JP6540539B2 - 合わせガラス用中間膜および合わせガラス - Google Patents

Description

本発明は、合わせガラス用中間膜およびそれを用いた合わせガラスに関する。

１対のガラス板間に樹脂等の中間膜が挟持され加熱圧着された合わせガラスは、破損時に破片が飛散せず、安全性に優れているため、例えば、自動車等の車両の窓ガラスや建築物の窓ガラス等に広く用いられている。近年では、飛散防止等の安全性に加えて、中間膜を適宜選択することで求められる機能に応じた種々の機能が付与された合わせガラスが用いられるようになった。なかでも、遮音性を有する合わせガラスの要望が高く、性質の異なる樹脂膜を積層した中間膜を用いて、合わせガラスの遮音性能を高める試みがなされている。

しかしながら、遮音性能を高めるために性質の異なる樹脂膜を積層した中間膜を用いた合わせガラスにおいては、通常の中間膜を用いた合わせガラスに比べて、使用中に気泡が発生しやすく、さらに初期に発生した気泡が核となって面方向に成長して花柄状の大面積な気泡を形成することがあった。以下、花柄状に面方向に広がった気泡を、「Ｉｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡」ともいう。

合わせガラスにおけるこのような気泡の発生や気泡の面方向への成長を抑制するために、例えば、特許文献１には、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を含有する層を積層した中間膜において、平均重合度が３０００を超えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化したポリビニルアセタール樹脂を含む層を設ける、さらには、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度やアセタール化度を調整する等の方法が記載されている。しかしながら、特許文献１に記載の中間膜を用いた合わせガラスにおいては、気泡の発生や気泡の成長によるＩｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成を抑制する効果は十分ではなかった。

国際公開第２０１１／０８１１９０号

本発明は、上記観点からなされたものであり、合わせガラスに用いる多層構造の中間膜において、合わせガラスとした際に気泡の発生および気泡の大面積化を十分に抑制可能な合わせガラス用中間膜および、中間膜における気泡の発生および気泡の大面積化が十分に抑制された合わせガラスの提供を目的とする。

本発明の合わせガラス用中間膜は、周波数１Ｈｚ、振り角ｇａｍｍａ０．０１％、温度２０℃の条件下、動的粘弾性試験により測定される貯蔵弾性率が１．０×１０^６Ｐａ以上であるスキン層と、前記貯蔵弾性率が１．０×１０^６Ｐａ未満であるコア層が交互に積層され、前記コア層を２層以上有する合わせガラス用中間膜であって、前記コア層の各層の厚み（ｍｍ）を平均した値と合わせガラス用中間膜全体の厚み（ｍｍ）との積の値が０．１５以上である。

本発明の合わせガラスは、互いに対向する１対のガラス板と、前記１対のガラス板間に挟持される上記本発明の合わせガラス用中間膜とを備える。

本発明によれば、合わせガラスに用いる多層構造の中間膜において、合わせガラスとした際に気泡の発生および気泡の大面積化、特にはＩｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成、成長を十分に抑制可能な合わせガラス用中間膜および、中間膜における気泡の発生および気泡の大面積化、特にはＩｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成、成長が十分に抑制された合わせガラスを提供できる。

本発明の合わせガラス用中間膜の実施形態の一例の断面図である。 本発明の合わせガラス用中間膜の実施形態の別の一例の断面図である。 本発明の合わせガラス用中間膜の実施形態のさらに別の一例の正面図である。 図３Ａに示す合わせガラス用中間膜のＹ−Ｙ線における断面図である。 図３Ａに示す合わせガラス用中間膜の作製過程を示す図である。 図１に示す合わせガラス用中間膜を用いた本発明の合わせガラスの実施形態の一例の断面図である。 実施例における合わせガラスに係る発泡試験の結果を示す写真である。

以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。

［合わせガラス用中間膜］
本発明の合わせガラス用中間膜は、周波数１Ｈｚ、振り角ｇａｍｍａ０．０１％、温度２０℃の条件下、動的粘弾性試験により測定される貯蔵弾性率が１．０×１０^６Ｐａ以上であるスキン層と、前記貯蔵弾性率が１．０×１０^６Ｐａ未満であるコア層が交互に積層され、前記コア層を２層以上有する合わせガラス用中間膜であって、前記複数のコア層において各コア層の厚み（ｍｍ）を平均した値と前記合わせガラス用中間膜全体の厚み（ｍｍ）との積の値が０．１５以上である。なお、複数のコア層において各コア層の厚み（ｍｍ）を平均した値とは、合わせガラス用中間膜が有するコア層の厚み（ｍｍ）の合計値をコア層の層数で除した値であり、以下、「コア層平均厚み」ともいう。

なお、以下の説明において、周波数１Ｈｚ、振り角ｇａｍｍａ０．０１％、温度２０℃の条件下、動的粘弾性試験により測定される貯蔵弾性率を「貯蔵弾性率Ｇ’」で示す。スキン層の貯蔵弾性率Ｇ’を「貯蔵弾性率Ｇ’ｓ」、コア層の貯蔵弾性率Ｇ’を「貯蔵弾性率Ｇ’ｃ」と示すこともある。また、合わせガラス用中間膜を単に「中間膜」ともいう。また、厚みについては特に断らないかぎり、その単位はｍｍである。

貯蔵弾性率Ｇ’は、例えば、厚みｄ＝０．６ｍｍ、直径１２ｍｍの円盤状に成形した検体を準備し、該検体を上記条件の下、測定治具：パラレルプレート（直径１２ｍｍ）を用いて、動的粘弾性測定装置にかけることで測定できる。動的粘弾性測定装置としては、例えば、アントンパール社製、回転式レオメーターＭＣＲ３０１が挙げられる。

本発明の中間膜は、少なくとも２層のコア層（貯蔵弾性率Ｇ’ｃ＜１．０×１０^６Ｐａ）とその間にスキン層（貯蔵弾性率Ｇ’ｓ≧１．０×１０^６Ｐａ）を有する構成であり、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みとの積の値が０．１５以上である。この積の値が０．１５以上であれば、各コア層の厚みと中間膜全体の厚みが十分に厚く、気泡が中間膜の厚さ方向に移動しやすい状態であることを意味し、両者がこのような特定の関係にあることにより、得られる合わせガラスにおいて気泡の発生が抑えられるとともに、発生した気泡が花柄状に面方向に広がるのが抑制される。

