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JP6602108B2 - 眼科装置、情報処理方法及びプログラム - Google Patents

眼科装置、情報処理方法及びプログラム Download PDF

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Description

開示の技術は、眼科装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
生体などの測定対象の断層像を非破壊、非侵襲で取得する方法として、光干渉断層撮像法(Optical Coherence Tomography、以下OCTという)が実用化されている。OCTは、特に眼科診断において広く利用されている。
OCTは、測定対象から反射した光と参照鏡から反射した光を干渉させ、その干渉光強度を解析することにより測定対象の断層像を得ている。このような光干渉断層像取得装置として、干渉光を分光し、深さ情報を周波数情報に置き換えて取得するスペクトラルドメインOCT(SD−OCT:Spectral Domain Optical Coherence Tomography)が知られている。さらに、先に波長を分光して出力する波長掃引光コヒーレンストモグラフィー(SS−OCT:Swept Source Optical Coherence Tomography)が知られている。なお、SD−OCTとSS−OCTとは総称して(FD−OCT:Fourier Domain Optical Coherence Tomography)とも呼ばれる。
近年、このFD−OCTを用いた血管造影法が提案されており、この血管造影方法はOCTアンギオグラフィーと呼ばれている。干渉信号の対数強度のばらつきをモーションコントラスト特徴量として、モーションコントラスト特徴量を画像化するOCTアンギオグラフィーが知られている(特許文献1)。
米国特許出願公開第2014/221827号明細書
しかしながら、特許文献1にはモーションコントラスト特徴量を画像化することで得られた血管画像のうち新生血管の虞がある血管を特定する手法については開示されていない。
開示の技術は上記の課題に鑑みてなされたものであり、新生血管の虞のある血管を特定することを目的の1つとする。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的の1つとして位置付けることができる。
開示の眼科装置の一つは、
底の断層を示す複数の断層像データに基づいて前記眼底における血管を示す三次元血管データを生成する生成手段と、
記眼底の断層を示す複数の断層像データを含む三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得手段と、
前記三次元血管データと前記層境界データとを比較することによって、前記層境界と交わる血管を決定する決定手段とを備える。
開示の技術によれば、新生血管の虞のある血管を特定することが可能となる。
撮像装置の全体構成の一例を示す図。 スキャンパターンの一例を示す図。 干渉信号の取得手順の一例を示すフローチャート。 信号処理手順の一例を示すフローチャート。 三次元血管情報取得処理の一例を示すフローチャート。 セグメンテーション結果の一例を示す図。 表示手段における表示画面の一例を示す図。 偏光OCTの構成の一例を示す図。
以下、添付の図面を参照して、本実施形態に係る画像生成装置を説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(第1実施形態)
[撮像装置全体の構成]
以下、図面を参照して、本実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態における光干渉断層法を用いた撮像装置(OCT装置)の構成例を示す図である。SS−OCTである場合の構成を示すが、他の方式のOCT装置においても同様の効果を実現できる。
本OCT装置(眼科装置)は、波長掃引光源10、光信号分岐/合波部20、干渉光の検出部30、人眼100の網膜情報を取得するコンピュータ40(眼科装置)、測定アーム50、参照アーム60を有している。コンピュータ40は中央演算処理装置(CPU)と、記憶装置とを備える。記憶装置は例えばメモリ(RAMおよびROM)と大容量記憶装置(HDD)とから構成される。記憶装置の一部または全てはコンピュータ40の外部に備えられることとしてもよい。波長掃引光源10は、例えば波長980nmから1100nmの光を100kHzの周波数(Aスキャンレート)で出射する。ここで、波長や周波数については例示であり、本発明は上記の値に限定されるものではない。以下の実施形態についても同様に、記載された数値は例示であり、本発明は記載された数値に限定されるものではない。
なお、本実施形態で被検体100を人眼(眼底)としているがこれに限るものではなく、例えば皮膚等に用いることとしてもよい。また、本実施形態において撮像対象は眼の眼底としているが、前眼を撮影対象とすることとしてもよい。
光信号分岐/合波部20は、カプラ21、22を有している。まず、カプラ21は、光源10から射出された光を眼底へ照射する照射光と参照光とに分岐する。照射光は、測定アーム50を経由して人眼100に照射される。より具体的には、測定アーム50に入射した照射光は、偏光コントローラ51で偏光状態を整えられた後、コリメータ52から空間光として射出される。その後、照射光は、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54、フォーカスレンズ55を介して人眼100の眼底に照射される。なお、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54は眼底を照射光で走査する機能を有する走査部である。走査部によって、照射光の眼底への照射位置が変えられる。ここで、人眼100の1点の奥行き方向(深さ方向)の情報を取得することをAスキャンと呼ぶ。また、Aスキャンと直交する方向に沿って、二次元断層像を取得することをBスキャン、更にBスキャンの二次元断層像に垂直な方向に沿って、二次元断層像を取得することをCスキャンと呼ぶ。
なお、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54は、それぞれ回転軸が互いに直交するよう配置されたミラーで構成されている。X軸スキャナー53は、X軸方向の走査を行い、Y軸スキャナー54は、Y軸方向の走査を行う。X軸方向、Y軸方向の各方向は、眼球の眼軸方向に対して垂直な方向で、互いに垂直な方向である。また、Bスキャン、Cスキャンのようなライン走査方向と、X軸方向またはY軸方向とは、一致していなくてもよい。このため、Bスキャン、Cスキャンのライン走査方向は、撮像したい二次元の断層像あるいは三次元の断層像に応じて、適宜決めることができる。
眼底からの反射光は、再びフォーカスレンズ55など同一経路を経由して、カプラ21を通りカプラ22に入射する。なお、シャッター85を閉じて計測することで、人眼100からの反射光をカットしてバックグランド(ノイズフロア)の計測が可能である。
一方、参照光は参照アーム60を経由し、カプラ22に入射する。より具体的には、参照アーム60に入射した参照光は、偏光コントローラ61で偏光状態を整えられた後、コリメータ62から空間光として射出される。その後、参照光は分散補償ガラス63、光路長調整光学系64、分散調整プリズムペア65を通り、コリメータレンズ66を介して光ファイバに入射され、参照アーム60から射出されてカプラ22に入射する。
カプラ22では、測定アーム50を経由した人眼100の反射光と参照アーム60を通った参照光とが干渉する。そして、その干渉光を検出部30で検出する。検出部30は、差動検出器31とA/D変換器32を有している。まず、検出部30では、カプラ22で分波された干渉光を差動検出器31で検出する。そして、差動検出器31で電気信号に変換されたOCT干渉信号(以下、単に干渉信号という場合がある)をA/D変換器32でデジタル信号に変換している。ここで、作動検出器31の干渉光のサンプリングは、波長掃引光源10の中に組み込まれたクロック発生器が発信するkクロック信号に基づいて等波数間隔に行われる。A/D変換器32が出力したデジタル信号はコンピュータ40に送られる。次にコンピュータ40はデジタル信号に変換した干渉信号を信号処理し、OCTアンギオグラフィー画像を計算する。図7に示す画像はOCTアンギオグラフィー画像の一例である。
コンピュータ40が備えるCPUは、各種の処理を実行する。具体的にはCPUは、不図示の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで取得手段41、位置合わせ手段42、算出手段43、生成手段44、変更手段45および表示制御手段46として機能する。なお、コンピュータ40が備えるCPUおよび記憶装置は1つであってもよいし複数であってもよい。すなわち、少なくとも1以上の処理装置(CPU)と少なくとも1つの記憶装置(ROMまたはRAM等)とが接続されており、少なくとも1以上の処理装置が少なくとも1以上の記憶装置に記憶されたプログラムを実行した場合にコンピュータ40は上記の各手段として機能する。なお、処理装置はCPUに限定されるものではなく、FPGA等であってもよい。なお、コンピュータ40は、表示部70と一体となったユーザが持ち運び可能な装置(タブレット)でも良い。この場合、表示部にタッチパネル機能を搭載させ、タッチパネルにより各種のユーザによる操作を受け付けることとしてもよい。
