JP6910146B2 - 皮膚貼付用シート - Google Patents

Description

本発明は、皮膚貼付用シートに関する。

従来より、皮膚に貼付して用いるシートとして、所望の効果を得るべく、種々の構造を有するものが知られている。例えば、特許文献１〜２には、冷却作用をもたらすべく、連続微多孔膜からなるガス透過性シート基材を用いた積層体で構成されている冷却用シート素材が開示されており、さらにガス透過性シート基材の耐水圧や連続微多孔膜の平均孔径を制御することによって、液体不透過性や耐漏水性、蒸気透過性等を確保し、冷却効果を高め得ることも記載されている。

一方、こうしたシートにも活用し得るものとして、特許文献３には、２成分が異なるポリオレフィン系樹脂からなり、繊維断面において少なくとも１成分が２個以上に分割されてなる分割型複合繊維を５０重量％以上含み、特定の値の耐水度や最大孔径を有し得る不織布である貼付剤用基布が開示されており、かかる基布に薬剤を塗布等した際、反対面に薬剤が出てくる裏抜け現象の発生を防止できることが示されている。

他方、特許文献４〜５に開示されるように、不織布等の支持体に含水ゲル層を積層した冷却ゲルシートも開発されており、かかるシートは、含水ゲル層中の水が蒸発する際の水の気化熱を利用して、貼付した皮膚に冷却作用をもたらそうとするものである。

特開昭６２−１７０２４３号公報 特開昭６２−１６７３３３号公報 特開平１１−２４６３９４号公報 特開２００２−２４１７４６号公報 特開２０００−１８５０６９号公報

しかしながら、上記特許文献４〜５に記載されるような含水ゲル層を用い、かかる層の水分率を高めながらシートを作製する場合、上記特許文献１〜３に記載されるような基材や基布を用いたとしても、ゲルや水分の裏抜けを十分に防止できないおそれが高く、また皮膚へ貼付した際における心地よい使用感をも確保するには、依然として改善の余地がある。

すなわち、本発明は、水分率の高いゲル層を有しつつ、製造時におけるゲルや水分の裏抜けを十分に防止するとともに、皮膚への良好な追従性をも有する皮膚貼付用シートに関する。

そこで本発明者らは、種々検討したところ、水分率の高い含水高分子ゲルと、特定の厚み及び坪量を有しつつ通気度が特定の値である樹脂繊維シートとを積層することにより、皮膚への高い追従性を保持しながら、ゲルや水分の裏抜けを効果的に防止することのできる皮膚貼付用シートが得られることを見出した。

したがって、本発明は、次の含水高分子ゲル（Ａ）と樹脂繊維シート（Ｂ）：
（Ａ）水分率が５０質量％以上９５質量％以下である含水高分子ゲルと、
（Ｂ）厚みが０．０１ｍｍ以上０．４ｍｍ以下であり、坪量が３ｇ／ｍ²以上７０ｇ／ｍ²以下であり、かつ通気度が０．１ｃｃ／ｃｍ²・秒以上９０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下である樹脂繊維シート
とが積層されてなる皮膚貼付用シートを提供するものである。

本発明によれば、水分率の高いゲル層を有しながらも、製造時においてゲルや水分の裏抜けを効果的に防止することができ、また皮膚への追従性にも優れるため、高い使用感をもたらす皮膚貼付用シートを実現することができる。

以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の皮膚貼付用シートは、次の含水高分子ゲル（Ａ）と樹脂繊維シート（Ｂ）：
（Ａ）水分率が５０質量％以上９５質量％以下である含水高分子ゲルと、
（Ｂ）厚みが０．０１ｍｍ以上０．４ｍｍ以下であり、坪量が３ｇ／ｍ²以上７０ｇ／ｍ²以下であり、かつ通気度が０．１ｃｃ／ｃｍ²・秒以上９０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下である樹脂繊維シートとが積層されてなる。本発明の皮膚貼付用シートであれば、製造時において、含水高分子ゲル（Ａ）が高い水分率でありながら、また樹脂繊維シート（Ｂ）が薄く低坪量でありながら、樹脂繊維シート（Ｂ）の含水高分子ゲル（Ａ）が積層される面とは反対側の面から、ゲルや水分の裏抜けを有効に防止することができるため、高い水分率を有しつつ、皮膚の凹凸やその動きに柔軟に対応する高い追従性を有するシートとして活用することが可能である。