気泡は中間膜内部に吸収されていた空気が加熱等によりコア層内で層の平面方向に沿って集合することで発生するが、本発明の中間膜においては上記構成を有することで、気泡が面方向に成長せずに厚さ方向に成長するため、気泡の発生やその大面積化、特にはＩｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成、成長を抑制する効果が得られるものと考えられる。なお、本明細書において「気泡」とは、合わせガラスを主面側から見た際に目視で認識できる程度の大きさの「気泡」をいう。以下、気泡の発生やその大面積化、特にはＩｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成、成長を抑制する効果を総称して「発泡抑制効果」ともいう。

本発明の中間膜は、上記貯蔵弾性率Ｇ’ｃを満たすコア層と上記貯蔵弾性率Ｇ’ｓを満たすスキン層が交互に積層され、かつ上記コア層を２層以上有する構成である。本発明の中間膜は、上記積層構造を有しコア層平均厚みと中間膜全体の厚みとの積の値が０．１５以上であれば、層数は特に限定されない。中間膜において最も層数が少ない構成は、１対のコア層間にスキン層が挟持された構成である。

本発明の中間膜は、２つの最表層がスキン層からなる構成が好ましい。例えば、中間膜が２層のコア層を有する場合には、２層のコア層が１層のスキン層を挟持し、さらにそれを２層のスキン層が挟持する構成が好ましい。さらに、中間膜におけるコア層の層数は３層以上が好ましい。中間膜の構成をこのような好ましい構成とすることで、発泡抑制効果が高まる。なお、軽量化の観点からは中間膜におけるコア層の層数は３層が好ましい。

以下、本発明の中間膜の実施の形態について、２層のコア層と３層のスキン層が、スキン層、コア層の順に交互に積層された５層構成の中間膜、または、３層のコア層と４層のスキン層が、スキン層、コア層の順に交互に積層された７層構成の中間膜を例に、図面を参照しながら説明する。図１は、５層構成の中間膜の実施形態の一例における断面図である。図２は７層構成の中間膜の実施形態の一例における断面図である。

図１に示す中間膜１Ａは、２つの主面Ｓａ、Ｓｂを有し、主面Ｓａ側から主面Ｓｂ側に向かってスキン層２１、コア層３１、スキン層２２、コア層３２、スキン層２３の順に５層が積層された構成である。中間膜１Ａを構成する２層のコア層３１、３２および３層のスキン層２１、２２、２３は略同形、同寸の主面を有する。

ここで、本明細書において、「略同形、同寸」とは、人の見た目において同じ形状、同じ寸法を有することをいう。他の場合においても、「略」は上記と同様の意味を示す。
以下、中間膜１Ａを構成する各要素について説明する。

本発明の合わせガラス用中間膜は、互いに対向する１対のガラス板間に挟持されるように用いられる。図４は中間膜１Ａを用いた合わせガラスの実施形態の一例の断面図である。中間膜１Ａは、ガラス板４Ａ、４Ｂの間に配置され、ガラス板４Ａ、４Ｂを接着して合わせガラス１０として一体化する機能を有するものである。

中間膜１Ａにおいて、コア層３１、３２の貯蔵弾性率Ｇ’ｃは、１．０×１０^６Ｐａ未満であり、スキン層２１、２２、２３の貯蔵弾性率Ｇ’ｓは１．０×１０^６Ｐａ以上である。コア層３１、３２およびスキン層２１、２２、２３は、合わせガラスに通常用いられる中間膜を構成する主材料である熱可塑性樹脂から、各層ごとに上記貯蔵弾性率Ｇ’ｃまたは貯蔵弾性率Ｇ’ｓが得られるように樹脂を適宜選択して構成される。上記貯蔵弾性率Ｇ’ｃまたは貯蔵弾性率Ｇ’ｓに調整できれば、用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。

貯蔵弾性率Ｇ’ｃは、０．６×１０^６Ｐａ以下が好ましく、０．３×１０^６Ｐａ以下がより好ましい。貯蔵弾性率Ｇ’ｃが１．０×１０^６Ｐａ未満であることで、本発明の中間膜を用いた合わせガラスにおいて遮音性を実用的な範囲に維持しながら所期の発泡抑制効果が得られる。貯蔵弾性率Ｇ’ｃはコア層自体の形状保持の観点から０．８×１０^５Ｐａ以上が好ましく、０．１×１０^６Ｐａ以上がより好ましい。

貯蔵弾性率Ｇ’ｓは、２．５×１０^６Ｐａ以上が好ましく、５．０×１０^６Ｐａ以上がより好ましい。貯蔵弾性率Ｇ’ｓが１．０×１０^６Ｐａ以上であることで、合わせガラスにおいて遮音性を実用的な範囲に維持しながら所期の発泡抑制効果が得られる。貯蔵弾性率Ｇ’ｓは耐貫通性の観点から４．０×１０^７Ｐａ以下が好ましい。

発泡抑制効果を高めながら、所期の遮音性を維持する観点から貯蔵弾性率Ｇ’ｓから貯蔵弾性率Ｇ’ｃを引いた値は、２．０×１０^６Ｐａ〜３．０×１０^７Ｐａの範囲にあるのが好ましく、５．０×１０^６Ｐａ〜１．５×１０^７Ｐａがより好ましい。

コア層において上記貯蔵弾性率Ｇ’ｃを、スキン層において上記貯蔵弾性率Ｇ’ｓをそれぞれ実現できる熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂（ＰＶＢ）、ポリ塩化ビニル樹脂（ＰＶＣ）、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂（ＥＶＡ）、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂、シクロオレフィンポリマー（ＣＯＰ）等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、例えば、可塑剤量等を調整することで、上記貯蔵弾性率Ｇ’ｃまたは貯蔵弾性率Ｇ’ｓに調整できる。熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよいし、２種類以上が併用されてもよい。

また、熱可塑性樹脂は、コア層およびスキン層においてそれぞれ貯蔵弾性率Ｇ’ｃおよび貯蔵弾性率Ｇ’ｓの条件に加えて、合わせガラスの用途に応じて、透明性、耐候性、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性等の諸性能のバランスを考慮して選択される。このような観点から、コア層を構成する熱可塑性樹脂としては、ＰＶＢ、ＥＶＡ、ポリウレタン樹脂等が好ましい。また、スキン層は、それぞれ、ＰＶＢ、ＥＶＡ、ポリウレタン樹脂等が好ましい。

