以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
相対的又は絶対的な位置関係を示す表現(例えば「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」等)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度又は距離に関して変位された状態も表すものとする。
<1. 実施形態>
図1は、実施形態のX線撮影装置10を示す側面図である。図2は、斜め上方から見た撮影部20を示す斜視図である。図3は、斜め下方から見た撮影部20を示す斜視図である。図4は、実施形態の撮影部20の図解的な概略側面図である。図3及び図4では、セファロユニット66を省略している。図5は、実施形態の上部フレーム64の図解的な概略平面図である。図6は、実施形態の上部フレーム64の図解的な概略側面図である。
各図においては、右手系の直交座標系であるX軸、Y軸、Z軸、及び、右手系の直交座標系であるx軸、y軸、z軸を示している。ここでは、X軸、Y軸、x軸及びy軸は水平方向であり、Z軸及びz軸は鉛直方向である。各軸において、矢印の先端が向く方向を+(プラス)方向とし、その逆方向を−(マイナス)方向とする。
XYZ直交座標系は、X線撮影装置10における固定部分(例えば、支柱部70など)上に定義されている座標系である。撮影部20に導入された被検者M1の頭部MH(被写体)が被写体保持部72に保持されている状態で、被検者M1から見て、頭部MH前方が+Y方向、頭部MH後方が−Y方向、右手方向が+X方向、左手方向が−X方向、上方向が+Z方向、下方向が−Z方向である。
xyz直交座標系は、基台7Bに設けられている支柱部70などの固定部分に対して相対的に回転する旋回アーム62上に定義されている座標系である。X線発生部40からX線検出部50を正面に向かって見たときの、前方向が+y方向、後方向が−y方向、右手方向が+x方向、左手方向が−x方向、上方向が+z方向、下方向が−z方向である。z軸方向は、Z軸方向と平行な鉛直方向である。旋回アーム62はZ軸方向及びz軸方向に平行な回転軸線65Aまわりに回転する。この旋回アーム62の回転により、xyz直交座標系もz軸方向まわりに回転する。
X線撮影装置10は、撮影部20及び画像処理装置30を備えている。撮影部20は、被検者M1についてX線撮影を行い、X投影データを収集する。撮影部20は、X線室22に収容された状態で使用されてもよい。画像処理装置30は、撮影部20が収集したX線投影データを処理して、パノラマ画像、CT画像及びセファロ画像を含む各種X線画像を生成する。
<撮影部20>
撮影部20は、X線発生部40、X線検出部50、旋回アーム62(支持部)、支柱部70及び本体制御部80を備える。以下、これらの各要素の構成又は機能を説明する。
<X線発生部40>
図4に示すように、X線発生部40は、X線発生器42及びビーム形状調整部44を備えている。X線発生器42及びビーム形状調整部44は、筐体46内に収容されている。筐体46は、旋回アーム62に支持されている。
X線発生器42は、X線を発生させるX線源であるX線管を備えている。X線発生器42から出射されるX線ビームの強度である出力強度は、X線管42T(図4参照)に供給される電圧及び電流のうち少なくとも一方を変更することによって制御される。X線発生器42の制御、すなわち、電圧量及び電流量のうち少なくとも一方の制御は、本体制御部80の照射制御部803からの制御指令に応じて行われる。
ビーム形状調整部44は、X線発生器42から出射されるX線ビームの広がりを規制し、撮影目的に応じた形状にX線ビームを調整する。ビーム形状調整部44は、被検者M1に対するX線の照射範囲(照射領域)を制御する。ビーム形状調整部44は、照射制御部803からの制御指令に応じて動作する。
図7は、実施形態のビーム形状調整部44を示す概略正面図である。図8は、実施形態のビーム形状調整部44の概略正面図である。図9は、実施形態のビーム形状調整部44の概略正面図である。図7は大照射野のCT撮影時、図8はパノラマX線撮影時、図9は小照射野のCT撮影時のビーム形状調整部44をそれぞれ示している。
ビーム形状調整部44は、図7及び図8に示すように、X線発生器42に近接する位置に配された4枚の遮蔽部材441,442,443,444を含む。遮蔽部材441−444は、鉛等のX線を吸収する材料で構成されており、長方形の板状である。
遮蔽部材441,442はX線発生器42の出射口に向かって上側(+z側)及び下側(−z側)の位置各々に配されており、それぞれの長辺がx軸方向と平行となるように配置されている。ビーム形状調整部44は、遮蔽部材441,442各々を縦方向(z軸方向)に移動させる移動機構(不図示)を備えている。当該移動機構は、例えばボールネジ機構又はリニアモータ機構であってもよい。
遮蔽部材443,444はX線発生器42の出射口に向かって左側(+x側)及び右側(−x側)の位置各々に配されており、それぞれの長辺がz軸方向と平行になるように配置されている。ビーム形状調整部44は、遮蔽部材443,444各々を横方向(x軸方向)に移動させる移動機構(不図示)を備えている。当該移動機構は、ボールネジ機構又はリニアモータ機構であってもよい。
遮蔽部材441−444各々の位置が、各移動機構によって制御されることによって、遮蔽部材441,442の対向する縁部441a,442a、及び、遮蔽部材443,444の対向する縁部443a,444aで囲まれる開口445が、撮影目的に応じた形状、寸法とされる。
例えば、図7に示すように、縁部441a,442a間の距離、及び、縁部443a,444a間の距離が比較的大きく調整されると、開口445が正面視において正方形状となる。X線発生器42から出射されたX線ビームは、この正方形状の開口445を通過することにより、X線検出部50に向けて正四角錐台状に広がるX線コーンビームに成形される。当該X線コーンビームは、大照射野CT撮影に適合する。
図8に示すように、縁部443a,444a間の距離が比較的小さく、かつ、縁部441a,442a間の距離が大きく調整されると、開口445が正面視において縦長の長方形状となる。X線発生器42から出射されたX線ビームは、この長方形状の開口445を通過することにより、縦長の角錐台状に広がるX線細隙ビームに成形される。当該X線細隙ビームは、パノラマX線撮影に適合する。
ビーム形状調整部44は、遮蔽部材441−444の代わりに、図9に示す遮蔽部材446,447を備えていてもよい。遮蔽部材446,447は、L字状の板状に形成された板状の部材である。遮蔽部材446,447の内角部各々である縁部446a,447aが組み合わさることにより、開口448が形成される。遮蔽部材446,447各々は、移動機構(不図示)によって、縦方向(z軸方向)及び横方向(x軸方向)に移動可能とされている。遮蔽部材446,447の位置がこの移動機構によって調整されることにより、開口448の形状が調整される。図示のように、開口448の四辺のそれぞれの対向辺が図7に示すほどは離隔していない状態で形成されるX線コーンビームは小照射野CT撮影に適合する。無論、図7、図8に示す4枚の遮蔽部材441,442,443,444によっても、同じ広さの開口は形成しうる。
図7から図9に示すビーム形状調整部44は、複数の遮蔽部材441−444又は遮蔽部材446,447、及び、これらを移動させる移動機構を含む。しかしながら、ビーム形状調整部44は、撮影目的に応じた複数の開口が形成された単一の遮蔽部材と、移動機構とによっても構成され得る。この場合、撮影目的に応じて、X線発生器42から出射されたX線ビームが撮影目的に応じた開口を通過するように、単一の遮蔽部材を移動機構により移動させるとよい。
<X線検出部50>
図4に示すように、X線検出部50は、X線検出器52を備えている。X線検出器52は、X線発生部40から出射されたX線ビームを検出する。X線検出器52は、平面上に広がる検出面を有するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)又はX線蛍光増倍管(I.I:Image Intensifier)等で構成してもよい。
X線検出器52の検出面に配された複数の検出素子は、入射したX線の強度を電気信号に変換する。そして、その電気信号は、出力信号として本体制御部80又は画像処理装置30に入力される。本体制御部80又は画像処理装置30は、その信号に基づいてX線投影画像を生成する。
X線検出器52は、筐体54の内部においてX線発生器42に向く側面に設けられている。X線発生器42から出射されたX線ビームは、X線検出器52の検出面に照射される。筐体54は、X線検出器52が収容されている状態で、旋回アーム62に支持されている。
<旋回アーム62>
旋回アーム62は、回転軸65を介して上部フレーム64に吊り下げ状に支持されている。旋回アーム62の一端部には筐体46が取り付けられており、旋回アーム62の他端部には筐体54が取り付けられている。すなわち、旋回アーム62は、一端側にて筐体46を介してX線発生器42を支持し、かつ、他端側にて筐体54を介してX線検出器52を支持する。
筐体46,54及び旋回アーム62の内部は、一連の空洞を形成している。この空洞内には、X線発生部40及びX線検出部50の各要素を動作させるための配線(信号配線、電源配線、制御配線など。)が配設される。筐体46,54及び旋回アーム62の適宜の位置に、配線や制御基盤を取り付けるための作業用の開口及び放熱するための開口等を設けてもよい。
図1から図4に示すように、上部フレーム64は、支柱部70に取り付けられている。上部フレーム64の中間部には、Z軸方向に延びる回転軸65が取り付けられており、その回転軸65の端部は、旋回アーム62における、X線発生部40及びX線検出部50を支持する部分間の中間位置に接続されている。このため、旋回アーム62は、回転軸65を介して、上部フレーム64につり下げ状態で支持されている。
図6に示すように、旋回アーム62の内部には、旋回駆動部642が設けられている。旋回駆動部642は、旋回アーム62の内部に設けられた旋回用モータ6421を回転させることにより、回転軸65を回転中心にして旋回アーム62を旋回させる。旋回駆動部642は、図6に示すように、旋回用モータ6421及び無端ベルト6422を備えている。旋回駆動部642(具体的には、旋回用モータ6421)は、支持体制御部802によって制御される。無端ベルト6422は、旋回用モータ6421と回転軸65とに掛け渡されている。旋回用モータ6421の駆動により無端ベルト6422が回転されることにより、旋回アーム62が回転する。
回転軸65と旋回アーム62の間には、ベアリング6423(図6参照)が介在している。ベアリング6423により、回転軸65に対して旋回アーム62がスムーズに回転する。
旋回駆動部642は、上部フレーム64の内部に設けられていてもよい。この場合、上部フレーム64に対して回転可能にされた回転軸65を、回転軸65に固定された旋回アーム62と共に回転させる構成となる。
