以下に、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
実施形態の合わせガラスは、1対のガラス板と、この1対のガラス板に挟持される中間膜とを有する。中間膜は、透過領域と、遮蔽領域とを備える。透過領域は、ガラス転移点が15℃以上のスキン層とガラス転移点が15℃未満のコア層とが交互に積層され、コア層を2層以上有する。遮蔽領域は、1対のガラス板の周縁に設けられ、3%以下の可視光透過率を有する。なお、透過領域におけるコア層の層数は3層以上が好ましく、5層以下が好ましい。また、透過領域は、70%以上の可視光透過率を有することが好ましい。
本明細書におけるガラス転移点とは、周波数1Hz、動的せん断歪み0.015%、昇温速度:3℃/分、測定温度範囲:−40℃〜80℃の条件で、動的粘弾性試験により検体のtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の温度依存性を測定した際のtanδのピーク温度のことをいう。
tanδは、例えば、厚みd=0.6mm、直径12mmの円盤状に成形した検体を準備し、該検体を上記条件の下、測定治具:パラレルプレート(直径12mm)を用いて、動的粘弾性測定装置により測定できる。動的粘弾性測定装置としては、例えば、アントンパール社製、回転式レオメーターMCR301が挙げられる。
可視光透過率は、JIS R3212(1998年)に準拠して求められる可視光透過率をいう。
実施形態の合わせガラスによれば、以下の効果を得ることができる。すなわち、中間膜の透過領域が所定の積層構造を有することにより、音の振動エネルギーに起因して複数個所に大きなせん断変形エネルギーが発生し、これが熱エネルギーとして放出されることで優れた遮音性を得ることができる。また、中間膜が所定の可視光透過率の遮蔽領域を有することにより、従来のセラミック遮蔽層を省略でき、透過像の歪みを抑制して視認性を向上させることができる。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の合わせガラスを示す正面図であり、図2は、図1に示す合わせガラスのX−X線における断面図である。
合わせガラス10は、1対のガラス板11、12と、この1対のガラス板11、12に挟持される中間膜13とを有する。中間膜13は、1対のガラス板11、12と略同形、同寸に形成される。なお、「略同形、同寸」とは、人の見た目において同じ形状、同じ寸法を有することをいう。他の場合においても、「略」は上記と同様の意味を示す。
以下、合わせガラス10の各構成要素について説明する。
[ガラス板]
ガラス板11、12の厚みは、その組成、中間膜の組成、合わせガラス10の用途によっても異なるが、一般的には0.1〜10mmである。なお、合わせガラス10の面密度を好ましい範囲にするには、ガラス板11、12の厚みは、0.3〜2.5mmが好ましい。
ガラス板11、12の厚みは、互いに同じでも異なってもよい。厚みが異なる場合、内側、例えば、自動車の窓ガラスであれば車内側、建築物の窓ガラスであれば屋内側に位置するガラス板の厚みが外側に位置するガラス板の厚みより薄いことが好ましい。
ガラス板11、12のうち内側となるガラス板の厚みは、0.5〜1.6mmが好ましく、0.7〜1.5mmがより好ましい。外側となるガラス板の厚みは、耐飛石衝撃性が良好となることから、1.3mm以上が好ましい。両者の厚みの差は、0.3〜1.5mmが好ましく、0.5〜1.3mmがより好ましい。外側となるガラス板の厚みは、1.6〜2.5mmが好ましく、1.7〜2.1mmがより好ましい。ガラス板の板厚が薄いと、セラミック隠蔽層を設けた近傍に透視像の歪が一層発生しやすくなるため、本発明の効果が一層発揮される。よって、ガラス板11とガラス板12との板厚の合計が4.1mm以下であることが好ましく、3.7mm以下であることがより好ましく、3.3mm以下であることがさらに好ましく、3.1mm以下であることが特に好ましい。
ガラス板11、12は、無機ガラス、有機ガラス(樹脂)から構成することができる。
無機ガラスとしては、通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。無機ガラスとしては、例えば、フロート法等により成形されたフロート板ガラスが挙げられる。無機ガラスとしては、風冷強化、化学強化等の強化処理が施されたものが使用できる。
有機ガラス(樹脂)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂のなかでも、特に、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、上記樹脂は、2種以上が併用されてもよい。