中間膜を構成する２層以上のコア層の貯蔵弾性率Ｇ’ｃは、各コア層において上記範囲内であれば同一であっても異なってもよい。また、中間膜が複数のスキン層を有する場合、各スキン層において貯蔵弾性率Ｇ’ｓが上記範囲内であれば同一であっても異なってもよい。また、コア層、スキン層を構成する熱可塑性樹脂の種類についても、コア層、スキン層毎に同一であっても異なってもよい。中間膜は、２層以上のコア層において貯蔵弾性率Ｇ’ｃおよび熱可塑性樹脂の種類が同じであり、スキン層を複数有する場合において貯蔵弾性率Ｇ’ｓおよび熱可塑性樹脂の種類が同じであり、かつ、コア層とスキン層において熱可塑性樹脂の種類が同じである構成が好ましい。

なお、本発明の中間膜を構成する個々のコア層およびスキン層は、それぞれがコア層またはスキン層に対応して上記貯蔵弾性率Ｇ’ｃまたは貯蔵弾性率Ｇ’ｓを満たせば、単層構造であっても、多層構造であってもよい。例えば、中間膜１Ａにおけるスキン層２１は単層構造であっても、多層構造であってもよく、多層構造の場合、全体として貯蔵弾性率Ｇ’ｓを満足すればよい。スキン層２２、２３、コア層３１、３２についても同様である。

本発明の中間膜においては、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みとの積の値が０．１５以上である。以下の説明において、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みとの積の値を「厚みの積の値Ｘ」ともいう。厚みの積の値Ｘは好ましくは０．１７以上であり、より好ましくは０．２以上である。なお、厚みの積の値Ｘは、合わせガラスの軽量化の観点から０．７以下が好ましい。図１における中間膜１Ａ全体の厚みをＴ、コア層３１、コア層３２の厚みをそれぞれＴ_３１、Ｔ_３２で示す。中間膜１Ａにおいてコア層平均厚みは、（Ｔ_３１＋Ｔ_３２）／２であり、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みとの積の値（厚みの積の値Ｘ）は、Ｔ×（Ｔ_３１＋Ｔ_３２）／２で示される。

また、本発明の中間膜においては、中間膜の一方の主面から最も遠いコア層の一方の主面側の面から中間膜の一方の主面までの距離および、中間膜の他方の主面から最も遠いコア層の他方の主面側の面から中間膜の他方の主面までの距離は、それぞれ、発泡抑制効果を高める観点から０．６ｍｍ以上が好ましく、軽量化の観点から５．０ｍｍ以下が好ましい。上記距離は、それぞれ１．０〜４．０ｍｍがより好ましい。

中間膜１Ａにおいては、主面Ｓａから最も遠いコア層３２の主面Ｓａ側の面３２ａから主面Ｓａまでの距離がＴａで示され、主面をＳｂから最も遠いコア層３１の主面Ｓｂ側の面３１ｂから主面Ｓｂまでの距離がＴｂで示される。距離Ｔａおよび距離Ｔｂは上記のとおりそれぞれ０．６〜５．０ｍｍが好ましく、１．０〜４．０ｍｍがより好ましい。距離Ｔａおよび距離Ｔｂは互いに同一であっても異なってもよい。

コア層３１、コア層３２の厚みＴ_３１、Ｔ_３２は中間膜１Ａにおいて厚みの積の値Ｘが上記条件を満足したうえで、距離Ｔａおよび距離Ｔｂを上記範囲にする、合わせガラスとした際の遮音性の向上および軽量化の等の観点から、０．０５〜０．２ｍｍが好ましく、０．０７〜０．１５ｍｍがより好ましい。コア層３１、３２の厚みは互いに同一であっても異なってもよい。

スキン層２１、スキン層２２、スキン層２３の厚みは、中間膜１Ａにおいて厚みの積の値Ｘが上記条件を満足したうえで、距離Ｔａおよび距離Ｔｂを上記範囲にする、合わせガラスとした際の遮音性の向上および軽量化の等の観点から、０．１５〜１．１ｍｍが好ましく、０．２〜０．７６ｍｍがより好ましい。スキン層２１、スキン層２２、スキン層２３の厚みは、互いに同一であっても異なってもよい。

中間膜１Ａの厚みＴは、コア層３１、３２、スキン層２１、２２、２３の厚みの合計であり、中間膜１Ａにおいて厚みの積の値Ｘが上記条件を満足したうえで、距離Ｔａおよび距離Ｔｂを上記範囲にする、合わせガラスとした際の遮音性の向上および軽量化等の観点から、０．８〜５．２ｍｍが好ましく、１．７〜４．０ｍｍがより好ましい。

本発明の中間膜においては、コア層の厚みに対する中間膜全体の厚みの比の値が全てのコア層について１１以上であることが好ましく、１５以上がより好ましい。中間膜１Ａを例にすれば、Ｔ／Ｔ_３１で示されるコア層３１の厚みＴ_３１に対する中間膜全体の厚みＴの比の値、および、Ｔ／Ｔ_３２で示されるコア層３２の厚みＴ_３２に対する中間膜全体の厚みＴの比の値はいずれも１１以上が好ましい。Ｔ／Ｔ_３１およびＴ／Ｔ_３２は、それぞれ発泡抑制効果を高める観点から１５以上がより好ましく、合わせガラスの軽量化の観点から５０以下が好ましい。Ｔ／Ｔ_３１およびＴ／Ｔ_３２は同じであっても異なってもよい。以下、コア層の厚みに対する中間膜全体の厚みの比の値を単に「厚みの比の値」という。

ここで、図１は中間膜１Ａの主面Ｓａ、Ｓｂに垂直な一断面を示し、中間膜の一方の端部から他方の端部の間で中間膜１Ａが均一な厚みで積層されていることを示す図である。中間膜１Ａにおいては、その主面Ｓａ、Ｓｂに垂直な断面はいずれも同様である。すなわち、中間膜１Ａにおいては、主面内のいずれの箇所においても、各層の厚み、全体の厚みＴ、距離Ｔａおよび距離Ｔｂは同じである。

図２は、スキン層とコア層が交互に積層され、コア層の層数が３であり、２つの最表層がスキン層からなる中間膜１Ｂの主面Ｓａ、Ｓｂに垂直な一断面を概略的に示す図である。中間膜１Ｂは、２つの主面Ｓａ、Ｓｂを有し、主面Ｓａ側から主面Ｓｂ側に向かってスキン層２１、コア層３１、スキン層２２、コア層３２、スキン層２３、コア層３３、スキン層２４の順に７層が積層された構成である。