回転軸65の内側には、機械的に旋回アーム62が旋回する軸となる回転軸線65Aが設定されている。図4に示すように、旋回アーム62、筐体46及び筐体54は、旋回部67を構成する。上部フレーム64は回転軸65を介して旋回部67を支持する旋回支持部64Aである。旋回アーム62が回転軸65の軸周りに旋回することにより、旋回部67は回転軸線65Aまわりに旋回する。
旋回アーム62は、一端側にて筐体46を支持しており、その反対の他端側にて筐体54を支持している。これによって、旋回アーム62が、回転軸線65Aを間に挟んだ一部でX線発生器42を支持し、他の一部でX線検出器52を支持する。すなわち、支持部がX線発生器42とX線検出器52とを対向させた状態で被検者M1を挟んで回転可能に支持する。
上部フレーム64の内部には、回転軸65をX軸方向及びY軸方向に移動させる水平駆動部644が備えられている。水平駆動部644は、回転軸65をX軸方向及びY軸方向に移動させることにより、旋回アーム62をX軸方向及びY軸方向に移動させる。水平駆動部644は、図5に示すXYテーブル6440及び駆動用モータ6442を備えている。
XYテーブル6440は、Xテーブル6440X及びYテーブル6440Yを備えている。Xテーブル6440Xは、旋回アーム62を横方向(X軸方向)に移動させる。Yテーブル6440Yは、旋回アーム62を前後方向(Y軸方向)に移動させる。Xテーブル6440Xは、Yテーブル6440Yに固定されており、Yテーブル6440YのY軸方向における移動に伴って、Y軸方向に移動する。駆動用モータ6442は、Xテーブル6440Xを駆動するX軸駆動用モータ6442Xと、Yテーブル6440Yを駆動するY軸駆動用モータ6442Yとを備えている。
X線撮影装置10では、水平駆動部644は、本体制御部80の支持体制御部802からの制御指令に応じて動作する。水平駆動部644によって、回転軸65は、旋回駆動部642とともにX軸方向及びY軸方向に移動する。回転軸65は、XY平面内にて移動可能であるとともに、XY平面内の移動後の位置において、回転軸65の軸心位置となるZ軸まわりに回転する。
水平駆動部644は、旋回アーム62の内部に設けられてもよい。この場合、上部フレーム64のXY平面内における一定位置に固定された回転軸65の他端が、旋回アーム62内に設けられたXYテーブル6440に固定される。そして、XYテーブル6440がX軸方向及びY軸方向に移動することにより、一定位置にある回転軸65に対して旋回アーム62がX軸方向及びY軸方向に移動する。
旋回駆動部642及び水平駆動部644の双方は、旋回アーム62の内部に設けられてもよい。この場合、XY平面内の一定位置に固定され、かつ、回転しない回転軸65に対して、旋回アーム62が相対的にX軸方向及びY軸方向に移動するとともに、相対的に回転する。
図4に示すように、支柱部70には、鉛直駆動部646(上下移動駆動部)が取り付けられている。鉛直駆動部646は、上部フレーム64をZ軸方向に昇降させる。鉛直駆動部646は、モータ6462、ボールネジ6464、ナット部6466及び複数(ここでは4つ)のローラ部6468を備えている。
モータ6462は、Z軸方向に延びるボールネジ6464を、Z軸まわりに回転させる。ナット部6466は、ボールネジ6464に螺合している。ローラ部6468各々は、支柱部70に設けられた一対のレール部702に昇降移動可能に係合しており、一対のレール部702の延びる方向(Z軸方向)にのみ移動するように移動方向が規制されている。
図4に示す例では、基台7B上に配置されたモータ6462が支柱部70の下部に取り付けられており、ナット部6466が上部フレーム64に固定されている。ローラ部6468各々は上部フレーム64に取り付けられている。
モータ6462がボールネジ6464を時計回り又は反時計回りに回転させることにより、ナット部6466がボールネジ6464に沿って上方向又は下方向に移動する。ローラ部6468各々が、一対のレール部702上を移動することにより、上部フレーム64がZ軸方向に昇降する。上部フレーム64の昇降移動に伴って、旋回アーム62に支持されたX線発生部40及びX線検出部50がZ軸方向に移動する。鉛直駆動部646は、上部フレーム64を上下移動させることによって旋回アーム62及び上部フレーム64を上下移動させる、上下移動駆動部の一例である。
<セファロユニット66>
セファロユニット66は、頭部X線規格写真を取得するために使用されるユニットである。図1及び図2に示すように、セファロユニット66は、上部フレーム64から水平方向に延びるアーム648の先端部分に設けられている。セファロユニット66は、頭部固定具660、二次スリット機構662及びX線検出器664を備えている。
頭部固定具660は、頭部MHを位置付けする装置であり、ここでは、一対の棒状の先端部が頭部MHの両側の耳内に挿入されることにより両耳部を位置付けするイヤロッド、及び、頭部MHの額等に当接して頭部を位置付けする額ロッドなどを含む。ここでは、頭部MHは、その前方が+X側を向くように頭部固定具660により位置付けされる。
二次スリット機構662は、Z軸方向に延びるスリットが形成されたスリット部材と、当該スリット部材をY方向に移動させる移動機構とを備えている。X線発生器42から出射されたX線のうち、スリットを通過したX線が、頭部固定具660に固定された頭部MHに照射される。セファロ撮影においては、スリット部材がX軸方向に移動することにより、頭部MHがX線によって走査される。
X線検出器664は、頭部固定具660によって位置付けされた頭部MHを透過したX線を検出する。X線検出器664は、X線を検出するX線検出器、及び、当該X線検出器をY軸方向に移動させる移動機構を備えている。X線検出器は、二次スリット機構662のスリットの形状に対応した、+Z方向に延びる検出面を有している。移動機構は、スリット部材のY軸方向における移動に合わせて、X線検出器をY軸方向に移動させる。これにより、X線検出器が、スリットを通過して頭部MHを透過したX線を検出する。
図10は、セファロ撮影時のX線照射経路を示す平面図である。X線撮影装置10においてセファロ撮影が行われる場合、図10に示すように、旋回アーム62が所定の角度だけ回転すると共に、筐体46がX線検出部50との対向関係を解いてセファロ撮影用X線検出器664に向くように回転する。これにより、X線検出部50がX線発生部40からセファロユニット66を結ぶ線上から外れた位置に配される。そして、X線発生部40の筐体46が旋回アーム62に対してZ軸まわりに回動することにより、X線発生器42のX線の出射口(ビーム形状調整部44の開口445)がセファロユニット66のX線検出器664に向けられる。なお、筐体46を回動させる機構は、手動で操作できるものであってもよいし、本体制御部80の制御によって動作するものであってもよい。X線発生部40及びセファロユニット66が、図10に示す位置関係に配された状態で、X線発生部40からX線ビームが出射されることにより、セファロ撮影が実行される。
<支柱部70>
支柱部70は、Z軸方向に延びる長尺部材であり、上部フレーム64及び被写体保持部72を支持する。
<被写体保持部72>
被写体保持部72.は、被検者M1の頭部MHを保持する。被写体保持部72は、チンレスト722、ヘッドホルダ723、下部フレーム724、アーム部726及び保持部駆動部728を備えている。
チンレスト722は、頭部MHの下顎の先端部を支持することにより、頭部MHを保持する。また、ヘッドホルダ723は、頭部MHを両側から挟持することにより、X軸方向において頭部MHを位置付けする。チンレスト722及びヘッドホルダ723は、アーム部726を介して下部フレーム724に接続されている。チンレスト722及びヘッドホルダ723等で構成され、被検者M1の頭部MHを固定する機械的要素は、頭部保持部72Hとして、被写体保持部72またはその一部を構成する。
下部フレーム724は、支柱部70に取り付けられており、Z軸方向に移動する。下部フレーム724がZ軸方向に移動することにより、アーム部726に固定されたチンレスト722がZ軸方向に移動する。
アーム部726は、チンレスト722を下部フレーム724に接続する部材である。図4に示す例では、アーム部726は、下部フレーム724からXY平面に平行に延びる部分と、Z軸に延びてチンレスト722に接続する部分とで構成されている。
保持部駆動部728は、モータ7282、ボールネジ7284、ナット部7286及び複数(ここでは4つ)のローラ部7288を備えている。
モータ7282は、Z軸方向に延びるボールネジ7284をZ軸まわりに回転させる。ナット部7286は、ボールネジ7284に螺合している。ローラ部7288各々は、一対のレール部702に係合している。これにより、ローラ部7288各々が一対のレール部702の延びる方向(Z軸方向)にのみ移動するように、ローラ部7288各々の移動方向が規制される。
図4に示す例では、モータ7282及びボールネジ7284は、下部フレーム724に固定されている。ナット部7286は、上部フレーム64に固定されている。図示の例では、ボールネジ7284は下部フレーム724の頂部から+Z方向に延出し、上部フレーム64の底部近傍に固定されたナット部7286と螺合するようになっている。ローラ部7288各々は、下部フレーム724に取り付けられている。
モータ7282がボールネジ7284を時計回り又は反時計回りに回転させることにより、下部フレーム724が上部フレーム64に固定されたナット部7286に対して上下方向に移動する。このとき、ローラ部7288各々が一対のレール部702に沿って移動することにより、下部フレーム724がZ軸方向に移動する。
下部フレーム724がZ軸方向に移動することにより、チンレスト722がZ軸に平行に移動する。頭部MHの高さを一定のところに維持したまま、頭部MHに対して旋回アーム62を相対的に昇降させることにより、頭部MHにおけるX線の照射箇所がZ軸方向に変更される。具体的には、実際の頭部MHの位置に合わせて、旋回アーム62及び被写体保持部72を鉛直駆動部646によって昇降させ、頭部MHを頭部保持部72Hに固定する。その後に、鉛直駆動部646によって旋回アーム62を上昇させるとともに、保持部駆動部728によって被写体保持部72を同じ変位量で下降させる。これによって、頭部MHの高さを一定に保ちながら頭部に対する旋回アーム62の位置を上昇させることができる。あるいは、鉛直駆動部646によって旋回アーム62を下降させるとともに、保持部駆動部728によって被写体保持部72を同じ変位量で上昇させる。これによって、頭部MHの高さを一定に保ちながら頭部に対する旋回アーム62の位置を下降させることができる。
旋回アーム62及び被写体保持部72(頭部保持部72H)は、鉛直駆動部646によって、一体的に上下移動される。また、被写体保持部72は、保持部駆動部728によって、旋回アーム62に対して相対的に上下移動される。つまり、旋回アーム62及び被写体保持部72は、鉛直駆動部646及び保持部駆動部728によって、それぞれ独立に上下移動可能となっている。
