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JP6970871B2 - モータ駆動装置および、これを用いた冷蔵庫 - Google Patents

モータ駆動装置および、これを用いた冷蔵庫 Download PDF

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JP6970871B2 JP2017208351A JP2017208351A JP6970871B2 JP 6970871 B2 JP6970871 B2 JP 6970871B2 JP 2017208351 A JP2017208351 A JP 2017208351A JP 2017208351 A JP2017208351 A JP 2017208351A JP 6970871 B2 JP6970871 B2 JP 6970871B2
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Description

本発明はインバータ制御によりブラシレスDCモータを駆動するモータ駆動装置および、これを用いた冷蔵庫に関するものである。
従来この種のモータ駆動装置は、PWM(Pulse Width Modulation)制御の矩形波120度通電を基本としてブラシレスDCモータを駆動し、PWM制御のオンデューティが100%となったとき通電区間を120度以上に広げることで、高速・高負荷駆動領域を拡張している(例えば特許文献1参照)。
図9は特許文献1に記載されたモータ駆動装置を示すものである。図9に示すように、インバータ回路3を構成する、各スイッチング素子3aから3fが、オフからオンに移行する際、オンタイミング制御手段103により進角制御を行い、オンからオフに移行する際は、オフタイミング制御手段104で進角制御を行わないことで、オーバーラップ通電を行う。
またモータ駆動電力が目標電力値となるように導通角と進み角およびインバータ入力直流電圧を制御して高出力、高回転を可能としつつ低損失化している(例えば特許文献2参照)。図10は特許文献2に記載されたモータ駆動装置を示すものである。図10に示すようにブラシレスDCモータの駆動制御手段201は、駆動電力を検出する電力検出手段202と、インバータの駆動信号パターンの生成とインバータ入力電圧を設定する通電パルス信号生成制御手段203を有し、駆動電力が目標設定電力値に一致するように、インバータ入力電圧値と通電角および進角を制御する。
特開2006−50804号公報 特開2008−167525号公報
しかしながら上記特許文献1の構成では、スイッチング素子のターンオンを早くしてブラシレスDCモータへの電力供給区間を120度以上に広げることで高負荷・高速駆動領域を拡張することは可能であるが、PWM制御を行うためスイッチング素子のオン/オフに伴う損失が発生する。さらにPWM制御による高周波スイッチングはモータ鉄損の増加が伴うという課題を有していた。
また、上記特許文献2に記載の構成では、ブラシレスDCモータの通電角増減により速度制御を行うため、速度制御が可能なタイミングは通電角を変更する転流時(例えば4極モータの場合1回転中に12回)に限られる。従って、外乱により急激にインバータ入力電圧が変動(特に上昇)した場合、応答性が遅れ、電圧の過剰印加による大幅な遅れ位相状態によるブラシレスDCモータの脱調停止や、脱調時における大電流の発生で、回転子の永久磁石の減磁破損といった信頼性上の課題を有していた。
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、モータ駆動装置の低損失化による機器の高効率化と、信頼性の向上を図ることを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明のモータ駆動装置は、ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータに電力を供給する6個のスイッチング素子で構成されるインバータと、前記ブラシレスDCモータの回転子の回転位置を検出する位置検出手段と、前記インバータの出力電圧を前記インバータのスイッチング素子を高周波数でオン/オフを行うことで前記ブラシレスDCモータ供給する電圧を調整するPWM制御手段と、PWM制御による前記インバータのスイッチング素子のオン時間の時比率が最大となるように前記ブラシレスDCモータの3相巻線の通電相を決める通電相制御手段と、前記インバータの入力電圧を検出する入力電圧検出手段と、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路の出力を直流電圧にする平滑回路と、前記整流回路の整流方式を全波整流と倍電圧整流に切り替える切換え手段を有し、前記切換え手段により前記整流回路の整流方式が全波整流から倍電圧整流に切り替えたとき、前記PWM制御手段は、前記スイッチング素子のオン時間の時比率を下げるようにしている。
