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JP6610147B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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JP6610147B2
JP6610147B2 JP2015199858A JP2015199858A JP6610147B2 JP 6610147 B2 JP6610147 B2 JP 6610147B2 JP 2015199858 A JP2015199858 A JP 2015199858A JP 2015199858 A JP2015199858 A JP 2015199858A JP 6610147 B2 JP6610147 B2 JP 6610147B2
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Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、乗用車のための空気入りタイヤに関する。
タイヤのビードは、エイペックスを備えている。エイペックスは、ビードのコアから半径方向略外向きに延在している。
エイペックスは通常、高硬度な架橋ゴムからなる。大きなボリュームを有するエイペックスを採用すれば、タイヤのサイドウォールの部分の剛性は高まる。この場合、操縦安定性の向上が期待される。
エイペックスに用いられる架橋ゴムは通常、高い発熱性を有している。このため、大きなボリュームを有するエイペックスを採用すると、転がり抵抗が増大する恐れがある。大きな転がり抵抗は、車輌の燃費性能に影響する。
エイペックスは、操縦安定性だけでなく転がり抵抗にも影響する。転がり抵抗の増大を抑えつつ、操縦安定性の向上を達成するために、様々な検討がなされている。この検討の一例が、特開2013−022968公報に開示されている。
特開2013−022968公報
環境への配慮の観点から、低い転がり抵抗を有するタイヤが求められている。低い発熱性を有する架橋ゴムをエイペックスに採用すれば、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこのような架橋ゴムは通常、低い剛性を有している。このため、低い発熱性を有する架橋ゴムをエイペックスに採用した場合、操縦安定性が低下する恐れがある。
本発明の目的は、操縦安定性を損なうことなく、転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビードとカーカスとを備えている。それぞれのビードは、このタイヤの半径方向内側部分に位置している。上記カーカスは、一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されている。上記ビードは、コアと、エイペックスとを備えている。上記エイペックスは、上記コアの半径方向外側に位置しており、このコアから半径方向略外向きに延在している。上記エイペックスは、本体と挿入体とからなる。上記挿入体は、上記本体の損失正接よりも低い損失正接を有している。このタイヤの周方向に対して垂直な、上記エイペックスの断面において、このエイペックスをその軸方向中心線とその半径方向中心線とで4つのゾーンに区画し、これらのゾーンのうち、半径方向内側でかつ軸方向内側に位置するゾーンを基準ゾーンとしたとき、この基準ゾーンに、上記挿入体の全体が位置している。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記コアと上記挿入体との間に、上記本体が介在している。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記エイペックスの半径方向長さに対する上記コアから上記挿入体までの半径方向高さの比率は5%以上10%以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、軸方向において上記エイペックスが最大幅を示す位置において、このエイペックスの内側縁と上記軸方向中心線との中心を通りこの軸方向中心線に沿って延在する線を副中心線とし、この副中心線で上記基準ゾーンを、第一基準ゾーンと、この第二基準ゾーンの軸方向外側に位置する第二基準ゾーンとに区画したとき、上記挿入体は、上記第一基準ゾーンと上記第二基準ゾーンとに位置している。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記本体の損失正接に対する上記挿入体の損失正接の比率は50%以上75%以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、このタイヤの周方向に対して垂直な、上記エイペックスの断面において、このエイペックスの面積に対する上記挿入体の面積の比率は4%以上である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記エイペックスの半径方向長さに対する上記挿入体の半径方向長さの比率は5%以上である。
本発明に係る空気入りタイヤでは、エイペックスは本体と挿入体とからなる。挿入体の損失正接(tanδ)は本体のそれよりも低い。この挿入体は、低い発熱性を有している。この挿入体は、タイヤの転がり抵抗の低減に寄与する。