ガラスは、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。このようなガラスとして、グリーンガラス、紫外線吸収(UV)グリーンガラス等が挙げられる。なお、UVグリーンガラスは、SiO2を68質量%以上74質量%以下、Fe2O3を0.3質量%以上1.0質量%以下、かつFeOを0.05質量%以上0.5質量%以下含有し、波長350nmの紫外線透過率が1.5%以下、550nm以上1700nm以下の領域に透過率の極小値を有する。
ガラスは、透明であればよく、無色でも有色でもよい。また、ガラスは、2層以上が積層されたものでもよい。適用箇所にもよるが、無機ガラスが好ましい。
ガラス板11、12の材質は、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。ガラス板11、12の形状は、平板でもよいし、全面または一部に曲率を有してもよい。ガラス板11、12の大気に晒される表面には、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されてもよい。また、ガラス板11、12の対向面には、低放射性コーティング、赤外線遮蔽コーティング、導電性コーティング等、通常、金属層を含むコーティングが施されてもよい。
[中間膜]
中間膜13は、ガラス板11、12を接着する。中間膜13は、例えば、1対のガラス板11、12の平面方向の中央付近に配置される透過領域131と、周縁に設けられる遮蔽領域132とを有する。例えば、遮蔽領域132は、透過領域131を囲むように枠状に設けられる。
(透過領域)
透過領域131は、例えば、ガラス板11側から、スキン層21、コア層31、スキン層22、コア層32、スキン層23の5層を順に有する。なお、スキン層21、22、23、コア層31、32は、それぞれ単層構造でも多層構造でもよい。
スキン層21、22、23のガラス転移点は15℃以上であり、コア層31、32のガラス転移点は15℃未満である。スキン層21、22、23、コア層31、32は、通常、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の種類は特に制限されず、公知の中間膜を構成する熱可塑性樹脂の中からガラス転移点を考慮して適宜選択することができる。以下、スキン層21、22、23のガラス転移点をTgs、コア層31、32のガラス転移点をTgcと記すことがある。
Tgsが15℃以上であると、優れた遮音性を得ることができる。Tgsは、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。Tgsは、耐貫通性の観点から、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
Tgcが15℃未満であると、優れた遮音性を得ることができる。Tgcは、10℃以下が好ましく、8℃以下がより好ましい。Tgcは、コア層31、32の形状保持の観点から、−10℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましい。
遮音性を高める観点から、TgsからTgcを引いた値は、10〜40℃が好ましく、20〜35℃がより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。熱可塑性樹脂のガラス転移点は、例えば、可塑剤量により調整できる。熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上が併用されてもよい。
熱可塑性樹脂は、ガラス転移点に加えて、透明性、耐候性、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性等の諸性能のバランスを考慮して選択される。このような観点から、スキン層21、22、23は、それぞれ、PVB、EVA、ポリウレタン樹脂等が好ましい。コア層31、32は、それぞれ、PVB、EVA、ポリウレタン樹脂等が好ましい。
スキン層21、22、23のTgsは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。また、スキン層21、22、23を構成する熱可塑性樹脂の種類についても、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。スキン層21、22、23を構成する熱可塑性樹脂の種類は、コア層31、32を構成する熱可塑性樹脂の種類と同一であることがより好ましい。
コア層31、32のTgcは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。また、コア層31、32を構成する熱可塑性樹脂の種類についても、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
ガラス板11とコア層31との間にはスキン層21が配置されることが好ましく、ガラス板12とコア層32との間にはスキン層23が配置されることが好ましい。このような構成により、合わせガラス10の生産性が向上する。