これにより安定した駆動状態ではPWM制御のオン時間の時比率は100%となりインバータのスイッチング損失が大幅に低減できる。さらにPWM制御による高周波電流も大幅に抑制でき、モータ鉄損も低減できる。また入力電圧が大きく上昇した場合、PWM制御のオン時間の時比率を下げることで、モータ印加電圧の急激な上昇を抑え、過剰な電圧印加による脱調および大電流の発生を抑制することができる。
また、ブラシレスDCモータの低速・低負荷での駆動では全波整流入力でインバータ損失を抑制した高効率駆動、高速・高負荷時は倍電圧入力による高出力駆動と、駆動状態に応じた最適な駆動が可能となる。更に、全波整流から倍電圧整流への切り替えに伴う急峻な入力電圧の上昇に対しても、ブラシレスDCモータの脱調停止、過電流による減磁、あるいは急激なブラシレスDCモータの速度変動を抑制でき、信頼性の高いモータ駆動装置を提供することができる。
本発明のモータ駆動装置は、インバータとブラスレスDCモータの損失低減で高効率化を図るとともに、入力電圧の変動時も安定した駆動ができ高い信頼性を確保するものである。
本発明の実施の形態1におけるモータ駆動装置のブロック図 (a)、(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1における各部の波形とタイミングチャート図 スイッチング素子オフタイミング調整制御開始判定フローチャート図 PWM制御からオフタイミング調整制御への移行フローチャート図 インバータ入力電圧上昇時の動作フローチャート図 オフタイミング調整制御の動作を示すフローチャート図 (a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれブラシレスDCモータの端子電圧波形を示す図 ブラシレスDCモータの相電流波形を示す図 特許文献1のモータ駆動装置のブロック図 特許文献2のモータ駆動装置の制御ブロック図
第1の発明は、ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータに電力を供給する6個のスイッチング素子で構成されるインバータと、前記ブラシレスDCモータの回転子の回転位置を検出する位置検出手段と、前記インバータの出力電圧を前記インバータのスイッチング素子を高周波数でオン/オフを行うことで前記ブラシレスDCモータ供給する電圧を調整するPWM制御手段と、PWM制御による前記インバータのスイッチング素子のオン時間の時比率が最大となるように前記ブラシレスDCモータの3相巻線の通電相を決める通電相制御手段と、前記インバータの入力電圧を検出する入力電圧検出手段と、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路の出力を直流電圧にする平滑回路と、前記整流回路の整流方式を全波整流と倍電圧整流に切り替える切換え手段を有し、前記切換え手段により前記整流回路の整流方式が全波整流から倍電圧整流に切り替えたとき、前記PWM制御手段は、前記スイッチング素子のオン時間の時比率を下げるようにしている。
これにより安定した駆動状態ではスイッチング素子の高周波でのオン/オフ動作が行われないので、インバータのスイッチング損失とモータの鉄損が大幅に低減でき、さらに入力電圧が大きく上昇した時、PWM制御のオン時間の時比率を下げることで、モータ印加電圧の急激な上昇を抑え、過剰な電圧印加による脱調および大電流の発生を抑制できるので、高効率で高信頼性のモータ駆動装置を提供できる。
また、ブラシレスDCモータの低速・低負荷での駆動では全波整流入力でインバータ損失を抑制した高効率駆動、高速・高負荷時は倍電圧入力による高出力駆動と、駆動状態に応じた最適な駆動が可能となる。更に、全波整流から倍電圧整流への切り替えに伴う急峻な入力電圧の上昇に対しても、ブラシレスDCモータの脱調停止、過電流による減磁、あるいは急激なブラシレスDCモータの速度変動を抑制でき、信頼性の高いモータ駆動装置を提供することができる。