チンレスト722及びヘッドホルダ723のZ軸方向の位置を変更することにより、被検者M1の頭部MHが支持される位置を変更してもよい。例えば、直立姿勢の被検者M1の頭部MHの位置に合わせて、チンレスト722及びヘッドホルダ723の位置が設定される。なお、図4に示すように、被検者M1が標準的骨格である場合、被写体保持部72に頭部MHが保持されると、被検者M1のフランクフルト平面FR1が水平となる。また、被写体保持部72に頭部MHが保持されると、頭部MHを通る体軸BA1が鉛直方向に平行となる。なお、「体軸」とは、人体をその正面から見て、当該人体をおおむね左右対称と考えたときに設定される対称軸をいう。
<本体制御部80>
図3は、実施形態のX線撮影装置10の構成を示すブロック図である。図12は、本体制御部80におけるデータの流れを示す図である。本体制御部80は、撮影部20の各要素を制御することにより、撮影部20にX線撮影を実行させる。本体制御部80のハードウェアとしての構成は、一般的なコンピュータ又はワークステーションと同様である。すなわち、本体制御部80は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、及び、制御用アプリケーションまたはデータなどを記憶する記憶部を備える。
本体制御部80には、操作表示部82が接続されている。操作表示部82は、各種情報を表示するために設けられている。操作表示部82は、タッチパネルディスプレイで構成された操作表示パネルを含む。操作表示部82は、各種情報を画像で表示するとともに、操作者が各種情報(撮影条件などを含む)を本体制御部80に入力するために設けられている。図1に示すように、操作表示部82は、防X線室22の外壁面に設けられている。なお、操作表示部82は、撮影部20の一部分、例えば、筐体54の外側面に設けられていてもよい。
図11に示すように、本体制御部80は、モード設定部800、領域設定部801、支持体制御部802、照射制御部803、保持部制御部804、プロファイル選択部805、透過情報生成部806及びプロファイル変更部807を備えている。これらの各処理部は、CPUが制御用アプリケーション(プログラム)に従って動作することにより実現される機能である。CPUは汎用回路であってよい。全面的にCPUによらずとも、専用の回路などによってこれらの機能のうち一部又は全部をハードウェア的に実現するようにしてもよい。CPUの回路のうち、各種制御用アプリケーションによって各種制御に用いられる部分をそれぞれ処理部800−807と捉え、これらを総合したものを本体制御部80と捉えてもよい。処理部800−807を、各種制御用アプリケーションの信号が印加される回路と見てもよい。いうまでもないが、CPUが入力等を受け付けるという場合、詳細には入力等の信号の受け付けをする。例えば、操作表示部82に対するオペレータの操作が入力信号に変換されてCPUの回路に印加される。また、CPUが選択等を行う場合、詳細には回路が選択の信号の出力をする。また、領域設定等は座標演算等によって行う。制御用アプリケーションは、光学メディア(CD,DVDなど)、磁気メディア、フラッシュメモリなどのコンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録される。
モード設定部800は、X線撮影装置10の撮影種別(モード)を設定する。X線撮影装置10は、モード設定部800によって設定された撮影モードに応じて各種撮影を実行する。X線撮影装置10では、パノラマX線撮影、CT撮影、セファロ撮影の各々に対応するモードが予め規定されている。X線撮影装置10では、操作表示部82を介してモードの選択が受け付けられ、モード設定部800がその選択内容に応じて撮影モードを設定する。この実施形態では、モード設定部800及び操作表示部82は、複数の撮影モードの中から1つの撮影モードの選択を受け付けるモード設定受付部を構成する。
領域設定部801は、X線撮影装置10において実行されるモードに応じた撮影領域(撮影対象とする範囲)を設定する。領域設定部801は、モード設定部800によって設定された撮影モードに適合する領域設定画面を操作表示部82に表示する。そして領域設定部801は、操作者が操作表示部82に対して行う操作入力に基づき、撮影領域を設定する。領域設定部801及び操作表示部82は、撮影領域を指定するための領域設定受付部820を構成する。
領域設定受付部820は、撮影部20においてCT撮影を実行する際に、オペレータからの局所撮影領域を指定する操作入力を受け付ける。局所撮影領域は、X線発生器42とX線検出器52の間に配される被写体である被検者M1における頭部MHの一部領域である。局所撮影領域は、頭部MHの一部領域であるものの、平面視で歯列弓全域が収まる領域である場合(歯列弓全域局所領域)、歯列弓から顎関節まで含めた顎全域が収まる領域である場合(顎全域局所領域)、歯列弓の一部領域である場合(歯列弓部分局所領域)、顎の一部領域である場合(顎部分局所領域)などが考えられる。また、側方視で上顎領域、下顎領域、上下顎領域の別なども考えられる。
局所撮影領域の大きさは、予め複数準備しておくことができる。例えば、直径40mm・高さ40mm、直径40mm・高さ80mm、直径80mm・高さ40mm、直径80mm・高さ50mm、直径80mm・高さ80mm、直径100mm・高さ50mm、直径100mm・高さ80mmなどを準備しておくとよい。直径40mmは歯列弓部分局所領域または顎部分局所領域に適しており、直径80mmは歯列弓全域局所領域に適しており、直径100mmは顎全域局所領域に適している。また、高さ40mmまたは50mmは、上顎領域または下顎領域に適しており、高さ80mmは上下顎領域に適している。操作表示部82に各撮影領域の大きさを選択できる画面を表示可能とし、いずれの局所撮影領域の大きさを選択するかの操作入力を受け付け可能に構成される。領域設定部801は、操作者が操作表示部82に対して行う操作入力に基づき、撮影領域を特定し、設定する。この場合、領域設定受付部820は領域サイズ設定受付部の機能を備える。
本実施形態では局所領域として歯列弓部分局所領域または顎部分局所領域を中心に説明するが、歯列弓全域局所領域や顎全域局所領域についても、制御プロファイル830が準備されてもよい。
図13は、パノラマX線画像PA1上でCT撮影対象である撮影領域ROIを設定する様子を説明するための図である。この例では、領域設定部801は、操作表示部82の表示領域に、パノラマX線画像PA1を表示するとともに、撮影領域ROIを指定するための枠カーソルBC1を表示している。枠カーソルBC1の表示については、枠が囲繞する範囲が撮影領域ROIの範囲と一致するように表示される。枠カーソルBC1中に表示される垂直線と水平線は、それらの交点が撮影領域ROIの中心を示すように配置される。方形の枠は略して、垂直線と水平線だけをカーソルとして用いてもよい。
パノラマ画像PA1として、本撮像部20におけるパノラマX線撮影によって得られた画像を使用できる。この場合、被写体保持部72と枠カーソルの空間的位置関係が明らかであるため、座標計算が可能である。また、パノラマ画像PA1を取得したときの管電流や管電圧などの照射条件も参照できる。パノラマ画像PA1が結像するパノラマ断層の位置は、被写体保持部72に対してどの位置にあるかが定まっている。このため、パノラマ画像PA1上の位置指定により、被写体保持部72の頭部MH保持部付近の3次元位置が特定できる。パノラマ画像PA1の取得時の位置情報や照射条件情報があれば、他のX線撮影装置で撮影した画像も利用できる。この点は、後述する2方向スカウト画像についても同様である。
枠カーソルBC1は、操作者が操作表示部82を操作することによって、パノラマX線画像PA1上で水平方向および垂直方向からなる2次元の面内の任意の方向に移動させることが可能である。枠カーソルBC1の移動は、例えばマウス操作でポインタに枠カーソルBC1をホールドさせ、移動させて所望の位置で解放させることなどで行うことができる。操作者がCT撮影したい位置に枠カーソルBC1を移動させて所定の決定操作を行う。すると、領域設定部801がこの決定操作時に枠カーソルBC1で囲まれる領域に対応するXYZ座標系の領域を座標変換等によって求め、その領域を撮影領域ROIに設定する。
図14は、2方向スカウト画像上でCT撮影対象である撮影領域ROIを設定する様子を説明するための図である。この例では、領域設定部801は、操作表示部82の表示領域に、2方向スカウト画像を表示する。2方向スカウト画像は、被写体保持部72に保持された被検者M1の頭部MHを側方(ここでは、左側)から、X線発生器42からX線検出器52へのX線照射で単純投影して得られる側方投影画像PI1と、旋回アーム62の旋回角度を変えて頭部MHを前方から単純投影して得られる前方投影画像PI2とを含む。このような2方向スカウト画像を得るX線撮影を2方向スカウト撮影とも称する。2方向スカウト撮影は、頭部MHを側方と前方のように90度の異なる角度で撮影してもよいが、他の異なる角度で撮影してもよい。ただし、前方と後方や、左側方と右側方のような、撮影方向が180°の角度となる場合は、交差する方向の成分が欠け、3次元位置が特定できないので避けることが望ましい。本例では、領域設定部801は、側方投影画像PI1上に枠カーソルBC2を、前方投影画像PI2上には枠カーソルBC3を表示する。枠カーソルBC2、BC3の表示については、枠が囲繞する範囲が撮影領域ROIの範囲と一致するように表示される。2方向スカウト画像に代えて、セファロユニット66で撮影した正面セファロ撮影画像と側面セファロ撮影画像を用いるようにしてもよい。
操作者は、枠カーソルBC1のときと同様に、枠カーソルBC2,BC3を各画像上で移動させることが可能である。また、操作者が所定の決定操作を行うと、領域設定部801が枠カーソルBC2,BC3に囲まれた領域に対応するXYZ座標系における領域を求め、当該領域を撮影領域ROIに設定する。
側方投影画像PI1における枠カーソルBC2の水平位置は、撮影領域ROIの前後方向(Y軸方向)の位置を示す。前方投影画像PI2における枠カーソルBC3の水平位置は、撮影領域ROIの左右方向(X軸方向)の位置を示す。また、各画像PI1,PI2における枠カーソルBC2,BC3の垂直位置は、撮影領域ROIの上下方向(Z軸方向)の位置を示す。枠カーソルBC2,BC3は、各画像PI1,PI2において、垂直方向へは連動して移動する。好ましくは、側方投影画像PI1上には、垂直方向に延びる線カーソルVC1と水平方向に延びる線カーソルHC1が表示され、前方投影画像PI2上には、垂直方向に伸延する線カーソルVC2と水平方向に伸延する線カーソルHC2が表示されている。
図14のように、2つの線カーソルVC1、HC1の交差位置が枠カーソルBC2の中心すなわち側方視の撮影領域ROIの中心となるように表示され、線カーソルVC2とHC2の交差位置が枠カーソルBC3の中心すなわち前方視または後方視の撮影領域ROIの中心となるように表示される。線カーソルVC1、VC2は各画像上で水平方向に移動させることができ、線カーソルHC1、HC2は各画像上で垂直方向に移動させることができる。
