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JP6614134B2 - 透明バリアフィルムの製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリア性に優れた食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として使用される透明バリアフィルムの製造法に関するものである。
ガスバリア性のすぐれたフィルムとしては、プラスチックフィルム上にアルミニウム箔を積層したもの、塩化ビニリデンやエチレンビニールアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。また、無機薄膜を利用したものとしては、酸化珪素、酸化アルミニウム薄膜等を積層したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、プラスチックフィルム上に形成した無機層は非常に薄いため無機薄膜層に印刷加工を行うなど、後加工を行うと劣化することがある。たとえば印刷工程ではグラビアロールとの擦れやインクに含まれる顔料粒子のため、無機層が傷付きバリア性が低下することがある。この改良のために、有機層を無機層上にコーティングする方法がある。溶剤にコーティング剤を溶かしたものを塗布し乾燥し有機層を形成するものである。また、真空プロセスを利用した方法もある(例えば、特許文献2参照)。
塗布方式では無機層と有機層との密着を改善するため種々材料を混ぜて、有機層形成を行えるが、真空プロセスを利用した一般的な方法では、蒸発温度が異なる2種類以上の物質を混合して蒸発させると蒸着材料の混合比と堆積した膜の組成がずれる。そこで、物質の蒸発温度より十分に温度を上げた加熱板に材料を少量ずつ接触させ瞬時に蒸発させるフラッシュ蒸着法で対応する。
しかし、反応し易い有機物をフラッシュ蒸着すると加熱板で固着したりして安定性に問題があることがある。そこで混合せずに積層する方法が提案されている(例えば、許文献3参照)。
しかし、この方法では液相のまま積層された2層の混ざり合いなど、常に一定にすることは難しい。また、二種類のモノマーを蒸発させる機構が必要になり装置が複雑になる。
特許第2700019号公報 特許第4604674号公報 特開2006−95932号公報
本発明は、上記問題点を解決するものであり、プラスチックフィルムの片面に無機層を設け、その上にシランカップリング剤を含む密着性に優れた有機層を積層した優れたバリア性をもつ透明バリアフィルムを製造する方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、少なくともプラスチックフィルムの片面に無機層と有機層とをこの順に有する透明バリアフィルムの製造方法であって、有機層がアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ少なくとも二種類以上の化合物を架橋して形成されたものであり、且つ、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ少なくとも二種類以上化合物のうち少なくとも一種類の化合物がシランカップリング剤であり、前記化合物を200℃以上、300℃以下に加熱された金属銅を用いたフラッシュ蒸着により液体有機層を形成した後に、電子線照射により硬化させることを特徴とする透明バリアフィルムの製造法である。
この場合において、電子線の加速電圧が500V以上、10kV以下であることが好適である。
本発明により、有機層と無機層との密着性に優れラミネートしたときの接着強度に優れ、 且つ、高性能なバリアフィルムが得られ、印刷や他フィルムとのラミネートなど加工後もバリア性が劣化することなく高い気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として使用することができる透明バリアフィルムを製造できる。
本発明の製造法による透明バリアフィルムの概略図 本発明の製造法に用いる装置の一例の概略図 本発明の製造法に用いる有機蒸着源の一例の概略図
本発明の製造法を一例をあげて説明する。図1に本発明の製造法で作成した透明ガスバリアフィルムの積層体を示し、図2、図3に一例としての製造法で使用する製造装置をしめす。
(プラスチックフィルム)
本発明でいうプラスチックフィルム(1)とは、有機高分子を溶融押出して、必要に応じ、長手方向、および、または、幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイドなどがあげられる。また、これらの(有機重合体)有機高分子は他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。
さらにこの有機高分子には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などが添加されていてもよく、その透明度は特に限定するものではないが、透明ガスバリアフィルムとして使用する場合には、50%以上の透過率をもつものが好ましい。
本発明のプラスチックフィルム(1)は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、薄膜層を積層するに先行して、該フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、その他の表面粗面化処理を施してもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾が施されていてもよい。
本発明におけるプラスチックフィルム(1)は、その厚さが1μm以上、300μm以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは9μm以上、25μm以下の範囲である。
(無機層)