このタイヤでは、エイペックスは、その半径方向内側でかつ軸方向内側の部分に挿入体全体が位置するように構成されている。このタイヤでは、挿入体による剛性への影響が抑えられている。このタイヤでは、良好な操縦安定性が適切に維持される。
本発明によれば、操縦安定性を損なうことなく、転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤが得られる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤのエイペックスが示された概略図である。 図3は、実施例及び比較例のそれぞれで使用したエイペックスが示された概略図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。この図1には、周方向に対して垂直な、このタイヤ2の断面が示されている。この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のウィング8、一対のクリンチ10、一対のビード12、カーカス14、ベルト16、バンド18、一対のエッジバンド20、インナーライナー22及び一対のチェーファー24を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と触れるトレッド面26を形成する。トレッド4には、溝28が刻まれている。この溝28により、トレッドパターンが形成されている。図示されていないが、トレッド4はベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止する。
それぞれのウィング8は、トレッド4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。ウィング8は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。クリンチ10は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ10は、リム(図示されず)のフランジと当接する。
それぞれのビード12は、タイヤ2の半径方向内側部分に位置している。詳細には、このビード12はクリンチ10の軸方向内側に位置している。このビード12は、タイヤ2の周方向に延在している。
ビード12は、コア30と、エイペックス32とを備えている。コア30はリング状である。コア30は、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス32は、コア30の半径方向外側に位置している。エイペックス32は、コア30から半径方向略外向きに延在している。図1に示されているように、このタイヤ2では、エイペックス32は先細りな形状を呈している。
カーカス14は、カーカスプライ34を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ34からなる。このカーカス14が2枚以上のカーカスプライ34から形成されてもよい。
このタイヤ2では、カーカスプライ34は両側のビード12の間に架け渡されている。このカーカスプライ34は、トレッド4、サイドウォール6及びクリンチ10の内側に沿っている。カーカスプライ34は、それぞれのビード12のコア30の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、このカーカスプライ34には、主部34aと一対の折り返し部34bとが形成されている。言い換えれば、このカーカスプライ34は主部34aと一対の折り返し部34bとを備えている。主部34aは、一方のコア30と他方のコア30との間を架け渡している。それぞれの折り返し部34bは、コア30から半径方向外向きに延在している。
図示されていないが、カーカスプライ34は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト16は、カーカス14と積層されている。ベルト16は、カーカス14を補強する。ベルト16は、内側層36及び外側層38からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層36の幅は外側層38の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層36及び外側層38のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層36のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。この場合、好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。ベルト16の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト16が、3以上の層を備えてもよい。