取得手段41は、A/D変換器32の出力を取得する。具体的には、被検眼に対して走査された測定光の被検眼からの戻り光と参照光との干渉光のデジタル信号を取得する。さらに、取得手段41は干渉光のデジタル信号(干渉信号)をフーリエ変換することで断層像を取得する。具体的には、取得手段41は、干渉信号に高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を適用することにより位相と振幅とからなるOCT複素信号を取得する。なお、周波数解析として最大エントロピー法を用いてもよい。さらに取得手段41はOCT複素信号の絶対値を2乗し、信号強度(Intensity)を計算すことで、Intensityを示す断層像(以下、単に断層像という場合がある)を取得する。この断層像は被検眼の眼底の断層を示す断層像データの一例に相当する。すなわち、測定光を被検眼の眼底の略同一位置で複数回走査した場合、取得手段41はそれぞれ被検体の略同一位置の断層を示す複数の断層像データを取得することとなる。なお、複数の断層像データは異なるタイミングで走査された測定光により取得されるデータである。また、測定光を前記眼底の複数の位置それぞれにおいて走査した場合、取得手段41は複数の位置における複数の断層像データを取得する。すなわち、取得手段41は、第1取得手段および第2取得手段の一例に相当する。
なお、取得手段41はX軸スキャナー53、Y軸スキャナー54等OCT装置の各部を制御する手段としても機能する。
位置合わせ手段42は、複数の断層像の位置合わせを行う。本実施形態では位置合わせ手段42は、被検眼の眼底の略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた複数の断層像の位置合わせを行う。より具体的には、位置合わせ手段42は、算出手段43がモーションコントラスト値を算出する前に複数の断層像データ同士を位置合わせする。
断層像の位置合わせは既知の種々の手法により実現可能である。位置合わせ手段42は、例えば断層像同士の相関が最大となるように複数の断層像の位置合わせを行う。なお、被検体が眼のように動く検体でなければ位置合わせは不要である。また、被検体が眼であっても追尾の性能が高ければ位置合わせは不要である。すなわち、位置合わせ手段42による断層像同士の位置合わせは必須ではない。
算出手段43は、モーションコントラスト特徴量(以下モーションコントラスト値という場合がある)を算出する。ここで、モーションコントラストとは被検体組織のうち流れのある組織(例えば血液)と流れのない組織の間のコントラストであり、このモーションコントラストを表現する特徴量をモーションコントラスト特徴量と定義する。
モーションコントラスト特徴量は、略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた複数の断層像間におけるデータの変化に基づいて算出される。例えば、算出手段43は位置合わせされた複数の断層像の信号強度(輝度)の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する。より具体的には位置合わせされた複数の断層像の対応する各位置における信号強度の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する。例えば、所定時刻の血管に相当する像の信号強度と所定時刻とは異なる時刻の血管に相当する像の信号強度とは血流により変化するため、血管に相当する部分の分散値は血流等の流れがない部分の分散値に比べて大きな値となる。すなわち、モーションコントラスト値は、複数の断層像データ間での被検体における変化が大きいほど大きくなる値である。従って、この分散値に基づいて画像を生成することでモーションコントラストを表現することが可能である。なお、モーションコントラスト特徴量は分散値に限定されるものではなく、標準偏差、差分値、非相関値および相関値の何れであってもよい。なお、算出手段43は、信号強度の分散等を用いることとしたが、位相の分散等を用いてモーションコントラスト特徴量を算出することとしてもよい。
また、算出手段43は、位置合わせされた複数の断層像の平均値を算出することで、平均化画像を生成する。平均化画像は複数の断層像の信号強度が平均化された断層像である。この平均化画像をIntensity平均化画像という場合がある。算出手段43は、平均化画像の信号強度と閾値との比較を行う。算出手段43は平均化画像の所定位置の信号強度が閾値よりも低い場合は、平均化画像の所定位置に対応する分散等に基づいて得られたモーションコントラスト特徴量を血管を示す特徴量とは異なる値にする。例えば、算出手段43は平均化画像の信号強度が閾値よりも低い場合は、分散等に基づいて得られたモーションコントラスト特徴量を0にする。すなわち、算出手段43は、信号強度を示す代表値が閾値よりも低い場合のモーションコントラスト値を、信号強度を示す代表値が閾値よりも高い場合のモーションコントラスト値よりも低い値とする。なお、算出手段43は複数の断層像の信号強度の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する前に、平均化画像の信号強度と閾値との比較を行うこととしてもよい。例えば、算出手段43は、平均化画像の信号強度が閾値より低い場合にはモーションコントラスト特徴量を0と算出し、平均化画像の信号強度が閾値より高い場合には複数の断層像の信号強度の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する。
ここで、特徴量が0であることは図7の符号71に示す二次元血管画像の黒い部分を示している。なお、モーションコントラスト特徴量を完全に0にするのではなく0近傍の値とすることとしてもよい。一方、算出手段43は平均化画像の信号強度が閾値よりも高い場合は、分散等に基づいて得られたモーションコントラスト特徴量を維持する。すなわち、算出手段43は、複数の断層像データに基づいて前記モーションコントラスト値を算出し、信号強度を示す代表値と閾値との比較結果に基づいてモーションコントラスト値を再度算出する。
なお、閾値との比較対象として平均化画像の信号強度(信号強度の平均値)を用いたが、複数の断層像の対応する位置における信号強度の最大値、最小値、中央値等の代表値を用いることとしてもよい。また、複数の断層像から得られた信号強度を閾値と比較するのではなく、算出手段43は1つの断層像の信号強度と閾値とを比較し、モーションコントラスト特徴量を制御することとしてもよい。
生成手段44は、モーションコントラスト特徴量に基づいて三次元血管情報(三次元血管データ)を生成する。すなわち、生成手段44は、それぞれ眼底の断層を示す複数の断層像データに基づいて前記眼底における血管を示す三次元血管データを生成する生成手段の一例に相当する。
具体的には、生成手段44はモーションコントラスト特徴量と閾値とを比較することで、血管領域とその他の領域とを分割する領域分割処理を行う。また、生成手段44は領域分割処理を実行する前に、モーションコントラスト特徴量に対して平滑化処理を行うこととしてもよい。平滑化処理の具体例については後述する。なお、三次元血管情報は三次元血管画像を含む。すなわち、三次元血管情報は三次元血管画像を示す情報である。
また、生成手段44は、三次元血管情報の任意の網膜方向の深さ範囲において投影または積算した二次元血管情報(二次元血管データ)を生成することもできる。二次元血管情報は二次元血管画像(en−face血管画像)を含む。すなわち、二次元血管情報は二次元血管画像を示す情報である。図7の符号71は二次元血管画像の一例である。
さらに、生成手段44は三次元血管情報から任意の網膜方向の深さ範囲を切り出して、部分的な三次元血管情報を生成することもできる。
なお、任意の網膜方向の深さ範囲は検査者(操作者)により設定可能である。例えば、IS/OSからRPEまでの層、RPEからBMまでの層など選択可能な層の候補が表示部70に表示される。表示された層の候補から、検査者は所定の層を選択する。そして、検査者により選択された層において生成手段44は網膜の深さ方向に積算を行い二次元血管情報または部分的な三次元血管情報を生成することとしてもよい。
また、生成手段44は複数の断層像データを含む三次元断層像データから少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する。すなわち、生成手段44は、それぞれ眼底の断層を示す複数の断層像データを含む三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得手段の一例に相当する。層境界データは例えば三次元のデータである。層境界の検出方法の具体的な例については後述する。
なお、本実施形態においては、三次元層境界データと三次元血管データとは共通の断層像データに基づいて得られることとしている。すなわち、境界取得手段の一例である生成手段44は、三次元血管データの生成に用いられる眼底の断層を示す複数の断層像データを含む三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する。
決定手段45は、三次元層境界データと層境界データとを比較することによって層境界と交わる血管を決定する。また、決定手段45は、三次元層境界データと層境界データとを比較することで、層境界から所定範囲内にある血管を決定することとしてもよい。なお、決定手段45は新生血管とみなした血管を抽出している。決定手段45のより詳細な処理は後述する。
