特許文献1に開示されているようなCAES発電装置は、タービン発電機を駆動して電力を得る際に空気が膨張するが、このときの膨張により排気空気の温度が低下する。排気空気の温度が所定温度以下(例えば0℃以下)になると、凍結が発生し、膨張機の排気口が閉塞されるおそれがある。
本発明は、圧縮空気貯蔵発電装置において、膨張機の排気口の凍結を防止することを課題とする。
本発明の圧縮空気貯蔵発電装置は、再生可能エネルギーによって発電された電力により駆動される電動機と、前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機によって駆動される発電機と、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される前記圧縮空気と、熱媒とで熱交換して、前記圧縮空気を加熱し、前記熱媒を冷却する膨張側熱交換器と、前記膨張側熱交換器に流入する空気温度を検出する空気温度検出部と、前記膨張側熱交換器に流入する空気圧力を検出する空気圧力検出部と、前記膨張側熱交換器に流入する空気流量を検出する空気流量検出部と、前記膨張側熱交換器に流入する熱媒温度を検出する熱媒温度検出部と、前記膨張側熱交換器に流入する熱媒流量を検出する熱媒流量検出部と、前記空気温度、前記空気圧力、前記空気流量、前記熱媒温度、および前記熱媒流量の5つの状態量の少なくとも一つを変更する状態変更部と、少なくとも前記5つの状態量の検出値に基づいて前記膨張機の排気温度を算出する演算部と、前記演算部で算出された前記排気温度が所定温度以下の場合に前記排気温度を上昇させるように前記状態変更部を制御する状態制御部とを有する制御装置とを備える。
この構成によれば、再生可能エネルギーのような出力が不規則に変動するエネルギーを蓄圧部にて圧縮空気として貯蔵でき、必要なときに圧縮空気を膨張機に供給し、発電機を駆動して発電できる。特に、演算部によって各状態量の検出値に基づいて膨張機の排気温度を算出できるため、膨張機の排気口が凍結する前に予め凍結の発生を予測できる。さらに、凍結が予測された場合、状態制御部によって状態変更部を制御し、排気温度を上昇させるように各状態量を変更できるため、膨張機の排気口の凍結を事前に防止できる。ここで、上記の所定温度とは、凍結が発生する温度であり得、例えば0℃である。ただし、膨張機によって耐温性能は異なるため、所定温度は、必ずしも0℃ではなく、膨張機の排気口が凍結し、悪影響を受ける温度であり得る。例えば−5℃で排気口が完全に凍結され、即ち閉塞され、排気不可能となる膨張機の場合、所定温度は−5℃であってもよい。
前記状態変更部は、前記膨張側熱交換器に流入する前記熱媒温度を上昇させる熱媒加熱部を有し、前記状態制御部は、前記状態変更部によって前記5つの状態量のうち前記熱媒温度を最優先に変更し、より詳しくは前記熱媒温度を上昇させるように前記熱媒加熱部を制御してもよい。
この構成によれば、熱媒加熱部によって熱媒温度を上昇させることで、膨張側熱交換器にて圧縮空気をより大きく加熱できるため、膨張機に給気される圧縮空気の温度を上昇させることができる。そのため、膨張機からの排気温度が所定温度以下となることを一層防止できる。特に、熱媒温度は、上記の各状態量の中でも排気温度に対する寄与度が大きなパラメータである。そのため、排気温度を上昇させるために熱媒温度を最優先に変更し、より詳しくは熱媒温度を上昇させることは効率的である。
前記熱媒加熱部は、前記圧縮機から前記蓄圧部に供給される圧縮空気と、熱媒とで熱交換し、前記圧縮空気を冷却し、前記熱媒を加熱する圧縮側熱交換器と、前記膨張側熱交換器と前記圧縮側熱交換器とに流体的に接続され、前記圧縮側熱交換器から供給された前記熱媒を蓄え、前記膨張側熱交換器に前記熱媒を供給する蓄熱部とを備えてもよい。
この構成によれば、圧縮側熱交換器にて高温の圧縮空気から熱媒に熱回収し、高温熱媒を蓄熱部に蓄え、必要に応じて膨張側熱交換器に高温熱媒を供給できる。圧縮側熱交換器にて熱交換する圧縮空気は、圧縮側熱交換器の上流の圧縮機での圧縮熱によって昇温した空気である。そのため、蓄熱部に蓄えられる高温熱媒は、装置内で発生した熱(圧縮熱)によって加熱されており、即ち装置内の熱エネルギーを有効利用している。換言すると、圧縮側熱交換器および蓄熱部が設けられていないCAES発電装置では、圧縮機で発生した圧縮熱は回収されず、高温の圧縮空気が蓄圧部に蓄えられる。この高温の圧縮空気は蓄圧部に蓄えられている間に大気へ熱を放出するため、エネルギー損失が生じる。従って、上記構成ではこのエネルギー損失を防止することでエネルギー効率を向上させている。
前記熱媒加熱部は、前記膨張側熱交換器に供給される熱媒を加熱する電気ヒータを備え、前記電気ヒータは、前記発電機と電気的に接続されていてもよい。
この構成によれば、電気ヒータによって膨張側熱交換器に供給される熱媒温度を上昇させることができる。さらに、電気ヒータが発電機と電気的に接続されているため、発電機によって発電した電力を電気ヒータの駆動に利用できる。特に、発電機にて余剰に電力を発電可能である場合、電気ヒータ等に該電力を供給できることで、該電力を有効利用できる。従って、電気ヒータの駆動に外部電源を使用する場合と比べてエネルギー効率を向上できる。
前記膨張機は、複数段の膨張機本体を有し、前記状態変更部は、駆動する前記膨張機本体の選択を可能にする膨張比選択部を有し、前記状態制御部は、前記熱媒加熱部の制御に続いて前記膨張比選択部を制御し、現在の膨張比以下の膨張比となるように前記膨張機本体を選択して駆動してもよい。