側方投影画像PI1における線カーソルVC1の水平位置は、撮影領域ROI中心の前後方向(Y軸方向)の位置を示す。前方投影画像PI2における線カーソルVC2の水平位置は、撮影領域ROI中心の左右方向(X軸方向)の位置を示す。また、各画像PI1,PI2における線カーソルHC1,HC2の垂直位置は、撮影領域ROI中心の上下方向(Z軸方向)の位置を示す。
好ましくは、枠カーソルBC2と線カーソルVC1,HC1とは連動するように表示する。すなわち、枠カーソルBC2を移動操作すると、線カーソルVC1、HC1は移動操作を加えずとも移動し、線カーソルVC1,HC1を移動操作すると、枠カーソルBC2は移動操作を加えずとも移動する。枠カーソルBC3と線カーソルVC2,HC2とも、連動するように表示するとよい。
好ましくは、線カーソルHC1とHC2とも連動する。すなわち、線カーソルHC1、HC2のいずれか一方が移動すると、他方の線カーソルは移動操作を加えずとも被写体において同じ垂直位置(高さ)を示すように移動する。
図13及び図14は、過去のX線撮影に基づいて生成されたパノラマX線画像PA1、側方投影画像PI1及び前方投影画像PI2を利用して、CT撮影の撮影領域ROIを設定するものである。しかしながら、X線画像を用いる代わりに、これらのX線画像を模したイラスト画像、あるいは、上顎又は下顎などの生体構造を模したイラスト画像を用いて、撮影領域ROIの指定が受け付けられるようにしてもよい。
図15は、イラスト画像I10上で撮影領域ROIを設定する様子を説明するための図である。イラスト画像I10は、顎全体の平面図を模した画像である。上下顎に共通に同じ顎の図を用いてもよいし、対象領域別に下顎の図、上顎の図を切換表示できるようにしてもよい。下顎の図をもって下顎も上顎も表しているようにしてもよいし、上顎の図をもって下顎も上顎も表しているようにしてもよい。領域設定部801は、操作表示部82の操作表示パネルにイラスト画像I10を表示するとともに、閉ループ状の枠カーソルBC4を表示する。操作表示部82は、関心のある歯牙又は顎関節等を枠カーソルBC4で囲む操作を受け付ける。領域設定部801は、枠カーソルBC4で囲まれた領域を、CT撮影の撮影領域ROIに設定する。
枠カーソルBC4は、イラスト画像I10上では円形で表示されているが、実空間上の撮影領域ROIはZ軸方向に延びる略円柱状である。枠カーソルBC4の大きさ(直径)は、操作者が所定の操作を行うことによって、任意の大きさに変更可能とされてもよいし、あるいは既定の大きさに変更可能とされてもよい。顎の図に対する枠カーソルBC4の大きさを相対的に変更した場合は、撮影領域ROIの大きさの変更の操作がなされたものとしてもよい。撮影領域ROIの大きさの変更に伴い、ビーム形状調整部44によるX線の遮蔽量が変更される。
撮影領域ROIの平面視における形状(撮影領域ROIを+Z側から−Z方向に見下ろしたときの形状)は、円形に限定されるものではない。例えば特開2013−135765号公報に記載されているように、CT撮影中にビーム形状調整部44を制御することによって、楕円形状やオーバル形状、略三角形状等の様々な形状に変更可能にしてもよい。この場合、撮影領域ROIの形状に応じて、枠カーソルBC4の形状を変更可能にするとよい。
支持体制御部802は、旋回駆動部642を制御することにより、旋回アーム62の旋回を制御する。具体的には、支持体制御部802は、旋回アーム62に支持されたX線発生器42を回転軸65まわりに回転させることにより、被検者M1に対するX線ビーム(X線コーンビームBX1)の照射角度(投影角度)を変更する。旋回アーム62の回転駆動は、支持体に支持されたX線検出器52の回転駆動である。また、旋回アーム62の回転駆動によって、X線コーンビームBX1の被験者M1対する受光角度が変更される。
また、支持体制御部802は、水平駆動部644を制御することにより、旋回アーム62のX軸方向及びY軸方向の移動を制御する。これにより、支持体制御部802は、X線発生器42及びX線検出器52をX軸方向及びY軸方向に移動させる。
また、支持体制御部802は、鉛直駆動部646を制御することにより、旋回アーム62をZ方向に移動させる。
照射制御部803は、例えばX線発生器42を制御する。具体的には、X線発生器42のX線管に供給する電流及び電圧のうち少なくとも一方を制御することにより、X線発生器42から出射されるX線ビームのオン・オフ及びX線ビームの強度を制御する。また、照射制御部803は、ビーム形状調整部44を制御することにより、X線ビームの遮蔽を制御する。このX線ビームの遮蔽制御によって、撮影目的に応じた形状のX線ビーム(例えば、X線細隙ビーム及びX線コーンビームなど)が形成される。また、照射制御部803がビーム形状調整部44を制御することにより、被検者M1における撮影領域ROI以外の領域にX線ビームが照射されることを抑制する。
保持部制御部804は、保持部駆動部728に制御指令を与えることにより、頭部保持部72Hを鉛直方向であるZ軸方向に移動させる。
プロファイル選択部805は、記憶部83に保存されている複数の制御プロファイル830のうちから、領域設定部801が設定する局所撮影領域に対応した1つの制御プロファイル830を選択する。制御プロファイル830は、CT撮影対象の被検者M1に対して照射される単位時間あたりの照射量(以下、単に「X線照射量」とも称する。)を制御するための情報である。ここでは、異なる局所撮影領域(撮影領域ROI)に応じた複数の制御プロファイル830が予め用意されている。制御プロファイル830は局所撮影領域の大きさごとに準備され、選択可能となっている。
図16は、前歯に設定された撮影領域ROIに対応する制御プロファイル830aを示す図である。図16には、頭部MHの顎部J1のうち前歯(中切歯及び側切歯)を撮影領域ROIとして、上側にX線発生器42及びX線検出器52を回転させるCT撮影を行う様子を図示している。また、下側には横軸を旋回アーム62の旋回角度とし、縦軸をX線の照射量とするグラフを図示している。なお、本実施形態にては顎関節部分まで含んだ顎部J1を撮影対象としているが、歯科において顎部の主要領域は歯列弓領域なので、歯列弓部分のみを顎部J1としてもよい。
CT撮影では、X線発生器42及びX線検出器52を180°(又は180°にX線コーンビームBX1のファン角を加えた角度)回転させる。X線検出器52は、頭部中の歯列弓がある側の頭部周囲を移動する。図示のように、撮影領域ROIが前歯領域にある場合には、X線検出器52は頭部MHの側方から前方を通過させて反対側に移動される。X線検出器52を180°又は180°にX線コーンビームBX1のファン角を加えた角度回転させてCT撮影を行う場合、このX線検出器52が頭部中の歯列弓がある側の頭部周囲を移動する軌道には、X線検出器52を撮影領域ROIに近付けられる利点がある。無論、CT撮影においては、X線発生器42及びX線検出器52を回転させる角度は180°以上の任意の角度であり、例えば360°回転させることでCT撮影を行ってもよい。
被検者M1の顎部をCT撮影する場合、図16に示すように、撮影領域ROIを通るX線コーンビームBX1が頸椎HA1にも入射するタイミング(旋回角度)がある。頸椎HA1は、被検者M1の内部に存在するX線の吸収率が比較的大きいX線高吸収領域である。X線コーンビームBX1の経路上にX線高吸収領域が存在する場合、X線の透過度が小さくなるために、撮影領域ROIのX線投影画像が有するX線透過(又はX線吸収)に関する情報量が低下する。これにより、X線投影画像から再構成されるCT画像において、画質(解像度等)が低下するおそれがある。そこで、X線コーンビームBX1が頸椎HA1に重なるタイミングで、被検者M1に対するX線の照射量を上昇させる制御プロファイル830が予め準備されるとよい。
図16に示ように、顎部J1の前歯が撮影領域ROIに設定されている場合、X線検出器52が頭部MHの前方にあるとき(すなわち、旋回角度が90°のとき)、X線コーンビームBX1の中心軸上に、撮影領域ROIの中心および頸椎HA1の中心が並ぶことになる。このため、旋回角度90°付近でX線照射量が大きくなるように制御プロファイル830aが設定されている。前歯についての制御プロファイル830aでは、横軸を旋回角度とし縦軸をX線照射量としたとき、X線のX線照射量の変化を示すグラフは、旋回角度90°を中心に左右対称の形となっている。
図17は、右側臼歯に設定された撮影領域ROIに対応する制御プロファイル830bを示す図である。右側臼歯に撮影領域ROIが設定されている場合、X線検出器52が頭部MHの右側を通過するとき(ここでは、旋回角度が約90°から約150°のとき)に、X線コーンビームBX1が頸椎HA1と重なる。このため、制御プロファイル830bでは、投影角度が90°よりも180°の方に偏って、X線照射量が大きくなるように設定されている。
このように、制御プロファイル830a,830bは、予め設定された、撮影領域ROIとX線高吸収領域(例えば、頸椎HA1)との位置関係に応じたX線照射量を規定している。
制御プロファイル830a、830bのような、予め設定された制御プロファイルをデフォルトの制御プロファイルと呼んでもよい。デフォルトの制御プロファイルは、例えば、標準的な身体的特徴の被験者に対して適用される、装置側で準備できる大多数の被験者に適応できる制御プロファイルである。標準的な身体的特徴の被験者ないし標準の被験者は、後述する大人、小児の別のような年齢層ごとの別など、各種集合ごとに定めてもよい。身体的特徴としては、体格、骨格、硬組織の分布などがあげられる。体格、骨格、硬組織の分布などについても、各集合が成立することがある。例えば、体格では大、中、小の各集合が考えられ、顎形状もノーマル、前突などの各集合が考えられたりする。
制御プロファイル830は撮影領域ROIの指定位置ごとに1対1のテーブルで準備してもよいが、頸椎に対する撮影領域ROIの方角から算出できるようにしておいてもよい。この場合、図16、図17のグラフにおける、プロファイル中のX線照射量が大となる部分を、仮に照射量ピークと呼ぶこととし、この照射量ピークを有するカーブパターンを1つ準備しておく。図16のように前歯領域が撮影領域ROIとなる場合はCT撮影における旋回アーム62の旋回の間でX線の経路に頸椎がさしかかるタイミングがスタートとエンドの間の中央に来るので、前記カーブパターンの照射量ピークをスタートとエンドの間の中央に位置させるようにする。図17のように右側臼歯領域が撮影領域ROIとなる場合はCT撮影における平面視で時計回りの旋回アーム62の旋回の間でX線の経路に頸椎がさしかかるタイミングがスタートとエンドの間の後半寄りに来るので、前記カーブパターンの照射量ピークをスタートとエンドの間の後半寄りに位置させるようにする。このように、頸椎HA1に対して指定する撮影領域ROIの位置する方角に応じて照射量ピークの位置を定める演算を行うようにしてもよい。
デフォルトの制御プロファイルは書換可能に構成しておいてよい。臨床データの収集と解析の進歩など、医療技術の進化に伴い、デフォルトの制御プロファイルもより適切と考えられるものが新たに出現する可能性はある。その出現に適応できるように、デフォルトの制御プロファイルを書換または変更可能としておく。具体的には、記憶部83に保存された制御プロファイル830を書換、変更可能とする。書換、変更は、例えば有線や無線のポート等を備えた上で、新制御プロファイルを格納した外部の記憶媒体の接続や、新制御プロファイルを提供する供給元に通じるWEBなどの通信インフラストラクチャーとの接続などを通してアップデートされうる。
