本発明の実施形態のアクセル操作装置は、基部と、基部に回転可能または移動可能に支持され、アクセル操作の量に応じて原位置から回転または移動する可動部と、アクセル操作がなくなったときに可動部を原位置へ戻す付勢部と、可動部に接触して可動部に摩擦抵抗を与える接触部と、外部からの電圧の印加により変形し、接触部を可動部へ押し付ける力を変化させることにより、上記摩擦抵抗を変化させる圧電素子とを備えている。
本発明の実施形態のアクセル操作装置では、圧電素子を変形させることにより、可動部へ与える摩擦抵抗を変化させる。圧電素子は、外部から当該圧電素子に印加する電圧に応じて変形する。したがって、圧電素子に印加する電圧を制御することにより、可動部へ与える摩擦抵抗を変化させることができる。印加電圧の制御は、それが印加電圧を複雑に変化させる制御である場合でも、例えばエンジン制御装置(ECM:エンジンコントロールモジュール)により容易に行うことができる。したがって、例えばエンジン制御装置により印加電圧を制御することにより、可動部へ与える摩擦抵抗を複雑に変化させることができる。このように、本発明の実施形態のアクセル操作装置によれば、圧電素子の変形により可動部へ与える摩擦抵抗を変化させる構成としたから、可動部に加える制動力を複雑に変化させる制御を容易に行うことができる。
図1は、本発明の実施例のアクセル操作装置1におけるスロットルグリップ装置2の構成を示している。図2はスロットルグリップ装置2の可動部9の一端側を示している。図3はアクセル操作装置1の構成を示している。
図3において、アクセル操作装置1は、自動二輪車のエンジンのアクセル操作を行うための装置である。アクセル操作装置1は、スロットルグリップ装置2および制御装置35を備えている。スロットルグリップ装置2は、自動二輪車のハンドルバーの右端側に取り付けられている。制御装置35は、例えば自動二輪車のエンジンを制御するエンジン制御装置(ECM:エンジンコントロールモジュール)であり、自動二輪車に設けられている。
スロットルグリップ装置2は、図1に示すように、ケーシング3、可動部9、メインスプリング24、一対のパッド25、一対の圧電素子26、および回転センサ27を備えている。
ケーシング3は、可動部9およびメインスプリング24を支持する機能を有している。また、ケーシング3は、各パッド25、各圧電素子26、回転センサ27を内部に収容して、これらを風雨等から保護する機能を有している。ケーシング3は、図示しない固定機構により、自動二輪車のハンドルバーの右端側に固定されている。また、ケーシング3は例えば樹脂または金属により箱状に形成されている。また、ケーシング3の右側の壁部および左側の壁部には、可動部9の可動部本体10を挿入して支持するためのグリップ支持孔4、5がそれぞれ形成されている。また、ケーシング3の右側の壁部の下部には、回転センサ27の柱部29を支持するためのセンサ支持孔6が形成されている。
可動部9は、スロットルグリップ装置2において、自動二輪車の運転者によるアクセル操作に応じて回転する部分である。可動部9は、図1に示すように、可動部本体10、グリップ部13、サブスプリング20、グリップスイッチ21、および円板23を備えている。
可動部本体10は、例えば金属により、その外形が円柱状に形成され、具体的には円筒状に形成されている。可動部本体10の左部は、ケーシング3のグリップ支持孔4、5に挿入され、可動部本体10の軸線Xを中心にケーシング3に対して回転可能にケーシング3に支持されている。また、可動部本体10の左部には、可動部本体10がケーシング3に対して軸方向に移動することを防止するためのリング状の外側支持部11および内側支持部12が設けられている。外側支持部11はケーシング3の外側(右側)に配置され、内側支持部12はケーシング3内に配置され、両者はケーシング3の右側の壁部を挟んでいる。
ここで、図4(1)、(2)、(3)および(4)はスロットルグリップ装置2の動作を模式的に示している。図4(1)、(2)、(3)および(4)はそれぞれ、スロットルグリップ装置2をその右方から見た図である。図4(1)において、可動部本体10とグリップ部13とを明確に識別できるようにするために、可動部本体10並びに可動部本体10に設けられた伝達穴19および接触子21Aを破線で示し、グリップ部13並びにグリップ部13に設けられた伝達突起18および接触子21Bを実線で示している。図4(2)、(3)および(4)においても同様である。図4(1)に示すように、可動部本体10は、原位置aから最大開度位置bまでの範囲を回転する。可動部本体10の位置が原位置aであるとき、アクセル開度は0度である。スロットルグリップ装置2を右方から見たときに、可動部本体10が左回り方向(矢示e方向)に回転することによりアクセル開度が増加し、可動部本体10が右回り方向(矢示f方向)に回転することによりアクセル開度が減少する。なお、図4(1)、(2)、(3)および(4)では、可動部本体10が原位置aから最大開度位置bまで最大90度回転する場合を示しているが、これは一例にすぎず、可動部本体10が回転可能な範囲は適宜設定することができる。