本発明の皮膚貼付用シートを構成する含水高分子ゲル（Ａ）は、水分率が５０質量％以上９５質量％以下である。かかる含水高分子ゲル（Ａ）の水分率は、裏抜けの発生を有効に防止できることにより、容易に水分率を高めることが可能である観点、及び必要に応じて水の気化熱を有効に活用できる観点から、５０質量％以上であって、好ましくは６０質量％以上であり、より好ましくは７０質量％以上である。また、含水高分子ゲル（Ａ）の水分率は、皮膚に貼付した際における良好な使用感を確保する観点から、９５質量％以下であって、好ましくは９２質量％以下であり、より好ましくは９０質量％以下である。そして、含水高分子ゲル（Ａ）の水分率は、５０質量％以上９５質量％以下であって、好ましくは６０〜９２質量％であり、より好ましくは７０〜９０質量％である。
なお、含水高分子ゲル（Ａ）の水分率は、カールフィッシャー法を利用した水分計（例えば平沼自動水分測定装置ＡＱＶ−３００シリーズ）を用いて測定することができる。

含水高分子ゲル（Ａ）の厚みは、高い水分率を有効に保持する観点から、０．１ｍｍ以上であって、好ましくは０．３ｍｍ以上であり、より好ましくは０．５ｍｍ以上である。また、含水高分子ゲル（Ａ）の厚みは、皮膚への良好な追従性を確保する観点から、４ｍｍ以下であって、好ましくは３ｍｍ以下であり、より好ましくは２ｍｍ以下である。そして、含水高分子ゲル（Ａ）の厚みは、０．１ｍｍ以上４ｍｍ以下であって、好ましくは０．３〜３ｍｍであり、より好ましくは０．５〜２ｍｍである。

含水高分子ゲル（Ａ）の積層量は、後述する樹脂繊維シート（Ｂ）がもたらす作用とも相まって、十分な水分量を繊維シートへ移行させ続ける観点、及び皮膚に貼付した際の蓄熱を回避する観点から、好ましくは１００ｇ／ｍ²以上であり、より好ましくは３００ｇ／ｍ²以上であり、さらに好ましくは５００ｇ／ｍ²以上である。含水高分子ゲル（Ａ）の積層量は、皮膚に貼付した際の蓄熱を回避する観点から、好ましくは４０００ｇ／ｍ²以下であり、より好ましくは３０００ｇ／ｍ²以下であり、さらに好ましくは２０００ｇ／ｍ²以下である。また、含水高分子ゲル（Ａ）の積層量は、好ましくは１００〜４０００ｇ／ｍ²であり、より好ましくは３００〜３０００ｇ／ｍ²であり、さらに好ましくは５００〜２０００ｇ／ｍ²である。なお、含水高分子ゲル（Ａ）の積層量とは、原液での量を意味する。

含水高分子ゲル（Ａ）を形成する高分子は、多量の水を保持しつつ適度な弾力性や柔軟性を有するゲルを形成し得るものであればよく、例えば、カルボキシル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、硫酸基、又はリン酸基なる官能基を有する高分子が挙げられる。高分子の具体例としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸及びその塩、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等のポリ（メタ）アクリル酸又はその塩；カルボキシメチルセルロース又はその塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩等のアニオン性セルロース誘導体；メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のノニオン性セルロース誘導体；ジェランガム、ペクチン、カードラン、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、タマリンドシードガム、アルギン酸及びその塩、アニオン性の澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの１種又は２種以上の高分子を使用できる。なかでも、高い保水能と、十分なゲル強度及び高い追従性とを兼ね備える観点から、ポリ（メタ）アクリル酸又はその塩、アニオン性セルロース誘導体、ノニオン性セルロース誘導体カラギーナン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンから選ばれる１種又は２種以上が好ましく、ポリアクリル酸又はその塩、及びカルボキシメチルセルロース又はその塩から選ばれる１種又は２種がより好ましい。これら高分子の含水高分子ゲル（Ａ）中の含有量は、本発明の皮膚貼付用シートを皮膚に貼付した際、多量の水を保持しつつ十分なゲル強度を付与する観点から、好ましくは０．１質量％以上であり、より好ましくは０．５質量％以上であり、更に好ましくは１質量％以上である。これら高分子の含有量は、ゲルに適度な柔軟性及び皮膚への高い追従性を付与する観点から、好ましくは３０質量％以下であり、より好ましくは２０質量％以下であり、さらに好ましくは１５質量％以下であり、よりさらに好ましくは１２質量％以下である。また、これら高分子の含水高分子ゲル（Ａ）中の含有量は、好ましくは０．１〜３０質量％であり、より好ましくは０．５〜２０質量％であり、さらに好ましくは１〜１５質量％であり、よりさらに好ましくは１〜１２質量％である。かかる高分子含有量となるように、含水高分子ゲルの原液に配合するとよい。