被検者M1に対するX線照射量の変更は、X線発生器42から出力されるX線の強度(線量)を変更することによって行われるとよい。この場合、照射制御部803が制御プロファイル830に応じて、X線管42Tに与える管電流又は管電圧を変更するとよい。
また、被検者M1に対するX線照射量の変更は、X線コーンビームBX1の回転速度(すなわち、旋回アーム62の旋回速度)を変更することによって行われてもよい。回転速度を小さくした場合にはX線照射量を相対的に増大させることができ、回転速度を大きくした場合にはX線照射量を相対的に低下させることができる。この場合、支持体制御部802が、制御プロファイル830に応じて旋回駆動部642を制御することにより、X線コーンビームBX1の回転速度が変更されるとよい。
さらに、被検者M1に対するX線照射量の変更は、X線発生器42から出力されるX線強度及びX線コーンビームBX1の回転速度の双方を変更することによって行われてもよい。この場合、支持体制御部802及び照射制御部803が、制御プロファイル830に応じて、X線発生器42及び旋回駆動部642を制御するとよい。
なお、図16及び図17に示す制御プロファイル830a,830bは、撮影領域ROIとX線高吸収領域の位置関係に応じたものであるが、その他の項目に応じた制御プロファイルが予め用意されてもよい。例えば、「大人」「小児」「性別」「年齢」「人種」「体格サイズ」「顎形状(上顎前突形状、下顎前突形状、開咬形状、左右非対称形状等)」等、被検者M1の身体的特徴に応じた制御プロファイルが予め用意されてもよい。
図11に戻って、透過情報生成部806は、透過情報832を生成する。透過情報832は、CT撮影対象の被検者M1におけるX線の透過に関する固有の情報である。透過情報832は、被検者M1と撮影対象領域に対するX線の透過の度合に関する個体別情報であると考えてもよく、数値の情報であることもある。プロファイル変更部807は、プロファイル選択部805が選択した制御プロファイル830を、透過情報832に応じて調整することにより、個体別制御プロファイル834を生成する。調整は、透過情報832によって対応が可能となる個体の特徴に応じて行われる。個体別制御プロファイル834は、透過情報832よりデフォルトの制御プロファイル830に個体の特徴に応じた変化を加えたものである。好ましくは、調整は個体の硬組織の特徴に対応して行われる。
透過情報832に応じたX線照射量の調整は、照射制御部803による管電流と管電圧の少なくとも一方の調整によりなされてよく、支持体制御部802による旋回アームの62の旋回速度の調整によりなされてもよい。すなわち、X線発生器42の管電流、管電圧、旋回駆動部642による旋回アーム62の旋回速度、旋回アーム62の旋回の範囲、撮影領域ROIの範囲のうち少なくとも1つを制御することによってなされてよい。
旋回アームの旋回の範囲の制御は、例えば、旋回角の範囲の調整を行うようにしてよく、360°の旋回角となっているところを、180°の旋回や180°にX線コーンビームBX1のファン角を加えた角度とすることや、逆に小さい旋回角を大きい旋回角とすることによって行う。
撮影領域ROIの範囲の制御は、ビーム形状調整部44によるX線ビームの照射範囲の制御すなわち遮蔽量の制御によって行うようにしてよい。例えば、遮蔽部材443,444の対向する縁部443a,444aで囲まれる開口445の幅を変更し、デフォルトで直径40mmを照射するための開口幅であるところを直径35mmを照射する開口幅となるように開度調整することや、逆に小さい開口幅を大きい開口幅となるように調整することによって行う。高さの方を、または高さも共に、同様に調整してもよい。
詳細には、次のような調整を行う。デフォルトの管電流ではX線量が不足のとき、管電流を上げる。デフォルトの管電流ではX線量が不足のとき、管電圧を上げる。デフォルトの旋回速度ではX線量が不足のとき、旋回速度を下げる。デフォルトの旋回の範囲ではX線量が不足のとき、旋回の範囲を増加する。デフォルトの撮影領域ROIの範囲では狭すぎるとき、撮影領域ROIの範囲を広げる。デフォルトの管電流ではX線量が過剰のとき、管電流を下げる。デフォルトの管電流ではX線量が過剰のとき、管電圧を下げる。デフォルトの旋回速度ではX線量が過剰のとき、旋回速度を上げる。デフォルトの旋回の範囲ではX線量が過剰のとき、旋回の範囲を減少する。デフォルトの撮影領域ROIの範囲では広すぎるとき、撮影領域ROIの範囲を狭める。
一例として、透過情報832は、CT撮影対象である被検者M1を被写体とするX線撮影に基づいて得られる、X線の透過度に関する情報としてもよい。具体的には、例えば、図13や図14に示されるパノラマ画像や2方向スカウト画像のように、被写体M1をX線撮影して得たX線画像から検知できるX線の透過度の程度から透過情報832を得るようにしてもよいし、被写体M1のX線撮影中にX線検出器52で受けるX線の強度から透過情報832を得るようにしてもよい。
X線画像から検知できるX線の透過度の程度は、例えばX線画像のピクセル値から算出できる。X線画像全体の画素値を参照してもよいし、X線画像の一部の画素値を参照してもよい。後述する図18に示される水平範囲HR11のピクセル値に基づく透過情報832の取得はX線画像の一部の画素値の参照例である。
被写体M1のX線撮影中にX線検出器52で受けるX線の強度を監視するには、受光領域全体の出力データを監視してもよいし、受光領域の一部の画素の出力データを監視してもよい。画素中の疎の部分を監視するようにしてもよい。後述する図24に示される出力データ420の値に基づく透過情報832の取得はX線撮影中にX線検出器52で受けるX線の強度の参照例である。
また、例えば、透過情報を、個体別の、X線の透過率がどれほどのものであるかを検知した結果、どのようにデフォルトの制御プロファイルを変更すべきかを連絡する情報とすることもできる。例えば、ある被写体M1に対してX線照射をしたとして、X線検出側の受光量が標準に比較して大なら、透過率が高い個体であり、X線照射量を抑えるべしとする信号が透過情報となり、別の被写体M1に対して同じX線量で同じ時間、同じ部位を、同じ範囲でX線照射をしたとして、X線検出側の受光量が標準に比較して小なら、透過率が低い個体であり、X線照射量を増強すべしとする信号が透過情報となる。
具体的には、透過情報生成部806は、被検者M1についてX線撮影したときにX線検出器52が出力する出力データ420から透過情報832を生成してもよい。より具体的には、透過情報生成部806は、X線検出器52が画素単位で出力する出力データ420であるピクセル値から、透過情報832を生成してもよい。この場合、ピクセル値から被検者M1におけるX線の透過特性を適切に求めることができる。
例えば、被検者M1が子供(特に、第2次性徴期までの子供)については、X線の感受性が成人よりも一般的に高い。このため、被検者M1が子供である場合には、大人である場合よりもX線照射量を低減させることが望ましい。したがって、体格情報836が「子供」であることを示す場合には、制御プロファイル830が示すX線照射量を低減させる透過情報832を、透過情報生成部806が生成するとよい。
<X線画像から透過情報832を生成する態様>
医科及び歯科診療においては、患者の診察のために、セファロ撮影を含む単純X線撮影、パノラマX線撮影又はCT撮影等の各X線撮影が行われる。各X線撮影で得られる1つ以上のX線投影画像あるいは複数のX線投影画像を再構成して得られるパノラマX線画像やCT画像(以下、これらの画像を「X線画像」という。)を構成する各画素のピクセル値は、被検者M1を透過したX線の強度を示している。すなわち、過去に取得されたX線画像は、被検者M1におけるX線の透過度に関する情報を含む。そこで、過去に取得されたX線画像から、透過情報832を有効に生成することができる。
このX線画像のデータは、被検者別の診療情報90として、サーバ9(データベースシステム)に電磁的に記録されているとよい。診療情報90は、被検者の診療に供される被検者固有の情報である。診療情報90は、被検者毎に、年齢、性別及び治療歴等の情報を含んでいてもよい。透過情報生成部806は、CT撮影対象の被検者M1に対応する診療情報90を、サーバ9から情報通信で取得するとよい(図11及び図12参照)。
診療情報90が保存されているサーバ9は、院内LANなどのネットワークを介して撮影部20の通信I/F84と接続される。透過情報生成部806が、通信I/F84を介してサーバ9にアクセスし、当該サーバ9に保存されている複数の診療情報90から、CT撮影対象の被検者M1に対応する診療情報90を取得するとよい。
なお、X線画像に関連づけて、そのX線画像を取得したX線撮影で被検者に照射されたX線照射量に関する情報であるX線照射量情報を診療情報90として記録するようにしてもよい。X線照射量情報は、例えば、X線管42Tに供給される管電流又は管電圧等、又は、旋回アーム62の旋回速度を含む。透過情報生成部806が、X線画像とともにX線照射量情報を用いて透過情報832を生成することにより、被検者M1のX線の透過特性を適切に求めることができる。
診療情報90としては、被写体M1をX線撮影したX線画像が含まれていてもよい。このX線画像は、後述する、X線画像から体格情報836を取得するための情報となりうる。
図18は、パノラマX線画像PA1に基づいて透過情報832を生成する例を説明するための図である。パノラマX線画像PA1を構成する各画素が持つピクセル値(輝度値)は、X線検出器52が検出したX線の強度を示すX線検出情報である。このX線検出情報を利用することにより、CT撮影対象である被検者M1のX線の透過度を適正に求めることができる。なお、パノラマX線撮影において、被検者M1に照射される線量が投影角度に応じて自動的に変更される場合もある。この場合には、この線量の変動も考慮しつつ、パノラマX線画像PA1のピクセル値から、被検者M1についての透過情報832が生成されてもよい。
透過情報832の生成には、パノラマX線画像PA1全体のピクセル値が用いられてもよいが、パノラマX線画像PA1の一部領域のみのピクセル値が用いられてもよい。この一部領域は、例えば、パノラマX線画像PA1における規定の高さ位置において水平方向にパノラマX線画像PA1を横断する水平範囲HR11としてもよい。水平領域HR11の縦幅は、1画素分の幅寸法であってもよいし、2画素分以上の幅寸法であってもよい。
水平範囲HR11は、標準骨格において、概ね、上顎の歯牙に対応する垂直位置と、鼻腔に対応する垂直位置との間の領域としてもよい。この領域は、一般的に、被検者M1においてX線の透過度が比較的均一となる部分である。このため、水平範囲HR11は、透過情報832を求めるのに好適な領域である。
