以下、被検者(患者)の顎顔面をCT撮影するX線CT撮影装置の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
図1は、X線CT撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。X線CT撮影装置は、X線CT撮影装置本体1と、X線CT画像表示装置2を備え、通信ケーブル等によってデータを送受信する構成になっている。
X線CT撮影装置本体1は、被検者(患者)にX線を照射するX線照射部110と、被検者Oを透過したX線を検出するX線検出部120と、X線照射部110及びX線検出部120を対向して有する旋回アーム3とを備える。一般的に、X線CT撮影装置は、CT撮影機能及びパノラマ撮影機能等を有する。
CT撮影機能は、頭頸部領域のCT撮影が可能で、通常は主に歯顎領域の一部または全部を複数の対象撮影領域(画像再構成範囲)として設定し、択一的に設定された対象撮影領域(画像再構成範囲)を中心に旋回アーム3を回転させながら対象撮影領域(画像再構成範囲)の断層撮影を行う。パノラマ撮影機能は、X線照射部110及びX線検出部120が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アームを水平移動及び水平旋回させながら断層撮影を行う。
X線CT撮影装置本体1は、X線照射部110とX線検出部120とを対向させて支持した旋回アーム3と、被検者Oとされる顎顔面を保持する被検者保持手段(頭部固定部)4と、旋回アーム3を駆動する駆動ユニット部160と、撮影装置本体制御部170とを備えている。撮影装置本体制御部170には操作パネル71aが付加されている。この操作パネル71aは、関心領域rを指定するのに用いてもよい。この場合、歯列弓DAの形状等を示すイラストを表示するイラスト表示部として機能するようにしてもよい。イラストをスカウトに用いる場合、そのイラストを表示する上述の操作パネル71aや表示手段26等はイラスト表示部として機能する。
X線照射部110は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器112と、X線ビームBの広がりを規制するスリット等からなるコリメータ111とで構成されており、X線検出部120は、2次元的に広がったCCDセンサやX線直接変換方式(FPD:フラットパネルディテクタ)センサ等からなるX線検出器121を設けたカセット122で構成されている。カセット122はX線検出部120に対して着脱自在であるが、X線検出器121をカセット122を介さずにX線検出部120に固定的に設けてもよい。駆動ユニット部160は、CT撮影時に旋回アーム3の旋回軸3cを対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心に一致させたり、小さな画像再構成範囲より大きなエリアを撮影するパノラマX線CT撮影時に、旋回軸を歯列弓DAに沿って回転移動させたりするために、旋回軸をXY方向(水平方向)に移動するXYテーブルを備えた旋回軸位置設定手段161を備えている。この旋回軸位置設定手段161は、旋回アーム3の旋回軸3cを水平移動させるX軸モータ、Y軸モータと、旋回アーム3を回転させるXYテーブルに設けられた旋回軸回転手段162の旋回用モータとを備えている。まず、旋回軸3cは、被検者Oの正中線に一致するように設定される。そして、旋回軸3cは、CT撮影時に、例えば、図中の3c’、3c’’に示すように、対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心に移動する。
更に、X線CT撮影装置本体1は、旋回アーム3を水平方向に直進移動するための旋回アーム位置設定手段31を備える。旋回アーム位置設定手段31で旋回アーム3を直進移動することによって、X線照射部110と被検者Oとの距離、X線検出部120と被検者Oとの距離を変更して、撮影対象の画像エリア(画像再構成範囲)を拡大し、X線検出部120を被検者Oに大幅に近接させた状態で、一度の撮影における撮影領域を増大できるようになっている。
撮影装置本体制御部170は、駆動ユニット部160を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行するCPU171と、X線照射部110を制御するX線発生部制御手段172と、X線検出部120を制御するX線検出部制御手段173とを備えている。操作パネル71aは、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。図2に示す操作パネル71aとしては、操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることもできる。また、操作パネル71aが液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段を備えるようにしてもよい。
例えば、操作パネル71aに設けた表示手段に、X線CT撮影装置本体1の操作に必要な文字や画像等の情報を表示するように構成してもよい。また、X線CT画像表示装置2と接続して、X線CT画像表示装置2の表示手段26に表示される表示内容が表示手段にも表示されるようにしてもよく、表示手段26に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作などを通してX線CT撮影装置本体1に各種の指令ができるようにしてもよい。
X線CT撮影装置本体1は、操作パネル71a、あるいはX線CT画像表示装置2からの指令に従って、歯列弓DAのパノラマ撮影や、歯列弓DAの全体ではないが、歯列弓DAの一部を含めた被撮影領域(撮影対象領域)rrを撮影する局所的なCT撮影や、歯列弓DAの全体を含めた被撮影領域(撮影対象領域)rrは勿論、頭頸部領域のほぼ全域を含む。例えば、直径200mm、高さ180mmの被撮影領域(撮影対象領域)rrの360°全方向からの画像データの取得も可能でCT画像、3D画像は勿論のことレイサム法を用いたセファロ画像(正面像、側面像の画像再構成を含む)またオフセットスキャンを用いて更に大きな被撮影領域(撮影対象領域)rrを撮影する広域的なCT撮影を選択的に実行する。また、各種指令や座標データ等を表示装置2から受け取る一方、撮影した画像データをX線CT画像表示装置2に送る。また、被撮影領域(撮影対象領域)rrの底辺は、X線照射部110から照射されるコーンビームの下縁の線が基準となる。
図2は、座位タイプのX線CT撮影装置のより具体的な正面図、図3は、側面図、図4は、上面図である。
座位タイプのX線CT撮影装置本体1は、左右両側に支柱6が立設されている。支柱6は、床面に設置されたベース5に支持されている。支柱6の上部に、支持フレーム7が支持されており、支持フレーム7の上部70内に回転駆動ユニット160が設けられている。
回転駆動ユニット160の下部には、旋回アーム3が旋回可能に支持されており、旋回アーム3の両側にX線検出部120及びX線照射部110が設けられている。X線CT撮影装置本体1は、被検者Oを座位状態にするための椅子部40を備える。さらに、X線CT撮影装置本体1は、椅子部40を上下動するための電動アクチュエータ40aが設けられている。電動アクチュエータ40aの動作で椅子部40を上下動して、被検者Oの個体差に応じて撮影対象領域の高さに位置決めする。
X線CT撮影装置本体1は、椅子部40の下部に横方向に延びるフレーム40bが設けられ、このフレーム40bは、上下方向に伸縮自在な電動アクチュエータ40cが取り付けられている。X線CT撮影装置本体1は、電動アクチュエータ40cの上部に、頭部支持ユニット71を有する。頭部支持ユニット71は、被検者が椅子部40から出入りしやすいように、水平方向に旋回可能で、基準位置に位置決めロック可能となっている。頭部支持ユニット71は、被検者の頭部を固定するための頭部固定部4、被検者Oがグリップするための一対のハンドル71bを備える。
頭部固定部4は、撮影に際して被検者Oの頭部を安定的に固定するために、図9(a)(b)に示すように、被検者Oの顎を乗せるためのチンレスト4aと、側頭部または外耳口を固定するための左右対称に開閉する側頭部押さえまたはイヤーロッド4bと、前頭部を支持するための前頭部押さえ(図示せず)とで、構成する3点固定方式を基本として、更に後頭部を前頭部に対してベルトを用いて固定するようになっている。頭部固定部4に固定された被検者Oに対する被撮影領域(撮影対象領域)rrは、図9(a)に示すようになる。
さらに、X線CT撮影装置本体1は、旋回アーム3の底面と頭部固定部4の上部とが干渉しないように干渉防止機構41を備える。干渉防止機構41は、頭部支持ユニット71に設けられた反射型のビームセンサー41aを備える。さらに、干渉防止機構41は、支柱6の所定の高さ位置に反射板41bを備える。反射板41bは、ビームセンサー41aに対向する位置に設けられており、ビームセンサー41aから照射されるビームが反射板41bで反射され、ビームセンサー41aが検知することで電動アクチュエータ40a、40cの上昇を停止するようになっている。これにより、被検者Oの頭部が旋回アーム3に干渉せず安全に構成されている。
また、支持フレーム7には、動作表示手段42d及びポジションビーム手段42cが設けられている。動作表示手段42dは、稼働中の装置がどのような操作を行っているか表示する。ポジションビーム手段42cは、選択されたモードの撮影対象領域(画像再構成範囲)がどの範囲かを被検者Oに弱いレーザービームを照射し、その範囲内に被検者Oを位置決めするように電動アクチュエータ40a、40cを操作できるようになっている。
さらに、支持フレーム7は、被検者Oの正中位置を確認するための正中用レーザービーム42aを備える。また、旋回アーム3の両側に位置付け用レーザービーム42b、42bが設けられている。位置付け用レーザービーム42bは、X線発生器112と予め設定された2次元X線検出器121の入力面121aの基準位置121bとを結ぶ直線上を一本の線状に指向するようになっている。さらに、X線発生器112と2次元X線検出器121の入力面121aに予め設定された基準位置121bとを結ぶ水平な直線に対して直交し、且つ、旋回軸3cの中心を通る垂直の軸線を指向するようになっている。これにより、位置付け用レーザービーム42bは、被検者Oの対象撮影領域(画像再構成範囲)rrの中心位置を指示し、設定を容易にできるようになっている。
回転駆動ユニット160には、旋回軸位置設定手段161及び旋回軸回転手段162を備え、中空式で減速機を使用せずに負荷をモータに直結して駆動するダイレクトドライブ方式で高精度の位置決め機能を有するモータを備える。モータの回転駆動によって旋回軸3cが回転するようになっている。
また、旋回軸位置設定手段161は、Y方向に移動するYテーブルと、Yテーブル上でX方向に移動するXテーブルとを備える。
旋回アーム3は旋回アーム位置設定手段31を備える。旋回アーム位置設定手段31は、旋回可能な旋回テーブル、旋回テーブルの上を直動可能なスライドテーブルを備える。旋回アーム3の底面には干渉防止センサ(図示せず)が設けられており、旋回アーム3の底面と頭部固定部4の上部とが干渉しないようになっている。頭部固定部4の上部が干渉防止センサに当たると、電動アクチュエータ40a、40cの上昇を停止するようになっている。
図4の二点鎖線で示す範囲は、旋回アーム3の旋回軸3cの中心位置がXY方向に水平に移動可能な範囲を移動したときの最大回転半径の例を示している。
X線CT撮影装置本体1は、X線照射部110から照射されるX線を絞るコリメータ(マスク)111を備える(図1、図3)。図8の通り、コリメータ111は、X線照射部110に固定されるベース部111aを備え、ベース部111aに円板状のマスク取付板130を備える。マスク取付板130は、中心に回転軸130aを備え、回転軸130aの周りに回転するようになっている。