の発明は、第1の発明のモータ駆動装置により駆動されるブラシレスDCモータが、冷凍サイクルの圧縮機を駆動するものである。これにより本発明のモータ駆動装置によって圧縮機のCOPを向上することが出来、高効率かつ高信頼性の冷凍サイクルを提供できる。
の発明は、第1または第2の発明のモータ駆動装置により駆動される圧縮機を有する冷蔵庫である。これにより高効率高信頼性の冷凍サイクルにより、低消費電力で信頼性の高い冷蔵庫が提供できる。更に高周波スイッチングに伴う高周波数帯域の騒音が抑制され冷蔵庫の静音化が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるわけではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるモータ駆動装置のブロック図を示すものである。
図1において、交流電源1は一般的な商用電源であり、日本国内の場合実効値100V50Hzまたは60Hzである。コンバータ回路2は交流電源1を直流電圧に変換する。図1におけるコンバータ回路2は4個のダイオードをブリッジ接続した整流回路2aとコンデンサによる平滑回路2b、出力電圧を切換えるスイッチ部2cで構成することで、出力電圧を倍電圧整流と全波整流の2段階に切り替える構成としている。
インバータ回路3は6個のスイッチング素子3a〜3fで構成され、本実施の形態1ではMOSFETを用いる。そして、各スイッチング素子を3相ブリッジ接続し、任意のスイッチング素子のオン/オフを切り替えることで、入力直流電圧を3相交流電圧に変換する。
ブラシレスDCモータ4は3相巻線を有する固定子と永久磁石を有する回転子により構成され、インバータ回路3からの3相交流電力により駆動される。
位置検出手段5はブラシレスDCモータ4の磁極位置を検出するものであり、本実施の形態1ではモータ端子電圧から、回転子の回転により固定子巻線に発生する誘起電圧の位相(ゼロクロスポイント)を検出する方式としている。ただし、ホールIC等の位置センサを用いる方法や、電流センサ等による電流検出方法等でも構わない。
速度検出手段6は位置検出手段5の出力信号からブラシレスDCモータ4の駆動速度を検出するものであり、本実施の形態1ではブラシレスDCモータ4の回転子の回転により固定子巻線に生じる誘起電圧のゼロクロス周期を基に算出する。
速度誤差検出手段7は、速度検出手段6により得たブラシレスDCモータ4の駆動速度と目標速度との差を検出する。
通電相制御手段8は位置検出手段5からの信号を基に、前記ブラシレスDCモータ4の固定子巻線に電気角90度以上150度以下の通電角範囲で電力を供給する相を設定する。また通電相制御手段8はスイッチング素子3a〜3fをターンオンおよびターンオフするタイミングを設定するオンタイミング制御部9と、オフタイミング制御部10とを有しているため、インバータ回路3のスイッチング素子のオン、オフのそれぞれのタイミングを個別に設定することができる。
PWM制御手段11は、インバータ回路3の3相交流出力をPWM制御で調節し、ブラシレスDCモータ4が目標速度で駆動するように制御する。ここで『ブラシレスDCモータ巻線への電力を供給する電気角最小値の2倍から電気角120度を引いた値』を『電気角120度』で除した値より大きいPWMオン時間時比率で駆動している場合、PWM制御手段11はオン時間の時比率が最大値(100%)となるようにオフタイミング制御部10はスイッチング素子のターンオフタイミングを早く行っていく。具体的には、各スイッチング素子のオン区間の最小値が90度の場合、(90度×2−120)÷120=50[%]となり、PWMオン時間比率が50%以上で駆動している場合、オン時間比率100%となるように、スイッチング素子のオフタイミングを早く行うようにしていく。
ターンオフタイミングの変更は、ブラシレスDCモータ4の動作状態への急激な変化を防ぐため、徐々に早めて行くことが望ましいが、1度の制御周期で行っても特に問題ない。尚、PWM制御手段11によるオン時間時比率調整でのブラシレスDCモータ4の速度制御は、先述したPWM制御のオン時間時比率以下で駆動している場合に限られるため、起動時や、低速駆動時、低負荷駆動時、および倍電圧入力時における、比較的低負荷、低速駆動時に行われる。それ以外の安定した駆動状態では、PWM制御手段11はオン時間時比率が100%となるように、通電相制御手段8によるスイッチング素子のオフタイミングを調整してブラシレスDCモータ4の速度制御を行う。