本発明でいう無機層(2)は、物質としては、Al、Si、Ti、Zn、Zr、Mg、Sn、Cu、Fe等の金属や、これら金属の酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられ、具体的には、SiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム、あるいはこれらの混合物が例示される。無機層(1)は1層でもあるいは2層以上の積層体であってもよい。
本発明では、特に好ましい無機層(2)としては酸化アルミニウムと酸化ケイ素とを蒸着して作成した複合酸化物層や酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとを蒸着して作成した複合酸化物層が好ましい。
酸化アルミニウムと酸化ケイ素とを蒸着して作成した複合酸化物の場合、無機化合物薄膜中に含まれる酸化アルミニウムの重量比率は特に限定されないが、無機化合物薄膜中に含まれる酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素(酸化マグシウム)の合計100重量%に対し、酸化アルミニウムの比率が10重量%以上が好ましく、さらに20重量%以上が好ましく、さらに30重量%以上が好ましい。 また酸化アルミニウムの比率が90重量%以下が好ましく、さらに75重量%以下が好ましく、さらに65重量%以下であることが好ましい。
酸化アルミニウムの比率が75重量%を超えると、柔軟性が乏しくなる傾向があるためハンドリングによる割れが生じ易く、安定したバリア性が得られ難くなる場合がある。一方、酸化アルミニウムの比率が30重量%未満であるとバリア性が低下する傾向にある。
本発明の無機層(2)の膜厚は、特に限定されないが、5〜500nmが好ましく、さらに好ましくは8nm以上、100nm以下であり、無機層(2)の膜厚が5nm未満では、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上の効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
本発明の無機層(2)の形成方法としては、公知の方法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が採用される。
真空蒸着法においては、蒸着材料としてアルミニウム、珪素、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属、また、SiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア等の化合物およびそれらの混合物が用いられる。加熱方法としては抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等が採用される。また、反応ガスとして、酸素等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いたりした反応性蒸着法を採用してもよい。
(有機層)
本発明で言う有機層(3)は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ少なくとも二種類以上の化合物を架橋して得られる。さらに、そのうちの少なくとも一種類の化合物がシランカップリング剤であることが必要である。このとき、シランカップリング剤の化合物の重量がアクリロイル基またはメタクリロイル基を持つ化合物の合計重量に対して5重量%以上であることが好ましい。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する化合物には、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤ではない化合物やアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物があげられる。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤ではない化合物とは特に限定されるものではないが、例えばフェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEG#200ジメタクリレート、PEG#400ジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、トリエチレングリコールジアクリレート、PEG200#ジアクリレート、PEG400#ジアクリレート、PEG600#ジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを上げることができる。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つシランカップリング剤である化合物とは、少なくともアクリロイル基またはメタクリロイル基と加水分解性基とを持つ有機珪素化合物を言う。例えば3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを上げることができる。
これらの化合物は、蒸着時の材料供給の観点から 20℃でのその粘度は500mPa・s以下が好ましい。さらに好ましくは200mPa・s以下である。
安全性の面から皮膚一次刺激性指数(PII)が、2以下、好ましくは1以下が好ましい。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤ではない化合物とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の合計重量に対するアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の重量割合は、有機層に含まれる珪素原子の量を測定することにより、算出することができる。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物は、無機層と有機層との密着力の改善に寄与するが、含有量は5重量%以上が好ましい。さらに好ましくは10重量%以上である。アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の含有率が増えると密着力は向上するが、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物は高価でありまた、無機層との界面で反応できない過剰のものも増えるので50重量%以下が好ましい。40重量%以下がより好ましく、30重量%以下が最も好ましい。