バンド18は、ベルト16の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド18の幅はベルト16の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド18は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト16が拘束されるので、ベルト16のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト16のみから、補強層が構成されてもよい。バンド18のみから、補強層が構成されてもよい。
それぞれのエッジバンド20は、ベルト16の半径方向外側であって、かつベルト16の端の近傍に位置している。図示されていないが、このエッジバンド20は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このエッジバンド20は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト16の端が拘束されるので、ベルト16のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
インナーライナー22は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー22は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー22は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー22の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー24は、ビード12の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー24がリムと当接する。この当接により、ビード12の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー24は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー24がクリンチ10と一体とされてもよい。この場合、チェーファー24の材質はクリンチ10の材質と同じとされる。
図2には、ビード12のエイペックス32が示されている。この図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。この図2には、図1に示されたエイペックス32の断面の概略が示されている。
このタイヤ2では、エイペックス32は本体40と挿入体42とを備えている。詳細には、エイペックス32は本体40と挿入体42とからなる。このタイヤ2では、本体40の体積がエイペックス32の体積に占める割合は、挿入体42の体積がこのエイペックス32の体積に占める割合よりも大きい。このタイヤ2では、エイペックス32の大部分は本体40である。
本体40は、架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、タイヤ2の操縦安定性への寄与が考慮され、この本体40は高い硬さを有する架橋ゴムで構成されている。
このタイヤ2では、本体40の硬さは75以上が好ましい。これにより、適度な剛性を有する本体40が得られる。この本体40は、タイヤ2の操縦安定性に寄与する。この観点から、この硬さは80以上がより好ましい。過大な剛性は、タイヤ2の乗り心地を阻害する恐れがある。この観点から、この本体40の硬さは95以下が好ましい。
本発明では、硬さは、「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられ、硬さが測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。
挿入体42は、架橋ゴムからなる。この挿入体42には、本体40の架橋ゴムとは別の架橋ゴムが用いられている。このタイヤ2では、タイヤ2の転がり抵抗への影響が考慮され、この挿入体42は、発熱性の低い架橋ゴム、すなわち、低い損失正接を有する架橋ゴムで構成されている。
本発明では、損失正接(tanδ)は、「JIS K6394」の規定に準じ、測定される。測定条件は、以下の通りである。この測定では、挿入体42又は本体40のゴム組成物から板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が形成される。この試験片が、測定に用いられる。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
このタイヤ2では、挿入体42の損失正接Tiは本体40の損失正接Tmよりも低い。言い換えれば、この挿入体42の発熱性は本体40の発熱性よりも低い。この挿入体42を一部に含むエイペックス32では、この挿入体42を含むことなくこの本体40のみで構成されたエイペックスに比べて、発熱が抑えられている。このエイペックス32は、タイヤ2の転がり抵抗の低減に寄与する。この観点から、この本体40の損失正接Tmに対するこの挿入体42の損失正接Tiの比率は75%以下が好ましい。小さな損失正接Tiは、挿入体42の剛性に影響する。低い剛性は、操縦安定性を損なう恐れがある。適度な剛性を有する挿入体42が得られるとの観点から、この本体40の損失正接Tmに対するこの挿入体42の損失正接Tiの比率は50%以上が好ましい。なお、このタイヤ2では、本体40の損失正接Tmは、0.10以上0.20以下の範囲にある。この損失正接Tmの範囲は、従来タイヤにおけるエイペックスの損失正接の範囲に略等しい。