図２における中間膜１Ｂ全体の厚みをＴ、コア層３１、コア層３２、コア層３３の厚みをそれぞれＴ_３１、Ｔ_３２、Ｔ_３３で示す。中間膜１Ｂにおいてコア層平均厚みは、（Ｔ_３１＋Ｔ_３２＋Ｔ_３３）／３である。中間膜１Ｂにおける厚みの積の値Ｘは、Ｔ×（Ｔ_３１＋Ｔ_３２＋Ｔ_３３）／３で示され、０．１５以上である。中間膜１Ｂにおける厚みの積の値Ｘの好ましい値は、上記のとおりである。

中間膜１Ｂにおいては、主面Ｓａから最も遠いコア層３３の主面Ｓａ側の面３３ａから主面Ｓａまでの距離がＴａで示され、主面Ｓｂから最も遠いコア層３１の主面Ｓｂ側の面３１ｂから主面Ｓｂまでの距離がＴｂで示される。距離Ｔａおよび距離Ｔｂは上記のとおりそれぞれ０．６〜５．０ｍｍが好ましく、１．０〜４．０ｍｍがより好ましい。距離Ｔａおよび距離Ｔｂは互いに同一であっても異なってもよい。

中間膜１Ｂにおける膜全体の厚みＴ、コア層の厚み、スキン層の厚みについては、中間膜１Ａにおける膜全体の厚みＴ、コア層の厚み、スキン層の厚みと、それぞれ好ましい範囲を含め同様とできる。コア層同士で厚みは同じであっても異なってもよく、スキン層同士で厚みは同じであっても異なってもよい。

中間膜１Ｂにおいて、Ｔ／Ｔ_３１で示されるコア層３１の厚みＴ_３１に対する中間膜全体の厚みＴの比の値、Ｔ／Ｔ_３２で示されるコア層３２の厚みＴ_３２に対する中間膜全体の厚みＴの比の値、Ｔ／Ｔ_３３で示されるコア層３３の厚みＴ_３３に対する中間膜全体の厚みＴの比の値はいずれも１１以上が好ましく、１５以上がより好ましい。また、Ｔ／Ｔ_３１、Ｔ／Ｔ_３２、Ｔ／Ｔ_３３は上記中間膜１ＡにおけるＴ／Ｔ_３１、Ｔ／Ｔ_３２と同様に５０以下が好ましい。これらの比の値は同じであっても異なってもよい。

（中間膜の作製）
中間膜におけるコア層、スキン層の作製には、上述した熱可塑性樹脂を主成分として含有する熱可塑性樹脂含有組成物が用いられる。該熱可塑性樹脂含有組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で各種目的に応じて、例えば、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の１種類もしくは２種類以上を含有していてもよい。これらの添加剤はコア層およびスキン層において、それぞれ全体に均一に含有される。

なお、上記添加剤のうちでも特に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤等のコア層やスキン層に追加の機能を付与するための添加剤の含有については、例えば、中間膜１Ａであれば、コア層３１、３２とスキン層２１、２２、２３を合わせて５層からなる中間膜の各層において、いずれか１層のみが含有する構成であっても、２層以上が含有する構成であってもよく、さらに２層以上が含有する場合、同種の添加剤を同量、または異なる量含有してもよく、異なる添加剤をそれぞれ含有してもよい。その際には、例えば赤外線吸収剤では、合わせガラスにしたときに合わせガラスを透した赤外線レーザー、通信等の感度に悪影響を及ぼさないように、添加量やどの層に添加するかの調整に注意を要する場合がある。

中間膜１Ａは、例えば、コア層３１、３２およびスキン層２１、２２、２３を、それぞれに適した熱可塑性樹脂含有組成物から、好ましくは各層の厚みおよび厚みの関係が上記の範囲になるようにシート状に製膜して準備し、得られた各層をスキン層２１、コア層３１、スキン層２２、コア層３２、スキン層２３の順に積層して、加圧下に加熱することで作製される。あるいは共押出しにより一体的に作製してもよい。作製の条件は熱可塑性樹脂の種類により適宜選択される。中間膜１Ｂについても同様に作製できる。

以上、本発明の中間膜について、中間膜１Ａ、１Ｂを例にコア層が２層の場合、３層の場合について説明した。コア層が４層以上の中間膜の場合においても、上記と同様に、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みの積の値、コア層の厚みに対する中間膜全体の厚みの比の値、中間膜の一方の主面から最も遠いコア層の一方の主面側の面から一方の主面までの距離および中間膜の他方の主面から最も遠いコア層の他方の主面側の面から他方の主面までの距離、中間膜全体の厚み、各層の厚み等を勘案して、適宜コア層およびスキン層を設計すればよい。

本発明の中間膜は、中間膜１Ａ、１Ｂのように中間膜の主面内で各層が均一な厚みを有するものであってもよく、主面内で各層が異なる厚みを有するものであってもよい。主面内で各層が異なる厚みを有する場合、中間膜全体の厚み、各層の厚み、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みの積の値、コア層の厚みに対する中間膜全体の厚みの比の値、中間膜の一方の主面から最も遠いコア層の一方の主面側の面から一方の主面までの距離および中間膜の他方の主面から最も遠いコア層の他方の主面側の面から他方の主面までの距離は、中間膜の垂直方向（ＴＤ）における中心線上にあるいずれかの箇所で測定された値が、上記中間膜の主面内で各層が均一な厚みを有する場合の範囲、具体的には、中間膜１Ａ、１Ｂで示した範囲となるように設計される。

中間膜の垂直方向（ＴＤ）とは、長尺で製造される中間膜の製造時の流れ方向（中間膜の長さ方向）（ＭＤ）に対する垂直方向（中間膜の幅方向）（ＴＤ）である。中間膜の垂直方向（ＴＤ）における中心線とは、中間膜の垂直方向（ＴＤ）の長さを２等分する中間膜の製造時の流れ方向（ＭＤ）に平行な直線であり、中間膜および各層の厚みの測定点は、該中心線上のいずれの点にあってもよい。中間膜および各層の厚みの測定点について、図３Ａ、図３Ｂに示される中間膜１Ｃを例に以下に説明する。なお、図３Ａ、図３Ｂに示される中間膜１Ｃはウインドシールド用であるが、これに限定されるものではなく、例えばリアガラス、サイドガラスの合わせガラス向け等としても同様である。