波形合成手段12はPWM制御手段11により生成したPWM信号と通電相制御手段8により生成した信号を合成し、合成した信号を基にドライブ手段13によりインバータ回路3の各スイッチング素子3a〜3fをオンまたはオフ状態にして、生成した任意の3相交流電圧をブラシレスDCモータ4に供給し駆動する。
電圧検出回路14は、直列に接続した複数の抵抗を平滑回路の出力部に接続し、任意の抵抗の両端電圧を取り出すようにしている。入力電圧検出手段15は電圧検出回路14から取り出した電圧からインバータ回路3の入力電圧を検出し、PWM制御手段11に入力する。
PWM制御手段11は入力電圧が急峻に変動(特に上昇)したことを検出したとき、その電圧の上昇率に応じて、PWM制御によるインバータ回路3のスイッチング素子のオン時間の時比率を設定(電圧上昇時は時比率を下げる)し、波形合成手段12に出力する。すなわち、インバータ入力電圧が急激に上昇したとき、ブラシレスDCモータの入力電圧が大きく変化しないように、PWM制御のオン時間時比率が瞬時に下げられ、任意の通電角でPWM制御により駆動が行われる。以降、通電相制御手段8のオフタイミング制御部10により、PWM制御のオン時間時比率が100%となるように、スイッチング素子のオフタイミングが進めていく。
なお、インバータ回路3への入力電圧が急激に低下した場合、PWM制御を行っているときは入力電圧の低下度合いに応じて、PWM制御のオン時間時比率を増加して、ブラシレスDCモータ4の入力電圧の変化を抑制することも可能であるが、時比率100%で駆動している場合は対応することはできない。しかしながら、瞬時停電等で入力電圧が急激に低下した場合は、平滑回路2bに蓄積された電荷からブラシレスDCモータ4に電力が供給されるため、急激な電圧低下は回避される。したがって、電圧の急激な低下によるブラシレスDCモータ4の脱調は発生しにくく、入力電圧変化を抑制することは特に必要でない。
圧縮要素16は、ブラシレスDCモータ4の回転子の軸に接続され、冷媒ガスを吸入し、圧縮して吐出する。このブラシレスDCモータ4と圧縮要素16とを同一の密閉容器に収納し、圧縮機17を構成する。圧縮機17で圧縮された吐出ガスは、凝縮器18、減圧器19、蒸発器20を通って圧縮機17の吸い込みに戻るような冷凍空調システムを構成し、凝縮器18では放熱、蒸発器20では吸熱を行うので、加熱や吸熱を行うことができる。尚、必要に応じて凝縮器18や蒸発器20に送風機などを使い、熱交換をさらに促進することもある。また本実施の形態1では、冷凍空調システムは冷蔵庫21の冷凍サイクルとして用い、蒸発器20は断熱壁22で囲われた食品貯蔵室23内を冷却するために用いる。
以上のように構成されたモータ駆動装置について以下その動作と作用を説明する。
図2は本実施の形態1におけるモータ駆動装置のタイミングチャート図である。図2(a)は一般的な120度通電での駆動波形およびタイミング図であり、(b)はオフタイミング制御部10によりスイッチング素子のオフタイミングを調整してブラシレスDCモータ4を駆動したときの波形とタイミングを示している。ブラシレスDCモータ4の回転により発生する誘起電圧をE、端子電圧をVuとして示している。両波形ともU相のみを示しているが、V相およびW相波形はそれぞれ位相が120度ずれた同形状の波形となっている。高圧側に接続したスイッチング素子3a、3b、3cの駆動信号をU+、V+、W+として示し、低圧側接続のスイッチング素子3d、3e、3fの駆動信号はそれぞれの高圧側SW素子の駆動信号から180度位相がずれた波形となる。
固定子巻線の通電相の切換えタイミング(図示せず)を図るために、回転子磁極相対位置検出に誘起電圧のゼロクロスポイントを位置信号として検出する。ゼロクロスポイントの検出は当該相巻線への電圧印加がされていない(図2に示すU相では、スイッチング素子3a、3dの両方がオフとなる)区間(C1、C2、C3、C4)に現れる誘起電圧とインバータ入力電圧Vdcの1/2との大小関係が反転するポイント(P1、P2)を検出する。よって電気角1周期あたり各相2回、3相合計で6回、電気角60度毎に位置信号が発生する。
図2(a)に示す120度通電におけるスイッチング素子(高圧側接続の3a、3b、3c)の通電パターン(U+、V+、W+)を見ると、位置検出後(P1)電気角30度後にW+のオフと同時にU+(スイッチング素子3a)をオンすることで、電気角360度全範囲で常に3相いずれかの巻線が通電される。一方、図2(b)では位置検出(P1)後、電気角30度経過する前にW+(スイッチング素子3c)をオフにしたのち、電気角30度後にU+をオンするようにしている。