表示制御手段46は、各種の情報を表示部70に表示させる。具体的には、表示制御手段46は生成手段44により生成された三次元血管情報が示す三次元血管画像等を表示部70に表示させる。さらに、表示制御手段46は、決定手段45により決定された血管を、他の血管と識別可能な状態で表示部70に表示させる。また、表示制御手段46は二次元血管画像を表示部70に表示させることとしてもよい。更に、表示制御手段46は二次元血管画像において決定手段45により決定された血管を、他の血管と識別可能な状態で表示部70に表示させることとしてもよい。なお、表示制御手段46は、三次元血管画像および二次元血管画像の少なくとも1つを表示部70に表示させることとしてもよい。すなわち、表示制御手段46は、三次元血管データが示す三次元血管画像および三次元血管データを眼底の深さ方向に積算することで得られた二次元血管画像の少なくとも一方を表示手段に表示させるとともに、決定手段により決定された血管を決定手段により決定された血管以外の血管と識別可能に表示手段に表示させる表示制御手段の一例に相当する。表示制御手段46による制御の詳細についは後述する。
次に、コンピュータ40で行われる具体的な信号処理手順の詳細内容は、後述の信号処理手順に示す。
表示部70は、表示制御手段46の制御に基づいて各種の情報を表示する。表示部70は、例えば、液晶等のディスプレイである。また、上述の信号処理の結果得られたOCTアンギオグラフィー画像が表示部70によって表示される。
[スキャンパターン]
次に、図2を用いて本実施形態のスキャンパターンの一例を説明する。
OCTアンギオグラフィーでは血流による干渉信号の時間変化を計測するため、ほぼ同一箇所で少なくとも2回以上反復計測した複数の干渉信号が必要となる。図2において、人眼100への照射光の軸方向がZ軸(深さ方向)、Z軸と直交する平面、すなわち眼底平面方向をX軸、Y軸とする。
図2において、y1からynはそれぞれ異なるYポジションでのBスキャン、nはyスキャン方向のサンプル数を示す。x1からxpはXスキャン方向のサンプル位置、pはBスキャンを構成するXスキャン方向のサンプル数を示す。Δxは隣り合うXポジションの間隔(xピッチ)であり、Δyは隣り合うYポジションの間隔(yピッチ)を表す。mはほぼ同じ箇所でのBスキャンの反復計測回数を表す。ここで、初期位置(x1、y1)はコンピュータ40により任意に設定できる。
本実施形態ではOCT装置はほぼ同じ箇所でのBスキャンをm回反復し、n箇所のyポジションに移動するスキャン方法を行う。なお、反復スキャンの方法は、ほぼ同じ箇所でのAスキャンを繰り返してから次の位置に移動してBスキャンを構成するスキャン方法でも良い。
ここで、反復回数mが大きいと同じ箇所での計測回数が増えるため、血流の検出精度が向上する。その一方でスキャン時間が長くなり、スキャン中の眼の動き(固視微動)により画像にモーションアーチファクトが発生する問題と被検者の負担が増える問題が生じる。本実施形態では両者のバランスを考慮してm=4として実施した。なお、OCT装置のAスキャン速度、人眼100の動き量に応じて、mを自由に変更してもよい。すなわち、反復走査の回数は上記の値に限定されるものではない。
また、x、y方向の画像サイズはp×nにより決定される。x、y方向の画像サイズが大きいと、同じ計測ピッチであれば広範囲がスキャンできるが、スキャン時間が長くなり、上述のモーションアーチファクトおよび患者負担の問題が生じる。本実施形態では両者のバランスを考慮してn=p=300として実施した。なお、上記n、pは適宜自由に変更が可能である。すなわち、画像サイズは上記の値に限定されるものではない。
また、本実施形態ではxピッチ、yピッチは眼底における照射光のビームスポット径の1/2として決定し、10μmとした。xピッチ、yピッチを眼底上ビームスポット径の1/2とすることで生成する画像を高精細に形成することができる。xピッチ、yピッチを眼底ビームスポット径の1/2より小さくしても生成する画像の精細度をそれ以上高くする効果は小さい。
逆にxピッチ、yピッチを眼底ビームスポット径の1/2より大きくすると精細度は悪化するが、より広い範囲の画像を取得することができる。臨床上の要求に応じてxピッチ、yピッチを自由に変更してもよい。
本実施形態のスキャン範囲は、x方向がp×Δx=3mm、y方向がn×Δy=3mmとした。
[干渉信号の取得手順]
次に、図3を用いて本実施形態の干渉信号の取得手順の一例を説明する。
まず、ステップS109において、取得手段41は図2のポジションyiのインデックスiを1に設定する。次に、ステップS110で、取得手段41は不図示の駆動機構を制御することでx軸スキャナー53、y軸スキャナー54のスキャン位置を図2の(x1,yi)に移動させる。ステップS119において、取得手段41はBスキャンの反復計測回数のインデックスjを1に初期化する。
次に、ステップS120において、x軸スキャナー53、y軸スキャナー54は反復計測回数j回目のBスキャンを実施する。なお、Bスキャン範囲は(x1,yi)〜(xp,yi)である。ここで、波長掃引光源10は100kHzのAスキャンレートで光を出射し、Bスキャンを構成するxスキャン方向のサンプル数pは例えばp=300である。したがって、正味のBスキャン時間(Δtb)は式1のようになる。
Δtb=(1/100kHz)×300=3ms ・・・(1)
また、反復計測の時間間隔Δtは式2に示すように、正味のBスキャン時間ΔtbとX軸スキャナー53の準備時間Δtpの和である。準備時間Δtpは例えばx軸スキャナー53、y軸スキャナー54のスキャン位置を調整する時間である。Δtp=1msとすると、
Δt=Δtb+Δtp=4ms ・・・(2)
さらに、全体の計測時間tmは反復回数m、yスキャン方向のサンプル数nを用いて、式3で表される。
tm=Δt*m*n=(Δtb+Δtp)*m*n ・・・(3)
本実施形態ではm=4、y=300なので、全体の計測時間tm=3.6sである。
ここで、Bスキャン時間Δtbと反復計測の時間間隔Δtは短いほど人眼100の動きの影響を受けにくく、バルクモーションノイズは小さくなる。逆にΔtが長いと人眼100の動きにより位置再現性が低下しバルクモーションノイズが増える。また、計測にかかる時間が増え、患者負担が増してしまう。ここで、バルクモーションとは被検眼の動きを意味し、バルクモーションノイズとは被検眼の動きにより発生するノイズを意味している。
さらに、反復計測の時間間隔Δtについては小さすぎると血流検出にかかる時間が短くなり血流検出感度が低下する。
これらを考慮してtm、Δt、n、p、Δtb、Δtp、を選択することが望ましい。なお、反復計測の位置再現性を高めるため、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54は人眼100を追尾しつつ、Bスキャンを行っても良い。
ステップS130において差動検出器31はAスキャン毎に干渉光を検出し、A/D変換器32を介してデジタル信号(干渉信号)に変換される。取得手段41はA/D変換器32から干渉信号を取得し、不図示の記憶部に記憶する。取得手段41は1度のBスキャンでAスキャン信号p個を取得する。p個のAスキャン信号は1のBスキャン信号を構成している。
ステップS139において、取得手段41はBスキャンの反復計測回数のインデックスjをインクリメントする。
次に、ステップS140において取得手段41は反復計測回数のインデックスjが所定の反復回数mより大きいか判断する。すなわち、取得手段41はポジションyiでのBスキャンがm回繰り返されたかを判断する。繰り返されてない場合はS120に戻り、同一位置のBスキャン計測を繰り返す。所定回数繰り返された場合は、S149に進む。
ステップS149において、取得手段41はポジションyiのインデックスiをインクリメントする。
次に、ステップS150において取得手段41はポジションyiのインデックスiが所定の計測位置の数nより大きいか、すなわちn箇所の全てのYポジションでBスキャンを実施したかを判断する。n箇所の全てのYポジションでBスキャンが実施されていない場合はステップS110に戻り、次の計測ポジションで計測することを繰り返す。n箇所の全てのYポジションでBスキャンが実施された場合は、次ステップS160へ進む。
ステップS160において取得手段41はバックグラウンドデータを取得する。取得手段41は不図示の駆動手段を制御することでシャッター85を閉じた状態(光路に挿入した状態)で100回Aスキャンを行い、取得手段41は100個のAスキャン信号を平均化して記憶部に記憶する。なお、バックグラウンドデータを得るためのAスキャン回数は100回に限るものではない。
以上のステップを実施して、取得手段41は、ほぼ同一箇所を最低2回以上反復計測した複数の干渉信号、及びバックグランドデータを取得することができる。
[信号処理手順]
次に、図4を用いて本実施形態の信号処理手順(情報処理方法)の一例を説明する。
図4は、干渉信号が取得されてから三次元血管画像を表示するまでのフローの一例である。
本実施形態では、OCTアンギオグラフィーの画像を生成するために、モーションコントラスト特徴量を計算する必要がある。
図4において、まずステップS210で、取得手段41はy方向のポジションyiのインデックスiを1に設定する。ステップS220において、取得手段41はポジションyiにおける繰り返しBスキャンにより得られたBスキャン干渉信号(m回分)を記憶手段から図3に示した処理で得られた干渉信号から抜き出す。具体的には、ポジションyiにおける繰り返しBスキャンにより得られた複数のBスキャン干渉信号を記憶手段から読み出す。