図３Ａは、５層の積層膜からなる本発明の中間膜の実施形態の別の一例における正面図であり、図３Ｂは、図３Ａに示す中間膜のＹ−Ｙ線における断面図である。図３Ａに示す中間膜１Ｃは、例えば、自動車のフロントガラス用合わせガラスに用いられる中間膜である。図３Ａにおいて、中間膜１Ｃの上側が、合わせガラスとした際にフロントガラスの上側として自動車に取り付けられる側である。以下、中間膜１Ｃの上側の辺を上辺、下側の辺を下辺という。図３Ｂに示す中間膜１Ｃの断面図においては、左側が上辺側であり右側が下辺側である。

中間膜１Ｃは略同寸、同形の２つの主面Ｓａ、Ｓｂを有する。図３Ａは中間膜１Ｃの主面Ｓｂ側から見た正面図である。図３Ａに示すように中間膜１Ｃの主面Ｓｂは、上辺より下辺が長い略台形の形状である。図３Ｂに示すように中間膜１Ｃは、上辺から下辺に向かって厚みが漸減するいわゆる断面が楔形状の中間膜である。中間膜１Ｃの積層構成は、主面Ｓａ側から主面Ｓｂ側に向かって、スキン層２１、コア層３１、スキン層２２、コア層３２、スキン層２３の順に５層が積層された構成である。スキン層２１、コア層３１、スキン層２２、コア層３２、スキン層２３は、いずれも同じ割合で上辺から下辺に向かって厚みが漸減した構成である。

通常、このような中間膜においては、上辺において一方の端部から他方の端部に向かって中間膜およびこれを構成する各層の厚みは一定であり、下辺において一方の端部から他方の端部に向かって中間膜およびこれを構成する各層の厚みは一定である。

中間膜１Ｃにおける各層の厚みの測定点を図３Ａ、図３Ｂに示す。図３Ａに示す、上辺および下辺の最も外側に位置する点にそれぞれ接する２本の破線は、中間膜１Ｃを得るのに用いた長尺の中間膜１の製造時の流れ方向（中間膜の長さ方向）（ＭＤ）に平行する測定点決定用の直線であり、点線はその垂直方向（ＴＤ）における中心線を示す。図３Ｃは、長尺の中間膜１から略台形の形状の中間膜１Ｃを作製する過程を示す１例の図である。

図３Ａおいて、中間膜１の製造時の流れ方向（中間膜の長さ方向）（ＭＤ）に沿った測定点決定用の２本の直線間の距離をＷで示すと、垂直方向（ＴＤ）における中心線は、上記２本の直線から等距離（Ｗ／２）に位置する。中心線に沿った中間膜１の断面は、例えば、図１に示される断面と同様に各層が断面内で均一な厚みとなる。したがって、中間膜および各層の厚みの測定点については、中心線上のいずれの点であってもよい。本発明の中間膜においては、上記のとおり該測定点において中間膜全体の厚みや中間膜を構成する各層の厚みおよびその関係が本発明の条件を満たすものである。一方、図３Ｃのように中間膜が長尺の状態の場合においては、中間膜１Ｃを切り出す位置に相当する箇所が本発明の条件を満たせばよい。

このように、主面内で各層および中間膜の厚みが異なる場合は、図３Ａ、３Ｃに示すとおり、中間膜の垂直方向（ＴＤ）におけるいずれかの中間点での各層の厚みが本発明の条件を満たせばよく、中間膜１Ｃの場合、図３Ａに示すとおり、中間膜１Ｃの上辺と下辺から等距離となるように引かれた中心線上のいずれかの点の各層の厚みが本発明の条件を満たすものであればよい。なお、中間膜の上辺、下辺が中間膜１Ｃのように曲線の場合や凹凸を有する場合は、図３Ａに示すように、上辺、下辺において最も外側に位置する点を基準に引かれた中間膜製造時の流れ方向（ＭＤ）に平行な２直線を測定点決定用の直線として中心線を求めればよい。

図３Ａ、３Ｂに、中間膜１ＣをＹ−Ｙ線で切った場合の測定点の位置を示す。図３Ｂに、該測定点において測定される中間膜１Ｃ全体の厚みＴを示す。図示しないが該測定点におけるコア層３１厚みをＴ_３１、コア層３２の厚みをＴ_３２、主面Ｓａから最も遠いコア層３２の主面Ｓａ側の面３２ａから主面Ｓａまでの距離をＴａ、主面をＳｂから最も遠いコア層３１の主面Ｓｂ側の面３１ｂから主面Ｓｂまでの距離をＴｂとする。

中間膜１Ｃにおいてコア層平均厚みは、（Ｔ_３１＋Ｔ_３２）／２である。中間膜１Ｃにおける厚みの積の値Ｘは、Ｔ×（Ｔ_３１＋Ｔ_３２）／２で示され、０．１５以上である。中間膜１Ｃにおける厚みの積の値Ｘの好ましい値は、上記のとおりである。中間膜１Ｃにおいては、距離Ｔａおよび距離Ｔｂは上記のとおりそれぞれ０．６〜５．０ｍｍが好ましく、１．０〜４．０ｍｍがより好ましい。距離Ｔａおよび距離Ｔｂは互いに同一であっても異なってもよい。中間膜１Ｃにおける、中間膜全体の厚みＴ、各層の厚みは、上記中心線上のいずれかの測定点の厚みとして、中間膜１Ａの場合と同様の厚みが適用できる。

中間膜１Ｃにおいて、Ｔ／Ｔ_３１およびＴ／Ｔ_３２はいずれも１１以上が好ましく、１５以上がより好ましい。また、Ｔ／Ｔ_３１、Ｔ／Ｔ_３２は上記中間膜１ＡにおけるＴ／Ｔ_３１、Ｔ／Ｔ_３２と同様に５０以下が好ましい。これらの比の値は同じであっても異なってもよい。

合わせガラス用中間膜においては、一般的に、合わせガラスの主面の形状に合わせて中間膜を部分的に伸展して用いる場合がある。その場合、伸展された部分の中間膜の厚みは伸展されなかった部分の中間膜の厚みに比べて小さくなる。このような場合においても、上記断面が楔型の中間膜の場合と同様、中間膜全体の厚み、各層の厚み、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みの積の値、コア層の厚みに対する中間膜全体の厚みの比の値、中間膜の一方の主面から最も遠いコア層の一方の主面側の面から一方の主面までの距離および中間膜の他方の主面から最も遠いコア層の他方の主面側の面から他方の主面までの距離は、中間膜の垂直方向（ＴＤ）における中心線上にあるいずれかの箇所で測定された値が、上記合わせガラスの主面内で各層が均一な厚みを有する場合の範囲、具体的には、中間膜１Ａ、１Ｂで示した範囲となるように設計される。