マスク取付板130は、周方向に複数のマスク132を備える。マスク132は、それぞれ形状の異なるパノラマ用開口131a、複数のコーンビーム用開口131bが形成されている。開口131a、131bは、X線ビームをコーンビームに成形するための長方形又は正方形、細長い帯状に成形するための縦長形状となったものが複数含まれている。これにより、CT撮影、パノラマ撮影等の種類や撮影領域等に応じて、マスク取付板130を所定位置に回転することで、所望の開口131a、131bを選択するようになっている。図8(a)の通り、コリメータ111は、モータ133を備える。モータ133の出力軸には小歯車133aが設けられている。マスク取付板130は、外周にギア130bが形成されており、ギア130bと小歯車133aとはギア接続されている。そして、モータ133の回転により、小歯車133a及びギア130bを介してマスク取付板130が回転し、開口131a,131bを選択する。X線発生器112から照射されるコーンビームは、選択された開口131a,131bを通じて所定範囲に絞られる。マスク取付板130は、原点センサ134によって原点位置を把握できるようになっている。これにより、複数の開口131を横並び又は縦並びに配置して、所望の開口131をスライドして選択するより、マスク取付板130の設置スペースを最小限に抑えることができる。尚、コリメータ111としては、直線移動型コリメータを用いることもできる。
図5ないし図7は、X線CT撮影装置本体1のより具体的な別の実施例である。図5ないし図7は、立位タイプのX線CT撮影装置の外観を示し、図5は、X線CT撮影装置のより具体的な正面図、図6は、側面図、図7は、上面図である。図5ないし図7に示す通り、立位タイプのX線CT撮影装置本体1は、支持フレーム7、旋回アーム3、X線照射部110、X線検出部120、頭部固定部4等を備える。X線CT撮影装置本体1は、床面に設置するベース5と、ベース5から縦方向に立設された支柱6とを備える。
支持フレーム7は、支柱6に支持されている。支持フレーム7は、昇降機構62(図5)を介して支柱6に沿って昇降するようになっている。支持フレーム7は、上部70に回転駆動ユニット160を支持し、下部に頭部支持ユニット71を支持する。図5に示すように、支持フレーム7、回転駆動ユニット160及び頭部支持ユニット71は、正面から見てコ字状に構成されている。回転駆動ユニット160は、旋回アーム3を回転可能に支持する。頭部支持ユニット71は、被検者Oの頭部を保持する頭部固定部4、被検者Oが握るための一対のハンドル71bを備える。頭部支持ユニット71は、先端側に操作パネル71aを備えており、操作者が操作パネル71aで支持フレーム7の昇降位置を操作したり、頭部固定用イヤーロッドの開閉、CT撮影時の対象撮影領域(画像再構成範囲)の設定、パノラマ撮影時の位置付け用レーザービームの調整および、旋回アーム3を原点位置に戻すリセット等の操作ができるようになっている。
図5、図6の通り、旋回アーム3は、上部に旋回軸3cを備える。旋回軸3cは、回転駆動ユニット160を介して支持フレーム7に支持されている。旋回アーム3は、一方側にX線検出部120、他方側にX線照射部110を備える。X線検出部120とX線照射部110は互いに対向する。X線検出部120は、二次元X線検出器(以下、X線検出器という)121及び外装カバー類を含む。X線照射部110は、X線管、コリメータ及び外装カバー類を含む。そして、X線管のX線焦点から被検者(患者)Oに対してX線コーンビームを照射し、被検者Oを透過したX線をX線検出器121の二次元の入力面で検出する。
回転駆動ユニット160は、旋回アーム3を旋回するための旋回軸回転手段162を備える。旋回アーム3は、旋回軸回転手段によって、略垂直方向に延設された旋回軸3cを中心として水平方向に旋回する。回転駆動ユニット160は、旋回軸3cを略水平面におけるXY方向に水平移動するための旋回軸位置設定手段を備える。そして、旋回軸位置設定手段は、下記する対象撮影領域(画像再構成範囲)rrの中心位置に旋回軸3cを設定する。旋回軸位置設定手段は、X方向に移動するためのXテーブルと、Y方向に移動するためのYテーブルとを備える。
旋回軸回転手段162は、モータの回転により、旋回軸3cを回転させる。旋回軸3cは、旋回アーム3に固定されているので、旋回軸3cの回転に応じて、旋回アーム3が旋回する。
前述と同様に、旋回軸位置設定手段161は、Xテーブルを備え、X方向に移動する。
さらに、旋回軸位置設定手段161は、Yテーブルを備え、Y方向に移動できるようになっている。
旋回軸3cは、XYテーブルに回転自在に垂直に支承されており、XYテーブルがXY方向に移動することによって、水平方向の任意の位置に移動する。これにより、CT撮影時には、対象撮影領域(画像再構成範囲)rrを中心に旋回アーム3を回転させながら対象撮影領域(画像再構成範囲)rrの断層撮影を行うので、旋回軸3cの中心を対象撮影領域(画像再構成範囲)rrの中心位置に一致するように移動する。さらに、パノラマ撮影時には、X線検出部120とX線照射部110が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回軸3cを介して旋回アーム3を水平移動及び水平旋回させながら断層撮影をする。パノラマ撮影のX線ビームの軌跡は、歯列弓(各歯牙)に対して正放線投影となるようにX線を入射するため包絡線状の軌跡をなす。
図7の二点鎖線で示す範囲は、旋回アーム3の旋回軸3cの中心位置がXY方向に水平に移動可能な範囲を移動したときの最大回転半径の例を示している。
図10は、X線CT撮影装置本体1による顎顔面のパノラマ撮影の仕組みを説明する原理図である。X線照射部110において、X線照射部110の前方に設けられたコリメータ111は、形状を異ならせた複数のスリットを形成したマスク132で構成されており、マスク取付板130を回転させることでスリットのいずれかを選択し、選択したスリットによってX線発生器112から照射されたX線ビームNBの広がりを制限する仕組みになっている。パノラマ撮影では、パノラマ用開口131aが選択され、その形状に対応したX線細隙ビームNBが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。そして、その状態で旋回アーム3を旋回させ、X線細隙ビームNBによって顎顔面を走査しつつ、X線検出器121の検出面の領域Faに投影された透過画像をパノラマ撮影データとして蓄積することにより、パノラマ撮影が実行される。
図11は、X線CT撮影装置本体1による顎顔面の広域CT撮影の仕組みを説明する原理図である。広域CT撮影では、マスク132に形成された複数の開口から矩形のコーンビーム用開口131bが選択され、その形状に対応した矩形のX線広域ビームCBが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。X線広域ビームCBによる被撮影領域(撮影対象領域)rrは、図12に示すように、全顎を対象とする頭頸部領域のほぼ全域の例えば直径200mm、高さ180mmの360°全方向からの画像データの取得が可能でCT画像、3D画像、セファロ画像は勿論、オフセットスキャンによる更なる広域化が可能であり、歯列弓DA全体を含む広がりを有している。そして、旋回アーム3の旋回軸3cの延長線3c1を歯列弓DAの内側の地点に固定し、X線広域ビームCBが照射されている状態で、旋回アーム3を少なくとも半回転以上旋回させながら、X線検出器121の検出面の領域Fcに投影された透過画像を被検者OのCT撮影データとして蓄積することにより、広域CT撮影が実行される。選択するコーンビーム用開口131bにより、図11の点線で示すように、X線検出器121の検出面に投影される透過画像の大きさが変化する。
図13は、X線CT撮影装置本体1による顎顔面の局所CT撮影の仕組みを説明する原理図である。局所CT撮影では、マスク132に形成された複数のコーンビーム用の開口131bから矩形小型のコーンビーム用開口131bが選択され、その形状に対応した矩形のX線局所ビームCNが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。X線局所ビームCNの高さを調整するために、マスク132には、高さを異ならせた複数の矩形小型のコーンビーム用開口131bを設けてもよい。X線局所ビームCNによる被撮影領域(撮影対象領域)rrは、関心領域rとして歯列弓DAの全部ではないが、その一部を含む広がりを有している。
そして、図13、図14に示しているように、旋回アーム3の旋回軸3cの延長線3c1を関心領域rの中心(この例では歯牙th17)に固定し、X線局所ビームCNが照射されている状態で、旋回アーム3を少なくとも半回転以上旋回させながら、X線検出部120のX線検出器121の撮像面の領域Fbに投影された透過画像をCT撮影データとして蓄積することにより、局所CT撮影が実行される。この図14に示す例では、LC1からLC6を経て360°旋回アーム3を回転させている。
広域CT撮影、局所CT撮影いずれにおいても、CT撮影中、旋回軸3cを関心領域の中心に固定しない方式も可能である。
例えば、上述のXYテーブルを利用して、CT撮影中、旋回軸3cは移動するが、X線照射部110とX線検出部120の旋回中心が旋回軸3cとは別の箇所に生じるように制御して、その旋回中心が関心領域rの中心に来るように設定してもよい。
さらにX線コーンビームの広がりの対称軸上のX線が撮影対象領域の中心を外れた位置を通過するようにオフセットさせ、撮影対象領域の一部のみを撮影しつつ、撮影対象領域全体のX線撮影データを少なくとも180°以上得る周知のオフセットスキャンの方式を採用して、更に被撮影領域(撮影対象領域)rrの拡大を図ってもよい。
すなわち、CT撮影中、旋回するX線コーンビームの照射野の旋回中心が関心領域rの中心に来るように撮影できればよい。
X線CT撮影装置本体1と接続されるX線CT画像表示装置2は、例えば、コンピュータやワークステーションで構成されており、表示装置本体20には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段26や、キーボード、マウス等で構成された操作手段25が付加されている。表示手段26に表示された文字や画像の上でのマウスでのポインタ操作等を通じて各種指令を与えることが可能である。表示手段26はタッチパネルで構成することもできるので、この場合、表示手段26は操作手段25を兼ねる。
操作手段25は関心領域rを指定する手段として機能する。表示手段26の画面上に表示された画像に対して操作手段25の操作を加えることで関心領域rを指定する構成の場合は、操作手段25と表示手段26が関心領域指定手段として機能する。このように、なんらかの形で関心領域の指定に用いられる手段が関心領域指定手段である。表示装置本体20は、各種プログラムを実行するCPU21と、ハードディスク等で構成され、各種撮影データや画像等を記憶する記憶手段22と、再構成を開始する画像のフレームデータを決定する開始位置決定手段23と、座標処理手段23a、画像再構成を行う画像再構成手段24とを備えている。ここに、CPU21、記憶手段22、開始位置決定手段23、座標処理手段23a、画像再構成手段24は画像処理手段を形成する。記憶手段22には、後述する歯列弓正視情報等も記憶される。図2に示おいては、記憶手段22は、外部の記憶装置を記載しているが、装置本体20内にも記憶装置を備えている。この発明では、内部の記憶装置と外部の記憶装置で記憶手段22を構成しているが、これに限らず、上記した各種データを格納できるものであればよい。CPU21は、記憶手段22に格納されたプログラムにより、各種動作を制御し、プログラムに従い、開始位置決定手段23、座標処理手段23a、画像再構成手段24の各種手段の機能を果たすように動作する。
記憶手段22には、パノラマ撮影から得たパノラマ撮影データ、CT撮影から得たCT撮影データ、スカウト画像として表示できるイラストを生成するイラストイメージデータ、後述のように、X線広域ビームを2方向から照射して得た投影画像、歯列弓正視情報、生成した正視X線CT画像などを記憶することもできる。
ここに表示手段26は、文字や記号を含む画像を表示する。表示手段26は関心領域指定手段として、歯列弓DAを表したスカウト画像を表示し、そのスカウト画像上で関心領域rの指定操作を受ける一方、CT撮影データから生成された正視X線CT画像(後述する)等を表示する。更に、表示手段26には、関心領域rを指定するために、イラストや歯牙情報等を表示する。座標処理手段23aは、広域的なCT撮影においては、歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置の計算の実行等を行い、局所的なCT撮影においては、歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置の計算を実行するだけでなく、歯列弓モデルdmに対して特定された関心領域rの位置に基づいて、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるように座標計算を実行し、算出した座標データをX線CT撮影装置本体1に送信して、被検者Oの位置決めを実行させる。スカウト画像を、X線CT撮影装置本体1の操作パネル71aに表示するようにしてもよい。