前述したように、このタイヤ2の挿入体42は低い損失正接を有する架橋ゴムからなる。損失正接が低い架橋ゴムは、低い剛性を有する傾向にある。低い剛性は、操縦安定性に影響する。挿入体42が適度な剛性を有し、この挿入体42による操縦安定性への影響が抑えられるとの観点から、この挿入体42の硬さは60以上が好ましい。過大な剛性は、タイヤ2の乗り心地を阻害する恐れがある。この観点から、この挿入体42の硬さは90以下が好ましい。
このタイヤ2では、挿入体42が発熱の抑制に寄与するには、ある程度の大きさが必要である。このタイヤ2では、エイペックス32の断面において、このエイペックス32の面積Saに対する挿入体42の面積Siの比率は4%以上である。このタイヤ2では、挿入体42が適度な大きさを有している。前述したように、挿入体42は低い損失正接を有する架橋ゴムで構成されている。この挿入体42は、タイヤ2の転がり抵抗の低減に効果的に寄与する。前述したように、損失正接が低い架橋ゴムは低い剛性を有する傾向にある。挿入体42による剛性への影響の観点から、このエイペックス32の面積Saに対する挿入体42の面積Siの比率は35%以下が好ましい。
図2において、両矢印Haはエイペックス32の底面44の軸方向中心52からその外側端46までの半径方向長さを表している。この長さHaは、エイペックス32の半径方向長さである。この図2において、一点鎖線LRは軸方向に延びる直線である。この一点鎖線LRは、エイペックス32の半径方向中心を通る。詳細には、この一点鎖線LRは、エイペックス32の半径方向長さHaの半分の位置を通る。この一点鎖線LRは、エイペックス32の半径方向中心線である。
図2において、一点鎖線LAは、エイペックス32の内側縁48とその外側縁50との軸方向中心を通る線である。この一点鎖線LAは、このエイペックス32の軸方向中心線である。このタイヤ2では、エイペックス32は半径方向において先細りである。この中心線LAは、このエイペックス32の半径方向外側端46及びその底面44の軸方向中心52を通る。
この図2では、軸方向中心線LAが半径方向に延びる直線で表されているが、この中心線LAが半径方向に延びる直線というわけではない。この図2では、この中心線LAは、便宜上、直線で表されているに過ぎない。この中心線LAは、タイヤ2におけるエイペックス32の形態に応じて、直線及び曲線が適宜組み合わされて表される。
図2に示されているように、本発明では、タイヤ2の周方向に対して垂直な、エイペックス32の断面において、半径方向中心線LRと軸方向中心線LAとで、このエイペックス32は、Z1、Z2、Z3及びZ4で示される4つのゾーンに区画される。本発明においては、これらのゾーンのうち、半径方向内側でかつ軸方向内側に位置するゾーンZ3が基準ゾーンである。
図2から明らかなように、このタイヤ2では、基準ゾーンZ3に挿入体42の全体が位置している。言い換えれば、このタイヤ2のエイペックス32は、その半径方向内側でかつ軸方向内側の部分に挿入体42の全体が位置するように構成されている。このタイヤ2では、挿入体42による剛性への影響が効果的に抑えられている。このタイヤ2では、良好な操縦安定性が適切に維持される。なお、挿入体42がゾーンZ1又はZ2に位置すると、エイペックス32の変形が容易となる。この場合、操縦安定性が低下する恐れがある。特に、このタイヤ2のように、エイペックス32が先細りな形状を呈する場合においては、挿入体42がゾーンZ1又はZ2に位置することによる操縦安定性への影響は顕著である。挿入体42がゾーンZ4に位置する場合においても、エイペックス32の変形が容易となる。したがってこの場合においても、操縦安定性が低下する恐れがある。
このタイヤ2では、低い損失正接Tiを有する挿入体42の採用により、転がり抵抗の低減が図られている。エイペックス32の基準ゾーンZ3にこの挿入体42の全体を配置させることで、この挿入体42による操縦安定性への影響が抑えられている。このタイヤ2では、操縦安定性を損なうことなく、転がり抵抗の低減が達成される。本発明によれば、操縦安定性を損なうことなく、転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
このタイヤ2では、エイペックス32は半径方向略外向きに先細りな形状を呈している。軸方向において、このエイペックス32は、その底面44において最大幅を有する。このタイヤ2では、軸方向においてエイペックス32が最大幅を示す位置は、このエイペックス32の底面44である。図2において符号PBは、この最大幅を示す位置において、このエイペックス32の内側縁48と軸方向中心線LAとの中心を表している。実線LBは、この中心PBを通る線である。実線LB上の各点から中心線LAまでの軸方向距離はいずれも、中心PBから中心線LA(すなわち、中心52)までの軸方向距離に等しい。言い換えれば、実線LBは、中心PBを通り、中心線LAに沿って延在する線である。本発明では、この実線LBは副中心線と称される。