（その他の層）
実施形態の中間膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の層として、中間膜の層間に機能フィルムを有してもよい。機能フィルムとしては、例えば、赤外線遮蔽フィルム等が挙げられる。赤外線遮蔽フィルムとして、具体的には、２５〜２００μｍ程度の厚みのＰＥＴフィルム等の支持フィルム上に、赤外線反射膜として膜厚１００〜５００ｎｍ程度の、誘電体多層膜、液晶配向膜、赤外線反射材含有コーティング膜、金属膜を含む単層または多層の赤外線反射膜等の従来公知の赤外線反射膜が形成されたものが挙げられる。赤外線遮蔽フィルムとしては、さらに屈折率の異なる樹脂フィルムを積層した合計膜厚が２５〜２００μｍ程度の誘電多層フィルム等が挙げられる。本発明の中間膜が機能フィルムを有する場合、中間膜全体の厚み、中間膜の一方の主面から最も遠いコア層の一方の主面側の面から一方の主面までの距離および中間膜の他方の主面から最も遠いコア層の他方の主面側の面から他方の主面までの距離は機能フィルムを含む厚み、距離である。

［合わせガラス］
本発明の合わせガラスは、互いに対向する１対のガラス板と、該１対のガラス板間に挟持される上記本発明の中間膜を備える。本発明の合わせガラスは、本発明の中間膜を用いることで、中間膜に起因する気泡の発生やその大面積化、特にはＩｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成、成長が抑制された合わせガラスである。

本発明の合わせガラスは、中間膜として本発明の中間膜を用いる以外は、通常の合わせガラスと同様の構成とできる。図４は、図１に示す中間膜１Ａを用いた合わせガラスの実施形態の一例の断面図である。合わせガラス１０は、互いに対向する１対のガラス板４Ａ、４Ｂと、ガラス板４Ａ、４Ｂの間に挟持される中間膜１Ａを有する。

（ガラス板）
合わせガラス１０における１対のガラス板４Ａ、４Ｂの板厚は、合わせガラス１０の用途により適宜選択できるが、一般的にはそれぞれ０．１〜１０ｍｍとすることができ、遮音性および軽量化の観点から０．３〜２．５ｍｍが好ましい。

１対のガラス板４Ａ、４Ｂの板厚は、互いに同じであってもよく、異なってもよい。ガラス板４Ａ、４Ｂにおいて板厚が異なる場合には、合わせガラス１０が窓等に設置される際に内側に位置するガラス板、例えば、自動車の窓ガラスであれば車内側、建築物の窓ガラスであれば屋内側に位置するガラス板の板厚が外側に位置するガラス板の板厚より小さいことが好ましい。

例えば、合わせガラス１０において、使用に際して内側に位置するガラス板が、ガラス板４Ａである場合、ガラス板４Ａの板厚は、０．４〜１．６ｍｍが好ましく、０．６〜１．５ｍｍがより好ましい。また、ガラス板４Ａの板厚は、ガラス板４Ｂの板厚より小さいことが好ましい。ガラス板４Ａの板厚とガラス板４Ｂの板厚の差は０．３〜１．５ｍｍが好ましく、０．５〜１．３ｍｍがより好ましい。またこの場合、ガラス板４Ｂが外側に位置するガラス板であり、板厚は１．６〜２．５ｍｍが好ましく、１．７〜２．１ｍｍがより好ましい。

合わせガラスの使用に際して外側に位置するガラス板が内側に位置するガラス板より大きい板厚を有すると、耐飛び石衝撃性の点で好ましい。特に、外側の板厚みが１．３ｍｍ以上であることが好ましい。

合わせガラス１０に用いるガラス板４Ａ、４Ｂの材質としては、透明な無機ガラスや有機ガラス（樹脂）が挙げられる。無機ガラスとしては通常のソーダライムガラス（ソーダライムシリケートガラスともいう）、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。成形法についても特に限定されないが、例えば、フロート法等により成形されたフロート板ガラスであってもよい。また、ガラス板４Ａ、４Ｂが風冷強化や化学強化といった強化処理がなされていることが好ましい。

有機ガラス（樹脂）としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールＡとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂のなかでも特にビスフェノールＡ系ポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、ガラス板は、上記のような樹脂を２種以上含んで構成されてもよい。

また、ガラス板４Ａ、４Ｂは、上記無機ガラスや有機ガラス（樹脂）に赤外線吸収剤や紫外線吸収剤等を含有させて、赤外線吸収性や紫外線吸収性を付与したガラス板であってもよい。このようなガラス板として、グリーンガラス板、紫外線吸収（ＵＶ）グリーンガラス板等を使用することができる。なお、ＵＶグリーンガラス板とは、ＳｉＯ_２を６８質量％以上７４質量％以下、Ｆｅ_２Ｏ_３を０．３質量％以上１．０質量％以下、かつＦｅＯを０．０５質量％以上０．５質量％以下含有するものであって、波長３５０ｎｍの紫外線透過率が１．５％以下、かつ５５０ｎｍ以上１７００ｎｍ以下の領域に透過率の極小値を有する紫外線吸収グリーンガラスを指す。

上記ガラスとしては、着色成分を添加しない無色透明な材質を用いてもよく、あるいは、本発明の効果を損なわない範囲で上記グリーンガラスのように着色された着色透明な材質を用いてもよい。さらには、これらのガラスは１種類もしくは２種類以上を組合せて用いてもよく、例えば、２層以上に積層された積層基板であってもよい。合わせガラスの適用箇所にもよるがガラスとしては、無機ガラスが好ましい。

合わせガラス１０に用いる１対のガラス板４Ａ、４Ｂは、互いに異なった種類の材質から構成されてもよいが、同一であることが好ましい。ガラス板４Ａ、４Ｂの形状は平板でもよく、全面または一部が曲率を有していてもよい。ガラス板４Ａ、４Ｂには、大気に晒される表出面に、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されていてもよい。また、ガラス板４Ａ、４Ｂの互いに対向する対向面には、低放射性コーティング、赤外線遮蔽コーティング、導電性コーティング等の通常金属層を含む機能コーティングが施されていてもよい。

なお、ガラス板４Ａ、４Ｂの対向面が上記機能コーティングを有する場合には、以下の中間膜１Ａのスキン層２１、２３はガラス板４Ａ、４Ｂの対向面上の該機能コーティングに接する構成となる。