次に、ステップS230において、取得手段41は繰り返しBスキャンのインデックスjを1に設定する。
ステップS240において、取得手段41はm回分のBスキャン干渉信号からj番目のBスキャン干渉信号を抜き出す。
次に、ステップS250では、コンピュータ40は図3のステップS160で取得したバックグラウンドデータをステップS240で取得したBスキャン干渉信号から減算する。
ステップS260において、取得手段41はバックグラウンドデータを減算したBスキャン干渉信号をフーリエ変換する。本実施形態では高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を適用する。
ステップS270において、取得手段41は、ステップS260においてフーリエ変換されたBスキャン干渉信号の振幅の絶対値の2乗を計算する。この値が当該Bスキャンの断層像の強度(Intensity)となる。すなわちステップS270において取得手段41はIntensityを示す断層像を取得する。
ステップS280において、取得手段41はBスキャンの繰り返し回数を示す反復計測回数jをインクリメントする。そして、ステップS290で、取得手段41は反復計測回数jが反復回数mより大きいか判断する。すなわち、取得手段41はあるポジションyiでのBスキャンのIntensity計算がm回繰り返されたかを判断する。反復計測回数jが反復回数mより小さい場合はステップS240に戻り、取得手段41は同一Yポジションでの繰り返しBスキャンのIntensity計算を繰り返す。反復計測回数jが反復回数mより大きい場合は、ステップS300へ進む。
ステップS300では、位置合わせ手段42は、あるYポジションyiにおける繰り返しBスキャンのmフレーム分の断層像を位置合わせする。具体的には、位置合わせ手段42は、まずmフレーム分の断層像のうち、任意の1枚の断層像をテンプレートとして選択する。位置合わせ手段42は、mフレーム分の断層像における全ての組み合わせで相関を計算し、フレーム別に相関係数の和を求め、その和が最大となるフレームの断層像をテンプレートとして選択してもよい。
次に、位置合わせ手段42は、テンプレートとして選択された断層像と他のフレームの断層像とを照合し位置ずれ量(δX、δY、δθ)を求める。具体的には、位置合わせ手段42は、テンプレート画像の位置と角度を変えながら他のフレームの断層像との類似度を表す指標であるNormalized Cross−Correlation(NCC)を計算する。そして、位置合わせ手段42は、この値が最大となるときの画像位置の差を位置ずれ量として求める。なお、本発明では、類似度を表す指標は、テンプレートとして選択された断層像と他のフレームの断層像との特徴の類似性を表す尺度であれば種々変更が可能である。例えばSum of Abusolute Difference(SAD)、Sum of Squared Difference(SSD)、Zero−means Normalized Cross−Correlation(ZNCC)、Phase Only Correlation(POC)、Rotation Invariant Phase Only Correlation(RIPOC)等を類似度を表す指標として用いてもよい。
位置合わせ手段42は、次に位置ずれ量(δX、δY、δθ)に基づいて、Intensityを示す断層像の位置補正をテンプレート以外のm−1フレームの断層像に適用し、mフレーム分の断層像の位置合わせを行う。位置合わせ完了後、ステップS310とステップS311の処理が行われる。
ステップS310では、算出手段43がモーションコントラスト特徴量を計算する。本実施形態ではステップS300にて位置合わせされたmフレームの断層像から算出手段43は同じ位置のピクセルごとに分散値を計算し、その分散値をモーションコントラスト特徴量とする。なお、モーションコントラスト特徴量の求め方は種々あり、同一Yポジションにおける複数断層像の対応する各ピクセルの輝度値の変化を表す指標であれば本発明に適用可能である。
一方、ステップS311では、算出手段43がステップS300で得られたm枚の位置合わせされた断層像(Intensity画像)の平均を算出し、Intensity平均化画像を生成する。
ステップS330において、取得手段41はポジションyiのインデックスiをインクリメントする。そして、ステップS340において、取得手段41はインデックスiが計測位置の数nより大きいか否かを判定する。すなわちn箇所の全てのYポジションで位置合わせ、Intensity平均化画像の計算、モーションコントラスト特徴量の計算をしたかを取得手段41は判断する。インデックスiが計測位置の数nより小さい場合はS220に戻り、インデックスiが計測位置の数nより大きい場合は、ステップS400へ進む。
ステップS340を終了した時点で、すべてのYポジションでの断層像(Z−X平面)の各ピクセルのIntensity平均化画像とモーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータが取得されたことになる。
ステップS340の終了後、ステップS350とステップS360とへ進む。ステップS350おいては三次元血管情報取得処理が実行され、ステップS360では網膜層のセグメンテーション処理が実行される。これらの処理は並列して実行されてもよいし、連続して実行することとしてもよい。なお、ステップS350のあとにステップS360が実行されることとしてもよいし、逆の順序で実行されることとしてもよい。
まず、ステップS350における三次元血管情報取得処理について説明する。ここでは、モーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータから、三次元血管情報を取得する処理の手順を例に説明する。
図5は、図4のステップS350の詳細を示すフローチャートである。
ステップS351において生成手段44は、先にもとめたモーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータを取得する。
そして、ステップS352において生成手段44は、血管情報は残しつつノイズを除去するために、モーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータに対して平滑化処理を施す。
モーションコントラスト特徴量の性質によって最適な平滑化処理は異なるが、例えば以下のような平滑化処理を用いることが考えられる。
(1)注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルからモーションコントラスト特徴量の最大値を出力する平滑化方法。ここで、nは任意の数である。
(2)注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラスト特徴量の平均値を出力する平滑化方法。なお、平均値に代えて中央値を出力することとしてもよい。
(3)注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラスト特徴量に対して、距離による重みをつける平滑化方法。この平滑化方法では、例えば、注目画素からの距離が遠くなるほど重み付けを低くする。また、着目している血管が層境界と交差する血管であることから、例えば、距離による重み付け方法として、深さ方向に高い重みが付くようにする。すなわち、注目画素から等しい距離の画素であっても、深さ方向の画素に対する重み付けを深さ方向直交する方向の画素に対する重み付けよりも高くする。
(4)注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラスト特徴量に対して、注目画素からの距離による重みと注目画素との画素値の差に応じた重みをつける平滑化方法。例えば、画素値の差が小さいほど重み付けを高くする。
(5)注目画素のまわりの小領域のモーションコントラスト特徴量パターンと、周辺画素のまわりの小領域のモーションコントラスト特徴量のパターンの類似度に応じた重みを用いた値を出力する平滑化方法。この平滑化方法では、例えば、類似度が高い程重み付けを高くする。
なお、その他の血管情報を残しつつ平滑化を行う手法を用いてもよい。また、平滑化処理は必須の処理ではなく省略することとしてもよい。
次に、ステップS353において生成手段44は、平滑化処理されたモーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータに対して、血管と血管以外を分割する領域分割処理を施す。
領域分割処理としては、例えば、モーションコントラスト特徴量を表すボクセル値に対して閾値以下のものを血管以外とする方法が考えられる。ここで、注目画素の近傍mx×my×mz個の領域で重みづけ平均を計算し定数を引くことで画素ごとに閾値の設定を行うなど適応的な閾値設定をおこなってもよい。なお、定数は重み付け平均の数%と規定することとしてもよい。また、mは任意の数である。なお、閾値は固定値であってもよい。
また、この閾値による領域分割処理において、生成手段44は血管とそれ以外の領域を2値化してもよい。この場合、2値化処理を行った三次元ボリュームデータに対して、生成手段44は、クロージング(膨張→収縮)処理とオープニング処理(収縮→膨張)処理を施すことにより、ノイズの除去を行うことができる。
他にも、例えば、生成手段44は、モーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータに対して、血管と血管以外に適切にラベル付けされたときに最少となるコスト関数を考え、コスト最小となるラベルの組み合わせを求める方法を用いてもよい。すなわち、生成手段44は、グラフカット等の手法を用いることとしてもよい。