図2に示されているように、本発明では、タイヤ2の周方向に対して垂直な、エイペックス32の断面において、副中心線LBによって、エイペックス32の基準ゾーンZ3は、Z31及びZ32で示される2つのゾーンにさらに区画される。本発明においては、これらのゾーンのうち、副中心線LBよりも軸方向内側に位置するゾーンZ31が第一基準ゾーンであり、副中心線LBよりも軸方向外側に位置するゾーンZ32が第二基準ゾーンである。第二基準ゾーンZ32は、第一基準ゾーンZ31の軸方向外側に位置している。
このタイヤ2では、挿入体42の全体が第一基準ゾーンZ31のみに位置しているのでもなく、この挿入体42の全体が第二基準ゾーンZ32のみに位置しているのでもない。言い換えれば、この挿入体42は第一基準ゾーンZ31と第二基準ゾーンZ32とに位置している。このタイヤ2では、挿入体42の大きさが十分に確保されている。この挿入体42は、転がり抵抗の低減に寄与する。この観点から、このタイヤ2では、図2に示されているように、副中心線LBで基準ゾーンZ3を、第一基準ゾーンZ31と、第二基準ゾーンZ32とに区画したとき、エイペックス32の挿入体42は、第一基準ゾーンZ31と第二基準ゾーンZ32とに位置しているのが好ましい。この挿入体42が転がり抵抗の低減にさらに効果的に寄与するとの観点から、このタイヤ2では、図2に示されているように、この挿入体42がエイペックス32の内側縁48と軸方向中心線LAとの間を途切れることなく架け渡しているのが好ましい。
このタイヤ2では、挿入体42とコア30との間には、本体40が介在している。言い換えれば、このタイヤ2では、挿入体42はコア30とは直接当接していない。このタイヤ2では、本体40は硬質である。このタイヤ2では、エイペックス32の半径方向内側部分は大きな剛性を有している。エイペックス32の半径方向内側部分、すなわち、このエイペックス32の根元が適度な剛性を有しているので、このエイペックス32は全体として変形しにくい。このタイヤ2では、良好な操縦安定性が適切に維持される。この観点から、このタイヤ2では、図2に示されているように、挿入体42とコア30との間に本体40が介在しているのが好ましい。
図2において、両矢印Hsはエイペックス32の底面44の軸方向中心52から挿入体42の内側端54までの半径方向長さを表している。エイペックス32はその底面44においてコア30と接しているので、この長さHsはコア30から挿入体42までの半径方向高さでもある。
このタイヤ2では、エイペックス32の半径方向長さHaに対するコア30から挿入体42までの半径方向高さHsの比率は、5%以上が好ましく、10%以下が好ましい。この比率が5%以上に設定されることにより、エイペックス32の根元における剛性が確保され、エイペックス32の変形が効果的に抑えられる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この比率が10%以下に設定されることにより、挿入体42の大きさが適切に維持される。このタイヤ2では、挿入体42が転がり抵抗の低減に効果的に寄与する。
図2において、両矢印Hiは挿入体42の内側端54からその外側端56までの半径方向長さを表している。この長さHiは、挿入体42の半径方向長さである。
このタイヤ2では、エイペックス32の半径方向長さHaに対する挿入体42の半径方向長さHiの比率は、5%以上が好ましい。これにより、挿入体42の大きさが適切に維持される。このタイヤ2では、挿入体42が転がり抵抗の低減に効果的に寄与する。このタイヤ2では、この比率は、40%以下が好ましい。これにより、挿入体42による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、良好な操縦安定性が適切に維持される。
本発明では、特に言及のない限り、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、195/65R15である。このタイヤにおけるエイペックスの構成は、図2に示される通りである。このエイペックスは、本体及び挿入体からなる。このエイペックスにおける、本体の損失正接Tmに対する挿入体の損失正接Tiの比率(Ti/Tm)、エイペックスの面積Saに対する挿入体の面積Siの比率(Si/Sa)、エイペックスの半径方向長さHaに対する挿入体の半径方向長さHiの比率(Hi/Ha)及びエイペックスの半径方向長さHaに対するコアから挿入体までの半径方向高さHsの比率(Hs/Ha)は、下記の表2の通りである。
図2に示されている通り、この実施例1では、挿入体は、その全体が基準ゾーンに位置するように配置されている。このことが、表2の基準ゾーンの欄に「Y」で表されている。特にこの挿入体は、第一基準ゾーン及び第二基準ゾーンのいずれにも位置するように配置されている。このことが、表2の第一基準ゾーン及び第二基準ゾーンのそれぞれの欄に「Y」で表されている。
[比較例1]
比較例1は、従来のタイヤである。この比較例1のエイペックスには、実施例1のような挿入体は設けられていない。このエイペックスは、実施例1の本体をなす架橋ゴムと同じ架橋ゴムからなる。このエイペックスの断面の概略は、図3(a)に示される通りである。
[実施例2−12及び比較例2−3]
エイペックスの構成を下記の表1−3に示される通りとし、比率(Si/Sa)、比率(Hi/Ha)及び比率(Hs/Ha)をこの表1−3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−12及び比較例2−3のタイヤを得た。表1−3の構成の欄に記載の図面(図3(b)から図3(n))は、各例におけるエイペックスの構成の概略を示している。