この構成によれば、現在の膨張比以下の膨張比となるように、膨張比選択部によって膨張機本体を選択して駆動することで、空気の膨張量を小さくし、即ち膨張による吸熱量を減少させることができる。従って、排気温度の低下量を低減できるので、排気温度を所定温度以上に維持できる。特に、膨張比選択部の制御は、熱媒加熱部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合などに、膨張比選択部の制御は有効である。
前記膨張機の排気空気を前記蓄圧部に供給する戻し配管と、前記膨張機の排気空気を外気に放気するか、または前記戻し配管に流入させるかを選択する排気選択部とをさらに備え、前記制御装置は、前記膨張比選択部を制御することで前記膨張比を低下させた場合、前記排気選択部を制御し、前記戻し配管を通じて前記蓄圧部に前記排気空気を供給する排気制御部をさらに有してもよい。
この構成によれば、膨張比選択部の制御によって膨張比を小さくした場合、排気空気は大気圧よりも高圧となり得る。そのため、排気選択部を制御し、戻し配管を通じて蓄圧部にこの大気圧よりも高圧の空気を供給できることで、再度圧縮空気としてエネルギーを蓄えることができる。
前記状態変更部は、前記蓄圧部内の圧縮空気を外気に直接放気することで内圧を低下させる減圧部を有し、前記状態制御部は、前記熱媒加熱部の制御に続いて前記減圧部を制御し、前記蓄圧部の内圧を低下させてもよい。
この構成によれば、減圧部によって蓄圧部の内圧を低下させることができる。蓄圧部の内圧が低い場合、膨張機に給気される圧縮空気の圧力が低下する。高圧の圧縮空気を膨張させる場合と、低圧の圧縮空気を膨張させる場合とを比較すると、膨張量が大きくなるのは高圧の圧縮空気を膨張させる場合である。そのため、高圧の圧縮空気を膨張させる場合の方が、膨張吸熱量が増加し、即ち排気温度が低下する。従って、蓄圧部の内圧の低下は、膨張機の排気温度の上昇に寄与するため、減圧部によって蓄圧部の内圧を低下させることで、排気温度を上昇させることができる。特に、本制御は、熱媒加熱部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合などに有効である。
また、前記状態変更部は、前記蓄圧部内の圧縮空気を外気に直接放気することで内圧を低下させる減圧部を有し、前記状態制御部は、前記熱媒加熱部の制御および前記膨張比選択部の制御に続いて前記減圧部を制御し、前記蓄圧部の内圧を低下させてもよい。
この構成によれば、減圧部によって蓄圧部の内圧を低下できるため、前述のように排気温度を上昇させることができる。特に、本制御は、熱媒加熱部の制御および膨張比選択部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合、さらに膨張比選択部によって膨張比をそれ以上下げることができない場合などに有効である。
前記蓄圧部は、複数設けられており、前記状態変更部は、前記膨張機に圧縮空気を給気する前記蓄圧部の選択を可能にする蓄圧部選択部と、前記蓄圧部間での前記圧縮空気の授受を可能にする内圧分配部とを有し、前記状態制御部は、前記熱媒加熱部の制御に続いて前記蓄圧部選択部を制御し、内圧の低い前記蓄圧部を選択するか、または、前記熱媒加熱部の制御に続いて前記内圧分配部を制御し、前記蓄圧部の圧縮空気を他の前記蓄圧部に分配して内圧を低下させてもよい。
この構成によれば、蓄圧部選択部によって内圧の低い蓄圧部を使用して膨張機を駆動でき、また、内圧分配部によって蓄圧部の内圧を低下させることができる。従って、前述のように排気空気の温度を上昇させることができる。特に、本制御は、熱媒加熱部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合などに有効である。
前記蓄圧部は、複数設けられており、前記状態変更部は、前記膨張機に圧縮空気を給気する前記蓄圧部の選択を可能にする蓄圧部選択部と、前記蓄圧部間での圧縮空気の授受を可能にする内圧分配部とを有し、前記状態制御部は、前記熱媒加熱部の制御および前記膨張比選択部の制御に続いて前記蓄圧部選択部を制御し、内圧の低い前記蓄圧部を選択するか、または、前記熱媒加熱部の制御および前記膨張比選択部の制御に続いて前記内圧分配部を制御し、前記蓄圧部の圧縮空気を他の前記蓄圧部に分配して内圧を低下させてもよい。
この構成によれば、蓄圧部選択部によって内圧の低い蓄圧部を使用して膨張機をでき、また、内圧分配部によって蓄圧部の内圧を低下させることができる。従って、前述のように排気空気の温度を上昇させることができる。特に、本制御は、熱媒加熱部の制御および膨張比選択部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合、さらに膨張比をそれ以上下げることができない場合などに有効である。
本発明によれば、圧縮空気貯蔵発電装置において、演算部によって排気温度を算出し、膨張機の排気口の凍結が予測された場合に状態変更部によって各状態量を制御して排気温度を上昇させることができるため、膨張機の排気口の凍結を防止できる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1に示す圧縮空気貯蔵(CAES)発電装置1は、風力発電や太陽光発電等の再生可能エネルギーを利用した発電設備2にて発電された電力を圧縮空気の態様で蓄え、必要なときに圧縮空気を用いて発電する装置である。本実施形態のCAES発電装置1は、主に空気の流れに関する空気ラインと、主に熱媒の流れに関する熱媒ラインとを備える。以降、これらの2つのラインについて順に説明する。