厚み(Ta)は、0.45mm以上が好ましい。ここで、厚み(Ta)は、図2に示されるように、透過領域131が2層のコア層31、32を有する場合、これらのコア層31、32間の厚み、具体的にはスキン層22の厚みを意味する。また、3層以上のコア層を有する場合、1対のガラス板に最も近い1対のコア層間の厚みを意味する。
厚み(Ta)が0.45mm以上になると、透過領域131が十分にせん断変形するために遮音性が向上する。厚み(Ta)は、0.50mm以上がより好ましい。厚み(Ta)の上限は特に限定されないが、軽量化の観点から、4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。
面密度(ρ)は、0.5kg/m2以上が好ましい。ここで、面密度(ρ)は、図2に示されるように2層のコア層31、32を有する場合、2層のコア層31、32間に配置される層全体の面密度、具体的にはスキン層22の面密度を意味する。また、3層以上のコア層を有する場合、面密度(ρ)は、1対のガラス板に最も近い1対のコア層間に配置される層全体の面密度を意味する。
面密度(ρ)が0.5kg/m2以上になると、透過領域131が十分にせん断変形するために遮音性が向上する。面密度(ρ)は、0.55kg/m2以上がより好ましく、0.6kg/m2以上がさらに好ましい。面密度(ρ)の上限は特に限定されないが、軽量化の観点から、3.3kg/m2以下が好ましく、2.0kg/m2以下がより好ましく、1.3kg/m2以下がさらに好ましい。
厚み(Tb)は、1.53mm以上が好ましい。ここで、厚み(Tb)は、透過領域131の全体の厚みであり、スキン層21、22、23、コア層31、32の厚みの合計である。厚み(Tb)が1.53mm以上になると、遮音性が向上する。厚み(Tb)は、2.0mm以上がより好ましい。厚み(Tb)の上限は特に限定されないが、軽量化の観点から、4.0mm以下が好ましい。
スキン層21、22、23の各層の厚みは、特に制限されない。遮音性、軽量化、厚み(Ta)、厚み(Tb)の観点から、0.15〜1.1mmが好ましく、0.2〜0.76mmがより好ましい。スキン層21、22、23の各層の厚みは、互いに同一でも異なってもよい。
コア層31、32の各層の厚みは、特に制限されない。遮音性、軽量化、厚み(Ta)、厚み(Tb)の観点から、それぞれ0.05〜0.2mmが好ましく、0.07〜0.15mmがより好ましい。コア層31、32の各層の厚みは互いに同一でも異なってもよい。
透過領域131は、周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が5.0×104Pa以上であることが好ましく、1.0×105Pa以上がより好ましい。貯蔵弾性率G’は剛性を示す指標であり、貯蔵弾性率G’が上記範囲であれば剛性が十分に確保できる。
貯蔵弾性率G’の上限は、特に制限されない。ただし、貯蔵弾性率G’が高くなると遮音性を損なう場合がある。また、貯蔵弾性率G’が高すぎると、切断等の加工において特殊な機器を要する等、生産性が低下することがある。さらに、透過領域131が脆くなり耐貫通性が低下する。このような点を考慮すると、貯蔵弾性率G’は、1.0×107Pa以下が好ましい。
なお、本明細書における貯蔵弾性率G’は、周波数1Hz、温度20℃、動的せん断歪み0.015%の条件下、せん断法、例えば、アントンパール社製レオメーターMCR301により測定される動的粘弾性試験における貯蔵弾性率である。
スキン層21、22、23、コア層31、32は、熱可塑性樹脂を主成分として含有する。また、スキン層21、22、23、コア層31、32は、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上を含有することができる。
(遮蔽領域)
遮蔽領域132は、1対のガラス板11、12の周縁、例えば、透過領域131の外縁に形成され、3%以下の可視光透過率を有する。可視光透過率が3%以下になると、例えば、自動車用窓ガラスとして用いた場合に、車内に配置される部品の紫外線の照射による劣化が抑制され、また車内に配置される部品が見えなくなり意匠性が向上する。尚、ガラス板11、12の周縁に形成される遮蔽領域132には、従来セラミック遮蔽層が形成されているカメラやセンサーが取付けられる部分に形成されている部分も含む。
遮蔽領域132は、通常、従来のセラミックス遮蔽層が設けられていた領域に設けられる。このような領域に遮蔽領域132が設けられることにより、従来のセラミック遮蔽層を省略することができ、透過像の歪みを抑制して視認性を向上させることができる。
遮蔽領域132は、例えば、中間膜13の当該領域に可視光透過率が3%以下になるような着色層41を設けることにより形成される。例えば、図示される遮蔽領域132の場合、透過領域131におけるスキン層23を着色層41に置き換え、その他の部分は透過領域131と同様の積層構造とすることにより形成される。また、遮蔽領域132は、図示しないが、スキン層21、22、または23の表面に暗色で印刷されて形成される、あるいは、中間膜13とガラス板11またはガラス板12との間に暗色のフィルムを挟持する、あるいは、中間膜13の積層構造中に暗色のフィルムを挟持する、等により形成されていてもよい。