図19は、図18に示す水平範囲HR11における被検者M1個体についてのピクセル値の分布であるピクセル値分布VD1を示す図である。図19において、横軸はパノラマX線画像PA1上の水平位置を示しており、縦軸はピクセル値を示している。標準ピクセル値分布VDSは、標準的なパノラマX線画像における、水平範囲HR11のピクセル値分布を示している。標準的なパノラマX線画像は、標準的な身体的特徴の被検者についてパノラマX線撮影して得られる画像である。水平範囲HR11における、ピクセル値分布VD1および標準ピクセル値分布VDSは、正中線の位置を中心に対照性を有している。
図19に示す例では、CT撮影対象である被検者M1についてのピクセル値分布VD1は、標準ピクセル値分布VDSに比べて全体的に小さくなっている。これは、CT撮影対象の被検者M1において、X線の透過度が標準よりも小さい(すなわち、X線の減衰が大きい)ことが推定される。この場合、透過情報生成部806は、標準よりもX線照射量が大きくなるように制御プロファイル830を改変する透過情報832を生成するとよい。
ピクセル値分布VD1の平均値及び標準ピクセル値分布VDSの平均値における差分値を透過情報832としてもよい。また、標準ピクセル値分布VDSの平均値に対するピクセル値分布VD1の平均値の比率を透過情報832としてもよい。また、これらの分布VD1,VDSの平均値ではなく、中央値、最大値又は最小値などの所定の代表値に基づいて、透過情報832が生成されてもよい。
また、図18に示すように、単一の水平範囲HR11だけではなく、異なる垂直位置の水平範囲HR11,HR12,HR13内のピクセル値に応じて、透過情報832が生成されてもよい。この場合、異なる水平範囲HR11−HR13のピクセル値の平均値等の代表値に応じて、透過情報832が生成されてもよい。
図20は、制御プロファイル830bを調整して生成される個体別制御プロファイル834bを示す図である。プロファイル変更部807は、標準の制御プロファイル830bを、図18に示すパノラマX線画像PA1上のピクセル値に基づく透過情報832に応じて調整し、個体別制御プロファイル834bを生成する。個体別制御プロファイル834bでは、X線照射量が、旋回角度全域にわたって制御プロファイル830bが示すX線照射量よりも大きくなるように調整されている。ここでは、個体別制御プロファイル834bが示すX線照射量は、旋回角度全域にわたって、制御プロファイル830bが示すX線照射量から一定値分だけ底上げされたものとなっている。このような調整を行うのに際して、全ての旋回角度にわたって一律の加算値または減算値の増加または減少を行うようにしてもよいし、同じ比率での増加または減少を行うものでもよい。むろん、全ての旋回角度にわたって一律の処理でなくとも、旋回角度に応じた変化を含むものを適用してもよい。
撮影領域ROIを設定する部位に応じて調整の加減の度合または調整タイミングを変えてもよい。例えば、現実の被写体M1が、標準の被写体よりも硬組織の量が大である場合を想定する。前歯領域が撮影領域ROIである場合、前歯領域は厚みが小さく、被写体M1と標準の被写体との間の差が小さいと考えられるので、X線コーンビームBX1を右から左に、またはその逆に照射するタイミングでは、標準のプロファイルに対する調整量を小さくし、臼歯領域は厚みが大きく、被写体M1と標準の被写体との間の差が大きいと考えられるので、X線コーンビームBX1を右から左に、またはその逆に照射するタイミングでは、標準のプロファイルに対する調整量を大きくするように調整してもよい。
透過情報としてX線の透過度を得た場合に、制御プロファイル830bのようなデフォルトの制御プロファイルに調整を加えて個体別制御プロファイル834bのような個体別制御プロファイルを生成するアクションを個体別適用調整と称することとする。個体別適用調整のアクションとしては、前述の増加減少のような演算であってもよいし、予め準備された別の個体別の制御プロファイルと交換するようなアクションであってもよい。
照射制御部803又は支持体制御部802は、個体別制御プロファイル834bに基づいて、被検者M1に対するX線照射量を制御する。すなわち、撮影領域ROIに応じて選択された制御プロファイル830と、被検者M1の透過特性に応じた透過情報832とに適合するように、X線照射量が制御される。このように、個体別制御プロファイル834bを生成することによって、被検者M1の撮影領域ROIに適したX線照射量で、CT撮影を実施できる。
透過情報832を生成する際、水平範囲HR11のように水平方向に延びる領域内のピクセル値を用いることは必須ではない。例えば、垂直方向に延びる領域内のピクセル値から、透過情報832が生成されてもよい。
また、図18で説明した例では、再構成画像であるパノラマX線画像PA1に基づいて透過情報832が生成されている。しかしながら、パノラマX線撮影で得られる複数の短冊状のX線投影画像が残存する場合、これらX線投影画像から透過情報生成部806が透過情報832を生成するようにしてもよい。パノラマX線撮影で得られた複数のX線投影画像は、CT撮影対象の被検者M1の透過度の情報を含むため、これらX線投影画像から透過情報832を有効に生成できる。
図21は、2方向スカウト画像に基づいて透過情報832を生成する例を説明するための図である。2方向スカウト画像は、側方投影画像PI1及び前方投影画像PI2で構成されている。この2方向スカウト画像の各画素のピクセル値(輝度値)も、X線検出器52が検出したX線の強度を示すX線検出情報である。CT撮影対象の被検者M1について、過去のX線撮影で側方投影画像PI1及び前方投影画像PI2が既に得られている場合、透過情報生成部806がこれらの画像PI1,PI2から透過情報832を生成してもよい。
例えば、図21に示すように、画像PI1,PI2上における規定の垂直位置で水平方向に延びる水平範囲HR21内のピクセル値から、透過情報生成部806が透過情報832を生成してもよい。詳細には、図18において説明した例と同様に、CT撮影対象である被検者M1の画像PI1,PI2上における水平範囲HR21内のピクセル値と、標準の被検者の場合の側方投影画像上及び前方投影画像上における水平範囲HR21内のピクセル値とから、透過情報832が求められる。なお、単一の水平範囲HR21だけではなく、異なる垂直位置の水平範囲HR22,HR23内のピクセル値を用いて、透過情報832が生成されるようにしてもよい。
また、1方向から撮影して得られる1方向スカウト画像(具体的には、側方投影画像PI1又は前方投影画像PI2)から透過情報832が生成されてもよい。
透過情報832は、操作表示部82を介して領域設定部801により設定される撮影領域ROI(局所撮影領域)についてのX線の透過度に関する情報としてもよい。具体的には、パノラマX線画像PA1等のX線画像のうち、CT撮影の対象とされる撮影領域ROIに対応した像部分のピクセル値から、透過情報832が生成されてもよい。この場合、被検者M1における撮影領域ROIの透過度を、実際のX線撮影に基づいて求めることができる。したがって、撮影領域ROIについて、適切なX線照射量でCT撮影を行うことができる。
図23は、個体別適用調整の別例を示す図である。図23は、図17について説明したのと同様、撮影領域ROIが臼歯に設定される様子を示す。今、標準の被験者の顎部J1aに対して標準のプロファイルが準備され、実際にX線CT撮影される被験者M1の顎部が、顎部J1bであるとする。図を理解しやすくするために、顎部J1a、顎部J1bは線で示してある。また、頸椎HA1も、強調のために図17に示すものよりも小さく示してある。
図17で説明をしたので、旋回アーム62の全ての旋回の説明は略し、顎部J1aに対する撮影と顎部J1bに対する撮影の相違点に集中して説明する。顎部J1aに対しては、旋回アーム62の旋回が進んで、撮影領域ROIを照射するX線コーンビームBX1が頸椎HA1に接するフェーズFAが旋回角度90°を少々過ぎたあたりから始まることが想定されているのに対して、顎部J1bの右臼歯を撮影領域とした場合は、撮影領域ROIを照射するX線コーンビームBX1が頸椎HA1に接するフェーズFBが旋回角度90°の少し前から始まる。そのため、本実施例では、その分照射量のピークを標準より前にずらす調整を行う。具体的には、図示の個体別制御プロファイル834cの生成が行われる。
図14に示すように2方向スカウト画像上でCT撮影対象である撮影領域ROIを設定する構成にする場合、前方投影画像PI2で当該臼歯の位置入力を行い、インターフェースを通して、具体的に何番の歯であるか、入力が装置側で受け付けられるようにしておいて、標準の顎部J1aの臼歯との座標の差から個体別適用調整の要否を判断させるようにしてよい。また、インターフェースを通して、実際の被写体M1の顎部J1bが標準の顎部J1aより左右の幅が狭いものであることの入力を受け付け、個体別適用調整を行うようにしてもよい。また、例えば、人種によって一般的な顎部の左右の幅が異なることがあり、人種によっては一般的にU字形状の顎部が多かったり、V字形状に近いU字形状の顎部が多かったりすることから、人種別の入力が受け付けられるようにしておいてもよい。
歯科用X線撮影装置の場合、顎先端をチンレストに載置するか、固定用バイト要素を前歯で噛む被検者固定の方式が多く採用されるので、前歯領域は顎部J1bの左右の幅が狭くとも頸椎HA1との位置的関係の影響を受けないことが多く、臼歯に対するようにピークの移動調整をしなくともよい。
同じ理由で、前歯領域を撮影領域ROIとする場合はいずれにしても顎部J1aと顎部J1bとでほとんど位置的変化は無く、回転軸65の位置制御も共通とできるが、臼歯を撮影領域ROIとする場合は、顎部J1aと顎部J1bとで臼歯の3次元空間における存在位置の座標が違ってくる。その分、顎部J1bの臼歯に対しては回転軸65の移動量に変更を加える。
以上のような実施形態も、撮影領域ROIを設定する部位に応じて調整の加減の度合または調整タイミングを変える個体別適用調整の例である。
前述のデフォルトの制御プロファイルは重層的に準備してもよいので、例えば、性別、年齢層別の制御プロファイルのそれぞれが、さらに顎形状別の制御プロファイルに細分されるようにしてもよい。
図22は、パノラマX線画像PA1に基づいて透過情報832を生成する他の例を説明するための図である。図22に示す例では、水平方向に離散する複数の領域HR31のピクセル値を用いて、透過情報生成部806が透過情報832を生成する。複数の領域HR31各々は、パノラマX線画像PA1を構成する単一画素の大きさであってもよいし、複数の単位画素を含む大きさであってもよい。複数の領域HR31に含まれる画素のピクセル値から、透過情報832が生成されてもよい。この変形例として、例えば、垂直方向に離散する複数の領域のピクセル値、あるいは、水平方向及び垂直方向とは異なる方向に離散する複数の領域のピクセル値から、透過情報832が生成されてもよい。
<CT撮影中に透過情報832を生成する態様>
