい。なお、ハードコート層5と偏光層との双方を、樹脂層3の下面に積層する場合、樹脂層3の下面側から、偏光層とハードコート層5とがこの順で積層されているのが好ましい。また、偏光層が積層されている場合、樹脂層3と偏光層との間には、これら同士を接合する接合層が介挿されていてもよい。
以上のように、本発明の透光性樹脂シートを、ヘッドアップディスプレイ装置10が備える透光性カバー部材1に適用することで、ヘッドアップディスプレイ装置10は、透光性カバー部材1が収納体13の窓部131に湾曲状態で装着されたとしても、スクリーンとしてのフロントガラス102の裏面102aに、表示部11から出射された表示画像LS(出射光)を設計通りの色調で投影することができる。したがって、かかるヘッドアップディスプレイ装置10を備える自動車100を、優れた信頼性を有するものとすることができる。
以上、本発明の透光性樹脂シート、投射型表示器および移動体について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、透光性樹脂シートを構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
さらに、前記実施形態では、本発明の投射型表示器を、移動体としての自動車100が備えるヘッドアップディスプレイ装置10に適用する場合について説明したが、ヘッドアップディスプレイ装置10が適用される移動体としては自動車100に限らず、例えば、船舶、鉄道車両、飛行機、バス、オートバイ、自転車、フォークリフト、工事現場等で所定の作業をする作業車、ゴルフカート等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.原材料の準備
<ポリカーボネート系樹脂>
ポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E-2000」、粘度平均分子量27000)を用意した。
<紫外線硬化性樹脂>
アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂として、下記化学式(A)で示される化合物(アクリル樹脂)70重量部、2官能ウレタンアクリレート(ダイセルサイテック社製、「EB8402」)20重量部、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート10重量部を配合し、この紫外線硬化性樹脂の濃度が30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した。
ここへ、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを5重量部、表面調整剤(共栄社化学社製、「グラノール450」)を紫外線硬化性樹脂に対して重量比で0.05重量部添加し、ハードコート層の形成に用いるハードコート層形成用樹脂組成物を作製した。
CCH(OCHCRCHOCOCH=CH (A)
(式中、nは2〜4の整数を示す。Rは−CHOCOCH=CHで表わされる基を示す。)
2.透光性樹脂シートの製造
(実施例1A)
[1A]まず、用意したポリカーボネート系樹脂を、単軸押出機が備えるTダイからシート状に押出した後、これを加熱温度270℃で押出加工を施した後に冷却することで、平均厚さt0.395mmの樹脂層を得た。
[2A]次に、用意した紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層形成用樹脂組成物を、樹脂層上に塗布して乾燥させた後に、紫外線を照射することで、樹脂層上に、平均厚さt0.005mmのハードコート層が形成された実施例1Aの透光性樹脂シートを得た。
そして、得られた透光性樹脂シートについて、位相差測定装置(Axometrics社製、「Axoscan」)を用いて、測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)、および、測定波長440nmにおける位相差Re440[nm]と、測定波長660nmにおける位相差Re660[nm]との差(Re440−Re660)を測定したところ、それぞれ、80nmおよび12nmであった。
(実施例2A〜6A)
前記工程[1A]において、樹脂層を形成する際の押出加工の条件を変更したこと以外は、前記実施例1Aと同様にして、表1に示す、厚み方向位相差(Rth)、および、差(Re440−Re660)を有する実施例2A〜6Aの透光性樹脂シートを得た。
(比較例1A)
比較例1Aの透光性樹脂シートとして、ハードコート層を備えるポリカーボネート製シート(コベストロ社製、「Makrofol HS 314」、厚さ0.375mm)を用意した。
(比較例2A)