X線CT画像撮影装置は、上記の構成とすることにより、以下に説明する顎顔面のX線CT画像の表示方法を実行することができる。
この発明による顎顔面のX線CT画像の表示方法は、歯列弓DAを含んだ被検者OのCT撮影データを処理して、X線CT画像を表示する装置において実行されるもので、X線CT撮影は、広域CT撮影と、局所CT撮影とに大別される。
広域CT撮影は、歯列弓DAの全体を含めた顎顔面のほぼ全域を撮影するものである。この場合、顎顔面に関心領域rを指定することにより、関心領域rを正視したX線CT画像(以後、正視X線CT画像と呼ぶ)として表示される範囲、すなわち正視表示対象箇所の指定を行い、撮影されたCT撮影データを画像処理して、正視表示対象領域の正視X線CT画像を表示する。関心領域rの指定については、各種イラスト画像を表示し、その画像上で行う構成や、画像を用いずに、例えばコード等によって特定の歯牙thを指定する構成等が可能である。
一方、局所CT撮影は、歯列弓DAの全体ではなく、その一部、例えば歯牙が2〜3本並ぶ領域を含んだ顎顔面を局所的に撮影するものである。この場合、関心領域rの指定を受け付けると、その関心領域rが実際の被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるように撮影条件を設定して局所的なX線CT撮影を実行する。関心領域rの指定については各種イラスト画像を表示し、その画像上で行う構成や、画像を用いずに、例えばコード等によって特定の歯牙thを指定する構成や、位置付用のガイドビームとなる可視光ビーム、あるいは目盛付スケール等を利用して目視で行う構成が可能である。その後、得られたCT撮影データから、関心領域rを頬側から舌側に向かって正視したX線CT画像を生成して表示する。
広域CT撮影と局所CT撮影のいずれの場合でも、関心領域rを頬側から舌側に向かって正視する正視方向vは、後述するように、歯列弓DAの3次元形状の歯列弓モデルdmより求めること、あるいは、関心領域rの部位毎に予め正視方向vを登録したデータテーブル(ルックアップテーブル)を参照することによって求めることが可能である。この歯列弓DAは仮想歯列弓が用いられる場合もある。
歯列弓モデルdmは歯列弓DAの全体または一部の形状を数学的に表現した関数として規定できる。
歯列弓モデルdmは、標準的な歯列弓の形状を想定して規定してもよいし、または撮影した歯列弓の画像データを画像処理して得た形状のデータより個別に規定してもよい。または歯列弓の形状を実測して得たデータより個別に規定してもよい。
この発明では、そのような歯列弓モデルdm、歯列弓モデルdmを基にした座標データやデータテーブル、正視方向vを導くのに必要な情報、正視方向vそのもの等、正視に関する情報を歯列弓正視情報と総称する。
歯列弓DAは湾曲しているために、対象部位ごとに正視方向vが異なる。歯列弓正視情報は、所望の対象部位を正視するための情報である。
歯列弓正視情報は、対象部位を正視するための情報であるので、必ずしも具体的な正視方向vを定める必要はなく、対象部位を正視できるスライス位置の情報であってもよい。
X線CT撮影装置、より具体的にはX線CT撮影装置本体1の存在する3次元空間において、歯列弓モデルdmが想定ないし設定される位置は、座標情報、位置情報として把握でき、同様に、指定される関心領域rの3次元空間中の位置も、座標情報、位置情報として把握できるので、この発明では、それら歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報と、関心領域rの座標情報、位置情報に基づいて、後述するように、関心領域rを正視した正視X線CT画像を生成する。
そのような例として、広域CT撮影を行って得られたCT撮影データから被検者Oに関するCT撮影データを得る場合の処理を説明する。この処理では、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されているので、関心領域rを指定すると、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置が特定できる。歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定されると、その関心領域rの箇所で読み取った画像のフレームデータから画像再構成処理を行い、被検者Oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成することができる。
次いで、局所CT撮影を行って得られたCT撮影データから被検者Oに関するCT撮影データを得る場合の処理を説明する。この処理では、関心領域rを指定すると、X線CT撮影装置本体1の機械的構成により、被検者位置付けが行われ、指定された関心領域rを撮影対象とした局所CT撮影が行われる。この実施形態では、360°撮影のときに旋回アーム3の回転に従い、510枚のCT撮影データとしてのフレームデータが記憶手段22に格納される。360°撮影のときに510枚のフレームデータを順次格納することで、各フレームデータは旋回アーム3のどの位置のCT撮影データかが判る。記憶手段22には、局所CT撮影時の関心領域rに対する正中線に対する撮影角度と各フレームデータとの対応関係も格納される。このとき、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されるので、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置が特定できる。関心領域rの座標、位置が特定されると、記憶手段22に格納されたフレームデータからその位置に対応して、その正視方向vに対する最も近い角度で撮影されたフレームデータを求める。そして、そのCT撮影データのフレームデータから画像再構成処理を行い、被検者Oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成することができる。
ここで、図14を用いて歯列弓モデルdmと関心領域rの基本的な関係を詳述する。図14は、関心領域rの指定の方法を説明する平面図で、理解を容易にするために、下顎における歯列をなす歯牙thを輪切りにしたスライス面を平面視している。そして、歯牙th、顎骨jb、顎関節jjからなる一般的形状の歯列弓DAが模式的に示され、この歯列弓DAに関する歯列弓モデルdmが設定されている。
歯列弓モデルdmの形状は、様々なものが考えられるが、歯列弓DAの湾曲形状、または少なくとも歯列弓DAの湾曲形状に沿う形状を有している。さらに詳細な例としては、歯列弓DAの各歯牙thの中央を横切る、馬蹄形状、または略馬蹄形状の、例えば歯科のパノラマX線撮影におけるパノラマ断層と同様または類似の形状を有しており、3次元空間中の空間的位置に想定ないし設定される。歯列弓モデルdmの取得方法も、様々なものが考えられる。歯列弓モデルdmは、一般的形状の歯列弓DAを基に形成しても、個別の歯列弓DAを実測した値から得ても、画像解析から得てもよい。
歯列弓DAは、図14、図15に示しているように、列をなす歯牙thの部分では頬側に凸をなして湾曲し、最も奥の歯牙th18、38の近傍から顎関節jjに向かう部分では、頬側に向かって外側に開く形状となっている。そのため、歯列弓モデルdmは、そのような歯列弓DAの形状に合わせて、歯列弓DAの舌側と頬側の間のほぼ中央の地点を結ぶ湾曲形状となる。より具体的には、歯列弓モデルdmは、歯列を形成する複数の歯牙thの中央部分を結び頬側に凸をなす放物線状の曲線と、最も奥の歯牙th48から顎関節jjに向かう近傍で舌側に凸をなし、歯牙th18、38の中央と顎関節jjの中央を結ぶ線からなる湾曲形状となっている。
無論、個体によって特殊な形状の歯列弓DAが存在することもあり、その場合にはその特殊な形状の歯列弓DAをもとに歯列弓モデルdmを形成しても構わない。
この発明においては、顎関節jjの部分についても適用できる。顎関節は重要な診断部位であり、特に注目して診断対象とする場合もありうる。
関心領域rは、外縁が平面視で真円の形状であり、3次元的には、その外縁を上下に伸長した円柱の形状をとるものとする。
図14の例では、歯牙th17に注目し、歯牙th17の中央の、歯列弓モデルdmの形成する線上に関心領域rの円の中心を一致させて関心領域rを指定しており、この場合には、中心における歯列弓モデルdmの接線を算出あるいは設定し、接線に垂直な、歯列弓を頬側から舌側に向けて正視する方向を正視方向vとして算出または設定できる。図14は、局所CT撮影において、被検者O、X線照射部110、X線検出部120を見下した平面図である。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、関心領域rの中心を旋回中心Cとして、X線照射部110とX線検出部120が旋回することにより、位置LC1、LC2、LC3の順に変位して行く。X線CT撮影においては、旋回アーム3の旋回角度の微小角度毎に被検者Oの透視画像P1をフレームデータとして取得して行き、CT撮影データとするので、各位置LC1…において、それぞれの透視画像P1…を得ることができる。
正視方向vは、基本的には、歯列弓DAの湾曲に対して法線の方向である。これは、接線に対して直交する方向であるが、必ずしも厳密な法線方向としなくとも、ほぼ法線方向であればよい。しかしながら、関心領域rを正視している感覚が得られるように正視方向vを設定することは必要である。
ここで、そのような正視方向vが設定されれば、つまり正視方向vが決定されれば、その正視方向vに対応するCT撮影データであるフレームデータから再構成を開始して、正視方向vから見たX線画像として、正視方向vから見た所望のスライス位置が断層面となった断層面画像を生成したり、正視方向vから見た3次元CTボリューム画像を生成したりすることでを生成することが可能である。なお、この発明でいう3次元CTボリューム画像はボリュームレンダリング像である。
なお、正視X線CT画像を断層面画像で生成する場合、各スライス位置におけるスライス面つまり断層面を、例えば歯列弓DAの湾曲に沿った曲面等の任意の曲面に設定しても、平面に設定してもよい。
なお、頬側から舌側に向けて正視の意味であるが、歯列弓を裏側から観察したい場合も考えうるので、この場合を排除するものではない。
この場合は頬側から舌側にマイナス方向に向かう方向、つまり舌側から頬側に向かう方向ということになる。すなわち、頬側から舌側に向けて正視する方向のベクトルとして、マイナスのベクトルも含まれてよい。
関心領域rを正視方向vから正視した断層面画像を生成する場合、断層面の位置つまりスライス位置は任意であり、接線の位置に設定しても、接線をわずかに舌側に平行移動した位置に設定してもよい。なお、CT撮影データを再構成してそのスライス位置における、上下に展開する断層面画像を生成することは、画像処理により可能である。
なお、スライス位置の設定は任意なので、上記例の他、様々な設定方法がある。例えば、上記の例では関心領域rの形状として真円、円柱を想定したが、任意の形状として、例えば円の中心に相当する、関心領域rの概ね中央の箇所を任意に関心領域rの中に設定してもよい。また、関心領域rの形状には、点も含まれる。
正視方向vやスライスの位置を、逐一計算せずに得る方法もある。歯列弓モデルdmを、複数の歯牙thが比較的直線状にならんだ区間に注目し、区間ごとに正視方向vまたはスライス位置を予め設定しておいてもよい。
正視方向vやスライス位置は、歯列弓DAの3次元形状に基づく歯列弓モデルdmの形状から関心領域rの指定ごとに演算して求めてもよく、関心領域rの部位ごとに予め正視方向vやスライス位置slを設定したデータテーブル(ルックアップテーブル)を参照して求めてもよい。
また、歯牙th毎に正視方向vやスライス位置を設定しても、歯列弓モデルdmを点に細分して、点ごとに正視方向vやスライス位置を設定してもよい。また、歯牙th毎に正視方向vやスライス位置を設定してもよい。また、上述したように、関心領域rの形状には、点も含まれる。すなわち、関心領域rの指定は、必ずしも2次元に広がりのある領域として指定せずに、点としての指定も可能である。そして、スライスされた断層面の画像は、関心領域r内の領域のみの画像を生成してもよく、関心領域r以外の部分も含む画像を生成してもよい。