[実施例13−14]
挿入体の損失正接Tiを変えて比率(Ti/Tm)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例13−14のタイヤを得た。
[実施例15−18]
コアから挿入体までの半径方向高さHsを変えて比率(Si/Sa)、比率(Hi/Ha)及び比率(Hs/Ha)を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例15−18のタイヤを得た。
[転がり抵抗係数]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗係数(RRC)を測定した。
使用リム:15×6.0J(アルミニウム合金製)
内圧:210kPa
荷重:4.82kN
速度:80km/h
この結果が、比較例1が基準とされた指数として、下記の表1−4に示されている。数値が小さいほど好ましい。なお、この指数が99以下であれば効果ありと判断され、この指数が94以下であることが目標である。
[操縦安定性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性を評価させた。この結果が、指数として下記の表1−4に示されている。数値が大きいほど好ましい。なお、この指数が95以上であれば操縦安定性としては許容範囲であり、この指数が100以上であることが目標である。
Figure 0006610147
Figure 0006610147
Figure 0006610147
Figure 0006610147
表1−4に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたエイペックスに関する技術は、種々のタイプのタイヤにも適用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・クリンチ
12・・・ビード
14・・・カーカス
16・・・ベルト
26・・・トレッド面
30・・・コア
32・・・エイペックス
34・・・カーカスプライ
40・・・本体
42・・・挿入体
44・・・エイペックス32の底面
46・・・エイペックス32の半径方向外側端
48・・・エイペックス32の内側縁
50・・・エイペックス32の外側縁
52・・・底面44の軸方向中心
54・・・挿入体42の内側端
56・・・挿入体42の外側端

Claims (6)

  1. 一対のビードとカーカスとを備えており、
    それぞれのビードが、このタイヤの半径方向内側部分に位置しており、
    上記カーカスが、一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されており、
    上記ビードが、コアと、エイペックスとを備えており、
    上記エイペックスが、上記コアの半径方向外側に位置しており、このコアから半径方向略外向きに延在しており、
    上記エイペックスが、本体と挿入体とからなり、
    上記挿入体が上記本体の損失正接よりも低い損失正接を有しており、
    このタイヤの周方向に対して垂直な、上記エイペックスの断面において、このエイペックスをその軸方向中心線とその半径方向中心線とで4つのゾーンに区画し、これらのゾーンのうち、半径方向内側でかつ軸方向内側に位置するゾーンを基準ゾーンとしたとき、この基準ゾーンに、上記挿入体の全体が位置しており、
    上記本体の損失正接に対する上記挿入体の損失正接の比率が50%以上75%以下である、空気入りタイヤ。
  2. 上記コアと上記挿入体との間に、上記本体が介在している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 上記エイペックスの半径方向長さに対する上記コアから上記挿入体までの半径方向高さの比率が5%以上10%以下である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 軸方向において上記エイペックスが最大幅を示す位置において、このエイペックスの内側縁と上記軸方向中心線との中心を通りこの軸方向中心線に沿って延在する線を副中心線とし、この副中心線で上記基準ゾーンを、第一基準ゾーンと、この第一基準ゾーンの軸方向外側に位置する第二基準ゾーンとに区画したとき、
    上記挿入体が、上記第一基準ゾーンと上記第二基準ゾーンとに位置している、請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. このタイヤの周方向に対して垂直な、上記エイペックスの断面において、このエイペックスの面積に対する上記挿入体の面積の比率が4%以上である、請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 上記エイペックスの半径方向長さに対する上記挿入体の半径方向長さの比率が5%以上である、請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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