用意したポリカーボネート系樹脂を、単軸押出機が備えるTダイからシート状に押出した後、これを加熱温度270℃で圧延加工を施した後に冷却することで、平均厚さt0.485mmの樹脂層を得た後、用意した紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層形成用樹脂組成物を、樹脂層上に塗布して乾燥させた後に、紫外線を照射することで、樹脂層上に、平均厚さt0.005mmのハードコート層が形成された比較例2Aの透光性樹脂シートを得た。
3.評価
各実施例および各比較例の透光性樹脂シートを、以下の方法で評価した。
<1A>透光性樹脂シートを透過し、ウインドウに入射する偏光状態変化
まず、各実施例および各比較例の透光性樹脂シートについて、543nmの円偏光を発する光源と、受光部との間に、透光性樹脂シートの上面と、光源と受光部とを結ぶ直線とのなす角度が70°ないし90°となるように配置した。
そして、透光性樹脂シートを透過した、光源から発光された発光光(透過光)を、受光部において受光し、この透過光の90°における円偏光の位相差と70°における位相差の変化率を求めた。
<2A>ヘッドアップディスプレイ装置により投射された画像の色調の変化の有無
まず、各実施例および各比較例の透光性樹脂シートについて、それぞれ、中央部に凹部を形成して、収納体13側が凸、フロントガラス102側が凹となるように、曲率半径R=150mmに湾曲させた湾曲状態で、窓部131を覆うように、透光性カバー部材1として装着することで、ヘッドアップディスプレイ装置10を作製した。
そして、作製したヘッドアップディスプレイ装置10を用いて、フロントガラス102の裏面102aに画像を投影し、この画像の色調の変化に基づいて、次のように評価した。
[評価基準]
◎:投影される画像に色調の変化が認められず、鮮明な画像が得られた。
〇:投影される画像に若干の色調の変化が認められるが実用上問題ない。
×:投影される画像に明らかな色調の変化が認められた。
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の透光性樹脂シートにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
Figure 0006921882
表1に示したように、各実施例における透光性樹脂シートでは、厚み方向位相差(Rth)が145nm以下、かつ、差(Re440−Re660)が40nm以下に設定され、これにより、透光性樹脂シートを透過する透過光の90°における円偏光の位相差と70°における位相差との関係(Re70/Re90)×100を95%以上120%以下の範囲内とすることができ、その結果、ヘッドアップディスプレイ装置により投影された画像を実用上問題なく、視認することができる結果を示した。
これに対して、各比較例における透光性樹脂シートでは、差(Re440−Re660)が40nm以下に設定されているものの、厚み方向位相差(Rth)を145nm以下に設定することができず、これに起因して、透光性樹脂シートを透過する透過光の90°における円偏光の位相差と70°における位相差との関係(Re70/Re90)×100が95%以上120%以下を満足しておらず、その結果、ヘッドアップディスプレイ装置により投影される画像に明らかな色調の変化が認められる結果となった。
1 透光性カバー部材
3 樹脂層
5 ハードコート層
10 ヘッドアップディスプレイ装置
11 表示部
12 反射部材
13 収納体
100 自動車
101 ダッシュボード
102 フロントガラス
102a 裏面
131 窓部
H 運転手
LS 表示画像
PI、PI、PI 画素
総厚
、t 平均厚さ

Claims (3)

  1. 曲率半径Rが100mm以上500mm以下の範囲内で湾曲させた湾曲状態で、投射型表示器から出射される出射光を透過させる透光性カバー部材に用いられる透光性樹脂シートであって、
    樹脂材料としてポリカーボネート系樹脂を主材料として構成された樹脂層と、該樹脂層の少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有し、
    前記ポリカーボネート系樹脂は、その粘度平均分子量が19000以上40000以下であり、
    前記樹脂層は、その平均厚さが0.375mm以上0.495mm以下であり、
    測定波長543nmにおける厚み方向位相差(Rth)が78nm以上114nm以下であり、
    かつ、測定波長440nmにおける位相差をRe440[nm]とし、測定波長660nmにおける位相差をRe660[nm]としたとき、前記Re440[nm]が80nm以上160nm以下であり、さらに下記関係式(1)を満足することを特徴とする透光性樹脂シート。
    7nm≦Re440−Re660≦15nm ・・・ (1)
  2. 請求項に記載の透光性樹脂シートを、前記透光性カバー部材として備えることを特徴とする投射型表示器。
  3. 請求項に記載の投射型表示器を備えることを特徴とする移動体。
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