グリップ部13は、アクセル操作を行う者、すなわち運転者が握る部分である。グリップ部13は、図1に示すように、可動部本体10の右部の外周側に設けられている。グリップ部13はグリップ筒14およびグリップ17を備えている。
グリップ筒14は、例えば金属により円筒状に形成されている。グリップ筒14は可動部本体10の右部の外周側に配置されている。すなわち、グリップ筒14の内側には可動部本体10の右部が挿入されている。グリップ筒14の内径は、可動部本体10の外径よりも僅かに大きい。グリップ筒14は可動部本体10に対して同軸に配置され、可動部本体10に対して軸線Xを中心に回転することができる。また、グリップ筒14の右端部には、グリップ筒14の可動部本体10に対する回転を許しつつ、グリップ筒14が可動部本体10に対して軸方向に移動することを防止するための支持機構15が設けられている。また、グリップ筒14の左端部には、その外周部がグリップ筒14の他の部分よりも全周に亘って径方向外向きに突出した鍔部16が形成されている。
グリップ17は、グリップ部13を握る運転者の手がグリップ部13に対して滑り難くするための部材である。グリップ17はグリップ筒14の外周側に設けられ、グリップ筒14に固定されている。グリップ17は例えばゴムにより右端側が閉塞された有蓋筒状に形成されている。グリップ17は、グリップ筒14において、その鍔部16の左面および周面を除く部分を覆っている。
また、グリップ筒14の鍔部16には伝達突起18が設けられ、可動部本体10の外側支持部11には伝達穴19が設けられている。伝達突起18および伝達穴19は、グリップ部13が可動部本体10に対して回転可能な量を所定の量に制限する機能を有している。この所定の量は、グリップスイッチ21を確実にオン/オフ動作させることが可能な最小限の量であることが望ましく、例えば2度である。伝達突起18および伝達穴19は、軸線Xからの径方向における距離が互いに等しい。図2に示すように、伝達穴19は外側支持部11の右面に開口している。なお、伝達穴19は、外側支持部11を軸方向に貫通していてもよい。伝達穴19は可動部本体10の周方向に長い長穴である。また、可動部本体10の周方向における伝達穴19の長さは、グリップ部13が軸線Xを中心に上記所定の量移動したときの伝達突起18の周方向における移動距離に等しい。一方、伝達突起18は円柱状に形成され、グリップ筒14の鍔部16の左面から左方へ突出している。すなわち、伝達突起18の基端部(右端部)はグリップ筒14の鍔部16に固定されている。また、伝達突起18の先端部(左端部)は伝達穴19内に入り込んでいる。伝達突起18は、伝達穴19内において可動部本体10の周方向に移動することができる。グリップ筒14は伝達突起18が伝達穴19内で移動可能な角度だけ、可動部本体10に対して回転することができる。
サブスプリング20は、グリップ部13を可動部本体10に対し、アクセルを閉じる方向(図2または図4中の矢示f方向)に付勢するばねである。サブスプリング20は、アクセル操作がなくなったときに可動部本体10をオフ位置cに戻す機能を有している。なお、図2および図4においてはサブスプリング20の図示を省略している。サブスプリング20は例えばねじりコイルばねである。サブスプリング20は、グリップ筒14の鍔部16と可動部本体10の外側支持部11との間であって、可動部本体10の外周側に配置されている。サブスプリング20のコイルの一端部はグリップ筒14に支持され、サブスプリング20のコイルの他端部は可動部本体10に支持されている。サブスプリング20の付勢力はメインスプリング24の付勢力と比較して小さい。