透過領域131を構成する層のうち、遮蔽領域132において、着色層41により置換される層はスキン層23に限られない。着色層41により置換される層は、透過領域131におけるいずれの層であってもよい。また、着色層41により置換される層は、透過領域131における一部の層でもよいし全部の層でもよい。すなわち、図示される構造の場合、スキン層21、22、23、コア層31、32の中から選ばれる任意の1層または2層以上を着色層41に置換することができる。
例えば、図3に示されるように、透過領域131におけるスキン層21、22、23のみを着色層41に置換して遮蔽領域132としてもよい。また、図示しないが、コア層31、32のみを着色層41に置換して遮蔽領域132としてもよい。また、図4に示されるように、スキン層21、22、23、コア層31、32の全てを着色層41に置換して遮蔽領域132としてもよい。
遮蔽領域132の位置、形状等は、適宜選択することができる。例えば、合わせガラス10が自動車の天井部位に使用されるルーフガラスの場合、遮蔽領域132は10〜100mm程度の幅の額縁状に形成される。また、合わせガラス10が自動車のサイドガラスに用いられる場合は、30〜200mm程度の幅の帯状に形成される。なお、例えば、図3に示されるように、複数の着色層41が積層される場合、それぞれの着色層41の幅は同一でも異なってもよい。それぞれの着色層41の幅は、合わせガラス10の用途に応じて適宜選択される。
着色層41は、例えば、熱可塑性樹脂と、可視光透過率を調整するための着色剤とを含有する。着色層41は、さらにガラス転移点を調整するための可塑剤を含有することができる。
着色層41を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上が併用されてもよい。
着色層41を構成する熱可塑性樹脂は、ガラス転移点に加えて、透明性、耐候性、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性等の諸性能のバランスを考慮して選択される。このような観点から、着色層41を構成する熱可塑性樹脂としては、PVB、EVA、ポリウレタン樹脂等が好ましい。
着色剤としては、可視光透過率を低下させるものであれば特に制限されず、染料、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。これらの中でも、長期使用による退色のおそれが少ないことから無機顔料または有機顔料が好ましく、耐光性に優れることから無機顔料が好ましい。
有機顔料としては、アニリンブラック等の黒色顔料、アリザリンレーキ等の赤色顔料等が挙げられる。無機顔料としては、炭素系顔料、金属酸化物系顔料が挙げられる。例えば、カーボンブラック、アイボリーブラック、マルスブラック、ピーチブラック、ランプブラック、マグネタイト型四酸化三鉄等の黒色顔料、アンバー、バーントアンバー、イエローウォーカー、ヴァンダイクブラウン、シェンナ、バーントシェンナ等の茶色顔料、ベンガラ、モリブデンレッド、カドミウムレッド等の赤色顔料、赤口黄鉛、クロムバーミリオン等の橙色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー等の青色顔料、酸化クロム、ビリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等の緑色顔料、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー等の黄色顔料、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレット等の紫色顔料等が挙げられる。これらの着色剤は1種または2種以上を組合せて使用することができる。
着色剤の配合量は、遮蔽領域132の可視光透過率を3%以下にするものとされる。例えば、1層の着色層41のみが設けられる場合、この1層の着色層41のみで遮蔽領域132の可視光透過率を3%以下にする配合量とされる。また、複数層の着色層41が設けられる場合、これら複数層の着色層41の全体で遮蔽領域132の可視光透過率を3%以下にする配合量とされる。なお、複数層の着色層41が設けられる場合、各着色層41における配合量は同じでも異なってもよい。
着色層41は、さらに、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上を含有することができる。
着色層41は、置換される層に近いガラス転移点を有することが好ましい。例えば、スキン層21、22、23を置換する着色層41のガラス転移点は、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましい。コア層31、32を置換する着色層41のガラス転移点については、15℃未満が好ましく、10℃以下がより好ましく、8℃以下がさらに好ましい。特に、着色層41のガラス転移点は、この着色層41により置換される層のガラス転移点と実質的に同一であることが好ましい。なお、1層以上のスキン層と1層以上のコア層とを同一の着色層41により置換する場合、この着色層41のガラス転移点は15℃以上でも15℃未満でもよい。