まず、空気ラインには、モータ(電動機)10と、圧縮機11と、蓄圧タンク(蓄圧部)12と、膨張機13と、発電機14とが設けられている。
再生可能エネルギーを利用する発電設備2により発電された電力は、モータ10に供給される。以降、発電設備2からモータ10に供給される電力を入力電力という。モータ10は、圧縮機11に機械的に接続されており、入力電力により駆動され、圧縮機11を駆動する。
本実施形態の圧縮機11は、スクリュ式である。そのため、本実施形態の圧縮機11は内部に図示しないスクリュロータを備え、このスクリュロータはモータ10と機械的に接続されている。ただし、圧縮機11は、スクリュ式に限定されず、例えばターボ式、スクロール式、およびレシプロ式等であり得るが、このようにスクリュ式の圧縮機11は、回転数制御可能であるため、不規則に変動する入力電力に応答性良く追従でき、CAES発電装置1の構成要素として好ましい。
圧縮機11の吸気口11aは、空気配管4aを通じて外気に連通している。圧縮機11の吐出口11bは、空気配管4bを通じて蓄圧タンク12に流体的に接続されている。空気配管4bには、バルブ17aが取り付けられており、空気の流動を許容または遮断できる。また、空気配管4bには圧縮側熱交換器15が設けられているが、この詳細については後述する。
モータ10に入力電力が供給されると、モータ10が作動し、上記のスクリュロータが回転し、圧縮機11を駆動する。圧縮機11は、空気配管4aを通じて吸気口11aから空気を吸気し、圧縮して吐出口11bから吐出し、空気配管4bを通じて蓄圧タンク12に圧縮空気を圧送する。
蓄圧タンク12は、例えば鋼製のタンクであり、圧縮機11から圧送された圧縮空気を蓄えている。蓄圧タンク12には、放気弁(減圧部)12aが設けられており、放気弁12aを開くことで内部の圧縮空気を直接放気し、蓄圧タンク12の内圧を低下させることができる。蓄圧タンク12は、空気配管4cを通じて膨張機13と流体的に接続されており、蓄圧タンク12に蓄えられた圧縮空気は空気配管4cを通じて膨張機13に給気される。また、空気配管4cには、膨張側熱交換器16が設けられているが、この詳細については後述する。ここで、蓄圧タンク12には、圧力センサ(空気圧力検出部)5aが取り付けられており、内部の圧縮空気の圧力を検出できる。即ち、膨張側熱交換器16に供給する空気圧力を検出できる。また、空気配管4cにはバルブ17bが取り付けられている。バルブ17bは、流量調整バルブであり、流動する空気の流量を調整できる。より詳細には、バルブ17bは膨張側熱交換器16の上流に設けられており、蓄圧タンク12から膨張側熱交換器16に流入する空気の流量を調整できる。また、膨張側熱交換器16の上流には、空気配管4c内を流れる圧縮空気の温度を検出する空気温度センサ(空気温度検出部)5bと、圧縮空気の流量を検出する空気流量センサ(空気流量検出部)5cとが取り付けられている。従って、空気温度センサ5bと空気流量センサ5cとによって、膨張側熱交換器16に流入する空気温度および空気流量を検出できる。
本実施形態の膨張機13は、スクリュ式である。そのため、本実施形態の膨張機13は内部に図示しないスクリュロータを備え、このスクリュロータは発電機14と機械的に接続されている。ただし、膨張機13はスクリュ式に限定されず、例えばターボ式、スクロール式、及びレシプロ式等であってもよいが、このようにスクリュ式の膨張機13は、回転数制御可能であるため、変動する電力需要に応答性良く追従でき、CAES発電装置1の構成要素として好ましい。
膨張機13の給気口13aは、前述のように空気配管4cを通じて蓄圧タンク12と流体的に接続されている。膨張機13の排気口13bは、空気配管4dを通じて外気に開放されている。
膨張機13に圧縮空気が給気されると、上記のスクリュロータが回転し、膨張機13を駆動し、即ち発電機14を駆動する。膨張機13で膨張された空気(排気空気)は、排気口13bから空気配管4dを通じて外気に放気される。
発電機14は、膨張機13によって駆動されることで発電する。発電機14は、工場などの電力の需要家設備3に電気的に接続されており、発電機14で発電した電力は需要家設備3に供給される。なお、図示していないが、発電機14と需要家設備3との間には直交流変換のためのインバータおよび整流のためのコンバータ等が介設されている。
次に、熱媒ラインには、圧縮側熱交換器15と、膨張側熱交換器16と、高温熱媒タンク18と、低温熱媒タンク19とが設けられている。これらは熱媒配管6a,6bによって流体的に接続されており、熱媒が熱媒配管6a,6bを通ってこれらの間を循環している。熱媒配管6bには、熱媒を循環流動させるためのポンプ20が配設されている。なお、熱媒の種類は特に限定されず、例えば熱媒油または水であり得る。
圧縮側熱交換器15は、上記の空気配管4bと、低温熱媒タンク19および高温熱媒タンク18を流体的に接続する熱媒配管6aとにそれぞれ介設されている。圧縮機11の吐出口11bから吐出される圧縮空気は、圧縮熱により昇温しているため、常温以上の高温空気となっている。本実施形態では、この高温空気は、例えば155℃程度である。圧縮側熱交換器15では、空気配管4b内のこの高温空気と、低温熱媒タンク19から供給された、例えば常温の熱媒配管6a内の熱媒とで熱交換がそれぞれ行われている。詳細には、圧縮側熱交換器15では、空気配管4b内の空気は冷却され、熱媒配管6a内の熱媒は加熱される。本実施形態では、圧縮側熱交換器15で冷却された空気配管4b内の空気は例えば50℃程度となり、圧縮側熱交換器15で加熱された熱媒は例えば90℃程度となる。圧縮側熱交換器15で加熱された熱媒は、熱媒配管6aを通じて高温熱媒タンク18に供給され、高温熱媒タンク18にて貯蔵される。