図4(1)および図4(2)に示すように、グリップ部13は可動部本体10に対してオフ位置cとオン位置dとの間を上記所定の量回転する。オフ位置cは、グリップ部13が可動部本体10に対して右回り方向(矢示f方向)に最も回転した位置である。図4(1)はグリップ部13が可動部本体10に対してオフ位置cに位置している状態を示している。グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオフ位置cであるとき、伝達穴19において右回り方向に位置する内壁に伝達突起18が接触する。これにより、グリップ部13はオフ位置cを超えて可動部本体10に対して右回りに回転することはできない。一方、オン位置dは、グリップ部13が可動部本体10に対して左回り方向(矢示e方向)に最も回転した位置である。図4(2)はグリップ部13が可動部本体10に対してオン位置dに位置している状態を示している。グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオン位置dであるとき、伝達穴19において左回り方向に位置する内壁に伝達突起18が接触する。これにより、グリップ部13はオン位置dを超えて可動部本体10に対して左回りに回転することはできない。
グリップスイッチ21は、グリップ部13の可動部本体10に対する位置を検出することにより、アクセル操作の有無を検出する機能を有するスイッチである。グリップスイッチ21は、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオフ位置cであるときにオフとなり、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオン位置dであるときにオンとなる。グリップスイッチ21は一対の接触子21A、21Bを備えている。図2に示すように、一方の接触子21Aは可動部本体10の外側支持部11の右面に設けられ、他方の接触子21Bはグリップ部13の鍔部16の左面に設けられている。図4(1)に示すように、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオフ位置cであるとき、接触子21Aと接触子21Bとは互いに離れている。一方、図4(2)に示すように、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオン位置dであるとき、接触子21Aと接触子21Bとは互いに接触している。
図1において、円板23は、各パッド25と接触して可動部本体10に制動力を加える機能、および可動部本体10の回転を回転センサ27のセンサ歯車28に伝達する機能を有している。円板23は可動部本体10よりも大きい直径を有する円形の板であり、例えば金属または樹脂により形成されている。円板23はケーシング3内に設けられている。また、円板23は可動部本体10と同軸となるように配置され、可動部本体10の左部に固定されている。具体的には、円板23の中心部には孔が形成されており、その孔に可動部本体10が挿入されている。そして、円板23と可動部本体10とは例えばそれぞれに形成されたスプラインにより結合されている。円板23は可動部本体10と一体となって回転する。また、円板23の左、右両側の面はそれぞれ平面である。これらの面はそれぞれ、パッド25が接触する面(被接触面)である。また、円板23の外周側には歯が切られている。円板23はこれらの歯は回転センサ27のセンサ歯車28の歯と噛み合っている。なお、可動部本体10と円板23とを一体成形してもよい。
メインスプリング24は、可動部本体10をケーシング3に対し、アクセルを閉じる方向(図2または図4中の矢示f方向)に付勢するばねである。メインスプリング24は、アクセル操作がなくなったときに可動部本体10を原位置aに戻す機能を有している。メインスプリング24は例えばねじりコイルばねである。メインスプリング24は、ケーシング3内に設けられ、可動部本体10の左端部の外周側に配置されている。メインスプリング24のコイルの一端部は可動部本体10に支持され、メインスプリング24のコイルの他端部はケーシング3に支持されている。
一対のパッド25は、円板23と接触することにより可動部本体10に制動力を加える機能を有している。各パッド25はケーシング3内に設けられている。一方のパッド25は円板23の外周部の左部に配置され、他方のパッド25は円板23の外周部の右部に配置されている。各パッド25は例えば樹脂により平板状に形成されている。左側のパッド25の右面は円板23の左面の外周部に接触し、左側のパッド25の左面は左側の圧電素子26の右面に固定されている。また、右側のパッド25の左面は円板23の右面の外周部に接触し、右側のパッド25の右面は右側の圧電素子26の左面に固定されている。