遮蔽領域132は、周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が5.0×104Pa以上であることが好ましく、1.0×105Pa以上がより好ましい。貯蔵弾性率G’は剛性を示す指標であり、貯蔵弾性率G’が上記範囲であれば剛性が十分に確保できる。
遮蔽領域132の貯蔵弾性率G’の上限は、特に制限されないが、貯蔵弾性率G’が高くなると遮音性を損なう場合がある。また、貯蔵弾性率G’が高すぎると、切断等の加工において特殊な機器を要する等、生産性が低下することがある。さらに、遮蔽領域132が脆くなり耐貫通性が低下する。このような点を考慮すると、遮蔽領域132の貯蔵弾性率G’は、1.0×107Pa以下が好ましい。
1対のガラス板11、12と中間膜13との合計質量に対する中間膜13の質量の割合は、遮音性および軽量化の観点から14質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましい。所期の強度を保つ観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。以下、上記割合を「膜割合」という。
中間膜13は、例えば、樹脂シートの積層により製造することができる。図2に示される中間膜13の場合、まず、遮蔽領域132の着色層41を除いた部分を形成した後、遮蔽領域132の着色層41を形成して中間膜13とする。
具体的には、スキン層21、コア層31、スキン層22、コア層32、スキン層23、着色層41の各層を形成するための樹脂シートを製造する。これらの樹脂シートは、例えば、透過領域131および遮蔽領域132の両領域を同時に形成できるような連続した大きさとする。一方、スキン層23を形成するための樹脂シートは、透過領域131のみを形成する大きさとする。また、着色層41を形成するための樹脂シートは、遮蔽領域132のみを形成する大きさとする。
各樹脂シートは、各層に適した組成を有する樹脂組成物をシート状に成形して製造することができる。成形条件は、熱可塑性樹脂の種類により適宜選択することができる。これらの樹脂シートは、所定の順序に積層して加圧下に加熱して中間膜13とすることができる。なお、中間膜13は、一部または全部を共押出しにより形成してもよい。
1対のガラス板11、12の間には、中間膜13以外の機能フィルムが設けられてもよい。機能フィルムは、例えば、中間膜13を構成する層間に配置される。機能フィルムとして、赤外線遮蔽フィルム等が挙げられる。
赤外線遮蔽フィルムとして、例えば、25〜200μm程度の厚みのPETフィルム等の支持フィルム上に膜厚100〜500nm程度の赤外線反射膜が設けられたものが挙げられる。赤外線反射膜として、誘電体多層膜、液晶配向膜、赤外線反射材含有コーティング膜、金属膜を含む単層または多層の赤外線反射膜等が挙げられる。赤外線遮蔽フィルムとしては、さらに屈折率の異なる樹脂フィルムを積層した合計膜厚が25〜200μm程度の誘電多層フィルム等が挙げられる。
なお、厚み(Ta)の測定範囲内に機能フィルムがある場合、厚み(Ta)は機能フィルムの厚みを含むものとする。また、面密度(ρ)の測定範囲内に機能フィルムがある場合、面密度(ρ)は機能フィルムを含むものとする。さらに、合わせガラスの面密度も、機能フィルムを含むものとする。一方、厚み(Tb)、膜割合は、機能フィルムを含まないものとする。
合わせガラス10は、セラミックス遮蔽層を有することができる。このようなセラミックス遮蔽層は、必要に応じて、かつ、視認性を低下させない範囲内で設けられる。例えば、セラミックス遮蔽層は、1対のガラス板11、12から選ばれる一方のガラス板に公知の方法により設けられる。セラミックス遮蔽層の形成箇所は、使用用途に応じて適宜選択される。なお、合わせガラス10の面密度、膜割合は、セラミックス遮蔽層を含まないものとする。合わせガラス10の周縁部の中央付近等、乗員の目に付きやすい箇所には本願発明の遮蔽領域を設け、それ以外の箇所にはセラミック遮蔽層を設けてもよい。透過像の歪みが発生しやすいことから、セラミックス遮蔽層を有しないことが好ましい。
中間膜13は、車両の乗員の太陽光による眩しさを低減する、いわゆるシェードバンド層を含んでいてもよい。シェードバンド層は合わせガラス10が車両に取り付けられた時に上辺となる辺の周縁部に設けられる。
合わせガラス10は、以下の特性を有することが好ましい。
合わせガラス10の面密度は、13.5kg/m2以下が好ましく、12kg/m2以下がより好ましく、11kg/m2以下がさらに好ましい。合わせガラス10の面密度が上記範囲にあれば、軽量化を達成できる。合わせガラス10の面密度は、所期の強度を保つ観点から8kg/m2以上が好ましく、9kg/m2以上がより好ましい。