高温熱媒タンク18は、例えば鋼製のタンクであり、好ましくは、熱を外部に放出しないように外部から断熱されている。高温熱媒タンク18には、熱媒の温度を検出する熱媒温度センサ(熱媒温度検出部)5dが取り付けられており、膨張側熱交換器16に供給する熱媒温度を検出できる。高温熱媒タンク18は、バルブ17cが取り付けられた熱媒配管6bを通じて低温熱媒タンク19と流体的に接続されている。バルブ17cは、流量調整バルブであり、膨張側熱交換器16に供給される熱媒の流量を調整できる。
膨張側熱交換器16は、上記の空気配管4cと、高温熱媒タンク18および低温熱媒タンク19を流体的に接続する熱媒配管6bとに介設されている。熱媒配管6bには、膨張側熱交換器16の上流に熱媒の流量を検出するための熱媒流量センサ(熱媒流量検出部)5eが取り付けられている。膨張側熱交換器16では、空気配管4c内の空気と、高温の熱媒配管6b内の熱媒とで熱交換が行われている。詳細には、膨張側熱交換器16では、空気配管4c内の空気は加熱され、熱媒配管6b内の熱媒は冷却される。本実施形態では、膨張側熱交換器16で加熱された空気配管4c内の空気は、例えば70℃程度となり、膨張側熱交換器16で冷却された熱媒は例えば50℃程度となる。膨張側熱交換器16で冷却された熱媒は熱媒配管6bを通じて低温熱媒タンク19に供給され、低温熱媒タンク19にて貯蔵される。低温熱媒タンク19に貯蔵された熱媒は、バルブ17dが取り付けられた熱媒配管6aを通じて圧縮側熱交換器15に供給される。バルブ17dは、流量調整バルブであり、圧縮側熱交換器15に供給される熱媒の流量を調整できる。本実施形態では、圧縮側熱交換器15、高温熱媒タンク18、およびバルブ17dが熱媒加熱部を構成している。
以上までに、空気ラインおよび熱媒ラインの2つのラインについて説明したが、本実施形態のCAES発電装置1は、制御装置40もさらに備える。そのため、以下、制御装置40およびその制御について説明する。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築されている。
図2に示すように、本実施形態の制御装置40は、上記5つのセンサ5a〜5eで検出した5つの状態量の検出値を受け、これらの検出値に基づいて膨張機13の排気温度Txを算出する演算部41と、演算部41で算出された排気温度Txが所定温度以下の場合に排気温度Txを上昇させるように状態変更部を制御する状態制御部42とを有する。本実施形態では、状態制御部42によって制御される状態変更部は、上記の熱媒加熱部(圧縮側熱交換器15、高温熱媒タンク18、およびバルブ17d)と、減圧部(放気弁12a)とを含んでいる。
演算部41は、膨張機13の排気温度Txを以下のようにして算出する。まず、膨張側熱交換器16にて熱交換される前の圧縮空気の状態量(温度、圧力、流量)および熱媒の状態量(温度、流量)に基づいて膨張側熱交換器16にて熱交換された後の圧縮空気の状態量(温度、圧力)を求める。次に、これらの状態量(温度、圧力)を有する圧縮空気が膨張機13に給気されるため、これらの状態量(温度、圧力)に基づいて膨張機13の排気温度Txを算出する。
より詳細には、膨張側熱交換器16にて熱交換された後の圧縮空気の状態量(温度、圧力)を求める場合、並流型、向流型、または直交流型などの膨張側熱交換器16の種類を考慮し、性能に応じた熱伝達率を求める。そして、この熱伝達率に基づいて熱媒から圧縮空気への伝熱量を計算し、熱交換後の圧縮空気の温度を算出する。なお、このような熱媒と空気との間での伝熱計算は流体力学的に一般に行われるものであり、ここでの詳細な説明は省略する。また、この温度変化および熱交換器形状等に応じて、熱交換後の圧縮空気の圧力をも同時に算出する。このような圧力計算も流体力学的に一般に行われるものであり、ここでの詳細な説明は省略する。
また、膨張機13に給気される圧縮空気の状態量(温度、圧力)に基づいて排気空気の温度Txを算出する際、膨張機13ごとに異なって設定されている性能曲線を使用して排気空気の温度Txを算出する。例えば、本実施形態の膨張機13の性能曲線を図3,4に示す。
図3は、給気圧力が1.0MPaAのときの膨張機13の排気圧力Pxと排気温度Txの関係を示している。図3では、横軸が排気圧力Px(MPaA)を示し、縦軸が排気温度Tx(℃)を示している。図の曲線の左端は、大気圧0.1MPaAを示している。図に示すように、排気圧力Pxを低くするほど、膨張量が増えるため、吸熱量も増加し、排気温度Txが低下する関係にある。また、図3中の3つの曲線は、給気温度の違いを有しており、給気温度が高温、中温、および低温の場合をそれぞれ示している。図に示すように、給気温度が高いほど、排気温度Txは高温となる。図3中に斜線領域で示すように、排気圧力Pxを大気圧0.1MPaA付近まで低下させると、排気温度が0℃以下となり、凍結を生じるおそれがあることがわかる。さらに、図4は、給気圧力が0.4MPaAであり、その他の条件が図3と同一である場合のグラフである。図3と図4を比較すると、給気圧力が低い図4の場合の方が、同じ排気圧力Pxの場合でも排気温度Txが高いことがわかる。
このように、演算部41は、膨張機13に給気される圧縮空気の状態量(温度、圧力)に基づいて排気温度Txを算出でき、ここで算出された排気温度Txは調整可能である。以下、状態制御部42による排気温度Txの調整について説明する。