ところで、パノラマ撮影においては、細隙X線ビームを歯列弓にできるだけ直交するように入射させているが、その入射方向をこの発明においては、正視方向vとして設定することができる。
次いで、画像解析することによって歯列弓モデルdmを得る手順を説明する。例えばCT撮影データから再構成した顎顔面の3次元CTデータを高さ方向にスライスすると、歯列弓DAの部分では、各歯牙thの横断面が馬蹄形状に分布したX線CT断層面画像や、顎骨の横断面のX線CT断層面画像が得られる。そこで、その横断面の分布態様を画像解析すれば、歯列弓DAの形状を把握することができるので、その把握した形状との差分が最小になるような標準曲面dm等を、例えば最小二乗法等によって決定すればよい。
また、被検者Oや歯列弓DAの形状を実測することにより歯列弓モデルdmを得ることもできる。例えば、X線撮影時に被検者Oを保持する頭部固定部4の保持部を、被検者Oに合わせて可変調整できるようにしておき、その調整値から歯列弓DAの形状を推定するような方法が可能である。このとき、頭部固定部4の保持部を、被検者Oに合わせて可変調整した調整値と、歯列弓モデルdmとの相関関係は、予め調査して準備しておく必要がある。
図9(a)、(b)においては、頭部を挟む2本のイヤーロッド4bが可動であり、頭部のサイズに合わせて2本のイヤーロッド4bの幅が拡大縮小できる。この2本のイヤーロッド4bの開度にしたがって、歯列弓モデルdmの形状を変更するように構成できる。具体的には、2本のイヤーロッド4bの開度が大の場合、歯列弓モデルdmの形成する弧が大きい歯列弓モデルdmを設定し、2本のイヤ−ロッド4bの開度が小の場合、歯列弓モデルdmの形成する弧が小さい歯列弓モデルdmを設定する。
なお、歯列弓DAの形状の実測は、これ以外の方法も考えられる。例えば頭部を固定した状態で患者に平面状の感圧センサを噛ませ、圧力が高く測定された箇所の2次元座標情報ないし3次元座標情報を得て歯列弓DAの湾曲形状を検出してもよい。
図27は、上記CT撮影に係る基本手順を説明するフロー図である。このフロー図に従い、図20ないし図23を参照して、この発明にかかるCT撮影の基本動作について説明する。
操作者は、被検者(患者)Oを撮影する。そして、関心領域rのCT画像が表示手段26に表示される。この撮影に際して、操作者は、被検者ID、被検者氏名、撮影日時などの被検者情報を操作手段25から入力する(ステップS1)。装置本体20のCPU21は、この入力に応答して,その被検者情報を記憶手段22の所定領域に格納し、後から格納する撮影データであるフレームデータとの関連づけを行う。
次いで、被検者(患者)Oを位置決めする(ステップS2)。位置決めは、操作者が椅子部40の高さを調整した後、頭部支持ユニット71の頭部固定部4に被検者Oの頭部を固定する。なお、この位置決めは被検者情報の入力前に行っても良いし、後述する撮影条件の設定後に行っても良い。
続いて、関心領域r(部位)の指定を行う(ステップS3)。関心領域rを指定する方法としては、表示手段26に表示した、歯列弓DAを表したスカウト画像上で関心領域rの指定をする方法等、関心領域rの指定を画像上で行う方法でも、歯列弓DAの各部位に割り当てた部分コード等で関心領域rの指定をする等、表示手段26に表示したスカウト画像を用いない方法でもよい。ここに、関心領域rは、正視した状態で表示させたい範囲、つまり正視表示対象領域であり、顎顔面の全体、または、顎顔面の一部、具体的には歯列弓DAの一部に関心領域rを指定する。顎顔面の全体を指定すると、被検者Oの正面からパノラマ画像が表示され、顎顔面の一部の場合は、指定した関心領域rの正視方向からのCT画像が表示される。これらの方法については後で詳述する。操作手段25等により指定された関心領域rは、装置本体20のCPU21により、記憶手段22に格納される。
続いて、装置本体20のCPU21は、操作者からの操作情報に基づいて、指定された関心領域rの中心Cを旋回中心とするために、旋回アーム3の旋回軸3cを関心領域rの中心Cに合わせるように、制御信号を駆動ユニット部160に与える。駆動ユニット部160は、CPU21からの制御信号に基づき、旋回アーム3の旋回軸3cを関心領域rの中心Cに合わせる。また、装置本体20のCPU21は、X線照射条件(X線の管電圧、管電流、スキャン時間、スキャン軌道など)をX線装置本体制御部170に与える。撮影装置本体制御部170は、入力された操作情報に基づき、X線発生部制御手段172を制御し、X線照射条件に従ったX線が照射される(ステップS4)。
図24に示すように、顎顔面全体を関心領域rとした、すなわち、広域CT撮影を操作者が指定すると、被検者Oの口腔部の中央部に旋回中心Cを設定するために、旋回軸3cをC1の位置に移動させ、旋回アーム3を旋回させる。歯牙33を中心として関心領域rを操作者が指定すると、歯牙33を中心部分に旋回中心とするために、旋回軸3cをC2の位置に移動させ、旋回アーム3を旋回させる。また、歯牙15を中心として関心領域rを操作者が指定すると、歯牙15を中心部分に旋回中心とするために、旋回軸3cをC3位置に移動させ、旋回アーム3を旋回させる。
この操作情報に基づき、旋回アーム3を被検者Oの口腔部の回りに移動(スキャン)させながら、X線照射部110からX線を照射させる一方で、X線検出部120に高速フレームの透過X線の検出をさせる。その検出したX線データがX線検出部制御手段173により、一例として、CT撮影の場合30fpsまた、従来法によるパノラマ撮影の場合95fpsといった高速フレームレートでフレームデータが出力され、このフレームデータがバッファメモリを介して記憶手段22に格納される(ステップS5)。この記憶手段22にフレームデータが格納される際には、CPU21は、格納されるフレームデータがどの位置で撮像したデータであるかは旋回アーム3による撮影開始位置、スキャン速度等により認識され、各フレームデータとの関係を記憶手段22に格納している。この実施形態では、360°撮影のときに旋回アーム3の回転に従い、510枚のCT撮影データとしてのフレームデータが記憶手段22に格納される。360°撮影のときに510枚のフレームデータを順次格納することで、各フレームデータは旋回アーム3のどの位置のCT撮影データかが判る。そして、記憶手段22には、局所CT撮影時の関心領域rに対する正中線に対する撮影角度と各フレームデータとの対応関係が格納される。また、180°撮影のときに旋回アーム3の回転に従い、255枚のCT撮影データとしてのフレームデータが記憶手段22に格納される。180°撮影のときに255枚のフレームデータを順次格納することで、各フレームデータは旋回アーム3のどの位置のCT撮影データかが判る。そして、記憶手段22には、局所CT撮影時の関心領域rに対する正中線に対する撮影角度と各フレームデータとの対応関係が格納される。なお、撮影データとして格納するフレームデータの枚数は、上記に限らず、被曝量の制限、撮影時間等により変化する。
図20は、全歯牙領域(広域)CT撮影時において、360°撮影時の取り込み開始位置の例を示す模式的平面図である。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの中心を旋回中心Cとして、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図20に示す例では、正面から撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が360°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が360°回転することで、X線CT撮影において、510枚のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。
図21は、全歯牙領域(広域)CT撮影時において、180°撮影時の取り込み開始位置の例を示す模式的平面図である。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの中心を旋回中心Cとして、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図21に示す例では、正面から撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が180°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が180°回転することで、X線CT撮影において、255枚のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。
図22は、局所CT撮影時において、360°撮影時の取り込み開始位置の例を示す模式的平面図である。この図22は、歯牙15を中心とする領域を関心領域rとして指定した例を示している。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの歯牙15の中心を旋回中心として、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図22に示す例では、歯牙15の延長上の顎正面から撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が360°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が360°回転することで、X線CT撮影において、510枚のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。そして、後述するように、関心領域rの正視方向vと同じか最も近い角度で撮影した格納されたフレームデータを算出することができる。
図23は、局所CT撮影時において、180°撮影時の取り込み開始位置の例を示す模式的平面図である。この図23は、歯牙15を中心とする領域を関心領域rとして指定した例を示している。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの歯牙15の中心を旋回中心として、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図23に示す例では、歯牙15の延長上の顎正面から撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が180°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が180°回転することで、X線CT撮影における所定のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。そして、後述するように、関心領域rの正視方向vと同じか最も近い角度で撮影した格納されたフレームデータを算出することができる。
このスキャンが済むと、被検者Oは装置から解放される(ステップS6)。
続いて、CT画像の生成の動作に入る(ステップS7)。この動作については、後述するが、CPU21は、指定された関心領域rに対応した歯列弓正視情報から関心領域rの正視方向vを決定し、関心領域rの正視方向vと同じか最も近い角度で撮影した格納されたフレームデータを求める。そして、記憶手段22に格納されているCT撮影データ(フレームデータ)から、関心領域rを正視した正視X線CT画像である断層面画像や3次元CTボリューム画像を生成する制御を行う。すなわち、その正視方向vの位置に対応する角度若しくは最も近い角度で撮影されたCT撮影データのフレームデータから画像再構成処理を行い、被検者Oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成する(ステップS7)。
そして、再構成されたCT画像データが表示手段26でボリューム画像として表示される(ステップS8)。また、必要に応じて再構成したCT画像をDICM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に変換して記憶手段22に格納する。
上述したように、正視方向vやスライス位置は、歯列弓DAの3次元形状に基づく歯列弓モデルdmの形状から算出してもよく、関心領域rの部位ごとに予め正視方向vやスライス位置を設定したデータテーブル(ルックアップテーブル)を参照してもよい