一対の圧電素子26は可動部本体10に加える制動力の大きさを変化させる機能を有している。各圧電素子26はケーシング3内に設けられている。ケーシング3内には一対の圧電素子26を固定するための一対の素子固定部7が設けられている。各素子固定部7はケーシング3に固定されている。一方の素子固定部7は円板23の外周部の左方に配置され、他方の素子固定部7は円板23の外周部の右方に配置されている。一方の圧電素子26は、左側の素子固定部7と円板23の外周部との間に配置され、他方の圧電素子26は、右側の素子固定部7と円板23の外周部との間に配置されている。左側の圧電素子26の左面は左側の素子固定部7の右面に固定され、左側の圧電素子26の右面には円板23の左側に位置するパッド25が固定されている。また、右側の圧電素子26の右面は右側の素子固定部7の左面に固定され、右側の圧電素子26の左面には円板23の右側に位置するパッド25が固定されている。
各圧電素子26は、当該圧電素子26に電圧を印加することにより、図1中の矢示g方向に伸張し、当該圧電素子26に印加する電圧を停止することにより収縮する。また、各圧電素子26は、当該圧電素子26に印加する電圧の大きさを増加させると、矢示g方向における伸張の程度が大きくなり、当該圧電素子26に印加する電圧の大きさを減少させると、矢示g方向における伸張の程度が小さくなる。各圧電素子26の伸張の程度が大きくなると、当該圧電素子26が、当該圧電素子26に固定されたパッド25を円板23に押し付ける力が大きくなる。各パッド25が円板23を押し付ける力が大きくなると、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗が大きくなるので、可動部本体10に加わる制動力が大きくなる。これとは逆に、各圧電素子26の伸張の程度が小さくなると、当該圧電素子26がパッド25を円板23に押し付ける力が小さくなり、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗が小さくなり、それゆえ、可動部本体10に加わる制動力が小さくなる。このように、各圧電素子26へ印加する電圧の大きさを変化させることにより、可動部本体10に加わる制動力が変化する。
回転センサ27は可動部本体10の回転量検出するセンサである。回転センサ27はケーシング3内に設けられている。回転センサ27は、センサ歯車28、柱部29、センサスプリング30、磁石31、およびホール素子32を備えている。
センサ歯車28は円板23と噛合する歯車である。柱部29はセンサ歯車28をケーシング3に回転可能に支持する部材である。柱部29の基端部(右端部)はケーシング3に形成されたセンサ支持孔6に回転可能に支持され、柱部29の先端部(左端部)にはセンサ歯車28の右面側の中心部が固定されている。センサスプリング30は、スロットルグリップ装置2を右方から見たとき、左回り方向の付勢力を柱部29に加えるばねである。センサスプリング30は、可動部本体10が原位置aに戻ったとき、センサ歯車28を当該センサ歯車の原位置に確実に戻す機能を有している。センサスプリング30は柱部29の外周側に設けられている。磁石31はセンサ歯車28の左面上に取り付けられている。磁石31はセンサ歯車28の周方向に異なる極性が交互に並ぶように配置されている。ホール素子32は磁石31により生成された磁界を検出する素子である。ホール素子32は磁石31に接近した位置に配置されている。
運転者がアクセル操作を行い、可動部本体10と共に円板23が回転すると、円板23と噛合しているセンサ歯車28が回転する。センサ歯車28が回転すると、磁石31が回転し、磁石31によりホール素子32の周囲に形成された磁界が変化する。ホール素子32はこの磁界の変化を検出する。磁界の変化に基づいて、可動部本体10の回転量を認識することができる。
図3において、アクセル操作装置1の制御装置35は、アクセル操作の有無およびアクセル開度に基づいてスロットルグリップ装置2の可動部本体10に加える制動力を制御する機能を有している。また、制御装置35は、アクセル操作の有無およびアクセル開度に基づいて電子制御スロットル37におけるスロットル開度を制御する機能をも有している。制御装置35には、グリップスイッチ21の接触子21A、21B、回転センサ27のホール素子32、一対の圧電素子26、および電子制御スロットル37等が電気的に接続されている。
制御装置35は、グリップスイッチ21がオンかオフかを認識し、これに基づいてアクセル操作の有無を認識することができる。また、制御装置35は、ホール素子32から出力される検出信号に基づいて、可動部本体10の回転量を認識することができる。可動部本体10の回転量はアクセル開度に等しい。また、制御装置35は、アクセル操作の有無およびアクセル開度に基づいて各圧電素子26に印加する電圧の大きさを決定することができる。また、制御装置35は、上記決定した大きさの電圧を各圧電素子26に印加し、各圧電素子26の伸縮を制御することができる。上述したように、各圧電素子26の伸縮により、可動部本体10に加わる制動力が定まる。また、制御装置35は、アクセル操作の有無およびアクセル開度に基づいてスロットル開度を決定することができる。また、制御装置35は、電子制御スロットル37においてスロットルバルブを駆動するモータに制御信号を出力し、スロットルバルブの開度を上記決定したスロットル開度に設定することができる。