有機層は、無機層の保護機能とシーラントなどと接着剤で張り付ける際の密着力改善の機能がある。保護機能を満足するためには、有機層は50nm以上が好ましい。50nm以下であると顔料インキに含まれる顔料粒子等から無機層を保護できない。また、150nm以上の膜厚があると保護機能は増すが、歪がまして密着力が低下する。
本発明で言うフラッシュ蒸着とは加熱した板等に蒸着する材料を少量ずつ接触させ、瞬時に蒸発させる方法をいう。一般的には加熱する板等の素材は耐熱さえあればよいが、加工性の観点から金属が好ましい。本発明で加熱板材料金属としては、少なくとも純度90%以上の銅が好ましい。他金属では本発明で用いるアクリロイル基またはメタクリロイル基を持つ化合物が加熱板で架橋してしまい分子量が上がり蒸発が難しくなる場合がある。蒸発しなかった材料は加熱板表面に付着する。付着した材料は高分子化が進み固形物になり、加熱板からの熱を遮断して蒸発量を減らし、蒸発効率を下げる。
加熱板を加熱する方法としては、公知の技術が使える。加熱板に蒸着材料が接触する反対面に熱接触がよいように電熱線を設置する方法、熱媒を循環する方法、IRヒーターで加熱する方法等があげられる。
加熱板の温度としては、液体供給として流動性がある500mPa・s以下の化合物に対して200℃以上が好ましい。フラッシュ蒸着としては高温が好ましいが、高すぎると化合物が分解し好ましくない。また、温度による加熱板の寸法変化など機械的な要因から300℃以下が好ましい。
フラッシュ蒸着でプラスチックフィルムの無機層上に形成したアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ化合物の液体有機層を架橋硬化する方法としては、電子線照射による硬化が適している。紫外線照射による硬化法もあるが、化合物に光重合開始剤を混合しなくてはならず、この場合冷暗所の保管が必要となり問題である。
電子線源としては公知の線源が使える。電子の加速度電圧としては500V以上が好ましい。500V以下では電子が化合物内部まで十分入らず、架橋開始に必要なラジカルの発生も十分にない。10kV以上の加速電圧では有機層を透過する電子が多くなり効率が落ちる。また、X線の発生も起こり安全衛生上も問題となる。
本発明の透明蒸着バリアフィルム製造法を概略図である図2、図3を使い説明する。基板のプラスチックフィルムのロールを巻出しロール(4)にセットする。巻き出されたプラスチックフィルム(1)はプラズマ処理器(5)を通過して表面を処理する。電子銃(6)により坩堝(7)内に入っているセラミックを加熱して蒸発させ、無機コーティングロール(8)上を走行しているプラスチックフィルムに無機層を形成する。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ少なくとも二種類以上の化合物をからなり、且つ、そのうちの少なくとも一種類の化合物がシランカップリング剤である混合化合物(13)を、液体容器(14)に入れる。混合化合物(13)は液体ポンプ(15)により有機蒸着源(16)内部に移送される。移送した混合化合物(13)は、電熱線(17)により加熱した加熱板(18)に接触し蒸気となる。蒸気は凝縮しないように加熱してある有機蒸着源(16)内を移動し有機ノズル(9)に達する。
加熱された有機ノズル(9)から有機コーティングロール(10)上を走行する無機層を積層したプラスチックフィルムに蒸着する。無機層上には化合物混合物の液体層が形成される。形成された液体層に電子線照射装置(11)を使い電子線を照射して、架橋硬化する。このようにして無機層上に有機層を形成して巻取ロール(12)に巻き取られる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)ラミネートの接着強度
40μm厚のポリエチレンフィルム(東洋紡株式会社 L4102)をドライラミネート用接着剤(東洋モートン株式会社製 TM590、CAT56)を用いて、透明蒸着バリアフィルムと接着し、ラミネートフィルムを作成した。
ラミネートの接着強度はラミネートフィルムを15mm幅に切断して、ラミネートフィルムの一部を剥がし、万能材料試験機(テンシロン)を使用して300mm/minの速度で剥離片を引っ張り180°剥離を行い測定した。
(2)酸素透過量
酸素透過量はJIS K7126−2 A法に準じて、酸素透過量測定装置(OXTRAN 2/21 MOCOM社製)を用意、温度23度、湿度65%RHの雰囲気下で測定した。
(3)無機層の膜厚、組成の測定
無機膜の酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素のそれぞれの含有量の組成の測定方法を下記に説明する。
まず、酸化アルミニウムと酸化ケイ素とからなる無機化合物薄膜を持つフィルムを作成し、誘導結合プラズマ発光法(ICP法)で酸化アルミニウムと酸化ケイ素それぞれの付着量を求めた。求めた酸化アルミニウムと酸化ケイ素との付着量より、作成した無機酸化物薄膜の組成を算出した。
膜厚は、無機酸化薄膜の密度がバルク密度の8割であるとし、かつ 酸化アルミニウムと酸化ケイ素とが混合された状態であってもそれぞれ体積を保つとして算出した。
酸化アルミニウムの膜中の含有率wa(%)、酸化ケイ素の膜中の含有量ws(%)は、酸化アルミニウムの単位面積当たりの付着量をMa(g/cm)、酸化ケイ素の単位面積当たりの付着量をMm(g/cm)とすると、各々下記式(1)、(2)で求められる。
wa=100×[Ma/(Ma+Mm)] (1)
ws=100−wa (2)
酸化アルミニウムの単位面積当たりの付着量をMa(g/cm)、そのバルクの密度をρa(3.97g/cm)とし、酸化ケイ素の単位面積当たりの付着量をMs(g/cm)、そのバルクの密度をρs(2.65g/cm)とすると、膜厚t(nm)は下記式(3)で求められる。