以下は、関心領域rの指定に関する詳細な説明である。関心領域rの指定、すなわち表示対象領域の指定では、上記のように、スカウト画像を用いて行う方法と、スカウト画像を用いない方法とがあるが、まず前者について説明する。
関心領域rを指定操作するためのスカウト画像には、予め準備した仮想歯列弓DAの平面図等のイラストイメージデータからなる歯列のイラスト等を用いることができる。
これを図27のフロー図における各ステップと関連して説明すると、ステップS3における関心領域rの指定は、イヤーロッド4b等からのデータに基づき、予め記憶手段22に格納している仮想歯列弓のイラスト等を読み出し、表示手段26にスカウト画像としてのイラストを表示させる。操作者は、スカウト画像を用いた関心領域rを指定する。
なお、スカウト画像の上で関心領域rが指定操作されたときに、その関心領域rの範囲を、スカウト画像の上に枠として表示するようにすれば、その範囲を直感的に把握できて利便性が高くなる。
図16は、スカウト画像とされるイラスト化されたパノラマ画像P31の例で、実際には3次元的に湾曲した歯列弓DAが、平面的に展開表示されている。このパノラマ画像P31上には、オペレータの移動操作に応じて移動する水平カーソルhcと、垂直カーソルvcとが重ねて表示されており、関心領域rは、それらの交点の位置に指定され、その範囲が四角形の枠によって示されている。
図17は、スカウト画像とされるイラスト化された側面のX線透視画像P31であり、それぞれにオペレータの移動操作に応じて移動する水平カーソルhcと、垂直カーソルvcとが重ねて表示されており、関心領域rは、それらの交点の位置に指定され、その範囲が四角形の枠によって示されている。
X線CT撮影においては、旋回アーム3の旋回の微小角度ごとに被検者Oの透視画像を取得してCT撮影データとするので、正面、側面において、それぞれの透視画像を得ることができる。
図18は、パノラマ画像Pの例である。全歯牙領域(広域)CT撮影し、全歯牙領域を関心領域rとしていると、正中線が正視方向vとなり、この方向で撮像して格納されたフレームデータから画像再構成処理が行われ、パノラマ画像Pが表示手段26に表示される。このパノラマ画像Pをスカウト画像として用いることもできる。実際には3次元的に湾曲した歯列弓DAが、平面的に展開表示されている。このパノラマ画像p上には、オペレータの移動操作に応じて移動する水平カーソルと、垂直カーソルとを重ねて表示するように構成し、関心領域をそれらの交点の位置で指定できるに構成すればよい。また、その範囲を四角形の枠で重ねて表示するように構成してもよい。
関心領域rは、カーソルhc、vcの交点によって指定されるが、カーソルhc、vcのいずれかが移動操作されたときには、操作されたカーソルhc、vcに対応した位置の断層面の画像が表示されるように、操作に従って、関心領域rの指定操作を受け付けるが、その指定操作は、例えばマウスで交点をダブルクリックする等により
実行できる。
ここで、スカウト画像とされるパノラマ画像pについて補足説明する。パノラマ画像pは、被検者Oを予め撮影したパノラマ撮影データから生成してもよい。
図19は、従来の軌道によるパノラマ撮影の様子を示す平面図で、歯列弓DAに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、歯列弓DAを挟んでX線照射部110とX線検出部120が旋回することにより左顎にX線照射する位置から前歯中央にX線照射する位置まで位置LC1´、LC2´、LC3´の順に変位していく。曲線ENは、X線細隙ビームNBの軌跡によって描かれた包絡線である。図17の例では、X線照射部110とX線検出部120は、歯列弓DAを間に挟んだ状態で旋回アーム3が移動する旋回軸3c、旋回軸3cの延長線3c1を中心に旋回しつつ変位していく。
もちろん、X線CT撮影装置本体1において、前述のXYテーブルまたはXYテーブルの少なくとも一方と旋回アーム3の総合運動により、図19の従来の軌道によるパノラマ撮影を行っても構わない。
より具体的には、頭部固定部4は固定のまま、旋回アーム3を旋回させつつ、XYテーブルにより旋回アーム3の旋回軸3cを移動させ、X線照射部110のX線管のX線発生の焦点とX線検出部120の検出面の中央地点を結ぶ直線が包絡線を描くように撮影する、従来の軌道によるパノラマ撮影を行うようにしてもよい。
しかし、関心領域rの指定では、イメージを用いない方法も可能なので、その例を説明する。図16、図17の例では、関心領域rを指定するためにイラストP31を用いたが、各歯牙thに図15に示すようなコードが予め割り当てられていれば、必ずしも表示手段26又は操作パネル71aにイラストP31等を配しておく必要はないので、操作パネル71aまたは操作手段25で、歯牙thに割り当てたコードを選択して関心領域rを指定する構成としてもよい。また、全歯牙領域を操作手段25により、関心領域rとして指定する構成としてもよい。
この場合、図15に示すようなイラストを、装置の任意の場所に表示して、操作者が必要に応じて参照できるようにしてもよい。
また、画像解析することによって歯列弓モデルdmを得るようにしてもよいことは、既に述べたとおりである。また、被検者Oや歯列弓DAの実測によって歯列弓モデルdmを得るようにしてもよいことは、既に述べたとおりである。
ところで、歯列弓モデルdmに対して、関心領域rの位置を特定することで、関心領域rの正視方向vを求めることができるのであるが、歯列弓モデルdmに対して、関心領域rの位置を特定するには、スカウト画像における指定位置すなわち座標を、歯列弓モデルdmにおける座標に対応させることないし変換することが必要である。
そのための座標処理は予め規定しておくことができる。例えばスカウト画像がパノラマ画像Pである場合、パノラマ撮影においては、画像として生成されるパノラマ断層が3次元空間中に設定されている。このパノラマ断層を歯列弓モデルdmとすることができる。
このパノラマ断層を画像化したパノラマ画像Pは、歯列弓モデルdmの標準曲面を平面に引き伸ばしたものに相当するので、パノラマ画像Pにおける指定位置すなわち座標と歯列弓モデルdmにおける座標を対応させ、パノラマ画像Pにおける特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
前述のように、パノラマ画像Pの代わりに、パノラマ画像をイラスト化した歯列のイラストを用いる場合には、イラストは、前述のように標準的な形状の歯列弓モデルdmを平面に引き伸ばしたものとして、イラストにおける特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
また、スカウト画像が歯列弓DAの平面図を模したイラストであれば、その形状は、歯列弓モデルdmの標準曲面を上方から見たときの形状に対応しており、イラストで示される歯列弓DAのほぼ中央の、パノラマ断層に相当する部分に歯列弓モデルdmが重なるように設定されている。イラストにおける特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
正視X線CT画像の正視方向vは、関心領域rの位置での、歯列弓モデルdmの中央曲線に対する法線方向が好適である。この正視方向vは、歯列弓モデルdmに対して関心領域rの位置が特定されれば、歯列弓モデルdmの形状に基づいて容易に算出または設定することができる。
なお、正視方向vは、必ずしも厳密な法線方向でなくともよいが、関心領域rを正視している感覚が得られるようにすることが必要である。また、歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定すると、正視方向vやスライス位置が設定できる。
正視方向vは、歯牙thの選択情報や関心領域rの位置情報から直接的に求めることも可能であり、以下、それについて説明する。
図15(a)は、標準的な歯列弓DAに属した各歯牙thに対する正視方向vを示した図面であり、各歯牙thには、コードが付されている。図15(a)においては、上顎のみを示し、正視方向vはコード「31」〜「38」の歯牙thにのみ付して示しているが、他の歯牙thについても同様である。歯列弓DAの湾曲は歯列弓モデルdmで示される。なお、図15(b)はコード「31」の歯牙thを拡大した図で、歯列弓DAの湾曲、すなわち歯列弓モデルdmに対する接線TGに直角な正視方向vを示している。これらの図のように、各歯牙thに対する正視方向vは予め決まっているので、各歯牙thと、その歯牙thに対する正視方向vとを対応させたルックアップテーブル等を予め準備しておけば、正視すべき歯牙thのコードを選択するだけで、直ちに正視方向vを得ることができる。また、関心領域rとして指定可能な各位置と、その位置における正視方向vまたはスライス位置とを対応させたルックアップテーブルとしてもよい。ここで、歯牙thに割り当てたコード選択は、操作パネル71aまたは操作手段25で行う構成としてもよい。
また、正視すべき歯牙thのコードと、関心領域rの指定との連携をとるようにしてもよい。すなわち、コードの入力で歯牙thを選択すると、その歯牙thを含んだ関心領域rを自動的に指定し、その関心領域の位置情報によってルックアップテーブルを参照する構成、あるいは、関心領域rを指定すると、その関心領域rの中央部にある歯牙thを自動的に選択し、その歯牙thの選択情報によってルックアップテーブルを参照するような構成も可能である。なお、このようなルックアップテーブルは、歯列弓モデルdmと同様に、歯列弓DAの画像データを画像処理や、歯列弓DAの形状を実測することにより得ることもできる。
次いで、この発明によって表示される正視X線CT画像について説明する。ここに、正視X線CT画像は、CT撮影データをコンボリューション法等により逆投影して再構成した被検者Oの3次元領域の3次元CTデータから生成される画像であり、その3次元CTデータをスライスしたX線CT断層面画像や、3次元CTデータをレンダリングした3次元CTボリューム画像等が含まれるが、それらに限定される訳ではない。CT撮影では、位置決めされた被検者Oを撮影しているため、再構成された3次元CTデータにおける歯列弓DAの配置は既知である。従って、正視X線CT画像として、X線CT断層面画像p生成するには、正視方向vに対応した関心領域rの撮像データを記憶手段22から読み出し、この領域から再構成演算を開始する。例えば、正面方向から360°度、旋回アーム3が回転して得た画像データが記憶手段22に格納されている。そして、関心領域rが、正面から逐次読み込まれたCT画像データにおいて、何フレーム目に相当するかを、指定された関心領域rと正視方向vにより特定する。正視方向vと同一方向から撮影したフレームデータがある場合には、対応するフレームデータを設定し、正視方向vと同一方向と撮影方向が一致しない場合には、最も正視方向vと近い角度から撮影したフレームデータを設定する。そして、この特定された画像データ(フレームデータ)から再構成演算を開始して、関心領域rにおける正視方向vの正視X線CT画像が生成される。この正視X線CT画像は、CT撮影データから生成される相互に直交したX断層面、Y断層面、Z断層面の3つのX線CT断層面画像のいずれかとして生成し、その3つの画像を組み合わせて同時に表示するようにしてもよい。また、正視X線CT画像となるX線CT断層面画像は、顎顔面領域の関心領域rを含んだ広域的なものでもよく、関心領域rに限定した局所的なものでもよい。
上記のように、関心領域rを指定すると、その関心領域rの正視方向vに対応するフレームデータを特定することが出来る。この発明では、この特定したフレームデータから再構成演算を開始して、関心領域rにおける正視CT画像を得る。
以上、歯列弓DAの全体を含めた歯顎顔面のほぼ全域を撮影する広域CT撮影による例を中心にして説明したが、上記構成は、歯列弓DAの全体でなく、歯列弓DAの一部を撮影するCT撮影にも応用できる。例えば、歯列弓DAの右半分を撮影するCT撮影、左半分を撮影するCT撮影、前歯寄りの領域を撮影するCT撮影、奥歯寄りの領域を撮影するCT撮影を行った場合でも、その領域に適合する歯列弓モデルdmさえ準備すれば上記と同様に正視X線CT画像を得ることができる。