図5はアクセル操作装置1の動作の一例を示している。また、図4(1)、(2)、(3)および(4)は、図5に示すアクセル操作装置1の動作の一例に一部対応している。以下、図4および図5を参照しながら、このアクセル操作装置1の動作の一例を述べる。
まず、図5の表中の状態1、すなわち、運転者によるアクセル操作がなく、アクセル操作量が0度のとき、図4(1)に示すように、サブスプリング20の付勢力により、グリップ部13の可動部本体10に対する位置はオフ位置cである。このとき、グリップスイッチ21はオフである。また、このとき、メインスプリング24の付勢力により、可動部本体10のケーシング3に対する位置は原位置aである。すなわち、可動部本体10のケーシング3に対する回転量(アクセル開度)は0度である。制御装置35は、グリップスイッチ21がオフであり、かつアクセル開度が0度であるとき、各圧電素子26へ電圧を印加しない。これにより、各圧電素子26は収縮し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗は最小値または0となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力は最小値または0となる。
次に、図5の表中の状態2、すなわち、運転者によるアクセル操作が開始され、アクセル操作量が0度より大きく2度未満のとき、サブスプリング20の付勢力に抗して、グリップ部13の可動部本体10に対する位置が図4(1)中の矢示e方向に回転する。しかし、グリップ部13の可動部本体10に対する位置はまだオン位置dには達していない。このとき、グリップスイッチ21はオフである。また、グリップ部13を付勢するサブスプリング20の付勢力は、可動部本体10を付勢するメインスプリングの付勢力よりも小さいので、アクセル操作量が0度よりも大きく2度未満のときには、可動部本体10はケーシング3に対して回転しない。したがって、このとき、可動部本体10のケーシング3に対する位置は原位置aである。すなわち、可動部本体10のケーシング3に対する回転量(アクセル開度)は0度である。制御装置35は、グリップスイッチ21がオフであり、かつアクセル開度が0度であるとき、各圧電素子26へ電圧を印加しない。これにより、各圧電素子26は収縮し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗は最小値または0となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力は最小値または0となる。このとき、運転者の手にはサブスプリング20の付勢力のみが加わる。
次に、図5の表中の状態3、すなわち、アクセル操作量が2度になったとき、サブスプリング20の付勢力に抗して、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオン位置dに達する。これにより、グリップスイッチ21がオンになる。しかし、この瞬間では、可動部本体10のケーシング3に対する位置は原位置aである。すなわち、可動部本体10のケーシング3に対する回転量(アクセル開度)は0度である。制御装置35は、グリップスイッチ21がオンであり、かつアクセル開度が0度であるとき、各圧電素子26へ「極小」の電圧を印加する。これにより、各圧電素子26は僅かに伸張し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗が「極小」となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力が「極小」となる。このとき、運転者の手にはサブスプリング20の付勢力と「極小」の制動力が加わる。