上記高分子により含水高分子ゲル（Ａ）を形成する際、必要に応じて、さらに架橋剤を用いて高分子が有する官能基と反応させるのがよい。かかる架橋剤としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、鉛、カルシウム、カリウム等の金属イオンを含む酸化物、水酸化物又は塩類；ポリリジン等のポリアミノ酸のようなカチオン性ポリマー；エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多官能性エポキシ化合物から選ばれる１種又は２種以上が挙げられる。

上記含水高分子ゲル（Ａ）は、必要に応じて、水の気化熱を有効に活用しつつ冷涼感を付与する観点から、冷感剤を含有することができる。かかる冷感剤としては、例えば、ｌ−メントール、ｄ−メントール、ｄｌ−メントール、シネオール、メンタンジオール、乳酸メンチル、ｌ−メンチルグリセリルエーテル、メンチルエチルアミノシュウ酸、メンチルピロリドンカルボン酸、コハク酸メンチル、グルタル酸メンチル、エチルメンタンカルボキシアミド、メンタンカルボニルグリシンエチルエステル、メントン、メントングリセリンアセタール、２−ｓｅｃ−ブチルシクロヘキサノン、イソプレゴール、プレゴール、Ｎ，２，３−トリメチル−２−イソプロピルブタナミド、チモール、オイゲノール、アネトール、サリチル酸メチル、カンフル、スピラントール、トリメチルシクロヘキサノール、３−ｌ−メントキシ−２−メチルプロパン−１，２−ジオール等が挙げられる。また、前記物質を含有する精油を用いることもでき、例えば、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、サッサフラス油、ウィンターグリーン等が挙げられる。なお、これらは１種単独で用いてもよく、２種以上組み合わせて用いてもよい。
冷感剤の含有量は、含水高分子ゲル（Ａ）中に、好ましくは０．０００１〜１０質量％であり、より好ましくは０．００１〜５質量％であり、さらに好ましくは０．００５〜１質量％である。

含水高分子ゲル（Ａ）には、上記成分のほか、通常、化粧品や医薬品等で用いられる他の成分、例えば、保湿剤；油剤；アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤；薬効成分；防腐剤；酸化防止剤；紫外線吸収剤；溶解剤；着色料；「合成香料化学と商品知識」、印藤元一著、１９９６年化学工業日報社刊；「パフューム アンド フレバー ケミカルス（Ｐｅｒｆｕｍｅ ａｎｄ Ｆｌａｖｏｒ Ｃｈｅｍｉｃａｌｓ）」、ステファンアークタンダー（ＳＴＥＦＦＥＮＡＲＣＴＡＭＤＥＲ）著、１９６９年等の文献に記載された冷感剤以外の香料等を適宜含有させてもよい。これらの成分のうち、保湿剤としてグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、１，３−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールを含有させることが好ましい。また、これらの成分は、後述する樹脂繊維シート（Ｂ）に含有させてもよい。