なお、その他の領域分割処理手法を用いてもよい。
以上の処理により、モーションコントラスト特徴量の三次元ボリュームデータから三次元血管情報が取得される。なお、各画素に対して、上記のように血管に相当するか否かを判定することに加えて、血管に相当すると判定した画素がどれだけ連続するかを考慮することとしてもよい。例えば、生成手段44は、血管に相当すると判定した画素のうち所定値以上連続している部分を血管とし、血管に相当すると判定した画素のうち所定値未満しか連続していない部分は血管以外の部分であると修整することとしてもよい。また、生成手段44は血管と判定した画素の連続性を判定することで、血管の走行方向、血管の長さおよび血管の端点の少なくとも一つを検出することが可能である。
一方、ステップS360の網膜層のセグメンテーション処理として、ステップS311で生成したIntensity平均化画像を用いたセグメンテーション処理を具体的に説明する。
生成手段44は、複数のYポジションにおけるIntensity平均化画像から処理対象とするIntensity平均化画像を抽出する。そして、生成手段44はメディアンフィルタとSobelフィルタを抽出したIntensity平均化画像にそれぞれ適用して画像を作成する(以下、それぞれメディアン画像、Sobel画像ともいう)。
次に、生成手段44は、作成されたメディアン画像とSobel画像とから、Aスキャン毎にプロファイルを作成する。作成されるプロファイルは、メディアン画像では輝度値のプロファイル、Sobel画像では勾配のプロファイルとなる。そして、生成手段44はSobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。生成手段44はSobel画像から検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、網膜層の各領域の境界(層境界)を抽出する。すなわち、生成手段44は層境界を示す層境界データを取得する。
セグメンテーション結果の一例を図6に示す。図6はあるYポジションでのInensity平均化画像であり、セグメンテーションライン(層境界)が破線でInensity平均化画像にオーバーレイされている。本実施形態におけるセグメンテーション処理では、神経線維層(NFL)と神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)を合わせた層との境界が検出される。更に、Ellipsoid Zone(EZ)+Interdigitation Zone(IZ)+網膜色素上皮(RPE)を合わせた層と脈絡膜層との境界等が検出される。但し検出する層境界は上記の例に限定されるものではなく、生成手段44は、例えば、ブルッフ膜と網膜色素上皮層との境界およびブルッフ膜と脈絡膜層との境界の少なくとも一方を層境界として検出することとしてもよい。なお、生成手段44は検出した層境界の座標等を示す層境界データ取得する。すなわち、層境界データは、ブルッフ膜と網膜色素上皮層との境界およびブルッフ膜と脈絡膜層との境界の少なくとも一方を示す。生成手段44は複数のYポジションにおけるIntensity平均化画像に対して上記の処理を施すことにより三次元層境界データを取得することができる。
なお、本実施形態で説明したセグメンテーション処理は一例であり、ダイクストラ法を利用したセグメンテーション処理など、その他の方法を用いても良い。また、検出する層の数は任意に設定が可能である。
次に、ステップS370では、決定手段45は、ステップS350で得た三次元血管情報とステップS360で得た層境界データとに基づいて、層境界と交わる血管を決定(抽出)する。すなわち、決定手段45は、層境界と交わる血管を新生血管であると判定する。具体的には、決定手段45は、例えば、三次元血管情報に含まれる血管の座標と層境界データに含まれる層境界の座標とを比較することにより、層境界の座標と同一の座標を有する血管を層境界と交わる血管として特定する。また、例えば、決定手段45は生成手段44により得られた血管の両端の深さ方向の座標の間に層境界の深さ方向の座標が存在する場合に、当該血管は層境界と交わる血管として特定することとしてもよい。なお、決定手段45は生成手段44により得られた血管の端点の座標が層境界の座標と一致する場合に、当該血管は層境界と交わる血管として特定することとしてもよい。すなわち、決定手段45は、層境界と交差する血管および層境界と接する血管の少なくとも一方を決定する。
ここで、三次元血管情報と層境界とが異なる断層像データから取得されている場合には、断層像データ同士の位置合わせを行うことで三次元血管情報に含まれる血管と判定された画素の座標と層境界の座標とを比較可能にする。断層像データ同士の位置合わせは例えば、それぞれの断層像に基づいて得られる積算像同士の位置合わせをすることで実現可能である。なお、三次元血管情報と層境界とが共通の断層像データから取得されている場合には上記の位置合わせを省略することも可能である。
上記の例では層境界と交わる血管を新生血管とみなしているが、決定手段45は、血管のうち層境界から所定範囲内にある血管を新生血管とみなすこととしてもよい。層境界に対して所定範囲内にある血管は新生血管の虞があるためである。また、計算上は網膜層の層境界面を一意に定めているが、実際には境界は曖昧であり、特に患眼においては、境界が崩れている場合があるため、決定手段45は、血管が層境界面から所定範囲内、すなわち層境界の近傍に存在するかどうか判定を行う。ここで、決定手段45は、例えば、生成手段44により得られた血管の端点の座標が層境界の座標から所定範囲内に存在する場合に当該血管は層境界から所定範囲内にある血管であると決定する。
なお、新生血管であることをより正確に判定するために、決定手段45は血管の角度を考慮することとしてもよい。角度を考慮するのは、新生血管は網膜表面方向に延びるという特性を利用するためである。決定手段45は、例えば、層境界から所定範囲内にあり且つ水平方向に対する角度が45度から135度までの範囲の血管を新生血管と決定することとしてもよい。なお、上記の角度は例示であり、網膜表面方向に延びる血管を抽出できればよく上記の値に限定されるものではない。なお、決定手段45は、血管が層境界と交わる場合においても、上記と同様に血管の角度を考慮して新生血管か否かを決定することとしてもよい。
また、新生血管であることをより正確に判定するために、決定手段45は血管の長さを考慮することとしてもよい。長さを考慮するのは、本来血管ではないノイズを誤って新生血管と判定することを避けるためである。決定手段45は、例えば、層境界から所定範囲内にあり且つ血管の長さが所定値以上の血管を新生血管と決定することとしてもよい。なお、決定手段45は、血管が層境界と交わる場合においても、上記と同様に血管の長さを考慮して新生血管か否かを決定することとしてもよい。
なお、決定手段45は、層境界と血管との位置関係、血管の角度および血管の長さの全てを考慮して新生血管か否かを決定することとしてもよい。また、決定手段45は血管の角度のみに基づいて血管が新生血管か否かを決定することとしてもよい。さらに、決定手段45は血管の角度および血管の長さに基づいて血管が新生血管か否かを判定することとしてもよい。
なお、決定手段45は、新生血管であることの信頼性を示す信頼度を血管に対して付与することとしてもよい。例えば、決定手段45は、層境界と交わる血管には層境界から所定範囲内にある血管より高い信頼度を付与する。一方、決定手段45は、層境界から所定範囲内にある血管には層境界と交わる血管より低い信頼度を付与する。なお、信頼度の付与は、例えば、血管情報に信頼度に応じたフラグを立てることで実現される。また、決定手段45は層境界に近いほど高い信頼度を付与することとしてもよい。さらに、決定手段45は、血管の角度が垂直に近いほど高い信頼度を付与することとしてもよい。また、決定手段45は、血管が長いほど高い信頼度を付与することとしてもよい。さらに、決定手段45は、層境界と交差している血管には層境界に接している血管よりも高い信頼度を付与することとしてもよい。また、決定手段45は、層境界と血管が交差している場合において、血管の長さが長いほど高い信頼度を付与することとしてもよい。さらに、決定手段45は、層境界と血管が交差している場合において、層境界と血管との交点から網膜表面側に延びている血管の長さが長いほど高い信頼度を付与することとしてもよい。なお、上記の例では信頼度を付与することとしているが、新生血管の成長度と置き換えることも可能である。例えば、高い信頼度は高い成長度(新生血管が大きく成長している)と置き換えることができる。
ステップS380において、表示制御手段46は三次元血管情報に基づく血管画像を表示部70に表示させる。図7は、表示部70の表示画面の一例を示す図である。図7に示すように、表示制御手段46は、表示部70に二次元血管画像71、断層像72および三次元血管画像73を表示させている。さらに、表示制御手段46は、表示部70に三次元血管画像73に生成手段44により得られた層境界を重畳して表示させている。すなわち、表示制御手段46は、三次元血管画像に層境界データが示す層境界を重畳して表示手段に表示させる。なお、表示制御手段46は、表示した層境界がどの位置の層境界かを明確に示すために層境界の上下に位置する層の名称を合わせて表示部70に表示させることとしてもよい。