合わせガラス10のうち遮蔽領域132が設けられている部分の可視光透過率、すなわち1対のガラス板11、12と中間膜13の遮蔽領域132とを合わせた部分の可視光透過率は、3%以下であることが好ましい。この部分の可視光透過率が3%以下になると、例えば、自動車用窓ガラスとして用いた場合に、車内に配置される部品の紫外線による劣化が抑制され、また車内に配置される部品が見えなくなり意匠性が向上する。
合わせガラス10の1次共振点における損失係数は、0.4以上であることが好ましい。ここで、1次共振点における損失係数は、温度20℃の条件下、0〜10000Hzの周波数領域で測定される。1次共振点における損失係数は、ISO_PAS_16940に準拠した中央加振法により測定できる。中央加振法による損失係数の測定装置としては、例えば、小野測器社製、中央加振法測定システム(MA−5500、DS−2000)が挙げられる。
1次共振点の周波数領域は、概ね、0〜300Hzである。1次共振点における損失係数が0.4以上であれば、例えば、自動車のエンジン音や、タイヤの振動音等の比較的低周波数領域の音を十分に遮音することができる。また、1次共振点における損失係数が0.4以上であれば、2次共振点〜7次共振点等の高次共振点における損失係数についても0.4以上になりやすく、低周波数領域〜高周波領域の音まで効率的に遮音することができる。
1次共振点における損失係数は、0.42以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。また、1次共振点および2次共振点における損失係数がいずれも0.5以上であることが好ましい。なお、例えば、湾曲した形状の合わせガラスにおいては、当該合わせガラスと同等の構成となるように平らなガラス板を使用した合わせガラスを作製して損失係数が測定される。
合わせガラス10の三点曲げ剛性は100N/mm以上が好ましい。三点曲げ剛性は、三点曲げ試験により得られる剛性であり、例えば、圧縮引張試験機により測定できる。三点曲げ剛性は、120N/mm以上が特に好ましい。三点曲げ剛性が100N/mm以上であれば、車両高速走行時の窓ガラスの開閉を妨げないレベルの剛性であり好ましい。
合わせガラス10のSAE J1400に準拠して測定されるコインシデンス領域における音響透過損失は、35dB以上が好ましく、42dB以上がより好ましい。音響透過損失が35dB以上であれば、遮音性に優れると評価できる。
合わせガラス10の用途は特に限定されない。合わせガラス10は、建築物、自動車等に使用できるが、自動車に用いることで顕著な遮音効果を得ることができる。また、好ましい態様において軽量化を達成できる。
なお、自動車に用いる場合、JIS R3212(1998年)にしたがって測定された可視光線透過率が70%以上であることが好ましく、74%以上であることがより好ましい。ISO13837−2008にしたがって測定されたTts(Total solar energy transmitted through a
glazing)が66%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
合わせガラス10は、公知の方法により製造できる。すなわち、1対のガラス板11、12の間に中間膜13を配置して前駆体とし、これをゴムバッグのような真空バッグの中に挿入する。そして、減圧しながら70〜110℃に加熱することで、1対のガラス板11、12を中間膜13により接着する。その後、必要に応じて、圧着処理として加熱加圧を行う。圧着処理により、さらに耐久性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の合わせガラス10を示す断面図である。
透過領域131は、ガラス板11側から、スキン層21、コア層31、スキン層22、コア層32、スキン層23、コア層33、スキン層24の7層が順に積層されてもよい。ここで、層数が異なることを除いて、各層の構成は、図1、図2に示される合わせガラス10と同様とすることができる。
この場合、厚み(Ta)は、コア層31、33間の厚み、具体的には、スキン層22、コア層32、およびスキン層23の合計した厚みとなる。厚み(Ta)は、0.45mm以上が好ましく、0.50mm以上がより好ましい。また、厚み(Ta)は、4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。
また、面密度(ρ)は、コア層31、33の間に配置される層全体の面密度、具体的には、スキン層22、コア層32、およびスキン層23からなる層全体の面密度となる。面密度(ρ)は、0.5kg/m2以上が好ましく、0.55kg/m2以上がより好ましく、0.6kg/m2以上がさらに好ましい。また、面密度(ρ)は、3.3kg/m2以下が好ましく、2.0kg/m2以下がより好ましく、1.3kg/m2以下がさらに好ましい。