図5に示すフローチャートに従って、本実施形態の状態制御部42は、上記の状態変更部(図2参照)を制御する。
制御を開始すると(ステップS5−1)、演算部41で算出された排気温度Txが0℃より大きいか否かを判定する(ステップS5−2)。排気温度Txが0℃より大きい場合、排気口13bは凍結しないと予測されるため、通常運転を継続する(ステップS5−3)。また、排気温度Txが0℃より大きくない場合、排気口13bが凍結すると予測されるため、熱媒温度センサ5dで検出した熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きいか否かを判定する(ステップS5−4)。所定の閾値Th0は、圧縮機11の性能、圧縮側熱交換器15の性能等に応じて、熱媒を昇温し得る温度に適宜設定される。熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きくない場合、熱媒の加熱余地があると判断できるため、熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる(ステップS5−5)。具体的には、圧縮機11を駆動している状態でバルブ17dを開き、圧縮側熱交換器15で熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる。このとき、必要に応じて、バルブ17dの開度を調整してもよく、バルブ17dの開度を小さくするほど、熱媒の温度を上昇させることができる。また、ステップS5−4において、熱媒温度Thが所定の閾値Th0よりも大きい場合、熱媒の加熱余地がないと判断できるため、熱媒の温度制御を行わず、蓄圧タンク12の内圧制御を実行する。具体的には、放気弁12aを開き、蓄圧タンク12の内圧を所定量低下させる(ステップS5−6)。これらの処理を完了後、再びステップS5−2に戻り、これらを繰り返す。なお、ステップS5−4の判定は、熱媒の温度判定以外にも、単に熱媒を加熱できるか否かによって判定されてもよい。例えば、何らかの方法で圧縮側熱交換器15の損傷を検知し、熱媒の加熱が不可能であるか否かを検知してもよい。
本実施形態によれば、図1および図2に示すように、再生可能エネルギーのような出力が不規則に変動するエネルギーを蓄圧タンク12にて圧縮空気として貯蔵でき、必要なときに圧縮空気を膨張機13に供給し、発電機14を駆動して発電できる。特に、演算部41によってセンサ5a〜5eで検出した各状態量の検出値に基づいて膨張機13の排気温度を算出できるため、膨張機13の排気口13bが凍結する前に予め凍結の発生を予測できる。さらに、凍結が予測された場合、状態制御部によって状態変更部を制御し、排気温度を上昇させるように、膨張側熱交換器16に供給される熱媒温度および空気圧力を変更できるため、膨張機13の排気口13bの凍結を事前に防止できる。ここで、本実施形態では、例えば閾値Th0(図5参照)が0℃より大きいか否かを基準に凍結を判断したが、膨張機13によって耐温性能は異なるため、必ずしも0℃を基準にする必要はなく、膨張機13の排気口13bが凍結し、悪影響を受ける温度であればよい。例えば−5℃で排気口13bが完全に凍結され、即ち閉塞され、排気不可能となる膨張機13の場合、排気温度Txの閾値(図5のステップS5−2参照)は−5℃であってもよい。
また、本実施形態によれば、熱媒加熱部によって熱媒温度を上昇させることで、膨張側熱交換器16にて圧縮空気をより大きく加熱できるため、膨張機13に給気される圧縮空気の温度を上昇させることができる。そのため、膨張機13からの排気温度が所定温度以下となることを一層防止できる。特に、熱媒温度は、上記の各状態量の中でも排気温度に対する寄与度が大きなパラメータである。そのため、図5に示すように、排気温度を上昇させるために最優先に熱媒温度を上昇させることは効率的である。
また、本実施形態によれば、圧縮側熱交換器15にて高温の圧縮空気から熱媒に熱回収し、高温熱媒を高温熱媒タンク18に蓄え、必要に応じて膨張側熱交換器16に高温熱媒を供給できる。圧縮側熱交換器15にて熱交換する圧縮空気は、圧縮側熱交換器15の上流の圧縮機での圧縮熱によって昇温した空気である。そのため、高温熱媒タンク18に蓄えられる高温熱媒は、装置1内で発生した熱(圧縮熱)によって加熱されており、即ち装置1内の熱エネルギーを有効利用している。換言すると、圧縮側熱交換器15および高温熱媒タンク18が設けられていないCAES発電装置1では、圧縮機11で発生した圧縮熱は回収されず、高温の圧縮空気が高温熱媒タンク18に蓄えられる。この高温の圧縮空気は蓄圧タンク12に蓄えられている間に大気へ熱を放出するため、エネルギー損失が生じる。従って、上記構成ではこのエネルギー損失を防止することでエネルギー効率を向上させている。
また、本実施形態によれば、放気弁12aによって蓄圧タンク12の内圧を低下させることができる。蓄圧タンク12の内圧が低い場合、膨張機13に給気される圧縮空気の圧力が低下する。高圧の圧縮空気を膨張させる場合と、低圧の圧縮空気を膨張させる場合とを比較すると、膨張量が大きくなるのは高圧の圧縮空気を膨張させる場合である。そのため、高圧の圧縮空気を膨張させる場合の方が、膨張吸熱量が増加し、即ち排気温度が低下する。従って、蓄圧タンク12の内圧の低下は、膨張機13の排気温度の上昇に寄与するため、放気弁12aによって蓄圧タンク12の内圧を低下させることで、排気温度を上昇させることができる。特に、放気弁12aの制御は、熱媒加熱部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合などにこれは有効である。