関心領域rとして指定された部位の局所撮影を行い、そのCT撮影データから、正視X線CT画像を生成し表示する手順について説明する。まず、関心領域rを指定する。そして、指定された関心領域の位置に基づいて、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)に含まれるようにCT撮影を実行し、記憶手段22にX線検出部120で読み取ったフレームデータを順次格納する。続いて、指定された関心領域rに対応した歯列弓正視情報から関心領域rの正視方向vを特定する。その後、記憶手段22に格納されているCT撮影データ(フレームデータ)から、関心領域rを正視した正視X線CT画像である断層面画像や3次元CTボリューム画像を生成する制御を行う。すなわち、正視方向vと同一方向から撮影したフレームデータがある場合には、対応するフレームデータを設定し、正視方向vと同一方向と撮影方向が一致しない場合には、最も正視方向vと近い角度から撮影したフレームデータを設定する。そして、その位置に対応するCT撮影データのフレームデータから画像再構成処理を行い、被検者Oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成する。
そして、再構成されたCT画像データを表示手段26でボリューム画像として表示する。
関心領域rを指定する方法としては、関心領域rの指定をスカウト画像で行う方法でも、歯列弓DAの部分コード等で関心領域rを指定するなど、画像を用いない方法でもよい。
前述したように、正視方向vは、歯列弓DAの3次元形状に基づく歯列弓モデルdmの形状から算出してもよく、関心領域rの位置情報等によってルックアップテーブルを参照してもよい。
関心領域rの位置を指定すると、その位置の座標に合わせてX線照射部110とX線検出部120の旋回中心が関心領域rの中心に来るように、旋回アーム3が移動調整される。
その後、被検者Oの周囲でX線照射部110とX線検出部120を旋回させ、局所CT撮影を実行する。指定された関心領域rの位置に基づいて、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)に含まれるように局所CT撮影を実行することで、CT撮影データを得ることができる。
局所CT撮影では、上述した図14、図22、図23、図24に示すように、X線照射部110とX線検出部120の旋回中心が関心領域rの中心に来るように、旋回アーム3が移動調整される。X線照射部110とX線検出部120の旋回中心と旋回アーム3の旋回中心が一致する場合は、旋回アーム3の旋回中心を設定すればよい。
旋回中心の設定は、具体的には前述のXYテーブルによる旋回アーム3の移動調整を行うことにより、被検者Oの歯列弓DAに対する撮影対象領域の位置を相対的に移動調整させることで行う。図14に示す例においては、歯牙th17に旋回アーム3の旋回中心が来るように調整される。
スカウト画像としては、図16、図17等に示すのと同じイラストを用いてもよい。イラストは標準的な歯列弓DAの平面図であり、操作者の移動操作に応じて移動する水平カーソルhcと、垂直カーソルvcとが重ねて表示され、それらの交点の位置に、円状の枠で囲まれた関心領域rが指定される。関心領域rを指定した後の局所CT撮影は、上述の広域CT撮影を生成表示する構成において、スカウト画像上で関心領域rの位置指定をした後と同様である。
なお、ここで実行する局所CT撮影は、被照射範囲が関心領域rのみに限定されているので、被爆量を減少させる観点からは望ましい撮影である。
また、スカウト画像として、図18に示すのと同じ透視画像Pを用いることも可能である。ここで用いられる透視画像Pは、前述のX線広域ビームを2方向から照射すれば、投影画像として得ることができる。そして、2方向の透視画像P上で、操作者は、マウス操作によりポインタを移動調整させ、関心領域rを指定する。その後の局所CT撮影は上述のパノラマ画像Pをスカウト画像として生成表示する構成において、スカウト画像上で関心領域rの位置指定をした後と同様である。
なお、透視画像は2方向に限らず、複数方向から投影した透視画像であれば、2方向以上であっても構わない。
指定された関心領域rの歯列弓モデルdmに対する位置を特定するためには、歯列弓モデルdmの座標を、CT撮影を行う空間の座標の中に設定する必要がある。
後述するように、歯列弓モデルdmとしては、基本的には広域CT撮影において述べた歯列弓モデルdmと同様なものを用いればよい。
局所CT撮影実行のための被検者の位置付けに、歯列弓の模式図を用いて位置付けする方法が考えられ、この位置付けにより関心領域rの指定をすることも可能である。
図2に示す表示手段26に、図15に示すような歯列弓DAを模式図のイラストで示した位置付け用のイラストを表示する。このイラストには、撮影対象領域を示す円のイラストが重ねて表示されている。撮影対象領域のイラストには、例えば矢印のような、正視方向vを示す方向表示を重ねて表示してもよい。
前述のXYテーブルによる旋回アーム3の移動調整により、被検者Oの歯列弓DAに対する撮影対象領域の位置が相対的に調整でき、その移動調整の変位量に従って、歯列弓模式図のイラストに対する撮影対象領域のイラストの位置が移動するようになっている。
前述の操作手段25の操作により、歯列弓模式図のイラストに対する撮影対象領域のイラストの位置を移動操作できるようにして、移動操作に連動して前述のXYテーブルによる旋回アーム3の移動調整ができるように構成してもよい。
歯列弓模式図のイラストは、歯列弓モデルdmに対応しているので、関心領域rとして撮影対象領域を指定すると、関心領域rの歯列弓モデルdmに対する位置関係が特定できる。
この構成により、関心領域rの局所CT撮影を行うべく被検者Oを位置付けすることにより撮影対象領域を指定することで、正視方向vを特定することができる。このように位置付けした後に局所CT撮影を行い、得られたCT画像データより関心領域rを正視した正視X線CT画像の表示が可能である。
また、前述と同様に、イラスト付きの操作パネルを用いて関心領域rの指定をしてもよい。ボタンの操作によりコードの指定をすると、コードが割り当てられた各歯牙thの標準的な位置が指定され、位置付けがなされる。そのため、各歯牙thには標準的な位置が予め設定されている。
関心領域rの指定の際に、イメージを用いない方法も可能である。例えば、操作手段25で、歯牙thに割り当てたコードを選択して位置指定し、関心領域rを指定する構成としてもよい。関心領域rは、その選択された歯牙thの標準的な位置に位置付けされる。その後の局所CT撮影は上記と同様である。
次いで、正視方向vを求める方法については、基本的には歯列弓モデルdmとして広域CT撮影において述べた歯列弓モデルdmと同様なものを用いればよい。
広域CT撮影の場合は、関心領域rの指定は、表示対象領域の指定の意味があったが、局所CT撮影の場合は、関心領域rの指定は、被撮影領域(撮影対象領域)rrの指定の意味を持つ。その差はあるが、局所CT撮影の場合は結局被撮影領域(撮影対象領域)rrを表示対象領域にすればよいのであり、局所CT撮影において被撮影領域(撮影対象領域)rrを指定することをもって、表示対象領域の指定とすればよい。被撮影領域(撮影対象領域)rrを指定する意味の関心領域rの指定と、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置を特定するための関心領域rの指定とを別個の作業として、双方行うようにすることも考えられるが、関心領域rの指定を2回行わねばならず、1回の指定をもって被撮影領域(撮影対象領域)rrの指定および歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置の特定とする構成が好適である。歯列弓モデルdmに対して関心領域rの位置を特定するという構成は共通なので、正視方向vやスライス位置の設定も広域CT撮影の場合と基本的に同じである。
前述のように、関心領域rの指定があればX線CT撮影装置本体1の機械的構成により、被検者Oの位置付けが行われ、指定された関心領域rを撮影対象とした局所CT撮影が行われるのであるが、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されるので、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置も特定できる。歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定されると、正視方向vやスライス位置が設定できる。
撮影対象領域の指定としての関心領域rの指定と別に、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置の特定のための関心領域rの指定を行うようにしてもよく、例えば、イラスト画像P31において関心領域rを指定して撮影対象領域の指定を行い、歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置の特定をさせる。
またスカウト画像が歯列弓DAの平面図を模したイラストを用いて関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、その形状は、歯列弓モデルdmの標準曲面を上方から見たときの形状と対応しており、イラストで示される歯列弓DAのほぼ中央の、パノラマ断層に相当する部分に歯列弓モデルdmが重なるように設定されている。
イラストにおける特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
操作手段25で、歯牙thに割り当てたコードを選択して位置指定し、関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、コード選択で特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
関心領域rの指定の際に、イメージを用いず、例えば、操作手段25で、歯牙thに割り当てたコードを選択して位置指定し、関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成とした場合、コード選択により特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
いずれの場合も、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されるので、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置も特定できる。
歯列弓モデルdmには、例えば図15で示したような、一般的形状の歯列弓DAより予め準備した歯列弓モデルdmを用いることができ、この歯列弓モデルdmに対して関心領域rの座標、位置を特定することができる。
正視方向vやスライス位置が設定されると、被検者Oに関する局所CT撮影によるCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成することができる。再構成は、記憶手段22に格納されているCT撮影データ(フレームデータ)から、関心領域rを正視した正視X線CT画像である断層面画像や3次元CTボリューム画像を生成する制御を行う。すなわち、その位置に対応するCT撮影データのフレームデータから画像再構成処理を行い、被検者Oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成する。
広域CT撮影において図15(a)で説明したと同様、各歯牙thに対する正視方向vを定めておいて、各歯牙thにコードを付する構成としておいてもよい。各歯牙thと、その歯牙thに対する正視方向vとを対応させたルックアップテーブル等を予め準備しておけば、正視すべき歯牙thのコードを選択するだけで、直ちに正視方向vを得ることができる。また、各歯牙thと、その歯牙thに対するスライス位置とを対応させたルックアップテーブルを準備するようにしてもよい。また、関心領域rとして指定可能な各位置と、その位置における正視方向vまたはスライス位置とを対応させたルックアップテーブルとしてもよい。
歯牙thに割り当てたコード選択は、操作手段25で行う構成としてもよい。
また、正視すべき歯牙thのコードと、関心領域rの指定との連携をとるようにしてもよい。すなわち、広域CT撮影において、コードの入力で歯牙thを選択すると、その歯牙thを含んだ関心領域rを自動的に指定し、その関心領域の位置情報によってルックアップテーブルを参照する構成、あるいは、関心領域rを指定すると、その関心領域rの中央部にある歯牙thを自動的に選択し、その歯牙thの選択情報によってルックアップテーブルを参照するような構成も可能である。なお、このようなルックアップテーブルは、歯列弓モデルdmと同様に、歯列弓DAの画像データを画像処理や、歯列弓DAの形状を実測することにより得ることもできる。