遮蔽領域132は、例えば、透過領域131におけるスキン層24を着色層41に置き換え、その他の部分は透過領域131と同様とすることができる。なお、透過領域131を構成する層のうち、遮蔽領域132において、着色層41により置換される層はスキン層24に限られない。着色層41により置換される層は、透過領域131におけるいずれの層であってもよい。また、着色層41により置換される層は、透過領域131における一部の層でも全部の層でもよい。着色層41の構成は、図1、図2に示される合わせガラス10における着色層41と同様とすることができる。
合わせガラス10の特性は、第1の実施形態の合わせガラス10と同様であることが好ましい。すなわち、合わせガラス10の特性は、透過領域131の層数にかかわらず、第1の実施形態の合わせガラス10と同様であることが好ましい。
すなわち、合わせガラス10の面密度は、13.5kg/m2以下が好ましく、12kg/m2以下がより好ましく、11kg/m2以下がさらに好ましい。合わせガラス10の面密度は、所期の強度を保つ観点から8kg/m2以上が好ましく、9kg/m2以上がより好ましい。
遮蔽領域132が設けられている部分の可視光透過率、すなわち1対のガラス板11、12と中間膜13の遮蔽領域132とを合わせた部分の可視光透過率は、3%以下であることが好ましい。この部分の可視光透過率が3%以下になると、例えば、自動車用窓ガラスとして用いた場合に、車内に配置される部品の紫外線による劣化が抑制され、また車内に配置される部品が見えなくなり意匠性が向上する。
合わせガラス10の1次共振点における損失係数は、0.4以上であることが好ましい。1次共振点における損失係数が0.4以上であれば、例えば、自動車のエンジン音や、タイヤの振動音等の比較的低周波数領域の音を十分に遮音することができる。1次共振点における損失係数は、0.42以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。また、1次共振点および2次共振点における損失係数がいずれも0.5以上であることが好ましい。
合わせガラス10の三点曲げ剛性は、100N/mm以上が好ましく、120N/mm以上がより好ましい。合わせガラス10の音響透過損失は、35dB以上が好ましく、42dB以上がより好ましい。音響透過損失が35dB以上であれば、遮音性に優れると評価できる。
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の合わせガラス10の正面図であり、図7は、図6に示す合わせガラスのY−Y線断面図である。
合わせガラス10は、図示されるように面方向に厚みが変化してもよい。この場合、透過領域131における各層の厚み、厚み(Ta)、厚み(Tb)は、同領域の面方向において測定される最も大きい値とする。すなわち、最も大きい値が既に説明した範囲内にあればよい。
図示される合わせガラス10は、例えば、自動車のフロントガラスとして用いられる。図6においては、上側がフロントガラスの上側として自動車に取り付けられる。以下、フロントガラスの上側を上辺、下側を下辺という。図7においては、左側が上辺側であり右側が下辺側である。
合わせガラス10は、上辺より下辺が長い略台形の形状を有する。中間膜13は、上辺から下辺に向かって厚みが漸減するいわゆる楔形状を有する。なお、中間膜13は、ガラス板11側から、スキン層21、コア層31、スキン層22、コア層32、スキン層23が順に積層された5層構成を有する。
中間膜13の各層は、いずれも同じ割合で上辺から下辺に向かって厚みが漸減する。従って、このような場合、透過領域131における各層の厚み、厚み(Ta)、厚み(Tb)は、同領域における上辺側で測定される。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
なお、本発明は、以下に説明される実施例に限定されない。
[実施例1]
中間膜として、透過領域と、3%以下の可視光透過率を有する遮蔽領域とを有するものを用意した。なお、遮蔽領域は、透過領域を囲むような枠状とした。
透過領域は、車外側より、第1のスキン層(厚み0.33mm、1層目)、第1のコア層(厚み0.1mm、2層目)、第2のスキン層(厚み0.66mm、3層目)、第2のコア層(厚み0.1mm、4層目)、第3のスキン層(厚み0.66mm、5層目)、第3のコア層(厚み0.1mm、6層目)、第4のスキン層(厚み0.33mm、7層目)をこの順に有するものとした。ここで、厚み(Ta)は1.42mm、面密度(ρ)は1.56kg/m2、厚み(Tb)は2.28mmである。
なお、各スキン層の組成は同一であり、いずれもPVB(Tgs;30℃)からなる。また、各コア層の組成は同一であり、いずれもPVB(Tgc;3℃)からなる。スキン層、コア層は、いずれもPVBからなる樹脂シートを積層して形成した。
遮蔽領域は、7層目を着色層(厚み0.33mm)に変更したことを除いて透過領域と同様の積層構造とした。着色層は、PVB(Tgs;30℃)と着色剤とを含有するものとした。着色剤として、カーボンブラックを用いた。着色剤の含有量は、PVBおよび着色剤の合計中、0.1質量%とした。