C1〜C4区間で誘起電圧が現れるのは他相のスイッチング素子がオンしている、即ちPWM制御のオン期間のみである。従って、スイッチング素子のターンオフは、ターンオンより早く行い、ブラシレスDCモータ4への電力供給区間を短くしている。これにより固定子巻線の電力供給区間が短くなり、PWM制御によるオン・オフ回数が少なくなるので、インバータ回路3の損失が抑制できる。更に、電力供給区間を短くすることで、PWM制御のオン時間が長くなり、位置検出信号の取得可能期間が長くなるので、位置検出精度が向上することになる。
さらに、スイッチング素子をオフするタイミングは位置検出直後から、位置検出後電気角30度経過(位置検出P1に対して区間A1の範囲)後までとして、当該位置検出(P1)で確実に転流可能な範囲且つ、誘起電圧に対して進み位相となるようにして、遅れ位相によるトルク低下が発生しないように考慮している。
このようにスイッチング素子(3a〜3f)のオフタイミングを位置検出直後から30度以内とすることで、3相巻線への電力供給区間を90度以上120度以下に調節して、電力供給休止区間(A1、A2、A3)が短いほど大きな進角B(電力無供給区間の電気角の1/2)が自動的に付加されるようになる。これにより、モータトルクが増加し電力無供給区間があるにもかかわらず脱調等の無い安定した駆動が可能となる。
負荷の増加等によりスイッチング素子のオフタイミングが位置検出後30度となったときが、120度通電で駆動可能な最大負荷である。この時オフタイミングを位置検出後30度の位置に固定し、PWM制御のオン時間時比率を100%とした状態で、オンタイミングを最大30度まで進める(即ち位置検出信号取得と同時に転流)ことで150度まで通電角を広げることができる。このときブラシレスDCモータ4の入力電流は最大17%程度増加し、駆動領域の拡張が可能となる。
次にスイッチング素子のオフタイミング調整動作について、フローチャートを用い、その動作を説明する。
図3はスイッチング素子のオフタイミング制御の開始を判断するフローチャート図である。図3において、まずS11において、PWM制御手段11で生成したスイッチング素子のオン時間時比率が所定値より大きくなっているかを確認し、所定値より大きい場合はS12に進みオフタイミング調整制御を開始し、所定値より小さい場合はPWM制御を行うようにする。オン時間時比率の所定値の設定は、本実施の形態1では各スイッチング素子の最低オン区間を電気角90度としているため、{(90度×2)−120度}/120度から50%としているが、用途により適正な任意の値を選定する。
このようにスイッチング素子のオフタイミング調整制御の開始を所定のPWMオン時間時比率以上の時としてPWM制御と併用することで、起動時等の極端に駆動速度が低い場合や、低速駆動時で非常に負荷が低い場合、倍電圧入力時で比較的負荷が軽い時や低速時などで、巻線への電力供給区間が極端に短くなることによる起動の失敗や不安定な運転状態、あるいは極端なトルク低下等を防止し、あらゆる負荷条件でも安定した駆動ができるようにしている。
図4はPWM制御からオフタイミング調整への移行を示すフローチャート図である。図3に示したフローにより、オフタイミング調整制御の開始を決定したとき、S21においてスイッチング素子のオフタイミングを任意の時間早く行い、S22でPWM制御により速度制御を行う。オフタイミングを早くすることで、ブラシレスDCモータ4への電力供給区間が短くなっていくため、PWM制御によるオン時間の時比率は増加することになる。S23でPWM制御によるオン時間時比率が100未満であるときS21に戻りその動作を続ける。S23でオン時間時比率が100%に到達した時、S24に進みオン時間時比率を100%の状態を保持して、以降はS25でスイッチング素子のオフタイミングの調整でブラシレスDCモータ4が目標速度で駆動するように速度制御を行う。さらに、スイッチング素子のオフタイミングが位置検出後30度(即ち120度通電状態)となったときは、オンタイミングを位置検出直後から位置検出後30度までの間で調整を行うオンタイミング制御を行い、ブラシレスDCモータの駆動可能領域を拡張し、目標速度で駆動する。