次に、図5の表中の状態4、すなわち、アクセル操作量が3度になったとき、グリップ部13の可動部本体10に対する位置はオン位置dであり、グリップスイッチ21はオンになっている。また、このとき、可動部本体10はケーシング3に対して原位置aから図4中の矢示e方向に1度回転する。この結果、可動部本体10のケーシング3に対する回転量(アクセル開度)が1度になる。制御装置35は、グリップスイッチ21がオンであり、かつアクセル開度が1度であるとき、各圧電素子26へ「小」の電圧を印加する。これにより、各圧電素子26はさらに僅かに伸張し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗が「小」となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力が「小」となる。このとき、運転者の手にはサブスプリング20の付勢力、メインスプリング24の付勢力、および「小」の制動力が加わる。
次に、図5の表中の状態5、すなわち、アクセル操作量が40度になったとき、グリップ部13の可動部本体10に対する位置はオン位置dであり、グリップスイッチ21がオンになっている。また、このとき、可動部本体10のケーシング3に対する回転量(アクセル開度)が38度になる。制御装置35は、グリップスイッチ21がオンであり、かつアクセル開度が38度であるとき、各圧電素子26へ「中」の電圧を印加する。これにより、各圧電素子26はさらに伸張し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗が「中」となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力が「中」となる。このとき、運転者の手にはサブスプリング20の付勢力、メインスプリング24の付勢力、および「中」の制動力が加わる。
次に、図5の表中の状態6、すなわち、アクセル操作量が70度になったとき、図4(3)に示すように、グリップ部13の可動部本体10に対する位置はオン位置dであり、グリップスイッチ21がオンになっている。また、このとき、可動部本体10のケーシング3に対する回転量(アクセル開度)が68度になる。制御装置35は、グリップスイッチ21がオンであり、かつアクセル開度が68度であるとき、各圧電素子26へ「大」の電圧を印加する。これにより、各圧電素子26はさらに伸張し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗が「大」となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力が「大」となる。このとき、運転者の手にはサブスプリング20の付勢力、メインスプリング24の付勢力、および「大」の制動力が加わる。
次に、図5の表中の状態7、すなわち、アクセル操作量が70度であるときに、運転者によるアクセル操作がなくなった瞬間(運転者がグリップ部13を矢示e方向に回転させる力を止めた瞬間)、図4(4)に示すように、サブスプリング20の付勢力により、グリップ部13が可動部本体10に対して矢示f方向に回転し、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオフ位置cになる。この結果、グリップスイッチ21がオフになる。制御装置35は、グリップスイッチ21がオフになったとき、各圧電素子26への電圧の印加を停止する。これにより、各圧電素子26は収縮し、各パッド25と円板23との間の摩擦抵抗は最小値または0となる。この結果、可動部本体10に加わる制動力は最小値または0となる。可動部本体10に加わる制動力が最小値または0になるので、その直後、メインスプリング24の付勢力により、可動部本体10がケーシング3に対して矢示f方向に迅速に回転し、原位置aに戻る。
制御装置35には、アクセル操作の有無およびアクセル開度と、各圧電素子26へ印加する電圧との複雑な関係を細かく定めたマップデータが記憶されている。このマップデータは、アクセル操作を機械的に伝達する構成におけるスロットルグリップの操作感を分析することにより作成されたものである。制御装置35から各圧電素子26へ印加する電圧の値の「極小」、「小」、「中」、「大」は、上記マップデータを用いて制御装置35が決定したものである。図5に示す制御より、アクセル操作装置1のスロットルグリップ装置2において、アクセル操作を機械的に伝達する構成におけるスロットルグリップの操作感が忠実に再現される。
以上説明した通り、本発明の実施例のアクセル操作装置1によれば、可動部本体10に加える制動力を各圧電素子26の変形により変化させる構成としたから、制御装置35により各圧電素子26への印加電圧を制御することにより、可動部本体10に加える制動力を複雑に変化させる制御を容易に行うことができる。