なお、中間膜は、以下のようにして作製した。まず、透過領域および遮蔽領域の両領域に連続するような大きさの樹脂シートを積層して、透過領域および遮蔽領域の1層目〜6層目までの各層を形成した。その後、透過領域の6層目上に透過領域の7層目となる樹脂シートを積層した。ここで、透過領域の7層目となる樹脂シートは、透過領域の7層目のみを形成する大きさとした。さらに、遮蔽領域の7層目(着色層)となる樹脂シートを積層した。ここで、遮蔽領域の7層目(着色層)となる樹脂シートは、透過領域の7層目を囲むような枠状とした。また、透過領域の7層目と遮蔽領域の7層目(着色層)とは密接するようにした。その後、ホットプレス成形機を用いてプレスを行うことにより中間膜を製造した。プレス条件は、150℃、300秒間、プレス圧50kg/cm2とした。なお、上記した各層の厚みは、プレス後の厚みである。
次に、車外側となるガラス板(厚さ2.0mm)と車内側となるガラス板(厚さ1.3mm)との間に中間膜を配置して積層体とした。車外側および車内側のガラス板は、いずれもソーダライムガラスからなり、25mm×300mmの大きさとした。また、中間膜は、予めガラス板と同じ大きさとした。
その後、積層体を真空バッグに入れて、真空バッグ内が−60kPa以下の減圧度となるように脱気を行いながら110℃に加熱して圧着を行った。さらに、温度140℃、圧力1.3MPaの条件下で圧着を行った。このようにして、透過領域と遮蔽領域とを有する中間膜が一対のガラス板に挟持された合わせガラスを製造した。なお、この合わせガラスの面密度は10.76kg/m2、膜割合は23.3質量%であった。
[比較例1]
中間膜として、全体が実施例1の透過領域と同様の積層構造を有するもの、すなわち透過領域のみで構成される中間膜を用いるとともに、車外側となるガラス板の表面にセラミックス遮蔽層を設けたことを除いて、実施例1と同様にして合わせガラスを製造した。
なお、セラミックス遮蔽層は、車外側となるガラス板にセラミックスペーストを塗布し、焼き付けて形成した。セラミックスペーストには顔料とガラスフリットを用い、実施例1の遮蔽領域に相当する部分にスクリーン印刷により塗布した。また、焼き付けは、800℃の条件より行った。
次に、実施例1および比較例1の合わせガラスについて、以下のようにして透過像の歪みを評価した。まず、図8に示すように、合わせガラス50を自動車に取り付けるときと同様の角度に傾斜させて配置するとともに、その車外側にゼブラパターン60を配置した。ゼブラパターン60は、白地に複数の黒線61が設けられたものである。黒線61は、ゼブラパターン60の下辺に対して45度の角度となるように、かつ互いに平行となるように設けた。
図9は、ゼブラパターン60を合わせガラス50の車内側から見た例を示したものである。なお、図9は、ゼブラパターン60に歪みが発生した状態を示している。ここで、合わせガラス50は、透過部51と遮蔽部52とを有する。透過部51は、実施例1の場合、中間膜の透過領域が位置する部分であり、比較例1の場合、セラミックス遮蔽層が設けられていない部分である。一方、遮蔽部52は、実施例1の場合、中間膜の遮蔽領域が位置する部分であり、比較例1の場合、セラミックス遮蔽層が設けられている部分である。
通常、図示されるように、透過部51と遮蔽部52との境界53付近でゼブラパターン60の黒線61が湾曲するように歪んで見える。このため、黒線61の左辺をそのまま延長した延長線Lが境界53に交わる位置と、実際に黒線61が境界53に交わる位置との距離を歪み(W)として評価した。
その結果、比較例1の合わせガラスは、歪み(W)が7mmと大きくなることが認められた。一方、実施例1の合わせガラスは、歪み(W)が0mmと抑制されていること、すなわち、黒線61が歪まずに直線に見えることが認められた。このような違いは、セラミックス遮蔽層を形成するときの焼き付けに起因すると考えられる。実施例1の合わせガラスは焼き付けを行う必要がないことから、歪みの発生が抑制されたと考えられる。
次に、実施例1の合わせガラスについて、以下のようにして遮音性および剛性の評価を行った。なお、比較例1の合わせガラスについては、構造上、遮音性および剛性については実施例1の合わせガラスと大きな違いがないと考えられることから、遮音性および剛性の評価は行わなかった。
遮音性の評価としては、周波数0〜10000Hz、温度20℃における1次共振点〜7次共振点における損失係数を、ISO_PAS_16940に準拠し、小野測器社製、中央加振法測定システム(MA−5500、DS−2000)を用いて測定した。その結果、1次共振点における損失係数は0.47、2次共振点における損失係数は0.49となり、遮音性が良好であることが認められた。
剛性の評価としては、周波数0〜10000Hz、温度20℃における1次共振点〜7次共振点におけるモジュラスを測定した。その結果、1次共振点におけるモジュラスは2.58、2次共振点におけるモジュラスは1.61であり、剛性が良好であることが認められた。