t=((Ma/(ρa×0.8)+Ms/(ρs×0.8))×10−7・・・式(3)膜厚、組成を規定した無機酸化薄膜を数種類作成し、蛍光X線装置で測定することにより検量線を作成した。
蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。
(4)有機層の膜厚および組成の測定
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤ではない化合物とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の合計重量に対するアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の重量割合は、有機層に含まれる珪素原子の量を測定することにより、算出した。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物単独からなる電子線照射による硬化有機層を予め色々な厚みで形成する。この有機層を蛍光X線分析装置にて測定し、珪素原子の蛍光X線強度とシランカップリング剤である化合物単独からなる有機層厚みから検量線を作成した。
アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤ではない化合物とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物とを架橋共重合した有機層の膜厚を測定した。さらに蛍光X線で測定し、その値を用いて上記検量線からアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の相当膜厚を算出した。
有機層の膜厚の測定方法としては、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により直接測定する方法がある。他にエリプソメーターにより干渉を利用して測定する方法も使用できるが、この場合TEMで求めた値と相関をとっておき、その値に換算する。
蛍光X線の結果より算出したアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物の相当膜厚を有機層の全体膜厚で除することにより、含有率を計算した。
このとき、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤である化合物単独からなる有機層とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持ちシランカップリング剤ではない化合物とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基をシランカップリング剤である化合物とが架橋共重合した有機層の密度は同じとして計算した。
(実施例1)
プラスチックフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製 E5100 厚み12μm)を150m/minで走行させながら、坩堝の中に酸化アルミニウムと酸化シリコンとを別々に投入して電子銃にて個々に加熱し蒸着した。形成した無機層の厚みは13nm、酸化アルミニウム含有量41重量%であった。
続けて無機層の上にPEG200#ジアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトエステル4EG) 9部とシランカップリング剤 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−503)1部とを混合した化合物を銅製加熱板の上に7ml/minの速度で滴下した。加熱板は電熱線により加熱されており加熱板裏に設置した熱電対により温度を250℃に制御している。200℃に加熱している有機ノズルから無機層上に混合化合物蒸気を当てた。形成された液体層に電子銃より加速電圧−8kV 電流400mAで電子を照射して架橋硬化した。
有機膜厚は77nmであった。表1に透明バリアフィルムの酸素透過量とラミネート強度を示す。表2に加熱板の状況を示す。
(比較例1)
実施例1において、銅製の加熱板を熱媒により110℃に加熱して1ml/minの速度で混合化合物を滴下した以外は、実施例1と同様にした。加熱板の状況を表2に記す。
(比較例2)
比較例1において、アルミニウム製の加熱板を使った以外は、比較例1と同様にした。加熱板の状況を観察し、表2に記す。
本発明により、耐印刷性に優れて、密着性に優れた透明バリアフィルムを提供できる。
1:プラスチックフィルム
2:無機層
3:有機層
4:巻出しロール
5:プラズマ処理器
6:電子銃
7:坩堝
8:無機コーティングロール
9:有機ノズル
10:有機コーティングロール
11:電子線照射装置
12:巻取ロール
13:混合化合物
14:液体容器
15:液体ポンプ
16:有機蒸着源
17:電熱線
18:加熱板

Claims (2)

  1. 少なくともプラスチックフィルムの片面に無機層と有機層とをこの順に有する透明バリアフィルムの製造方法であって、有機層がアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ少なくとも二種類以上の化合物が架橋されて形成されたものであり、且つ、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を持つ少なくとも二種類以上の化合物のうち少なくとも一種類がシランカップリング剤であり、前記化合物を200℃以上、300℃以下に加熱された金属銅を用いたフラッシュ蒸着法により液体有機層を形成した後に、電子線照射により硬化させることを特徴とする透明バリアフィルムの製造法。
  2. 電子線の加速電圧が500V以上、10kV以下である請求項1に記載の透明蒸着バリアフィルムの製造法。
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