含水高分子ゲル（Ａ）を製造するには、まず、高分子、水、及び必要に応じて冷感剤や他の成分を含有する含水高分子ゲル原液を調製する。次いで、本発明の皮膚貼付用シートであれば裏抜けの発生を考慮する必要がないため、一般的に知られている塗工機であるスロットダイコーター、リップコーター、ナイフコーター、ロールコーター等のいずれも使用することができる。例えば、剥離可能なフィルムとともに樹脂繊維シート（Ｂ）を搬送しながら回転する塗工ロール等を用い、ホッパーから含水高分子ゲル原液を流し込みつつ圧着し、室温或いは３５〜６０℃の加温下で数時間〜数日間熟成させて樹脂繊維シート（Ｂ）上に含水高分子ゲル（Ａ）を積層することにより製造するという、簡易な方法を採用することができる。また、剥離可能なフィルムに含水高分子ゲル原液を挟み込み、ベーカー式アプリケーター等を用いて展延する製造方法を採用してもよい。このとき、ゲル原液を挟み込む一方の面を樹脂繊維シート（Ｂ）とし、室温あるいは３５〜６０℃の加温下で数時間〜数日間熟成させることにより、製造することもできる。

本発明の皮膚貼付用シートを構成する樹脂繊維シート（Ｂ）は、厚みが０．０１ｍｍ以上０．４ｍｍ以下であり、坪量が３ｇ／ｍ²以上７０ｇ／ｍ²以下であり、かつ通気度が０．１ｃｃ／ｃｍ²・秒以上９０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下である。このように、薄く低坪量であるために通常であれば裏抜けが生じるおそれが高まるところ、かかる樹脂繊維シート（Ｂ）は通気度が特定の値を示すシートであるため、含水高分子ゲル（Ａ）が高い水分率を保持するにもかかわらず、裏抜けの発生を有効に防止し、皮膚の凹凸やその動きに柔軟に対応する高い追従性を確保することができる。

樹脂繊維シート（Ｂ）の厚みは、裏抜けの発生を有効に防止する観点から、０．０１ｍｍ以上であって、好ましくは０．０５ｍｍ以上であり、より好ましくは０．１ｍｍ以上である。また、樹脂繊維シート（Ｂ）の厚みは、高い追従性を確保する観点から、０．４ｍｍ以下であって、好ましくは０．３ｍｍ以下であり、より好ましくは０．２５ｍｍ以下である。そして、樹脂繊維シート（Ｂ）の厚みは、０．０１ｍｍ以上０．４ｍｍ以下であって、好ましくは０．０５〜０．３ｍｍであり、より好ましくは０．１〜０．２５ｍｍである。
なお、樹脂繊維シート（Ｂ）の厚みは、定圧厚さ測定器（ＰＧ−１１ Ｊ−ｔｙｐｅ テクロックコーポレーション製（測定力３．７ｇ／ｃｍ²、測定子径１０ｃｍ²））を用いて測定される値である。

樹脂繊維シート（Ｂ）の坪量は、裏抜けの発生を有効に防止する観点から、３ｇ／ｍ²以上であって、好ましくは５ｇ／ｍ²以上であり、より好ましくは１０ｇ／ｍ²以上である。また、樹脂繊維シート（Ｂ）の坪量は、適度な通気性や使用感、及び皮膚への良好な追従性を確保する観点から、７０ｇ／ｍ²以下であって、好ましくは５０ｇ／ｍ²以下であり、より好ましくは３０ｇ／ｍ²以下である。そして、樹脂繊維シート（Ｂ）の坪量は、３ｇ／ｍ²以上７０ｇ／ｍ²以下であって、好ましくは５〜５０ｇ／ｍ²であり、より好ましくは１０〜３０ｇ／ｍ²である。

樹脂繊維シート（Ｂ）の通気度は、適度な通気性や使用感を保持する観点から、０．１ｃｃ／ｃｍ²・秒以上であって、好ましくは０．５ｃｃ／ｃｍ²・秒以上であり、より好ましくは１．５ｃｃ／ｃｍ²・秒以上である。また、樹脂繊維シート（Ｂ）の通気度は、裏抜けの発生を有効に防止する観点から、９０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下であって、好ましくは７０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下であり、より好ましくは５０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下である。そして、樹脂繊維シート（Ｂ）の通気度は、０．１ｃｃ／ｃｍ²・秒以上９０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下であって、好ましくは０．５〜７０ｃｃ／ｃｍ²・秒であり、より好ましくは１．５〜５０ｃｃ／ｃｍ²・秒である。
なお、通気度は、ＪＩＳ Ｌ１０９６通気性Ａ法（フラジール形法）の通気度Ｑ〔ｃｃ／ｃｍ²・秒〕として測定、算出される値である。