図6に示すように、本実施形態の変形例として、高温熱媒タンク18内に電気ヒータ18aを配置してもよい。電気ヒータ18aは、発電機14と電気的に接続されており、発電機14で発電した電力によって駆動されることができる。本変形例では、熱媒加熱部は、電気ヒータ18aも含んでいる。
本変形例によれば、電気ヒータ18aによって膨張側熱交換器16に供給される熱媒温度を上昇させることができる。さらに、電気ヒータ18aが発電機14と電気的に接続されているため、発電機14によって発電した電力を電気ヒータ18aの駆動に利用できる。特に、発電機14にて余剰に電力を発電可能である場合、電気ヒータ18a等に該電力を供給できることで、該電力を有効利用できる。従って、電気ヒータ18aの駆動に外部電源を使用する場合と比べてエネルギー効率を向上できる。
(第2実施形態)
図7に示す本実施形態のCAES発電装置1は、複数の蓄圧タンク121〜123が設けられている。これに関する構成以外は、図1の第1実施形態のCAES発電装置1の構成と実質的に同じである。従って、図1に示した構成と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
本実施形態では、3基の蓄圧タンク121〜123が設けられている。各蓄圧タンク121,122,123には、圧力センサ51a,52a,53aがそれぞれ取り付けられている。圧縮機11から蓄圧タンク121〜123に向かって延びる空気配管4bは、3つの空気配管4e〜4gに分岐し、各蓄圧タンク121〜123に接続されている。各空気配管4e〜4gにはバルブ17e〜17gが取り付けられており、バルブ17e〜17gを開閉することで、圧縮機11からいずれの蓄圧タンク121〜123に圧縮空気を供給するかを選択できる。また、各蓄圧タンク121〜123から膨張機13に向かって延びる空気配管4h〜4jは、合流して空気配管4cに接続されている。各空気配管4h〜4jにはバルブ17h〜17jが取り付けられており、バルブ17h〜17jを開閉することで、いずれの蓄圧タンク121〜123から膨張機13に給気するかを選択できる。そのため、バルブ17h〜17jは、蓄圧部選択部を構成する。また、蓄圧タンク121〜123は、バルブ17k〜17mが取り付けられた空気配管4k〜4mによって互いに流体的に接続されており、バルブ17k〜17mを開閉することで互いに圧縮空気の授受が可能である。
図8に示すように、本実施形態の制御装置40は、第1実施形態と同様に、演算部41と、状態制御部42とを有し、各センサ51a〜53a,5b〜5eからの検出値を受け、状態変更部を制御する。本実施形態では、状態制御部42によって制御される状態変更部は、熱媒加熱部(圧縮側熱交換器15、高温熱媒タンク18、およびバルブ17d)と、蓄圧部選択部(バルブ17h〜17j)とを含んでいる。
図9に示すフローチャートに従って、本実施形態の状態制御部42は、状態変更部(図8参照)を制御する。
制御を開始すると(ステップS9−1)、演算部41で算出された排気温度Txが0℃より大きいか否かを判定する(ステップS9−2)。排気温度Txが0℃より大きい場合、排気口13bは凍結しないと予測されるため、通常運転を継続する(ステップS9−3)。また、排気温度Txが0℃より大きくない場合、排気口13bが凍結すると予測されるため、熱媒温度センサ5dで検出した熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きいか否かを判定する(ステップS9−4)。所定の閾値Th0は、圧縮機11の性能、圧縮側熱交換器15の性能等に応じて、熱媒を昇温し得る温度に適宜設定される。熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きくない場合、熱媒の加熱余地があると判断できるため、熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる(ステップS9−5)。具体的には、圧縮機11を駆動している状態でバルブ17dを開き、圧縮側熱交換器15で熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる。このとき、必要に応じて、バルブ17dの開度を調整してもよく、バルブ17dの開度を小さくするほど、熱媒の温度を上昇させることができる。また、ステップS9−4において、熱媒温度Thが所定の閾値Th0よりも大きい場合、熱媒の加熱余地がないと判断できるため、熱媒の温度制御を行わず、蓄圧タンク121〜123の内圧制御を実行する。具体的には、現在、使用している蓄圧タンク121(内圧P1)よりも低圧の蓄圧タンク122,123(内圧P2,P3)があるか否かを判定し(ステップS9−6)、無い場合、即ち最も内圧P1が低い場合は所定時間待機する(ステップS9−7)。そして、ある場合、即ち最も内圧P1が低くない場合、内圧P2または内圧P3の別の蓄圧タンク122,123を使用する(ステップS9−8)。これらの処理完了後、再びステップS9−2に戻り、これらを繰り返す。
図10に示すように、本実施形態の変形例として、制御装置40の状態制御部42は、バルブ17k〜17mを制御し、蓄圧タンク121〜123間で圧縮空気を授受することで蓄圧タンク121〜123の内圧を調整してもよい。即ち、本変形例では、状態制御部42によって制御される状態変更部は、熱媒加熱部(圧縮側熱交換器15、高温熱媒タンク18、およびバルブ17d)と、内圧分配部(バルブ17k〜17m)とを含んでいる。