ここでインバータ回路3への入力電圧が急激に上昇した場合の動作について説明する。これは商用電源に瞬時停電が生じたことでインバータ回路3の入力電圧低下状態からの復帰時や、コンバータ回路2の整流方式が全波整流から倍電圧整流に切り替わった瞬間を想定している。
図5は本発明の実施の形態1におけるインバータ回路3への入力電圧が大きく上昇した場合の動作フローチャートであり、図1と合わせてその動作を説明する。
まずS31において入力電圧検出手段15は電圧検出回路14から取得した電圧からインバータ回路3の入力電圧を検出する。次にS32においてPWM制御手段11は、インバータ回路3の入力電圧が前回検出値より規定値以上上昇していないかを確認し、規定値以上の上昇が無い場合はS35で今回の検出値を前回値として格納し処理を抜ける。
一方S32で電圧上昇が大きいと判断した場合S33において、検出した入力電圧に応じたPWM制御のオン時間時比率を計算する。本発明の実施の形態1でのオン時間時比率計算は、電圧変動が生じる前後でブラシレスDCモータ4の印加電圧を等しくするように、「オン時間時比率[%]=(前回検出電圧[V]/今回検出電圧[V])×100」として算出し、PWM制御手段11は、S34で算出したオン時間時比率でPWM波形を出力したあと、S35で今回の検出値を前回値として格納する。
このようにインバータ回路3への入力電圧が急激に上昇した時、インバータ回路3への入力電圧の変化前後でのブラシレスDCモータ4への入力電圧が同等となるようなPWM制御のオン時間時比率を瞬時に計算し出力することで、ブラシレスDCモータへの入力電圧の急激な変化を抑制し、脱調および回転子永久磁石の減磁の原因となる過電流の発生を防止している。
また、インバータ回路3への入力電圧を全波整流から、倍電圧整流に変更して、ブラシレスDCモータ4の出力範囲を拡張する際においても、ブラシレスDCモータ4を一旦停止することなく切換えることが出来るので、非常に使い勝手の良いモータ駆動装置を提供できる。
なお、入力電圧の検出周期は、電圧変動に対する応答性を良くするために、PWMタイマ周期で行うことが一番好ましいが、使用するプロセッサの計算能力やA/D変換速度などを考慮して設定する。
次にスイッチング素子のオフタイミング調整制御への移行後のブラシレスDCモータの速度制御について図1および図6を用いてその動作を説明する。
図6は本実施の形態1のスイッチング素子のオフタイミング調整制御の動作フローチャート図である。図6においてまずS41において、速度検出手段6で検出したブラシレスDCモータ4の駆動速度と目標速度との偏差を速度誤差検出手段7で検出し、目標速度より早い場合はS42に進む。S42では、PWM制御手段11でのオン時間時比率100%を保持して、オフタイミング制御部10によりオフタイミングを早くすることが可能か否かを判断し、可能であればスイッチング素子のオフ時間を早めることで巻線への電力供給区間を減じてブラシレスDCモータ4の速度が低下するように速度制御を行い(S43)、不可能であればPWM制御手段11におけるPWM制御を併用する(S44)。本実施の形態1において、オフタイミングを早くすることが可能か否かの判断は、スイッチング素子のオフタイミングが位置検出後すぐである場合はこれ以上タイミングを早めることが出来ないと判断する。本実施の形態1では進角を0度としているので固定子巻線への最低電力供給区間は電気角90度となる。
ブラシレスDCモータ4の駆動速度が目標速度より遅いと判断(S45)した時S46に進み、スイッチング素子のオフが位置検出から電気角30度経過するまでに行われているかを判断する。オフタイミングが電気角30度経過より前に行われている場合S47に進みスイッチング素子のオフタイミングを遅らせて、ブラシレスDCモータの巻線への電力供給区間を増やし、駆動速度が上昇するように速度制御を行う。S46でオフスイッチング素子のオフタイミングが電気角30度経過位置である場合はS48に進む。S48ではこれ以上スイッチング素子のオフタイミングを遅らせた場合、誘起電圧に対して印加電圧位相が遅れ位相となり、モータトルクの低下およびこれに伴う脱調等の可能性があるため、オンタイミングを早めることで巻線への電力供給区間を増やしてブラシレスDCモータの駆動速度が上昇するように速度制御を行う。
本実施の形態1では、オンタイミングを早める上限は位置検出直後までとして、このときの巻線への最大電力供給区間は電気角150度となり、このときブラシレスDCモータの電流は約17%増加し、出力範囲も拡張することができる。
なお、駆動速度が目標速度と等しい場合はS45にて制御を抜けることになる。