本発明の合わせガラスは、温度２０℃の条件下、０〜１００００Ｈｚの周波数領域で測定される１次共振点における損失係数が０．２以上であることが好ましい。以下、１次共振点とは特に断りのない限り温度２０℃の条件下、０〜１００００Ｈｚの周波数領域で測定される１次共振点をいう。

なお、１次共振点における損失係数は、ＩＳＯ＿ＰＡＳ＿１６９４０に準拠した中央加振法により測定できる。中央加振法による損失係数の測定装置としては、例えば、小野測器社製、中央加振法測定システム（ＭＡ−５５００、ＤＳ−２０００）が挙げられる。本発明の合わせガラスにおける１次共振点の周波数領域は、概ね０〜３００Ｈｚである。本発明の合わせガラスにおいて、１次共振点における損失係数が０．２以上であれば、例えば、自動車のエンジン音や、タイヤの振動音等の比較的低周波数領域の音を十分に遮音することができる。また、本発明の合わせガラスにおいて、１次共振点における損失係数が０．３以上であれば、２次共振点〜７次共振点等の高次共振点における損失係数についても、相対的に高く、例えば、０．２以上になりやすく、低周波数領域〜高周波領域の音まで効率的に遮音することができる。

本発明の合わせガラスにおいて、１次共振点における損失係数は、０．３以上がより好ましい。なお、例えば、湾曲した形状の合わせガラスにおいては、当該合わせガラスと同等の構成となるように平らなガラス板を使用した合わせガラスを作製して損失係数が測定される。

本発明の合わせガラスはさらに、三点曲げ剛性が１００Ｎ／ｍｍ以上であることが好ましい。三点曲げ剛性は、三点曲げ試験により得られる剛性であり、例えば、圧縮引張試験機により測定できる。三点曲げ剛性は１２０Ｎ／ｍｍ以上が特に好ましい。合わせガラスの三点曲げ強度剛性が１００Ｎ／ｍｍ以上であれば、車両高速走行時のガラス開閉を妨げないレベルの剛性であり好ましい。

本発明の合わせガラスはまた、ＳＡＥ Ｊ１４００に準拠して測定されるコインシデンス領域における音響透過損失が３５ｄＢ以上であることが好ましく、４２ｄＢ以上であることが特に好ましい。合わせガラスの音響透過損失が３５ｄＢ以上であれば、遮音性に優れると評価できる。

（その他の層）
実施形態の合わせガラスは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の層を有してもよい。その他の層としては、例えば、合わせガラスの枠体等への取り付け部分や配線導体等を隠蔽する目的で、合わせガラスの周縁部の一部または全部に帯状に配設される黒色セラミックス層が挙げられる。黒色セラミックス層の幅は、合わせガラスの用途に応じて適宜選択される。例えば、合わせガラスが、自動車の天井部位に使用されるルーフガラスの場合には、黒色セラミックス層は、通常、幅が１０〜１００ｍｍ程度の額縁状に形成される。また、自動車のサイドガラスに用いる場合は、通常、幅が３０〜２００ｍｍ程度の帯状に形成されることがある。

黒色セラミックス層は、例えば、合わせガラスが有する１対のガラス板のうちのいずれか一方のガラス板の大気側または中間膜側の主面に、通常の方法で、上記の形状に形成できる。黒色セラミックス層の形成箇所は使用用途に応じて適宜選択される。

なお、黒色セラミックス層の「黒色」は、例えば、色の三属性等で規定された黒を意味するものではなく、少なくとも隠蔽が求められる部分が隠蔽できる程度に可視光線を透過させないように調整された黒色と認識可能な範囲を含む。したがって、黒色セラミックス層においては、この機能が果たせる範囲内で、必要に応じて黒色に濃淡があってもよく、色味が色の三属性で規定された黒とは若干異なってもよい。同様の観点から、黒色セラミックス層は配設される箇所に応じて層全体が連続した一体膜となるように構成されてもよく、形状や配置等の設定で可視光透過の割合を容易に調整できるドットパターン等により構成されてもよい。

また、本実施形態の合わせガラスはシェード領域を有していてもよい。合わせガラスが車両用の合わせガラス、特にウインドシールドである場合には、防眩性、遮熱性などの向上のために、グリーン、ブルーなどに着色した帯状のシェード領域が形成されることがある。シェード領域は、ガラス板の表面に設けられることもあるが、中間膜を帯状に着色することにより形成されることが多い。その一方で、可視光線透過率を所定値以上（例えば７０％以上）とするべき法定の視野領域があるため、ウインドシールドのシェード領域は、視野領域の外であるウインドシールドの上部に通常は配置される。

（合わせガラスの製造）
本発明の実施形態の合わせガラスは、一般的に用いられる公知の技術により製造できる。合わせガラス１０においては、上記のようにしてスキン層２１、コア層３１、スキン層２２、コア層３２、スキン層２３の順に積層した中間膜１Ａを作製し、あるいは各層の製膜時に共押出しで中間膜１Ａを作製し、これを１対のガラス板４Ａ、４Ｂの間に挿入して、ガラス板４Ａ、中間膜１Ａ（ただし、ガラス板４Ａ側にスキン層２１が位置する）、ガラス板４Ｂの順に積層された圧着前の合わせガラスである合わせガラス前駆体を準備する。その他の層を有する場合も、同様に得られる合わせガラスと同様の積層順にガラス板と各層を積層してガラス前駆体を準備する。

この合わせガラス前駆体をゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−６５〜−１００ｋＰａの減圧度（絶対圧力）となるように減圧吸引（脱気）しながら温度約７０〜１１０℃で接着することで実施形態の合わせガラスを得ることができる。さらに、例えば、１００〜１４０℃、圧力０．６〜１．３ＭＰａの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラスを得ることができる。

本発明の合わせガラスの用途は特に限定されない。建築用合わせガラス、自動車用合わせガラス等として使用できるが、自動車用合わせガラとして用いればより顕著な遮音効果が達成できる。さらに、好ましい態様において軽量化を達成できる。

なお、本発明の合わせガラスを自動車用に用いる場合、ＪＩＳ Ｒ３２１２（１９９８年）にしたがって測定された可視光線透過率が７０％以上であることが好ましく、７４％以上であることがより好ましい。ＩＳＯ１３８３７−２００８にしたがって測定されたＴｔｓ（Total solar energy transmitted through a glazing）が６６％以下であることが好ましく、６０％以下であることがより好ましい。