また、本発明の実施例のアクセル操作装置1によれば、アクセル操作がなくなったことをグリップスイッチ21により検出する構成とし、アクセル操作がなくなったことが検出されたときには、各圧電素子26への電圧の印加を停止し、各圧電素子26を収縮させることとしたから、アクセル操作がなくなったときに、可動部本体10に加わる制動力を除去し、または最小にすることができる。これにより、メインスプリング24の付勢力を利用して可動部本体10を原位置aに迅速に戻すことができる。また、グリップ部13を、アクセル操作に応じて可動部本体10に対してオフ位置cとオン位置dとの間で回転可能となるように設け、かつ、グリップ部13の可動部本体10に対する位置がオフ位置cであるか、オン位置dであるかをグリップスイッチ21により検出する構成としたから、アクセル操作がなくなったときに可動部本体10を原位置aに迅速に戻す制御を行う構成を、自動二輪車において容易に実現することができる。
また、本発明の実施例のアクセル操作装置1によれば、回転センサ27により検出された可動部本体10の回転量に基づいて各圧電素子26に印加する電圧の大きさを変化させることにより、可動部本体10の回転量に応じて可動部本体10に加わる制動力を変化させることができる。これにより、例えば、アクセル操作装置1のスロットルグリップ装置2において、アクセル操作を機械的に伝達する構成におけるスロットルグリップの操作感の再現性を高めることができる。
また、本発明の実施例のアクセル操作装置1によれば、可動部9を、回転する円柱状の可動部本体10と、可動部本体10の右部に設けられたグリップ部13と、可動部本体10の左部に設けられた円板23とを備える構成とし、かつ、円板23に各パッド25を接触させ、各パッド25の円板23に対する押付力を各圧電素子26の変形により変化させる構成としたから、スロットルグリップに加える制動力を複雑に変化させる制御を自動二輪車において容易に実現することができる。
なお、上述した実施例では、アクセル操作装置1のスロットルグリップ装置2において、可動部本体10へ加える制動力を変化させることにより、アクセル操作を機械的に伝達する構成におけるスロットルグリップの操作感を再現する場合を例にあげたが、さらに、上述した実施例のアクセル操作装置1によれば、可動部本体10へ加える制動力を変化させることにより、車両の誤発進防止制御を実現することができる。例えば、制御装置35が、回転センサ27のホール素子32からの検出信号に基づいて、可動部本体10が極めて短い時間内に原位置aから大きく回転したことを認識した場合には、各圧電素子26に印加する電圧を迅速に大きくし、可動部本体10に大きな制動力を加える。これにより、運転者が誤ってアクセルを急激に開ける動作を開始した直後、アクセルが極めて重くなるので、アクセルが急激に大きく開いて車両が運転者の意に反して急発進することを防止することができる。
また、上述した実施例では、アクセル操作の有無およびアクセル開度に基づいて各圧電素子26へ印加する電圧を制御する場合を例にあげたが、これに代え、またはこれに加え、スロットル開度、燃料噴射量またはエンジン回転数等に基づいて各圧電素子26へ印加する電圧を制御してもよい。これにより、車両やエンジンの状況に応じて可動部本体10へ加える制動力を変化させることができる。
また、上述した実施例では、グリップスイッチ21として、接触子21A、21Bを有する接触型のスイッチを例にあげたが、グリップスイッチ21を非接触型のスイッチまたは非接触型のセンサ等により構成してもよい。例えば、グリップスイッチ21として光センサまたは近接センサ等を用いることができる。
また、本発明のアクセル操作装置は、自動二輪車ではなく、自動三輪車等の他の種類の鞍乗型車両にも適用することができる。また、本発明のアクセル操作装置は、自動二輪車のように、スロットルグリップを回転させてアクセル操作を行う車両だけでなく、雪上車やバギー車のように、アクセルレバーを握ることによりアクセル操作を行う車両にも適用することができ、さらに、自動四輪車のように、アクセルペダルを踏み込んでアクセル操作を行う車両にも適用することができる。
また、上述した実施例に記載した事項のうち、特許請求の範囲に記載した事項と対応するが表現が異なる主なものは、次の通りである。ケーシング3は基部の具体例である。グリップスイッチ21は操作有無検出部または位置検出部の具体例である。メインスプリング24は付勢部の具体例である。パッド25は接触部の具体例である。回転センサ27は移動量検出部の具体例である。オフ位置cは第1の位置の具体例であり、オン位置dは第2の位置の具体例である。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うアクセル操作装置もまた本発明の技術思想に含まれる。