樹脂繊維シート（Ｂ）の平均細孔径は、適度な通気性や使用感を保持する観点から、好ましくは０．５μｍ以上であり、より好ましくは１．５μｍ以上であり、さらに好ましくは３μｍ以上である。また、樹脂繊維シート（Ｂ）の平均細孔径は、裏抜けを有効に防止する観点から、好ましくは２５μｍ以下であり、より好ましくは２０μｍ以下であり、さらに好ましくは１４μｍ以下である。
なお、樹脂繊維シートの平均細孔径とは、水銀の表面張力を４８５ｄｙｎ／ｃｍ、水銀と樹脂繊維シート（Ｂ）との接触角を１３０°とする条件下、水銀圧ポロシメーターを用いることにより得られるＬｏｇ微分細孔容積分布曲線において、最大のピークを示す細孔径（直径）を意味する。

樹脂繊維シート（Ｂ）の耐水圧は、裏抜けの発生を有効に防止する観点から、好ましくは５０ｍｍＨ₂Ｏ以上であり、より好ましくは３００ｍｍＨ₂Ｏ以上であり、さらに好ましくは５００ｍｍＨ₂Ｏ以上であり、適度な通気性やシートの柔軟性付与及び皮膚への追従性を良好にする観点から、好ましくは５０００ｍｍＨ₂Ｏ以下であり、より好ましくは４０００ｍｍＨ₂Ｏ以下であり、さらに好ましくは３０００ｍｍＨ₂Ｏ以下である。
なお、樹脂繊維シートの耐水圧とは、ＪＩＳ Ｌ１０９２に定める耐水度試験Ａ法（低水圧法）に準じた方法により測定された値を意味する。

樹脂繊維シート（Ｂ）を構成する樹脂としては、ポリマー分子内にＣＨ₃基、ＣＨ₃ＣＨ₂基等のアルキル基、ベンゼン環等の非極性基を有する樹脂が挙げられ、ホモポリマーからなるものであってもコポリマーからなるものであってもよく、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂；ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂；ナイロン−６、ナイロン−６，６、ポリメチルメタクリルイミド等のアミド系樹脂；ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂；ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等のスチレン・アクリロニトリル系樹脂；トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂；ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、テフロン（登録商標）等のハロゲン含有樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。

樹脂繊維シート（Ｂ）は、裏抜けを有効に防止しつつ適度な通気性や使用感を保持する観点から、不織布、織布、又は編布からなるシートであるのが好ましく、不織布からなるシートであるのがより好ましい。また、かかる不織布としては、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、水流交絡又はスパンレース不織布、或いはメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との複合不織布（ＳＭＳ等）等が挙げられるが、裏抜けを効果的に防止する観点から、メルトブロー不織布が好ましい。

本発明の皮膚貼付用シートの厚みは、高い水分率を保持したまま、貼付した皮膚への追従性を高める観点から、好ましくは０．１〜４．４ｍｍであり、より好ましくは０．３〜３ｍｍであり、さらに好ましくは０．５〜２ｍｍである。

本発明の皮膚貼付用シートは、含水高分子ゲル（Ａ）の、樹脂繊維シート（Ｂ）と接する面とは反対側の面を所望の皮膚に貼付することによって用いる。貼付する皮膚の部位としては、四肢や体、頸、顔面、頭部等の外皮（頭皮を含む）が挙げられる。本発明の皮膚貼付用シートは、樹脂繊維シート（Ｂ）が薄く低坪量であり、かつ含水高分子ゲル（Ａ）が高い水分率を有しているため、皮膚の凹凸やその動きに柔軟に対応する高い追従性を発揮しつつ、必要に応じて、水の気化熱を有効に利用して貼付した皮膚を効果的かつ持続的に冷却することができる。