透過情報832を生成する別例として、被検者M1を対象とするCT撮影中に、X線検出器52が出力する出力データ420を利用してもよい。出力データ420は、被検者M1を透過してX線検出器52に到達したX線の強度を示している。CT撮影中、すなわち、旋回駆動部642が旋回アーム62を回転させる間に、透過情報生成部806が、X線検出器52から出力される出力データ420を監視し、その出力データ420が示すX線強度に応じて透過情報832を生成する(図12参照)。プロファイル変更部807がこの透過情報832に応じて個体別制御プロファイル834を生成することにより、CT撮影中にX線照射量を制御することが可能となる。
図24は、CT撮影中に生成される個体別制御プロファイル834bを示す図である。ここでは、顎部J1のうち左側臼歯領域に撮影領域ROIが設定されている。この被検者M1は、右側臼歯に金属補綴物MP1を有している。金属補綴物MP1は、X線の吸収率が顕著に大きい。このため、X線コーンビームBX1が金属補綴物MP1に重なることによって、X線検出器52で検出されるX線の強度が大きく減衰される。図24に示すCT撮影では、透過情報生成部806がX線検出器52からの出力データ420を監視する。そして、透過情報生成部806は、出力データ420がX線強度の減衰が起こったと判定した場合、被検者M1に対するX線照射量を増大させる透過情報832を生成する。
ここでは、旋回開始直後(旋回角度0°)から旋回角度Ang1(<90°)まで、及び、旋回角度Ang2(>90°)から旋回終了(旋回角度180°)までの間で、X線照射量を増大させる透過情報832が生成される。X線照射量を増大させるのは、旋回開始直後から旋回角度Ang1の間は、X線コーンビームBX1の照射経路中に金属補綴物MP1が出現し、旋回角度Ang2から旋回終了までの間は、X線コーンビームBX1の照射経路中に頸椎HA1に次いで金属補綴物MP1が出現するためである。この生成された透過情報832に基づき、プロファイル変更部807が、右側臼歯用の制御プロファイル830bをリアルタイムに変更して、個体別制御プロファイル834b2を生成する。
プロファイル変更部807は、元の制御プロファイル830が示すX線照射量を透過情報832に応じて変更する際、元の制御プロファイル830が示すX線照射量からの変動量を2倍以内に制限してもよい。例えば、図24に示す個体別制御プロファイル834b2では、旋回角度Ang2から旋回角度180°まで間において、X線照射量が、元の制御プロファイル830のX線照射量の2倍に抑えられている。この個体別制御プロファイル834b2に基づいて、照射制御部803がX線発生器42を制御すると、CT撮影で被検者M1に照射されるX線照射量が、元の制御プロファイル830が示すX線照射量の2倍以内に抑制される。これによって、被検者M1のX線被曝を軽減できる。個体別制御プロファイル834b2に基づいて、支持体制御部802が旋回駆動部642を制御する場合も同様である。
X線照射量の調整を無制限に行わず、例えば上記のように2倍以内に制限する構成については、仮にそのような制限を設けないとすると、金属補綴物MP1のX線吸収率が非常に高いために、その分を補完しようとX線照射量を過大に増強する可能性がある。そうすると被検者M1のX線被曝量が莫大なものとなる。また、X線照射量が強すぎるため、硬組織の密度の低い箇所や軟組織部分の映像が飛んでしまう可能性がある。X線照射量を上げたところで金属補綴物MP1によってX線がかなりの程度堰き止められることが多く、そうであればX線照射量の調整量ないし変動量を制限することでX線照射量を補いつつ被験者M1のX線被曝量低減と映像の確保ができる。
また、プロファイル変更部807は、X線照射量が規定の下限値V1から規定の上限値V2までの間の範囲(調整範囲RR1)内となるように制御プロファイル830を変更するようにしてもよい(図24参照)。これにより、X線照射量を規定の調整範囲RR1内に収めることができる。例えば、X線照射量を規定の上限値V2以下に抑制することで、被検者M1のX線被爆を軽減できる。また、X線照射量を規定の下限値V1以上にすることで、X線照射量不足によるCT画像の画質低下を抑制できる。
図24のようなX線照射量の調整構成を踏まえた上で、図18の例を応用した構成例も考えうる。図18のパノラマX線画像PA1の水平範囲の解析をさらに増加すれば、金属補綴物のような高X線吸収体(X線高吸収領域)の存在位置を検出できる。図25は、パノラマX線画像PA2を模式的に示す図である。指定した撮影領域ROIの位置に対して、X線の経路と高X線吸収体の位置関係が予め算出できるので、この時点で図24に示されるような個体別制御プロファイルを準備することができる。パノラマX線画像PA1の水平範囲の解析に代えて、パノラマX線画像PA1に対する操作者による高X線吸収体の位置指定操作の受け付けをするように構成してもよい。また、この高X線吸収体の位置指定操作に代えて、高X線吸収体の位置情報の導入、例えば、電子カルテの高X線吸収体の位置情報の導入を行うように構成してもよい。
また、パノラマX線画像PA1中の金属補綴物MP1の像の輝度を個体別制御プロファイルの調整に反映させてもよい。例えば、金属補綴物MP1の像の輝度から、この像部分が金属補綴物であることを検出可能としておき、金属補綴物MP1の像のある位置が金属補綴物MP1の存在する位置であると判定可能としておく。その情報より、制御プロファイル830に調整を加える。検出した輝度より、X線が金属補綴物MP1と撮影領域ROIの双方を照射してなお透過が可能な程度のものと判定できる場合、X線の照射量を上げなくともよいが、好ましくは図24で説明したほど上げない量での調整をする。さらに、金属補綴物MP1の像のサイズも参照するようにしてもよく、例えば、金属補綴物MP1がその像より輝度的には高X線吸収体であるが、サイズが小さい、形状が薄い、細いなどの理由で、X線が金属補綴物MP1と撮影領域ROIの双方を照射してなお透過が可能な程度のものと判定できる場合、X線の照射量を同様に上げるように調整してもよい。金属補綴物MP1の像から、X線の透過がなされないと判定される場合は、図24で説明したのと同様の制御としてもよい。金属補綴物MP1の像からX線の透過がなされないと判定される場合にはもはや調整を行わないようにしてもよい。すなわち、いずれにしてもX線が透過しないと判断されるのであるから、照射X線量の補充が行われなくてもよい。
金属補綴物MP1の位置が撮影領域ROIと重なる場合は、金属補綴物MP1周囲の組織の像が飛ばない範囲内でX線照射量を高めるようにしてもよい。この場合のX線照射量の範囲(上限値及び下限値)は、予め定められていてもよい。
上記の制御は、金属補綴物MP1が複数存在する場合にも適用可能である。図26は、複数の金属補綴物MP1を含むパノラマ撮影画像PA3を模式的に示す図である。図26に示されるように、複数の金属補綴物MP1が右下の7番と6番の臼歯の一部を被覆し、撮影領域ROIは右下の概ね2番〜4番の歯の領域に設定されている。
図27は、図26に示す撮影領域ROIにX線コーンビームBX1が照射される様子を示す概略平面図である。図26に示される撮影領域ROI及び2つの金属補綴物MP1の位置関係において、特にX線照射量の調整をどうするかが問題となるのは、図27に示すように、X線コーンビームBX1が概ね11時の方角から、またはその180°反対の方角から照射され、複数の金属補綴物MP1と撮影領域ROIがX線の経路上に並ぶタイミングである。X線が金属補綴物MP1と撮影領域ROIの双方を照射してなお透過が可能な程度のものと判定できる場合、X線の照射量を同様な程度上げるように調整してよい。
図28は、図16に示す実施形態の変形例である。図28に示す制御プロファイル830cは、基本的には図16に示される制御プロファイル830aの構成例と同じなのであるが、旋回角度55°の付近にX線照射量のサブのピークが加わっている点が異なる。この旋回角度にサブのピークがあるのは、この旋回角度において、歯列弓上の歯の並びが重なって、顎骨も照射範囲内の部分の長手方向がX線照射方向に沿ったタイミングとなり、X線の投影方向から見ると厚い硬組織(X線高吸収領域)になり、目的とする撮影領域ROIへのX線照射量が不足してくるからである。このサブのピークを定めるべき位置も、撮影領域ROIの位置に応じて異なるものとなり、このような制御プロファイル830cは、予め設定された、撮影領域ROIと予め設定された頸椎HA1(X線高吸収領域)との位置関係に加えて、X線照射方向によって影響してくる別の硬組織に応じたX線照射量を規定している。このような硬組織は、歯列、顎骨のほかにも口蓋骨なども考えられ、設定対象となりうる。
図28の制御プロファイル830cを調整する場合、図24の構成例と異なり、仮にX線の経路中に金属補綴物MP1が出現したとしても、無視する構成にすることができる。CT撮影中に透過情報生成部806は、X線検出器52から出力される出力データ420を監視し、その出力データ420が示すX線強度に応じて透過情報832を生成するが、閾値を設け、随時取得するX線フレーム画像中の各部分の出力データの強度から、金属補綴物への投影のあった領域か、骨、歯といった硬組織への投影のあった領域かを弁別する。金属補綴物への投影のあった領域を仮に金属投影領域と呼ぶこととし、金属投影領域があってもX線照射量の調整対象とはしない。硬組織への投影のあった領域を仮に硬組織投影領域と呼ぶこととし、硬組織投影領域についてはその出力データ420が示すX線強度に応じて透過情報832を生成するようにする。金属補綴物に対する調整をしていると調整量が過剰となるので、無視するのである。さらに、閾値を設け、組織の存在しない領域や軟組織がわずかにあるがほぼ空間である空間領域への投影のあった領域を弁別し、空間領域への投影のあった領域を仮に空間投影領域と呼ぶこととし、空間投影領域があってもX線照射量の調整対象とはしないようにしてもよい。空間領域に対する調整をしていると、調整量が過度に希薄となるか、X線照射をしないようになるので、無視するのである。特に影響の大きい、図28に示す旋回角度55°付近についてのみ、基準値との比較をするように構成してもよい。
図29は、X線検出器52の検出面52Sを示す概略正面図である。顎部J1の一部を撮影領域ROIとするCT撮影では、X線検出器52におけるX線を検出可能な検出面52Sのうち一部である受光領域RA1にだけX線が入射する。この場合において、CT撮影中に透過情報832を生成するときは、検出面52Sのうち受光領域RA1の全部又は一部で検出されるX線の強度のみについて、透過情報生成部806が監視するようにしてもよい。この場合、受光領域RA1の全部又は一部の検出素子から出力される出力データ420(X線強度)の平均値を、透過情報生成部806が監視対象としてもよい。
透過情報生成部806は、出力データ420が示すX線の強度が一定となるように制御プロファイル830を変更する透過情報832を生成してもよい。この場合、CT撮影によって得られる複数のX線投影画像間で、ピクセル値を均一にできるため、高X線吸収体の影響を小さくすることができる。
<体格情報836から透過情報832を生成する態様>
透過情報832を生成する別例として、体格情報836が利用されてもよい。体格情報836は、CT撮影対象である被検者M1の体格の大きさを示す情報である。透過情報生成部806が、この体格情報836を取得し、当該体格情報836に基づいて透過情報832を生成してもよい。通常、被検者M1の体格が大きい程、X線の透過度が低下する。このため、透過情報生成部806が体格情報836に応じて透過情報832を生成することによって、被検者M1の体格に適したX線照射量でCT撮影を実施できる。