図11に示すフローチャートに従って、本変形例の状態制御部42は、状態変更部(図10参照)を制御する。
制御を開始すると(ステップS11−1)、演算部41で算出された排気温度Txが0℃より大きいか否かを判定する(ステップS11−2)。排気温度Txが0℃より大きい場合、排気口13bは凍結しないと予測されるため、通常運転を継続する(ステップS11−3)。また、排気温度Txが0℃より大きくない場合、排気口13bが凍結すると予測されるため、熱媒温度センサ5dで検出した熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きいか否かを判定する(ステップS11−4)。所定の閾値Th0は、圧縮機11の性能、圧縮側熱交換器15の性能等に応じて、熱媒を昇温し得る温度に適宜設定される。熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きくない場合、熱媒の加熱余地があると判断できるため、熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる(ステップS11−5)。具体的には、圧縮機11を駆動している状態でバルブ17dを開き、圧縮側熱交換器15で熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる。このとき、必要に応じて、バルブ17dの開度を調整してもよく、バルブ17dの開度を小さくするほど、熱媒の温度を上昇させることができる。また、ステップS11−4において、熱媒温度Thが所定の閾値Th0よりも大きい場合、熱媒の加熱余地がないと判断できるため、熱媒の温度制御を行わず、蓄圧タンク121〜123の内圧制御を実行する。具体的には、現在、使用している蓄圧タンク121(内圧P1)よりも低圧の蓄圧タンク122,123(内圧P2,P3)があるか否かを判定し(ステップS11−6)、無い場合、即ち最も内圧P1が低い場合は所定時間待機する(ステップS11−7)。そして、ある場合、即ち最も内圧P1が低くない場合、内圧P2または内圧P3の別の蓄圧タンク122,123に圧縮空気を所定量移す(ステップS11−8)。これらの処理完了後、再びステップS11−2に戻り、これらを繰り返す。
本実施形態およびその変形例によれば、蓄圧部選択部(バルブ17h〜17j)によって内圧の低い蓄圧タンク121〜123を使用して膨張機を駆動でき、また、内圧分配部(バルブ17k〜17m)によって蓄圧タンク121〜123の内圧を低下させることができる。従って、前述のように排気空気の温度を上昇させることができる。特に、本制御は、熱媒加熱部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合などに有効である。
(第3実施形態)
図12に示す本実施形態のCAES発電装置1は、膨張機13が2段型である。これに関する構成以外は、図1の第1実施形態または図5の第2実施形態のCAES発電装置1の構成と実質的に同じである。従って、図1または図5に示した構成と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
本実施形態の膨張機13は、2段型のスクリュ式である。そのため、本実施形態の膨張機13は、1段目膨張機本体131と、2段目膨張機本体132とを備える。1段目膨張機本体131および2段目膨張機本体132は内部に図示しないスクリュロータをそれぞれ備え、これらのスクリュロータは発電機141,142とそれぞれ機械的に接続されている。ただし、膨張機13はスクリュ式に限定されず、例えばターボ式、スクロール式、及びレシプロ式等であってもよい。
1段目膨張機本体131の給気口131aは、空気配管4c,4h〜4jを通じて蓄圧タンク121〜123と流体的に接続されている。1段目膨張機本体131の排気口131bは、空気配管4nを通じて2段目膨張機本体132の給気口132aに流体的に接続されている。2段目膨張機本体132の排気口132bは、空気配管4dを通じて外気に開放されている。また、空気配管4cと空気配管4nとを流体的に接続し、即ち1段目膨張機本体131をバイパスする空気配管4oが設けられている。さらに、空気配管4n,4dと、蓄圧タンク121〜123とをそれぞれ流体的に接続する戻し配管7a,7bが設けられている。空気配管4c,4d,4n,4oと、戻し配管7a,7bとには、バルブ17b,17n〜17rが設けられており、バルブ17b,17n〜17rの開閉によっていずれの配管内を空気が流動するかを選択できる。従って、バルブ17b,17n〜17rは膨張比選択部を構成する。
1段目膨張機本体131に圧縮空気が給気されると、上記のスクリュロータが回転し、1段目膨張機本体131を駆動し、即ち発電機141を駆動する。1段目膨張機本体131で膨張された空気(排気空気)は、排気口131bから空気配管4nを通じて2段目膨張機本体132の給気口132aに給気される。そして、上記のスクリュロータが回転し、2段目膨張機本体132を駆動し、即ち発電機142を駆動する。2段目膨張機本体132で膨張された空気(排気空気)は、排気口132bから空気配管4dを通じて外気に放気される。
発電機141,142は、1段目膨張機本体131および2段目膨張機本体132によって駆動されることでそれぞれ発電する。発電機141,142は、工場などの電力の需要家設備3にそれぞれ電気的に接続されており、発電機141,142で発電した電力は需要家設備3に供給される。なお、図示していないが、発電機141,142と需要家設備3との間には直交流変換のためのインバータおよび整流のためのコンバータ等が介設されている。