この場合のコード、ルックアップテーブルおよびコード、ルックアップテーブルで指定される正視方向vまたはスライス位置は、関心領域rに対応した歯列弓正視情報である。
次に、この発明におけるCT画像の生成について、図28を参照して説明する。この発明では、指定した関心領域rに対応するする投影画像のフレームデータから画像の再構成を行うことで、指定した関心領域rのCT画像を直ちに表示させることができるものである。
指定された関心領域rを示す位置データにより、CPU21は、開始位置決定手段23の機能動作により、関心領域rの正視方向vに対する角度におけるフレームデータの位置を算出する(ステップS11)。すなわち、CPU21は、関心領域rの正視方向vを求め、その同一方向から撮影したフレームデータがあるか否か判断する。そして、同一方向から撮影したフレームデータがある場合には、対応するフレームデータを求め、このフレームデータを画像再構成処理における読込開始のデータに設定する。また、正視方向vと同一方向と撮影方向が一致しない場合には、最も正視方向vと近い角度から撮影したフレームデータを求め、このフレームデータを画像再構成処理における読込開始のデータに設定する。そして、CPU21は、算出した位置のフレームデータを記憶手段22に格納された投影データの中から読み出し、そのフレームデータを一時記憶手段に格納する(ステップS12).
続いて、読み出したフレームデータの濃度を補正し(ステップS13)、CPU21は、関心領域rに基づき再構成計算領域を抽出する(ステップS14)。そして、ノイズ除去フィルタを用いてノイズを除去し(ステップS15)、再構成計算フィルタを用いて再構成の演算を行い(ステップS16)、そして、抽出した再構成領域を中心として逆投影してデータを重ね合わす処理を行い(ステップS17)。その逆投影データを一時格納領域に格納する(ステップS18)。
スキャンした全てのデータの処理が終了、360°投影の場合には、360°の投影データの全て、180°投影の場合には180°投影のデータの処理が終了したか否かをCPU21が判断し(ステップS19)、全てのデータが終了していない場合には、ステップS20で、読み込むフレームデータを次のデータに更新し、ステップS12に戻り、前述の動作を繰り返す。
このように、データを順次逆投影し、全ての投影データの処理が終了すると関心領域rにおけるCT画像が生成される。そして、生成されたCTデータを記憶手段22に格納して(ステップS21)、CT画像生成処理が終了する。
そして、生成されたCT画像データが記憶手段22から読み出され、表示手段26で関心領域rのCT画像が表示される。
次に、この発明の他の実施形態につき、図25、図26、図29及び図30を参照して説明する。
前述した実施形態においては、被検者Oの正中線または正中線と平行な角度からCT撮影を開始し、関心領域rに対する正視方向vに対応したフレームデータから画像再構成処理を行っている。これに対して、図25、図26に示す他の実施形態においては、関心領域rに対する正視方向vからCT撮影を開始するように、旋回アーム3を移動させ、その位置からCT撮影を開始し、撮影したフレームデータを順次記憶手段22に格納する。このように構成すると、撮影を開始し、記憶手段22に格納されたデータとして使用できる最初のフレームデータが関心領域rの正視方向vに対するフレームデータとなる。このフレームデータから画像再構成処理を行うことで、関心領域rの正視方向vからのCT画像を表示手段26に表示させることができる。
この他の実施形態の動作につき説明する。図25に示すように、例えば、歯牙15を中心とする領域が関心領域rに指定されると、CPU21は、関心領域rにおける旋回中心を求める。そして、旋回アーム3の旋回軸3cを関心領域rの旋回中心に一致させるように移動させる。更に、CPU21は、関心領域rに対する正視方向vを求め、この正視方向vと正中線との間の角度(α)を求める。そして、CPU21は、算出した角度(α)分、旋回アーム3を回転させ、関心領域rの正視方向vに対応するフレームデータが最初の有効なデータとなるように、旋回アーム3の角度が決定される。
また、例えば、歯牙36を中心とする領域が関心領域rに指定されると、CPU21は、関心領域rにおける旋回中心を求める。そして、旋回アーム3の旋回軸3cを関心領域rの旋回中心に一致させるように移動させる。更に、CPU21は、関心領域rに対する正視方向vを求め、この正視方向vと正中線との間の角度(β)を求める。そして、CPU21は、算出した角度(β)分、旋回アーム3を回転させ、関心領域rの正視方向vに対応するフレームデータが最初の有効なデータとなるように、旋回アーム3の角度が決定される。
続いて、図26に示すように、関心領域rの正視方向vから最初の有効なフレームデータが記憶手段22に格納されるように、旋回アーム3が旋回する。この図26に示す例では、位置を被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの歯牙15の中心を旋回中心として、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図26に示す例では、歯牙15に対する正視方向vから撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が180°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が180°回転することで、X線CT撮影における所定のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。そして、関心領域rの正視方向vで撮影した格納されたフレームデータが最初のデータであり、このデータから画像再構成処理を行えばよい。
図29は、上記したこの発明の他の実施形態におけるCT撮影に係る手順を説明するフロー図である。このフロー図に従い、図25、図26を参照して、この発明にかかるCT撮影の基本動作について説明する。
操作者は、被検者(患者)Oを撮影する。そして、関心領域rのCT画像が表示手段26に表示される。この撮影に際して、操作者は、被検者ID、被検者氏名、撮影日時などの被検者情報を操作手段25から入力する(ステップS31)。装置本体20のCPU21は、この入力に応答して,その被検者情報を記憶手段22の所定領域に格納し、後から格納する撮影データであるフレームデータとの関連づけを行う。
次いで、被検者(患者)Oを位置決めする(ステップS32)。位置決めは、操作者が椅子部40の高さを調整した後、頭部支持ユニット71の頭部固定部4に被検者Oの頭部を固定する。
続いて、関心領域r(部位)の指定を行う(ステップS33)。関心領域rを指定する方法としては、表示手段26に表示した、歯列弓DAを表したスカウト画像上で関心領域rの指定をする方法等、関心領域rの指定を画像上で行う方法でも、歯列弓DAの各部位に割り当てた部分コード等で関心領域rの指定をする等、表示手段26に表示したスカウト画像を用いない方法でもよい。ここに、関心領域rは、正視した状態で表示させたい範囲、つまり正視表示対象領域であり、顎顔面の一部、具体的には歯列弓DAの一部に関心領域rを指定する。そして、指定した関心領域rの正視方向からのCT画像が表示される。操作手段25等により指定された関心領域rは、装置本体20のCPU21により、記憶手段22に格納される。
その後、関心領域rに指定されると、CPU21は、関心領域rに対する正視方向vを求め、この正視方向vと正中線との間の角度を求める。そして、CPU21は、関心領域rの正視方向vから撮影を開始するように、旋回アーム3の回転角度を算出する(ステップS34)。
続いて、装置本体20のCPU21は、操作者からの操作情報に基づいて、指定された関心領域rの中心Cを旋回中心とするために、旋回アーム3の旋回軸3cを関心領域rの中心に合わせるように、制御信号を駆動ユニット部160に与える。駆動ユニット部160は、CPU21からの制御信号に基づき、旋回アーム3の旋回軸3cを関心領域rの中心に合わせる。更に、算出された旋回アーム3の回転角度分だけ旋回アームを回転させる。そして、装置本体20のCPU21は、X線照射条件(X線の管電圧、管電流、スキャン時間、スキャン軌道など)をX線装置本体制御部170に与える(ステップS35)。撮影装置本体制御部170は、入力された操作情報に基づき、X線発生部制御手段172を制御し、X線照射条件に従ったX線が照射される。
この操作情報に基づき、旋回アーム3を被検者Oの口腔部の回りに移動(スキャン)させながら、X線照射部110からX線を照射させる一方で、X線検出部120に高速フレームの透過X線の検出をさせる。その検出したX線データがX線検出部制御手段173により、一例として、CT撮影の場合30fpsまた、従来法によるパノラマ撮影の場合95fpsといった高速フレームレートでフレームデータが出力され、このフレームデータがバッファメモリを介して記憶手段22に格納される(ステップS36)。この記憶手段22にフレームデータが格納される際には、CPU21は、格納されるフレームデータがどの位置で撮像したデータであるかは旋回アーム3による撮影開始位置、スキャン速度等により認識され、各フレームデータとの関係を記憶手段22に格納している。記憶手段22には、局所CT撮影時の関心領域rの正視方向vから撮影を開始した各フレームデータとの対応関係が格納される。なお、撮影データとして格納するフレームデータの枚数は、上記に限らず、被曝量の制限、撮影時間等により変化する。
図26は、局所CT撮影時において、180°撮影時の取り込み開始位置の例を示す模式的平面図である。この図26は、歯牙15を中心とする領域を関心領域rとして指定した例を示している。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの歯牙15を旋回中心として、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図26に示す例では、歯牙15を中心とする関心領域rの正視方向vの延長上から撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が180°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が180°回転することで、X線CT撮影における所定のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。そして、関心領域rの正視方向vから撮影を開始して格納されたフレームデータを算出することができる。
このスキャンが済むと、被検者Oは装置から解放される(ステップS37)。
続いて、CT画像の生成の動作に入る(ステップS38)。CPU21は、記憶手段22に格納されているCT撮影データ(フレームデータ)から、関心領域rを正視した正視X線CT画像である断層面画像や3次元CTボリューム画像を生成する制御を行う。すなわち、その正視方向vから撮影が開始されているので、有効な最初のフレームデータから画像再構成処理を行うことで、関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成する(ステップS38)。
そして、再構成されたCT画像データが表示手段26でボリューム画像として表示される(ステップS39)。また、必要に応じて再構成したCT画像をDICM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に変換して記憶手段22に格納する。
次に、この発明の他の実施形態におけるCT画像の生成について、図30を参照して説明する。この発明では、指定した関心領域rの正視方向vから撮影を開始した投影画像のフレームデータから画像の再構成を行うことで、指定した関心領域rのCT画像を直ちに表示させることができるものである。
関心領域rの正視方向vから撮影したフレームデータを求め、このフレームデータを画像再構成処理における読込開始のデータに設定する。そして、CPU21は、算出した位置のフレームデータを記憶手段22に格納された投影データの中から読み出し、そのフレームデータを一時記憶手段に格納する(ステップS41).