以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下で説明する実施形態および実施例に何ら限定されるものではない。例１、２が実施例であり、例３〜６が比較例である。

［例１〜例６］
各例において表１に示す積層構成の中間膜を製造した。なお、中間膜におけるスキン層には厚み以外は全て同じＰＶＢシート（貯蔵弾性率Ｇ’ｓ；１．９×１０^７Ｐａ）を用いた。また、コア層としては全て厚みが０．１ｍｍのＰＶＢシート（貯蔵弾性率Ｇ’ｃ；０．１×１０^６Ｐａ）を用いた。なお、表１中、「−」は、該当の層がないことを示す。例１、５、６の中間膜は、図１に示す中間膜１Ａと同じ積層構成の中間膜である。例２の中間膜は、図２に示す中間膜１Ｂと同じ積層構成の中間膜である。例３、４は１層のコア層を２層のスキン層で挟持した構成の３層構造の中間膜である。全ての例において、スキン層２１側の主面がＳａ、それとは反対側の主面がＳｂである。

なお、各例の中間膜は各層を構成するＰＶＢシートを積層してホットプレス成形機にて、１５０℃、３００秒間、プレス圧５０ｋｇ／ｃｍ^２でプレスして製造した。各層の厚みはプレス後の厚みである。

表１には、各例で得られた中間膜の各層の厚みとともに、中間膜の全体の厚みＴ、コア層数、コア層平均厚み、コア層平均厚みと中間膜全体の厚みＴの積の値（厚みの積の値Ｘ）、各コア層の厚みに対する中間膜全体の厚みの比の値Ｔ／Ｔ_３１、Ｔ／Ｔ_３２、Ｔ／Ｔ_３３、主面Ｓａから最も遠いコア層の主面Ｓａ側の面から主面Ｓａまでの距離Ｔａ、主面Ｓｂから最も遠いコア層の主面Ｓｂ側の面から主面Ｓｂまでの距離Ｔｂを示す。

（評価）
上記で得られた中間膜を用いて、評価用の合わせガラスを以下のとおり作製して、遮音性を評価し、さらに、発泡試験に供して発泡抑制効果を評価した。結果を表１の最下欄に示す。

＜合わせガラスの作製＞
各例において上記のようにして製造した中間膜を、１対のガラス板間に挟み込むように積層して積層体とし、この積層体を真空バッグに入れ、絶対圧力が−６７ｋＰａとなる減圧度で脱気しながら１１０℃で接着を行った後、温度１４０℃、圧力１．３ＭＰaの条件でさらに圧着を行うことにより合わせガラスを得た。なお、用いたガラス板は全てソーダライムガラスからなるガラス板（３００ｍｍ×３００ｍｍ、厚み２ｍｍ）であり、中間膜のサイズは予めガラス板と同じサイズにして積層に用いた。

（１）発泡試験
上記で得られた合わせガラスを８０℃のオーブンに投入し１４０時間保持した後、オーブンから取り出して発泡面積を測定した。発泡面積の測定は、発泡試験後の合わせガラスを正面からデジタルカメラで撮影し、画像処理ソフトｉｍａｇｅＪ（バージョン１．４９）を用いて、発泡部位の面積を算出することで行った。なお、発泡部位の面積は具体的には、目視で発泡部位の輪郭を確定し、輪郭で囲まれる部分の面積を機械的に測定して算出した。例１〜例６の中間膜を用いた合わせガラスの発泡試験後の写真を図５に示す。

（２）遮音性（損失係数）
上記で得られた合わせガラスについて、周波数０〜１００００Ｈｚ、温度２０℃における１次共振点における損失係数を、ＩＳＯ＿ＰＡＳ＿１６９４０に準拠し、小野測器社製、中央加振法測定システム（ＭＡ−５５００、ＤＳ−２０００）を用いて測定した。

表１および図５から、実施例の中間膜を用いた合わせガラスは、遮音性を有するとともに、発泡面積が小さく、Ｉｃｅ Ｆｌｏｗｅｒ状発泡の形成もなく発泡抑制効果に優れることが明らかである。

１Ａ，１Ｂ，１Ｃ…合わせガラス用中間膜、２１，２２，２３，２４…スキン層、３１，３２，３３…コア層、４Ａ，４Ｂ…ガラス板、１０…合わせガラス。

Claims (8)

1. 周波数１Ｈｚ、振り角ｇａｍｍａ０．０１％、温度２０℃の条件下、動的粘弾性試験により測定される貯蔵弾性率が１．０×１０^６Ｐａ以上であるスキン層と、前記貯蔵弾性率が１．０×１０^６Ｐａ未満であるコア層が交互に積層され、前記コア層を２層以上有する合わせガラス用中間膜であって、前記コア層の各層の厚み（ｍｍ）を平均した値と前記合わせガラス用中間膜全体の厚み（ｍｍ）の積の値が０．１５以上であり、前記合わせガラス用中間膜の２つの最表層が前記スキン層からなる合わせガラス用中間膜。
2. 前記合わせガラス用中間膜の一方の主面から最も遠いコア層の前記一方の主面側の面から前記中間膜の一方の主面までの距離および、前記合わせガラス用中間膜の他方の主面から最も遠いコア層の前記他方の主面側の面から前記中間膜の他方の主面までの距離が、それぞれ０．６〜５．０ｍｍである請求項１記載の合わせガラス用中間膜。
3. 前記合わせガラス用中間膜の全体の厚みが０．８〜５．２ｍｍである請求項１または２記載の合わせガラス用中間膜。
4. 前記コア層を３層以上有する請求項１〜３のいずれか１項に記載の合わせガラス用中間膜。
5. 前記スキン層の貯蔵弾性率から前記コア層の貯蔵弾性率を引いた値が、２．０×１０^６Ｐａ〜３．０×１０^７Ｐａの範囲にある請求項１〜４のいずれか１項に記載の合わせガラス用中間膜。
6. 前記コア層の厚みに対する前記合わせガラス用中間膜全体の厚みの比の値が全てのコア層について１１以上である請求項１〜５のいずれか１項に記載の合わせガラス用中間膜。
7. 前記コア層の厚みに対する前記合わせガラス用中間膜全体の厚みの比の値が全てのコア層について１５以上である請求項１〜６のいずれか１項に記載の合わせガラス用中間膜。
8. 互いに対向する１対のガラス板と、前記１対のガラス板間に挟持される請求項１〜７のいずれか１項に記載の合わせガラス用中間膜とを備える合わせガラス。