また、表示制御手段46は、表示部70に決定手段45により決定された血管をそれ以外の血管と識別可能に表示させる。図7に示す例では、表示制御手段46は、決定手段45により決定された血管を示す矢印を表示部70に表示させている。さらに、表示制御手段46は、層境界と交わる部分を示す円を表示部70に表示させている。すなわち、表示制御手段46は、三次元血管データに基づく血管画像を表示手段に表示させるとともに、決定手段により決定された血管を示すオブジェクトを表示手段に表示させる。ここで、円はオブジェクトの一例である。なおオブジェクトの形態は円に限定されるものではない。
上記の矢印および円を用いて表示制御手段46は、決定手段45により決定された血管とそれ以外の血管とを識別可能に表示部70に表示させている。なお、決定手段45により決定された血管を示す表示形態は図7に示す例に限定されるものではない。例えば、層境界から所定範囲にある血管の端点を図7に示す円で強調することとしてもよい。また、表示制御手段46は、決定手段45により決定された血管を他の血管と異なる色で表示部70に表示させることとしてもよい。例えば、表示制御手段46は、表示部70に決定手段45により決定された血管を赤で表示させ他の血管は白で表示させることとしてもよい。なお、表示色は何色であってもよい。すなわち、表示制御手段46は、三次元血管データに基づく血管画像を表示手段に表示させるとともに、決定手段により決定された血管を決定手段により決定された血管以外の血管と異なる色で表示手段に表示させる。
また、表示制御手段46は、血管に対して信頼度(または成長度)が付与されている場合には、信頼度に応じて異なる表示形態で血管を表示部70に表示させることとしてもよい。例えば、表示制御手段46は、信頼度が高いほど赤に近い色で血管を表示部70に表示させ、信頼度が低いほど白に近い色(他の血管の表示色に近い色)で血管を表示部70に表示させることとしてもよい。
また、表示制御手段46は、検出された全ての層境界に関して決定手段45により決定された血管を上記のような表示形態で表示部70に表示させることとしてもよい。すなわち、境界データは複数の層境界を示している。さらに、表示制御手段46は、複数の層境界からユーザにより選択された任意の層境界に関してのみ決定手段45により決定された血管を上記のような表示形態で表示部70に表示させることとしてもよい。すなわち、決定手段45は、複数の層境界から選択された層境界と交わる血管を決定する
なお、層境界のユーザによる選択は例えば以下のようにして実現される。表示制御手段46は層境界の検出結果を断層像72に重畳して表示部70に表示させ、ユーザは表示された複数の層境界の中から着目する層境界をクリックまたはタップ等により選択する。すなわち、表示制御手段46は、三次元断層像データに基づいて二次元断層像を表示手段に表示させるとともに、複数の層境界を二次元断層像に重畳して表示させる。そして、二次元断層像に重畳して表示された層境界が選択された場合に、決定手段45は、複数の層境界から選択された層境界と交わる血管を決定する。
なお、新生血管は脈絡膜とブルッフ膜との間の層境界および/またはブルッフ膜と網膜色素上皮層との層境界と交わることが一例として知られている。そこで、表示制御手段46は、図7に示す画面に切り替える際には脈絡膜とブルッフ膜との間の層境界および/またはブルッフ膜と網膜色素上皮層との層境界と交わる血管に関して、他の血管とは異なる表示形態で表示部70に表示させることとしてもよい。すなわち、図7の表示のデフォルト状態においては、複数の層境界のうち脈絡膜とブルッフ膜との間の層境界および/またはブルッフ膜と網膜色素上皮層との層境界が自動的に選択されることとしてもよい。
なお、表示制御手段46は、二次元血管画像71においても上記のように決定手段45により決定された血管を他の血管と識別可能に表示させることとしてもよい。また、表示制御手段46は眼底画像を表示部70に表示させることとしてもよく、眼底画像に対して決定手段45により決定された血管の位置を示す矢印や円等の表示を重畳して表示部70に表示させることとしてもよい。なお、眼底画像は断層像を積算することにより得られる画像であってもよいし、眼底カメラまたはSLOのよって得られた眼底画像であってもよい。三次元血管画像と眼底画像との位置合わせは、三次元血管画像の元になる断層像データから得られる積算画像と眼底画像との位置合わせにより実現される。すなわち、断層像データを介して三次元血管画像と眼底画像とが位置合わせされる。従って、表示制御手段46は、眼底画像に対して決定手段45により決定された血管の位置を示す矢印や円等の表示を重畳して表示部70に表示させることが可能となる。
なお、表示制御手段46は、二次元血管画像71、断層像72および三次元血管画像73の全てを表示部70に表示させる必要はなく、任意の画像を表示部70に表示させることとしてもよい。例えば、表示制御手段46は、決定手段45により決定された血管とそれ以外の血管とを識別可能な状態で、層境界が重畳された三次元血管画像73のみを表示部70に表示させることとしてもよい。
以上、本実施形態によれば、新生血管の虞がある血管を特定することが可能である。また、新生血管とみなされた血管を他の血管と識別可能に表示させることで医師等のユーザは新生血管の虞のある血管を迅速かつ容易に把握することが可能となる。また、血管画像が表示されたデフォルトの状態では新生血管の発生している確率の高い脈絡膜とブルッフ膜との間の層境界および/またはブルッフ膜と網膜色素上皮層との層境界と交わる血管を他の血管と識別可能に表示している。このため医師等のユーザは新生血管の虞のある血管をより迅速に把握することが可能である。
また、本実施形態によれば、信頼度に応じた表示形態で血管が表示されるため、医師等のユーザによる本当に新生血管であるか否かの判断を支援することが可能である。また、本実施形態によれば、成長度に応じた表示形態で血管が表示されるため、医師等のユーザは疾病の進行の程度を迅速かつ容易に把握することが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、三次元血管画像と層境界とは同一の断層像データに基づいて得られるため、三次元血管画像と層境界との位置関係の把握が容易である。
なお、本実施形態においては、三次元層境界データと三次元血管データとは共通の断層像データに基づいて得られることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、三次元血管データの生成に用いられる眼底の断層を示す複数の断層像データと層境界データの取得に用いられる三次元断層像データに含まれる眼底の断層を示す複数の断層像データとは異なるデータであってもよい。また、三次元血管データの生成に用いられる眼底の断層を示す複数の断層像データのそれぞれが示す画角は、層境界データの取得に用いられる三次元断層像データに含まれる眼底の断層を示す複数の断層像データのそれぞれが示す画角よりも狭いこととしてもよい。すなわち、三次元層境界データを取得するための断層像データを、三次元血管データを取得するための眼底における範囲を医師等のユーザが決定するために上記実施例における断層像データよりも広画角にすることとしてもよい。
なお、広画角な断層像データを取得する際には略同一位置を複数回走査する必要はない。広画角な断層像データが取得された場合、生成手段44は広画角な断層像データから三次元層境界データを取得してもよい。すなわち、三次元層境界データを三次元血管データが得られた断層像データとは異なる断層像データから取得することとしてもよい。
また、上記の実施形態においては、三次元血管データおよび三次元層境界データを扱っていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、二次元血管データおよび二次元層境界データを用いることとしてもよい。二次元のデータであっても層境界に交わる血管を特定することは可能であるため上記実施例と同様の効果を奏することが可能である。
[第2実施形態]
[撮像装置全体構成]
本実施形態は、偏光OCTを用いる場合について説明を行う。偏光OCTによれば偏光解消を起こす網膜色素上皮層を容易に抽出可能な断層像を得ることが可能である。そのため、本実施形態において、眼科装置は網膜色素上皮層とブルッフ膜等の他の層との層境界を検出し、検出した層境界と交わる血管等を新生血管とみなす。すなわち、本実施形態は、層境界の検出方法が第1実施形態と異なっている。なお、スキャンパターンなど特に記載のないものについては第一の形態と共通であるため、あらためての記載は行わない。
図8は、本実施形態における眼科装置の一例を示す図である。
本眼科装置は、偏光OCT(Polarization Sensitive OCT;以下、PS−OCT)100およびコンピュータ200を備える。なお、コンピュータ200は第1実施形態におけるコンピュータ40と一部機能が異なるのみで略同様である。すなわち、本実施形態において三次元断層像データはPSOCTにより取得される。
<PS−OCT100の構成>
PS−OCT100の構成について説明する。
光源101は、低コヒーレント光源であるSLD光源(Super Luminescent Diode)であり、例えば、中心波長850nm、バンド幅50nmの光を出射する。光源101としてSLDを用いたが、ASE光源(Amplified Spontaneous Emission)等、低コヒーレント光が出射できる光源であれば何れでも良い。
光源101から出射された光は、SM(Single Mode)ファイバ134、偏光コントローラ103、コネクタ135、PM(Polarization Maintaining)ファイバ102を通る。そして、光源101から出射された光は、偏光保持機能を有したファイバカップラ104に導かれ、測定光(OCT測定光とも言う)と参照光(OCT測定光に対応する参照光とも言う)に分岐される。