図13に示すように、本実施形態の制御装置40は、第1,第2実施形態と同様に、演算部41と、状態制御部42と、さらに、膨張比選択部(バルブ17b,17n〜17r)を制御することで膨張比を低下させた場合、排気選択部(17n,17o,17q,17r)を制御し、戻し配管7a,7bを通じて蓄圧タンク121〜123に排気空気を供給する排気制御部43とを有する。本実施形態では、状態制御部42によって制御される状態変更部は、後述するように、熱媒加熱部(圧縮側熱交換器15、高温熱媒タンク18、およびバルブ17d)と、減圧部(放気弁121a〜123a)と、蓄圧部選択部(バルブ17h〜17j)と、内圧変更部(バルブ17k〜17m)と、膨張比選択部(バルブ17b,17n〜17r)とを含んでいる。
図14に示すフローチャートに従って、本実施形態の状態制御部は、状態変更部(図13参照)を制御する。
制御を開始すると(ステップS14−1)、演算部41で算出された排気温度Txが0℃より大きいか否かを判定する(ステップS14−2)。排気温度Txが0℃より大きい場合、排気口131b,132bは凍結しないと予測されるため、通常運転を継続する(ステップS14−3)。また、排気温度Txが0℃より大きくない場合、排気口131b,132bが凍結すると予測されるため、熱媒温度センサ5dで検出した熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きいか否かを判定する(ステップS14−4)。所定の閾値Th0は、圧縮機11の性能、圧縮側熱交換器15の性能等に応じて、熱媒を昇温し得る温度に適宜設定される。熱媒温度Thが所定の閾値Th0より大きくない場合、熱媒の加熱余地があると判断できるため、熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる(ステップS14−5)。具体的には、圧縮機11を駆動している状態でバルブ17dを開き、圧縮側熱交換器15で熱媒を加熱し、熱媒の温度を上昇させる。このとき、必要に応じて、バルブ17dの開度を調整してもよく、バルブ17dの開度を小さくするほど、熱媒の温度を上昇させることができる。また、ステップS14−4において、熱媒温度Thが所定の閾値Th0よりも大きい場合、熱媒の加熱余地がないと判断できるため、膨張比の制御を実行する。具体的には、現在使用している膨張比よりも小さい膨張比を選択可能か否かを判定し、即ち現在の膨張比が最小か否かを判定する(ステップS14−6)。現在の膨張比が設定可能な範囲で最小でない場合、膨張比を低下させる(ステップS14−7)。詳細には、ステップS14−7において、バルブ17p,17qを開き、バルブ17b,17nを閉じ、1段目膨張機本体131のみを駆動し、または、バルブ17n,17pを開き、バルブ17b,17qを閉じ、2段目膨張機本体132のみを駆動する。このとき、駆動する膨張機本体131,132は、必要な膨張比に応じて適宜選択される。選択に幅を持たせるために、1段目膨張機本体131の膨張比と2段目膨張機本体132の膨張比は、異なっていることが好ましい。次いで、バルブ(排気選択部)17q,17rを開き、バルブ(排気選択部)17n,17oを閉じ、1段目膨張機本体131または2段目膨張機本体132からの排気空気を戻し配管7a,7bに流入させ、蓄圧タンク121〜123に戻す(ステップS14−8)。また、ステップS14−6において、現在の膨張比が既に最小である場合、膨張比をそれ以上低下させることができないため、蓄圧タンク121〜123の内圧制御を実行する(ステップS14−9)。具体的には、ステップS14−8において、図5のステップS5−6、図9のステップS9−6からステップS9−8、または図11のステップS11−6からステップS11−8の処理を実行する。
本実施形態によれば、第1,第2実施形態の制御に加えて、現在の膨張比以下の膨張比となるように、膨張比選択部によって膨張機本体131,132を選択して駆動することで、空気の膨張量を小さくし、即ち膨張による吸熱量を減少させることができる。従って、排気温度の低下量を低減できるので、排気温度を所定温度以上に維持できる。特に、膨張比選択部の制御は、熱媒加熱部の制御に続いて行われる。そのため、熱媒加熱部の制御では排気温度が十分に上昇しない場合、または、何らかの要因によって熱媒加熱部にて熱媒の温度を上昇させることができない場合などに、膨張比選択部の制御は有効である。
また、本実施形態によれば、膨張比選択部の制御によって膨張比を小さくした場合、排気空気は大気圧よりも高圧となり得る。そのため、上記の排気選択部を制御し、戻し配管7a,7bを通じて蓄圧部にこの大気圧よりも高圧の空気を供給できることで、再度圧縮空気としてエネルギーを蓄えることができる。
ここで記載した実施形態およびその変形例において、再生可能エネルギーによる発電の対象は、例えば、風力、太陽光、太陽熱、波力又は潮力、流水又は潮汐等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充され、かつ不規則に変動するエネルギーを利用したもの全てを対象とすることが可能である。また、工場内の他の大電力を消費する機器によって電力が変動するものであってもよい。
以上より、本発明の具体的な実施形態やその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。