続いて、読み出したフレームデータの濃度を補正し(ステップS42)、CPU21は、関心領域rに基づき再構成計算領域を抽出する(ステップS43)。そして、ノイズ除去フィルタを用いてノイズを除去し(ステップS44)、再構成計算フィルタを用いて再構成の演算を行い(ステップS45)、そして、抽出した再構成領域を中心として逆投影してデータを重ね合わす処理を行い(ステップS46)。その逆投影データを一時格納領域に格納する(ステップS47)。
スキャンした全てのデータの処理が終了、360°投影の場合には、360°の投影データの全て、180°投影の場合には180°投影のデータの処理が終了したか否かをCPU21が判断し(ステップS48)、全てのデータが終了していない場合には、ステップS49で、読み込むフレームデータを次のデータに更新し、ステップS12に戻り、前述の動作を繰り返す。
このように、データを順次逆投影し、全ての投影データの処理が終了すると関心領域rにおけるCT画像が生成される。そして、生成されたCTデータを記憶手段22に格納して(ステップS50)、CT画像生成処理が終了する。
そして、生成されたCT画像データが記憶手段22から読み出され、表示手段26で関心領域rのCT画像が表示される。
ところで、図31に示すように、歯顎領域に施術された金属補綴物等の硬物質が存在する場合、X線を照射して撮影した場合、金属アーチファクトAFの影響がでる。
そこで、この発明の異なる実施形態においては、金属などの硬物質Cが撮影範囲にある場合には、その硬物質に隣接する歯牙に対して、その仮想歯弓列dmに対して垂直な方向から180°の範囲に旋回アーム3を回転させて投影データを得、そのデータを記憶手段22に格納させる。隣接する歯牙に対して、その仮想歯弓列dmに対して垂直な方向から撮影したフレームデータから再構成計算を行うことで、金属アーチファクトの影響が変化し、画質が向上する。
図31は、正中から撮影したデータを正面のフレームデータから再構成計算を行った時のCT画像の模式図である。この図31に示す例では、歯牙16、17、36、37に金属補綴物等の硬物質cがある。そして、歯牙16の前の歯牙15を関心領域rとして局所CT撮影を行う。この時、旋回中心は歯牙15の中心部分になる。この旋回中心を中心として正中方向からCT撮影が開始され、旋回アーム3が旋回して、撮影データが記憶手段22に格納される。このように撮影すると、この図31に示すように、金属などの硬物質cの影響により、金属アーチファクトが現れ、その分画質が劣化する。
硬物質Cが撮影範囲にある場合、この図31に示す例では、歯牙16、17、36,37に金属補綴物等の硬物質がある。この時、操作者は、硬物質が存在しない歯牙、この例では、投影開始する位置を歯牙15の位置に設定する。図32の矢印で示す位置から投影を開始するように設定する。図32、図33に示すように、この歯牙15の位置で仮想歯列弓dmに垂直な位置から、180°の範囲で投影を開始する。この図33は、硬物質が存在しない歯牙15を中心とする領域を関心領域rとして指定した例を示している。被検者Oに対するX線照射部110とX線検出部120の位置関係は、被検者Oの歯牙15を旋回中心として、X線照射部110とX線検出部120が旋回する。この図26に示す例では、歯牙15を中心とする関心領域rの正視方向vの延長上から撮影を開始し、図中矢印方向に旋回アーム3が180°回転する。この回転に従い、X線照射部110とX線検出部120が順次変異する。例えば、旋回アーム3が180°回転することで、X線CT撮影における所定のフレームデータが得られる。そして、この撮影した各フレームデータと旋回アーム3の角度は対応付けすることができる。そして、この投影データを記憶手段22に格納させる。そして、この投影を開始したデータから画像再構成演算を行うことにより、金属アーチファクトの影響を大幅に改善することができる。
図32は、歯牙15から180°の範囲で投影したデータを、歯牙15の歯弓列に垂直な方向から再構成計算を行ったCT画像の模式図である。
この図32に示すように、再構成計算の際に、金属アーチファクトの影響が少なく演算ができ、画質が向上する。
図34は、この発明の異なる実施形態における上記CT撮影に係る手順を説明するフロー図である。このフロー図に従い、この発明の異なる実施形態のCT撮影の基本動作について説明する。
操作者は、被検者(患者)Oを撮影する。そして、関心領域rのCT画像が表示手段26に表示される。この撮影に際して、操作者は、被検者ID、被検者氏名、撮影日時などの被検者情報を操作手段25から入力する(ステップS61)。装置本体20のCPU21は、この入力に応答して,その被検者情報を記憶手段22の所定領域に格納し、後から格納する撮影データであるフレームデータとの関連づけを行う。
次いで、被検者(患者)Oを位置決めする(ステップS62)。位置決めは、操作者が椅子部40の高さを調整した後、頭部支持ユニット71の頭部固定部4に被検者Oの頭部を固定する。なお、この位置決めは被検者情報の入力前に行っても良いし、後述する撮影条件の設定後に行っても良い。
続いて、金属補綴物の位置を特定する。操作者は、金属補綴物の影響を受けない歯牙を特定し、その歯牙の位置等の情報を操作手段25を用いて入力する。装置本体20のCPU21は、入力された情報に基づき、金属補綴物の位置を特定する(ステップS63)。操作手段25等により指定された金属補綴物の位置は、装置本体20のCPU21により、記憶手段22に格納される。そして、装置本体20のCPU21は、180°の範囲で投影を開始するための角度を算出する(ステップS64)。
続いて、装置本体20のCPU21は、操作者からの操作情報に基づいて、X線照射条件(X線の管電圧、管電流、スキャン時間、スキャン軌道など)をX線装置本体制御部170に与える(ステップS65)。撮影装置本体制御部170は、入力された操作情報に基づき、X線発生部制御手段172を制御し、X線照射条件に従ったX線が照射される。
この操作情報に基づき、旋回アーム3を算出された投影を開始する角度まで旋回させた後、その位置から、被検者Oの口腔部の回りに180°旋回させながら、X線照射部110からX線を照射させる一方で、X線検出部120に高速フレームの透過X線の検出をさせる。その検出したX線データがX線検出部制御手段173により、一例として、CT撮影の場合30fpsまた、従来法によるパノラマ撮影の場合95fpsといった高速フレームレートでフレームデータが出力され、このフレームデータがバッファメモリを介して記憶手段22に格納される(ステップS66)。この記憶手段22にフレームデータが格納される際には、CPU21は、格納されるフレームデータがどの位置で撮像したデータであるかは旋回アーム3による撮影開始位置、スキャン速度等により認識され、各フレームデータとの関係を記憶手段22に格納している。
このスキャンが済むと、被検者Oは装置から解放される(ステップS67)。
続いて、CT画像の生成の動作に入る(ステップS68)。この動作については、後述するが、CPU21は、記憶手段22に格納されているCT撮影データ(フレームデータ)から、正視X線CT画像である断層面画像や3次元CTボリューム画像を生成する制御を行う。すなわち、CT撮影データのフレームデータから画像再構成処理を行い、被検者Oに関するCT撮影データを画像処理してX線CT画像に再構成する。この動作は前述した図30に示すフロー図と同様の動作が行われる。
そして、再構成されたCT画像データを表示手段26でボリューム画像として表示される(ステップS69)。また、必要に応じて再構成したCT画像をDICM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に変換して記憶手段22に格納する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。