偏光コントローラ103は、光源101から出射された光の偏光の状態を調整するものであり、直線偏光に調整される。ファイバカップラ104の分岐比は、90(参照光):10(測定光)である。
分岐された測定光は、PMファイバ105を介してコリメータ106から平行光として出射される。出射された測定光は、眼底Erにおいて測定光を水平方向にスキャンするガルバノミラーから構成されるXスキャナー107、レンズ108、109を経由する。さらに、出射された測定光は眼底Erにおいて測定光を垂直方向にスキャンするガルバノミラーから構成されるYスキャナー110を介し、ダイクロイックミラー111に到達する。Xスキャナー107、Yスキャナー110は、取得手段41により制御され、眼底Erの所望の範囲(断層像の取得範囲、断層像の取得位置、測定光の照射位置とも言う)で測定光を走査することができる。ダイクロイックミラー111は、800nm〜900nmの光を反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。
ダイクロイックミラー111により反射された測定光は、レンズ112を介し、測定光の光軸に垂直な面内で45°傾けて設置されたλ/4偏光板113(偏光調整部材の一例)を通過する事で位相が90°ずれ、円偏光の光に偏光制御される。なお、λ/4偏光板113の傾きは、例えば、偏光ビームスプリッタを内蔵したファイバカップラ123の偏光分割面の光軸からの傾きと対応した角度(配置状態の一例)が好ましい。
なお、λ/4偏光板113を光路に対して挿脱可能に構成されることが好ましい。例えば、光軸とは平行な軸を回転軸にしてλ/4偏光板113を回転する機械的な構成が考えられる。これにより、SLO光学系とPS−SLO光学系とを簡単に切り換え可能な小型な装置を実現することができる。また、OCT光学系とPS−OCT光学系とを簡単に切り換え可能な小型な装置を実現することができる。
ここで、被検眼に入射される光は、λ/4偏光板を測定光の光軸に垂直な面内で45°傾けて設置することで円偏光の光に偏光制御されるが、被検眼の特性により眼底Erにおいて円偏光とならない場合がある。そのため、取得手段41の制御により、λ/4偏光板の傾きを微調整できるように構成されている。
円偏光に偏光制御された測定光は、ステージ116上に乗ったフォーカスレンズ114により、被検体である眼の前眼部Eaを介し、眼底Erの網膜層にフォーカスされる。眼底Erを照射した測定光は各網膜層で反射・散乱し、上述の光学経路をファイバカップラ104に戻る。
一方、ファイバカプラ104で分岐された参照光は、PMファイバ117を介してコリメータ118から平行光として出射される。出射された参照光は測定光と同様P偏光から参照光の光軸に垂直な面内で22.5°S偏光へ傾けて設置されたλ/4偏光板119で偏光制御される。参照光は分散補償ガラス120介し、コヒーレンスゲートステージ121上のミラー122で反射され、ファイバカップラ104に戻る。参照光は、λ/4偏光板119を二度通過する事で直線偏光の光がファイバカップラ104に戻ることになる。
コヒーレンスゲートステージ121は、被検者の眼軸長の相違等に対応する為、駆動制御部180で制御される。
ファイバカップラ104に戻った測定光と参照光は合波されて干渉光となり、偏光ビームスプリッタを内蔵したファイバカップラ123に入射され、異なる偏光方向の光(本実施形態では、P偏光の光とS偏光の光)に分岐比50:50で分割される。
P偏光の光は、PMファイバ124、コリメータ130を介し、グレーティング131により分光されレンズ132、ラインカメラ133で受光される。同様に、S偏光の光は、PMファイバ125、コリメータ126を介し、グレーティング127により分光されレンズ128、ラインカメラ129で受光される。なお、グレーティング127、131、ラインカメラ129、133は、各偏光の方向に合わせて配置されているのは言うまでもない。
ラインカメラ129、133でそれぞれ受光した光は、光の強度に応じた電気信号として出力され、出力された電気信号は取得手段41によって取得される。
λ/4偏光板113は偏光ビームスプリッタを基準に傾きを調整しているが、眼底の視神経乳頭中心と黄斑中心を結んだ直線に対し傾きを調整しても良い。また、偏光基準として鉛直方向を基準にして偏光ビームスプリッタ、λ/4偏光板113、119を調整しても同様の効果が得られる。
<コンピュータ200>
本実施形態におけるコンピュータ200はコンピュータ40と略同様であるため詳細な説明は省略する。
[画像処理]
次に、偏光OCTにおける信号処理方法について説明する。網膜層のセグメンテーションという観点では、同じ箇所でのBスキャンは一度でよいため、以下では特に繰り返しスキャンに関する記載はおこなっていない。しかし、三次元血管情報を取得するためにはモーションコントラスト特徴量を求める必要があるため、複数回のBスキャンが必要であることは、第二実施形態においても同じである。
<断層像生成、及び、眼底画像生成>
取得手段41は、ラインカメラ129、133から出力されたそれぞれの干渉信号に対して、一般的なSD−OCT(Spectral Domain OCT)に用いられる再構成処理を行う。そして、取得手段41は、各偏光成分に基づいた2つの断層像(第一の偏光に対応する断層像、第二の偏光に対応する断層像とも言う)を生成する。
まず、取得手段41は、干渉信号から固定パターンノイズ除去を行う。固定パターンノイズ除去は検出した複数のAスキャン信号を平均することで固定パターンノイズを抽出し、これを入力した干渉信号から減算することで行われる。
次に、取得手段41は、干渉信号を波長から波数に変換し、フーリエ変換を行うことによって断層信号(偏光状態を示す断層信号とも言う)を生成する。
以上の処理を2つの偏光成分の干渉信号に対して行うことにより、2つの断層像が生成される。
<輝度画像生成>
取得手段41は、前述した2つの断層信号からIntensityを示す断層像(本実施形態において以下輝度画像という場合がある)を生成する。
輝度画像は従来のOCTにおける断層像と基本的に同じもので、その画素値rは各ラインセンサ129、133から得られた断層信号AおよびAから式1によって計算される。
本実施形態では、式1により得られたIntensityを示す断層像に基づいて生成手段44は第1実施形態と同様に三次元血管情報を取得する。
<DOPU画像生成>
取得手段41は、取得した断層信号AH、とそれらの間の位相差ΔΦから、各画素毎にストークスベクトルSを式2により計算する。
ただし、ΔΦは2つの断層像を計算する際に得られる各信号の位相ΦとΦからΔΦ=Φ−Φとして計算する。
次に取得手段41は、各Bスキャン画像を概ね計測光の主走査方向に70μm、深度方向に18μm程度の大きさのウィンドウを設定する。そして、取得手段41は各ウィンドウ内において式2で画素毎に計算されたストークスベクトルの各要素を平均し、当該ウィンドウ内の偏光の均一性DOPU(Degree Of Polarization Uniformity)を式3により計算する。
ただし、Q、U、Vは各ウィンドウ内のストークスベクトルの要素Q、U、Vを平均した値である。この処理をBスキャン画像内の全てのウィンドウに対して行うことで、DOPU画像(偏光の均一度を示す断層像とも言う)が生成される。
DOPUは偏光の均一性を表す数値であり、偏光が保たれている個所においては1に近い数値となり、偏光が解消された保たれない箇所においては1よりも小さい数値となるものである。網膜内の構造においては、網膜色素上皮層が偏光状態を解消する性質があるため、DOPU画像において網膜色素上皮層に対応する部分は、他の領域に対してその値が小さくなる。DOPU画像は、網膜色素上皮層等の偏光を解消する層を画像化しているので、病気などにより網膜色素上皮層が変形している場合においても、輝度の変化よりも確実にRPEを画像化出来る。
生成手段44は取得手段41により取得されたDOPU画像からRPEのセグメンテーション情報を取得する。具体的には、上述のように網膜色素上皮層に対応する部分は他の領域に対してDOPUの値が小さくなるため、生成手段44は、DOPUが小さい領域を網膜色素上皮層として抽出する。そして、生成手段44は、抽出した網膜色素上皮層の下端を網膜色素上皮層とブルッフ膜との層境界として抽出することが可能である。
決定手段46による新生血管とみなす血管の決定方法については第1実施形態と同様であるため、決定手段46の処理の説明は省略する。
以上、本実施形態によれば、PSOCTにより網膜色素上皮層とブルッフ膜との層境界を容易に検出できるため、網膜色素上皮層とブルッフ膜との層境界と交わる血管または近傍の血管を容易に決定することが可能となる。特に新生血管は網膜色素上皮層とブルッフ膜との層境界と交わることが多いため新生血管の虞のある血管を特定するためにPSOCTを用いるは有用である。
[その他の実施例]
以上、実施例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、開示の技術の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。即ち、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
40 コンピュータ
41 取得手段
42 位置合わせ手段
43 算出手段
44 生成手段
45 変更手段
46 表示制御手段