また、本実施の形態1では進角を0度としているため、電気角120度通電でスイッチング素子のオフタイミングとオンタイミングが位置検出後30度のタイミングで一致して行われることになる。固定子内部に永久磁石が埋め込まれたIPMモータでは、最適な駆動実現のためには最適な進角を設ける必要がある。従ってIPMモータ等、あらゆるモータを最適に駆動出来るように、スイッチング素子のオフタイミング調整範囲は、位置検出直後から、位置検出タイミングから「(電気角30度)−(進角)」まで経過した位置。スイッチング素子のオンタイミングは、位置検出タイミングから「(電気角30度)−(進角)」だけ経過したタイミング(例えば進角10度の場合、ターンオフは位置検出から電気角20度経過までの範囲で調整し、ターンオンは位置検出後電気角20度後)で行い、かつ位置検出からターンオフまでの電気角と、位置検出からターンオンまでの電気角の和を60度以下として、ターンオフをターンオンより電気角0度から30度までの任意の範囲で調整できるようにして、位置検出から電気角30度までの間で進角とオン・オフのタイミングを自由に設定可能としている。
尚、進角を付加したときの各スイッチング素子のオン区間は電気角で「90度+進角」から120度の範囲で調整されることになる。
さらにブラシレスDCモータ4を高速・高負荷で駆動する場合は、ターンオフタイミングを位置検出から「(電気角30度)−(進角)」経過したタイミングとして、ターンオンタイミングを位置検出直後から、位置検出から「電気角30度−進角」だけ経過したタイミングの範囲で調整することで各スイッチング素子のオン区間を電気角120度から「電気角150−進角」の範囲で調整できる。
従って、スイッチング素子のターンオン、ターンオフタイミングの調整により電気角90度から150度までの範囲(進角0度の時)でブラシレスDCモータへの電力供給区間を調整できることになり、低速・低負荷の駆動から高速・高負荷の駆動まで幅広い負荷・速度状態での駆動に対応可能である。
次に本実施の形態1におけるブラシレスDCモータの端子電圧について図6を用いて説明する。図7(a)および(b)は図2(a)における区間C1、F1を示し、図7(c)および(d)は図2(b)における区間C3,F2を示している。
図7(a)、(b)に示すように120度通電のPWM制御での波形を示す図2(a)は高周波のPWMキャリア周波数成分(周期f)が重畳されている。また図7(a)に示すようにC1区間では、PWM制御がオンした瞬間にモータ巻線や浮遊容量等の影響によるリンギングノイズ成分も重畳する。C1区間はブラシレスDCモータの端子電圧Vuとインバータ入力電圧の1/2を比較して、その大小関係が反転するポイントをブラシレスDCモータの誘起電圧のゼロクロス点(P点)として検出するが、リンギングノイズ成分によりPx点と誤検出してしまう。この位置検出ズレは、ブラシレスDCモータの駆動速度の脈動や振動、騒音の増大、駆動効率の低下などの原因となる。
一方で図7(c)に示すように、PWM制御のオン時間時比率を100%とした場合、端子電圧Vuには誘起電圧波形が現れ、正確なゼロクロスポイント(P点)での位置検出が可能であり、低騒音、低振動、低損失な安定した駆動が実現できる。
また区間F1区間では、図7(b)に示すようにPWM制御による高周波でのスイッチング素子のオン・オフに伴うスイッチング損失が発生するが、図7(d)に示すようにオン時間時比率100%の駆動ではスイッチング動作は行われないためスイッチング損失は発生せず、回路損失の低減による高効率化が実現できる。
さらにブラシレスDCモータに流れる電流を図8に示す。図8(a)は120度通電によるPWM制御での波形であり、PWM制御でのスイッチング素子のオン・オフに伴う高周波電流成分が重畳していることが分かる。この高周波電流成分はモータ鉄損の原因となる一方、図8(b)に示すPWM制御のオン時間時比率100%での運転では高周波電流成分の発生はないため、モータ損失の低減によるモータ駆動装置の高効率化が図れる。
以上のように構成したモータ駆動装置で圧縮機を駆動する冷却システムを持つ冷蔵庫について説明する。
近年の冷蔵庫は、真空断熱材の採用など断熱技術の向上により、外部からの熱侵入が非常に少なくなっている。このため扉開閉が頻繁に行われる朝夕の家事時間帯を除けば、1日の大半で冷蔵庫内は安定した冷却状態にあり、圧縮機は冷凍能力を下げた低速・低負荷での駆動が行われている。従って、冷蔵庫の消費電力を削減するためには、圧縮機すなわちブラシレスDCモータの低速・低出力時の駆動効率を上げることが非常に有効である。