体格情報836を取得する一例として、オペレータが操作表示部82を介して被検者M1の体格を指定する操作を行い、当該操作入力に応じて透過情報生成部806が体格情報836を取得してもよい(図12参照)。この場合、操作者による体格の選択を容易にするために、体格を示す複数の選択肢(例えば、「老人」「成人」「子供」など、年齢に応じた項目、「男」「女」といった性別に応じた項目)を操作表示部82に表示してもよい。そして、操作者が被検者M1に応じて複数の選択肢の中から選択した項目を、透過情報生成部806が体格情報836として取得するとよい。
体格情報836を取得する別例として、CT撮影対象の被検者M1の診療情報90から、透過情報生成部806が体格情報836を取得してもよい(図12参照)。具体的には、診療情報90に含まれる、年齢、性別、身長および体重等の、体格を直接または間接的に示す情報から、体格情報836が生成されてもよい。
透過情報生成部806は、診療情報90に含まれるX線画像から体格情報836を取得してもよい。例えば、パノラマ画像やCT画像に像として写る特徴的部位(例えば、下顎、上顎、歯牙等)の大きさを周知の画像認識処理によって取得することにより、被検者M1の体格を推定できる。この画像認識処理に基づいて、透過情報生成部806が体格情報836を取得するようにしてもよい。X線画像としては、パノラマ画像やCT画像のほか、被写体M1を1方向から撮影して得られる1方向スカウト画像、被写体M1を2方向から撮影して得られる2方向スカウト画像も考えられ、例えば、1方向スカウト画像、2方向スカウト画像、パノラマ画像のうちの少なくとも1つの画像から体格情報836を取得するように構成することもできる。
図30は、体格情報836に応じて生成される個体別制御プロファイル834L,834M,834Sを示す図である。被検者の体格の大きさとして、比較的大きいLサイズ、中程度のMサイズ、比較的小さいSサイズが定義されている場合、体格情報836は、これら3つの体格サイズのいずれかを示す情報とされる。図30に示す個体別制御プロファイル834L,834M,834Sは、前歯用の制御プロファイル830aをベースとして、体格情報836に応じた透過情報832に基づき修正されたX線照射量を示している。個体別制御プロファイル834L,834M,834Sは、順に、被検者M1の体格サイズがLサイズ、Mサイズ、Sサイズである場合のものに対応している。ここでは、制御プロファイル830aが、被検者がMサイズの場合のX線照射量を規定している。このため、個体別制御プロファイル834Mは、制御プロファイル830aと一致する。
図30に示すように、被検者M1の体格がLサイズの場合には、個体別制御プロファイル834Lに基づいて、比較的大きいX線照射量でCT撮影を実施できる。対照的に、被検者M1の体格がSサイズの場合には、個体別制御プロファイル834Sに基づいて、比較的小さいX線照射量でCT撮影を実施できる。
透過情報生成部806は、被写体保持部72から体格情報836を取得してもよい(図12参照)。被写体保持部72は、CT撮影対象の被検者M1の頭部MHに接触して、当該頭部MHを一定位置に保持する。頭部MHに接触している被写体保持部72の位置(詳細には、頭部MHに接触しているチンレスト722、ヘッドホルダ723の位置)から、被検者M1の体格を実測できる。この場合、チンレスト722、ヘッドホルダ723が被写体保持部72の基部に対して変位可能なように構成しておいて、チンレスト722、ヘッドホルダ723の変位量を計測する測定部を設けておく。例えば、左右の径の大きな頭部は、左右の径の小さな頭部に比べ、ヘッドホルダ723の左右の開度が大きくなり、大きな体格であることを実測できる。
図11に戻って、本体制御部80には、報知部86が接続されている。報知部86は、操作者にCT撮影対象である被検者M1が小児体格であることを報知する出力装置を備える。出力装置は、点灯するランプ、音声を出力するスピーカー、又は、画像表示するディスプレイ等を含む。操作表示部82を報知部86として機能させてもよい。被検者M1が小児体格であるか否かの判断には、上述した体格情報836を利用するとよい。例えば、第2次性徴期までの子供(具体的には17歳未満の子供)は、一般的にX線の感受性が成人に比べて大きいため、X線照射量を低く抑えることが望ましい。この観点から、体格情報836が小児体格であることを示す場合には、報知部86が所定の報知を行うことによって、操作者がCT撮影対象の被検者M1が小児体格であることを容易に認識できる。
報知部86は、被検者M1が小児体格である場合、CT撮影におけるX線照射量を低減させることを推奨する推奨報知を行うとよい。推奨報知は、具体的には、X線発生器42に供給する電圧を低減させることを推奨する表示、電流を低減させることを推奨する表示、旋回アーム62の旋回の速度を上げることを推奨する表示、旋回アーム62の旋回の範囲を減少させることを推奨する表示、撮影領域ROIをできるだけ小さくすることを推奨する表示を行うとよい。
このように、報知部86が報知を行うことによって、X線撮影装置10にてX線照射量が抑えられたX線撮影が実行されるように、操作者に促すことができる。これにより、被検者M1が小児体格であった場合のX線照射量を効果的に低減できる。
なお、操作者が、操作表示部82に対して1つの制御プロファイル830を指定する操作を行い、その指定操作に基づいて、プロファイル選択部805がその制御プロファイル830を選択するようにしてもよい。また、制御プロファイル830として、X線照射量が標準の制御プロファイル830よりも低く設定された1つ以上小児向け制御プロファイルが予め準備されていてもよい。小児向け制御プロファイル830が示すX線照射量は、例えば、標準の制御プロファイル830が示すX線照射量の半分以下としてもよい。そして、プロファイル選択部805が、操作者の所定操作に基づいて、複数の小児向け制御プロファイル830の1つを選択するようにしてもよい。この場合、CT撮影対象の被検者M1が子供である場合、又は、報知部86がX線照射量を低減させる推奨報知を行っている場合に、操作者が小児向け制御プロファイル830を指定することができるため、子供の被検者M1に対するX線被爆を低減できる。小児向け制御プロファイル830を適用させた上で、さらに上記のように被検者M1を被写体とするX線撮影に基づいて得られる、X線の透過度に関する個体別の透過情報832を生成してX線照射量を制御するように構成してもよい。
<画像処理装置30>
画像処理装置30のハードウェアとしての構成は、一般的なコンピュータ又はワークステーションと同様である。すなわち、画像処理装置30は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMを備えている。CPUが制御プログラムに従って動作することにより、制御部31として機能する。制御部31は、画像処理部33及び記憶部35に接続されている。画像処理部33は、撮影部20がX線撮影を実行した際にX線検出器52(又はセファロユニット66のX線検出器664)が出力した信号に基づいて生成されるX線透過画像を処理して、X線画像を取得する。記憶部35は、アプリケーション(プログラム)またはデータなどを記憶する。
画像処理部33は、CPUがアプリケーションに従って動作することにより実現される機能である。なお、画像処理部33は、GPU(Graphics Processing Unit)により実現されてもよい。
例えば、撮影部20にてパノラマX線撮影が行われた場合、画像処理部33は目的の断層を画像化したパノラマ画像を取得する演算処理を行う。具体的には、画像処理部33は、撮影部20において取得された短冊状の複数のX線投影画像をつなぎ合わせることによって、歯列弓に対応した1枚のパノラマ画像を生成する。
撮影部20にてCT撮影が行われた場合、画像処理部33は、取得された複数のX線投影画像に対して各種処理(フィルター処理および逆投影処理等)を実行して、撮影領域を任意の位置でスライスした場合の各断層を示す画像(CT画像)を生成する。
制御部31には、各種情報を示す画像を表示する表示部32、及び、操作者が操作入力を行う操作部34が接続されている。また、画像処理装置30及び本体制御部80は、通信I/F36,84を介して互いに情報通信可能に接続されている。通信I/F36,84はサーバ9との通信も可能とする通信部の例である。
画像処理装置30は、本体制御部80の機能の一部又は全部を備えていてもよい。すなわち、画像処理装置30が、処理部800−807を備えていてもよい。同様に、本体制御部80は、画像処理装置30の機能の一部又は全部を備えていてもよい。
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
上記実施形態では、複数の制御プロファイル830が撮影領域ROIの位置に応じたものとされているが、これは必須ではない。例えば、局所撮影領域として、歯列弓全域が収まる領域を対象とする場合、または顎全域が収まる領域を対象とする場合は、前歯領域、臼歯領域の別のような、頸椎HA1に対する方向ごとの制御を考えなくともよいので、複数の制御プロファイル830を、体格の大きさに応じたものとしてもよい。
この場合において、透過情報832について、X線高吸収領域の分布を示す情報としてもよい。例えば、被検者別にX線高吸収領域の分布を示す透過情報832を生成することによって、被検者におけるX線高吸収領域の分布に応じた個体別制御プロファイル834を生成できる。なお、X線高吸収領域は、例えば、頸椎HA1及び金属補綴物MP1(被せ物、ブリッジ、入れ歯、インプラント、ボルト等)である。頸椎HA1の位置は、例えば体格情報836が示す体格の大きさから設定されてもよい。また、金属補綴物MP1は、例えば診療情報90の記録から設定されてもよい。X線高吸収領域の分布に応じた透過情報832が生成されることによって、被検者M1におけるX線高吸収領域に応じたX線照射量でCT撮影を行うことができる。
上記実施形態では、体格情報836を利用して透過情報832を生成するようにしているが、プロファイル選択部805で選択される制御プロファイル830自体を体格ごとに準備するようにしてもよい。例えば、操作者が体格を示す複数の選択肢から選択する操作を行い、プロファイル選択部805が選択された体格に適応する制御プロファイルを選択する。この場合、初めの実施形態と同様、さらに局所撮影領域として歯列弓部分局所領域または顎部分局所領域を対象とし、前歯、臼歯の別のような撮影領域ROIに対応する制御プロファイル830aをプロファイル選択部805が選択するようにできる。こうしておいて、上記のように被検者M1を被写体とするX線撮影に基づいて得られる、X線の透過度に関する個体別の透過情報832を生成するように構成してもよい。
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。