70 表示部

Claims (21)

  1. 底の断層を示す複数の断層像データに基づいて前記眼底における血管を示す三次元血管データを生成する生成手段と、
    記眼底の断層を示す複数の断層像データを含む三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得手段と、
    前記三次元血管データと前記層境界データとを比較することによって、前記層境界と交わる血管を決定する決定手段と、
    を備えることを特徴とする眼科装置。
  2. 前記境界取得手段は、前記三次元血管データの生成に用いられる前記眼底の断層を示す複数の断層像データを含む前記三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得することを特徴とする請求項1記載の眼科装置。
  3. 前記三次元血管データの生成に用いられる前記眼底の断層を示す複数の断層像データと前記層境界データの取得に用いられる前記三次元断層像データに含まれる前記眼底の断層を示す複数の断層像データとは異なるデータであり、
    前記三次元血管データの生成に用いられる前記眼底の断層を示す複数の断層像データのそれぞれが示す画角は、前記三次元断層像データに含まれる前記眼底の断層を示す複数の断層像データのそれぞれが示す画角よりも狭いことを特徴とする請求項1または2に記載の眼科装置。
  4. 底の断層を示す複数の断層像データに基づいて前記眼底における血管を示す血管データを生成する生成手段と、
    前記眼底の断層を示す断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得手段と、
    前記血管データと前記層境界データとを比較することによって、前記層境界と交わる血管を決定する決定手段と、
    を備えることを特徴とする眼科装置。
  5. 前記層境界データは複数の層境界を示し、
    前記決定手段は、前記複数の層境界から選択された層境界と交わる血管を決定することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の眼科装置。
  6. 前記断層像データに基づ二次元断層像を表示手段に表示させるとともに、前記層境界データが示す複数の層境界を前記二次元断層像に重畳して前記表示手段に表示させる表示制御手段を更に備え
    前記二次元断層像に重畳して表示された前記複数の層境界の少なくとも1つが選択された場合に、前記決定手段は、前記複数の層境界から選択された少なくとも1つの層境界と交わる血管を決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科装置。
  7. 記血管データに基づく血管画像を表示手段に表示させるとともに、前記決定手段により決定された血管を前記決定手段により決定された血管以外の血管と異なる色で前記表示手段に表示させることを特徴とする表示制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科装置。
  8. 記血管データに基づく血管画像を表示手段に表示させるとともに、前記決定手段により決定された血管を示すオブジェクトを前記表示手段に表示させる表示制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科装置。
  9. 前記三次元血管データが示す三次元血管画像および前記三次元血管データを前記眼底の深さ方向に積算することで得られた二次元血管画像の少なくとも一方を表示手段に表示させるとともに、前記決定手段により決定された血管を前記決定手段により決定された血管以外の血管と識別可能に前記表示手段に表示させる表示制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の眼科装置。
  10. 前記血管データに基づく血管画像に前記層境界データが示す層境界を重畳して表示手段に表示させる表示制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科装置。
  11. 眼底の略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた前記眼底の断層を示す複数の断層像データに基づいて生成される前記眼底における血管を示す血管データであって、前記眼底の異なる位置に対応する複数の前記血管データを含む三次元血管データを生成する生成手段と、
    前記複数の断層像データのうち少なくとも一つの断層像データが共通の断層像データであって、前記眼底の異なる位置に対応する複数の前記共通の断層像データを含む、前記三次元の血管データとは異なる種類の三次元データである三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得手段と、
    前記三次元血管データに基づく三次元血管画像に前記層境界データが示す層境界を重畳して表示手段に表示させる表示制御手段と、
    を備えることを特徴とする眼科装置。
  12. 前記生成手段は、三次元の前記血管データの任意の深さ範囲に対応する二次元の血管画像を、前記血管データに基づく血管画像として生成することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の眼科装置。
  13. 前記生成手段は、前記血管データとして血管画像データを生成する、または、前記血管データとして血管領域を他の領域に対して領域分割することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の眼科装置。
  14. 前記層境界データは、ブルッフ膜と網膜色素上皮層との境界および前記ブルッフ膜と脈絡膜層との境界の少なくとも一方を示すことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の眼科装置。
  15. 記断層像データはPSOCTにより取得されたデータであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の眼科装置。
  16. 前記眼底の断層を示す複数の断層像データであって、前記眼底の略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた複数の断層像データの位置合わせを行う位置合わせ手段と、
    前記位置合わせが行われた複数の断層像データを用いてモーションコントラスト値を算出する算出手段と、を更に備え、
    前記生成手段は、前記算出されたモーションコントラスト値を用いて前記血管データを生成することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の眼科装置。
  17. 前記眼底の断層を示す複数の断層像データであって、前記眼底の略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた複数の断層像データの位置合わせを行う位置合わせ手段を更に備え、
    前記境界取得手段は、前記位置合わせが行われた複数の断層像データを用いて生成された平均化画像データを用いて前記層境界データを取得することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の眼科装置。
  18. 底の断層を示す複数の断層像データに基づいて前記眼底における血管を示す三次元血管データを生成する生成工程と、
    記眼底の断層を示す複数の断層像データを含む三次元断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得工程と、
    前記三次元血管データと前記層境界データとを比較することによって、前記層境界と交わる血管を決定する決定工程と、
    含むことを特徴とする情報処理方法。
  19. 眼底の断層を示す複数の断層像データに基づいて前記眼底における血管を示す血管データを生成する生成工程と、
    前記眼底の断層を示す断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得工程と、
    前記血管データと前記層境界データとを比較することによって、前記層境界と交わる血管を決定する決定工程と、
    を含むことを特徴とする情報処理方法。
  20. 眼底の略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた前記眼底の断層を示す複数の断層像データに基づいて生成される前記眼底における血管を示す血管データであって、前記眼底の異なる位置に対応する複数の前記血管データを含む三次元の血管データを生成する生成工程と、
    前記複数の断層像データのうち少なくとも一つの断層像データが共通の断層像データであって、前記眼底の異なる位置に対応する複数の前記共通の断層像データを含む、前記三次元の血管データとは異なる種類の三次元データである三次元の断層像データに基づいて、少なくとも一つの層境界を示す層境界データを取得する境界取得工程と、
    前記三次元の血管データに基づく三次元の血管画像に前記層境界データが示す層境界を重畳して表示手段に表示させる表示制御工程と、
    を含むことを特徴とする情報処理方法。
  21. 請求項18乃至20のいずれか1項に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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