以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量％を示す。

［実施例１〜１５、比較例１〜６］
予め、表１に示す含水高分子ゲルの処方にしたがい、含水高分子ゲル（Ａ）の原液を調製した。具体的には、グリセリン、パラオキシ安息香酸メチルを加温溶解させたプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲルとの混合液を混練機に投入し、次にコハク酸水溶液を添加して、未架橋ゲル原液を調製した。

次に、剥離可能なフィルムに未架橋ゲル原液を挟み込み、ベーカー式アプリケーターにてシート状に展延した。このシートを下記方法にしたがって裏抜けの評価を実施した。

［評価試験：裏抜けの評価］
展延したシートの一方の面のフィルムを剥離し、未架橋ゲル面上に評価する樹脂繊維シート（Ｂ）、パルプシートの順に乗せ、塗工ロール圧力相当の１９５ｇ／ｃｍ²、２０秒間の条件で加圧し、下記基準にしたがって裏抜けの評価を行った。なお、各樹脂繊維シート（不織布）の厚み、及び通気度は、下記方法にしたがって測定した。
結果を表２に示す。
Ａ：繊維シートの見た目に変化がなく、ベトつきがない。
Ｂ：繊維シートの透け感がわずかに認められるが、ベトつきはない。
Ｃ：繊維シートに透け感があり、ベトつきがある。加圧後パルプシートを取り除く際に、繊維シートから裏抜けしたゲルによる粘着性が認められる。

《厚みの測定》
定圧厚さ測定器（ＰＧ−１１ Ｊ−ｔｙｐｅ テクロックコーポレーション製（測定力３．７ｇ／ｃｍ²、測定子径１０ｃｍ²））を用いて測定した。

《通気度の測定》
カトーテック株式会社製ＫＥＳ−Ｆ８−ＡＰ１ 通気性試験機を用いて通気抵抗Ｒ〔ｋＰａ・秒／ｍ〕を測定し、ＪＩＳ Ｌ１０９６通気性Ａ法（フラジール形法）に基づく通気度Ｑ〔ｃｃ／ｃｍ²・秒〕を、次式〔Ｑ＝１２．５／Ｒ〕を用いて算出した。

《耐水圧の測定》
ＪＩＳ Ｌ１０９２に定める耐水度試験Ａ法（低水圧法）に準じ、テクステスト社製ＦＸ３０００−IV 耐水圧試験機にて測定した。

《平均細孔径の測定》
水銀の表面張力を４８５ｄｙｎ／ｃｍ、水銀と樹脂繊維シート（Ｂ）との接触角を１３０°とし、水銀圧ポロシメーター（ＡｕｔｏＰｏｒｅ IV ９５００ マイクロメリティックス社製）で得られるＬｏｇ微分細孔容積分布曲線における最大のピークを示す細孔径（直径）を平均細孔径として求めた。

Claims (5)

1. 次の含水高分子ゲル（Ａ）と樹脂繊維シート（Ｂ）：
   （Ａ）水分率が５０質量％以上９５質量％以下である含水高分子ゲルと、
   （Ｂ）厚みが０．０１ｍｍ以上０．４ｍｍ以下であり、坪量が３ｇ／ｍ²以上７０ｇ／ｍ²以下であり、かつ通気度が０．１ｃｃ／ｃｍ²・秒以上９０ｃｃ／ｃｍ²・秒以下である樹脂繊維シート
   とが積層されてなり、
   樹脂繊維シート（Ｂ）がメルトブロー不織布である皮膚貼付用シート。
2. 樹脂繊維シート（Ｂ）の耐水圧が、５０ｍｍＨ₂Ｏ以上５０００ｍｍＨ₂Ｏ以下である請求項１に記載の皮膚貼付用シート。
3. 樹脂繊維シート（Ｂ）の平均細孔径が、０．５μｍ以上２５μｍ以下である請求項１又は２に記載の皮膚貼付用シート。
4. 樹脂繊維シート（Ｂ）が、不織布からなるシートである請求項１〜３のいずれか１項に記載の皮膚貼付用シート。
5. 含水高分子ゲル（Ａ）の厚みが、０．１ｍｍ以上０．８ｍｍ以下である請求項１〜４のいずれか１項に記載の皮膚貼付用シート。