本発明の実施の形態1では、ブラシレスDCモータが低速・低負荷で駆動している状態において、PWM制御による高周波のオン・オフ制御を行わず、PWMオン時間時比率を100%となるように、スイッチング素子のオンまたはオフタイミングを調整しながらブラシレスDCモータの駆動速度制御を行う。これによりインバータ回路3はPWM制御によるスイッチングロスの発生が無くインバータの回路効率を大幅に向上することが出来る。
本実施の形態1では、インバータ回路3のスイッチング素子にはMOSFETを用いている。MOSFETはその構造的特徴から、オン時の出力電流の経路にPN接合を持たないため、特に低電流出力時におけるオン時の損失は、IGBT等の他のパワーデバイスと比較して非常に低くなる。
先述したように冷蔵庫は1日の大半で低速・低負荷での駆動がされているためブラシレスDCモータに流れる電流が低い。従って、本発明のモータ駆動装置を冷蔵庫の圧縮機に用いるとき、インバータ回路3のスイッチング素子にMOSFETを用いることは、冷蔵庫の消費電力の低減に非常に有効となる。
また、PWM制御によるオン・オフ制御を行わないことでブラシレスDCモータの巻線電流には高周波電流成分が無く、モータ鉄損を大幅に抑制できモータ効率の向上が図れる。
さらにPWM制御は一般的に1kHから20kHz程度のPWM周波数でのスイッチング動作が行われ、この周波数成分が騒音として発生する。冷蔵庫は昼夜にかかわらず1日中運転しているため、静音設計は非常に重要である。本実施の形態1のモータ駆動装置は、オン時間の時比率が100%であり、PWM制御に起因する騒音の発生が無いため、冷蔵庫の静音設計に非常に有効である。また、冷蔵庫は圧縮機が一旦停止した場合、圧縮機の機械部の信頼性の観点から、低圧側と高圧側の圧力差が平衡するまで再起動を遅延する必要があるが、ブラシレスDCモータの入力電圧が急上昇したときも、停止することなく安定した駆動を継続できるので、圧縮機停止による庫内温度の上昇もなく、安定した冷却状態を保つことができる。
さらに冷蔵庫の負荷増大に伴い、高速駆動により冷凍能力を上げた運転を行いたい場合も、ブラシレスDCモータの入力電圧を、圧縮機の停止による庫内冷却のロス無く、切換えることが出来る。
以上のように本発明にかかるモータ駆動装置は、モータ駆動装置の回路損失の低減およびモータ効率の向上、高信頼性、駆動騒音と振動の低減が可能となるため、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、ポンプ、扇風機、ファン、電気掃除機など、ブラシレスDCモータを用いたあらゆる機器にも適用できる。
3 インバータ
4 ブラシレスDCモータ
5 位置検出手段
8 通電相制御手段
11 PWM制御手段
17 圧縮機
21 冷蔵庫

Claims (3)

  1. ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータに電力を供給する6個のスイッチング素子で構成されるインバータと、前記ブラシレスDCモータの回転子の回転位置を検出する位置検出手段と、前記インバータの出力電圧を前記インバータのスイッチング素子を高周波数でオン/オフを行うことで前記ブラシレスDCモータ供給する電圧を調整するPWM制御手段と、PWM制御による前記インバータのスイッチング素子のオン時間の時比率が最大となるように前記ブラシレスDCモータの3相巻線の通電相を決める通電相制御手段と、前記インバータの入力電圧を検出する入力電圧検出手段と、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路の出力を直流電圧にする平滑回路と、前記整流回路の整流方式を全波整流と倍電圧整流に切り替える切換え手段を有し、前記切換え手段により前記整流回路の整流方式が全波整流から倍電圧整流に切り替えたとき、前記PWM制御手段は、前記スイッチング素子のオン時間の時比率を下げることを特徴とするモータ駆動装置。
  2. 前記ブラシレスDCモータは、冷凍サイクルの圧縮機を駆動することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
  3. 請求項1または2に記載のモータ駆動装置により駆動される圧縮機を有する冷蔵庫。
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